商標異議申立
2024-900128
イイエスピイサンジューニ、イイエスピイサンニ、イイエスピイ
- 審判番号
- 2024-900128
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-027947
- 登録番号
- 6794664
- 請求日
- 2024年06月12日
- 審決日
- 2025年05月21日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】張 天文
- 【異議申立人】エスプレッシフ システムズ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
- 【異議申立人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T1651.22 -Z (W09) / T1651.271-Z (W09) / T1651.222-Z (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の3第2項商標法43条の21号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第10号、商標法第43条の2第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6794664号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6794664号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6794664号商標(以下「本件商標」という。)は、「ESP32」の文字を標準文字で表してなり、令和5年3月16日に登録出願、第9類「電気用制御盤,電線用接続具,遠隔制御装置,抵抗器,電気通信機械器具,半導体光増幅器,電子式電源装置,電気的遠隔制御装置,整流用電気装置,制御盤(電気用のもの),ビデオスクリーン,電気アダプター,ヒューズ線,音声・映像受信機,電気通信機械器具の部品及び付属品」を指定商品として、同6年3月15日に登録査定、同年4月10日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立てにおいて、引用する商標は、「ESP32」の文字からなるもの(以下「引用商標」という。)であり、申立人が同人の業務に係る「マイクロコントローラ等の電子部品」に使用して、中国を含む世界各国及び我が国の取引者、需要者の間で周知であるとするものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第47号証を提出した(以下、括弧内に証拠番号を記載する時には、甲○のように記載する。)。
1 引用商標について
(1)申立人であるエスプレッシフ システムズ (シャンハイ) カンパニー リミテッド(英語表記:Espressif Systems(Shanghai)Co.,Ltd.)は、中国の上海に本拠地を置く電子機器メーカーで、ESP8266やESP32などのマイクロコントローラーチップとボード等を製造する会社として知られている。申立人は、2008年に設立され、2022年においては収入が1,271,127,201人民元(約250億円)、粗利益が508,251,068人民元(約100億円)にも上り、現在では中国のみならず、チェコ共和国、インド、シンガポール、ブラジルにオフィスを持ち、世界中のエンジニア・科学者により構成されるグローバル企業となっている。
なお、申立人は、2019年7月には上海証券取引所の科創板(STAR市場)において、新規株式公開(IPO)を行った(甲1~甲3)。
(2)引用商標「ESP32」は、申立人が同人の主力商品のマイクロコントローラ等の電子部品のシリーズ名称として採用した造語である。「ESP32」シリーズの商品は、2016年9月から販売がスタートし、申立人の販売ウェブサイトに限らず、中国国内のみならず我が国を含む世界中で高い知名度を誇るECサイトである「Taobao」、「Alibaba」、「京東」等、様々なプラットフォームにおいても購入することが可能である(甲4~甲7)。
(3)申立人は、「ESP32」シリーズの知名度を高めるべく精力的なプロモーション活動を展開しており、世界各地の展示会等にも積極的に出展しているところ、近年出展した展示会は、例えば甲第8号証ないし甲第12号証のとおりである。
(4)申立人は、「ESP32」商標の重要性に鑑み、世界各国において「ESP32」商標を登録している(甲13~甲23)。
(5)申立人の「ESP32」シリーズ商品は、我が国の取引者・需要者にも広く認識されているといえ、例えば、月間600万人を超えるユーザーが訪問するエンジニア向けの情報サイトQiitaにおいて、「ESP32」のタグが付与された投稿記事の数は1,476にも上り、「ESP32」シリーズ商品への関心度の高さがうかがわれる(甲24)。
また、人工知能等の技術について投稿等を行っているサイト「AGIRobots」においては、その投稿記事において「ESP-WROOM-32はESP32と呼ばれるマイコンを搭載したワイヤレスモジュールです。ESP32は上海に拠点を置くEspressif Systemsが販売するWiFiとBluetoothを搭載したMCU(Micro Controller Unit)で、・・・」と紹介されている(甲25)。
インターネット検索エンジンGOOGLEにて「ESP32」と入力して検索し、検索上位30件程度までを確認したところ、全て申立人の「ESP32」に関するものであった(甲26)。
さらに、インターネット上のフリー百科事典のウィキペディア日本語版にも、申立人の「ESP32」シリーズを紹介する記事が掲載されており(甲27)、その注目度の高さから、日経クロステック等のメディアでも取り上げられ(甲28~甲31)、また、例えばAmazonなどのECサイト等で、我が国においても容易に購入することが可能である(甲32)。
