商標異議申立
2024-900014
ビロ、ビッロ
- 審判番号
- 2024-900014
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-051933
- 登録番号
- 6753901
- 請求日
- 2024年01月22日
- 審決日
- 2024年09月04日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】▲東▼莞▲彙▼▲楽▼技▲朮▼股▲フン▼有限公司
- 【権利者代理人】TRY国際弁理士法人
- 【権利者代理人】亀山 夏樹
- 【異議申立人】ヴィロ ソシエタス ヨーロピア
- 【異議申立人代理人】弁理士法人R&C
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T1651.25 -Y (W0742) / T1651.261-Y (W0742) / T1651.262-Y (W0742) / T1651.263-Y (W0742) / T1651.271-Y (W0742) / T1651.222-Y (W0742)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6753901号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6753901号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6753901号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和5年5月15日に登録出願、第7類「空気式搬送装置,原動機用スターター,吸入用ポンプ,塵埃等排出用送風機,送風機,清浄用電気機械装置,洗浄装置,セントラル式真空掃除機,清掃用塵埃排出装置,電気掃除機,遠心機,バルブ(機械部品),駆動原動機(陸上の乗物用のものを除く。),道路清掃用機械(自走式のもの),電気式ワックス磨き機,機械又は機関の部品としてのろ過器,原動機用及びエンジン用の消音器,電熱式はんだ付け装置,圧縮機」及び第42類「科学技術に関する研究,技術的課題の研究,新製品の開発に関する研究,環境保護の分野における科学的研究,科学に関する実験及び研究,化学に関する分析,化学に関する試験・検査又は研究,化学に関する研究,材料検査,コンピュータソフトウェアの設計,機械に関する研究,品質管理,測量(土木・工学に関するエンジニアリング),包装デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,情報技術(IT)に関する助言(ソフトウェアプログラムのトラブルシューティング),コンピュータ技術に関する助言,インテリアデザインの考案,グラフィックアートデザインの考案,科学に関する研究」を指定商品及び指定役務として、同年11月7日に登録査定され、同月14日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標は、以下の1及び2の商標であり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第1423697号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、昭和51年4月22日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同55年6月27日に設定登録され、その後、平成22年7月28日に指定商品を第7類「ポンプ,その他の風水力機械器具」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 国際登録第950952号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、2006年12月29日にドイツ連邦共和国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2007年(平成19年)6月28日に国際商標登録出願、第1類、第4類、第6類ないし第12類、第16類、第17類、第19類、第28類、第36類ないし第38類、第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成22年7月16日に設定登録されたものであり、その後、指定商品及び指定役務については、2010年5月18日及び2017年6月26日の2回にわたり減縮があった結果、第7類、第9類、第11類及び第37類に属する別掲4のとおりの商品及び役務とされたものである。
なお、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、以下「引用商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであり、その登録は、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第47号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の記載については、甲1、甲2のように省略して記載し、枝番号の全てを示すときは、枝番号の記載を省略して記載する。
1 本件商標がその登録を取り消されるべき前提となる事実
(1)申立人について
