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商標無効審判

2024-890041

ソニマート

審判番号
2024-890041
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2018-078828
登録番号
6162062
請求日
2024年07月11日
審決日
2025年01月27日
公報発行日
2025年05月30日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】ソニーグループ 株式会社
  • 【請求人代理人】苫米地 正啓
  • 【被請求人】株式会社 ソニックライン
審判長/審判官
  • 審判長 旦 克昌
  • 審判官 小林 裕子
  • 審判官 大島 康浩
分類
T111 .261-Z (W3542) / T111 .262-Z (W3542) / T111 .263-Z (W3542) / T111 .271-Z (W3542)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第46条第1項第6号、商標法第4条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6162062号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6162062号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6162062号商標(以下「本件商標」という。)は、「ソニマート」及び「SONIMART」の文字を二段に書してなり、平成30年6月14日に登録出願、第35類及び第42類に属する別掲1のとおりの役務を指定役務として、令和元年7月12日に設定登録されたものである。 第2 引用商標等 1 請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、「SONY」の欧文字からなる商標及び「ソニー」の片仮名からなる商標(以下、これらをあわせて「請求人商標」という。)であり、請求人並びにその子会社及び関連企業(以下「ソニーグループ」という。)の製造・販売・提供に係る商品又は役務について使用され、ソニーグループの業務に係る商品及び役務の出所を表示するものとして著名であると主張するものである。 2 請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は次のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第491710号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成 別掲2のとおり 指定商品 第7類、第9類ないし第12類及び第17類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 昭和30年3月1日 設定登録日 昭和31年11月20日 書換登録日 平成19年11月14日 (2)登録第969493号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成 SONI 指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 昭和42年4月4日 設定登録日 昭和47年6月28日 書換登録日 平成14年11月6日 (3)登録第500036号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成 別掲3のとおり 指定商品 第7類、第9類ないし第12類及び第17類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 昭和31年9月12日 設定登録日 昭和32年4月15日 書換登録日 平成20年9月3日 (4)登録第500037号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成 sony 指定商品 第7類、第9類ないし第12類及び第17類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 昭和31年9月12日 設定登録日 昭和32年4月15日 書換登録日 平成20年9月3日 (5)登録第500038号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成 ソニー 指定商品 第7類、第9類ないし第12類及び第17類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 昭和31年9月12日 設定登録日 昭和32年4月15日 書換登録日 平成20年9月3日 (6)登録第618689号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成 SONY 指定商品 第7類ないし第11類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 昭和35年4月27日 設定登録日 昭和38年6月26日 書換登録日 平成16年11月4日 (7)登録第667592号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成 ソニー 指定商品 第7類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 昭和38年8月22日 設定登録日 昭和40年2月15日 書換登録日 平成18年4月19日 (8)登録第1791229号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の構成 ソニー 指定商品 第7類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 昭和54年3月9日 設定登録日 昭和60年7月29日 書換登録日 平成18年9月20日 (9)登録第1791230号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の構成 別掲3のとおり 指定商品 第7類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 昭和54年3月9日 設定登録日 昭和60年7月29日 書換登録日 平成18年9月20日 (10)登録第2681252号商標(以下「引用商標10」という。) 