(6)以上述べたとおり、申立人の「ESP32」は、2016年9月の販売開始以来、7年以上にわたって中国を含む世界各国で使用された結果、マイクロコントローラ等の電子部品の分野において世界中で高い周知度を獲得しており、中国はもとより、世界各国の需要者の間で広く認識されている商標であるといえる。
また、申立人の「ESP32」は、我が国においても容易に商品を購入することができ、数多くのウェブサイトで取り上げられ、我が国の取引者・需要者の間においても広く知られているということができる。
2 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標は共に「ESP32」の文字からなり、両者は実質的に同一といえる。
3 商標法第4条第1項第19号について
商標権者は、申立人と全く関係のない第三者であるところ、申立人が考案した造語である「ESP32」と全く同一の商標を偶然に自ら考案したとは到底考えられない。
そして、引用商標の中国を含む世界各国及び我が国における高い周知性を併せて考慮すれば、引用商標について我が国において商標登録されていないことを奇貨として、高額で本件商標を買い取らせたりする等の不正な目的をもって、先取り的に登録出願したものと推認される。
なお、商標権者について申立人が独自に調査したところ、2020年から2024年現在までの短期間に、単独名義で72件(共願も含めると74件)もの商標登録出願を行っており(甲33)、それら全てが第三者のハウスマークや商品ブランドに係る商標であることを確認した。その例については、甲第34号証ないし甲第45号証のとおりであり、権利者より刊行物等提出書による情報提供や、登録異議の申立て又は無効審判が請求されている事実が認められる。
以上に鑑みれば、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであることから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、我が国でも広く知られた申立人の「ESP32」と実質的に同一であって、マイクロコントローラ等の電子部品と類似する「集積回路」等に使用されるものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
5 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、日本でも広く知られた申立人の「ESP32」と実質的に同一であって、マイクロコントローラ等の電子部品と非類似の商品に使用された場合であっても、商品の出所につき需要者に誤認混同を生じさせるおそれがあることから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
6 商標法第4条第1項第7号について
上記3において詳述した事実に鑑みれば、本件商標は、商標権者が他人の商標を剽窃的に登録出願したことが明らかであり、登録出願の経緯に社会的妥当性を欠き、登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものであることから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審における取消理由通知
当審において、商標権者に対して、「本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、仮に同号に該当しない場合は、同項第19号に該当し、また、同項第15号及び同項第19号に該当しない場合には、同項第7号に該当するものであるから、本件商標の登録は、同項の規定に違反してされたものである」旨の取消理由を令和7年3月13日付けで通知した。
第5 商標権者の意見
上記第4の取消理由通知に対し、商標権者は、何ら意見を述べていない。
第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号該当性について
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張並びに職権による調査によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、2008年に設立された中国の上海に本拠地を置く電子機器メーカーで、2022年における収入が1,271,127,201人民元(約250億円)、粗利益が508,251,068人民元(約100億円)である(甲1~甲3)。
(イ)申立人は、マイクロコントローラ等の電子部品のシリーズ名称として「ESP32」の文字を使用し(以下、「ESP32」の文字を使用した申立人に係るマイクロコントローラ等の電子部品を「申立人商品」という場合がある。)、2016年9月頃に発表し、中国国内のECサイト「Taobao」、「Alibaba」、「京東」等で販売している(甲4~甲7)。
(ウ)申立人は、2021年6月ないし2023年6月の間に、中国及びドイツで開催された国際的な展示会等に「ESP32」の文字を使用した申立人商品を出展し、当該商品を紹介していることがうかがわれる(甲8~甲12)。
(エ)申立人商品は、我が国において、ECサイト「Amazon」を通じて販売されている(甲32)。
(オ)申立人は、「ESP32」の文字について、本件商標の登録出願前にイギリス、カナダ、欧州連合、ドイツ、インド、韓国、メキシコ、ロシア、シンガポール及び米国において商標登録を有している(甲13~甲23)。
(カ)「Qiita」のウェブサイトには、2017年12月以降、「ESP32」に関する記事が複数回投稿されている(甲24)。
(キ)「AGIRobots」のウェブサイトには、「ESP32入門[1]~ESP-WROOM-32(ESP32)とは? Arduinoとの比較も!~」の見出しの下、2022年8月9日付けで「ESP-WROOM-32とは」の項目に「ESP-WROOM-32はESP32と呼ばれるマイコンを搭載したワイヤレスモジュールです。ESP32は上海に拠点を置くEspressif Systemsが販売するWiFiとBluetoothを搭載したMCU(Micro Controller Unit)で、・・・さまざまなモジュールを内蔵した高度な統一性を意識した設計などの特徴があります。」の記載がある(甲25)。
