商標異議申立
2024-900208
ノベーラ、ノベッラ
- 審判番号
- 2024-900208
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-107714
- 登録番号
- 6829053
- 請求日
- 2024年10月07日
- 審決日
- 2025年08月21日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ビューティグローリー株式会社
- 【異議申立人】オッフィチーナ プロフーモ ファルマチェウティカ ディ サンタ マリーア ノヴェッラ ソチエタ ペル アツィオニ
- 【異議申立人代理人】青木 篤
- 【異議申立人代理人】外川 奈美
- 審判長/審判官
- 審判長 豊瀬 京太郎
- 審判官 清川 恵子
- 審判官 鯉沼 里果
- 分類
- T1651.22 -Y (W03) / T1651.25 -Y (W03) / T1651.261-Y (W03) / T1651.262-Y (W03) / T1651.263-Y (W03) / T1651.271-Y (W03) / T1651.222-Y (W03)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第10号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6829053号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6829053号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6829053号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和5年9月27日に登録出願、第3類「ボディーソープ,シャンプー,皮膚の手入れ用化粧品,香水,メイクアップ用化粧品,化粧品,メイク落とし用化粧品,美顔用パック,口紅,皮膚に潤いを与える化粧品,日焼け止め用化粧品,洗濯用剤」を指定商品として、同6年7月22日に登録査定、同年7月30日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の3件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらの商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。
(1)国際登録第1365123号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:S.M.NOVELLA
国際登録日:2017年(平成29年)6月8日
優先権主張日:2017年(平成29年)5月29日
設定登録日:平成31年1月25日
指定商品及び指定役務:第3類ないし第5類、第30類、第33類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
(2)国際登録第1707695号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
国際登録日:2022年(令和4年)8月11日
設定登録日:令和6年6月14日
指定商品及び指定役務:第3類ないし第5類、第16類、第18類、第21類、第24類、第30類、第33類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
(3)登録第2561449号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:サンタマリアノベーラ
登録出願日:平成3年3月25日
設定登録日:平成5年7月30日
書換登録日:平成16年10月20日
指定商品:第3類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第35号証(枝番号を含む。)を提出した。以下、証拠の表記にあたっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載し、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、欧文字で「Novella」とやや筆記体調の文字で横書きした構成からなり、その構成文字より、「ノベーラ」又は「ノベッラ」の自然称呼が生じ得る(甲1)。
「Novella」とは、イタリア語で「短編物語」を意味するものであるが、我が国における需要者及び取引者の平均的語学力からすれば、特段の観念が生じないとも考えられる。
イ 本件商標と引用商標1との類否
引用商標1は、「S.M.NOVELLA」の欧文字を一段に横書きしてなるものであるが、前半の「S.M.」部分が「ローマ字1文字の後にピリオド」を2回繰り返す構成からなる一方、後半は、「NOVELLA」と欧文字単語が書された構成からなるため、視覚上、欧文字の列記にすぎない前半部分の「S.M.」と一つの単語として何かしらの意味を有すると捉えられる「NOVELLA」は、そもそも本質的に分離しやすい構成となっている。
したがって、外観上、一体的にのみ観察すべき特段の事情は見受けられず、「NOVELLA」部分のみが独立して認識されやすい構成からなっている。また、称呼上、欧文字の後にピリオドを配してなる場合には、一気一連に発音するというよりは、一文字一文字を区切って発音するのが一般的であるところ、前半の「エス」、「エム」のそれぞれの語の後ろにあるピリオドで息継ぎが入ることも相まって、総音数が長い引用商標1について一気一連に発音することはできない。