商標の構成 SONY 指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成2年8月8日 設定登録日 平成6年6月29日 書換登録日 平成16年12月1日 (11)登録第3280944号商標(以下「引用商標11」という。) 商標の構成 SONY 指定役務 第35類に属する商標登録原簿に記載の役務 登録出願日 平成4年9月30日 設定登録日 平成9年4月18日 (12)登録第3301809号商標(以下「引用商標12」という。) 商標の構成 SONY 指定役務 第42類に属する商標登録原簿に記載の役務 登録出願日 平成4年9月30日 設定登録日 平成9年5月9日 (13)登録第4868121号商標(以下「引用商標13」という。) 商標の構成 ソニー(標準文字) 指定商品及び指定役務 第1類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 登録出願日 平成16年9月15日 設定登録日 平成17年6月3日 (14)登録第4988737号商標(以下「引用商標14」という。) 商標の構成 SONY(標準文字) 指定商品及び指定役務 第1類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 登録出願日 平成16年12月7日 設定登録日 平成18年9月22日 (15)登録第5172032号商標(以下「引用商標15」という。) 商標の構成 SONY 指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成17年12月27日 設定登録日 平成20年10月10日 (16)登録第5460677号商標(以下「引用商標16」という。) 商標の構成 SONY 指定役務 第35類に属する商標登録原簿に記載の役務 登録出願日 平成22年2月24日 設定登録日 平成24年1月6日 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由(商標法第46条第1項第6号に基づく同法第4条第1項第11号及び同項第15号)を審判請求書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第186号証を提出した(枝番号を含む。なお、以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。また、甲○号証を甲○のように表記する。)。 1 利害関係について (1)「ソニ/SONI」と「ソニー/SONY」 ア 本件商標は、上段に「ソニマート」の片仮名を、下段に「SONIMART」の欧文字を併記した構成であり、上段の「ソニマート」は下段の「SONIMART」の表音に当たるものと思われる。当該片仮名及び欧文字はいずれも同じ大きさの文字で表示されているが、「ソニマート」の片仮名の方が、上段に表示され、また、日本の需要者にとってすぐに判読・称呼できる母国文字である分、需要者に対してより強く支配的な印象を与える。 「ソニマート」も「SONIMART」も、全体としては、特定の意味を持つ既存の言葉ではないが、その構成中「マート/MART」は、「市場、商店街」(甲50)、「市場。商業中心地。」(甲51)を意味する英単語・外来語であり、我が国の需要者にとっては称呼・観念ともに非常に親しまれている語である。 他方、本件商標の構成中「ソニ/SONI」は、英単語でも、フランス語でも、ドイツ語でもなく、我が国の需要者にとっては(著名商標「ソニー/SONY」を想起・連想する以外には)全く馴染みのない語であり、我が国の需要者のほとんどは「ソニ/SONI」を造語の一種として捉えるというべきである。 したがって、我が国の需要者は、「ソニマート/SONIMART」を目にした際、あるいは、「ソニマート」という音を耳にした場合には、これを「ソニ/SONI」という造語と、「マート/MART」という英単語が結合したものであると自然と認識する。 イ 実は「Soni(ソニ)」は「音」を意味するラテン語「SONUS」の複数形で、請求人の創業者が、「SONY」というブランドを考案した際に、その元とした語である(甲11)。 請求人は、1946年に創業し、その当時は「東京通信工業株式会社」という名称であったが(甲2、甲5)、1950年に日本初の国産テープレコーダーを開発した際、そのレコーダー用の録音テープに、「Soni-Tape(ソニテープ)」という商標を付して販売した(甲4~甲7)。これは、請求人が初めて選択した商標として、請求人の約80年の歴史の中でも最も重要な商標の一つに位置付けられている(甲8)。 その後、海外への事業進出を目指すことになった請求人は、会社の製品・事業全体を表象するブランドを選択するに際し、この「Soni(ソニ)」の採用を検討したが、欧米では「Soni」は「ソナイ」と発音される可能性があったため、採用とはならなかった(甲11の1及び2)。 しかし請求人は、「ソニ」というキャッチーで親しみやすい音にはブランドとしての適性があると考え、自社のブランドを海外において「ソニ」と称呼してもらえるように、「i」を「y」に代え、「SONY」を会社全体のブランドとして採用するに至った(甲11)。そして、1958年には、請求人は、社名も「ソニー株式会社」に変更した(甲2、甲5)。 ウ 請求人商標がラテン語「SONUS」の複数形「Soni(ソニ)」に由来していることは、多くの書籍・資料においても説明されており(甲11)、「Soni(ソニ)」の語は、請求人にとって「ソニー/SONY」ブランドの原点ともいうべき縁深い語であると同時に、その音「ソニ」は、「ソニー/SONY」ブランドの本質そのものといえる。請求人は今なお「SONI」について商標登録を保有している(甲172)。 ところで、「SONY」は、海外では長音部分をはっきりとは発音せず、「ソニ(ィ)」(わずかに「ニ」の音を伸ばす程度)と発音され、当該発音はほとんど「ソニ」と差がないといってもよい。海外で「SONY」に当てられている発音記号をみても、「NY」の部分は、音を伸ばしているのか判然としない微妙かつ曖昧な「ni(ニ/ニィ)」とされている(甲12)。実際、請求人も「SONY」を採用した直後は、その製品の広告において「SONY」の呼称を「ソニ」と表記していたし、また、請求人が保有する最古の「SONY」の登録商標にも「ソニ」の文字が当てられており、当初「SONY」は「ソニ」の音で表されていた(甲9、甲10、甲171)。 なお、「SONY」に対する「ソニ(ィ)」という発音は、実は、海外だけではなく、我が国の需要者にも非常に親しみ深いものとなっている。すなわち、ソニーグループは、何十年もの間、その各種商品・役務についてテレビやインターネット上でコマーシャルを提供し続けているが、コマーシャル映像の最後には「It’s a Sony.」や「SONY」という文字が現れ、外国の発音で「イッツァ・ソニ(ィ)」「ソニ(ィ)」というナレーションが入ることでブランドイメージを需要者に定着させる試みを重ねてきた。