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商標異議申立

2024-900073

エムシイケンタウロス、ケンタウロス

審判番号
2024-900073
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2022-130899
登録番号
6770758
請求日
2024年03月25日
審決日
2025年03月24日
公報発行日
2025年05月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】一般社団法人MC KENTAUROS
  • 【権利者代理人】小林 宜延
  • 【異議申立人】株式会社 ユナイテッドエフォート
  • 【異議申立人代理人】泉 克文
審判長/審判官
  • 審判長 旦 克昌
  • 審判官 小林 裕子
  • 審判官 大島 康浩
分類
T1651.23 -Y (W3541) / T1651.25 -Y (W3541) / T1651.271-Y (W3541) / T1651.222-Y (W3541)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項、商標法第4条
データ出所
審決公報(XML)

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登録第6770758号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6770758号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 1 本件商標 本件登録第6770758号商標(以下「本件商標」という。)は、「MC KENTAUROS」の文字を標準文字で表してなり、令和4年11月16日に登録出願、同5年12月14日に登録査定され、第35類「ステッカーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第41類「災害救援に関する訓練,救急法に関する訓練の提供,自動二輪車の安全走行の訓練及び指導,災害ボランティア活動のための実地訓練及び指導,セミナーの企画・運営又は開催,娯楽イベントの企画・運営又は開催」を指定役務として、同6年1月17日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由において引用する登録商標及び日本国内において需要者の間に広く認識されていると主張する標章は、以下のとおりである。 (1)登録第1776712号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様:別掲のとおり 登録出願日:昭和57年9月8日 設定登録日:昭和60年6月25日 指定商品:第3類、第6類、第8類、第10類、第14類、第18類、第21類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 書換登録日:平成18年3月1日 (2)登録第2073760号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様:別掲のとおり 登録出願日:昭和59年7月17日 設定登録日:昭和63年8月29日 指定商品:第6類、第9類、第16類、第19類及び第20類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 書換登録日:平成21年10月28日 (3)登録第2110912号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様:別掲のとおり 登録出願日:昭和59年7月17日 設定登録日:平成元年2月21日 指定商品:第9類及び第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 書換登録日:平成21年10月28日 (4)登録第2116135号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様:別掲のとおり 登録出願日:昭和61年2月18日 設定登録日:平成元年2月21日 指定商品:第5類、第9類、第10類、第16類、第17類、第20類から第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 書換登録日:平成21年10月28日 (5)申立人が、本件登録異議の申立ての理由において引用する標章(以下「引用標章」という。)は、別掲のとおりであり、本件商標の登録出願の日以前より、株式会社ケンタウロス社(以下「ケンタウロス社」という。)が経営する店舗において販売する「ステッカー」について使用し、日本国内において取引者の間に広く認識されていると主張するものである。 なお、以下、引用商標1ないし引用商標4をまとめていう場合は、「引用商標」といい、引用商標と引用標章をまとめていう場合は「申立人商標」という。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第61号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)本件商標 ア 本件商標の構成 本件商標(甲1)は、「MC KENTAUROS」という一連の英文字を横書きしたものであり、「MC」という英文字と「KENTAUROS」という英文字とを、1文字分のスペースをあけて結合して構成されている。 本件商標は、標準文字として出願されているから、「MC KENTAUROS」という文字の形態は限定されない。 イ 本件商標の指定役務 本件商標の「商品及び役務の区分」は第35類、第41類であり、その「指定商品又は指定役務」は以下に列挙された役務群である。 第35類「ステッカーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」 第41類「災害救援に関する訓練,救急法に関する訓練の提供,自動二輪車の安全走行の訓練及び指導,災害ボランティア活動のための実地訓練及び指導,セミナーの企画・運営又は開催,娯楽イベントの企画・運営又は開催」 (2)引用商標 ア 引用商標の構成 引用商標の構成(デザイン)は、昭和39年(1964年)に(故)I氏と数名の仲間によって結成されたモーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」(甲16)を表示するマーク(標章)として、同クラブのメンバーであったデザイナー(故)H氏によって創作されたものである(甲15)。 引用商標の上部に含まれている英文字「KENTAUROS」は、モーターサイクル・クラブの名称「KENTAUROS/ケンタウロス」に対応する英文字なのであり、引用商標は、指定商品に付される商標であるだけでなく、それ自体が同クラブを表示するマーク(標章)でもある。