商標異議申立
2024-900170
オールオンフォーザイゴマクリニック、オールオンヨンザイゴマクリニック、オールオンフォージゴマクリニック、オールオンフォーザイゴマ、オールオンフォージゴマ、オールオンフォー、オールオンヨン、ザイゴマ、ジゴマ
- 審判番号
- 2024-900170
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-039576
- 登録番号
- 6812421
- 請求日
- 2024年08月19日
- 審決日
- 2025年04月15日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】医療法人香和会おおたわ歯科医院
- 【権利者代理人】弁理士法人みのり特許事務所
- 【異議申立人】ノーベル バイオケア サービシーズ アクチエンゲゼルシャフト
- 【異議申立人代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 勉
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 真鍋 伸行
- 分類
- T1651.255-Y (W44) / T1651.271-Y (W44)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項15号商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6812421号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6812421号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6812421号商標(以下「本件商標」という。)は、「ALL ON 4 ZYGOMA CLINIC」の文字を標準文字により表してなり、令和4年4月6日に登録出願、第44類「歯科医業,歯科医療情報の提供,医業,医療情報の提供,健康診断,調剤,歯の健康管理に関するコンサルティング,医療用機械器具の貸与」を指定役務として同6年5月7日に審決され、同年6月10日に設定登録されたものである。
2 引用商標
商標異議申立人(以下「申立人」という。)が本件商標に係る登録異議申立て理由において引用する商標は、以下の(1)及び(2)の商標であって、いずれも歯科医業に関する分野において我が国の需要者の間に広く認識されていると主張するものである。
(1)国際登録第1036397号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲のとおり、「ALL-ON-4」の欧文字を横書きしてなるものである。
なお、日本国を指定した国際登録である引用商標1は、我が国において、2012(平成24)年1月5日に拒絶すべき旨の査定が確定したものである。
(2)国際登録第1418882号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおり、「ALL-ON-4」の欧文字を横書きしてなるものである。
なお、日本国を指定した国際登録である引用商標2は、我が国において、2020(令和2)年2月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
以下、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という場合がある。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号該当理由について
ア 申立人に係る引用商標の周知性について
申立人は、1985年に創設されたスイスの歯科医療機器メーカーである。
また、インプラント治療の世界的権威である、ポルトガルのDr.マロと申立人が共同で開発した治療コンセプト「ALL-ON-4」(甲4)は画期的な治療コンセプトであり、申立人及びDr.マロは「ALL-ON-4」のコンセプトに基づく治療の普及のため、日本を含む各地で当該治療コンセプトに関する歯科医向けセミナーを2005(平成17)年から実施(甲5、甲6)するとともに、2018(平成30)年以降は我が国の歯科医の協力を得て院内にポスターを掲示し、患者向けリーフレットを配布してきた(甲7~甲10)。Dr.マロ及び申立人が当該治療コンセプトを開発し、普及に努めてきたことは、インプラント治療に携わる歯科医の間では広く認知されており(甲11、甲12)、本件商標の権利者も例外ではない(甲13)。