同ナレーションの「SONY」はほとんど語尾を伸ばさず、「ソニ」と発音されている(甲13、甲14)。かかるコマーシャル映像の配信を通じて、我が国の需要者は、(長音が明瞭に発音されない)「ソニ(ィ)」も「SONY」の称呼として強く印象付けられ、記憶しているものといえる。 以上のように、請求人は、「ソニ」という音に対して非常に強いこだわりをもって請求人商標を採用した経緯があり、当該音に対して強いアイデンティティを持って、請求人商標を半世紀以上にわたり使用し、大切に育て守ってきた(甲15)。 請求人商標が世界的に著名となった現在においては、「ソニ」の2音を聞くだけで、多くの人々が「ソニー/SONY」を連想する程に、「ソニ」の2音と請求人との間には非常に強い連想性が存在する。 このことは、特許庁における審査において「soni+既存の英単語」からなる出願商標が請求人商標との混同を理由に拒絶されている事例等に照らしても明らかである(甲16、甲17)。 また、諸外国においても、「SONI」の語を内包する商標が多数異議申立又は無効審判により拒絶ないし取り消しとなっていることなどに見ても、「SONI」と「SONY」との間には高い類似性や混同可能性がある(甲18~甲31)。 (2)「ソニー/SONY」と本件指定役務との関係 本件指定役務は、いずれもソニーグループが製造・販売・提供する商品・役務そのもの又はそれらと深く密接に関連するものばかりである。特に、本件指定役務のうち小売等役務は、ソニーグループの事業の中核にあるものであり、また、請求人がかつて「ソニープラザ(通称:ソニプラ)」という小売事業を展開しており、その名称が現在でも需要者の記憶の中に深く刻まれているという実情に照らしても関連性が深い。 よって、かかる役務について、請求人のアイデンティともいえる「ソニ」の2音を語頭に有する本件商標が使用されることは、市場において混同を許すおそれがあることはもとより、「ソニー/SONY」という唯一無二のブランドの独自性を希釈化し、その指標力を弱化させることにつながるおそれが極めて大である。請求人としては、そのような事態を強く懸念しており、ゆえに本件商標の登録を到底看過することはできず、本件無効審判の請求に及んだ次第である。 (3)審判請求の利害関係 以上のとおり、本件商標の使用及び登録は、ソニーグループの業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれが大であり、また、半世紀以上にわたり継続して使用している請求人商標の独自性ないし指標力を稀釈化してしまうおそれがあり、請求人商標に化体した信用に害するものであることから、請求人が本件無効審判を請求することについて利害関係がある。 2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性 (1)他人の表示の周知著名性 ア 「ソニー/SONY」の著名性について 請求人商標「ソニー/SONY」は、請求人をはじめソニーグループ各社の略称であり、また、ソニーグループの製造・販売・提供に係る商品及び役務についての代表的出所表示(ハウスマーク)として半世紀以上にわたり世界中で使用されている、著名商標である。 請求人商標が著名であることは、例えば、商標審査基準における記載(甲32)や、「SONY」が多区分にわたり防護標章登録を受けていること(甲33)などからも、特許庁において顕著な事実である。 (ア)請求人は、終戦直後の1946年にラジオの修理等を行う会社としてスタートを切り、日本初の国産テープレコーダーや日本初の国産トランジスタラジオの製造・販売を皮切りに、音楽再生プレーヤーその他音響関連商品、テレビジョン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ビデオゲーム機、コンピューターなど様々な消費者向け電気・電子製品の製造・販売を行うようになり、さらには、半導体製造事業などの工業分野、音楽事業、映画事業、金融事業などのサービス分野にも進出して、多角事業経営の巨大企業グループヘと成長した(甲2、甲5、甲34~甲39)。 本件商標が出願された2018年度及び本件商標が登録された2019年度当時のソニーグループの事業状況は、従業員数が連結で114,400名(2018年度/甲34)・111,700名(2019年度/甲35)、2018年度の年間売上高が8兆6,656億円(甲34)、2019年度の年間売上高が8兆2,598億円(甲35)である。なお、現在(2023年度)のグループ連結での売上高は13兆円を超えている(甲36)。 (イ)請求人商標を使用した商品・役務の日本における広告宣伝費(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、スポンサー料、イベント料等)は、2009年から2014年に4,000億円から6,000億円の間を推移し(甲41)、2016年度に3,638億円(国内2位/甲42)、2019年度に3,594億円(国内3位/甲43)、2020年度に2,600億円(国内1位/甲44)であり、日本企業の中でトップとなる年もあり、国内において常に上位に位置し、また、世界的にもその宣伝広告費の規模はトップクラスである(甲45)。それら広告の一部として、「SONY」のテレビ広告の映像写真並びに雑誌・新聞への出稿広告の写しを提出する(甲46、甲47)。 (ウ)請求人商標に係る新聞雑誌の記事は、掲載実績の一部として甲48を提出する。 (エ)インターブランド社のブランドランキングによれば、日本のグローバルブランドの部で、請求人商標は、2010年に3位、2012年に4位、2013年に4位、2015年に4位、2018年に5位、2019年に3位とされている(甲49)。 イ 各種商品・役務との関係での「ソニー/SONY」ブランドの実績 以下のとおり、ソニーグループの事業は非常に多角的であり、各事業分野において「ソニー/SONY」ブランドが使用されている。 (ア)電気・電子製品及びそれらの小売事業について 請求人は、ラジオの修理という事業からはじまり、1950年には日本初の国産テープレコーダーを世に送り出したという歴史からも分かるとおり、電気・電子製品の製造・販売で事業のスタートを切り、実績を上げてきた。また、日本初の国産トランジスタラジオの製造に成功したのも請求人であり、ソニーグループは、このトランジスタ半導体を使用したラジオの開発を端緒として、半導体事業を世界屈指の規模にまで成長させるとともに、下記のとおりそれら半導体を用いた様々な電気・電子製品を世に送り出してきた(甲2、甲5、甲52、甲53)。 a オーディオ関連商品 請求人は、1979年に、歴史的ヒット商品であるポータブルカセットプレーヤー「ウォークマン」を発売した。