商標異議申立
2024-900098
マイキャット
- 審判番号
- 2024-900098
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-021352
- 登録番号
- 6785209
- 請求日
- 2024年05月10日
- 審決日
- 2025年05月21日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】SGT株式会社
- 【異議申立人】株式会社 オールマイティー
- 【異議申立人代理人】福家 一郎
- 【異議申立人代理人】藤澤 健一
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 康浩
- 審判官 真鍋 伸行
- 審判官 大島 勉
- 分類
- T1651.25 -Y (W354344) / T1651.271-Y (W354344) / T1651.222-Y (W354344)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6785209号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6785209号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6785209号商標(以下「本件商標」という。)は、「まいきゃっと」の文字を標準文字で表してなり、令和5年3月1日に登録出願、第35類、第43類及び第44類に属する別掲1のとおりの役務を指定役務として、同年10月27日に登録査定、同6年3月7日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、「まいきゃっと」の平仮名文字からなる商標、「マイキャット」の片仮名文字からなる商標及び「MY CAT」の欧文字を別掲2のとおり、ややデザイン化してなる商標であり、店舗所在のペットの猫と客が一緒に飲食できる飲食店での飲食物の提供(以下「猫カフェ」という。)及び店舗所在のペットの猫と客が一緒に宿泊できる宿泊施設の提供(以下「ペットホテル」という。)(以下、「猫カフェ」と「ペットホテル」を合わせて「申立人使用役務」という場合がある。)において周知商標であると主張するものである。
上記の「まいきゃっと」の商標及び「MY CAT」の商標をまとめていうときは、以下「引用商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべき旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
1 第4条第1項第10号について
(1)本件商標と引用商標(甲2)との対比
本件商標は、「まいきゃっと」の平仮名文字を書してなるものであるから、これより「マイキャット」の称呼を生ずること明らかである。
他方、申立人が引用する商標は、「まいきゃっと」の平仮名文字、「MY CAT」の英文字を書してなるものであるから、これらよりそれぞれ「マイキャット」の称呼を生ずるものである。してみれば、本件商標と引用商標は、共に「マイキャット」の称呼を生ずること明らかであるから、その称呼において同一又は類似の商標である。
なお、申立人は、上記引用商標を ア 横浜店、イ 湯河原店、ウ 甲府店の3店舗で後述する役務について使用している(甲1)。また、「MY CAT」は主に甲府店の役務で使用している(甲2)。
そして、本件商標の指定役務は第35類、第43類及び第44類に区分されるものである。引用商標の指定役務は、下記のとおりである。
ア 横浜店での役務は、「猫カフェ」、「ペットホテル」、「オリジナルグッズ販売」である(甲3)。
「猫カフェ」は、ペットの猫と人と一緒に飲食できる飲食店での飲食物の提供であるので、本件商標権者の指定役務である第43類の「人とペットが一緒に飲食できる飲食店での飲食物の提供」と同一又は類似の役務であると思料する。
「ペットホテル」は、ペットの猫と人と一緒に宿泊できる宿泊施設の提供であるので、本件商標権者の指定役務である第43類の「動物の宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供」と同一又は類似の役務であると思料する。
「オリジナルグッズ販売」は、横浜店で猫を素材にしたオリジナルグッズを販売したものなので(甲4)、本件商標権者の指定役務である第35類の「消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」及び「商品の販売に関する情報の提供」と同一又は類似の役務であると思料する。
イ 湯河原店での役務は、「宿泊業」、「猫カフェ」、「ペットホテル」、「動物の販売」である(甲5)。
「猫カフェ」、「ペットホテル」については上記のとおりである。