(ク)「ウィキペディア」のウェブサイトには、「ESP32」の見出しの下、「ESP32シリーズはWi-FiとBluetoothを内蔵する低コスト、低消費電力なSoCのマイクロコントローラである。」の記載がある(甲27)。
(ケ)「日経クロステック」のウェブサイトには、2020年7月8日付け、2022年9月2日付け及び同年11月10日付けの記事において、申立人の「ESP32」が紹介されている(甲28~甲30)。
(コ)日刊工業新聞電子版(2021年10月1日付け)には、「「M5Stack Tough ESP32 IoT開発キット」を2021年9月30日より販売開始します」の見出しの下、「株式会社スイッチサイエンス(以下スイッチサイエンス)は、M5Stack社の新製品「M5Stack Tough ESP32 IoT開発キット」シリーズを、スイッチサイエンスのウェブショップにて開発元のM5Stack社と同日の2021年9月30日より販売開始します。「M5Stack Tough ESP32 IoT開発キット」は、Wi-Fi/Bluetoothデュアルモードを利用可能なEspressif ESP32チップセットを搭載した、M5Stackの防水型組込みコントローラです。」の記載がある(甲31)。
(サ)「CQ出版株式会社」のウェブサイトにおいて、「トランジスタ技術2023年4月号」の見出しの下、「第2部 進化を続ける定番Pico&ESP32の現状」の下、「第2章 増え続けるWi-Fiマイコン・・・ESP32と現状」の項に、「ESP32は, Wi-FiとBluetoothが使える安価なマイコンとして多くのユーザーに使われているボードです.いまマイコンの定番として,ラズベリー・パイPicoと同様,ESP32は外せません.一般にESP32というと,SoC,モジュール,ボードのいずれかを指します.」の記載がある。
(https://toragi.cqpub.co.jp/magazine/202304/)(職権調査)
(https://toragi.cqpub.co.jp/wp-content/uploads/p082-12.pdf)(職権調査)
(シ)「フルタカパーツオンライン」のウェブサイトにおいて、「ESP32とは /ESP32」の見出しの下、「ESP32とは」の項に、「ESP32は、Espressif Systemsによって開発された低コスト、低消費電力でWi-Fi及びBluetoothを内蔵したマイクロコントローラのチップセットです。この強力な32ビットマイクロコントローラは、IoTデバイスの開発に最適で、小型でありながら高性能を実現しています。ArduinoやRaspberry Piと同様に、ESP32もまた、ホビイスト、教育者、プロの開発者によって広く使われています。」の記載がある。
(https://www.furutaka-netsel.co.jp/utility/elec_1_cate3_esp32)(職権調査)
(ス)「第24回 高専シンポジウム in Oyama」のウェブサイトにおいて、「ポスター発表プログラム」の「PI 工学教育」及び「PI-33 ESP32 モジュールの開発環境構築と IoT機器の試作」をクリックすると表示される資料には、「1.緒言 近年、安価ながらWi-FiとBluetoothを内蔵するマイコンモジュールとして、Espressif Systems社のESP32シリーズが注目を集めている。このモジュールを用いればIoT機器がコンパクトかつ比較的容易に制作できる。」の記載がある。
(https://www.oyama-ct.ac.jp/24sympo_bk/)(職権調査)
(https://www.oyama-ct.ac.jp/24sympo_bk/contents/images/sympo24/youshi/PI.pdf)(職権調査)
(https://www.oyama-ct.ac.jp/24sympo_bk/contents/images/sympo24/youshi/PI/pi33-e180.pdf)(職権調査)
イ 上記アのとおり、申立人は2016年頃に申立人商品を発表していることから、それ以来現在に至るまで、申立人商品を販売していたことが推認でき、また、複数の国際的な展示会に申立人商品を出展し、紹介していたことがうかがえ、さらに、2022年において、申立人は約250億円の売上高があるところ、申立人商品は申立人の主力商品であることがうかがえることからすれば、当該商品の売上高も相当高いものといえ、我が国において、インターネットのウェブサイト等で紹介されていることなどからすれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品に使用されている引用商標は、申立人の業務に係る商品を表すものとして、我が国において、当該商品の分野の需要者の間に広く認識されているというのが相当である。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 上記(1)のとおり、引用商標は、商品「マイクロコントローラ等の電子部品」に使用され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において需要者の間に広く認識されていると認められるものであるから、その周知性の程度は高いといえる。
イ 引用商標を構成する「ESP32」の文字は、一般の辞書に載録がなく、全体として造語といえるものであるから、引用商標の独創性の程度は高いといえる。
ウ 本件商標と引用商標は、いずれも「ESP32」の文字からなるものであるから、同一の商標といえる。
エ 申立人商品は、「マイクロコントローラ等の電子部品」であるところ、「マイクロコントローラ」は近年のほとんどの家電製品や電子機器類に使われていることからすれば(https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/micon/mi_what1)(職権調査)、本件商標の指定商品と一定程度の関連性があるといえる。
