商標異議申立
2024-900224
モンキーカート、モンキー
- 審判番号
- 2024-900224
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-066522
- 登録番号
- 6836859
- 請求日
- 2024年10月28日
- 審決日
- 2025年09月30日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】知財防衛株式会社
- 【権利者代理人】林 栄二
- 【権利者代理人】佐藤 淳
- 【異議申立人】合同会社 日本観光ツーリズム
- 【異議申立人代理人】弁理士法人東海特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 大島 康浩
- 分類
- T1652.222-Y (W12353941434445) / T1652.251-Y (W12353941434445) / T1652.252-Y (W12353941434445) / T1652.253-Y (W12353941434445) / T1652.271-Y (W12353941434445) / T1652.22 -Y (W12353941434445)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6836859号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6836859号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6836859号商標(以下「本件商標」という。)は、「MONKEY KART」の欧文字を標準文字で表してなり、令和5年6月5日に登録出願、第12類、第35類、第39類、第41類、第43類ないし第45類に属する別掲1のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同6年8月1日に登録査定、同月23日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する商標(以下、まとめて「引用商標」という場合がある。)は、自動車の貸与(公道カートのレンタル)等の役務(以下「申立人役務」という場合がある。)に使用して、周知性を獲得していると主張する「MONKEY-KART」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び別掲2のとおり、猿を模した図形の右横に「MONKEY」の文字を黄色に配色し、そして該文字の下部に小さく「KART」の文字を表してなる商標(以下「引用商標2」という。)である。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第29号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第19号について
(1)本件商標と引用商標1及び引用商標2との類似性
本件商標は欧文字「MONKEY KART」からなり、引用商標1は欧文字「MONKEY-KART」からなり、引用商標2は図形と欧文字「Monkey KART」からなる。本件商標と、引用商標1及び引用商標2(以下あわせて「引用商標」という場合がある。)は「モンキーカート」の称呼を同一にする。また、本件商標と引用商標1は、つづりが同じであり、ハイフン「-」の有無のみの相違であり、外観はほぼ同一である。また、本件商標と引用商標2の欧文字部分はつづりが同じであるため、外観が類似する。また、観念はともに「MONKEY」の部分から「猿」の観念を有し(甲3)、「KART」の部分から「ゴーカート」ないし「カート」という観念を有し(甲4)、全体で「猿のカート」という観念を有するため、観念を共通にする。すなわち、本件商標は、引用商標と外観が類似し、称呼及び観念を同一とするため、引用商標と類似する。
(2)引用商標の周知性・著名性
申立人は、令和元年(2019年)8月から申立人役務について、引用商標の使用を開始し、本件商標の出願前には、周知性を獲得している。以下、引用商標の周知性について、証拠を提示して説明する。
ア 申立人による宣伝・広告
申立人は、本件商標の出願前から申立人のウェブページ及びInstagram、準機関紙等で宣伝・広告を行っており、これにより、引用商標は申立人の商標として周知性を獲得している。
(ア)申立人のウェブページ
申立人は、引用商標に係る申立人役務のサービスを開始して間もなくの令和元年(2019年)10月22日に「monkey-kart.com」をドメイン登録した(甲5)。そして、甲第2号証に示すように、本件商標の出願よりも1年7か月以上前の令和3年(2021年)10月12日には、このドメインで、申立人役務のサービスにおいて、引用商標を使用している。また、このドメインの現在のウェブページにおいても、引用商標1及び引用商標2を使用している(甲6)。
(イ)申立人によるInstagram
申立人は、Instagramの投稿記事に確認できるように、本件商標の出願日よりも3年以上前の2020年4月4日には、引用商標2を申立人の店舗の看板に使用している(甲7)。すなわち、このときには既に引用商標2を使用して、申立人役務のサービスを開始していることを客観的に確認することができる。また、甲第8号証のInstagramの投稿記事に示すように、2021年10月2日においても、店舗の看板に引用商標2が継続して使用されており、その頃には外国からの旅行者等により申立人のサービスが利用されていることを確認することができる。
(ウ)各国の著名人による申立人の引用商標に係るサービスの体験記事
