商標無効審判
2024-890021
ブイエム、エムブイ、マルデビンテージズ、マルデスビンテージズ、キョージマルヤマ、マルヤマキョージ
- 審判番号
- 2024-890021
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2022-090914
- 登録番号
- 6685241
- 請求日
- 2024年05月09日
- 審決日
- 2025年03月14日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】ルイ ヴイトン マルチェ
- 【請求人代理人】高松 薫
- 【請求人代理人】椿原 直
- 【請求人代理人】▲高▼橋 華奈子
- 【被請求人】丸山 恭司
- 【被請求人代理人】福地 武雄
- 審判長/審判官
- 審判長 板谷 玲子
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T111 .271-Z (W1825)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6685241号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6685241号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6685241号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1の構成よりなり、令和4年7月22日に登録出願され、第18類「がま口口金,蹄鉄,レザークロス,皮革,皮革製包装用容器,革製包装用袋,革製帽子箱,ペット用被服類,かばん類,袋物,楽譜入れ,キャンプ用バッグ,スポーツバッグ,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,乗馬用具,被服用の革製縫い付けタグ」及び第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服,防水加工を施した被服」を指定商品として、同5年3月1日に登録査定、同月30日に設定登録されたものである。
第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する国際登録第1127687号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2011年11月14日にFranceにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2012年4月16日に国際商標登録出願、第3類、第4類、第6類、第8類、第9類、第12類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第25類ないし第27類及び第34類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品(別掲3)を指定商品として、平成26年4月25日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第1号証」を「甲1」のように記載する。
1 請求人及び引用商標について
請求人は、一般に、創設者の氏名である「ルイ・ヴィトン」「Louis Vuitton」の名称で150年以上の歴史を持つ世界的に知られるファッション・ブランドを擁するフランス法人であり、その製造・販売に係るバッグ、かばん類、財布等を初めとする請求人の商品は、日本国内のみならず、全世界において幅広く販売されている。
日本国内においては、昭和53年、銀座に第一号となる店舗が出店してから、その高い品質及びファッション性がより広くの顧客層に知られるようになり、昭和56年、請求人の子会社であるLVJグループ株式会社(以下「LVJグループ」という。)が設立されてからは、同社による積極的な販売活動がなされたこともあって、高級ブランドとしての地位を確固たるものとした。そして、原告は、現在60の店舗が設置されており(甲1)、広く日本国民に知られたファッション・ブランドである。
引用商標(甲3)は、創設者の氏名のイニシャルである「L」の文字と「V」の文字を重ねて組み合わせたロゴであり、「L」の縦棒部分を右上から左下方向の斜めに傾け、「V」の右部分と平行にした形状に特徴がある。
引用商標と同一のロゴのみで構成された商標、及び同一のロゴを含む商標について、請求人は複数の商標登録を得ている(甲4~甲13)。
請求人は、自ら又は日本における子会社(ルイ・ヴィトンジャパン株式会社)を通じるなどして、多数の店舗で引用商標を付した商品を販売するとともに(甲1)、現在まで継続的に多額の費用を費やして引用商標を付した商品の広告宣伝を行っており、その結果、請求人をその帰属主体とする引用商標は、日本国内では知らぬ者のないほどの著名性を獲得している。
特許庁の先例(無効2006-89139号)では、引用商標と同一のロゴを含む商標である商標登録第1446773号が需要者の間に広く認識されていたものと認定されている(甲14)。
また、他の行政機関の判断を見ると、引用商標を付した「カバン・財布類、かばん金具、キーホルダー、南京錠、ファスナー・ボタン、スマートフォン・携帯電話用ケース及びアクセサリー、タブレット端末用ケース、洋服類、下着、Tシャツ、マフラー・ネクタイ・靴下・手袋類、帽子、ベルト、靴類、サンダル類、眼鏡類、時計、身飾品、カフスボタン、ヘアアクセサリー、ネイルシール・付け爪、まくら、寝具及びベッドリネン、タオル・ハンカチ、レザークロス・ビニルクロス、喫煙用具、文房具・シール類、ペット用衣類・首輪類」については、関税法第69条の4及び同法第69条の13に基づく差止申立てが受理されている(申立の有効期間は平成28年7月22日から令和6年11月19日まで。)(甲15)。これに先立つ平成18年8月9日には、引用商標は不正競争防止法第2条第1項第2号に定める著名な商品等表示であるとして経済産業大臣から関税法第69条の10(現:第69条の13)に関する意見を受けており、このことからも引用商標の著名性が容易に見て取れる(甲16)。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)引用商標は本件商標に先立ち出願されたこと
本件商標は、令和4年7月22日に出願されているのに対して、引用商標は、これに先立つ平成23年11月14日に国際商標登録出願され、平成24年4月16日に国際登録、平成26年4月25日に国内で商標登録がなされた(甲2)。
(2)本件商標と引用商標の類似性
ア 本件商標について