それゆえに、中央にある英文字「A」の位置で逆V字状(「へ」の字状)に屈曲させてその周囲を枠で囲んだ英文字「KENTAUROS」を上部に配置し、その下部に、ギリシア神話に登場する半人半獣のケンタウロス像(馬の首から上が人間の上半身に置き換わったような姿をしている)をデフォルメして配置すると共に、前記ケンタウロス像の頭部にオートバイ(モーターサイクル)用ヘルメットを被せ、さらに、前記ケンタウロス像に重なるようにオートバイ用チェーンをほぼ円形に配置した構成になっていると解される。 また、引用商標の下部には、英文字「MC」が配置されている。この英文字「MC」は、「モーターサイクル・クラブ」の略称であり、上部にある英文字「KENTAUROS」と一緒になって、モーターサイクル・クラブ(MC)「KENTAUROS/ケンタウロス」を表示している。 そして、引用商標の上部に配置された、逆V字状(「へ」の字状)に屈曲されかつ周囲が枠で囲まれた英文字「KENTAUROS」の部分は、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の「看板(カンバン)」と呼ばれている(甲15)。 イ 引用商標の商標権者 引用商標は、ケンタウロス社が、昭和57年~昭和61年(1982年~1986年)に特許庁に出願して登録を受けたものである。したがって、引用商標に係る商標権の当時の商標権者は、ケンタウロス社である(甲2~甲5)。 その後、平成27年(2015年)になって、ケンタウロス社が所有する引用商標に係る商標権は、申立人がケンタウロス社から正当に譲り受けた(甲6~甲9)。引用商標に係る商標権の移転登録日は、平成27年(2015年)5月25日である。 譲り受けてから現在に至るまで、申立人が引用商標に係る商標権を所有している。 ウ 引用商標の使用者 申立人がケンタウロス社から引用商標に係る商標権を譲り受けた平成27年(2015年)から現在に至るまでは、引用商標に係る商標権の所有者は申立人に変わっているが、譲り受け前と同様に、ケンタウロス社が、同社が販売する商品に引用商標を付してそれらの使用を継続してきている。申立人は引用商標を使用していない。 したがって、引用商標が出願された昭和57年から昭和61年(1982年~1986年)当時から現在に至るまで、引用商標の指定商品について使用している者(使用者)は、一貫して、ケンタウロス社である。 また、申立人がケンタウロス社から引用商標に係る商標権を譲り受けた後も、ケンタウロス社が引用商標の使用を適法に継続できたのは、申立人とケンタウロス社の間で専用使用権設定契約が締結されているからである(甲12)。 甲第12号証から明らかなように、当該専用使用権設定契約では、日本国内において、引用商標に係る商標権の全範囲について、ケンタウロス社に専用使用権が設定されている。したがって、日本国内において、引用商標の指定商品について使用できるのは、ケンタウロス社のみとなっている。 (3)本件商標と引用商標の類否 ア 外観について 本件商標は、「MC KENTAUROS」という一連の英文字を横書きしたものであり、「MC」という英文字と「KENTAUROS」という英文字とを、1文字分のスペースをあけて分離して結合して構成されている。本願商標は、標準文字として出願されているから、「MC KENTAUROS」という文字の形態は限定されない。 他方、上述したように、引用商標の上部には、逆V字状(「へ」の字状)に屈曲され、かつ、周囲が枠で囲まれた英文字「KENTAUROS」が配置されている。また、引用商標の下部には、デフォルメされたケンタウロス像の頭部にオートバイ用ヘルメットを被せ、前記ケンタウロス像に重なるようにオートバイ用チェーンをほぼ円形に配置した部分が図形されており、その図形には英文字「MC」が記載されている。 したがって、引用商標は、本件商標「MC KENTAUROS」を構成する2つの英文字「MC」と英文字「KENTAUROS」を含んでいることが明らかである。つまり、本件商標と引用商標は、全体観察によれば、それらの外観は異なっているが、それらは2つの英文字「MC」と「KENTAUROS」を含んでいる点で共通しており、2つの英文字「MC」と「KENTAUROS」の配置・並び方が異なるだけである。 イ 称呼について 本件商標からは、「エムシー」、「ケンタウロス」、さらに、「エムシーケンタウロス」という3つの称呼が生じると解される。これは、本件商標では、「MC」という英文字と「KENTAUROS」という英文字が、スペースによって分離して併記されているからである。 これに対し、引用商標では、その上部にある英文字「KENTAUROS」から「ケンタウロス」の称呼が生じ、その下部にある英文字「MC」から「エムシー」の称呼が生じると解される。 さらに、引用商標は、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」を表示するマーク(標章)として制作された(甲15)という経緯がある。また、モーターサイクル・クラブは、その英語表記「Motorcycle Club」の頭文字をとって「MC」と略称されることが多いし、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」も、以前から自己を「MC KENTAUROS」あるいは「MCケンタウロス」と表示している(甲13)という事情がある。したがって、引用商標に接した需要者はその上部の英文字「KENTAUROS」から生じる称呼「ケンタウロス」と、その下部の英文字「MC」から生じる称呼「エムシー」とを、頭の中で組み合わせ、「エムシーケンタウロス」という称呼を作り出す可能性が極めて高いと考えられる。そうすると、引用商標からは、「エムシー」及び「ケンタウロス」という称呼に加えて、「エムシーケンタウロス」という称呼も生じることになる。 以上述べたところから、本件商標と引用商標は、いずれも、共通する3つの称呼「エムシー」、「ケンタウロス」及び「エムシーケンタウロス」を生じることになる。 よって、本件商標と引用商標の各々は、称呼が互いに同一又は類似である。 ウ 観念について 本件商標は、英文字「KENTAUROS」を含んでいるから、「ギリシア神話に登場する半人半獣の種族であるケンタウロス」という観念を生じることが明らかである。 また、本件商標は、英文字「MC KENTAUROS」より構成されるから、以下に述べる理由により、「モーターサイクル・クラブのケンタウロス」という観念も生じる。 すなわち、一般的に言って、「モーターサイクル・クラブ」という文言は、簡略化して「MC」と略称されることが多い。このため、「モーターサイクル・クラブ×××」という名称は、しばしば「MC×××」と略称される。実際、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス自身も、自己を「MC KENTAUROS」又は「MCケンタウロス」と名乗っている(甲13、甲29)。 したがって、引用商標に係るモーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」が著名であることも併せて考慮すると、英文字「MC KENTAUROS」より構成される本件商標からは、「ギリシア神話に登場する半人半獣の種族であるケンタウロス」という観念だけではなく、「モーターサイクル・クラブのケンタウロス」という観念も生じると考えられる。 