審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
商標無効審判

2024-890053

ツーエルシイデイ、ニエルシイデイ、エルシイデイ

審判番号
2024-890053
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2022-042989
登録番号
6642509
請求日
2024年09月26日
審決日
2025年07月29日
公報発行日
2026年03月27日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】セイコーエプソン 株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人不二商標綜合事務所
  • 【請求人代理人】木村 吉宏
  • 【請求人代理人】伊東 美穂
  • 【被請求人】深▲せん▼市椿景貿易有限公司
審判長/審判官
  • 審判長 山田 啓之
  • 審判官 杉本 克治
  • 審判官 小林 正和
分類
T111 .271-Z (W09)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第19号、商標法第46条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6642509号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6642509号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6642509号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和4年(2022年)4月13日に登録出願、第9類「映写装置,映写用スクリーン,ビデオプロジェクター,プロジェクターリモコン,ミニビームプロジェクター,オートフォーカスプロジェクター,LCDプロジェクター」を指定商品として、同年8月23日に登録査定され、同年11月18日に設定登録されたものである。 第2 請求人が引用する商標 1 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同項第11号又は同項第19号に該当するとして引用する登録第4907700号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2004年(平成16年)12月28日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、平成17年(2005年)5月27日に登録出願、第9類「液晶プロジェクター,液晶プロジェクションテレビ,高温ポリシリコン液晶パネル,液晶プロジェクター用プリズム,液晶プロジェクションテレビ用光学エンジン,液晶プロジェクター用光学エンジン,液晶プロジェクター用映写スクリーン,液晶リアプロジェクションテレビ用スクリーン,液晶プロジェクター用マルチレンズアレー,液晶プロジェクター用レンズ及びランプ,液晶プロジェクター制御用コンピュータソフトウェア」を指定商品として、同年11月11日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。 2 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、引用商標、別掲3及び別掲4のとおりの構成からなる標章(以下、別掲3の標章を「請求人使用商標1」と、別掲4の標章を「請求人使用商標2」といい、両商標をまとめて「請求人使用商標」という場合がある。また、「引用商標」と「請求人使用商標」を総称して「請求人商標」という場合がある。)であって、本件商標の登録出願前から、我が国又は外国において、同人の業務に係る商品「プロジェクター」について使用して周知著名となっている商標と主張するものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第140号証を提出した。 1 本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)指定商品が類似すること 本件商標の指定商品と、引用商標の指定商品は、いずれも、映像の投影に用いられる映写装置やプロジェクターに関連するものであるから、互いに類似するものと推定される。 (2)本件商標 ア 外観 本件商標は、黒色で、図形を表した上段の部分(以下「本件図形部分」という。)と、数字・文字を表した下段の部分(以下「本件文字部分」という。)を2段に表した構成よりなるものである。 