申立人は、1872年にドイツで創業し、現在はドルトムントに本社を置く、ドイツ国籍の法人である。1928年に、創業者の息子によって世界初の循環促進装置が開発され、それ以来、世界初の高効率ポンプの製造など、暖房、空調、冷房分野における先駆的な技術革新によって事業を継承している。現在では、世界各地に7,500人以上の従業員を有し、60を超える製造・販売会社を通じて、水管理のためのポンプ及びポンプシステムの総合的プロバイダーとして事業を展開している(甲4)。
申立人については、我が国においても、下記のように紹介されている。
例えば、
ア 「三鈴工業株式会社」(以下「三鈴工業社」という。)のウェブサイト(甲5)において、「ドイツ・ドルトムントに本社をおくWilo社は、冷暖房機システム、空調システム、下水処理システムおよび給水システムにおけるポンプの世界的メーカーです。水ポンプのグローバル企業として、60ヶ国余りに事業展開しています。」等と、紹介されている。
イ 「三國機械工業株式会社」のウェブサイト(甲6)において、「ドイツのポンプメーカーであるWiloは、世界60か国以上で事業展開する世界的企業です。日本でも発電所、各種プラント、官庁関係など数多くの採用実績があります。」等と、紹介されている。
ウ 「深井ポンプ市場のインサイト」のウェブサイト(甲7)において、「Wiloは、1872年にドイツで創立され、ポンプと水処理技術の分野で高い技術力を持つ企業です。同社は世界各地に拠点を持ち、革新的な製品開発に取り組んでいます。Wiloは市場で重要なプレイヤーとしての地位を確立し、安定した売り上げを達成しています。これらの企業の売上高は、それぞれ数億ドル以上に達しており、市場での強力な存在感を示しています。彼らの持続的な成長とイノベーションにより、彼らはディープウェルポンプ市場においてリーダーシップを発揮しています。」等と、紹介されている。
エ 「ドイツ・ルール地方の底力を読み解く10の視点」のウェブサイト(甲8)において、「ドルトムントに本社を置くWilo(ヴィロ)は、世界的に業界を牽引するポンプ製造会社。ヴィロ社の高性能ポンプは、省エネ設計で、非常に消費電力量が少ないことで名が知れており世界市場で高い注目を集めている。」等と、紹介されている。
オ 「工場密集地域の再活性化プロジェクトとその波及効果」に関する博士学位論文(甲9)において、「ドルトムントに本社を置く界的なポンプ製造会社Wilo(ヴィロ)である。ヴィロ社の高性能ポンプは、省エネ設計であり、非常に消費電力量が少ない。環境保全への取り組みは製造工程まで及び、「スマートファクトリー」を実現させるため、1億2000万ユーロを投資。そこでは製造から輸送まで、すべてのプロセスがデジタル化されている。」等と、紹介されている。
カ 「2024年から2031年までの農業用ポンプセット市場の動向と市場分析は予測されています。」のウェブサイト(甲10)において、「Wiloは、ドイツのポンプメーカーであり、世界中で幅広い産業向けのポンプ製品を提供している。同社の農業用ポンプセット市場における売り上げは順調に成長しており、市場規模を拡大している。」等と、紹介されている。
キ 「株式会社WBエナジー 会社案内」(甲11)において、「Wilo社は、世界有数のポンプメーカーです。」等と、紹介されている。
申立人は、同人の代表的な商品である「ポンプ」や、「その他の風水力機械器具」において、昭和51年に、申立人の略称である引用商標1「WILO」を登録出願し、同54年に登録されている。その後も、申立人は、上記商品を含む商品を指定して引用商標2「Wilo」を国際商標登録出願し、2010年に我が国での登録が認められ、引用商標は、現在も有効に存在している。
このことから、申立人は、引用商標を長年に渡り使用してきた実績があり、その使用実績により、引用商標は、申立人の業務に係るものとして周知・著名なものとなっている。
(2)世界における申立人の商品の販売について
申立人の商品は、現在、ヨーロッパ、アジア、アメリカの17拠点で製造されている(甲12)。実際に、2016年には、ロシアのモスクワ近郊のノギンスクに工場を開設し(甲13)、2021年には、マレーシアのクアラルンプールに組立工場を開設している(甲14)。この組立工場は、プラットフォームとして機能し、アジア南東部、インドシナ半島及びマレー諸島からなるSEA地域全体にポンプを供給している。また、中国では、2021年末に運営を開始した、中国国内初の経済技術協力をテーマとしたドイツ企業向けの国家級のパークである「中独産業パーク」に研究開発製造拠点を置いている。この拠点では、2022年に開催された北京冬季オリンピックの開催期間中に国家スピードスケート館のプロジェクトに応用された全てのポンプが生産された(甲15)。
このように、申立人の商品は、世界各地で製造・販売されており、例えば、申立人は、水ポンプの分野において、世界トップ10に入るメーカーとして挙げられている(甲12)。また、申立人は、水中ポンプの分野においても、世界の著名なメーカーとして挙げられており(甲16)、農業用のポンプセットの分野においても、市場の主要プレイヤーとして挙げられている(甲10)。
また、申立人は、例えば、中南米では、その市場のリーダーとして紹介され、第2位に位置しており(甲17)、アジア太平洋地域では、産業用ポンプ市場における主要なプレイヤーとして挙げられている(甲18)。
以上より、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の商品は、ドイツを始めとする外国において周知・著名であり、申立人の略称である引用商標1「WILO」及び引用商標2「Wilo」は、申立人の商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標であるといえる。