以上から、本件商標と引用商標は、いずれも、「ギリシア神話に登場する半人半獣の種族であるケンタウロス」という観念と共に、「モーターサイクル・クラブのケンタウロス」(これはモーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」を意味する)という観念も生じる。 よって、本件商標と引用商標は、観念も互いに同一又は類似である。 以上述べたとおり、本件商標と引用商標は、称呼及び観念の2つの面で同一又は類似であるから、本件商標と引用商標とは、全体として類似しているとの結論になる。 (4)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品 本件商標の指定役務と引用商標の指定商品とを比較検討すると、引用商標の各々の指定商品に含まれる商品群は、本件商標の指定役務に含まれる役務群とは、明らかに類似しているとまではいい難い。 (5)引用商標が付された商品の販売形態 ア 引用商標が付された商品(ケンタウロス・グッズ)は、引用商標に係る商標権の専用使用権者であるケンタウロス社が設置・運営する、「KENTAUROS/ケンタウロス」と称する店舗(ショップ)で販売されている(甲24の1~甲24の4)。 甲第25号証の1ないし3及び5ないし6は、それぞれ、ケンタウロス社の店舗内に設置された、引用商標が付された商品群の展示ケースの写真である。甲第25号証の4は、同店舗内に設置された、引用商標が付された商品群の展示状況を示す写真である。 なお、前記店舗で展示されている商品は、引用商標が付された商品のすべてではない。換言すれば、引用商標が付された商品のすべてが、同店舗で展示・販売されているわけではない。引用商標を付された商品の告知資料(広告等)には掲載されているが、同店舗では展示・販売されていない商品も存在する。引用商標の上部(「へ」の字形の英文字「KENTAUROS」の部分)のみが付された商品(これもケンタウロス・グッズである)も、一緒に展示・販売されている。 イ 甲第24号証の1ないし6、甲第25号証の1ないし6、甲第26号証の1ないし7、甲第27号証の1ないし5、甲第28号証の1及び2によって明らかになったケンタウロス社の前記店舗の様子や、同店舗の営業日報、入荷票、棚卸報告書から容易に理解されるように、引用商標を付された商品を販売するケンタウロス社の店舗は、非常に小規模であり、また、前記店舗が設置されているのは、小規模で地味なビルの内部である。また、同店舗で販売される引用商標を付された商品の数も、以前からずっと、少数である。 また、ケンタウロス社は、前記店舗以外に店舗を有していないし、販売代理店等も有していない。 さらに、ケンタウロス社は、いわゆるネット販売(インターネットを通じた通信販売)も行っていないため、購入希望者は、引用商標が付された商品をいわゆるネット販売を通じて購入することができない状況にある。 つまり、引用商標を付された商品(ケンタウロス・グッズ)の購入希望者は、前記店舗に足を運ばなければ、その商品を購入することができないようになっているのである。 しかも、甲第27号証の1及び甲第28号証の1ないし2から理解されるように、前記店舗の営業日報には、当該営業日に販売された個々の商品について、わざわざ、「購入者の氏名(又は氏)」が記載されている。これは特筆すべきことであり、同種の商品を販売する通常の店舗では、ほとんど見ることができないものである。 これは、同店舗が「対面販売」を原則としているからであるが、その理由は、同店舗(ケンタウロス社)が、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の大事なしるし(同クラブを表示する標章あるいはシンボルマークである引用商標やその前記上位要部)が付された商品は、その販売者と購入希望者とがお互い顔を合わせて、お互いがどのような人物であるかを知ってから販売・購入されるべきであると考えているからである。 前記店舗での引用商標を付された商品(ケンタウロス・グッズ)の販売形態に関する上述した特徴は、引用商標が付された商品が、いわゆる大量生産・大量販売を目指して製造されたものではないことに起因する。 換言すれば、前記店舗の運営主体であるケンタウロス社が、引用商標が付された商品(ケンタウロス・グッズ)の購入者として考えているのは、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」のメンバー(族員)や同クラブの運営会員(クラブ員)と、同クラブの熱心なファンだけだからである。これらの人々は、少なくとも、同クラブの創設者でありリーダーでもあった(故)I氏による同クラブの設立趣旨や、同氏や同クラブの思考・行動の哲学、行動指針等に共感・共鳴する人々であるから、これらの人にだけ持ってほしいと考えているからである。 ウ 以上述べたように、遅くとも1980年代から、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」を表示する標章あるいはシンボルマークとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品(ケンタウロス・グッズ)であることを表示する商標として、さらに、同社が運営するショップ(店舗)「KENTAUROS/ケンタウロス」を表示する標章として、引用商標が日本国内で広く知られていたことに比べると、引用商標が付された商品(ケンタウロス・グッズ)の販売は小規模の店舗で、かつ一か所に限られており、また、同商品の販売数も少数であるのには違和感がある。しかし、それは、上述したように、引用商標4を付された商品(ケンタウロス・グッズ)は、同クラブのメンバー(族員)や同クラブの運営会員(クラブ員)と、同クラブの熱心なファンにだけ購入してほしいとの考えを、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」やケンタウロス社(前記店舗)が持っているからである。 したがって、引用商標を付された商品の販売が小規模で地味なビルの一室にある小さな店舗で行われていること、そして、引用商標が付された商品の販売数が少数であること、換言すれば、例えば、年間数万個(あるいはそれ以上)の単位で販売される大量生産・大量販売の商品ではないことは、引用商標が日本国内で広く知られていない(著名でない)ことには直結していない。 見方を変えれば、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」及びケンタウロス社は、あえて、購入希望者が、同社の「KENTAUROS/ケンタウロス」と称する前記店舗にわざわざ足を運ばないと、引用商標が付された商品(ケンタウロス・グッズ)を入手できない状況を作り、同商品の「希少性」を高めてきたということができる。そのために、前記店舗を拡張したりしないし、前記店舗の支店を他の場所に設置したりしないし、委託販売等も行わないのである。 (6)引用商標の周知性 ア モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」は、複数回にわたってテレビ放送(NHK、テレビ東京)で紹介されてきているため(甲39の1~4、甲41、甲45、甲47、甲48の1及び2)、遅くとも1980年代から現在に至るまで、日本国内において広く知られており、特にモーターサイクル愛好者の間で著名であって、社会的評価も高いものである。 また、同クラブは、(故)I氏(とその仲間)により1964年(昭和39年)に設立されたものであり、現在に至るまで約60年の長きにわたり、神奈川県横浜市を拠点として途切れなく活動を続けてきている(甲14~18、甲40)。 そして、同クラブの活動範囲は、モーターサイクル関係の活動にとどまらず多分野にわたっており、単なるモーターサイクル・クラブではないことも、広く知られている。例えば、同クラブは以前、満月ツーリングと哲学セミナーを催し、能舞台公演「横浜飛天双〇能」立ち上げ(甲31、甲32)、独自メディアとして新聞(小冊子)「ペーパー・ケンタウロス」を発行した(甲21)。さらに、巨匠・J氏(写真家)による写真集の発行、俗に“300キロ公道ビデオ”と呼ばれた映像作品「VISION HIGH」、劇画「ケンタウロスの伝説」を原作とした劇場用アニメ映画の実現など、同クラブは種々の分野で活躍してきたし、現在もそうである(甲14、甲15、甲40)。 さらに、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」のメンバーは、同クラブの活動に参加する際には、常に、引用商標を背中に付けたベスト、ブルゾン(ジャンパー)等のオリジナル服を着用してきたし、現在もそうしている(甲15~甲22、甲23の1及び2、甲39の1~4、甲47、甲49)。同メンバーは、引用商標を付した種々のオリジナル商品(例えば、Tシャツ、ワッペン、ステッカー、ベルトバックル等々)を着用・所有し、人目につくところで使用してきたし、現在もそうしている(甲23の1及び2、甲51~甲58)。 ただし、平成28年(2016年)1月以降、ケンタウロス社の代表者はN氏(同クラブの二代目のリーダーでもある)に変わっている(甲10)。 イ 引用商標が付されたケンタウロス社のオリジナル商品は、遅くとも1980年代から現在にいたるまで、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」に係る者、例えば、同クラブのメンバー(族員)や運営会員(クラブ員)、又は、同クラブの熱心なファンであることを表示するグッズ(ケンタウロス・グッズ)として、日本国内及び外国において広く知られていたのであり、現在もそうである(甲15、甲17、甲18、甲21、甲23の1及び2、甲51~甲58)。 他方、引用商標が付されたケンタウロス社のオリジナル商品(ケンタウロス・グッズ)は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、日本国内において広く知られているが、いわゆる大量生産・大量販売を目指して製造されたものではなく、入手が容易ではないレア物(希少品)である、という特徴がある(甲29、甲51~甲58)。 これは、引用商標が付されたケンタウロス社のオリジナル商品は、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」のメンバー(族員)や運営会員(クラブ員)、又は、同クラブの熱心なファン(これらの人々は、少なくとも、同クラブの創設者でありリーダーでもあった(故)I氏による同クラブの設立趣旨や、同氏や同クラブの思考・行動の哲学、行動指針等に共感・共鳴していると考えられる)に限定して販売したい、という、ケンタウロス社と同社が運営するショップ(店舗)の販売姿勢に起因するものである(甲29の14)。 (7)引用標章の構成と使用商品について 引用標章は、引用商標と同じ構成(デザイン)を持ち、かつ引用商標の指定商品に含まれない商品である「ステッカー」を使用商品とする標章であり、商標登録はされていない。 上記(5)から理解されるように、引用商標が付されたケンタウロス社の店舗で販売されている商品には、引用商標の指定商品に含まれる商品群だけではなく、引用商標の指定商品に含まれない商品群がある。例えば、「ステッカー」である。 「ステッカー」(第16類、類似群コード:25B01)は、本件商標の指定役務である「ステッカーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(第35類、類似群コード:25BO1、35K13)と類似している。 (8)本件商標の商標法第4条第1項第10号の該当性 ア 引用標章は引用商標と同じ構成を持ち、引用商標は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、日本国内において広く知られ周知であった。したがって、引用標章も、遅くとも1980年代から現在に至るまで、日本国内において広く知られ周知であったことが明らかである。 次に、上記(3)で述べたように、引用商標は本件商標と類似していることから、引用商標と同じ構成を持つ引用標章も、本件商標と類似していることが明らかである。 さらに、引用標章が使用されている商品である「ステッカー」(第16類、類似群コード:25B01)は、本件商標の指定役務である「ステッカーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(第35類、類似群コード:25B01、35K13)と、明らかに類似している。 イ 引用標章が使用されている商品である「ステッカー」が、遅くとも1980年代から現在に至るまで、引用商標の指定商品に含まれる商品と同様に販売されてきたことは、上記(5)に述べた事項と、甲各号証、例えば、甲第18号証第6頁、甲第25号証の3、甲第27号証の1、2、4及び5、甲第28号証の2、甲第29号証の14から、容易に確認することができる。 したがって、遅くとも1980年代から現在にいたるまで、引用商標と同じ構成(デザイン)を持つ引用標章は、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示するものとして、また、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」に係る商品を表示するものとして、日本国内において需要者の間に広く認識されていることが明らかである。 ウ 以上述べたところから明らかなように、本件商標は、その出願時及び査定時において、日本国内において需要者の間に広く認識されている引用標章と類似しており、また、本件商標の指定役務である「ステッカーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(第35類)は、引用標章が使用されている商品である「ステッカー」(第16類)と類似している。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 よって、同法第43条の2第1号の規定により、「ステッカーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(第35類)に係る本件商標登録は、取り消されるべきである。 (9)本件商標の商標法第4条第1項第19号の該当性 ア 引用商標の周知性 上記(6)で述べたように、引用商標は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の名称(「MCKENTAUROS」、「MCケンタウロス」、「横浜ケンタウロス」といった別称を含む)と共に、同クラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示する。 商標としても、さらに、同社が運営するショップ(店舗)「KENTAUROS/ケンタウロス」を表示する標章あるいはシンボルマークとしても、日本国内において広く知られていたのであり、現在もそうである。特に、モーターサイクル愛好者の間では、知らない者はいない程度であったのであり、現在もそうである。 さらに、引用商標が付されたケンタウロス社の業務に係る商品(ケンタウロス・グッズ)は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、日本国内において広く知られているのに入手が困難で高い希少性を有していた、つまり、「レア物(希少品)」であったのであり、現在もそうである。 この「レア物(希少品)」であったことも、遅くとも1980年代から、日本国内において広く知られていたのであり、現在もそうである。 したがって、引用商標は、商標法第4条第1項第19号の適用の第1要件である「引用商標の周知性」を満たしている。 イ 本件商標と引用商標の類似性 次に、本件商標が、商標法第4条第1項第19号の適用の第2要件である「本件商標と引用商標の類似性」を満たしていることを説明する。 上記(3)で述べたように、本件商標と引用商標は、称呼及び観念の2つの面で同一又は類似であるから、本件商標と引用商標とは類似している。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の適用の第2要件である「本件商標と引用商標の類似性」を満たしている。 ウ 本件商標の使用の不正目的性 最後に、商標法第4条第1項第19号の適用の第3要件である「本件商標の使用の不正目的性」について説明する。 (ア)本件商標の図利目的性 本件商標が不正の目的をもって使用をするものに該当すると解される理由は、「本件商標の図利目的性」である。具体的には、次のようにいうことができる。 まず、本件商標の所有者(商標権者)の代表者であるA氏は、遅くとも1982年頃から現在に至るまで、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の熱心なファンであること(甲30の4)、そして、1982年頃に同クラブの横浜のクラブハウスを訪問して雑談した経験がある(甲30の4)とともに、2000年頃に同クラブが主催するイベントに参加した経験がある(甲30の6及び7)ことが判明している。 さらに、本件商標(商願2022-130899)の審査段階で発行された拒絶理由通知に対して出願人が提出した意見書(甲38の2)において、a.A氏は、同クラブの創設者兼初代リーダー(族長)であった(故)I氏と長年の付き合いがあり、同氏の意思に基づき、特定非営利活動法人ケンタウロスの目的を受け継ぐ組織として一般社団法人「MC KENTAUROS」を設立し、代表を務めていると主張しており、しかも、b.同様の内容を記載した「申述書」を、同氏の2番目の妻であるK氏と連名で提出しているという事実がある。 以上から、A氏は、本件商標が出願された令和4年(2022年)当時には、間違いなく、引用商標が付されたケンタウロス社のオリジナル商品(ケンタウロス・グッズ)が「レア物(希少品)」として高い金銭的価値を有することを知っていたと考えられるこれはほぼ間違いないことである。 したがって、本件商標が出願された令和4年(2022年)より前に、A氏は、ケンタウロス社が運営する前記店舗で販売する、引用商標が付されたケンタウロス社のオリジナル商品(これらはいずれも真正商品である)以外の任意の物品(例えば、ステッカー)を自己の販売店で販売する際に、あるいは、セミナーやイベント等の会場において各種役務(サービス)を提供する際に、その物品販売者や役務提供者の表示として本件商標を使用すれば、非真正商品の販売や非真正役務の提供が可能となると容易に気づいたはずである。 この場合、前記非真正商品や非真正役務は、A氏の意向に沿って、前記真正商品や真正役務と同等の高価格で、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」やケンタウロス社が設置・運営する前記店舗・会場以外の場所において、各種サービスを随時提供できる(これは同クラブやケンタウロス社の店舗の販売姿勢に反する)から、A氏が、前記気づきに続いて、「本件商標を商標権として持てば、労せずして高い収益を上げられる」と考えるに至ったであろうことは、至極当然に考えられる。 (イ)本件商標の図利目的性を立証する証拠 申立人は、本件商標の出願日や査定日である令和4年(2022年)~令和6年(2024年)当時における、上述した「本件商標の図利目的性」を裏付けるため、甲第29号証の1ないし15、甲第30号証の1ないし8、甲第34ないし38号証及び甲第61号証の1ないし6を提出する。 なお、以下の説明には、「同クラブの二代目リーダー(後継者)」に関する記述が含まれており、これは、一見したところでは、上述した「本件商標の図利目的性」とは直接の関係がないように見える。 しかし、A氏の行動(後述する甲第30号証の1~8を参照)は、「自己の行う活動が、同クラブの創設者であり初代リーダーでもあった(故)I氏の意向を受けたものであることを、何らかの形で表示することで、同クラブや(故)I氏の信用を借用して、労せずして高い収益を上げよう」との考えに基づくものと解されるから、同氏の前記行動は、上述した「本件商標の図利目的性」(これは「本件商標を商標権として持つことで、労せずして高い収益を上げよう」との考えに基づく)に強く関連しているということができる。 この根拠としては、本件商標(商願2022-130899)の審査段階で発行された拒絶理由通知(甲37)に対して、本件商標の出願人(本件商標の商標権者と同じ)が提出した意見書(甲38の1)において、本件商標の出願人が、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」のリーダー(族長)としての地位は、現在空位であって、その地位を事実上預かっているのは、(故)I氏の最後の末亡人(2番目の妻)のK氏であると解すべきであるとの主張(反論)をしていることが挙げられる。 以上述べたところから考えれば、本件商標が出願された令和4年(2022年)当時において、本件商標の出願前に、A氏は、引用商標が付された真正商品以外の任意の物品(非真正商品)を販売する際に、あるいは、飲食店やセミナーやイベント等において各種役務(サービス)を提供する際に、その物品販売者や役務提供者の表示として本件商標を使用すれば、非真正商品の販売や非真正役務の提供が可能となると容易に気づくことができたと推測される。 