本件図形部分は、略同大の右傾した平行四辺形及び左傾した平行四辺形を上下対称に配し、先端にかけて尖らせた3方向に延伸する線のうち、2本の線を上記平行四辺形にそれぞれ重ね合わせるように配してなるところ、図形全体として、何らか特定のイメージを表したものではない、一種の幾何学的図形のような印象を受けるものである。 また、本件文字部分は、数字の「2」と欧文字の「L」、「C」及び「D」を、極太の一般的な書体により黒色で横書きしてなり、一見して容易に「2LCD」の文字を表したものと認識できるものの、多少のデザイン要素も感じられることから、一種のロゴとして捉えることができるものである。 イ 称呼 本件図形部分からは称呼が生じないところ、本件文字部分からは、これに相応して「トゥーエルシーディ」ほどの称呼が生じる。 ウ 観念 本件図形部分からは特定の意味合いが理解されないところ、「広辞苑 第七版(株式会社岩波書店)」によれば、本件文字部分における「LCD」の欧文字につき、「液晶表示ディスプレー(liquid crystal display)」を意味するとされている(甲3)。そうすると、「2LCD」全体としては特定の意味合いが理解されないものの、「「数字の2」及び「液晶表示ディスプレー」の意味合いが組み合わさったもの」ほどの観念が生じるといえる。 (3)引用商標 ア 外観 引用商標は、濃灰色で図形を表した左側の部分(以下「引用図形部分」という。)と、黒色で数字・文字を表した右側の部分(以下「引用文字部分」という。)を左右に並列させて表した構成よりなるものである。 引用図形部分は、略同大の右傾した平行四辺形及び左傾した平行四辺形を上下対称に配し、下方の平行四辺形には、これと左右対称にして端部を少し重ね合わせた略同大の右傾した平行四辺形を配してなる。そして、先端にかけて尖らせた4方向に延伸する線のうち、3本の線を上記平行四辺形にそれぞれ重ね合わせるように配してなるものである。 また、引用文字部分は、数字の「3」と欧文字の「L」、「C」及び「D」を、極太の一般的な書体により黒色で横書きしてなるところ、一見して容易に「3LCD」の文字を表したものと認識できるものの、多少のデザイン要素も感じられることから、一種のロゴとして捉えることができるものである。 イ 称呼 引用図形部分からは称呼が生じないところ、引用文字部分からは、これに相応して「スリーエルシーディ」ほどの称呼が生じる。 ウ 観念 引用図形部分からは特定の意味合いが理解されないところ、引用文字部分における「LCD」の文字につき、「液晶表示ディスプレー(liquid crystal display)」を意味する旨は上述したとおりであるから、「3LCD」全体としては特定の意味合いが理解されないものの、「「数字の3」及び「液晶表示ディスプレー」の意味合いが組み合わさったもの」ほどの観念が生じるといえる。 (4)本件商標と引用商標が類似すること ア 外観 まず、本件図形部分と引用図形部分を観察するに、用いられている平行四辺形の数については、本件図形部分が2個であるのに対し引用図形部分は3個で異なるものの、僅かな間隙を設けて上下対称に略同大の平行四辺形を配した点は全く同じといえる。加えて、これら平行四辺形に重ね合わさり、先端を尖らせて複数方向に延伸する線につき、本件図形部分が3方向であるのに対し引用図形部分は4方向で異なるものの、それぞれ平行四辺形の中央付近を必ず貫くように重ねて配した点も全く同じといえる。さらに、両図形部分が黒あるいは濃灰という互いに近似した暗色のみを用いて表されている点も共通する。 次に、本件文字部分と引用文字部分を観察すると、本件文字部分は数字が「2」であるのに対し引用文字部分は「3」で異なるものの、一文字の数字に続いて「LCD」の欧文字を表した点は全く同じといえる。加えて、本件文字部分と引用文字部分は、端部のデザイン処理やセリフ(文字のストロークの端にある小さな飾り)の有無といった細部における差異はあるものの、全体をやや右に傾斜させ、極太の一般的な書体で表した点も全く同じである。さらに、両文字部分が黒一色のみを用いて表されている点も共通している。 イ 称呼 本件商標から生じる「トゥーエルシーディ」と、引用商標から生じる「スリーエルシーディ」ほどの称呼は、語頭の「トゥー」と「スリー」に差異はあるものの、全体が7音から8音という短い構成の中にあって「エルシーディ」という過半以上を占める音が共通している。そうすると、両商標を発音・聴音した場合、語頭における「トゥー」や「スリー」の音よりも、「エルシーディ」という音の方が耳に長く残存して記憶されることになる。すなわち、両商標の称呼は、聞き誤りやすく、類似性は高いといえる。 