さらに、2011(平成23)年には、申立人とは独立した関係にある10人の日本の歯科医が、共著によって「ALL-ON-4」の治療を日本人患者に行うためのポイントを解説した書籍を発行しており(甲14)、Dr.マロ及び申立人によって開発された治療コンセプトとして「ALL-ON-4」の治療コンセプトが普及・啓発されるのみならず、日本人患者の特性に合わせて実施される段階に至っている。
申立人は、我が国において、2005(平成17)年から現在に至るまで、「ALL-ON-4」による治療コンセプト及び臨床手技等について普及活動を行うとともに、当該治療コンセプトに適合するインプラント及び周辺部品を販売し、ブランド向上に努めてきた(甲15~甲27)。
甲第15号証は、2007(平成19)年に、Dr.マロの本拠地であるポルトガルのクリニカ・マロにおいて、日本の歯科医を対象に「ALL-ON-4」の治療コンセプトに基づく治療に関する講習を実施した事実を示す。
甲第16号証は、2016(平成28)年に東京及び大阪で我が国の歯科医を対象に「ALL-ON-4」の治療コンセプトに基づく治療に関するセミナーを実施した事実を示す。
甲第17号証は、2018(平成30)年に東京で「ALL-ON-4」による治療が未経験である我が国の歯科医に向けた講習を実施しており、申立人とDr.マロが継続して「ALL-ON-4」の普及を進めていたことを示す。
また、申立人はストローマン(スイス)、ジンヴィ(旧ジンマー・バイオメット・デンタル)(米国)、アストラテック(スウェーデン)と並んでインプラントの世界市場をリードする企業であり、グローバルな事業展開を行っていることで知られており(甲18、甲19)、我が国での「ALL-ON-4」に係るインプラント関連製品のシェアは日本市場のおよそ30%を占めているところ、甲第16号証に示したセミナーの参加者134人のうち、49人がセミナー開催時点で「ALL-ON-4」の治療提供をすでに開始しており(甲20)、おおむね市場シェアと同等数である。
引用商標1を付した申立人のインプラント関連製品について、直近の6年間における我が国での売上高は、2018年:438,367,371円、2019年:426,042,851円、2020年:414,235,575円、2021年:407,735,673円、2022年:391,422,392円、2023年:359,659,624円(甲21)。
甲第22号証ないし甲第27号証は、申立人が2011(平成23)年から現在にかけて日本の歯科医向けに配布している「ALL-ON-4」の治療マニュアル及び治療に使用する機器・インプラント部品の一覧.価格表であり、申立人が継続して「ALL-ON-4」の普及を進めると同時に営業活動を展開してきた事実を示す。
上記のように、申立人はこれまで我が国の歯科医を対象に実施した「ALL-ON-4」に関するセミナー・講習及び営業活動を通して日本国内で「ALL-ON-4」の治療コンセプトの普及を進めてきた。
以上のように、申立人が引用商標を、引用商標1が商標法第3条第1項第3号に該当するとの理由で拒絶された2012(平成24)年1月以降も継続的に広く使用をした結果、本件商標の登録出願時(2022年4月6日)及び登録査定時(2024年5月22日)の両時において、引用商標は、申立人の商品・役務(歯科用・内科用及び外科用の器具,手術前の歯科用インプラントの挿入の目標位置及び予定された深さの決定用並びに歯科用インプラントの分野用の意図された模型における計画ガイドからなる歯科用及び外科用装置(第10類)、医療及び口腔外科に関する役務の提供,口腔外科の分野における専門的助言及び計画(第44類)、外科・医学的及び/又は歯科的移植技術及び/又は歯科修復の分野における知識又は技芸の教授,訓練の提供及び知識又は技芸の教授,外科・医学的及び/又は歯科的移植技術及び/又は歯科修復の分野における、及び/又は人工装具並びに生物学的及び非生物学的材料の埋め込みの分野における教育に関する会議及びセミナーの企画・運営,外科・医学的及び/又は歯科的移植技術及び/又は歯科修復の分野における、及び/又は人工装具並びに生物学的及び非生物学的材料の埋め込みの分野における教育に関する会議及びセミナーの企画・運営及び実施(第41類))に係る商標として、我が国の需要者の間で広く認識されるに至っていたといえる。
今日では歯科医療の分野において、「ALL-ON-4」「オールオンフォー」の語はDr.マロ及び申立人が開発したインプラントシステムを想起させる語である(甲28)。これはDr.マロと申立人が当該治療コンセプトを広く普及させてきたことの結果である。加えて、既述のとおり、Dr.マロ及び申立人が当該治療コンセプトを開発し、普及に努めてきたことを認識する歯科医が存在しており、類似の治療コンセプトの中でも「ALL-ON-4」が最も有名であると評価する歯科医も存在する(甲29)。これらの事情に鑑みれば、「ALL-ON-4」や「オールオンフォー」の語は、引用商標が歯科医療の領域の需要者において、申立人の業務に係る商品又は役務であることを認識することができる商標として広く認識されるに至り、周知性を獲得しているといえる。