「ウォークマン」は、形を変えながら現在でも人気商品であり、2019年時点で累計4億台もの販売数を誇り、長年、携帯オーディオ商品の国内シェアトップを維持している(甲54、甲55)。また、請求人は、CDやMDの規格策定のメンバーになるなど、音響関連商品の業界を主導・牽引する存在である(甲56、甲57)。請求人は、ステレオシステム(オーディオセット)、イヤホン、ヘッドホン、スピーカーなど、音響に関わる製品全般を扱っている(甲34、甲56、甲58~甲78)。請求人が占める各種オーディオ関連商品のシェアは、甲55、甲79及び甲80のとおりである。 b 映像関連商品 1960年に、請求人は、世界初の直視型ポータブルトランジスタテレビを開発し、テレビ事業に参入した(甲112)。1968年には、請求人独自のトリニトロン方式によるカラーテレビ1号機を発売した(甲112)。また、2005年には、新大画面液晶テレビシリーズを発表し、現在も人気テレビブランドとして不動の地位を築いている(甲112、甲113)。2007年には、世界初の有機ELテレビを発売し、同製品分野において、ソニーグループは圧倒的なシェア率を誇っている(甲112、甲114)。 また、ソニーグループは、映像関連商品として、ブルーレイディスク・DVDレコーダー及びプレーヤーの分野においても、高いシェア率を誇っている(甲115)。 c スマートフォン ソニーグループは、2008年に、関連会社であるソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社をしてスマートフォン事業に参入し、国内第2~3位のシェアを堅持している(甲2、甲116、甲117)。 d ゲーム関連商品 1994年、ソニーグループ企業のソニー・インタラクティブエンタテインメント(旧・ソニー・コンピュータエンタテインメント)は、ビデオゲーム機「プレイステーション」を発売し、1999年末には、全世界生産出荷累計は7000万台を達成した(甲118)。同社は、2000年に「プレイステーション2」を発売し、2005年には全世界生産出荷累計は1億台を突破し、2011年には累計数1億5000万台を達成している(甲118)。次いで、同社は、2006年に「プレイステーション3」を、2014年に「プレイステーション4」を日本国内で発売し、2018年には歴代の「プレイステーション」のハードウェア世界累計実売台数は5億2530万台を記録している(甲118)。現在、ソニーグループのゲーム関連商品は、グループの柱として、グループ全体をけん引しているといっても過言ではない(甲34~甲36、甲39)。 e デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ事業 請求人は、1981年にデジタルカメラを初めて世に送り出し、同機は新聞社によりロサンゼルス五輪の取材で使用された(甲119)。1996年には、コンパクトデジタルカメラを発売し、2006年にはレンズ交換式デジタルカメラ分野に参入して本件商品の販売を開始、2008年にはコンパクトデジタルカメラの出荷だけで1億台という累計販売数を達成している(甲119、甲120)。本件商標の出願・登録時前後のソニーグループのデジタルカメラ及びデジタルビデオカメラの国内販売シェアは、甲121のとおりである。 f 電気・電子製品の小売事業 ソニーグループは、日本国内で高いシェアを誇る上記電気・電子製品を、本件商標の出願より前から、直営販売店「ソニーストア」において需要者に対して直接小売している。 「ソニーストア」は、オンラインのストアと、全国5か所に実店舗があり、いずれにおいても「ソニー/SONY」ブランドの電気・電子製品を一堂に陳列し、また、製品の相談を受ける専門スタッフを配して、需要者に対して小売等役務を提供している(甲81)。 また、ソニーグループは、本件商標の登録後ではあるが、オンライン上でバーチャルの店舗も開設しており、同店舗にも「ソニーストア」「SONY」の商標を使用している(甲81の3)。 さらに、ソニーグループは、長年、その製造に係る電気・電子製品を、全国各地の家電販売店・家電量販店を介しても販売しているところ、多くの店舗との間で、同店舗をソニー製品販売の特約店とする関係を結んでいる。これら特約店は「ソニーショップ」と呼ばれ(甲82の1)、請求人は、特約店に対して、店頭などに「SONY」「ソニーショップ」「Sony Shop」等の商標を掲げることについて許諾をしている。2024年7月現在、「ソニーショップ」は全国で283存在する(甲82の2及び3)。 (イ)音楽事業及び各種グッズ・電子書籍の小売事業について a 音楽事業 現在、高い収益をあげているのが音楽関連事業であり、例えば、現在ソニーグループは、管理楽曲数において世界最大級の規模を誇っている(甲34~甲36、甲83、甲84)。ここ7年間のソニーグループの音楽関連事業の全世界での売上高は倍増している(甲85~甲90)。 また、本件商標の出願前の株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの音楽ソフトビジネスに関するシェアについても、常に1・2位を堅持している(甲91~甲105)。人気歌手やグループが同社に所属し、あるいは、同社と契約している(甲106)。 b 各種グッズ・電子書籍の小売事業 ソニー・ミュージックエンタテインメントは、本件商標の出願時よりも前から、「Sony Music Shop」「ROCKET-EXPRESS」の2つの直営ショップにおいて各種商品の小売等役務を提供している。(甲107~甲110)。 また、ソニー・ミュージックエンタテインメントは、オンラインストアにおいて電子書籍の小売等役務を展開している(甲111)。 (ウ)映画関連事業について ソニー・ピクチャーズエンタテインメントが、世界各国で、映画製作・買い付け・配給、テレビ番組製作・買い付け・配信、テレビジョンネットワーク、デジタルコンテンツ製作・配信、スタジオ運営、新しいエンタテインメント商品・サービス・技術の開発を展開しており、12のアカデミー賞最優秀作品賞受賞作を含む3500以上の映画を製作してきた(甲2、甲122、甲123)。本件商標の出願前の映画ビジネスに関するシェアについても、上位を堅持している(甲124~甲134)。 (エ)事業者向け(BtoB)事業について ソニーグループの製造に係る電気・電子製品は、一般消費者向けだけでなく、事業者向けにスペックの高い商品が販売され、また、付加価値を高めた販売方式として、サービスとのパッケージで商品が提供されることもある(甲135)。 また、ソニーグループは、長年蓄積してきた技術やノウハウを発展させて、BtoB事業として、広告、経営コンサルティング、IT支援、各種受託業など、多岐にわたるサービスを提供しているから、事業者向けサービスの分野においても「ソニー/SONY」ブランドは高い信用と顧客吸引力を獲得している(甲137~甲142)。 (オ)その他の事業について a 通信事業 請求人は、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社をして、電気通信事業を提供している(甲143~甲146)。同社の2018年度の売上高は1,400億円にのぼる(甲143の2)。 b 金融事業・介護事業 ソニーグループは、請求人の100%子会社の傘下の会社が、銀行・保険・投資に係る金融サービス及び介護サービスを提供している(甲147)。 c 医療・教育事業 請求人は、オリンパス社との合弁会社により医療機器及びそれに関連するソリューション事業を提供し、また、教育サービスや教育関連の商品を提供している(甲148、甲149)。 (2)当該商標と他人の表示との類似性 ア 本件商標の構成中「マート/MART」の識別性の弱さについて 既に述べたとおり、本件商標の構成中で、「SONI/ソニ」は造語である一方、「マート/MART」は既存の英単語であり、我が国において「市場、商店街」を意味する外来語として定着している。また、多くの大手企業が、自己の商号やコーポレートマークに「マート/MART」を結合した名称で小売事業を提供している実情がある。そして、昨今は、インターネット上で、個人のスキル・能力(サービス)を販売したり、各種専門職・専門家・専門サービスの仲介・斡旋をするマーケットプレイスの名称に、「マート/MART」が使用されている事例が多く存在する(甲151)。 「マート/MART」は、一般的に、他の語(社名の略称、コーポレートマーク、ブランド、一般用語など)と結合して複合語を作り、商品やサービスを販売したり紹介・仲介したりする場を意味するものとして使用されることが多く、本来的に識別性の非常に弱い語である。このことは、特許庁における出願拒絶例に見ても明らかである(甲152)。 イ 「ソニ/SONI」と「ソニー/SONY」の高い類似性 上記のとおり、本件商標が「ソニ/SONI」と「マート/MART」の二つの語を結合したものと容易に理解・認識され、さらに、「マート/MART」が本件指定役務との関係において識別性の弱い語であることからすれば、「ソニ/SONI」の部分が強く支配的な印象を与え、需要者の注意を強くひくものといえる。 よって、本件商標の構成中「ソニ」と請求人商標「ソニー」とは、外観において、長音以外の部分が同一の文字であり、「ソニー」が造語かつ著名であることを踏まえれば、需要者が「ソニ」の2文字を目にした場合に、「ソニー」を想起・連想することは自明といえる。また、「ソニ/SONI」と「ソニー/SONY」は、語尾の長音の有無しか差異がないから、称呼も非常に相紛らわしい。語尾の長音の有無について類否が争われた審判事件でも、同旨の説示がなされている(甲153、甲154)。 また、前述したように、ソニーグループが日本国内において数十年提供してきたコマーシャル映像において、「SONY」は、外国の発音で「ソニ」と長年ナレーションされてきたことから、日本の需要者も「ソニ」の音を聞けば自然と「ソニー」を想起・連想するという状況が存在する。かかる事情を加味すればなお、「ソニ」と「ソニー」とは相紛らわしい。 さらに、各種AIスピーカーに対し、(「ソニ」と「マート」の間に長音を入れないで)「ソニマート」と呼びかける実験を行ったところ、いずれも「ソニーマート」と認識して表示する、という結果を得た。 このように、AI技術が認識し誤るほどに、「ソニー」と「ソニ」という音は、聞き手にしてみれば、わずかな違いでしかない。ましてや、請求人商標が著名であるという状況下において、「ソニ」という2音を聞けば、多くの人々が「ソニー/SONY」を連想する程に「ソニ」の2音と請求人商標との間には非常に強い連想性が存在しているから、一般の需要者が「ソニマート」という音を聞けば、長音の有無を凌駕して、「ソニー/SONY」を連想する可能性が極めて高い。 ウ 商標法第4条第1項第15号の適用で求められる類似性の程度について 商標法第4条第1項第15号の適用場面における「類似性の程度」とは、周知著名な商標から連想されて、その出所と経済的又は組織的に何らかの関係があると誤認される程度のものであれば足りると解すべきである。 経済的又は組織的に何らかの関係があると誤認される、という観点から述べると、(「ソニ/SONI+マート/MART」のように)「ソニー/SONY+既存の語」という構成の名称は、一般の需要者にとってなじみ深いという実情が存在する。 例えば、請求人の子会社・関連会社名をみても、「ソニーモバイルコミュニケーションズ」「ソニーマーケティング」などのように、「ソニー/SONY+既存の語」という社名は多数存在する。 社名だけでなく、ソニーグループに関連する施設等にも多く「ソニー」を冠するものが存在する。例えば、「ソニーシティ」「ソニースクエア」等、「ソニー」を冠した建物や施設が複数存在し、いずれも「SONY(ソニー)」+「既存の語」の構成となっている(甲5、甲39、甲157)。 なお、ソニーグループが、2007年まで「SONY PLAZA(ソニープラザ)」という雑貨商品の小売事業を行っていたが、やはり「ソニー/SONY+既存の語」という構成に加え、「ソニプラ」と略称されていた。「SONY PLAZA」が「PLAZA」の名称に変更となってから15年以上が経過しているが、「ソニプラ」の愛称がいまだに人々の記憶に鮮明に残っている(甲159~甲161)ことを踏まえると、需要者が本件商標に接した場合、「ソニ」の部分を「SONY」と理解・把握し、「ソニーが提供する市場・商店街」という意味合いで誤認してしまう可能性は大きい。 ところで、一般的な例として、経済的又は組織的に関係を有するグループ企業(グループ子会社)が、母体の親会社の著名な名称・ブランド名の特徴的かつ特異な一部や、その語頭部分だけを使ったブランド名・店舗名・会社名を採択することは珍しいことではない。よって、ソニーグループにおいても、例えば、通信事業では「SO-NET」、介護事業では「SONARE」のように「SONY」の「SON」を冠したサービス名称があるし、また、「ソニプラ」が需要者の間に今もなお強く記憶されている状況もあるところ、商標法第4条第1項第15号における混同とは、あらゆる連想可能性という観点から、混同のおそれを検討しなければならない。 すなわち、本件商標の「ソニマート/SONIMART」は、「ソニ」の2文字(2音)を語頭に有し、当該2音は、請求人の「ソニー」の音に通じ、「ソニー/SONY」を強く連想させる類似性を持つものといえる。 以上のとおり、本件商標の文字又は音は、あたかも、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係があると誤認されるおそれがあり、また、「マート/MART」が他の語と結んで複合語を作ることが多い語であることや本件指定役務との関係で識別性が弱いことを踏まえると、両商標の類似性はいよいよ高い。 