商標異議申立
2024-900080
リキッドヘル、リキッド、ヘル
- 審判番号
- 2024-900080
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-097130
- 登録番号
- 6775079
- 請求日
- 2024年04月05日
- 審決日
- 2024年11月12日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】アイデイ商事株式会社
- 【異議申立人】ヘルエナジー マギャオルサグ カーエフテー
- 【異議申立人代理人】古関 宏
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 豊瀬 京太郎
- 審判官 清川 恵子
- 分類
- T1651.261-Y (W32) / T1651.262-Y (W32) / T1651.263-Y (W32)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6775079号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6775079号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6775079号商標(以下「本件商標」という。)は、「Liquid Hell」の文字を標準文字により表してなり、令和5年8月31日に登録出願、第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,飲料水,ミネラルウォーター」を指定商品として、同6年1月25日に登録査定、同月31日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の3件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらの商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 国際登録第1362891号商標(以下「引用商標1」という。)は、「HELL」の欧文字を横書きした構成からなり、2018年(平成30年)6月26日に国際商標登録出願(事後指定)、第32類「Energy drinks.」を指定商品として、令和元年10月4日に日本国において設定登録されたものである。
2 登録第6231689号商標(以下「引用商標2」という。)は、「HELL」の欧文字及び「ヘル」の片仮名を二段に横書きした構成からなり、平成30年9月14日に商標登録出願、第32類「ビール,清涼飲料,エナジードリンク,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」並びに第29類、第30類及び第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和2年3月3日に設定登録されたものである。
3 登録第6231690号商標(以下「引用商標3」という。)は、「HELL ENERGY」の欧文字及び「ヘルエナジー」の片仮名を二段に横書きした構成からなり、平成30年9月14日に商標登録出願、第32類「ビール,清涼飲料,エナジードリンク,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」並びに第29類、第30類及び第33類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、令和2年3月3日に設定登録されたものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、同法第43条の3第2項により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標について
本件商標は、欧文字「Liquid」と「Hell」の間に1字分の空白を設け、2語からなる構成・態様であるところ、前半の「Liquid」部分は「液体」等を意味する英単語であり(甲1)、後半の「Hell」部分は「地獄」を意味するものであって(甲2)、これらの両単語は、我が国の需要者、取引者にとって、馴染みのある平易な英語として、それぞれ一般に広く認識されているものであるが、これらを組み合わせた熟語は存在しない。
なお、仮に本件商標がその全体構成をもって熟語を構成し、1つの識別標識として機能するのであれば、その全体構成から一定の意味合いを看取せしめることになるが、本件商標を構成する欧文字は熟語ではないから、本件商標から「液体地獄」なる意味合いを看取せしめるということはできないし、また、それがどのようなものであるかを想定することができない。
したがって、本件商標に接する需要者・取引者にとって、本件商標は、単に「液体」を意味する英単語「Liquid」と「地獄」を意味する英単語「Hell」からなるものであることを認識、理解させるにすぎない。
そして、本件商標を構成する欧文字「Liquid」は、「液体」を意味するものであるから、その指定商品との関係上、自他商品識別力を有しないものであって、出所識別標識としての称呼、観念が生じないものである(甲3の1~3、甲4の1~3)。
他方、残余の「Hell」は、「地獄」を意味する悪しき語であるから、商標として採択されることは極めて稀であり、これに接する需要者、取引者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって、生来的に、極めて強い識別力を有するものである。
したがって、本件商標を構成する「Liquid」と「Hell」の間の識別力の強弱は極めて大きい。
2 引用商標について
引用商標は、すべて、本件商標よりも先願先登録のものであり、指定商品も本件商標の指定商品と同一又は類似である。
ところで、日本において、第32類に属する商品を指定商品とし、かつ、単数の英単語「HELL」を含む登録商標は、申立人の所有に係るもの以外に存在しない。
また、「HELL」を自他商品識別標識とする商品「エナジードリンク」は、現時点では、我が国において馴染みが薄いが、欧州、特に、ハンガリー、グルジア等の東欧諸国においては、周知、著名な商標になっている(甲10、甲11)。
さらに、ニューヨーク上場企業Cision Ltd.companyの子会社であるPR Newswireによる2023年7月4日の記事「世界的センセーション-AIが独自のエナジードリンクを開発し、試飲」では、申立人が世界初のAIによるエナジードリンクを開発したことが紹介されている(甲12)。
このように、引用商標を付した商品「エナジードリンク」が世界において使用されている状況下、本件商標の商標権者は、自ら「世界のお酒の輸入販売 アイデイ商事」と謳っている(甲13、甲14)だけでなく、その輸入販売している商品の商標も、自己の名義で商標登録を受けている事実がある(甲15)。
そして、本件商標及び登録第6267657号商標「ボムグラス」(第21類:グラス,ガラスの食器類)を除き、その所有に係る登録商標の指定商品は、すべて第33類に属する商品を指定しており、「コカコーク」等、怪しげな商標を登録している事実もある一方、第32類に属する商品を指定した登録商標は、本件商標以外に存在しない。
これはまさしく、本件商標の商標権者は、申立人の製造販売に係る商品の存在を知りつつ、未だ我が国における市場に大々的に展開されていないことを奇貨として、あえて、識別力のない「Liquid」を冠したにすぎない本件商標について商標登録を得たものであることは容易に推認することができる。