観念的にも、前半の「S.M.」部分は、欧文字の羅列にすぎないことから、型番ないし何かしらの略称として理解されるため、自他商品識別力が非常に弱い部分であることから、何かしらの意味合いを奏する単語「NOVELLA」部分のみが、需要者に対し、相当程度強い印象を与えるものであり、独立して観念上の類否判断の対象となると考えるのが自然である。
したがって、引用商標1の構成中「NOVELLA」部分のみが、外観・称呼・観念上、独立して商品の出所識別標識として機能する、いわゆる要部として認識されると考えるのが客観的に合理的である。
そうとすると、本件商標と引用商標1は、観念上の対比ができないとしても、外観、称呼において極めて類似するものであるから、相互に類似する商標であるといわざるを得ない。
ウ 本件商標と引用商標2の類否
引用商標2は、中央部分の図形商標及びその下に小さく書した「di」の文字を囲むように、上段に円弧形にやや小さめの欧文字で「Officina Profumo-Farmaceutica」と書し、下段に円弧形に「Santa Maria Novella」と、筆記体を彷彿させる特殊な飾り文字をもって、一際大きな欧文字で書した構成からなるものである。したがって、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないから、必ずしも常に構成部分全体によって称呼、観念されるとは限らない。
特に、下段に一際大きく書された「Santa」、「Maria」、「Novella」の各語が構成上、一際看者の目を惹く一方で、それぞれの語の間に1文字分のスペースが開けられているため、視覚上、各語が分離しやすい構成となっている。
また、当該部分の称呼も「サンタマリアノベーラ」ないし「サンタマリアノヴェッラ」と10音以上の長い称呼となるところ、一気一連に発音できないことから、前半の「サンタマリア」の後で息継ぎが入る結果、後半の「ノベーラ」のみが独立して称呼されることとなる。
観念的にも、下段の前半の「Santa/Maria」部分は、キリスト教におけるイエス・キリストの聖母の名称であることが広く知られ(甲8)、宗教的な意味合いを有する一種の接頭語であるような印象を与える一方、多くの需要者にとって特段の意味合いを奏しない単語「Novella」は、かえって需要者に対し、強い印象を与えるものであり、独立して類否判断の対象となると考えるのが自然である。
また、商標の構成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許されると解することは判例の示すところである(甲7)。
そうとすると、本件商標と引用商標2は、「Novella」の文字構成が同一であり、やや筆記体調で書されたところも共通している。文字書体の僅かな差異こそあれ、外観、称呼においてほぼ同一である。
たとえ本件商標と引用商標2は、観念上の対比ができないとしても、外観及び称呼上、互いに同一ないし類似するものであるから、商標全体として観察した場合において、相互に類似する商標である。
エ 本件商標と引用商標3の類否
引用商標3は、「サンタマリアノベーラ」の片仮名を一段に横書きしてなるものであるが、外観上全体を一体的にのみ観察すべき特段の事情は見受けられない。
また、称呼上「サンタマリアノベーラ」と10音以上の長い称呼となるところ、一気一連に発音できないことから、前半の「サンタマリア」の後で息継ぎが入る結果、後半の「ノベーラ」のみが独立して称呼されることとなる。
観念的にも、前半の「サンタマリア」部分は、キリスト教におけるイエス・キリストの聖母の名称であることが広く知られているから(甲8)、宗教的な意味合いを有する一種の接頭語であるような印象を与える一方、多くの需要者にとって特段の意味合いを奏しない単語「ノベーラ」は、需要者に対し、相当程度強い印象を与えるものであり、我が国の需要者・取引者からすると特段の意味合いを奏しない単語「ノベーラ」は、独立して観念上の類否判断の対象となると考えるのが自然である。
したがって、引用商標3の構成中「ノベーラ」部分のみが、外観・称呼・観念上、独立して要部として認識されると考えるのが客観的に合理的である。
そうとすると、引用商標3の要部から「ノベーラ」と称呼された場合は、本件商標と称呼が同一である。万一、本件商標が「ノベッラ」と発音される場合は、本件商標と引用商標3の称呼は類似する。
したがって、本件商標と引用商標3の要部は、少なくとも称呼上、互いに同一ないし類似するものであるから、商標全体として観察した場合において、相互に類似する商標である。
オ 指定商品の類否
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一、類似である。
カ 取引の実情
申立人は、引用商標をその指定商品に国内外で800年以上にわたって使用してきた結果、後述のとおり、引用商標は、すでに国内外で周知・著名なものとなっている。したがって、出所の混同のおそれは、一層増幅させられるものである。
本件商標と引用商標に係る化粧品やせっけん類の商品は、主に日常的に消費される商品であり、必ずしも商標やブランドについて正確、かつ、詳細な知識を持たない者も多数、これらを購入している。
このような購入者は、商品の購入に際し、製造者名について常に注意深く確認するとは限らず、また、店頭などで短い時間内に商品を購入することも少なくない。