イ 本件商標について
本件商標は、標準文字による「ALL ON 4 ZYGOMA CLINIC」である。
本件商標中の「ZYGOMA」の語は、一般的な英語辞書に掲載され「頬骨」を意味する英単語であるところ(甲30)、当該語及び当該語の片仮名表記である「ザイゴマ」が、頬骨にインプラントを埋め込む歯科インプラントの手法である「ザイゴマインプラント」を指す略語として歯科医療の分野において普通に使用されている(甲31、甲32)ことから、「ZYGOMA」の語は本件商標の指定役務との関係ではその役務の内容を表示するにとどまり、識別力を発揮しない語である。
加えて、本件商標中の「CLINIC」の語については、一般に「診療所、クリニック」を指す語であり、当該語も、本件商標の指定役務との関係では識別力を発揮しない語である。なお、「○○CLINIC」又は「○○クリニック」の商標については、「CLINIC」又は「クリニック」部分が識別力を発揮せず捨象され、「○○」の先行商標と類似であるとして拒絶査定となったものが、「よつばクリニック」(商願2018-049223)、「スマイルビューティークリニック」(商願2020-031266)など多数存在する(甲33~甲42)。
一方で、本件商標中「ALL ON 4」の部分は、英単語の「ALL」及び「ON」、数字の4を組み合わせて構成されるが、「ALL ON(数字)」や「ALL ON」は英熟語として辞書に掲載されず、特定の意味合いを想起させないところ、むしろ歯科医療の分野において引用商標「ALL-ON-4」や「オールオンフォー」が申立人の業務を示すものとして周知であることから、引用商標とはハイフンの有無について外観上の差異があるものの、引用商標と同様の一連の造語であると認識され、識別力を発揮する。
したがって、商標の類否判断においては、本件商標の構成中、「ALL ON 4」の部分のみから称呼、観念が生じることを考慮して判断される。
よって、本件商標の称呼は「ALL ON 4」の部分から生じることになり、その文字に相応して「オールオンフォー」となり、当該部分は造語であるが、歯科医療の分野においては「Dr.マロ及び申立人が開発したインプラントシステム」の観念を生じる。
ウ 引用商標について
引用商標は、「ALL-ON-4」の文字をありふれた書体で書してなるものである。
引用商標は、いずれもその構成文字に相応して「オールオンフォー」の称呼が生じ、また、「ALL-ON-4」の語から、歯科医療の分野において「Dr.マロ及び申立人が開発したインプラントシステム」の観念が生じる。
エ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標及び引用商標からは、同一の文字要素「ALL ON 4」「ALL-ON-4」に基づいて、「オールオンフォー」の同一の称呼が生じ、歯科医療の分野において「Dr.マロ及び申立人が開発したインプラントシステム」との共通の観念を生じる。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観において多少の相違があるとしても、少なくとも称呼、及び観念が同一であるので、相互に類似する関係にあるといえる。
オ 本件商標の指定役務と引用商標1の指定役務について
本件商標の指定役務のうち「歯科医業,歯科医療情報の提供,医業,医療情報の提供,健康診断,調剤(第44類)」は、引用商標1の指定役務「医療及び口腔外科に関する役務の提供,口腔外科の分野における専門的助言及び計画(第44類)」と同一又は類似の関係にある。
カ 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標である。また、引用商標は、申立人の商標として我が国の歯科医療の分野において広く一般に知られており、本件商標の指定役務は、引用商標1の指定役務と同一又は類似である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当理由について
ア 申立人にかかる引用商標の周知性について
本件商標の登録出願時(2022年4月6日)及び審決時(合議体注:審決日は「2024年5月7日」である。)において、引用商標は、申立人の商品・役務(歯科用・内科用及び外科用の器具,手術前の歯科用インプラントの挿入の目標位置及び予定された深さの決定用並びに歯科用インプラントの分野用の意図された模型における計画ガイドからなる歯科用及び外科用装置(第10類)、医療及び口腔外科に関する役務の提供,口腔外科の分野における専門的助言及び計画(第44類)、外科・医学的及び/又は歯科的移植技術及び/又は歯科修復の分野における知識又は技芸の教授,訓練の提供及び知識又は技芸の教授,外科・医学的及び/又は歯科的移植技術及び/又は歯科修復の分野における、及び/又は人工装具並びに生物学的及び非生物学的材料の埋め込みの分野における教育に関する会議及びセミナーの企画・運営,外科・医学的及び/又は歯科的移植技術及び/又は歯科修復の分野における、及び/又は人工装具並びに生物学的及び非生物学的材料の埋め込みの分野における教育に関する会議及びセミナーの企画・運営及び実施(第41類))に係る商標として、我が国の需要者の間で広く認識されるに至っていたといえる。