「宿泊業」は、本件商標権者の指定役務である第43類の「宿泊施設の提供」と同一又は類似の役務であると思料する。
「動物の販売」は、本件商標権者の指定役務である第35類の「ペットの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、「消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」及び「商品の販売に関する情報の提供」と同一又は類似の役務であると思料する。
ウ 甲府店での役務は、「猫カフェ」、「老猫ホーム」、「ペットホテル」、「キャットサロン」、「リラクゼーションサロン(人用)」である(甲6)。
「猫カフェ」、「ペットホテル」については上記のとおりである。
「老猫ホーム」は、主に飼い主の事情で飼い続けられなくなった猫を宿泊を伴いながら一時的に預かるサービスなので本件商標権者の指定役務である第43類の「動物の一時預かり」及び「動物の宿泊施設の提供」と同一又は類似の役務であると思料する。
「キャットサロン」は、ペットの猫をシャンプー、ブラッシング、爪切りなどをする美容室なので、本件商標権者の指定役務である第44類の「ペットの美容」、「ペットの手入れに関する情報の提供」及び「動物の美容」と同一又は類似の役務であると思料する。
「リラクゼーションサロン(人用)」は、人の身体等へのマッサージであるので本件商標権者の指定役務である第44類の「美容」、「理容」と同一又は類似の役務であると思料する。
(2)引用商標(甲2)の周知性
引用商標(甲2)は、下記のとおり、本件商標の出願時(令和5(2023)年3月1日)において、すでに「需要者の間に広く認識されている」商標であったといえる。すなわち、株式会社オールマイティー(代表取締役:A氏)は、平成23年2月1日に会社を設立し(甲7)、ア まいきゃっと横浜店(現在は神奈川区菅田町、平成28年以前は都筑区)、イ まいきゃっと湯河原店、ウ まいきゃっと甲府店の3店舗をそれぞれ経営している。
ア まいきゃっと横浜店
平成23年7月1日から「猫カフェ」として営業を開始し(令和5年3月14日に最新の営業許可更新(6年ごと更新)(甲1)、まいきゃっと横浜店について一般人のブログに掲載されている(甲8)。
他の都県からも入会申し込みが多数あり、メンバーズカードのごく一部を開示する(甲9)。
雑誌である国際グラフ(平成24年1月号P54)において、まいきゃっと横浜店の代表者であるA氏は当時著名であった俳優のB氏と対談している(甲10)。
雑誌である横浜ウォーカー(平成29年(2017年)3月号)P56において、猫カフェとして紹介されている(甲11)。
平成24年からYOUTUBE動画で猫の映像を提供している(甲12)。
イ まいきゃっと湯河原店
平成29年7月頃から「猫カフェ」及び「猫と泊まれる旅館」として営業を開始し、まいきゃっと湯河原店についてトラベルJPの旅行ガイド(travel.co.jp)にも掲載されている(甲13)。
他の都県からも宿泊者が多数あり、宿泊者カードのごく一部を開示する(甲14)。
令和2年からYOUTUBE動画で猫の映像を提供している(甲15)。
ウ まいきゃっと甲府店(MY CAT KOFU)
令和2年11月頃から当初は飲食を提供しない「猫カフェ」として営業を開始し、令和3年6月22日に営業許可を取得(甲1)して飲食もできる「猫カフェ」を運営している。
MY CAT KOFUについて令和4年2月21日UTYテレビ山梨放送の「スゴろく」というテレビ番組で取り上げられている(甲16)。
MY CAT KOFUについて令和2年12月3日YBSラジオ「ラララモーニング」という番組で取り上げられている(甲17)。
他の都県からも入会申し込みが多数あり、メンバーズカードのごく一部を開示する(甲18)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものである。
2 第4条第1項第15号について
申立人は、平成23年7月1日まいきゃっと横浜店の営業開始以来、役務「猫カフェ」、平成29年7月頃まいきゃっと湯河原店の営業開始以来、役務「猫カフェ」及び「猫と泊まれる旅館」、令和2年11月頃まいきゃっと甲府店の営業開始以来、役務「猫カフェ」について、「まいきゃっと」と容易に称呼しうる文字からなる商標を広く使用し今日に至っており、役務「まいきゃっと」の我が国における市場占有率も極めて大きい。
したがって、本件指定役務の分野の需要者は、「まいきゃっと」からなる本件商標が、本件指定役務について使用された場合には、申立人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
3 第4条第1項第19号について
