商標異議申立
2024-900074
クラウンドリス、クラウン、ドリス
- 審判番号
- 2024-900074
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-130250
- 登録番号
- 6776303
- 請求日
- 2024年03月27日
- 審決日
- 2024年11月11日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】塚本 正太
- 【異議申立人】トヨタ自動車 株式会社
- 【異議申立人代理人】中田 和博
- 【異議申立人代理人】青木 博通
- 【異議申立人代理人】片山 礼介
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 大島 勉
- 分類
- T1651.18 -Y (W1235) / T1651.251-Y (W1235) / T1651.252-Y (W1235) / T1651.253-Y (W1235) / T1651.255-Y (W1235) / T1651.261-Y (W1235) / T1651.262-Y (W1235) / T1651.263-Y (W1235) / T1651.271-Y (W1235)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6776303号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6776303号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6776303号商標(以下「本件商標」という。)は、「Crown Doris」の文字を標準文字により表してなり、令和5年11月22日に登録出願、第12類及び第35類に属する別掲のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同6年1月15日に登録査定され、同年2月5日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は次のとおりであり、いずれも現に有効に存続している。
(1)登録第926786号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:CROWN
登録出願日:昭和39年6月26日
設定登録日:昭和46年8月23日
指定商品:第12類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成13年12月19日書換登録)
(2)登録第6770619号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:CROWN(標準文字)
登録出願日:令和5年7月6日
設定登録日:令和6年1月16日
指定役務:第35類及び第37類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
2 申立人が、商品「自動車」及び役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について長年にわたり使用し、周知著名と主張する、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するとして引用する商標は、「Crown」(以下「引用商標3」という。)の欧文字からなる商標であり、また、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、「CROWN」(以下「引用商標4」という。なお、引用商標1ないし引用商標4をまとめていうときは「引用商標」という。)の欧文字からなる商標である。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第3条第1項柱書に違反し、同法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消される旨申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。
1 商標法第3条第1項柱書違反について
本件商標の出願人は個人であり、「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(総合小売等役務)を指定しており、「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」など、類似の関係にない複数の小売役務を指定している。
本件商標の出願経過をみても、本件商標の広範囲にわたる指定役務に関する使用証拠や使用計画書なども提出されていない。
本件商標は、登録査定時において、本件商標の登録権者が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標に当たらない上、将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思があったともいい難い。
したがって、本件商標は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に関して行われたものとはいえず、商標法第3条第1項柱書に違反することは明らかである。
2 商標法第4条第1項第10号該当について
本件商標は、「Crown」と「Doris」から構成されている。
「Crown」は王冠の意味を有するとともに、申立人が商品「自動車」、役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に長年にわたり使用している周知著名商標に該当する。
一方、「Doris」は女性の名前であるが、日本人には馴染みがない語である。
よって、「Crown」の文字部分は、指定商品「自動車」、指定役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係で、「Doris」の文字部分より識別力が高く、取引者、需要者に対して、強く支配的な印象を与えることは明らかである。
そうすると、本件商標の「Crown」の文字部分と「Doris」の文字部分とが、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえず、本件商標から「Crown」の文字部分を要部として観察することが許されるべきである。
本件商標から「Crown」の文字部分を要部として抽出した場合、「クラウン」の称呼が生じ、また、「王冠」又は申立人の商品「自動車」、役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての周知著名な商標の観念が生じる。
そこで、本件商標の「Crown」の要部と申立人の周知著名商標「Crown」(引用商標3)を比較すると、「Crown」の文字列の外観、「クラウン」の称呼、「王冠」又は申立人の商品「自動車」についての周知著名な商標の観念において同一であり、両商標が類似することは明らかである。