各国の著名人らにより申立人のサービスが体験され、その内容が申立人のInstagramや、外国でのテレビ放映を通じて、外国の需要者に周知された(甲9~甲12)。
(エ)米軍の準機関紙「Stars and Stripes」の日本版「Stars and Stripes JAPAN」での宣伝広告
米軍の準機関紙「Stars and Stripes」の日本版「Stars and Stripes JAPAN」での宣伝広告の証拠として、2020年7月10日~16日版における表紙と広告掲載ページを示す(甲13の1)。2020年7月の広告掲載の見積書(甲13の2)に示すように、「Stars and Stripes JAPAN」に定期的に申立人のサービスの広告が掲載されていたことを確認することができる。
なお、甲第13号証の3は、「Stars and Stripes」が米軍の準機関紙であることを示す証拠である。
(オ)以上により、申立人の宣伝・広告活動、及び各国の著名人による体験記事の投稿や外国でのテレビ放送、米軍の準機関紙への広告掲載により、申立人の引用商標が本件商標の出願日よりも前に周知・著名となっていたことは明らかである。
イ 申立人による公道カートのレンタルサービスの利用実績
上記アに記載したとおり、申立人による上記の宣伝・広告活動等により、引用商標は本件商標の出願日よりも前に周知・著名となっており、これにより、多数の需要者により申立人のサービスが利用されてきた。以下の証拠は、引用商標に係る申立人役務のサービスを実際に予約及び決済した利用者の決済情報の写しである。
(ア)決済サービスPayPalのレポート(PayPal report)(甲14)
2022年9月2日から2023年5月31日(本件商標出願の9か月前から5日前まで)に、申立人の申立人役務のサービスが予約され、決済サービスPayPalを通じて決済された履歴を示す。
(イ)決済サービスStripeの画面のスクリーンショット及びレポート(Stripe report)(甲15の1、甲15の2)
甲第15号証の1は、決済サービスStripeの画面のスクリーンショットであり、甲第15号証の2は、2022年11月5日から2023年5月31日(本件商標出願の7か月前から5日前まで)の決済サービスStripeでの決済レポート(Stripe report)である。甲第15号証の2のレポートに示すように、決済されたカードの発行国は、表の上からSG(シンガポール)、US(米国)、AE(アラブ首長国連邦)、IN(インド)、GB(イギリス)等、多岐にわたり、7か月間で総数は2390件である。すなわち、申立人の引用商標に係るサービスは、本件商標の出願前に、多数の国の多くの需要者によって予約され利用されていることを確認することができる。
(ウ)以上により、申立人役務のサービスが、本件商標の出願前から、多数の国の需要者の間に広く認識されていることを確認することができる。
ウ 申立人以外の資料
(ア)2023年10月26日にGoogle検索において、引用商標の欧文字「monkey kart」と称呼「モンキーカート」をキーワードとして検索をしたところ、52,600件が抽出され(甲16)、そのうち少なくとも最初の47件は全て申立人の引用商標に係るサービスに関する情報であった。したがって、52,600件のうち残り全ても申立人の引用商標に係るサービスに関する情報であることが推認される。
(イ)2023年10月24日に検索したGoogleマイビジネスのクチコミでは、申立人のサービスについて532件のレビューが投稿されている(甲17)。その中には、この時点で6カ月以上前、すなわち本件商標の出願前のレビューもあり、引用商標が本件商標の出願日よりも前に周知性を獲得していたことを確認することができる。
(ウ)ニュースサイトであるJCASTトレンドの記事「「ゴーカート」外国人観光客が東京を爆走 コロナ前のような光景が再び」(2022年10月29日18時00分)(甲18)において、申立人が営業する店舗「モンキーカート新宿」が紹介されている。
(エ)旅行サイトであるトリップアドバイザーの見出し「Monkey kart Asakusa」(甲19)において、申立人のサービスが掲載されており、174件もの口コミが投稿されている。その口コミには、本件商標の出願日よりも前のものも含まれており、本件商標の出願よりも前に周知性を獲得していたことは明らかである。
(オ)海外/国内の旅行・レジャー予約サイトであるKlook(クルック)における見出し「Monkey kart Asakusa」(甲20)において、申立人のサービスが掲載されており、数十件もの口コミが投稿されている。
(カ)以上アないしウに示した証拠により、引用商標は、申立人に係る申立人役務のサービスを表示するものとして、本件商標の出願日よりも以前に、需要者に周知・著名となっていたことは明らかである。
(3)不正の目的
本件商標の権利者(甲21)は、過去の無効審判等の事案からも分かるとおり、他人の商標について剽窃的な出願を繰り返している疑いがある(甲22、甲23)。
さらに、本件商標の商標登録願に添付した「商標の使用を開始する意志」(甲24)において「現在、・・・本願指定商品(指定役務)に係る業務を行っていない」との記載があるとおり、現在は、本願指定役務に係る業務を行っておらず、近い将来にその業務を行う計画があることから、現在既にその業務を行っておりその商標について周知性を獲得している申立人に対して不正の目的があることは明らかである。