上記1の第4条第1項第10号で記載したとおり、本件商標と引用商標とは同一又は類似の指定役務について同一又は類似の商標である。また、同様に引用商標は、本件商標の出願時(令和5(2023)年3月1日)においてすでに「需要者の間に広く認識されている」商標であったといえる。本件商標権者は申立人に対して令和5年11月29日に、まだ本件商標が登録されていないにも関わらず、もう使用しないことになりそうだとして、本件商標を100万円という高額買い取りや月5万円で期間3年のライセンス契約を締結しようと電話をしてきた(甲19)。実際、本件商標権者は同日に偽名を使って申立人の経営する会社の従業員に対して電話をし、どのようなサービスをしているのかを問い合わせて本件商標の価値を確かめようとしてきた(甲19)。このように、本件商標権者には、申立人が使用してきた周知商標の存在を知りながらあえて商標出願し、登録商標を買い取らせて不正の利益を得ようとした「不正の目的」がある。
4 結語
(1)第4条第1項第10号について
本件商標と引用商標とは、「まいきゃっと」の称呼、観念を共通にする類似の商標であり、また、その指定役務も同一又は類似のものである。しかも引用商標は本件登録商標の出願時(令和5年3月1日)においてすでに「需要者の間に広く認識されている」商標であった。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
(2)第4条第1項第15号について
本件商標が本件指定役務に使用された場合、その役務の需要者が申立人の業務に係る役務と出所について混同するおそれがある。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
(3)第4条第1項第19号について
本件商標と引用商標とは、「まいきゃっと」の称呼、観念を共通にする類似の商標であり、また、その指定役務も同一又は類似のものである。しかも引用商標は本件登録商標の出願時(令和5年3月1日)においてすでに「需要者の間に広く認識されている」商標であった。本件商標権者は申立人に対して本件商標を100万円という高額買い取り等しようと電話をしてきており「不正の目的」がある。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)周知性について
商標法第4条第1項第10号の「広く認識されている」に該当するといえるための地理的範囲としては,必ずしも全国的に知られている必要まではないが,1都道府県内で知られているだけでは足りず、例えば、少なくとも関西一円などの数県にわたる相当広い範囲で,取引者・需要者に知られていることを要すると解される(平成26年(行ケ)第10118号、平成26年10月29日知財高裁判決参照)。
(2)引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、平成23年2月1日付けで「飲食店業」等を目的とした会社を設立した(甲7)。
(イ)2011年10月3日のインターネットの動画サイトにて、横浜店の「猫カフェ」に「まいきゃっと」の文字が使用されている(甲12)。
(ウ)雑誌「国際グラフ」2012年1月号、54ページ上段に俳優との対談で、横浜店の「ねこカフェ」(合議体注:「猫カフェ」)に「まいきゃっと」の文字が使用されている(甲10)。
(エ)2012年5月15日付けのブログにて、横浜店の「猫カフェ」に「まいきゃっと」の文字が使用されている(甲8)。
(オ)雑誌「横浜ウォーカー」2017年(平成29年)3月号、56ページに「ネコカフェ」(合議体注:「猫カフェ」)に「まいきゃっと」の文字が使用されている(甲11)。
(カ)「トラベルjp」のウェブサイトにて、「最寄駅はJR東海道線の真鶴駅」の見出しの下、「神奈川県横浜市の猫カフェ「まいきゃっと」が、・・・2017年7月に猫と泊まれる旅館(合議体注:「ペットホテル」)「湯河原 まいきゃっと」をOPENしました。」の記載がある(甲13)。
(キ)2020年7月23日のインターネットの動画サイトにて、湯河原店の「旅館」に「まいきゃっと」の文字が使用されている(甲15)。
(ク)2020年11月5日、甲府店に「まいきゃっと」の平仮名及びデザイン化された「MY CAT」の欧文字が使用されている(甲2の1)。
(ケ)2020年(令和2年)12月3日YBSラジオ「ラララモーニング」という番組で甲府店の「老猫ホーム」及び「猫カフェ」が「マイキャット」の呼称で紹介された(甲17)。
(コ)2022年(令和4年)2月21日、UTYテレビ山梨の「スゴろく」という番組において、甲府店の「猫カフェ」、「ペットホテル」及び「老猫ホーム」である「まいきゃっと甲府」が取り上げられている(甲16)。
(サ)横浜店において、「猫カフェ」等の事業を行っている(甲1の1、甲3及び甲4等)。
(シ)湯河原店において、「猫カフェ」及び「ペットホテル」等の事業を行っている(甲1の2、甲5等)。
(ス)甲府店において、「猫カフェ」及び「ペットホテル」等の事業を行っている(甲1の3、甲6等)。