本件商標の指定商品、第12類「自動車」、指定役務、第35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と申立人の周知著名商標「Crown」が使用されている商品「自動車」、役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、同一の営業主が製造,販売、提供する商品又は役務に該当するため、類似することは明らかである。
以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に規定する、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をする商標に該当することは明らかである。
3 商標法第4条第1項第11号該当について
本件商標は、「Crown」と「Doris」から構成されている。
「Crown」は王冠の意味有するとともに申立人が商品「自動車」、役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に長年にわたり使用している周知著名商標に該当する。
一方、「Doris」は女性の名前であるが、日本人には馴染みがない語である。
よって、「Crown」の文字部分は、指定商品「自動車」、指定役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係で、「Doris」の文字部分より識別力が高く、取引者、需要者に対して、強く支配的な印象を与えることは明らかである。
そうすると、本件商標の「Crown」の文字部分と「Doris」の文字部分とが、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえず、本件商標から「Crown」の文字部分を要部として観察することが許されるべきである。
本件商標から「Crown」の文字部分を要部として抽出した場合、「クラウン」の称呼が生じ、また、「王冠」又は申立人の商品「自動車」についての周知著名な商標の観念が生じる。
そこで、本件商標の「Crown」の要部と引用商標1及び引用商標2を比較すると、「Crown」の文字列の外観、「クラウン」の称呼、「王冠」又は申立人の商品「自動車」についての周知著名な商標の観念において同一であり、両商標が類似することは明らかである。
本件商標と引用商標1及び引用商標2の指定商品、指定役務は、12類「自動車」、35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」で一致する。
以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に規定する、当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をする商標に該当することは明らかである。
4 商標法第4条第1項第15号該当について
申立人は、1955年から現在まで継続して、65年以上、商標「CROWN」(引用商標4)を商品「自動車」、役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について使用しており、周知著名になっている。
(1)本件商標「Crown Doris」と引用商標4との類似性
本件商標が引用商標4に類似することは、上記2の商標法第4条第1項第10号該当について、で述べたとおりである。
(2)引用商標4の周知著名性と独創性の程度
引用商標4は、自動車や自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供との関係で、一般に使用される語ではないので、独創性が高いことは明らかである。
また、引用商標4は、自動車や自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供について、以下に述べるように1955年から現在まで65年以上継続的に使用され、活発に宣伝広告もされているから、引用商標4は、本件商標の出願日(2023年11月22日)前から周知著名になっていることは明らかである。
特許庁も商標登録第926786号(第12類)について、第14類、第9類の商品について防護標章登録を認めている(甲1)。
ア 引用商標4の使用期間及び使用場所
引用商標4は、1955年から商品「自動車」、役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に、現在まで、65年以上にわたり、全国で使用されており(甲3、甲4)、使用場所は、全国約4500店舗以上の申立人の自動車販売店である(甲5)。
イ 引用商標4の使用に係る自動車の各年の登録台数及び売上高
引用商標4の使用に係る自動車の過去10年間の各年の登録台数及び売上高(2013年から2023年)は、過去10年間で約18万台の自動車を登録し、売上高が約9700億となっており、1955年から2010年までの累計登録台数は、512万3015台となっている(甲3、甲6)。
ウ 引用商標4に係る自動車を紹介した書籍
「Googleブックス」の検索によると、1996年から2024年までに、引用商標4に係る自動車を紹介した書籍が出版されている(甲7)。
エ 引用商標4に関する新聞広告
引用商標4の使用に係る自動車の広告が、2018年から2023年の新聞に掲載されている(甲8、甲9)。
オ 引用商標4に関する雑誌広告
引用商標4の使用に係る自動車の広告が、2018年から2023年の雑誌に掲載されている(甲10、甲11)。
カ テレビ及びYOUTUBEによる広告
新型「CROWN」についてテレビ及びYOUTUBEで広告を行っている(甲15)。
キ 防護標章登録と周知著名商標リストヘの掲載
引用商標4は、商標登録第926786号防護1(第14類)及び防護2(第9類)として登録されており(甲1)、周知著名商標リストにも掲載されている(甲16)。
(3)本件商標の指定商品等と引用商標の使用に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
本件商標の第12類の全指定商品、第35類の指定役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,二輪自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標4の使用されている商品「自動車」及び役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、乗り物に関連する商品・役務という点で共通している。
(4)商品等の取引者及び需要者の共通性
本件商標の第12類の全指定商品、第35類の指定役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,二輪自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標4の使用されている商品「自動車」及び役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の取引者及び需要者は、乗り物に関連する商品・役務の取引者及び需要者という点で共通している。