したがって、「化粧品やせっけん類」の分野においては、需要者及び取引者は、商標が付された商品について、商標の特徴的な部分に強く印象付けられ、その印象や過去に購入した際の記憶に基づいて商品を購入するという取引の実情があり、このような取引の実情は、一般的、かつ、恒常的なものである。
引用商標に接した需要者にとっては、引用商標の外観表記及び称呼の長さから、前半部分の「S.M.」や「Santa Maria」を捨象することも取引上ある中で、需要者・取引者は、引用商標の中で強く印象に残る部分「Novella」ないし「ノベーラ」部分にのみ注目し、これを「ノベーラ」ないし「ノヴェッラ」と称呼し、記憶するものである。
したがって、取引実情においても、引用商標の中で一際強く識別力を発揮するのが「Novella」(NOVELLA)ないし「ノベーラ」部分であることは疑いをはさむ余地はなく、これは、上述の取引実情に鑑みれば、本件商標と極めて相紛らわしいものである。
キ 小括
上記のとおり、本件商標と引用商標は、外観・称呼・観念において類似している。また、本件商標は、申立人がイタリア・フィレンツェ発祥の世界最古の薬局として、これまで800年以上にわたり使用してきた引用商標の要部と共通するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)引用商標の国内外における周知・著名性について
申立人によると、「(申立人の)創業は、(中略)1221年に遡ります。」「1612年、修道士フラ・アンジョロ・マルキッシが薬局を一般向けに開業し」「ドミニコ会は、治療用および一時的製品を直接販売する商業活動を正式に開始しました。・・・18世紀には、修道士たちが開発した製品と製法の評判がロシア、インド、中国にまで広まりました。」「400年途切れることなく営業を続けた後、伝統は永続し、更新されました。・・・申立人は、フィレンツェだけでなくイタリアの主要都市で製品を販売しています。フランス、スペイン、イギリス、ロシアにも店があります。中東ではバーレーン、極東では日本、台湾、韓国、香港、タイにあります。アメリカ、パナマ、オーストラリア、そして南アフリカの海を渡っています。」とのことである(甲10)。
1911年には、引用商標を付したカタログが頒布され(甲10)、それは、1991年のカタログにも継承されている(甲11)。
申立人が引用商標を付して製造・販売した商品は、800年にわたるその歴史を通じて、今や全世界的に人気を博し、2000年及び2001年には、ヒラリークリントン氏からの感謝状を受領したり(甲12)、2012年には、イギリスの香りの専門家、分類学者のマイケル・エドワーズ氏によって刊行された「世界の香り」にもほぼ全ページにわたって申立人商標にかかる商品が掲載されている(甲13)。
申立人は、それ以降も、全世界にある多数の店舗(甲14)やオンラインショッピングモールを通じ、引用商標を付した商品の売上げを順調に上げてきている。我が国の具体的販売高を示す資料は、営業秘密にかかるものなので現時点での提出を差し控えるが、世界的販売高については、2023年単年度だけでも「40,971,000ユーロ」(約67億2000万円)に上る(甲15)ことから、世界的にも大人気を博している商品であることは明らかである。
そうとすれば、引用商標は、全世界各国で周知・著名であることは客観的に明白である。
そのような周知・著名な引用商標を付した商品の全世界展開事業を各国商標法の下で保護すべく、申立人はほぼ全世界で引用商標を含む多数の商標を登録し、それを更新してきた(甲16、甲17)。また、第三者によるフリーライドを排除すべく、例えば中国では冒認商標出願に対して異議申立を行った結果、これら出願が拒絶された件が2017年だけでも少なくとも2件ある(甲18、甲19)。
このように申立人は、全世界において引用商標に化体したグッドウィルをブランド資産として保護するとともに、異議申立等を通じて第三者の冒認商標出願の登録を防ぎ、種々の法的措置を通じて、模倣品や追随品を市場から排除することで、世界各国における取引者・需要者に及び得る被害を防止し、公正な取引秩序の維持に努めてきた。
そのような中で、申立人は、もちろん日本でも遅くとも2004年から引用商標を付した商品カタログを頒布しており(甲20)、日本国内でも販売店舗を拡大し、現在、東京、名古屋、大阪等の都市圏を中心に少なくとも17店舗展開している(甲21、甲22)。
また、公式ホームページを通じて、申立人商標を付した商品を長年にわたり、広告、かつ、販売している(甲23)。
この結果、我が国市場において、申立人の商品は有名ブランドとして認定されており、「SANTAMARIA NOVELLA」や引用商標3「サンタマリアノベーラ」をキーワードとして検索した結果、そのトップ30余件程度のうちの殆どが申立人にかかる商標であることからも、引用商標の全国的著名性をうかがい知ることができ、また、これらの証拠から明らかなように、引用商標を付した申立人の商品は、高島屋や三越伊勢丹のオンライン販売のみならず、AMAZONやメルカリ等の大手ショッピングサイトによっても販売されており、いずれのサイトでも高評価を得ている(甲24、甲25)。
そして、引用商標が付された商品は、香水のみならず、化粧品やせっけん類まで幅広く及ぶものである(甲23~甲25)。
この他にも、申立人は百貨店でイベントを行うこともあるが、その際は、「サンタ・マリア・ノヴェッラの人気コレクションが販売」され、その様子も大きく報じられている(甲26)。
