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商標異議申立

2024-900169

シーシャユトリ、シシャユトリ、シーシャ、シシャ、ユトリ

審判番号
2024-900169
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2023-116753
登録番号
6821684
請求日
2024年08月19日
審決日
2025年04月03日
公報発行日
2025年05月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】中 村 鴻 志
  • 【異議申立人】take your time 株式会社
  • 【異議申立人代理人】内田 浩太郎
  • 【異議申立人代理人】渡邉 聖人
  • 【異議申立人】山口 真
  • 【異議申立人代理人】内田 浩太郎
  • 【異議申立人代理人】渡邉 聖人
審判長/審判官
  • 審判長 大島 康浩
  • 審判官 真鍋 伸行
  • 審判官 大島 勉
分類
T1651.22 -Y (W43)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項7号商標法43条の2商標法43条の3第4項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号、商標法第4条、商標法第43条の2第1号、商標法第1条
データ出所
審決公報(XML)

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登録第6821684号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6821684号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6821684号商標(以下「本件商標」という。)は、「shisha yutori」の欧文字を標準文字により表してなり、令和5年10月6日に登録出願、第43類「水たばこの喫煙施設の提供,飲食物の提供」を指定役務として、同6年5月22日に登録査定され、同年7月8日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人であるT株式会社及びその代表取締役Y氏(以下、T株式会社を「申立人T」と、Y氏を「申立人Y」といい、「申立人T」と「申立人Y」をまとめていうときは「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するとして引用する商標は、「シーシャyutori」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)であり、申立人が水たばこ店(水たばこの喫煙施設の提供及び飲食物の提供を業とする店舗)に使用しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標は、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。 1 当事者 (1)申立人Yは、令和3年3月頃、「シーシャyutori」の名称で水たばこ店(水たばこの喫煙施設の提供及び飲食物の提供を業とする店舗)を開業し、現在、申立人Tの代表取締役を務める者である。 (2)申立人Tは、申立人Yが、上記水たばこ店の事業につき法人化するために令和5年11月17日に設立した株式会社であり、現在、「シーシャyutori」の名称で、荻窪店、赤羽店及び目黒店を経営している。 (3)本件商標権者は、申立人Yと共に、上記水たばこ店の開業に携わり、出資及び事業の一部を担った者である。 2 本件の経緯 (1)水たばこ店の開業から法人化までの経緯 申立人Yは、令和2年8月頃、本件商標権者と水たばこ店の事業(以下「本件事業」という。)を行うことを合意し、令和3年3月頃、「シーシャyutori」の名称で荻窪店を開業した。開業にあたり、申立人Yが約400万円、本件商標権者が約50万円の出資を行い、事業自体は、申立人Yの個人事業として行うこととした(甲1の1及び甲1の2のとおり、申立人Yの個人事業主開業届には、屋号として、「荻窪シーシャyutori」及び「赤羽シーシャyutori」とされている。)。また、店舗のテナントの契約等の事業の遂行に当たって必要となる契約関係、開業に必要な官公庁の許認可、確定申告等は、全て申立人Yの名義及び計算で行っていた。 申立人Yは、令和4年8月1日、赤羽店を開業し、令和5年11月17日、本件事業を法人化するために申立人Tを設立し、同年12月1日に目黒店を開業した。申立人Yは、申立人Tの設立及び目黒店の開業にあたり、令和5年10月30日に城北信用金庫から300万円、同年9月15日に日本政策金融公庫から950万円の融資を受け、申立人Tに出資を行い、発行済株式300株の全てを保有している(甲1~甲4、甲11)。目黒店においても、営業者氏名「申立人Y」として、「施設の名称、屋号又は商号」につき「目黒シーシャyutori」として営業許可を受けている。(甲1の3)。 なお、本件商標権者は、申立人Yによる申立人Tの設立や申立人Yの代表取締役への就任について異を唱えることはなかった。 (2)本件事業における申立人Yと本件商標権者の業務分担 申立人Yは、売上管理、原価計算、取引先との対応、キャンペーン考案・SNS対応等の営業活動、店舗スタッフの勤務調整、店舗出勤等、経営面から現場の対応まで多岐にわたる業務を担当していた。 一方、本件商標権者は、主に荻窪店の店舗出勤、店舗スタッフのシフト調整、給与計算、店舗スタッフのケア等の業務を担っていた。開業当初、本件商標権者は、申立人Yに比して出資の負担を行っていない代わりに集客に注力し売上に貢献することを約束していたが、事業全体の売上に占める本件商標権者の集客による売上比率は、令和3年が20%程度、令和4年及び令和5年が8%程度にとどまるものであった。 