エ 商標の周知・著名性が与える類否判断への影響について 「ソニー/SONY」は、その高い著名性に照らし、類似の範囲が拡張・増幅していることは明らかである。 また、本件商標は、「ソニマート」という称呼が自然に生ずる(甲1)。取引者間や需要者との取引流通上、口頭だけでやりとりしなければならない場面は、現代においても少なくはないし、聴き手が「ソニマート」という音のうち「ソニ」を「ソニー」と聴き誤るおそれも当然考慮されなければならない。とりわけ、経験則上、記憶や印象だけに頼って商標を称呼上特定する場合も当然起こり得るから、そのような場面において、「ソニー/SONY」を強く連想させる「ソニ」を語頭にして聞けば、少なくとも本件商標の指定商品・役務の分野の需要者及び取引者が請求人商標を想起し、時としてこれを誤認混同してしまうことは明白である。 (3)他人の表示の独創性 請求人の「ソニー/SONY」が造語であることは、前記した同商標採択の経緯にみても明らかであり、また、一般的にも「ソニー/SONY」が造語商標の例として非常に頻繁に紹介されていることは経験則からも明らかである。また、本件商標の語頭にある「ソニ/SONI」も、我が国の需要者にとってみれば造語としてしか認識できないものである。 本件商標の語頭「ソニ/SONI」は、その「ソニー」の音のうち長音がないという違いにすぎない。「ソニー」の著名性を踏まえれば、「ソニ」という2音を聞いただけで「SONY(ソニー)」を連想し得るほどに、需要者においては「ソニ」という2音と「SONY(ソニー)」との間には強い連想性があるというべきである。 (4)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性並びに商品等の取引者及び需要者の共通性 本件指定役務はいずれも、多角経営を展開するソニーグループによって提供されているものと同一又は同視し得るものであり、ソニーグループの業務との間で、取引者及び需要者層・流通経路等について高い共通性を有する。 本件指定役務中「第35類 スマートフォン用ケースの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び知育玩具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、既述の「ソニーストア」「ソニーショップ」「Sony Music Shop」などが提供する小売等役務そのものである。 また、「消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」も、小売店情報の提供などが含まれることから、ソニーグループが提供する小売等役務とは密接な関係性を有する。 次に、本件指定役務中「第35類 広告業,販売又は営業促進のためのポイント蓄積式カードの発行及び管理,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,電子商取引に関する事業の管理又は運営,インターネットにおけるショッピングモール事業の運営及び管理」は、前述したソニーグループの提供に係るBtoB事業、すなわち、広告事業・経営コンサルティング・事業分析・Eコマース事業・グッズの受託制作事業売などと同一又は類似の関係に当たる。 さらに、本件指定役務中「第42類 デザインの考案(広告に関するものを除く。),電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守,電子計算機又はそのプログラムの性能・操作方法等に関する紹介及び説明,コンピュータソフトウェアに関する研究及び開発,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」も、ソニーグループが提供している役務(例えば、ソニーデザインコンサルティング株式会社やソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社により展開されている事業)に相当するし、特に、「電子計算機用プログラムの提供」に関して言えば、ソニーグループは、その電気・電子製品に連携するアプリケーションソフトウェアを多数そして広く提供しているから、ソニーグループにとって中核的なサービスの一つといえる(甲170)。 (5)その他取引の実情 請求人が、これまで「ソニープラザ」などの「ソニー/SONY+既存の語」という構成の名称を使用し、それらが著名な商業施設として認識されてきたことは前記したとおりである。また、請求人には、グループ子会社が日本国内外に1,500社以上存在している(甲37)。これらは、本件商標が、請求人事業と密接な関係にある本件指定役務について使用された場合において、同役務がソニーグループとの間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係るものと誤認される可能性を増幅させる実情である。 (6)フリーライド及びダイリューション 商標法第4条第1項第15号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の稀釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものである。そして、前述のとおり、ソニーグループのハウスマーク「ソニー/SONY」は世界中で長年著名なものである。万が一、本件商標が登録を維持され、請求人の業務そのものである音響関連商品及び音楽関連商品・役務について使用される事態が生じれば、「ソニー/SONY」の有する自他識別機能は稀釈化(ダイリューション)の危機にさらされることとなる。その結果、請求人を含むソニーグループの営業・広告努力の成果、つまり「ソニー/SONY」が獲得した顧客吸引力は著しく弱められてしまうことは明らかである。そして、特許庁においてこれが認められれば、各国において同様の商標が無数に出願され、登録されることが危惧され、日本を代表する企業のブランド力を著しく減殺することになる。そのような事態は、商標法第4条第1項第第15号の規定の趣旨を完全に没却するものであり、ひいては「商標の使用をする者の業務上の信用の維持」そして「需要者の利益を保護する」という商標法の目的に明らかに反する。 (7)小括 以上のとおり、本件商標は、本件指定役務について、著名商標「ソニー/SONY」との関係において、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性 (1)すでに述べてきたとおり、本件商標が「ソニ/SONI」と「マート/MART」の二つの語を結合したものと容易に理解・認識され、さらに、「マート/MART」が本件指定役務との関係において非常に識別性の弱い語であることを所与とすれば、著名商標「ソニー/SONY」に酷似し、同ブランドを想起させる「ソニ/SONI」の部分が需要者に対して強く支配的な印象を与えるものといえる。