2024年11月22日付けの「繊研新聞」によれば、玉川高島屋ショッピングセンタ-の改装に伴い、11月20日に「サンタ・マリア・ノヴェッラ」を導入したことが紹介(甲27)、同新聞同年4月3日付けには、「13世紀に創業した修道院薬局をルーツにする『サンタ・マリア・ノヴェッラ』を輸入販売するサンタ・マリア・ノヴェッラ・ジャパン」が昨年8月に設立され、ヤマノアンドアソシエイツから販売事業を継承したことが紹介(甲28)、2020年1月6日付け同新聞によれば、「阪急うめだ本店は」改装に伴い、「サンタ・マリア・ノヴェッラ」などを新規導入したことが紹介(甲29)、「読売新聞」2013年7月29日付けで「・・・イタリア・フィレンツェの薬局『サンタ・マリア・ノヴェッラ』・・・」が紹介(甲30)、有名雑誌「プレジデント」2016年8月1日付け記事においても、「サンタ・マリア・ノヴェッラの石鹸」と紹介されている(甲31)。
このように、引用商標は、「化粧品やせっけん類」についても我が国内でも周知・著名なものとなっていることは明らかである。
(3)商標法第4条第1項第10号について
上述のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時から今日に至るまで、「化粧品やせっけん類」について、国内外で、申立人の業務にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であり、本件商標はそれに類似する商標であって、引用商標の商品と同一・類似の商品について使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり引用商標は、本件商標と類似し、本件商標の登録出願時から今日に至るまで国内外で周知であり、造語であり、ハウスマークでもある。
申立人は、ソープやボディーケア商品を販売するほか、イタリアンレストランを営むことが紹介されている(甲30)ことより、申立人は引用商標を用いて、多角経営をしている。
本件商標と引用商標の指定商品は、「化粧品・せっけん類」等で共通しているので、商品間の関連性及び商品等の需要者の共通性を十分に満たすものである。
上述のとおり、本件商標は、引用商標と類似性の程度が高いものであり、識別力の中心である「Novella」(NOVELLA)の表記及び「ノベーラ」(ノヴェッラ)の称呼において一致するものであるから、本件商標の使用によって、引用商標との間に出所混同をおこすおそれが高い。
引用商標は、800年の歴史を誇る世界有数のブランド商標として、本件商標の登録出願時及び査定時に国内外で高い著名性を得ていたこと、引用商標の独創性が高いものであること、本件商標と引用商標の需要者・取引者が一致すること、及び需要者の通常の注意力その他の取引実情を考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用した場合は、申立人の業務に係る商品であると連想・想起し、あたかも申立人又はその関係会社が取り扱う商品のように錯覚して、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
最高裁判決が商標法第4条第1項第15号の規定をして、周知表示または著名表示へのただ乗り及び当該表示の希釈化を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるとしているところ(甲32)、その趣旨からしても、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号について
引用商標が、我が国を含む世界各国で周知・著名であることは前述のとおりである。
本件商標は、欧文字にて「Novella」と一段に筆記体調で横書きした構成からなるが、これは申立人が800年以上使用してきた引用商標の要部と共通するものである。
その結果、本件商標は、特に、筆記体を彷彿させる特殊な飾り文字書体で構成されている引用商標2の要部である「Novella」との間に、あたかも何かしらの密接な関連性があるような誤った印象や記憶、連想、申立人が本件商標に対して何かしらのお墨付きを与えたかのような間違った認識を我が国需要者・取引者に与え得るものであるから、本件商標の使用によって、引用商標との間に混同をおこすおそれがあると認められる。
本件商標は、引用商標と同じ指定商品にかかるものであるから、これまで800年間国内外で使用され、いまや多大な信用が化体している引用商標を十分知悉した上で出願されたものとみるのが自然であり、長い歴史を有する引用商標が、著名で、一定の評価を受けていることを認識した上で、自己の商品に利用する意図で出願され、その登録を受けたものと優に認定でき、不正の目的を有していたと認められる。
すなわち、引用商標の著名性を専ら自己のために利用する意図をもって、本件商標の登録がされたものであるといえる。
このように、外国で周知・著名な引用商標と出所の混同を生じ得るような商標の登録を、その周知・著名商標の所有者と全く無関係の者に許すことは、当該国の国民を侮辱する行為であり、国際信義に反するものである。
こうした、国際信義に反する商標は、商標法の予定する秩序に反するものとして、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号について
本件商標の権利者は、「美容・コスメ事業、グッズ事業、貿易事業」を事業内容としているようであるが(甲34)、「novella-japan.jp」なるドメイン名を使用し、「NOVELLA」の欧文字の横に、引用商標2の中央部に配されている図形イメージを彷彿させる王冠形状の図形を使用している(甲34)。