また、下記(3)記載の本件紛争が生じて以降、本件商標権者の業務負担は逓減していったことに加え、本件商標権者は、令和6年4月13日、荻窪店と同じ商圏内にあるエリアに単独で水たばこ店である「シーシャカフェ&バー LaVieEnLoose西荻窪」を開業しており、同店の開業以降、荻窪店の売上の低下を招くに至っている(甲5)。 (3)本件商標権者による本件事業からの離脱の申出 令和4年8月頃、本件商標権者の売上比率の低下や店舗の運営方針についての意見の相違が生じたことから、本件商標権者は、申立人Yに対して、本件商標権者が本件事業から離脱して、申立人Yが単独で本件事業を行うことを前提として、申立人Yと本件商標権者との間で事業価値(または企業価値)の分配を要求した。申立人Y及び本件商標権者は、調整役の行政書士や他の弁護士を介して協議を開始したが、その調整に難航したため、申立人は、令和6年6月21日、本件商標権者を相手方として、申立人の本件商標権者に対する事業価値の分配に関する債務額の確定のために、東京簡易裁判所に対して調停を申し立てた(甲6)。なお、第1回調停期日は、同年8月9日に指定された。 (4)本件商標権者によって商標登録出願がされていたこと 申立人Yは、申立人Tの水たばこ事業をさらに発展させるため、従前から店名として使用している「シーシャyutori」及び「yutori」の商標についても商標登録を行う必要があると考え、令和6年7月4日頃、特許情報プラットフォームにおいて類似商標がないかの確認をしていたところ、本件商標権者が本件商標の商標登録出願(以下「本件出願」という。)をしていたことに気づいた。 3 本件商標は申立人が使用している商標と同一であること (1)申立人が使用している商標について 上記2(1)のとおり、申立人Yは、令和3年3月頃から、「荻窪シーシャyutori」の名称で水たばこ店(水たばこの喫煙施設の提供及び飲食物の提供を業とする店舗)を開業し、その後、令和4年8月には「赤羽シーシャyutori」を、令和5年12月には「目黒シーシャyutori」を開業し、申立人Tを設立している。 申立人が営業している上記各店舗の玄関ないし立て看板等には、「シーシャyutori」及び「yutori」の商標(以下「申立人商標」という。)が記載されており(甲7)、また、SNSにおいても、これら商標が用いられている(甲8)。なお、申立人Yは、本件事業の名称を「シーシャyutori」とするに際して、知人にロゴの作成も依頼している(甲9)。 (2)本件商標について 本件商標は、「shisha yutori」の文字からなる商標であり、第43類「水たばこの喫煙施設の提供、飲食物の提供」を指定役務として、令和5年10月6日登録出願、同6年7月8日設定登録されたものである。本件商標の称呼は、「シーシャユトリ」、「シシャユトリ」、「シーシャ」、「シシャ」、「ユトリ」とされている。 本件商標は、その記載、称呼及び役務内容からして、申立人商標と全く同一である。 4 本件出願は、申立人に無断で行われたこと 上記1及び2のとおり、本件商標権者は、申立人の本件事業の一部を担っていたにすぎず、自ら事業を行っていたものではないし、本件商標について何らの権利を有していたものではなく、単に、申立人からその使用を許諾されていたにすぎない。申立人は、本件商標権者に対して、本件出願をする権限を与えていたものでもない。 また、上記2のとおり、申立人Yは、自らの調査で、本件商標の存在に気付いたのであり、本件商標権者は、申立人に対して、申立人が本申立てを行った現時点まで、本件商標の商標登録をしていることを秘匿し続けている。 本件商標権者は、申立人に対して、全くの無断で、本件出願をしたものである。 5 本件商標権者が本件出願をし、商標権を取得した行為は、申立人から不当な利益を得るために行われたものであること 上記2(3)とおり、本件商標権者は、令和4年8月頃、申立人Yに対し、本件事業から離脱することを申し出て、本件事業の分配金の要求をし、本件商標権者及び申立人は、同分配金についての協議を続けていたが、金額について折り合わず、同協議は難航していた。そのような中で、本件商標権者は、令和5年10月6日、申立人に秘匿して、本件出願をした。 本件商標権者は、本件事業から離脱する意思を表明していたのであるから、今後、自ら本件商標を使用して水たばこ事業を営むつもりもなかったことは明らかである(上記2(2)のとおり、本件商標権者は、西荻窪に同種店舗を開業したが、本件商標を用いていない。このことは、本件商標権者としても、本件商標が申立人の事業のものであって自らが自由に用いることができないことを認識していたことの証左であるし、自ら本件商標を使用するつもりのないことの証左でもある。)。 また、本件商標権者が本件出願をした時期は、本件商標権者と申立人との間での分配金の協議が難航していた時期であること、本件商標権者が申立人に秘匿して本件出願をし、現時点まで秘匿していることに照らせば、本件商標権者は、もっぱら、申立人が本件商標の商標登録をしていなかったことを奇貨として、商標権を取得した事実を利用して申立人との交渉に係る分配金の額を不当に吊り上げる目的を有していたか、又は事業価値の分配後、申立人に対して商標権侵害を主張して金銭等の不当な要求をする目的を有していたといえる。 以上からすれば、本件商標権者が本件出願をし、商標権を取得した行為は、申立人から不当な利益を得るための剽窃的な行為であると認められる。 6 本件出願は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」(商標法第4条第1項第7号)のあるものであること 「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合にもその該当性が認められる。 商標法は先願主義ではあるものの、「商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発展に寄与する」こと(商標法第1条)を目的としているところ、当該商標を用いる事業者に権利を与えることが法の本来的役割である。