そして、A氏が、前記気づきに続いて、「本件商標を商標権として持てば、労せずして高い収益を上げられる」と考えるに至った可能性は高かったように思われる。 なお、本件商標の審査段階で提出された意見書(甲38の2)において、本件商標の所有者(商標権者)の代表であるA氏が、(故)I氏の意思に基づき、本件商標の所有者(商標権者)特定非営利活動法人ケンタウロスの後継として一般社団法人「MC KENTAUROS」を設立し、同氏の承諾を得て本件商標に係る商標登録出願(商願2022-130899)を行ったと主張していることも、「本件商標を商標権として持てば、労せずして高い収益を上げられる」と考えるに至ったことの根拠になると解される。 (ウ)結論 以上、証拠から理解されるように、本件商標は、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の別称である「MCKENTAUROS」を盗用(剽窃)したものということができる。したがって、まずは、この点(剽窃性)において、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものに該当するということができる。 さらに、本件商標の所有者(商標権者)の代表者であるA氏は、本件商標が出願された令和5年(2023年)当時には、引用商標が付された商品(ケンタウロス・グッズの真正商品)が、「レア物(希少品)」として高い金銭的価値を有することを知っており、また、同クラブの別称である本件商標も高い金銭的価値を有することを知っていたと強く推測される。 そこで、A氏は、本件商標の出願日である令和4年(2022年)当時に、既に、「引用商標が付された真正商品以外の任意の物品(例えばステッカー)を店舗にて販売等する際に、その主体の表示として本件商標を使用すれば、また、セミナーやイベント等の運営者や主催者や後援者の表示として本件商標を使用すれば、非真正商品の販売等をすることが可能となるとともに、セミナーやイベント等において非真正役務の提供をすることも可能となり、労せずして高い収益を上げられる」と考えるに至り、その考えに基づいて本件商標を出願し、登録を受けたものであると推測される。 すなわち、本件商標は、日本国内において広く知られている引用商標の名声・信用に便乗して、不正に利益を得ようとするものである。 エ まとめ 以上から明らかなように、本件商標は、商標法4条第1項第19号に該当する。 よって、同法第43条の2第1号の規定により、本件商標登録は取り消されるべきである。 (10)本件商標の商標法第4条第1項第15号の該当性 ア 引用商標の周知性 本件商標は、商標法第4条第1項第15号の適用の要件である「引用商標の周知性」を満たしている。これは、上記(6)で述べたところから明らかである。 イ 本件商標と引用商標の類似性 本件商標は、商標法4条第1項第15号の適用の要件である「本件商標と引用商標の類似性」を満たしている。これは、上記(3)で述べたところから明らかである。 ウ 出所混同のおそれ 引用商標は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の名称(「MCKENTAUROS」、「MCケンタウロス」、「横浜ケンタウロス」といった別称を含む)とともに、同クラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示する商標としても、さらに、同社が運営するショップ(店舗)「KENTAUROS/ケンタウロス」を表示する標章あるいはシンボルマークとしても、日本国内において広く知られていたものであり、また、モーターサイクル愛好者の間では、知らない者はいない程度であったのであり、現在もそうである。 また、引用商標が付されたケンタウロス社の業務に係る商品(ケンタウロス・グッズ)は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、日本国内において全国的に著名であるのに入手が困難で高い希少性を有していた、つまり、「レア物(希少品)」であったのであり、現在もそうである。この「レア物」であったことも、遅くとも1980年代から、日本国内において全国的に著名であったのであり、現在もそうである。 したがって、本件商標の出願及び査定時において、本件商標が引用商標の指定商品とは非類似の指定役務(ステッカーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,災害救援に関する訓練,救急法に関する訓練の提供,自動二輪車の安全走行の訓練及び指導,災害ボランティア活動のための実地訓練及び指導,セミナーの企画・運営又は開催,娯楽イベントの企画・運営又は開催)について使用されたとすれば、その役務に接した需要者は、引用商標が付されたオリジナル商品・役務の提供者であるケンタウロス社、又は、同社が運営する「KENTAUROS/ケンタウロス」と称するショップ(店舗)の業務に係る商品・役務であると誤認し、又は、日本国内において広く知られたモーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」に係るオリジナル商品・役務であると誤認して、商品・役務の出所について混同を生じるおそれが非常に大きかったと考えられる。 特に、本件商標の出願日や査定日である令和4年(2022年)から令和6年(2024年)当時において、引用商標が付されたケンタウロス社のオリジナル商品が、著名かつ希少性の高い「レアグッズ(希少品)」であり、需要者のそれに対する購買欲求が強い商品であったこと、さらに、引用商標が付された同社のオリジナル商品が、日本国内において広く知られたモーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」と関連するものであることも広く知られていたことを考慮すると、商品・役務の出所について混同を生じるおそれは、いっそう大きかったであろう。 エ まとめ 以上のことから明らかなように、本件商標は、商標法4条第1項15号に該当する。 よって、同法第43条の2第1号の規定により、本件商標登録は取り消されるべきである。 (11)本件商標の商標法第4条第1項第8号の該当性 ア 本件商標は、神奈川県横浜市において現存するモーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の別称として日本国内において広く知られている英文字「MC KENTAUROS」と同一であり、また、同クラブの名称を連想・想起させる英文字「KENTAUROS」をその要部として含んでいる。また、同クラブの承諾を受けていない。 イ 本件商標の第41類の「自動二輪車の安全走行の訓練及び指導」という役務は、モーターサイクル(自動二輪車)の愛好者を対象としていることが明らかであるから、当該役務は、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」が行っている(行ってきた)イベントや、引用商標を付してケンタウロス社が同名の前記店舗において販売している(販売してきた)同社のオリジナル商品(ケンタウロス・グッズ)との関連性が強い。 