商標異議申立
2024-900113
ザエヌニジイロクリニックシンバシ、ザエヌ、ニジイロクリニックシンバシ、ニジイロクリニック、ニジイロ
- 審判番号
- 2024-900113
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-042689
- 登録番号
- 6792809
- 請求日
- 2024年05月22日
- 審決日
- 2025年03月14日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】福地 裕三
- 【異議申立人】内田 千秋
- 【異議申立人代理人】佐藤 淳
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T1651.22 -Y (W44) / T1651.261-Y (W44) / T1651.262-Y (W44) / T1651.263-Y (W44)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項11号商標法43条の2商標法43条の3第4項商標法43条の4第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第11号、商標法第43条の4第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6792809号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6792809号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6792809号商標(以下「本件商標」という。)は、「THE N にじいろクリニック新橋」の文字を標準文字で表してなり、令和5年4月19日に登録出願、第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同6年3月14日に登録査定、同年4月3日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立てにおいて、引用する登録第6457577号商標(以下「引用商標」という。)は、「にじいろクリニック」の文字を標準文字で表してなり、令和3年5月21日に登録出願、第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同年10月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として参考資料1ないし参考資料4を提出した(以下、これらを甲第1号証ないし甲第4号証と読み替える。)。
なお、申立人は、登録異議申立書について補正できる期間(商標法第43条の4第2項)経過後において、令和7年2月7日付け上申書(以下「上申書」という。)並びに参考資料1及び参考資料2(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号に該当することについて
(1)本件商標について
本件商標は、「THE N にじいろクリニック新橋」の文字を標準文字で表してなる。
ア 本件商標の外観は、その構成文字は、標準文字で表されているものの、「THE」、「N」及び「にじいろクリニック新橋」の文字の間には、一文字程度のスペースがあることから、これらの3つの各文字構成部分は分離して観察されるものといえ、外観上、常に一体不可分に観察されるものではない。
イ 本件商標の称呼についてみると、本件商標はその構成文字全体からは、「ザエヌニジイロクリニックシンバシ」の促音を含む15音からなるもので、一連に称呼するには冗長すぎる。
ウ 本件商標の観念についてみると、構成中の「THE」のローマ文字は、英語の定冠詞で「その、例の、問題の」等(「新英和中辞典第7版」株式会社研究社)の意味を、前半の「N」の欧文字は「アルファベットの14番目の文字」(広辞苑第6版)である。また、「にじいろ」は、「虹色」の平仮名表記であり、「一般に、赤・橙(だいだい)・黄・緑・青・藍(あい)・紫(菫(すみれ))の七色をいう。また、虹のようなさまざまな色」の意味を、「クリニック」は「1 診療所。2 臨床講義。」の意味を、「新橋」は「東京都港区北東部の地名。繁華街。」(いずれもGoo辞書)を表示する地名であり、これらの語はいずれも一般によく知られている語と地名である。
そして、これらの意味を有する各語を全体としてみたとき、辞書等には掲載がなく既成語でもないし、また、各語の意味をつなげてみても、本件商標全体からは、特定の又は具体的な意味合いを生じさせるものではない。
エ 本件商標の分離可能性
(ア)「THE N」の文字部分について
本件商標の構成文字のつながりをみると、「THE」は、その後に続く名詞中の特定のものを限定する機能を有する定冠詞で「強いて訳さなくてよい場合が多い」(「新英和中辞典第7版」株式会社研究社)ことから、これを省略して表記ないし称呼することもあり、ローマ文字一字の「N」とつなげてみても、アルファベットの14番目の文字である「N」としての意味合いを理解、認識するにすぎず、「THE N」の文字部分は、出所識別標識として特段の印象や記憶に残るものでもなく、これのみで出所を識別するほどの機能を果たすものではない。