このような法の本来的役割に照らすと、本件商標権者が自ら当該商標を用いて事業を行う意思も権限もない中で、当該商標が登録されていないことを奇貨として、当該商標を用いている事業者から不当な利益を得ることを目的として当該商標の商標権を取得することは、出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるといえ、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反して到底容認し得ない場合に当たるといえるから、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、その登録を認めてはならないというべきである。 上記のとおり、本件商標は、申立人が使用していた商標であって、本件商標権者は申立人の事業の一部を担っていたにすぎず、出願の権限を与えられたものでもないこと、本件商標権者も、本件商標は申立人の事業のもので、自らが自由に使用できるものではないと認識していたこと、本件商標権者は、自ら本件商標を使用するつもりがないこと、本件商標権者は、申立人から不当な利益を得る目的で、申立人に無断で本件商標の商標権を取得したことが認められる。 このような本件の事実関係に照らせば、本件商標権者が本件商標の商標権を取得することは、出願の経緯の社会的相当性を欠くものがあるといえ、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反して到底容認し得ない場合に当たるといえる。 よって、本件商標は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に当たる。 7 むすび したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し商標登録を受けることができないものであるから、本件商標登録は、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第7号該当性について 商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法4条1項7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし、同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(平成14年(行ケ)第616号、東京高等裁判所平成15年5月8日判決)。 そこで、本件について検討すると、申立人は、本件商標権者は、申立人の本件事業の一部を担っていたにすぎず、本件商標について何らの権利を有していたものではなく、単に、申立人からその使用を許諾されていたにすぎないし、申立人は、本件商標権者に対して、本件出願をする権限を与えていたものでもない旨主張する。 また、申立人は、本件商標権者は、令和4年8月頃、申立人Yに対し、本件事業から離脱することを申し出て、本件事業の分配金の要求をし、本件商標権者及び申立人は、同分配金についての協議を続けていたが、本件商標権者は、本件事業から離脱する意思を表明していたのであるから、今後、自ら本件商標を使用して水たばこ事業を営むつもりもなかったことは明らかである旨主張する。 さらに、申立人は、本件商標権者は、もっぱら、申立人が本件商標の商標登録をしていなかったことを奇貨として、商標権を取得した事実を利用して申立人との交渉に係る分配金の額を不当に吊り上げる目的を有していたか、又は事業価値の分配後、申立人に対して商標権侵害を主張して金銭等の不当な要求をする目的を有していたといえるから、本件商標権者が本件出願をし、商標権を取得した行為は、申立人から不当な利益を得るための剽窃的な行為であると認められる旨主張している。 しかしながら、申立人の提出に係る甲各号証からは、例えば、具体的に、本件商標権者が申立人に対し、本件商標を金銭的な交渉材料に利用して不当な利益を得ようとしていたとか、申立人の事業の遂行を妨害しているなど、申立人の上記主張を裏付ける客観的な証拠は見いだせないうえ、商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者の私的な問題として解決すべきであるところ、これまで申立人自ら登録出願しなかった特別な事情を見いだすことはできない。また、これまでに、本件商標権者に対し、登録出願をしないことや、出願をした場合に申立人等へ帰属させる旨の契約や交渉などを講じた事実を見いだすことはできず、かつ、そのような手段を講じることができなかった特別な事情も見いだすことができないことからすると、本件商標について、商標法の先願主義を上回るような、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあったということはできず、あくまで、当事者間の私的な問題として解決すべきであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできない。 そうすると、本件商標を、その指定役務について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく、本件商標の構成自体が、非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様でもない。 その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠はない。 してみれば、本件商標の出願の経緯に社会的相当性を欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に当たるとはいえないから、本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」がある商標に該当するということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 2 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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