特に、ケンタウロス社が販売するオリジナル商品であるケンタウロス・グッズの中には、「ステッカー」が含まれている(甲51、甲53、甲57)から、本件商標の第35類の「ステッカーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは、ケンタウロス社のオリジナル商品(ケンタウロス・グッズ)との関連性が非常に強い。 以上述べたところから、「MC KENTAUROS」という構成を持つ本件商標は、それに接した需要者に、日本国内において広く知られていて社会的評価も高く、現存するモーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の名称(別称)として客観的に把握され、また、同クラブを連想・想起させるものであるということができる。 ウ 引用商標の周知性において既に述べたように、遅くとも1980年代から、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」と(故)I氏は、テレビ放送や雑誌、ウェブサイト等において何度も取り上げられてきている、という事実がある(甲13~甲21、甲33、甲39の1~4、甲40、甲41、甲45、甲46、甲47、甲48の1及び2、甲51~甲58参照)。このため、「MC KENTAUROS」という表示を、同クラブの名称(別称)ではなく、その「略称」と考えたとしても、当該表示が日本国内において広く知られているその程度から考えると、当該表示は「周知性」を超えて「著名性」をも有しているということができる。 特に、本件商標の指定役務の主たる対象者(需要者)と想定されるモーターサイクル(自動二輪車)の愛好者であれば、ほぼ間違いなく「著名性」を認めることであろう。 さらに、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」が、法人格を有していないことは、商標法第4条第1項第8号の適用の支障にはならない。従来から、例えば、東京高判平成10年1月14日(平成8年(行ケ)第225号)等の判決に示されているように、商標法第4条第1項第8号の「他人」には、法人格のない社団も含まれると解されており、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」が同号の「他人」に該当することは明らかだからである。 したがって、「MC KENTAUROS」という表示を同クラブの「略称」と考えても、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当することになるから、本件商標は、同法第15条第1号の規定により拒絶されるべきである。 エ 本件商標の商標登録がこのまま維持されることになれば、創設以来60年に及ぶ歴史を持つとともに、社会的評価が高く、日本国内において広く知られているモーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の人格権、すなわち、「自らの承諾なしに、その氏名、名称等を商標に使用されることがないという利益」が保護されないことになり、当該人格権を保護するために設けられた商標法第4条第1項第8号の趣旨に反する結果を招来する。 そうなると、需要者が本件商標の所有者(商標権者)による役務の提供を受けた後に、同クラブとは無関係であることが判明することが多くなり、当該需要者の理解とは異なる事態が生じて需要者の利益が損なわれることになる。これは、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」という商標法の目的に反する事態を招来する。 以上述べたように、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当し、したがって、同法第43条の2第1号の規定により、本件商標登録は取り消されるべきである。 4 当審の判断 (1)申立人商標の周知性について 申立人の提出証拠及び主張によれば、以下のとおりである。 ア ケンタウロス社は、昭和48年(1973年)に「自動車、自動二輪車、自転車、モーターボート、ヨット等の卸、小売、及び整備並びに開発」、「上記自動車等の装飾用品の販売及び開発」及び「衣料品、衣料雑貨品、日用雑貨品、アクセサリーその他生活雑貨の販売及び輸出入」等の業務を目的として設立登記され、現在も活動を継続しており、同社は、設立当初から平成28年1月5日まで、(故)I氏を代表取締役としていた(甲10)。 イ 引用商標は、ケンタウロス社が、昭和57年から昭和61年(1982年~1986年)にかけて出願し、登録されたものであり(甲2~甲5)、その後、平成27年(2015年)に、引用商標の商標権は、申立人がケンタウロス社から正当に譲り受けた(甲6~甲9)。なお、現在に至るまで、申立人が引用商標に係る商標権を所有しているが、申立人は、自身は引用商標を使用しておらず、申立人とケンタウロス社との間で、日本国内において申立人商標に係る商標権の全範囲について、ケンタウロス社に専用使用権を設定している旨主張している(甲12)。 ウ 申立人商標が付されたTシャツ、ワッペン、ステッカー等の商品(以下「本件使用商品」という。)が、ケンタウロス社が運営する「KENTAUROS/ケンタウロス」と称する店舗(以下「ケンタウロスショップ」という。)で販売されている(甲25~甲27)。 エ モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」(以下「ケンタウロスクラブ」という。)は、昭和39年(1964年)に(故)I氏とその仲間により結成され、現在も存続している(甲14、甲16、甲29ほか)。 オ ケンタウロスクラブのメンバーが、申立人商標と同一視できる標章(色彩の異なるものを含む。)を背中に付したジャケット等を着用している様子が、雑誌やインターネットにおいて紹介された(甲15、甲18ほか)。 カ ケンタウロスクラブは、2011年頃から複数回にわたり、テレビ番組(NHK、テレビ東京)で紹介された(甲39の1~4、甲41、甲45、甲47、甲48の1及び2)。 キ ケンタウロスクラブは、モーターサイクル関係の活動の他にも、例えば、能舞台公演「横浜飛天双〇能」を立ち上げ(甲31、甲32)、独自メディアとして新聞(小冊子)を発行した(甲21)。さらに、写真集の発行や、映像作品「VISION HIGH」、ケンタウロスクラブをモデルとした劇画や、同劇画を原作とした劇場用アニメ映画の制作等が行われた(甲14、甲15、甲40)。 ク 申立人商標を付したTシャツやジャケット、ベスト等の商品が、遅くとも昭和59年(1984年)頃から、雑誌において複数回紹介された(甲20、甲21、甲33)。 ケ 申立人商標が付された本件使用商品が、インターネットオークションのウェブサイトに掲載された(甲51~甲58)。 コ 小括 上記アないしケからすれば、ケンタウロス社は、昭和48年(1973年)に設立されており、ケンタウロス社が運営するケンタウロスショップにおいて、申立人商標が付された本件使用商品が販売されていることはうかがえる。 しかしながら、申立人商標が付された本件使用商品の売上額、販売数量など販売実績を示す具体的な証拠の提出はなく、当該商品に関する広告宣伝費等についても明らかでない。 