(5)その他の取引の実情
1955年から販売された「CROWN」は高級車として有名であり、「いつかはクラウン」もいつかは乗りたい高級車のキャッチフレーズとして有名である。
引用商標4については、「CROWN」の語を含む複数の派生商標があり、本件商標が自動車や自動車の小売に使用された場合には、これらの派生商標の一つとして混同される可能性がある(甲12)。
2022年7月に発表された新型「CROWN」は、米国もターゲットにした斬新なデザインで話題になった(甲13)。
新型「CROWN」の全モデルを展示する専門店「THE CROWN」も2023年からオープンして、現在、神奈川県、愛知県、福岡県に3店舗がある(甲14)。
(6)小括
以上述べたように、本件商標と引用商標4の類似性、引用商標の周知著名性、本件商標の指定商品・役務と引用商標4の使用に係る商品・役務の共通性、取引者及び需要者の共通性、取引の実情(引用商標の派生商標の存在、米国もターゲットにした斬新なデザインによる話題性、専門店「THE CROWN」の存在)を考慮すれば、本件商標が指定商品・指定役務に使用された場合、申立人の業務に係る商品又は役務と混同(狭義の混同又は広義の混同)を生ずるおそれがあることは明らかである。
5 結語
以上述べたように、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反し、同法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「Crown Doris」の欧文字を標準文字で表してなるところ、「Crown」の文字と「Doris」の文字との間に1文字分のスペースを有しているとしても、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさをもって外観上まとまりよく一体的に表されており、構成全体から生じる「クラウンドリス」の称呼もよどみなく一連に称呼できる。
そして、本件商標の構成中、「Crown」の文字は「王冠」等の意味を、「Doris」の文字は「ドリス(女の名)」(いずれも「ジーニアス英和辞典 第6版」大修館書店発行)の意味を有する英語であるところ、本件商標は、その構成文字全体として、特定の意味を有する成語となるものではないから、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではない一種の造語として認識されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体に相応して「クラウンドリス」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
(2)引用商標1及び引用商標2について
引用商標1及び引用商標2は、上記第2の1のとおり、「CROWN」の欧文字を横書きした構成からなるところ、当該文字は「王冠」等の意味を有するものであるから、これより「クラウン」の称呼を生じ、「王冠」等の観念を生じる。
(3)本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否について
本件商標と引用商標1及び引用商標2とを比較するに、両者の外観においては、語頭の「Crown(CROWN)」の欧文字を含む点において共通するが、語尾における「Doris」の文字の有無の差異により、全体としては異なる語を表してなると容易に理解できるもので、判別は容易である。
次に、両者の称呼においては、本件商標から生じる「クラウンドリス」の称呼と、引用商標1及び引用商標2から生じる「クラウン」の称呼とは、構成音及び音数において明らかな差異を有するものであるから、両称呼をそれぞれ一連に称呼しても、語調、語感が異なり、聴別は容易である。
さらに、両者の観念においては、本件商標は特定の観念を想起させないものであるのに対し、引用商標1及び引用商標2は、「王冠」の観念を生じるものであるから、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であり、観念において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察すれば、商品及び役務の出所について誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは非類似の商標であるから、その指定商品及び指定役務を比較するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標の周知性
ア 申立人主張及び提出証拠によれば、次のとおりである。
(ア)申立人は、商品「自動車」について、「CROWN」又は「クラウン」の名称を1955年(昭和30年)から使用しており、当該自動車の国内登録累計台数は、1955年から2011年(平成23年)までで、約515万台である(甲3、甲4)。
(イ)申立人に係る全車種の自動車を販売するカーディーラーの店舗数は約4,900店舗(2023年4月)となっている(甲5)。
(ウ)申立人の知的財産部が作成した2024年5月10日付けの陳述書によれば、2013年から2023年の期間における「Crown/クラウン」の名称に係る自動車の登録台数は約18万台、売上高は約9700億円とされている(甲6)。
(エ)1996年から2024年にかけて、「CROWN」又は「クラウン」の名称に係る自動車を紹介した書籍が出版されている(甲7)。
(オ)2018年から2024年にかけて、新聞及び雑誌等の各種メディアにおいて、「CROWN」又は「クラウン」の名称に係る自動車に関する広告が行われている(甲8~甲11、甲15)。
イ 上記アによれば、申立人は、1955年から継続して、商品「自動車」及び役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「申立人商品役務」という。)について引用商標を使用しているとはいい得るものの、引用商標を使用した申立人商品役務の我が国における市場占有率(販売シェア等)は明らかでなく、また、申立人商品役務の宣伝広告や売上高についても、それらの実績等を裏付ける具体的かつ客観的な資料は見いだせない。
したがって、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人商品役務を表示する商標として、一定程度知られているとしても、需要者の間に広く認識されているものとは認めることができない。
(2)本件商標と引用商標3の類否
ア 本件商標
本件商標は、上記1(1)のとおり「Crown Doris」の欧文字を標準文字で表してなり、「クラウンドリス」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
イ 引用商標3
引用商標3は、上記第2の2のとおり「Crown」の欧文字を横書きしてなり、「クラウン」の称呼を生じ「王冠」の観念を生じる。
ウ 本件商標と引用商標3の類否