(イ)「にじいろクリニック新橋」の文字部分について
本件商標の「にじいろクリニック新橋」の文字部分をみると、後尾の「新橋」は、一般によく知られた地名であり、本件の指定役務との関係においては、役務の提供の場所を表すものと理解、認識されるものとみるのが相当であるから、「新橋」の文字部分は出所識別標識としての機能を有する部分ではない。
そして「にじいろ」及び「クリニック」の各文字部分は、同書、同大、等間隔に表されており、外観上、「分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものと認められない場合」には該当しない。さらに「にじいろ」及び「クリニック」の各文字部分は、医業、医薬情報の提供の役務の関係においては、当該各文字部分のみでは出所標識機能が弱く、両者は結合することによって初めて出所標識機能を有することになる。
すなわち、「クリニック」の文字部分は、本件商標の指定役務である「医業」等の分野においては、「〇〇クリニック」「××クリニック」というように、診療所を表示するために語尾につけて表示するのが一般的で、該文字との組み合わせた構成全体をもって出所識別標識として理解、認識されている実情があるし、「にじいろ」は、「虹色」の平仮名表記であり、本件の指定役務との関係においては、役務の質、その他特徴を直接表示するものではないものの、色彩を表す語であるから、出所表示機能が強い部分ともいえない。
そういった取引事情を踏まえれば、「にじいろクリニック」の文字部分については、これを分離して観察することは取引上不自然というべきであり、いずれの部分も分離抽出することはできないから、「にじいろクリニック」のひとまとまりの文字列をもって、出所識別標識としての機能を発揮するものとみるのが相当であるから、本件商標は、その構成中「にじいろクリニック」の文字部分が、他の文字部分よりも印象的で記憶に残りやすく、当該文字部分が、取引者、需要者に対し強く支配的な印象を与える要部といえる。
よって、「にじいろクリニック」の文字部分が自他役務の識別標識としての機能を発揮する部分とみるのが相当である。
そうすると、その構成中「にじいろクリニック」の文字部分を要部として抽出し、他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
(ウ)したがって、本件商標は、自他役務の識別標識としての機能を発揮する「にじいろクリニック」の文字部分から「ニジイロクリニック」の称呼と「虹色のクリニック(診療所)」程の観念が生じる。
(2)引用商標について
引用商標は、「にじいろクリニック」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして、外観上は、同書、同大、等間隔でまとまりよく一体的に表されており、構成全体からは「ニジイロクリニック」の称呼が生じ、また、構成中「にじいろ」は「虹色」の平仮名表記であり、「クリニック」は、「診療所」の意味を有するものであるから、全体として「虹色のクリニック(診療所)」程の観念が生じる。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標と引用商標は、全体としては、「THE N」の文字と「新橋」の文字の有無において差異があるが、本件商標の要部と引用商標とは、「にじいろクリニック」の文字を共通にするものであり、外観上類似する商標である。
イ 本件商標は、構成文字全体から「ザエヌニジイロクリニックシンバシ」の称呼が生じ、引用商標とは、語頭部分の「ザエヌ」と語尾部分の「シンバシ」の音に相違点があるが、本件商標の要部と引用商標とは「ニジイロクリニック」の称呼を共通にするから、本件商標と引用商標とは、称呼上類似する商標である。
ウ 本件商標は、その構成文字全体からは特定の観念は生じないものの、本件商標の要部と引用商標からは「虹色のクリニック(診療所)」の共通の観念が生じるものであり、両者は観念上類似する商標である。
エ 以上のとおり、本件商標の要部と引用商標は、外観、称呼及び観念において類似するものである。
(4)本件商標と引用商標の指定役務について
本件商標の指定役務と引用商標の指定役務は、同一の役務である。
(5)以上のとおり、本件商標の要部と引用商標とは、外観、称呼及び観念において類似するものであり、本件商標と引用商標の指定役務は同一であるから、本件商標をその指定役務について使用をした場合には、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、本件商標をその指定役務について使用をした場合には、その役務の出所について混同を生じるおそれがある類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(6)本件商標と引用商標との類否についての補足
ア 本件商標は、「THE N」と「にじいろクリニック新橋」との間には一文字ほどの間隔があり、外観上分離して観察される。