また、本件商標の出願時の代理人はA社(代表社員M氏 )(甲2、甲25)であり、本件商標の権利者との関係は不明であるが、出願人及びA社は、ともに住所が「東京都品川区」であり、密接な関係が存在すると推認される。代理人であるA社は以前、「マリオカート」という屋号で公道カートのレンタルサービスを行っていた会社である(甲26)。これは申立人と競合するサービスであることからも出願人の不正の目的がうかがえる。さらに、代表社員M氏は、申立人の事務所に複数回(2023年7月13日及び2023年8月20日を含む)訪れている。上記のことから、本件商標の権利者及びその代理人であるA社が、申立人に損害を加える目的で商標出願を行ったことは明らかである。
また、同様に申立人役務のサービスを行う事業者には、「アキバカート」という名称を用いている事業者があり、「アキバカート」はそのウェブページに示すように平成24年(2012年)3月にサービスを開始している(甲27)。一方、本件商標の権利者は、甲第21号証に示すように平成28年6月20日に登記された会社であり、A社は、甲第25号証に示すように、令和元年5月28日に登記された会社である。そして、この2社はいずれも「アキバカート」のサービスの開始よりも後に設立された法人であるにもかかわらず、「アキバカート」及び「AKIBAKART」を商標登録出願している(甲28)。すなわち、本件商標の権利者及びA社は、申立人に対してのみならず、公道カートのレンタルサービスという自社の事業と競合するサービスの他の事業者に対しても、損害を加える目的で他人の商標を出願していることが推認される。
さらに、A社は、申立人を債務者として、東京地方裁判所に対して商標登録第6097998号「SMC」、商標登録第6102111号「SMC」、商標登録第6799817号「SMC」に基づき商標権侵害行為差止の仮処分命令申立を行った(甲29の1)。これは、申立人のサービスに使用される公道カートが、台湾の「正鶴工業股フン有限公司」(StandardMotorCorp.)製であるため(甲29の2)、車両本体に「正鶴工業股フン有限公司」のロゴ「SMC」が付されていることを理由に上記登録商標「SMC」の商標権侵害を主張するものである。
しかしながら、商標登録第6102111号「SMC」、商標登録第6799817号「SMC」は、現在より6年も前の平成30(2018)年11月に商標登録されているものの、未だA社の商標「SMC」を使用した商品及びサービスを確認することができない(甲29の2)。すなわち、A社は商標「SMC」についても使用する意思がないにもかかわらず、「正鶴工業股フン有限公司」の商標「SMC」が我が国で登録されていないことを奇貨として、不正の目的で商標登録したものと思料する。そして、「正鶴工業股フン有限公司」製の公道カートを使用してサービスを行う申立人に対し、このような差止請求を行っている。
さらには、A社が商標登録第6799817号「SMC」を出願された令和5年6月5日に、本件商標「MONKEY KART」も出願している。このことからも、本件商標の権利者及びA社は、申立人に対して嫌がらせや損害を与えることを目的に、計画的に本件商標と商標「SMC」の両商標を商標登録出願したものと推認される。またA社は、この仮処分命令申立の上申書において、商標権侵害とは全く論点が異なる道路交通法違反を理由に、仮処分の決定について迅速に審理を進める旨を主張しており、議論に一貫性がなく、単に申立人の事業に損害を加える目的で、仮処分申立を行ったことは明らかである。
(4)まとめ
以上をまとめると、引用商標は、申立人の宣伝・広告活動により、本件商標の出願日よりも前に日本及び外国において周知・著名な商標となっている。一方、本件商標の権利者及びその出願時の代理人であるA社は、申立人及び同様に申立人役務のサービスを行うものに損害を加える目的で、そのサービスを行うことができなくなるように他人の商標を商標登録出願するとともに差止請求を行っている。
したがって、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもつて使用をするもの」であり、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第10号について
(1)本件商標と引用商標との類似性
上記1(1)で述べたとおり、本件商標は引用商標と同一又は類似である。
(2)引用商標が日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標であることについて
上記1(2)で述べたとおり、引用商標は申立人の「公道カートのレンタルサービス」に使用する商標として諸外国において知られ、実際に諸外国から多数の利用者により利用されていることから、周知性を満たすものである。
(3)本件商標の指定役務と引用商標に係る役務の類似性
引用商標に係るサービスは「自動車の貸与」(公道カートのレンタル)であり、類似群コード39L02に該当する。引用商標はその指定役務から鑑みるに少なくとも役務「自動車の貸与」(類似群コード39L02)を包含しており、両商標の役務は同一又は類似する。
(4)したがって、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」であり、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標との類似性
上記1(1)で述べたとおり、本件商標は引用商標と同一又は類似である。
(2)引用商標の周知性・著名性
申立人商標が日本国内及び外国において周知・著名であることは、上記1(2)で述べたとおりである。
(3)そして、上記2の項目でも述べたが、本件商標の指定役務と、申立人等が提供する役務との関連性は非常に高い。よって、本件商標がその指定役務に使用された場合、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるといえる。