ウ 観念 本件商標から生じる「「数字の2」及び「液晶表示ディスプレー」の意味合いが組み合わさったもの」と、引用商標から生じる「「数字の3」及び「液晶表示ディスプレー」の意味合いが組み合わさったもの」ほどの観念は、数字の「2」と「3」において差異があるが、互いに一文字の数字のみであり、「2あるいは3の液晶表示ディスプレー」というように互いに相紛らわしく、観念においても類似性は高いといえる。 (5)小括 以上述べたとおり、本件商標と引用商標は、これらを構成する図形部分及び文字部分がいずれも互いに極めて似通っているため、全体として外観が類似し、称呼及び観念においても類似しているから、両商標は類似と判断されるべきものである。また、両商標は同一又は類似の商品を指定している。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)請求人商標の周知性 ア 請求人の業務に係る商品について 請求人は、同人の業務に係る商品「プロジェクター」に、請求人商標を付して、我が国を始め世界各国で広く継続的に販売を行ってきた(以下、請求人商標を付したプロジェクターを「請求人商品」という。)。 イ 請求人商標の使用開始及び継続的な使用 請求人は、1989年に液晶プロジェクターの発売を開始した(甲4)。請求人は、3枚の液晶ディスプレイを使って精緻に映像を再現する方式を開発、採用した(甲5)。このような技術方式を用いたプロジェクターにつき、請求人は「3LCD」と名付け、これを定着させるべく採用したものが引用商標である。 請求人商標は、2004年10月発売の請求人商品から使用を開始し(甲6~甲8)、請求人商品には全台に必ず付されており、現在に至るまで一貫して行われている(甲9~甲69)。 ウ 請求人商品の広告・宣伝 請求人は、請求人商品に関する広告を、2004年以降、雑誌・テレビ・インターネット等において行い、また、販売店でパンフレット・チラシの配布やPOPの掲示等による広告宣伝活動を、請求人商品の発売以来、現在に至るまで全国的に行ってきた(甲79~甲109)。当該広告宣伝の活動には、2013年からの10年間で、毎年、国内外において多大な金額を投下している(甲110)。 エ 請求人商品の売上げ 請求人商品の世界累積販売台数は、2016年8月において2,000万台(甲111)、2020年10月においては3,000万台を達成している(甲112)。その販売金額については、国内に限っても、2013年度から2023年度に至るまで、年間平均約126億円を売り上げている(甲113)。 オ 我が国における市場シェア 第三者調査機関である富士キメラ総研の調査資料によれば、請求人商品は、我が国市場において2018年に62.7%、2019年に63.2%、2020年に62%及び2021年には62.2%と、直近数年においても継続的かつ安定的に62%以上という市場の過半を大きく超えるシェアを維持し続けており(甲114)、また、請求人商品は、2001年から2021年までの20年間にわたり、500ルーメン以上のプロジェクター市場においてトップシェアを獲得し続けている(甲115)。 カ 請求人商品の各種受賞 請求人商品は、その品質・デザイン・価格等について高い評価を受けており、VGP2024特別大賞(甲120)、2017グッドデザイン賞(甲123)、TIPA Award2012「Best Photo Projector」賞(甲125)等、継続した受賞実績がある(甲119~甲125)。請求人商品には必ず引用商標が付されており、多くの需要者が、請求人商品は「3LCD」の技術が用いられた信頼性の高いプロジェクターであることを理解するとともに、需要者間における引用商標の認知度も相当に高い程度となっていることが容易に推測される。 キ 上述のアからカを踏まえれば、引用商標の周知度は極めて高いといえる。 (2)本件商標とその他人の標章との類似性の程度 本件商標は、引用商標との関係にあって、創作の自由度が高い図形部分において偶然に一致したとは考えられない共通点があり、文字部分についても同様である。 したがって、両商標の類似性の程度は、高いといえる。 (3)その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか 引用商標の構成における文字部分は、請求人による造語であって、関連業界において一般的に使用されている実情はうかがえない。また、図形部分についても他に見られないユニークかつ顕著な特徴を有するものである。 (4)その他人の標章がハウスマークであるか 引用商標は、請求人のハウスマークではないものの、請求人の主要製品カテゴリーにおいて、請求人商品たるプロジェクターの本体に必ず付されているから、ハウスマークと肩を並べるほどに重要な出所表示機能を果たすものである。 (5)企業における多角経営の可能性 請求人は、プリンターや複合機等の他にも、時計や会計ソフトといったように幅広い分野の製品ラインアップを持つ我が国のリーディング企業であって、既に多角的な経営がなされており、今後も広がる可能性が高いといえる(甲126~甲128)。 (6)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性 本件商標と引用商標の指定商品は、プロジェクターや映写装置関連といったように、具体的な商品のほとんどが共通しており、ゆえに、高い関連性があることは明白である。 (7)商品等の需要者の共通性その他取引の実情 本件商標と引用商標が指定するプロジェクターや映写装置等の製品は、主に一般消費者が需要者であると考えられるところ、そもそも、具体的な商品のほとんどが共通しているから、需要者についても共通することは自明である。 さらに、引用商標は、請求人商品において需要者が確実に視認できる態様で「必ず」付され、我が国においても長期かつ広範に使用されてきたもので、その使用態様は、甲各号証にも示されているとおり、請求人使用商標が請求人商品の具体的なデザイン、仕様に応じて使われている。 (8)上記(1)から(7)に係る事由を総合的に検討すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、請求人商標を使用・登録する請求人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 商標法第4条第1項第7号について 本件商標の登録出願については、引用商標が19年以上も前の2005年に出願・登録し、現在に至るまで有効に権利を維持している中、引用商標に極めて類似する本件商標を、同一又は類似の指定商品について2022年に出願している。 請求人は、引用商標に加えて、文字部分と図形部分を上下2段の構成とした請求人使用商標も使用しており、請求人使用商標の構成態様は、本件商標が採用したものと合致しているから、本件商標は、引用商標の周知性・著名性に便乗する意図、不当な利益を得る目的が強く推認される。 「3LCD」の技術方式による請求人商品は、世界各国で販売を行っているため、請求人は、引用商標に関して相当に早い時期から各国における権利化を進めてきた。 ところが、被請求人と同一人と考えられる「Shenzhen Chunjing Trading Co.,ltd.」の名義によって、本件商標と同一の商標が、2022年に入ってから各国で出願されており、その指定商品は、いずれも本件商標と同様である。各国においてなされた出願商標に対して、請求人は、異議申立てや情報提供を行い、相次いで取消しや拒絶する旨の決定が出されている。 被請求人は、引用商標と類似性の高い本件商標と同じ商標を、第9類のプロジェクターなど引用商標と同一又は類似の指定商品について、2022年以降、我が国を含む世界各国で出願を開始しているから、引用商標の周知性・著名性に便乗する意図、不当な利益を得る目的を秘めつつ、商標権として権利化することにより、使用の正当化をはかる行為であることは疑いようがないほどに明らかである。かような背景を持つ本件商標の登録出願の経緯には社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることは我が国商標法の予定する秩序に反している。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 5 商標法第4条第1項第19号について 本件商標は、引用商標の外観に係るユニークな特徴を巧妙に模倣しているものであって、同一又は類似である関連性の高い商品ばかりを指定しており、請求人商品が内外国で高い周知性を獲得していることを知った上で、これに便乗して不正の利益を得る目的をもって使用をするものであることが明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。 第5 当審の判断 1 請求人商標の周知著名性について (1)請求人の提出に係る証拠、同人の主張並びに職権調査によれば、次の事実が認められる。 ア 請求人は、2004年(平成16年)10月に「EMP-7900」と称するプロジェクターを発売した(甲6)。当該プロジェクターの前面には、請求人使用商標が小さく表示されている(甲7、甲8)。 イ その後、請求人は、「EMP-7900」以外にも、請求人商品の筐体上に請求人使用商標を小さく表示した各種のプロジェクターを発売するとともに(甲7~甲13、甲15~甲17、甲19~甲27、甲29~甲33、甲36、甲37、甲39~甲41、甲43、甲44、甲46、甲48、甲49、甲51、甲52、甲54~57、甲59、甲84、甲90、甲92、甲99、甲102、甲105、甲107)、プロジェクターに関する請求人のウェブサイト(甲5)、カタログ・チラシ・宣伝広告用POP(甲7~甲10、甲12~甲61、甲79~甲99、甲102~甲109)、個装箱(甲62~甲69)に請求人使用商標を表示している。 