この王冠形状の図形といい、本件商標が筆記体調で書されていることといい、本件商標と引用商標間の「Novella」の文字や指定商品の一致性といい、いずれも偶然の一致とは到底考えられない。ましてや「貿易事業」を事業内容に含む本件商標の権利者であれば、化粧品分野で全世界を席巻し、800年の歳月を経て、国際的に周知・著名となっていた引用商標を知悉していたことは容易に推認できる。そして、その上で、引用商標の名声にフリーライドし、そこで不当な利益を得ようと本件商標を採択したことは想像に難くない。蓋し、わが国需要者・取引者の通常の語学力からすれば、何ら意味を奏しないイタリア語で「短編物語」を意味する「Novella」の語を商標として採択することは「偶々」では説明がつかず、また、本件商標を付した商品を「novella-jp」とあたかも引用商標の権利者の日本代理店であるかのようなイメージを与えるようなドメイン名のサイトで販売している。
こうした、取引事情と本件商標と引用商標との高い類似性を考慮に入れれば、商標法第4条第1項第19号がただ乗りや希釈化、汚染の防止を視野に入れた規定である以上、外国において周知・著名となっている引用商標と類似の商標を申立人に無断で出願し登録を得る行為は、それ自体がただ乗りによる不正の利益を得る目的があったというべきである。
そして、この状況は、本件商標の登録出願時のみならず、登録査定時も該当する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知・著名性について
申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
ア 申立人に係る1911年及び1991年のカタログ一部抜粋(甲10、甲11)には、表紙に「S.M.NOVELLA」の文字が表示され、例えば、訳文には、「サンタ・マリア・ノヴェッラの香水」、「サンタ・マリア・ノヴェッラの水」等と表示されているが、当該カタログの頒布先、数量等については不明である。
イ 「FRAGRANCES OF THE WORLD2012」には、「SANTA MARIA NOVELLA」、「Santa Maria Novella」と表示されている(甲13)。
ウ 申立人の経営店舗に関するインターネット記事(甲14)には、上方中央に引用商標2が表示されているものの、当該記事は外国語表記であり、掲載日は確認できない。
エ 引用商標に係る指定商品の売上高情報(甲15)は、2020年からの我が国を含む各国における売上高と思われるが、商品について引用商標が使用されていることやその市場シェアが確認できないため、その金額については評価できない。
オ 申立人保有に係る全世界登録商標リスト(甲16、甲17)には、引用商標以外の商標についても記載されている。中国における異議申立ての結果、拒絶された例(甲18、甲19)は、本件商標と相違する「SANTA MARIA NOVELLA及び図形」商標についてのものであるから、参考とすることができない。
カ 日本国内における店舗に関するインターネット記事(甲21、甲22)には、「サンタ・マリア・ノヴェッラ伊勢丹新宿メンズ」、「サンタ・マリア・ノヴェッラ渋谷PARCO」等が紹介され、申立人の国内向け公式ホームページ(甲23)は、「サンタ・マリア・ノヴェッラ・ジャパン」が取り扱う香水や石鹸について、商品容器に引用商標2が付され、「サンタ・マリア・ノヴェッラ」、「Santa Maria Novella」と表示されているが、当該ホームページの掲載日は確認できない。
キ インターネット検索「SANTA MARIA NOVELLA」及び「サンタマリアノべーラ」の結果、新聞記事及び雑誌「プレジデント」の記事(甲24~甲31)の内、本件商標の登録出願前のものには、2020年1月6日付け「繊研新聞(甲29)」に、「阪急うめだ本店 春にかけて5~7階改装 インターナショナルブティックスは2層に」の見出しの下、「7階に移設するプレミアムスキンケア・・・『サンタ・マリア・ノヴェッラ』『パンピューリ』など6ブランドを新規導入し・・・」の記載、2013年7月29日付け「大阪夕刊5頁(甲30:申立人は「読売新聞」とするが、確認できない。)」に、「[味の私記]池坊専永さん 意外性に満ち足りるコース」の見出しの下、「・・・800年の歴史を誇るイタリア・フィレンツェの薬局『サンタ・マリア・ノヴェッラ』だ。若い女性を中心に高い支持を集めるソープやボディーケア商品を販売するほか、イタリアンレストランを営む。」の記載、2016年8月1日付け「プレジデント125頁(甲31)」に、「社長の手土産41 セゾン投信・中野晴啓社長『女性の心をつかむハートのマカロン』」の見出しの下、「『サンタ・マリア・ノヴェッラの石鹸』は、食べ物以外の品を贈りたいときに。」の記載がある。
以上アないしキによれば、申立人は、800年の歴史があり、引用商標1を付した1911年及び1991年のカタログがあり、また、我が国において引用商標2を付した香水、石鹸等の販売を行っていることは認められる。
しかしながら、引用商標が付された商品の販売数量・売上高・市場シェア、広告の方法・範囲等の具体的な証拠がないことから、申立人の主張及び同人提出の証拠によっては、引用商標が申立人の業務に係る商品について使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、筆記体風の「Novella」の欧文字を書してなり、その構成文字より、「ノベーラ」の称呼が生じ、当該文字は、イタリア語で「短編物語」を意味するものであるが、我が国で親しまれている語とはいえないから、特定の観念は生じない。
イ 引用商標
引用商標1は、上記2(1)のとおり、「S.M.NOVELLA」の欧文字をまとまりよく横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、冗長ともいえない「エスエムノベーラ」の称呼を生じるというべきであり、当該文字は、辞書等に載録が認められないから、特定の観念は生じない。
