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商標異議申立

2024-900206

ロラパルーザ

審判番号
2024-900206
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2023-091677
登録番号
6828600
請求日
2024年10月04日
審決日
2025年03月31日
公報発行日
2025年06月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】合同会社LOLLAPALOOZA
  • 【異議申立人】ロラパルーザ リミテッド ライアビリティー カンパニー
  • 【異議申立人代理人】青木 篤
  • 【異議申立人代理人】外川 奈美
審判長/審判官
  • 審判長 旦 克昌
  • 審判官 小林 裕子
  • 審判官 大島 康浩
分類
T1651.18 -Y (W41) / T1651.22 -Y (W41) / T1651.271-Y (W41) / T1651.222-Y (W41)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第3条、商標法第1条、商標法第4条第1項第10号、商標法第43条の2第1項第1号、商標法第43条の2
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

登録第6828600号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6828600号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 1 本件商標 本件登録第6828600号商標(以下「本件商標」という。)は、「LOLLAPALOOZA」の欧文字を横書きしてなり、令和5年8月4日に登録出願、第41類「インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),書籍の制作,電子出版物の提供,オンラインによるゲームの提供,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),オンラインによる電子出版物の提供(ダウンロードできないものに限る。),写真の撮影,通訳,翻訳」を指定役務として、同6年7月1日に登録査定され、同年7月29日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立てにおいて、引用する商標は、アメリカ及びアメリカ国外で開催されるロック・フェスティバル「Lollapalooza」及びそれに関連する商品・役務について使用し国内で著名であると主張する「Lollapalooza」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び別掲のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)である。 以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、また、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証(以下「甲○」と表記する場合がある。)を提出した。 (1)引用商標の著名性 本件商標の出願過程(拒絶理由通知)において特許庁が認定したとおり、「Lollapalooza」はアメリカ及びアメリカ国外で開催されるロック・フェスティバルの名称であり、日本国内でも注目度は高く、引用商標は日本国内において著名である。現に、日本の需要者向けに「Lollapalooza」を紹介するインターネット記事が複数存在し(甲3~甲5)、2024年8月1日から8月4日までアメリカで開催された「Lollapalooza 2024」のタイムテーブルは日本でも日本語で公開されている(甲6)。 また、「lollapalooza」の文字列をインターネットで検索すると、その検索結果の大部分がロック・フェスティバル「Lollapalooza」に関連するものであり、サジェストワードにも「lollapalooza 日本人」、「lollapalooza タイムテーブル」、「lollapalooza tシャツ」等、ロック・フェスティバル「Lollapalooza」を示唆するものが並ぶ(甲7)。検索結果の中にはオンラインモール内の「Lollapalooza」の検索結果が表示されたものもあるが、当該オンラインモール内の「lollapalooza」の検索結果も大部分がロック・フェスティバル「Lollapalooza」のグッズやDVD等である(甲8)。これらの事実は、引用商標がロック・フェスティバルの名称及び関連する商品・役務についての商標として日本国内で著名であることを示している。 特許庁が発送した拒絶理由通知書においても「Lollapalooza」に関するインターネット記事や新聞記事等が例示されており(甲2)、引用商標がロック・フェスティバルの名称及び関連する商品・役務についての商標として国内で周知・著名であることは明白である。 また、ロック・フェスティバル「Lollapalooza」は、アメリカ国内のみならず、世界各地にも進出しており、チリ、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、フランス、スウェーデンの他、2023年にはインドでも開催された(甲9~甲12)。 (2)申立人 申立人である「ロラパルーザ リミテッド ライアビリティー カンパニー(英語表記:Lollapalooza,LLC)」は、ロック・フェスティバル主催者である「ライブネーション・エンタイメント社(英語表記:Live Nation Entertainment,Inc.)」(甲2、甲9及び甲14)の関連会社の一つであるとともに(甲15)、ロック・フェスティバル「Lollapalooza」の主催者の一つであり、引用商標に係る権利の正当な保有者である(甲10、甲11及び甲13)。 (3)商標法第3条第1項柱書に該当する具体的な理由 ア 本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、2022年5月に設立され、A氏が業務執行社員を務める合同会社として法人登記された。当初、業務執行社員A氏の自宅住所である東京都足立区を本店としていたが、2023年7月に現本店所在地の千代田区東神田に移転登記されている(甲16)。 イ 申立人の調査によれば、本件商標権者にはホームページ、電話番号、その他同社が営業していることを示すインターネット情報は一切見当たらず、営業実態がない。