ウ 請求人は、プロジェクターについて、カタログ等において、引用商標(色彩を異にするものも含む。)を使用している(甲24~甲27、甲29~甲33、甲36、甲37、甲40、甲41、甲43、甲44、甲46、甲48、甲51)。 エ 請求人のプロジェクターは全て「3LCD方式」であり、「3LCD方式」とは、液晶方式のうち、3枚の液晶ディプレイ(パネル)を使う方式である(甲5)。 オ 請求人の3LCD方式プロジェクターの世界累積販売台数は、2016年(平成28年)8月において2,000万台(甲111)、2020年(令和2年)10月において3,000万台を達成した(甲112)。 カ ビジネスプロジェクターの日本市場において、請求人のプロジェクターの2018年(平成30年)から2021年(令和3年)までの市場占有率は、約62から63%である(甲114)。 キ 「週刊アスキー」のウェブサイトにおいて、2016年(平成28年)9月15日付けで請求人のプロジェクターに関する記事が掲載されている(甲111)。また、「株式会社マイナビ」のウェブサイトにおいて、2012年(平成24年)4月18日付けで請求人のプロジェクターに関する記事が掲載されている(甲125)。 ク 株式会社音元出版が主催する、オーディオビジュアル分野において専門誌等多数のメディアで活躍する評論家、全国の有力家電販売店・専門店が、製品のクオリティ、機能性、市場性を加味し、投票を行っている国内最大級の規模の総合アワードであるビジュアルグランプリ(VGP)において、請求人商品は、2007年銀賞(甲17)、2008年銀賞、液晶プロジェクター部門トップ賞、銅賞、DVD内蔵プロジェクター部門トップ賞(甲22)、2011年金賞(甲28)、2012年総合金賞、金賞(液晶プロジェクター(30万円未満)部門)、銅賞(液晶プロジェクター(30万円未満)部門)(甲35)、2015年金賞(プロジェクター(10万円未満)部門)(甲49)、2020年コスパ大賞(甲122)、2020年夏金賞(プロジェクター(12万円以上20万円未満)部門)(甲57、甲102)を受賞している。加えて、当審における職権調査によれば、2019年夏特別大賞を受賞しており、その受賞理由として「3LCD方式ならではの明るく自然な高画質映像と、コンパクトかつ設置性の高いデザインを両立された、新世代プロジェクターに対して、」との記載が、また、2021年特別大賞を受賞しており、その受賞理由として「明るく色鮮やかな高画質を実現する3LCD方式を採用した、コンパクトレーザープロジェクターに対して。」との記載がなされている(別掲5)。 (2)判断 前記(1)で認定した事実によれば、請求人は、平成16年(2004年)10月から3LCD方式のプロジェクターに請求人使用商標を使用しており、請求人のプロジェクターの前面に請求人使用商標が表示されるとともに、プロジェクターに関する請求人のウェブサイト、カタログ等に請求人商標が表示されており、また、請求人のプロジェクターの世界累積販売台数及び日本市場での市場占有率は相当程度あり、加えて、オーディオビジュアル分野において専門誌等多数のメディアで活躍する評論家、全国の有力家電販売店・専門店が、製品のクオリティ、機能性、市場性を加味し、投票を行っている国内最大級の規模の総合アワードであるビジュアルグランプリ(VGP)において、複数回にわたり、3LCD方式のプロジェクターである請求人商品が賞を受賞していることが認められる。 これらの点を踏まえれば、請求人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、需要者の間で広く認識されていたと判断するのが相当である。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、黒色の同じ大きさの右傾した平行四辺形と左傾した平行四辺形を上下対称に配し、先細りした3方向に延伸する線のうち、2本の線を該平行四辺形にそれぞれ重ね合わせるように配してなる本件図形部分と、その下に極太の書体で「2LCD」の文字で表した本件文字部分からなるところ、いずれの部分も重なることなく配置されているから、視覚上、分離して看取、把握されるものである。 そして、本件図形部分は、全体として、何らか特定の事物又は意味合いを表したものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められず、一種の幾何学的図形のような印象を受けるものであるから、これよりは、特定の称呼及び観念は生じない。 さらに、本件図形部分と本件文字部分とはこれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものであるから、それぞれが独立して自他商品の識別標識として機能するものである。 