(4)したがって、本件商標は、「他人の業務に係る役務と混同を生じるおそれがある商標」であり、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第7号について
本件商標が引用商標と同一又は類似であることは既に述べたとおりである。引用商標が日本国内及び外国において周知・著名な商標であることも既に述べたとおりである。
よって、本件商標の商標権者は、引用商標がその役務につき我が国において商標登録されていないことを奇貨として、先取り的に商標登録出願し、商標権を取得したものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標の商標権者が本件商標を商標登録出願し商標権を取得した行為は、公正な商取引の秩序を乱すおそれがあり、ひいては公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」であり、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
ア 甲第6号証は、申立人のウェブサイトであるところ、当該ウェブサイトには引用商標とともに、申立人の提供する自動車(カート)の貸与サービス(申立人役務)についての説明がされており、また、2023年7月6日を予約日とする申立人役務についての予約画面が表示されている。
イ 2020年4月4日のInstagramには、申立人の店舗とおぼしき建物に、引用商標2を付した看板が掲げられた写真が投稿されている(甲7)。また、2021年10月2日のInstagramには、当該店舗前で、仮装した複数の需要者を撮影した写真が投稿されている(甲8)。
ウ 2022年10月29日及び同年11月5日のInstagramには、引用商標が付された自動車(カート)を使用して、申立人役務が体験されている様子を撮影した写真が投稿されている(甲9の1)。
エ 米軍の準機関紙の日本版「Stars and Stripes JAPAN」(2020年7月10日~16日版)において広告が掲載されているところ、広告内の「Email」及び「Website」の欄に、「monkey-kart」の文字が使用され(甲13の1)、また、2020年7月の広告掲載の見積書を提出している(甲13の2)。
オ 申立人は、申立人役務が多数の国の需要者に利用されている証拠として、2022年9月から2023年5月にかけての、決済サービスの「PayPal」及び「Stripe」の決済履歴情報を提出している(甲14、甲15の1及び2)。
カ その他、旅行サイト「トリップアドバイザー」の口コミにおいて、「Monkey KART Asakusa」の見出しのもと、申立人役務について174件の投稿があり(甲19)、また、海外の旅行サイト「Klook」においても申立人役務に関する口コミが投稿されていることがうかがえる(甲20)。
(2)上記(1)によれば、申立人は、遅くとも2020年4月頃から、店舗の看板やウェブサイトにおいて引用商標2を使用し、申立人役務(自動車(カート)の貸与)やその予約等を行っていたこと、及びInstagramや旅行サイトの口コミ等において、申立人役務が紹介されていたことがうかがえる。
しかしながら、米軍の準機関紙の日本版における広告掲載については、広告内の「Email」及び「Website」のアドレス中に「monkey-kart」の文字を確認できるものの、これが申立人役務についての広告であるかが明らかではない。また、仮にこれが申立人役務に関する広告であるとしても、その広告費用が確認できるのは、2020年7月(計4回分)の1か月分にすぎず、この期間の広告に係る証拠のみによって、引用商標が周知・著名になっていたとはいえない。
また、外国におけるInstagramや旅行サイトの投稿記事(口コミ)については、その口コミ数などの多寡について、比較すべき客観的な証拠も見いだせない。
さらに、決済サービスの「PayPal」及び「Stripe」の決済履歴情報については、2022年9月頃から2023年5月頃にかけて、日本円や他の通貨により何らかの支払いがされたことは漠然とうかがえるものの、申立人役務に関する決裁の情報であることが明らかでなく、仮に申立人役務に関するものであると把握できたとしても、業界におけるシェアも不明であり、その他同種のサービスとの比較などもされていないから、決済履歴情報のみをもって、その周知性を推し量ることはできない。
そうすると、申立人の提出に係る証拠によっては、申立人の引用商標に係る申立人役務の市場シェア、継続的な売上高、広告宣伝の回数や費用等、その周知性を客観的に把握することができないから、引用商標が、どの程度の需要者に知られているかを評価することができない。
したがって、提出された証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性
(1)引用商標の周知性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人役務を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「MONKEY KART」の欧文字を標準文字で表してなるところ、構成中の「MONKEY」の文字は「猿」の意味(ジーニアス英和辞典第6版 株式会社大修館書店)を、そして「KART」の文字は「ゴーカート」の意味(前掲書)をそれぞれ有するとしても、これらを組み合わせた本件商標は、一連で一般の辞書類に掲載されている語ではなく、直ちに特定の意味合いをもって親しまれている語でもないから、一種の造語として把握されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「モンキーカート」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