申立人は本件商標権者に連絡を取るべく、連絡がほしい旨の名刺を同社が所在する千代田区東神田及び代表であるA氏の自宅住所である東京都足立区の郵便受けに投函したが、連絡が一向になく、本件商標権者の関係者との連絡が取れていない。 なお、本件商標権者が所在する建物PRIMEOFFICE東神田は年間契約の無人型レンタルオフィスで、本件商標権者はその一室に契約中であり、その郵便受けには本件商標権者の名称が表示されている(甲17)。同レンタルオフィスには受付スタッフ等の駐在はなく、電話転送や郵便物の回収・転送等のサービスは行っていない。また、出入口が電子カードキーで解錠するタイプのビルで、契約者でないと出入りができない。管理会社の関係者がいうには、取引先との商談等で来訪者が訪ねてきた際は、予定時刻に契約者が外で待っているか、電話等で連絡を受けてから契約者が解錠して招く等の対応が必要とのことで、外部から呼び出すインターホン等は備え付けられていない。申立人は、令和6年10月21日(月)、25日(金)、31日(木)の3日間、昼夜複数回、本店所在地及び代表自宅を訪問したが、いずれの郵便受けにも郵便物やビラが溜まったままの状態となっており、関係者とのコンタクトが取れていない。本店所在地の郵便受けでは、10月21日から31日までの10日間、同じビラが同じ角度で折れ曲がって一番上に投函された状態となっていて、郵便物が全く回収されていない状況であった(甲17)。代表自宅ではインターホンを押して接触を図ったが応答はなかった。本店所在地及び自宅の郵便受けのビラや郵便物が溜まっている状況から(甲17。代表自宅の郵便受けの状況は個人情報に係るため証拠の提出を差し控えるが、必要に応じて提出可能。)、両住所には人の出入りがなく、営業実態がないものと推察される。 ウ 上記のとおり、本件商標権者には営業実態がないものと推察される一方、本件商標出願時において引用商標1及び引用商標2はアメリカ及びアメリカ国外で開催されるロック・フェスティバルの名称として日本国内において周知・著名である。また、本件商標「LOLLAPALOOZA」は、引用商標1及び引用商標2とは大文字・小文字以外に相違点はなく、ほぼ同一といっても差支えがないほどに類似性は極めて高い。さらに、「LOLLAPALOOZA(Lollapalooza)」は「極めつけのもの」、「異常なもの」といった意味を有する英語の俗語であるが(甲18)、英語の俗語である「LOLLAPALOOZA」が日本国内で一般的に広く使用されている事実はない。「LOLLAPALOOZA」という我が国需要者の平均的英語力からすれば特段の意味合いもない欧文字12文字と文字列・並びがほぼ同一の商標を採択するのは極めて不自然であり、偶然の一致と見ることはできない。仮に「LOLLAPALOOZA」の「極めつけのもの」、「異常なもの」といった意味を知っていたとしても、本件商標の指定役務との関連性が薄い同語を当該指定役務について採択したのは、引用商標へのただ乗り(いわゆるフリーライド)の意図が客観的に推認される。 エ 上記事情を総合すると、本件商標は、登録査定時において、本件商標権者が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標にあたらない上、本件商標権者に将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思があったともいい難い。 したがって、本件商標は、その登録査定時において、本件商標権者が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標にも、将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標にもあたらず、本件商標は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に関して行われたものではなく、商標法3条1項柱書に違反するというべきである(知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10019号、平成24年5月31日判決言渡)(甲19)。 (4)商標法第4条第1項第7号に該当する具体的な理由 ア 上述のとおり、本件商標は我が国における営業実態がないにもかかわらず、引用商標へのただ乗り(いわゆるフリーライド)の意図をもって本件商標を出願したことが客観的に推認される。さらに、ロック・フェスティバル「Lollapalooza」の世界的な広がり(甲9~甲12)を勘案すると、本件商標は、将来的には同フェスティバルが日本で開催される可能性を考慮して、真の権利者である申立人に先回りして、不正な目的をもって剽窃的に出願したものであるから、商標登録出願について先願主義を採用し、また、現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても、そのような出願は、健全な法感清に照らし条理上許されないというべきであり、また、商標法の目的(商標法第1条)にも反し、公正な商標秩序を乱すものというべきであるから、出願当時、引用商標及び標章が周知・著名であったか否かにかかわらず、本件商標は「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである(知財高平成21年(行ケ)第10297号、平成22年8月19日判決言渡)(甲20)。本件商標の場合、引用商標は出願時に既に著名であったことを考慮すると、商標法第4条第1項第7号の該当性は一層高いというべきである。 イ さらに、商標法第4条第1項第7号の適用に際し、「一定の価値を有する標章やキャラクターを生み出した原作小説の著作権が存続し、かつその文化的・経済的価値の維持・管理に努力を払ってきた団体が存在する状況の中で、上記著作権管理団体等と関わりのない第三者が最先の商標出願を行った結果、特定の指定商品又は指定役務との関係で当該商標を独占的に利用できるようになり、上記著作権管理団体による利用を排除できる結果となることは、商標登録の更新が容易に認められており、その権利を半永久的に継続することも可能であることなども考慮すると、公正な取引秩序の維持の観点からみても相当とはいい難い」旨判示されている(知財高裁平成23年(行ケ)第10399号、平成24年6月27日判決言渡)。 これを本件についてみると、本件商標はアメリカを代表するロック・フェスティバルであり、日本国内でも著名な引用商標とほぼ同一である。