そうすると、本件は、「ソニ/SONI」の部分を抽出し、請求人商標と対比することは当然に許される。 よって、「ソニ/SONI」と請求人商標「ソニー/SONY」とは、請求人商標の著名性を踏まえると、外観・称呼ともに非常に相紛らわしく類似する。 (2)先願登録商標の引用 請求人は、「ソニー/SONY」の文字からなる引用商標を保有しているところ(甲171~甲186)、本件指定役務は、いずれも、それら引用商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似である。 (3)小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似するものであって、その指定商品及び指定役務と同一又は類似の役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 4 結語 以上、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第11号に該当するから、誤って登録されたものであり、その登録は、同法46条1項の規定により無効とされるべきものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。 第5 当審の判断 1 請求人は、本件審判を請求することの利害関係がある旨を主張するところ、被請求人からは答弁はなく、当事者間に争いがないものであり、請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。 以下、本案に入って審理する。 2 請求人商標等の周知著名性について (1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 請求人は、昭和30年頃からトランジスタラジオについて、請求人の創業者が考案した造語である請求人商標の使用を開始し、その後、電気通信機械器具、電子応用機械器具などについて、請求人商標を継続して使用している(甲5、甲9、甲11の2、甲11の3、甲112ほか)。 イ 請求人並びにその子会社及び関連企業(ソニーグループ)は、請求人商標を家庭用テレビゲーム機の分野の商品についても使用している(甲2、甲118)。 ウ ソニーグループの年間売上高は、2018年度(平成30年度)が8兆6,657億円(甲34)、2019年度が8兆2,599億円である(甲35)。 エ BCN社の調査によれば、請求人の業務に係る商品のうち、例えば「携帯オーディオ(2012年~2020年)」「有機ELテレビ(2018~2020年)」「ブルーレイディスク・DVDプレーヤー(2016年~2020年)」のシェア率は1位であり、その他の電気通信機械器具、電子応用機械器具の分野の商品についても、継続して高いシェア率を有している(甲55、甲79、甲80、甲114、甲115、甲117、甲121)。 オ 請求人の業務に係るビデオゲーム機「プレイステーション」は、1994年の発売以降、シリーズ商品が製造販売されているところ、歴代のシリーズ商品のハードウェア世界累計実売台数は、5億2530万台であり(甲118)、ゲーム関連商品は、現在、ソニーグループの業務の中核的な事業となっている(甲34~甲36、甲39)。 カ 請求人商標は、インターブランド社による「日本のグローバルブランドTOP30」において、2010年に3位、2012年に4位、2013年に4位、2015年に4位、2018年に5位、2019年に5位とされている(甲49)。 キ 商標「SONI」及び「ソニ」は、1950年頃にテープレコーダーのテープに使用されている(甲11の3~5)ものの、少なくとも1958年(昭和33年)に「ソニー株式会社」へ社名変更した後の使用は確認できない。 (2)上記(1)よりすれば、請求人商標は、いずれも本件商標の登録出願前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、ソニーグループの業務に係る商品(電気通信機械器具、電子応用機械器具、家庭用テレビゲーム機)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものといえる。 しかしながら、商標「SONI」及び「ソニ」は、1950年頃にテープレコーダーのテープに使用されたことはうかがえるものの、少なくとも1958年(昭和33年)の社名変更後の使用は確認できないことから、本件商標の登録出願日及び登録査定日において、ソニーグループの業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものということはできない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)請求人商標の周知著名性 請求人商標は、上記2のとおり、ソニーグループの業務に係る商品(電気通信機械器具、電子応用機械器具、家庭用テレビゲーム機)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている。 (2)請求人商標の独創性 請求人商標は、請求人の創業者による造語であって、独創性は高い。 (3)請求人商標がハウスマークか否か 請求人商標は、請求人のハウスマークである。 (4)本件商標と請求人商標の類似性の程度 本件商標と請求人商標を比較すると、全体の構成において異なるものの、本件商標と請求人商標中の「SONY」とは、語頭の「SON」の文字を共通にし、本件商標と請求人商標の語頭の欧文字又は片仮名から生じる「ソニ」の称呼が共通であることに加え、本件商標を構成する語頭の「SONI」の文字及びこれを称呼した「ソニ」の音は、電気通信機械器具、電子応用機械器具、家庭用テレビゲーム機の分野において周知著名な請求人商標の「SONY」又は「ソニー」を連想させる。 また、請求人のグループ会社や施設等には、例えば、「ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社」、「ソニー・インタラクティブエンタテイメント」、「ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社」、「ソニー・ミュージックエンタテインメント」、「ソニー生命保険」、「ソニー銀行」「ソニーシティ」「ソニースクエア」のように、その名称に「ソニー」の文字を冠した会社や施設等が多く存在するなど(甲37、甲157ほか)、請求人は、「ソニー」の文字と他の既成語を組み合わせた名称を多数使用していることに加え、請求人の製造に係る電気・電子製品を販売する全国の特約店が、「ソニー」の文字と既成語からなる「ソニーショップ」と称されている(甲82の2)。