イ 上記アによれば、「まいきゃっと」の文字は、遅くとも2011年10月3日には横浜店において使用され、湯河原店及び甲府店の3店舗でも使用されている。また、「MY CAT」の欧文字は、遅くとも2020年11月5日には、甲府店で使用されている。
なお、引用する商標の一つである「マイキャット」の片仮名文字の使用は確認できない。
そして、「まいきゃっと」の文字を使用する横浜店の「猫カフェ」は、異なる雑誌に記載されたり、インターネットの動画サイトには、「まいきゃっと」の文字を使用する、横浜店の「猫カフェ」や湯河原店の「ペットホテル」の動画があげられている。
また、テレビ又はラジオのローカル放送局において、甲府店の「猫カフェ」及び「ペットホテル」について、「まいきゃっと甲府」の文字や「マイキャット」の呼称が使用されている。
しかしながら、店舗は神奈川県に2店舗、山梨県に1店舗を構えていて、インターネットの動画サイトやテレビ及びラジオ等の各種メディアに扱われていることから当該地域において引用商標は使用されているとしても、「猫カフェ」及び「ペットホテル」の役務における売上高や我が国における市場占有率(役務のシェア)等の事業規模は明らかでなく、また、動画サイトの視聴回数等は決して多いとは認められないことや各雑誌、テレビ及びラジオに扱われたのも一度で、その内容は、いずれも「猫カフェ」等の業務の紹介であり、各雑誌については、複数取り上げられている店舗のうちの一つとして紹介され、テレビについては複数取り上げられているトピックのうちの一つとして放送され、ラジオについては8分弱の放送であり、これらのほかに、「猫カフェ」及び「ペットホテル」の役務に係る広告宣伝の方法、期間、地域及び費用等広告宣伝規模を具体的に表す客観的な資料の提出は確認できない。
したがって、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る「猫カフェ」及び「ペットホテル」の役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(3)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「まいきゃっと」の文字を標準文字で表してなるところ、この構成文字に相応して「マイキャット」の称呼を生じ、一般的な辞書に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではない一種の造語として認識させるものである。
したがって、本願商標からは、「マイキャット」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
イ 引用する商標「まいきゃっと」(以下「引用商標1」という。)について
引用商標1は、上記第2のとおり「まいきゃっと」の平仮名文字を普通に用いてなるところ、この構成文字に相応して「マイキャット」の称呼を生じ、一般的な辞書に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではない一種の造語として認識させるものである。
したがって、引用商標1からは、「マイキャット」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
ウ 引用する商標「MY CAT」(以下「引用商標2」という。)について
引用商標2は、上記第2のとおり「MY CAT」の欧文字をややデザイン化してなるところ、その構成中「MY」の文字は「私の」の意味を有し、「CAT」の文字は「ネコ(猫)」の意味を有する(「ジーニアス英和辞典 第6版」大修館書店)ことから、当該文字全体から「私の猫」ほどの意味を有する。
そうすると、引用商標2からは、「マイキャット」の称呼を生じ、「私の猫」の観念を生ずる。
エ 本件商標と引用商標の類似性について
本件商標と引用商標1を比較すると、外観においては、両者とも「まいきゃっと」の文字からなることから、類似する。
また、称呼においては、両者は「マイキャット」の称呼を共通にする。
さらに、本件商標と引用商標1は、いずれも特定の観念を生じないから、両者は観念において比較できない。
そうすると、本件商標と引用商標1は、観念において比較できないとしても、外観において類似し、称呼において共通するから、それらによって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似の商標と認められる。
本件商標と引用商標2を比較すると、外観においては、平仮名と欧文字で文字種を異にするものの、我が国においては、商標の構成文字を同一の称呼を生じる範囲内で文字種を交互に変換して表記することが一般に行われている取引の実情があることから、両者における上記文字種の相違は、取引者、需要者に対し出所識別標識として外観上の顕著な相違として、強い印象を与えるとはいい難いものというべきである。
また、称呼においては、両者は「マイキャット」の称呼を共通にする。