(3)我が国における申立人の商品の販売について
申立人の商品は、静岡県浜松市にある三鈴工業社を販売代理店とする等、我が国において複数の会社で取り扱われており、日本国内においても数多く流通しており(甲5、甲6、甲19)、また、申立人の商品に関して、日本国内の会社が販売だけでなく、販売後のメンテナンス等のサービス体制も構築している(甲5、甲6)。
申立人の商品は、省エネルギー設計であり、消費電力量が非常に少ないことを特徴とし(甲8、甲11)、環境保全にも積極的に取り組んでいる(甲9)。また、申立人の商品に使用されている技術は、建築技術審査証明協議会による新技術の技術内容を学識経験者等により技術審査し、その内容を客観的に証明して、普及活動を行う「建設技術審査証明事業」において証明されており、その技術の概要等がインターネット上で公開されている(甲20)。
実際に、申立人の商品は、我が国で商品質・高性能のポンプとして紹介されており(甲6、甲21)、国内の発電所、各種プラント、官庁関係など数多くの採用実績があると紹介されている(甲6)。
以上より、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の商品は、我が国においても周知・著名であり、申立人の略称でもある引用商標1「WILO」及び引用商標2「Wilo」は、申立人の商品を表示するものとして、我が国でも需要者の間に広く認識されている商標であるといえる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)より、申立人の引用商標は、ドイツのみならず、我が国及び外国においても、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標である。
2 本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであること
(1)本件商標と引用商標との比較
ア 本件商標は、下辺が下側に膨らんだ横長の長方形の内部に欧文字「VILLO」を配し、「V」の文字の右上から語尾の「O」にわたって各文字の上部に一本の線が伸びており、さらに「V」の両側に半円状の図形を配してなるものである。このような態様において、本件商標は、「VILLO」の欧文字から、「ヴイロ」との称呼が生じる。また、「VILLO」は、イタリア語で「(特に小腸粘膜の)絨毛」や「長軟毛」等の意味を有する語であるが(甲22)、イタリア語は我が国において一般的でないことから、特定の観念を生じさせないものである。
イ 一方、引用商標1は、全て大文字の欧文字「WILO」からなるものであり、引用商標2は、1文字目のみが大文字の「Wilo」の欧文字からなるものである。称呼に関して、引用商標からは、共に英語読みの「ウィロ」の他に、「w」が英語の「v」の音となるドイツ語読みの「ヴィロ」の称呼も生じ得る。また、「WILO」や「Wilo」は、辞書等に掲載がなく、一種の造語として理解されるものであることから、特定の観念を生じさせないものである。
引用商標から生じるドイツ語読みの称呼「ヴィロ」について、申立人はドイツ国籍の法人であるから、引用商標からは当然に、「ヴィロ」の称呼も生じる。実際に、申立人の名称を片仮名表記にする場合には、「ヴィロ」と表されている(甲8~甲10、甲13、甲21)。
また、本件商標や引用商標は、第7類の商品を指定するものであり、第7類に分類される「機械・工作機械」の分野において、ドイツやドイツ企業のシェアは高く(甲23~甲25)、当該分野における商品の取引の実情から、第7類の商品において、欧文字をドイツ語読みすることは普通に行われることであるといえる。
なお、近年では、ドイツやドイツ企業のシェアが高い第7類の商品に限らず、他の分野の商品・サービスにおいても、欧文字「w」を英語の「v」の音としてドイツ語読みすることが普通に行われている。例えば、我が国において、欧文字をドイツ語読みすることが一般に行われていることは、以下の例からも明らかである。
(ア)「WITTAMER(ヴィタメール)」(甲26、甲27)
(イ)「LOEWE(ロエベ)」(甲28)
(ウ)「WELEDA(ヴェレダ)」(甲29、甲30)
(エ)「ZWILLING(ツヴィリング)」(甲31、甲32)
(オ)「WMF(ヴェーエムエフ)」(甲33、甲34)
(カ)「WEMPE(ヴェンペ)」(甲35~甲37)
(キ)「Warsteiner(ヴァルシュタイナー)」(甲38~甲40)
(ク)「ZWEI(ツヴァイ)」(甲41、甲42)
また、上記の欧文字をドイツ語読みする著名なブランドや商品の他に、欧文字をドイツ語読みするものとして、日本国内で広く一般に認識されている例は、以下のとおりである。
(ケ)「Schloss Neuschwanstein(ノイシュバンシュタイン城)」(甲43、甲44)
(コ)「Weizen(ヴァイツェン)」(甲45~甲47)
以上のとおり、引用商標は、ドイツ国籍の法人である申立人が有するものであること、その指定商品中に、ドイツ企業の商品が高いシェアを占める第7類の商品を含むものであること、また、近年では、我が国でも、欧文字「w」を英語の「v」の音としてドイツ語読みすることが普通に行われている実情があることからすると、引用商標からは、その指定商品との関係から英語読みの「ウィロ」だけでなく、ドイツ語読みの「ヴィロ」の称呼も自然に生ずることは明らかである。