本件商標権者には上述のとおり、営業実態がなく本件商標の使用の意思がないと推察され、日本国内外における「Lollapalooza」の価値の形成・維持に何ら関わってきたものではなく、「音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う音楽の提供,オンラインによる音楽の提供(ダウンロードできないものに限る。)」が除外された本件商標の指定役務との関係においてであっても利用の独占を許すことは相当ではなく、本件商標は公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害する行為といえ、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 ウ また、「LOLLAPALOOZA」という我が国需要者の平均的英語力からすれば特段の意味合いもない欧文字12文字と文字列・並びがほぼ同一の商標を採択するのは極めて不自然であり、偶然の一致と見ることはできないことからするに、本件商標権者は、ロック・フェスティバルの名称「Lollapalooza」の著名であることを知り、意図的に引用商標とほぼ同一の「LOLLAPALOOZA」という欧文字を用い、全体として引用商標に酷似した構成態様に仕上げることにより、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標を連想、想起させ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的で採択・出願し登録を受けたものと認めることができる。そして、本件商標をその指定商品に使用する場合には、引用商標の出所表示機能が希釈化され、申立人に係る著名な引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては被告の業務上の信用を毀損させるおそれがあるということができる(知財高裁平成24年(行ケ)第10454号、平成25年6月27日判決言渡)(甲21)。 エ 上記の事情を総合すると、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第15号に該当する具体的な理由 ア 特許庁は、指定役務「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う音楽の提供,オンラインによる音楽の提供(ダウンロードできないものに限る。)」については、本件商標は周知の引用商標と同一又は類似の商標であって、その同一の役務に使用するものであると認定して、商標法第4条第1項第10号に該当すると判断したが、登録査定となった指定役務との関係において拒絶理由はないと判断した(甲2)。しかしながら、本件商標をその指定役務「インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映.制作又は配給,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),書籍の制作,電子出版物の提供,オンラインによるゲームの提供,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),オンラインによる電子出版物の提供(ダウンロードできないものに限る。),写真の撮影,通訳,翻訳」に使用した場合、引用商標との出所混同が生じる蓋然性は高く、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。以下、詳細を述べる。 イ 音楽イベントの主な役務が「音楽の興行」や「音楽の提供」等であることはいうまでもないが、「ライブ映像の制作」、「ライブ映像の配信」等も音楽イベントでは広く一般的に行われている。特にコロナ禍では人々の密集を避けて音楽を届ける手段としていわゆる「オンライン・ライブ」が広く行われるようになり、その後もより多くの需要者に音楽を届ける手段として定着しつつある(甲22)。また、日本国内でも著名なロック・フェスティバルである「フジロックフェスティバル」や「サマーソニック」でも映像配信サービスが行われている(甲23、甲24)。なお、これらの音楽イベントが配信するのは「映像」であって「音楽・音声」ではない。映像配信サービスは「音楽」も楽しむためのサービスではあるが、ステージ演出、アーティストの表情・動き、オーディエンスの盛り上がりを含めて総合的にライブイベントを楽しむための「映像」を配信するものである。 このような映像配信サービスが一般化している実情においては、本件商標を「インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。)」について使用すると、あたかも著名なロック・フェスティバル「Lollapalooza」に関する映画が上映・制作又は配給され、著名なロック・フェスティバル「Lollapalooza」主催者が映像を制作、または著名なロック・フェスティバル「Lollapalooza」に関連する映像が制作され、著名なロック・フェスティバル「Lollapalooza」に関する映像がオンラインによって提供されるものとの誤認を生じる蓋然性は極めて高いというのが相当である。ロック・フェスティバル「Lollapalooza」の映像作品(媒体に記録されたもの)が実際に流通していることも考慮すると(甲25)、上記のような出所混同は自然に生じ得るものといえる。 ウ ロック・フェスティバルに限らず、大規模イベントでは、紙媒体か電子媒体かを問わず、イベントに関するパンフレットが制作されることも一般的である。現に、上述の「フジロックフェスティバル」や「サマーソニック」でも公式パンフレットが発行され、一般販売されている(甲26、甲27)。 したがって、本件商標を「書籍の制作,電子出版物の提供,オンラインによる電子出版物の提供(ダウンロードできないものに限る。)」について使用すると、上述の配信サービスと同様、あたかも著名なロック・フェスティバル「Lollapalooza」に関する書籍が制作され、著名なロック・フェスティバル「Lollapalooza」に関する電子出版物が提供されるものとの誤認を惹起する蓋然性が高いというべきである。 エ さらに、そのイベントの規模が大きくなればなるほど、そのイベントで提供される役務は多岐にわたることは一般的である。例えば、上述の「フジロックフェスティバル」は直接的には音楽と関連性のない「キャンプ施設の提供」や「飲食物の提供」等のサービスを提供している(甲28~甲30)。ロック・フェスティバル「Lollapalooza」では、その規模及び国際性に鑑みて、「写真の撮影」や「通訳」・「翻訳」に関するサービスが行われても何らの疑問も湧きおこるものではない。さらにイベントの規模が大きくなれば「音楽」以外のイベントを行うことやイベントに関連するゲームを提供することも容易に想定できる。