さらに、ケンタウロスクラブについて、複数回にわたりテレビにより放送されていたとしても、その放送回数は決して多いとはいえず、日本国内において広く知られ、特にモーターサイクル愛好者の間で著名になったといえる証拠も見当たらない。 加えて、ケンタウロスクラブが能舞台公演等の実施、劇画や劇場用アニメ映画の制作等、一定程度の周知活動を行っていることはうかがえるとしても、これらの参加人数ないし観客数、売上高等は不明であり、そのほか、申立人商標に関するメディアを通じた大規模な広告宣伝活動実績は確認できない。 そうすると、ケンタウロス社、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップが使用する申立人商標に対する需要者の認識を客観的に推し量ることができない。 その他、申立人商標が、我が国及び外国の需要者の間において広く知られるに至っていることを、具体的かつ直接的に示す証拠は見いだせない。 なお、申立人は、本件使用商品の販売方法について、インターネット等を使用した通信販売等も行わず、小規模の店舗であるケンタウロスショップにおける対面販売を原則とすることで、本件使用商品の希少性を高めてきた旨主張するが、そのような販売形態や手法が申立人商標の周知性につながることを客観的に示す証拠の提出はない。 以上よりすると、申立人が提出した証拠によっては、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップを表示するものとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第10号該当性 申立人商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(ケンタウロス社、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップ)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間において、広く認識されている商標ではない。 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標ではないから、その他の要件について言及するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性 申立人商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(ケンタウロス社、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップ)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間において、広く認識されている商標ではなく、周知性の程度は低い。 そうすると、本件商標は、申立人商標と共通する構成文字を含んでおり、その指定役務中にケンタウロス社、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップの業務に係る商品「ステッカー」に係る役務を含んでいるとしても、これに接する需要者が、周知性の程度の低い申立人商標やこれらの者との関係を連想、想起して、その役務がこれらの者又は経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように認識するとは考えにくく、その役務の出所について混同を生ずるおそれはない。 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではなく、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第19号該当性 申立人商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(ケンタウロス社、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップ)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間において、広く認識されている商標ではない。 また、申立人は、商標権者が、(故)I氏の意思に基づき、「一般社団法人MC KENTAUROS」を設立し、「申述書」(甲38の2)を提出していることから、商標権者が本件商標を出願した時点において、ケンタウロス社のオリジナル商品が「レア物(希少品)」として金銭的価値を有することを知っていたと考えられる旨主張しているが、申立人の提出証拠からは、本件商標権者がケンタウロスショップの事業活動を阻害したり、本件商標を利用して、何らかの金銭的な利益を要求するなど、具体的な行為に及んだことを示す証拠はない。 そうすると、本件商標は、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的)で使用するものとはいえない。 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものとはいえないから、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第8号該当性 申立人は、本件商標が、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」(ケンタウロスクラブ)の別称として広く知られている英文字「MC KENTAUROS」と同一であり、また、同クラブの名称を連想・想起させる「KENTAUROS」の文字を要部として含んでおり、かつ、商標法第4条第1項第8号の「他人」には、法人格のない社団も含まれると解されるから、ケンタウロスクラブが同号の「他人」に該当する旨主張しているが、申立人より提出された証拠資料からは、「MC KENTAUROS」、「KENTAUROS」又は「ケンタウロス」の文字が、他人の著名な略称には該当するといった証拠は見当たらない。そして、これらの文字が、モーターサイクル愛好者の間で、他人の名称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるほど広く認識されていると認めるに足りる証拠も見いだせない。 そうすると、本件商標は、その構成中に「KENTAUROS」の文字を有しているとしても、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」の名称若しくはその著名な略称を含むものと認識し、把握されることはなく、本件商標は、他人の名称若しくは他人の著名な略称を含む商標であるとはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条1項第8号に該当しない。 (6)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。

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