3 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、上記1において言及したとおり、「液体」を意味する英単語「Liquid」と「地獄」を意味する英単語「Hell」からなるものであって、「Liquid」の語は、「液体」を意味するものであるから、指定商品との関係上、識別力を有しないものであるのに対し、「Hell」の語は、「地獄」を意味する悪しき語で、商標として採択されることは極めて稀であるから、極めて強い識別力を有するものである。また、本件商標を構成する欧文字からなる熟語は存在しない。
このように、本件商標を構成する欧文字「Liquid」と「Hell」の間には、識別力に関する顕著な質的軽重があり、「Liquid」部分からは、出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるものであり、かつ、「Hell」部分は、取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるものであるから、本件商標は、商標の構成部分の一部である後半の「Hell」のみを分離し、引用商標との類否を判断することが許されるものである。
かかる分離観察の下では、本件商標の構成中、「Hell」部分が「HELL」を要部とする引用商標に類似することは明らかである。すなわち、外観上、2文字目以降が大文字、小文字の差異でしかなく、「ヘル」の称呼、「地獄」の観念を生ずる点で共通している。
また、本件商標の外観、称呼及び観念等によって需要者、取引者に与える印象、記憶・連想から、これに接する需要者、取引者が、申立人の業務に係る商品であると想起することも十分にあり得るところである。
よって、本件商標は、引用商標に類似するものであって、指定商品も同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「Liquid Hell」の文字を標準文字で表してなるところ、「Liquid」と「Hell」の文字の間には空白を有するものの、該文字は、同じ書体、同じ大きさで表されているものであって、外観上、まとまりよく一体的に看取されるものである。
そして、本件商標の構成中、「Liquid」の文字は「液体」の、「Hell」の文字は「地獄」等の意味を有する英語(いずれも「新英和(第7版)中辞典」株式会社研究社)であるものの、これらを結合した「Liquid Hell」の文字全体としては、辞書等に掲載のあるものではなく、特定の意味合いを認識させることのない一種の造語として認識されるものである。
また、本件商標の構成全体から生じる「リキッドヘル」の称呼も格別冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
さらに、本件商標の構成中「Liquid」の文字部分は、上記のとおり「液体」の意味を有するものの、当審において職権で調査しても、当該部分が、取引者、需要者に対し、本件商標の指定商品との関係において、商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないものと認めるに足りる事情、又は「Hell」の文字部分が、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認めるに足りる事情も見いだせない。
してみると、本件商標の上記構成及び称呼からすれば、これに接する取引者、需要者は、「Hell」の文字部分にのみ着目することなく、本件商標の構成全体をもって、一体不可分の造語を表したものとして認識し、把握するというのが自然である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「リキッドヘル」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標
前記第2の1ないし3のとおり、引用商標1は「HELL」の欧文字を横書きしてなり、引用商標2は「HELL」の欧文字と「ヘル」の片仮名を二段に横書きしてなり、引用商標3は、「HELL ENERGY」の欧文字及び「ヘルエナジー」の片仮名を二段に横書きした構成からなるところ、「HELL」の文字は、上記(1)のとおり、「地獄」等の意味を有する英語(前掲書)であるから、引用商標1からは、その構成文字に相応して、「ヘル」の称呼を生じ、「地獄」の観念を生じるものである。
また、引用商標2の「ヘル」の片仮名部分は、「HELL」の読みを表したものと容易に認識されるから、引用商標2からは、その構成文字に相応して、「ヘル」の称呼を生じ、「地獄」の観念を生じるものである。
さらに、引用商標3の「ENERGY」の文字は、「エネルギー」等の意味を有する英語(「新英和(第7版)中辞典」株式会社研究社)であり、「ヘルエナジー」の片仮名部分は、「HELL ENERGY」の読みを表したものと容易に認識されるから、引用商標3からは、その構成文字に相応して、「ヘルエナジー」の称呼を生じ、「地獄のエネルギー」程の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、「Liquid」又は「ENERGY」の文字の有無という明らかな差異があることに加え、本件商標が欧文字の大文字と小文字から構成されるのに対し、引用商標の欧文字部分は、いずれも大文字のみから構成され、引用商標2及び3とは、片仮名の有無という差異もあることから、両者は、外観上相紛れるおそれはない。
次に称呼においては、本件商標から生じる「リキッドヘル」の称呼と、引用商標から生じる「ヘル」又は「ヘルエナジー」の称呼とは、「リキッド」又は「エナジー」の音の有無という明らかな差異を有し、この差異音が称呼全体に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、語調、語感が異なることから、両者は、称呼上相紛れるおそれはない。
さらに、観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないから、両者は、観念上相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものといえるから、両者は紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品が、引用商標の指定商品と同一又は類似のものを含むとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 申立人の主張について
申立人は、「HELL」を自他商品識別標識とする商品「エナジードリンク」は、現時点では、我が国において馴染みが薄いが、欧州、特に、ハンガリー、グルジア等の東欧諸国においては、周知、著名な商標になっている旨主張し、甲第10号証ないし甲第12号証を提出している。
しかしながら、引用商標に関し、我が国における申立人の業務に係る商品の販売数量などの取引実績を客観的に把握し得る証左や、新聞、雑誌等による広告内容、広告費等についての実情を具体的及び量的に把握し得る証左は何ら提出されていないから、申立人提出の証拠をもって、引用商標が申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
よって、申立人のかかる主張は、採用することができない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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