さらに、本件商標は特定の観念を想起させないものであるのに対し、引用商標2は「私の猫」の観念を生じるから、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標2は、観念において相紛れるおそれはないとしても、外観において顕著な相違として、強い印象を与えるとはいえないことから、観念の差異が称呼の共通性をしのぐほどの差異として需要者に認識されるものとはいい難く、時と所を異にして離隔的に観察した場合、本件商標と引用商標2とは互いに相紛れるおそれのある類似の商標と認められる。
オ 本件商標と引用商標の指定役務と申立人使用役務の類似性について
引用商標の申立人使用役務中、「猫カフェ」は、店舗所在のペットの猫と客が一緒に飲食できる飲食店での飲食物の提供であることから、本件商標の指定役務中、第43類「カフェテリアでの飲食物の提供,人とペットが一緒に飲食できる飲食店での飲食物の提供,飲食物の提供」と類似する役務と認められる。
引用商標の申立人使用役務中、「ペットホテル」は、店舗所在のペットの猫と客が一緒に宿泊できる宿泊施設の提供であることから、本件商標の指定役務中、第43類「宿泊施設の提供」と類似する役務と認められる。
カ 小括
以上によれば、本件商標と引用商標が類似の商標であって、その指定役務中、第41類「カフェテリアでの飲食物の提供,人とペットが一緒に飲食できる飲食店での飲食物の提供,飲食物の提供,宿泊施設の提供」と申立人使用役務が類似の役務としても、引用商標は、我が国の需要者に広く認識されていた商標と認めることはできないから、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1(2)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていない。また、本件商標と引用商標の類似性の程度は、上記1(3)のとおり高い。そして、本件商標の第43類「カフェテリアでの飲食物の提供,人とペットが一緒に飲食できる飲食店での飲食物の提供,飲食物の提供,宿泊施設の提供」と引用商標の使用に係る役務「猫カフェ」及び「ペットホテル」とは、ともに飲食物の提供及び宿泊施設の提供に関連する役務であるから、これらの役務は関連性を有し、需要者を共通にする場合があるといえる。
以上からすると、本件商標と引用商標の類似性の程度が高く、本件商標の指定役務と申立人使用役務とが関連性を有し、需要者を共通にする場合があるとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標とはいえない。
そうすると、本件商標は、その指定役務について使用されても、取引者、需要者をして申立人の業務に係る役務を連想又は想起させるとは考えにくく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人は、本件商標と引用商標とは同一又は類似の指定役務について同一又は類似の商標であり、また、引用商標は、本件商標の出願時においてすでに「需要者の間に広く認識されている」商標であったといえ、そして、本件商標権者は申立人に対して、まだ本件商標が登録されていないにも関わらず、本件商標の高額買い取りや、期間を定めたライセンス契約を締結しようと電話をしてきたとして、本件商標権者には、申立人が使用してきた周知商標の存在を知りながらあえて商標出願し、登録商標を買い取らせて不正の利益を得ようとした「不正の目的」がある旨主張する。
しかしながら、上記1(2)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間において広く認識されている商標ではない。そのため、申立人の業務に係る役務であると承知して本件商標を買い取らせて不正の利益を得ようとしたとは直ちに考えにくい。そしてそのことが分かる具体的で客観的な証拠の提出は見あたらない。その他、申立人提出に係る証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が本件商標をその指定役務に使用し、引用商標の周知性を希釈化し、その商標の信用、名声、顧客吸引力が失われるなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。
そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されている商標とはいえないものであって、かつ、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、あるいは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号の規定に違反して登録されたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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