イ 本件商標は、構成中の「THE N」は、アルファベットの14番目の文字である「N」としての意味合いを理解、認識させる一方、「にじいろクリニック新橋」からは、「(新橋の)「虹色のクリニック(診療所)」程の意味合いが生じるが、両者の間には、観念上のつながりは何ら見いだせない。
ウ 本件商標から生じる「ザエヌニジイロクリニックシンバシ」の称呼は冗長であり、本件商標の構成に照らせば、「ザエヌ」「ニジイロクリニックシンバシ」「ニジイロクリニック」の称呼が生じるが、「ザエヌニジイロ」の称呼が生じるというのは、上記の外観及び観念上のつながりがないことからして不自然である。
エ そうすると、たとえ「THE N」の文字部分について出所標識としての識別力があるとしても、本件商標の「にじいろクリニック」の文字部分も出所表示機能を有することから、それぞれが識別機能を発揮する部分であり、これを常に一体不可分としてのみ把握されるという事情は見いだせない。
したがって、本件商標の「にじいろクリニック」の文字部分と引用商標とを比較することは許されるべきものであり、互いに類似する商標であることは前記のとおりである。
2 商標法第4条第1項第7号に該当することについて
(1)申立人について
申立人は、性病専門の医療クリニック「あおぞらクリニック」を運営する医療法人社団七海会の理事長であって、平成25年から東京都港区新橋において同クリニックを開設している。
申立人は「にじいろクリニック」(引用商標)並びに同人及び医療法人社団七海会は、「図+あおぞらクリニック」(登録第6392076号)の商標権を有している。
(2)本件商標の商標権者について
本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)は、性病専門の医療クリニック「にじいろクリニック新橋」を運営しており、令和元年6月に申立人のクリニックに入職し、勤務医として稼働していたが、同3年1月に申立人に退職の意向を示し、同年6月に上記クリニックを退職して、その至近で「にじいろクリニック新橋」なるクリニックを運営している。
そして、「THE N にじいろクリニック新橋」(本件商標)、別掲1の商願2023-43321号(審査係属中)、及び「THE N あおぞらクリニック新橋」(登録第6809323号)を出願している。
(3)別件商標権侵害損賠賠償等請求事件について
商標権者は、別件1ないし別件4の標章(別掲2~別掲5、以下、これらをまとめて「別件標章」という。)について、にじいろクリニック新橋のホームページや看板等において標章を使用していた。
申立人は、相手方に対してこれらの名称の使用が商標権侵害に該当するため使用を止めるよう警告するなどし、令和4年8月、両者間で同名称を使用しないこと等を誓約した合意書(以下「本件合意書」という場合がある。)(甲3)を締結するに至ったが、商標権者は、本件合意書を遵守せず「にじいろクリニック新橋」の名称を続用して使用した。
商標権者による上記別件標章の使用によって、申立人は、所有する商標権(第6457577号)が侵害されたため、令和5年3月に、商標権者を被告として、別件訴訟を東京地方裁判所に提起した。
裁判所は、商標権者による別件標章の使用は、申立人の商標権(第6457577号)を侵害するとの判決を言い渡している(令和6年5月22日判決言渡 令和5年(ワ)第70130号商標権侵害損害賠償等請求事件)(甲4)。
判決では、別件標章は、いずれも申立人の登録商標と類似するものであり、その指定役務について使用をするものであるから、商標権侵害である旨の主張が全面的に認められ、商標権侵害の損害賠償のほか、ウェブサイト、チラシ、掲示物及び看板等の広告に別件標章の使用の禁止等が認められている。
(4)本件異議申立ての経緯
商標権者は、上記民事訴訟の係属中である令和5年4月、新たに「THE N にじいろクリニック新橋」(本件商標)について登録出願したことから、令和5年9月22日に申立人は代理人を通じて、特許庁に対して、(ア)本件商標の登録出願は経緯に照らして公序良俗に反すること及び(イ)本件商標は、申立人の所有に係る引用商標と類似することを情報提供した。
特許庁は、この情報提供を踏まえ、一度は拒絶理由通知書を通知していたところ、結果的に本件商標の登録出願は、令和6年4月に登録査定、商標登録がなされた。
申立人は、本件商標が商標登録されたことにより、自身の商標の使用が困難になること、及び、商標権者が本件商標以外に出願している他の商標(「THE N にじいろクリニック新橋」(ロゴ)、「THE N あおぞらクリニック新橋」(標準文字)及び「あおいろクリニック」(標準文字))の出願審査に悪影響が生じ得る(登録を受けやすくなる)ことを懸念しており、本件商標について登録異議の申立てを行ったものである。
(5)本件商標の登録の経緯
商標権者は、引用商標「にじいろクリニック」の文字からなる登録商標(登録第6457577号)の権利者との間で合意書を締結していた。
合意書では、商標権者は、運営するクリニックの名称を変更するための商標に関する手続を行い、登録商標「にじいろクリニック」と同一又は類似する名称(合意書において(「にじいろクリニック新橋」を含み、以下「乙登録商標類似名称」という。)と定義されている。)が付されたインターネット上のコンテンツ、看板、ビラ等から削除等し、その後使用しないことを誓約していた。