本件商標と引用商標3とを比較するに、両者の外観においては、語頭の「Crown」の欧文字を含む点において共通するが、語尾における「Doris」の文字の有無の差異により、全体としては異なる語を表してなると容易に理解できるもので、判別は容易である。
次に、両者の称呼においては、本件商標から生じる「クラウンドリス」の称呼と、引用商標3から生じる「クラウン」の称呼とは、構成音及び音数において明らかな差異を有するものであるから、両称呼をそれぞれ一連に称呼しても、語調、語感が異なり、聴別は容易である。
さらに、両者の観念においては、本件商標は特定の観念を想起させないものであるのに対し、引用商標3は、「王冠」の観念を生じるものであるから、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標3は、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であり、観念において相紛れるおそれはないから、それらを総合して考察すれば、商品及び役務の出所について誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標である。
(3)申立人の主張について
申立人は、本件商標は「Crown Doris」の欧文字からなるところ、「Crown」の欧文字は、申立人商品役務に長年にわたり使用している周知著名商標に該当する。一方、「Doris」は女性の名前であるが、日本人には馴染みがない語である。よって、「Crown」の文字部分は、「Doris」の文字部分より識別力が高く、取引者、需要者に対して、強く支配的な印象を与え、本件商標から「Crown」の文字部分を要部として観察することが許される旨主張している。
しかしながら、本件商標の「Crown Doris」の文字は、「Crown」の文字と「Doris」の文字との間に1文字分のスペースを有しているとしても、同種の文字(欧文字)を、横一列にまとまりよく一体に表しており、これより生じる「クラウンドリス」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものであるから、本件商標は、かかる構成及び称呼においては、当該構成文字全体が一体不可分のものとして認識、把握されるものと判断するのが相当である。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
(4)小括
引用商標3は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものではなく、本件商標とは、上記(2)ウのとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標3を使用する商品及び役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標4の著名性
引用商標4は、上記2(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標とはいえない。
(2)本件商標と引用商標4の類似性の程度
引用商標4は、上記第2の2のとおり「CROWN」の欧文字を横書きしてなり、「クラウン」の称呼を生じ「王冠」の観念を生じる。また、引用商標4は、上記第2のとおり、引用商標1及び引用商標2とつづりを同じくすることから、上記1(3)のとおり、本件商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、類似性の程度は低い。
(3)独創性の程度
引用商標4である「CROWN」の欧文字は、上記(2)のとおり「王冠」の意味を有する語であって、我が国においては広く知られている成語であるから、独創性の程度は低いといえる。
(4)本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標4を使用する商品及び役務との関連性及び需要者の共通性
本件商標の第12類の全指定商品及び第35類の指定役務中「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、引用商標4の使用に係る商品「自動車」及び役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは、ともに乗物に関連する商品又は役務であるから、これらの商品及び役務は関連性を有し、需要者を共通にする場合があるといえる。
(5)出所の混同のおそれ
上記(1)ないし(4)のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標4を使用する商品及び役務とが関連性を有し、需要者を共通にする場合があるとしても、引用商標4は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標とはいえず、類似性及び独創性の程度が低い。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
(6)小括
したがって、本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれはないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第3条第1項柱書について
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用している商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10019号、平成24年5月31日判決言渡)。
申立人は、本件商標権者は個人であり、「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(総合小売等役務)を指定したり、類似の関係にない複数の小売役務を指定している。また、本件商標の出願経過をみても、本件商標の広範囲にわたる指定役務に関する使用証拠や使用計画書なども提出されていない。したがって、本件商標登録は、商標法第3条第1項柱書に違反することは明らかである旨主張している。
しかしながら、当審の職権調査によれば、本件商標の商標登録出願の願書には、商標を使用する意思に関する証明書及び事業計画書が添付されており、当該商標を使用する意思に関する証明書には、第35類の指定役務の事業予定がある旨及び令和6年4月頃には当該役務の全てについての商標の使用を開始する予定である旨の記載があることが確認できる。
そうすると、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定役務について現に使用していなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえる。また、申立人が提出する全証拠によっては、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも該当せず、かつ、同法第3条第1項柱書の要件を具備しないとはいえないから、その登録は同法第3条及び同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-900074