引用商標2は、別掲2のとおり、中央部分の図形部分及びその下に小さく書した「di」の文字を囲むように、上段に円弧形にやや小さめの欧文字で「Officina Profumo-Farmaceutica」と書し、下段に円弧形に「Santa Maria Novella」の欧文字を配した構成からなり、各構成部分が視覚的にそれぞれ分離して看取され、それぞれが自他商品及び自他役務の標識として機能するというべきである。そうすると、下段に大きく表された「Santa Maria Novella」の欧文字に相応して、「サンタマリアノベーラ」の称呼を生じるといえ、当該文字は、辞書等に載録が認められないから、特定の観念は生じない。
引用商標3は、上記2(3)のとおり、「サンタマリアノベーラ」の片仮名を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「サンタマリアノベーラ」の一連の称呼を生じるというべきであり、当該文字は、辞書等に載録が認められないから、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とを比較すると、上記ア及びイのとおり、「Novella」の欧文字を筆記体風に横書きした構成態様からなる本件商標に対して、引用商標1は、「S.M.NOVELLA」の欧文字を横書きし、引用商標2は、図形を中央に配し、その周りに欧文字を配してなる構成態様からなり、引用商標3は、「サンタマリアノベーラ」の片仮名を横書きしてなるものであるから、その外観に明らかな差異を有するものであり、外観上相紛れるとはいえない。
また、本件商標から生じる「ノベーラ」の称呼と引用商標1から生じる「エスエムノベーラ」の称呼及び引用商標2及び3から生じる「サンタマリアノベーラ」の称呼とは、明らかに音数において相違し、聴別できるものである。
さらに、本件商標と引用商標は、特定の観念を生じないから、観念において比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れないものであるから、類似する商標とはいえない。
エ 指定商品及び指定役務の類否
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似である。
オ 小括
以上、上記アないしエによれば、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似であるとしても、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く知られているとはいえず、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標とはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く知られているとはいえず、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標とはいえないから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標は、引用商標の要部と共通する旨主張している。
しかしながら、上記(2)イのとおり、引用商標の要部が「NOVELLA」、「Novella」及び「ノベーラ」であるとはいい難く、本件商標と引用商標とは類似する商標とはいえないものであるから、申立人の主張は採用することができない。
そして、本件商標について、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるということはできないし、公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということもできない。
また、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではなく、その指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものでもない。
さらに、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するというような事情があるともいえない。
してみると、本件商標は、引用商標の周知性にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできず、また、本件商標が、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべき事情は見いだせないものであるから、本件商標権者が、本件商標の登録出願をし、登録を受ける行為が「公の秩序や善良の風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者等の間に広く認識されているものとはいえない。また、本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、類似する商標とはいえない。
さらに、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的、その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(7)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-900208