イ 小括
上述のように、引用商標が我が国において、申立人の業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至っていることを考慮し、本件商標の指定役務の取引者・需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、その指定役務について使用した場合、これに接する取引者・需要者をして、申立人の業務に係る役務を連想・想起させ、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 当審の判断
(1) 引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
なお、提出された証拠のうち甲第20号証及び甲第21号証は、外国語で作成されたものであり、翻訳文の提出もないから、具体的な内容を把握することができない。
(ア)「All-on-4」の語は、申立人であるノーベル バイオケア サービシーズ アクチエンゲゼルシャフトとポルトガルのDr.マロが共同で開発した歯科(インプラント)の治療コンセプト(治療方法)を表すものである(甲4、甲11、甲12ほか)。
(イ)申立人は、「All-on-4」に関する歯科向けセミナー及び講習会を、我が国において2005年4月2日、2016年5月22日、同年9月11日、2018年9月8日及び同月9日に開催し(甲5、甲16、甲17)、また、ポルトガルのリスボンにおいて、2005年11月23日~同月28日及び2007年10月10日~10月16日に同様のセミナー及び講習会を開催した(甲6、甲15)。
(ウ)申立人は、「All-on-4」に関する歯科医院内提示用ポスター及び患者向けリーフレットを作成した(甲7~甲10)。
(エ)医歯薬出版株式会社のウェブサイトには、「日本人のための最新All-on-4マニュアル 全顎即時荷重インプラント治療を成功に導くために」の表題の書籍が、2011年9月に発行されたこと、その内容紹介には、「無歯顎症例に対する従来の治療方法の問題点を劇的に改善する術式としてPaulo Maloにより開発されたAll-on-4コンセプトは、・・・即時荷重の少数インプラント体で支持される・・術式です。」の記載がある(甲14)。
(オ)歯科クリニックのウェブサイトには、世界4大インプラントメーカーとして、申立人に関する記事があり、また、インプラントにおいて申立人の世界シェアが18%でNo2の記載がある(甲18、甲19)。
(カ)申立人は、遅くとも2015年から2024年にかけて、「オール・オン4」又は「All-on-4」の表題のマニュアル(&カタログ)を作成した(甲22~甲27)。
イ 判断
上記アによれば、「All-on-4」は、申立人とDr.マロが共同で開発した歯科(インプラント)の治療方法であることはうかがえるものの、申立人が開催した「All-on-4」に関する講習会及びセミナーの回数は、多いものとはいえず、また、参加人数は明らかにされていない。そして、申立人が作成した歯科医院内掲示用ポスター、患者向けリーフレット及び治療マニュアルについても、それらの掲示・頒布方法、掲示・頒布場所・地域及び掲示・頒布枚数等は不明である。
また、申立人がインプラントメーカーとして世界2位のシェア(約18%)の企業であることが認められるものの、そのインプラント関連製品の世界シェアがただちに「All-on-4」に関するインプラント製品やインプラント治療のシェアを表すものとはいうことはできない。申立人は、我が国での「All-on-4」に係るインプラント関連製品のシェアは30%を占めていると主張しているが、これを裏付ける具体的で客観的な証拠の提出はない。
そして、本件商標の指定役務は、「歯科医業,歯科医療情報の提供,医業,医療情報の提供,健康診断,調剤,歯の健康管理に関するコンサルティング,医療用機械器具の貸与」であって、その需要者は医療を提供される一般の消費者も含むといえるところ、「All-on-4」の文字が、需要者の間において広く認識されていることを認めるに足る、例えば、申立人による我が国における歯科医業に関する分野での市場シェア、売上等の事業規模並びに広告宣伝の方法、期間及び広告宣伝費等の広告宣伝規模が分かる客観的な証拠は見いだせない。