このような実情に鑑みると、本件商標を「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),オンラインによるゲームの提供,写真の撮影,通訳,翻訳」について使用すると、著名なロック・フェスティバル「Lollapalooza」との誤認を惹起するおそれがあるといえる。 オ 商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。けだし、同号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の稀釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨からすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号、平成12年7月11日判決言渡)(甲31)。また、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(同上)。 これを本件についてみるに、本件商標「LOLLAPALOOZA」は、著名なロック・フェスティバルの名称である引用商標とはほぼ同一といえるほどに酷似しており、類似性は極めて高い。また、当該著名商標「Lollapalooza」の音楽イベントに関連する事業内容からみて、本件商標の指定役務との関連性も高く、その需要者において普通に払われる注意力を基準としても、本件商標をその指定役務について使用すると、申立人自身が当該役務について関与しているとの誤認を生じるおそれがあるばかりでなく、様々な業種の者が関与する音楽イベントという申立人に係る事業の性質に鑑みて、当該役務が申立人の親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある商標に該当するというのが妥当であり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第19号に該当する具体的な理由 ア アメリカの国内外で開催されるロック・フェスティバルの名称である引用商標は、上述のとおり、本件商標出願時に日本国内外において周知著名なものであった。また、本件商標は引用商標とは無関係に又は偶然に同一配列の文字を採択、出願したとは到底考えられないもので、「Lollapalooza」の名称をほとんどそのまま流用したものである。そして、最終的には補正により削除されたとはいえ、役務「音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う音楽の提供,オンラインによる音楽の提供(ダウンロードできないものに限る。)」が指定されて出願されたこと、また、上述のとおり本件商標の指定役務とロック・フェスティバル「Lollapalooza」にて提供される役務との関連性が強いことを考慮すると、ロック・フェスティバル「Lollapalooza」の真の権利者である申立人が我が国に参入しようとする場合には、本願商標との出所の混同のおそれが生じ、ひいては我が国への参入が阻止されるという結果を招来するものである。 してみると、本件商標は、外国で周知著名な商標についてこれをほとんどそのまま流用して出願されたものであって、信義則に反する不正の目的をもって使用をするものといわざるを得ない(平成11年8月11日平成7年審判第25958号)。 イ さらに、本件商標は、引用商標と偶然に一致したものとは考え難く、本件商標権者は、本件商標が他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている申立人の業務に係る引用商標と同一若しくは類似の商標であることを承知のうえ、当該商標が未だ登録されていないことを奇貨として外国権利者の国内参入を阻止し、又は国内代理店契約を強制する目的、又は引用商標の顧客吸引力を希釈化若しくは便乗し不当な利益を得る等の目的のもとに出願し、権利を取得したものと推認せざるを得ないところであるから、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標に該当するものといわなければならない(平成12年3月28日平成10年異議第92239号)。 ウ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (7)むすび 以上の次第から、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、同法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19条に違反してなされたものであるから、商標法第43条の2第1項第1号の規定により、その全指定役務について直ちに取り消されなければならない。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。 (ア)「Lollapalooza」は、ライブネーション・エンタテイメント社により、1991年からアメリカ国内外で開催されているロック・フェスティバルの名称である(甲9)。 (イ)ライブネーション・エンタテイメント社は、米国のライブ・エンタテイメント企業であり、ロック・フェスティバル「Lollapalooza」を開催する米国の大手コンサートプロモーション企業を2014年に買収した(甲14)。申立人は、ライブネーション・エンタテイメント社の関連会社であるとともに、ロック・フェスティバル「Lollapalooza」の主催者の一つでもあると主張している。 (ウ)「Lollapalooza」は、例年、アメリカ・シカゴで開催されるほか、2011年以降、アメリカ以外のチリ、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、フランス及びスウェーデン等の国においても開催されている(甲9)。 イ 上記アの事実によれば、「Lollapalooza」は、1991年からアメリカ国内外で開催されているロック・フェスティバルの名称であること、当該ロック・フェスティバルがライブネーション・エンタテイメント社により開催されていること、申立人はライブネーション・エンタテイメント社の関連会社であり、当該ロック・フェスティバルの主催者の一つであることがうかがえる。 しかしながら、当該ロック・フェスティバルの日本国内又は外国におけるチケット等の売上高、市場シェア等の販売実績及び広告宣伝の規模等について、客観的に判断し得る証拠の提出はない。 そうすると、引用商標である「Lollapalooza」の文字が、我が国及び外国の需要者にどの程度認識されているのか把握することができない。 