しかしながら、上記合意があったにもかかわらず、商標権者は、「にじいろクリニック」の文字を含む別件標章(3件)について使用をしていたことから、申立人は、令和5年3月に、商標権侵害の不法行為について別件商標権侵害訴訟(令和5年(ワ)第70130)を提起し、本訴訟においては、これらの3件の商標が引用商標に類似するものとの認定、判断がなされている。
他方、商標権者は、上記民事訴訟の係属中である令和5年4月(この時点である第二回期日の時点で、裁判所は商標権侵害を認める心証を開示している。)、本件商標を商標登録出願した。
本件商標についても、「にじいろクリニック新橋」の名称を含むものであって、上記のとおり、商標法第4条第1項第11号に該当する類似の商標であり、合意書において定義されている「乙登録商標類似商標」に当たるものである。そうすると、商標権者が本件商標について商標登録を受けることは前記合意書の内容に反するものであり、さらに、自己の商標の採択の自由があるとはいえ、申立人の信用に便乗又は業務を妨害するためにした出願であるともいうべきである。
また、商標権者は、特許庁審査官の、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する旨の拒絶理由に対して、「本願商標が「にじいろクリニック新橋」の名称を含むものであったとしても、それをもって直ちに、「合意書において定義されている「乙登録商標類似商標」」に当たるとは言えず、また「出願人が本願商標を自己の商標として使用するために商標登録を受けることは前記合意書の内容に反する」とも言えません。」などと述べ、上記合意書の内容を曲解して反論するとともに、何ら無関係の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(平成30年6月 経済産業省)」の例を示すなど、不誠実な対応をしたことは明らかである。
通常の商慣行においては、上記のような合意書は誠意をもって遵守されるべきものであるし、さらに商標権者は、上記民事訴訟の係属中である令和5年4月においても、「にじいろクリニック」の文字を含む本件商標を出願するということは、通常では考え難いというべきである。
加えて商標権者は、申立人のクリニックに従事したこともあり、申立人の商標「にじいろクリニック」の存在を当然承知していた。
上記合意書を誠実に順守する意図があるのであれば、少なくとも「にじいろクリニック」の文字は避けて、その他の文字構成を採択することがあり得るのにもかかわらず、該語に多少の変更を加えたうえで本件商標を商標登録出願した。
こういった行為は、「にじいろクリニック」と類する商標を使用することによって、申立人の業務を意図的に妨害したり、その出所について意図的に混同を生じさせようとするためのものというほか説明がつかない。
以上のとおり、本件商標は、その出願の経緯を総合勘案すれば、審査基準に該当するものであり、商標法第4条第1項第7号に該当する。
なお、商標法第4条第1項第7号は、公益的不登録事由であり、私人間の紛争において適用することは疑問視される場合もある。本件は、私人間の紛争であるかのようにも見えるが、商標の使用に関する契約を反故にしたり、それによって商標権侵害事件が提起されている中、別途、関連する商標登録出願をさらに行い、相手側の業務を意図的に妨害したりする等の行為は、商標法の予定する秩序に反し、商標制度の健全な発展と利用者の利益を阻害するものである。
このような行為の社会的影響も踏まえると、これを看過することは許されるものではない。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1) 本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「THE N にじいろクリニック新橋」の文字を標準文字で表してなるところ、「THE」、「N」及び「にじいろクリニック新橋」の各文字の間には、1文字分のスペースがあるものの、同書、同大でまとまりよく一体的に表してなり、その構成中「クリニック」の文字は、「診療所」(株式会社岩波書店「広辞苑 第七版」)の意味を有する親しまれた語であって、これらの構成文字全体が一体となって、特定の診療所の名称を表したと理解されるものである。そして、後半の「新橋」の文字は、「新橋駅を中心とする港区北東部の地区。」(前掲書)の意味を有する語であることから、本件商標は、「ザエヌニジイロクリニックシンバシ」の称呼及び「新橋にある「THE N にじいろクリニック」という特定の診療所の名称」ほどの観念を生じるといい得る。
また、構成中の上記「新橋」の文字は、地名を表したものと認識されるものであり、地名は一般に自己の業務に係る役務の提供の場所を表すものとして採択使用され得ることから、当該文字部分は自他役務の識別標識としての機能が強いとはいえないものである。