一方で、本件商標が、請求人商標を連想させる「SONI(ソニ)」と、「市場、商店街」(株式会社三省堂 コンサイスカタカナ語辞典第5版)等の意味を有する既成語である「MART(マート)」を組み合わせた構成であることも踏まえると、両商標は一定の類似性を有するといえる。 (5)企業における多角経営の可能性 ソニーグループは、1950年にテープレコーダーの販売を開始して以降、電気・電子製品や家庭用テレビゲーム機の製造・販売、通信・放送関連役務の提供、音楽・映画・電子書籍等の娯楽関連役務の提供及び金融事業などを行っており、請求人は、電気・電子製品の製造・販売のみならず、幅広い商品及び役務において多角的な経営を行っている(甲34~甲36、甲39)。 (6)本件商標の指定商品・指定役務と請求人商標に係る商品の関連性、需要者の範囲 請求人商標は、上記2のとおり、電気通信機械器具、電子応用機械器具、家庭用テレビゲーム機の分野において周知著名性を有するものであり、これらの商品中、「電気通信機械器具,電子応用機械器具」と、本件商標の指定役務中「スマートフォン用ケースの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」とは、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われ得るものであり、商品と役務の用途、商品の販売場所と役務の提供場所が一致する場合があり、両者の関連性は高く、これらの需要者の範囲も一致するといい得る。 (7)小括 上記(1)ないし(6)のとおり、請求人商標は、独創性の高い請求人のハウスマークであって、ソニーグループの業務に係る商品を表示するものとして周知著名であること、本件商標と請求人商標は一定の類似性を有すること、請求人商標が使用される商品と本件商標の指定商品の関連性が高く、両者の取引者、需要者の範囲が一致すること、さらに、請求人は電気・電子製品の他にも、通信・放送関連役務及び音楽・映画・電子書籍等の娯楽関連役務など幅広い商品及び役務において多角経営を行っていることを総合して判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用した場合、取引者、需要者をして請求人又は請求人商標を連想又は想起し、その役務が他人(ソニーグループ)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、上記第1のとおり、「ソニマート」及び「SONIMART」の文字を二段に書してなり、当該文字に相応して「ソニマート」の称呼を生じ、これらの文字は、辞書等に掲載されているものではなく、特定の意味合いを有するものとして認識されているような事情も見いだせないことから、特定の観念を生じない。 (2)引用商標 引用商標1は、別掲2のとおり、「Sony」の欧文字と「ソニ」の片仮名を二段に表してなるところ、その構成文字に相応して「ソニー」及び「ソニ」の称呼を生じ、その構成中の「Sony」の文字は、上記2のとおり、周知著名な請求人商標と同じつづりからなるから、「(ブランドとしての)ソニー」の観念を生じる。 引用商標2は、上記第2の2(2)のとおり、「SONI」の欧文字よりなるところ、当該文字に相応して「ソニ」の称呼を生じ、当該語は、辞書等に掲載されているものではなく、特定の意味合いを有するものとして認識されているというべき事情も見いだせないことから、特定の観念を生じない。 引用商標3及び引用商標9は、別掲3のとおりの構成からなるところ、その構成中の「Sony」の欧文字に相応して「ソニー」の称呼を生じ、当該欧文字は、上記2のとおり、周知著名な請求人商標と同じつづりからなるから、「(ブランドとしての)ソニー」の観念を生じる。 引用商標4は、上記第2の2(4)のとおり、「sony」の欧文字よりなるところ、当該文字に相応して「ソニー」の称呼を生じ、当該欧文字は、上記2のとおり、周知著名な請求人商標と同じつづりからなるから、「(ブランドとしての)ソニー」の観念を生じる。 引用商標5、引用商標7、引用商標8及び引用商標13は、上記第2の2(5)、同(7)、同(8)及び同(13)のとおり、「ソニー」の片仮名よりなるところ、当該文字に相応して「ソニー」の称呼を生じ、当該片仮名は、上記2のとおり、周知著名な請求人商標と同じ構成文字からなるから、「(ブランドとしての)ソニー」の観念を生じる。 引用商標6、引用商標10ないし引用商標12、引用商標14ないし引用商標16は、上記第2の2(6)、同(10)ないし同(12)、同(14)ないし同(16)のとおり、「SONY」の欧文字よりなるところ、当該文字に相応して「ソニー」の称呼を生じ、当該欧文字は、上記2のとおり、周知著名な請求人商標と同じつづりからなるから、「(ブランドとしての)ソニー」の観念を生じる。 (3)本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観においては、文字数や構成文字等において両者の構成態様は明らかに異なるから、外観上相紛れるおそれはない。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「ソニマート」の称呼と引用商標から生じる「ソニ」及び「ソニー」の称呼を比較すると、両者は語尾における「マート」の音の有無という差異を有し、この差異が5音と2音又は3音という短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、明瞭に聴別できる。 さらに、観念においては、本件商標は特定の観念を生じず、引用商標は「(ブランドとしての)ソニー」の観念を生じるか、又は特定の観念を生じないから、両者は相紛れるおそれはないか、比較できない。 そうすると、本件商標と引用商標は、外観及び称呼において相紛れるおそれはなく、観念においても比較できない、若しくは相紛れるおそれのないものであるから、これらの外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は非類似の商標と判断するのが相当である。 (4)小括 本件商標と引用商標は、上記(3)のとおり、非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務の類否について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものの、同項第15号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とするべきである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-890041

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