また、本件文字部分は、「2LCD」の文字からなるところ、その構成中の「LCD」の文字(語)は、「液晶表示ディスプレー」の意味を有するものであるものの(甲3)、本件文字部分全体としては、一般に使用される辞書等に載録がないものであって、かつ、当該文字が特定の意味合いを有する語として親しまれているというべき事情も認められないから、本件文字部分は、特定の意味合いを理解、認識させるものではない。 そうすると、本件商標は、その構成中の「2LCD」の文字部分に相応して、「ツーエルシーディ」又は「ニエルシーディ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 引用商標は、別掲2のとおり、灰色がかった紫色の同じ大きさの右傾した平行四辺形と左傾した平行四辺形を上下対称に配し、下方の平行四辺形には、これと左右対称にして端部を少し重ね合わせた同じ大きさの右傾した平行四辺形を配し、それらに重なるように、先端をぼやかした左上、左下、右上及び右下の4方向に延伸する二重線のうち、右上方向以外に延びる3本の線を上記平行四辺形にそれぞれ重ね合わせるように配してなる引用図形部分と、その右側に極太の黒色書体で「3LCD」の文字で表した引用文字部分からなるところ、いずれの部分も重なることなく配置されているから、視覚上、分離して看取、把握されるものである。 そして、引用図形部分は、全体として、何らか特定の事物又は意味合いを表したものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められず、一種の幾何学的図形のような印象を受けるものであるから、これよりは、特定の称呼及び観念は生じない。 さらに、引用図形部分と引用文字部分とはこれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものであるから、それぞれが独立して自他商品の識別標識として機能するものである。 また、引用文字部分は、「3LCD」の文字からなるところ、その構成中の「LCD」の文字(語)は、「液晶表示ディスプレー」の意味を有するものであるものの(甲3)、引用文字部分全体としては、一般に使用される辞書等に載録がないものであって、かつ、当該文字が特定の意味合いを有する語として親しまれているというべき事情も認められないから、引用文字部分は、特定の意味合いを理解、認識させるものではない。 そうすると、引用商標は、その構成中の「3LCD」の文字部分に相応して、「スリーエルシーディ」又は「サンエルシーディ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、本件図形部分は、黒色の2つの平行四辺形と先細りした3方向に延伸する線を組み合わせた図形からなるのに対し、引用図形部分は、紫がかった灰色の3つの平行四辺形と4方向に延伸する二重線を組み合わせた図形からなるものであり、また、両商標の文字部分は、本件商標が「2LCD」の文字からなるのに対し、引用商標は「3LCD」の文字よりなるものであり、さらに、それぞれの文字部分と図形部分の配置を、本件商標が上下に配するのに対し、引用商標は左右に並べて配するものであるから、両者は、図形部分の構成要素及び色彩の相違と文字部分の語頭における「2」と「3」の相違、並びに、文字と図形の配置の差異により、外観上、明確に区別できるものである。 次に、本件商標から生じる「ツーエルシーディ」又は「ニエルシーディ」の称呼と引用商標から生じる「スリーエルシーディ」又は「サンエルシーディ」の称呼とを比較すると、称呼における識別上、極めて重要な語頭において、「ツー」又は「ニ」の音と「スリー」又は「サン」の音の差異を有しており、それぞれを一連に称呼しても、全体の音感、音調が明らかに相違し、十分に聴別し得るものである。 さらに、観念については、本件商標と引用商標はいずれも特定の観念を生じないから、両商標は、比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないものの、外観及び称呼において判然と区別し得るものであり、これらを総合的に勘案すると、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)請求人使用商標の周知性 請求人使用商標は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたと認められるものであるから、請求人使用商標の周知著名性の程度は、高いといえる。 (2)本件商標と請求人使用商標の類似性の程度 上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、称呼において判然と区別し得るものである。 