そうすると、本件商標は、その構成中前半の「THE N にじいろクリニック」の文字部分が独立して役務の出所識別標識としての機能を果たし得るといえ、当該部分より生じる「ザエヌニジイロクリニック」の称呼はやや冗長ではあるが、よどみなく一連に称呼できるものであるから、当該文字部分に相応して「ザエヌニジイロクリニック」の称呼を生じ、「「THE N にじいろクリニック」という特定の診療所の名称」ほどの観念を生じる場合もあるというのが相当である。
なお、申立人は、本件商標の構成中「THE N」及び「新橋」は自他役務識別標識としての機能を有しないから、「にじいろクリニック」の文字部分を要部として分離することができる旨及び「THE N」の文字部分に出所標識としての識別力がある場合でも、「THE N」と「にじいろクリニック新橋」の間に1文字ほどの間隔があり、外観上分離して観察され、各文字部分に観念上のつながりがないことなどから、「THE N」と「にじいろクリニック」のそれぞれが識別機能を発揮する旨主張するが、「THE N にじいろクリニック」の文字部分をもって、一つの診療所の名称を表したものと認識されることは上記のとおりであるから、申立人の主張は、採用することができない。
(2)引用商標
引用商標は、上記第2のとおり「にじいろクリニック」の文字を標準文字で表してなるから、その構成文字に相応し、「ニジイロクリニック」の称呼及び「「にじいろクリニック」という特定の診療所の名称」ほどの観念が生じる。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観について
本件商標と引用商標の外観については、両商標を全体として比較した場合には、語頭の「THE N」及び末尾の「新橋」の文字の有無という明確な差異を有するから、外観上、判然と区別できる。
また、本件商標の構成中「THE N にじいろクリニック」の文字部分と引用商標を比較した場合には、看者の注意を最もひく語頭の「THE N」の文字の有無において明らかに相違するから、外観上相紛れるおそれはない。
イ 称呼について
本件商標から生じる「ザエヌニジイロクリニックシンバシ」の称呼と、引用商標から生じる「ニジイロクリニック」の称呼とは、全体の音数の相違、「ザエヌ」「シンバシ」の音の有無により、称呼上、明瞭に聴別し得る。
また、本件商標の構成中「THE N にじいろクリニック」の文字部分から生じる「ザエヌニジイロクリニック」の称呼と引用商標から生じる「ニジイロクリニック」の称呼とは、「ザエヌ」の音の有無及び全体の音数において明らかに相違するから、称呼上相紛れるおそれはない。
ウ 観念について
観念については、本件商標は、「新橋にある「THE N にじいろクリニック」という特定の診療所の名称」又は「「THE N にじいろクリニック」という特定の診療所の名称」の観念を生じるのに対し、引用商標は、「「にじいろクリニック」という特定の診療所の名称」の観念を生じるから、両者の観念は明確に相違し、観念上相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
以上より、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、商標権者が申立人との間で合意書を締結しており、また、別件商標権侵害訴訟(令和5年(ワ)第70130号)(甲4)において、別件標章が引用商標に類似するものとの認定、判断がされているにもかかわらず、商標権者が上記訴訟の係属中に本件商標を出願した経緯は、商標法の予定する取引秩序に反するものである旨主張する。
しかしながら、申立人の提出証拠からは、商標権者が、引用商標の存在を知りながら、上記訴訟の係属中に本件商標の登録出願をしたという事実関係は把握できるとしても、それだけでは本件商標の登録出願の目的は明らかではなく、申立人の業務を意図的に妨害する等の目的があったと直ちにいうことはできない。また、本件商標は上記訴訟において類似すると判断された別件標章とはその構成文字が異なるものであって、上記1のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、引用商標の存在を知りながら本件商標が登録出願されていたとしても、本件商標の登録出願及びその経緯が、著しく社会的相当性を欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ない場合に該当すると認めるに足りない。
その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
そうすると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標とはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第11号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
なお、申立人は、登録異議申立書について補正できる期間(商標法第43条の4第2項)の経過後において、上申書並びに参考資料1及び参考資料2(枝番号を含む。)を提出しているが、上記判断を覆すものではない。
よって、結論のとおり決定する。
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