ウ ここで、本件商標と引用商標を比較すると、外観において、本件商標は、上記アのとおり「VILLO」の欧文字を図形化してなるのに対し、引用商標は、「WILO」や「Wilo」の欧文字からなるものである。本件商標と引用商標とは、その構成文字中3文字も「I」、「L」及び「O」が共通するのみならず、「V」と「W」とはその構成が比較的近似していることなどからすると、特に時と所を変えて離隔観察した場合、本件商標と引用商標とは外観上紛らわしい印象を与えるものといえる。
また、観念において、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じさせないものであるから、観念上区別し得るとはいえない。
さらに、称呼においては、本件商標から生じる「ヴィロ」の称呼と、引用商標から自然に生じ得るドイツ語読みの「ヴィロ」の称呼は同一である。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観上紛らわしく、観念において区別できず、そして、「ヴィロ」という称呼が生じるという点において共通することから、類似する商標といえる。
(2)本件商標の指定商品「空気式搬送装置,原動機用スターター,吸入用ポンプ,塵埃等排出用送風機,送風機,清浄用電気機械装置,洗浄装置,セントラル式真空掃除機,清掃用塵埃排出装置,電気掃除機,遠心機,バルブ(機械部品),駆動原動機(陸上の乗物用のものを除く。),道路清掃用機械(自走式のもの),電気式ワックス磨き機,機械又は機関の部品としてのろ過器,原動機用及びエンジン用の消音器,電熟式はんだ付け装置,圧縮機」(以下「本件商品」という場合がある。)は、引用商標の指定商品と類似するものである。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものであること
引用商標は、上記1で述べたとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者・取引者の間で広く認識されており、本件商標と類似する商標である。加えて、引用商標の商品と、本件商標の指定商品は同一又は類似である。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当することは明らかである。
4 本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであること
引用商標は、上記1で述べたとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願前から周知・著名であり、本件商標の第42類の指定役務には、「機械に関する研究」や「コンピュータソフトウェアの設計」等が含まれており、これらの役務は、申立人の業務に係る商品の分野と密接に関連するものである。
そうすると、当該事実の下で、引用商標2と類似する本件商標が、その指定商品及び指定役務に使用された場合には、当該商品・役務は、申立人の業務に係るものと誤認され、その出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものであること
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)が、上記で述べたとおり、日本国内又は外国で著名な引用商標と類似する本件商標を使用すれば、申立人の著名商標「WILO」及び「Wilo」に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあり、さらには、本件商標権者が、申立人の当該商標の著名性に便乗して不正な利益を得ようとしていることも明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)申立人について
申立人は、1872年にドイツで創業し、現在はドルトムントに本社を置く、ドイツ国籍の法人であり、現在、世界各地に7,500人以上の従業員を有し、60を超える製造・販売会社を通じて、水管理のためのポンプ及びポンプシステム(以下これらを「申立人商品」という場合がある。)の総合的プロバイダーとして事業を展開している(甲4)。
(2)申立人については、我が国の複数の企業が、「Wilo」は世界有数のポンプメーカーである旨紹介している(甲5~甲11)。
(3)申立人の商品は、現在、ヨーロッパ、アジア、アメリカの17拠点で製造されており(甲12)、水ポンプの分野において、世界トップ10に入るメーカーとして挙げられている(甲12)。
(4)申立人の商品は、三鈴工業社を販売代理店とする等、我が国において複数の会社で取り扱われており、日本国内においても数多く流通している(甲5、甲6、甲19)。
(5)以上によれば、「WILO」又は「Wilo」の文字からなる引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ポンプの分野における取引者、需要者の間では、ある程度知られているということができるものの、引用商標を使用した申立人の業務に係る商品(ポンプ)の我が国及び外国における売上高などの販売実績、広告宣伝の方法、規模、広告宣伝費など、その事実を客観的に把握することができる証拠は何ら提出されていないから、引用商標が、我が国及び外国の需要者の間にどの程度認識されているのか把握、評価することができない。
してみると、申立人提出の証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、下辺が下側に湾曲した横長長方形の輪郭内に緑色の「VILLO」(決定注:「V」の文字は、その右上先端から語尾の「O」まで一本の横線が伸びており、また、「V」の左右には黄緑色の半円状の図形が配されている。)の欧文字を配した構成からなるものであるところ、「VILLO」の文字は、イタリア語で「(特に小腸粘膜の)絨毛」や「長軟毛」等の意味を有する語であるが(甲22)、イタリア語は我が国において一般的でないことから、一種の造語として認識、理解されるものである。