イ 引用商標
(ア)引用商標1
引用商標1は、「MONKEY-KART」の欧文字よりなるところ、これよりは、「猿」を意味する「MONKEY」の文字と、「ゴーカート」を意味する「KART」の文字を「-」(ハイフン)を介して組み合わせたものであり、一連で一般の辞書類に掲載されている語ではなく、直ちに特定の意味合いをもって親しまれている語でもないから、一種の造語として把握されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「モンキーカート」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
(イ)引用商標2
引用商標2は、別掲2のとおり、デザイン化した猿の図形と一部重なるように「Monkey」の文字をややデザイン化し、該文字を黄色く表してなるところ、構成中の「Monkey」の文字の下部には、やや小さく「KART」の文字を配してなる。
そして、文字部分と図形部分の両者をあわせた構成全体で特定の称呼及び観念を生ずるなど両者を常に一体のものとして把握しなければならない特段の事情を見いだすことはできないことから、文字部分及び図形部分は独立して自他役務の識別標識の機能を果たすものとみるのが相当である。
そうすると、引用商標2は、その文字部分に相応して「モンキーカート」の称呼を生じ、当該文字は、上記(ア)と同様に、一般の辞書等に掲載が認められないものであるから、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標1を比較するに、両者は、ともに特定の観念が生じないものの、両者は「-」の有無の相違のみであるから外観上近似した印象を与え、「モンキーカート」の称呼を生じるから、両者は、その外観及び称呼において相紛れるおそれのある類似の商標である。
また、本件商標と引用商標2とを比較すると、両者は、ともに特定の観念が生じないものの、両者は文字の態様が異なるとしても「MONKEY(Monkey)」及び「KART」の文字を共通にするから、外観上近似した印象を与え、「モンキーカート」の称呼を生じるから、両者は、その外観及び称呼において相紛れるおそれのある類似の商標である。
エ 本件商標の指定役務と申立人役務
本件商標は、第39類の指定役務中に「自動車の貸与」を含むものであり、他方、申立人役務は、公道カートのレンタルサービスであるところ、当該レンタルサービスは、本件商標の「自動車の貸与」と同一又は類似の役務といえる。
(3)小括
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、類似の商標であり、また、申立人役務は、本件商標の指定役務中「自動車の貸与」と同一又は類似の役務であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人役務を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものではない。
そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ないから、同項同号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性
上記2のとおり、本件商標と引用商標は類似する商標であるから、類似性の程度が高い。
また、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人役務を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものではない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。
その他、本件商標について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性
上記2のとおり、本件商標と引用商標は類似の商標であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、申立人役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているとは認められないものであって、かつ、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的証拠も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、上記第1のとおり、「MONKEY KART」の文字を標準文字で表してなるものであって、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、上記3のとおり、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることもない。
その他、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。
そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示機能を希釈化するとか、その名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用するものとはいえず、また、他に本件商標権者が本件商標をその指定役務に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するとはいえず、他に同法第43条2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-900224