しかしながら、本件商標と請求人使用商標とは、いずれも、図形を上段に配し、やや右に傾斜した文字を下段に配した構成からなり、上段の図形部分については、いずれも複数の平行四辺形と複数方向に延伸する線を組み合わせた態様であり、下段の文字部分についても、数字1文字と同じ欧文字3文字を組み合わせた特徴からなるものであって、外観において一定程度近似した印象を与えるものであるから、両商標の類似性の程度は、決して低くはないというべきである。 (3)請求人使用商標の独創性 請求人使用商標は、その構成中の文字部分については「3LCD」の文字からなるところ、「3」の数字と「液晶表示ディスプレー」を意味する「LCD」の欧文字とを結合させたものと認められることから、独創的な構成ということはできないが、その構成中の図形部分については、顕著な特徴を有するものであるから、請求人使用商標は、構成全体として、独創性は高いといえる。 (4)商品間の関連性並びに商品等の取引者及び需要者の共通性 本件商標の指定商品は、プロジェクターや映写装置に関連する商品であり、請求人商品は、プロジェクターであるから、これらの商品の関連性の程度は非常に高く、取引者及び需要者を共通にする商品である。 (5)出所混同のおそれ 上記(1)から(4)によれば、請求人使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、需要者の間で広く認識されていたと認められ、高い独創性を有するものであり、また、本件商標と請求人使用商標の類似性の程度は決して低いとはいえず、さらに、本件商標の指定商品は、請求人商品と関連性が非常に高く、取引者及び需要者を共通にするものである。 そうすると、本件商標の商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、請求人使用商標を想起又は連想するというべきであり、本件商標が使用された指定商品が、請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について、混同を生じさせるおそれがあるというべきである。 (6)小括 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号該当性について 請求人は、被請求人の行為は、請求人商標の周知性、著名性に便乗する意図、不当な利益を得る目的によるものであり、公序良俗に反する旨、また、本件商標は請求人商標の特徴を模倣し、高い周知性に便乗して、不正の利益を得る目的をもって使用する意図が明らかである旨、主張している。 しかしながら、これらの主張を裏付ける具体的な証拠の提出はない。 他に、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事情は見いだせず、また、本件商標が不正の目的をもって使用をするものであるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号及び同項第19号には該当しないものの、同項第15号に該当するものであるから、その登録は、同項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 別掲1 本件商標 [図:0001433205000001.jpg] 別掲2 引用商標(色彩は原本を参照。) [図:0001433205000002.jpg] 別掲3 請求人使用商標1 [図:0001433205000003.jpg] 別掲4 請求人使用商標2(色彩は甲7、甲8ほかを参照。) [図:0001433205000004.jpg] 別掲5 「VGP2019SUMMER」のページ中、「特別大賞」の「EPSON EF-100 Series」の見出しの下、「受賞理由」欄に「3LCD方式ならではの明るく自然な高画質映像と、コンパクトかつ設置性の高いデザインを両立させた、新世代プロジェクターに対して。」の記載があります。 https://vgp.phileweb.com/vgp2019_summer/award.html#award7 「VGP2021」のページ中、「特別大賞」の「EPSON EF-12/EF-11」の見出しの下、「受賞理由」欄に「明るく色鮮やかな高画質を実現する3LCD方式を採用した、コンパクトレーザープロジェクターに対して。」の記載があります。 https://vgp.phileweb.com/vgp2021/award.html#award6

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-890053

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存