その他、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人ないしライブネーション・エンタテイメント社(以下、これらをまとめて「申立人等」という。)の業務に係る役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く知られていることを認めるに足りる証拠の提出はない。 したがって、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が他人(申立人等)の業務に係る役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間において広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人等)の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間において、広く認識されている商標とはいえない。 なお、申立人は、本件商標は、著名なロック・フェスティバルの名称である引用商標とほぼ同一といえるほど酷似し、その類似性は極めて高く、また、本件商標の一部の指定役務は、当該著名な「Lollapalooza」の音楽イベントに関連する事業内容と関連性も高く、その需要者において普通に払われる注意力を基準としても、本件商標をその指定役務について使用すると、申立人自身が当該役務について関与しているとの誤認を生じるおそれがあるばかりでなく、申立人に係る事業の性質に鑑みて、当該役務が申立人の親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある商標に該当する旨を主張している。 しかしながら、上記(1)のとおり、引用商標は申立人等の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されている商標ではないから、本件商標が引用商標とその構成文字を共通にし、その指定役務に申立人等の業務に係る「音楽の興行」や「音楽の提供」と関係する「ライブ映像の制作」、「ライブ映像の配信」等を含んでいるとしても、本件商標の指定役務との関係において、これに接する需要者が、申立人等との関係を連想、想起して、その役務が申立人等又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように認識するとは考えにくく、引用商標の周知性は認められないのであるから、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないため、申立人の当該主張は採用することができない。 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではなく、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されている商標ではない。 なお、申立人は、本件商標権者は引用商標とは無関係であり、偶然に同一配列の文字を採択、出願したとは考えられず、「Lollapalooza」の名称をほとんどそのまま流用したものであり、さらに、引用商標が未だ登録されていないことを奇貨として外国権利者の国内参入を阻止し、または国内代理店契約を強制する目的、または引用商標の顧客吸引力を希釈化若しくは便乗し不当な利益を得る等の目的のもと出願し、権利を取得したものと推認せざるを得ないことから、本件商標は不正の目的をもって使用する商標に該当するものである旨主張するが、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が我が国及び外国において、引用商標の周知性に便乗しフリーライドを行い、または希釈化させる意図を有するなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠の提出はない。 そうすると、本件商標は、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、あるいは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものとはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、上記第1のとおり、「LOLLAPALOOZA」の欧文字を横書きしてなるものであって、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。 また、本件商標は、上記(2)のとおり、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることもない。 その他、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。 そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示機能を希釈化するとか、その名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用するものとはいえず、また、他に本件商標権者が本件商標をその指定役務に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (5)商標法第3条第1項柱書該当性について 商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(平成24年5月31日 知財高裁 平成24(行ケ)第10019号)。 そうすると、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定役務について現に使用をしていなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ、申立人が提出する全証拠によっても、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。 (6)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するものであり、また、同法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同項に違反してされたものとはいえない。 他に本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-900206

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