したがって、「All-on-4」の文字からなる引用商標は、本件商標の登録出願時及び審決時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品の及び役務を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されている商標ではない。
イ 本件商標と引用商標の類否
(ア) 本件商標
本件商標は、「ALL ON 4 ZYGOMA CLINIC」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、各語の間に1文字分程度の間隔を有するものの、同じ書体及び大きさで、一列にまとまりよく表されてなるため、視覚上分離した印象や、特定の文字部分のみが強い印象を与えるものではなく、構成文字全体で一連一体の語を表してなると看取できるものである。
そして、本件商標の構成中「ALL」の文字部分は「全体、全部」の意味を、「ON」の文字部分は「…の上に」の意味を、「ZYGOMA」の文字部分は「(側頭骨の)頬骨突起」の意味を、「CLINIC」の文字部分は「外来患者診療所」の意味を有する語(いずれも「ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館)であるところ、本件商標の指定役務に係る医療業界において、「CLINIC」の文字は、「○○CLINIC」のように、前の語と組み合わされて使用されることにより、特定のクリニック(診療所)の名称を示すものとして認識、把握されることが多いというのが相当である。
してみると、「ALL ON 4 ZYGOMA CLINIC」は、構成文字全体として診療所の名称を表したものと理解されるといえ、また、これより生じる「オールオンフォーザイゴマクリニック」の称呼も、やや冗長であるものの、無理なく一連に称呼し得るものであることからすると、まとまりよく一体的に表された本件商標の構成においては、本件商標に接する需要者は、本件商標を一体不可分のものと認識、理解するとみるのが相当であるから、本件商標からは、その構成文字に相応して「オールオンフォーザイゴマクリニック」の称呼を生じ、「オールオンフォーザイゴマクリニックという特定のクリニックの名称」との観念が生じるものである。
(イ)引用商標
引用商標は、上記2のとおり「All-on-4」の文字よりなるところ、その構成中「All」の文字部分は「全体、全部」の意味を、「on」の文字部分は「…の上に」の意味(前掲参照)を有するものの、これらと「4」の文字からなる「All-on-4」の語は、辞書等に掲載されている成語ではなく、直ちに特定の意味合いを想起させるものではない。そうすると、引用商標からは、その構成文字に相応し、「オールオンフォー」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
(ウ) 本件商標と引用商標の比較
上記(ア)及び(イ)の構成からなる本件商標と引用商標とを比較してみれば、外観においては、「ZYGOMA CLINIC」の文字の有無の差異を有するから、明らかに区別できるものであり、称呼においては、「ザイゴマクリニック」の音の有無の差異及び音数が異なるため、明確に聴別できるものであって、観念においては、本件商標からは「オールオンフォーザイゴマクリニックという特定のクリニックの名称」の観念が生じるのに対し、引用商標からは特定の観念は生じないから、観念において相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
ウ 小括
以上のとおり、引用商標は、我が国における需要者の間に広く認識されている商標ではなく、また、本件商標とは類似する商標ではないから、その他の要件について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く知られているとはいえないものであり、また、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標は、これをその指定役務について使用したとしても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、当該役務が申立人又は同人らと経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生じるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれの規定にも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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