そして、造語である欧文字は、我が国において親しまれた英語読み又はローマ字読みに倣って称呼されるのが一般的であるから、本件商標は、その構成文字に相応して「ビロ」の称呼を生ずるものである。
したがって、本件商標からは、「ビロ」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2及び別掲3のとおり、「WILO」又は「Wilo」の欧文字を横書きした構成からなるところ、当該文字は我が国において親しまれている成語とはいえないものであるから、特定の意味合いを有しない造語を表したと理解されるものである。
そして、特定の意味を有しない欧文字は、我が国において親しまれた英語読み又はローマ字読みに倣って称呼されるのが一般的であり、例えば「wit」(機知。気転等の意味)が「ウィット」、「winner」(勝者等の意味)が「ウイナー」、「wing」(翼等の意味)が「ウィング」、「wire」(針金等の意味)が(ワイヤ)、「wild」(野生等の意味)が「ワイルド」、「wine」(葡萄酒の意味)が「ワイン」のように称呼されることに倣えば、「WILO」又は「Wilo」のつづりからなる引用商標からは「ワイロ」又は「ウィロ」の称呼を生じるものというのが相当である。
したがって、引用商標は、「ワイロ」又は「ウィロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
なお、申立人は、引用商標からは英語読みの「ウィロ」だけでなく、ドイツ語読みの「ヴィロ」の称呼も自然に生ずる旨主張しているが、我が国において、一般的にドイツ語はなじみの薄い語であって、「WILO」又は「Wilo」の文字は、我が国において特に親しまれている語でもないから、引用商標から生ずる称呼については上記のとおり判断するのが相当であり、申立人の主張は採用することができない。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるものであって、外観においては、色彩の有無、輪郭図形の有無、構成文字及び文字の図案化の有無など明らかに相違するものであるから、互いに相紛れるおそれはない。
また、称呼については、本件商標と引用商標は、称呼上重要な位置を占める語頭において「ビ」と「ワ」又は「ウィ」の差異を有するものであり、この差異が2音又は3音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は小さいものとはいえず、両者をそれぞれ一連に称呼しても、互いに聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、本件商標と引用商標は、上記のとおり、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両商標が、観念において相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)引用商標の周知性について
上記1(5)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできないものである。
(5)小括
そうすると、本件商標と引用商標は非類似の商標であり、引用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
上記1(5)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできないものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、類似性の程度は低いというべきである。
(3)本件商品と申立人商品との関連性及び需要者の共通性について
本件商品は、第7類「空気式搬送装置,原動機用スターター,吸入用ポンプ,塵埃等排出用送風機,送風機」などを含むものであり、申立人商品も「ポンプ」等であるから、両者の商品の関連性及び需要者の共通性は低いとはいえない。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(3)のとおり、本件商品と申立人商品との関連性及び需要者の共通性が低いとはいえないとしても、上記(1)及び(2)のとおり、本件商標と引用商標は、類似性の程度が低く、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものとは認めることができないものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1(5)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたものとは認めることができないものであり、上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標である。
そして、申立人提出に係る証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が引用商標にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、あるいは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-900014