オ 上記アないしエによれば、引用商標の周知性及び独創性の程度は高いといえ、また、本件商標と引用商標は同一の商標であり、本件商標の指定商品と申立人商品とは、一定程度の関連性があることからすると、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合には、これに接する需要者は、引用商標を連想、想起し、当該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品「マイクロコントローラ等の電子部品」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されている商標である。
イ 本件商標と引用商標の類否について
そして、本件商標と引用商標は、上記(2)ウのとおり、同一の商標といえるものである。
ウ 本件商標に係る商標権者(以下「本件商標権者」という。)の登録出願の状況について
本件商標権者は、2021年(令和3年)から2024年(令和6年)の1月末までの短期間に、本件商標以外に、約70件の商標登録出願をしており、その内、少なくとも以下の(ア)ないし(ス)の13件については、これらは、第三者である中国やシンガポール、オーストリア、我が国などの事業者が使用する商品名等を表す商標(以下「第三者商標」という。)と同一又は酷似の商標といえる(甲33~甲45)。
(ア)商標の構成:xiaomi 商願2024-7809(登録出願日:2024年1月28日)
(イ) 商標の構成:Roborock 登録第6660074号商標(登録出願日:2021年4月26日)
(ウ)商標の構成:Roborock 登録第6739857号商標(登録出願日:2022年1月20日)
(エ)商標の構成:Noctua 登録第6648840号商標(登録出願日:2022年2月11日)
(オ)商標の構成:FiiO 登録第6772990号商標(登録出願日:2023年6月13日)
(カ)商標の構成:TP-Link 登録第6776716号商標(登録出願日:2023年7月24日)
(キ)商標の構成:TP-Link 登録第6787002号商標(登録出願日:2023年7月24日)
(ク)商標の構成:Geekshare 登録第6792789号商標(登録出願日:2023年6月25日)
(ケ)商標の構成:Dreame 登録第6794670号号商標(登録出願日:2023年7月21日)
(コ)商標の構成:SwitchBot 商願2023-109360(登録出願日:2023年10月2日)
(サ)商標の構成:dyson 商願2024-6300(登録出願日:2024年1月24日)
(シ)商標の構成:Logicool 商願2024-6368(登録出願日:2024年1月24日)
(ス)商標の構成:dreame 商願2024-6512(登録出願日:2024年1月24日)
エ 不正の目的について
上記アのとおり、引用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されている商標であり、また、上記イのとおり、本件商標と引用商標は同一の商標というべきである。
加えて、申立人は、本件商標の登録出願前に「ESP32」の文字からなる商標を複数の国において登録していたこと、「ESP32」の文字が既成語でないこと及び「第三者商標」と同一又は酷似の商標を多数出願していることを併せ考慮すれば、本件商標は、本件商標権者が引用商標の存在を知った上で、引用商標に化体された業務上の信用や顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し、不正の利益を得る目的をもって出願されたものと判断するのが合理的である。
そうすると、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものといわなければならない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されている商標と同一の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
したがって、本件商標は、仮に商標法第4条第1項第15号に該当しないとしても、同項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「ESP32」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして、本件商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「マイクロコントローラ等の電子部品」を表示する商標として、我が国の需要者の間において広く知られている引用商標と同一であることに加え、当該文字は、辞書等に載録が認められない造語といえること、本件商標権者は上記(3)ウのとおり、「第三者商標」と同一又は類似の商標を多数出願していること、並びに、本件商標権者が我が国において商取引を行っている実情を裏付ける証拠を発見することができなかったことを併せ考慮すれば、本件商標は、本件商標権者が、偶然に本件商標を採択したというよりは、むしろ、我が国において需要者に広く知られている「ESP32」の存在をあらかじめ知った上で、我が国においても登録出願されるであろうと推測される商標を、先回りして、不正な目的をもって剽窃的に登録出願したものとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべきである。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、仮に商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当しない場合は、同項第7号に該当する。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、仮に同号に該当しない場合は、同項第19号に該当し、また、同項第15号及び同項第19号に該当しない場合には、同項第7号に該当するものであるから、本件商標の登録は、同項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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