本件商標は、上から下に、ロゴ、「*MARU des VINTAGES*」、「KY●JI MARUYAMA」の3段で構成されているが、上段に相当するロゴが面積にして全体の8割以上を占めており、ロゴ以外の部分が外観において要部たりえないことは明白である。
異議の決定(異議2023-900138号)においても、「V」の欧文字を有した何らかのモノグラム様の図形を本件図形と定義し、本件図形とそれ以外の部分が、視覚上分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合していないことを指摘したうえで、本件図形が、本件商標を見る者に強い印象を与えるとともに、その注意を引くものであると指摘されている。
その上で、当該異議決定は、本件図形が抽象的であって我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情が認められないとするが、この点は事実に相違する。
すなわち、装飾の要素を除外すると、本件図形は、互いに線分が重ならない3つの要素(ア)「V」の文字に相当する2本の線分とこれと交差する「L」の文字に相当する2本の線分、(イ)中央右側にある右上から左下方向の斜めの線分及び、(ウ)右端下部にある左上から右下方向の斜めの線分により構成されている。
また、(イ)の線分と(ウ)の線分は、(ア)を構成するいずれかの線分と平行に置かれており、当該部分から特段の意味が想起されることが少ない。
そして、(ア)の要素は、引用商標と各線分の頂点の位置関係、線分の太さ及び線分の角度がほぼ全て一致する(甲17)。
引用商標が我が国において請求人及びルイ・ヴィトンを表すものとして認識され、親しまれている事情を考慮に入れると、本件図形を全体として観察することは適当ではなく、(ア)「V」の文字に相当する2本の線分とこれと交差する「L」の文字に相当する2本の線分から、本件図形からも請求人ルイ・ヴィトン表すものとして容易に認識されることは明白である。
したがって、本件商標からは、本件図形、特にその中でも(ア)「V」の文字に相当する2本の線分とこれと交差する「L」の文字に相当する2本の線分を通じて「L」と「V」の欧文字の外観、「エルブイ」の称呼及び「請求人又はルイ・ヴィトン」の観念が生じる。
イ 引用商標について
引用商標は、「L」と「V」の欧文字のモノグラムからなる商標であり、「L」と「V」の欧文字の外観、「エルブイ」の称呼及び「請求人又はルイ・ヴィトン」の観念が生じる。
ウ 両者の類似性について
以上のとおり、本件商標と引用商標からは、いずれも「L」と「V」の欧文字の外観、「エルブイ」の称呼及び「請求人又はルイ・ヴィトン」の観念が生じるため、両者は類似するというほかない。
(3)指定商品の同一性又は類似性
本件商標の指定商品は、いずれも、皮革製品、カバン類、被服、履物等、引用商標が使用されている商品と同一又は類似の関係にある。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の著名性
引用商標が、請求人のブランド「ルイ・ヴィトン」の創設者の氏名のイニシャルを組み合わせたロゴであり、本件商標の登録出願前から現在に至るまで、請求人のブランド「ルイ・ヴィトン」の商品であることを表示するものとして、需要者・取引者の間に広く認識されている商標であること、その著名性の高さより引用商標の出所表示力が極めて強いものであることは、上記で述べたとおりである。
(2)本件商標の指定商品又は役務と請求人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
本件商標と引用商標の指定商品の類似性は、上記2(3)で述べたとおりである。
商標法第4条第1項第15号における関連性は、商品又は役務の類似性よりも緩やかに解釈されるものであり、本件商標の指定商品の一部に引用商標の指定商品に類似しないものが含まれているとしても、皮製品や被服の用途は共通しており、両者には密接な関連性があるといえる。
(3)本件商標と引用商標の類似性及び混同のおそれ
本件商標と引用商標とが、その称呼、外観及び観念において、同一又は類似する商標であることは、上記のとおりであり、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品は同一又は類似しており、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品は、その需要者・取引者を共通にする。
なお、異議の決定(異議2023-900138号)は、本件商標と引用商標が端的に非類似であり別異の商標と判断するのが相当であるから、混同のおそれがないと述べるが、この点は事実に相違する。
すなわち、本件商標と引用商標は明確に類似することは上記のとおりであるが、仮に、両者が類似であるとはいえないとしても、本件商標のうち本件図形と引用商標とを比較すれば、本件商標のうち本件図形の部分、特に(ア)「V」の文字に相当する2本の線分とこれと交差する「L」の文字に相当する2本の線分は、引用商標と各線分の頂点の位置関係、線分の太さ及び線分の角度がほぼ全て一致している。
引用商標の著名性を考慮に入れれば、本件商標は引用商標の存在を認識しながらあえてそれに類似するように創作されたことは明白であり、引用商標の出所表示機能にフリーライドしていることは疑いようもない。結果として、商標法第4条第1項第11号又は同項第19号にいう商標の類似性が認められないとしてもなお、混同のおそれは否定されるものではない。
したがって、本件商標が、その指定商品において使用された場合、需要者及び取引者において、請求人の商品若しくは請求人と経済的あるいは組織的に関連を有する者の業務に係る商品と誤認し、その出所について混同を生じるおそれがあることは明白である(最高裁平成12年7月11日判決・判例時報1721号141頁参照)。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)引用商標の著名性
引用商標が、本件商標の登録出願前から現在に至るまで、請求人のブランド「ルイ・ヴィトン」の商品を表示するものとして需要者・取引者の間に広く認識されている商標であることは、上記で述べたとおりである。
(2)本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用商標が、その称呼、外観及び観念において、同一又は類似する商標であることは、上記で述べたとおりであるから、本件商標に接した需要者・取引者が、請求人のブランド「ルイ・ヴィトン」を想起することは明白である。
(3)不正の目的
上述のとおり、引用商標の周知著名性の高さに鑑みれば、被請求人においても引用商標が世界的・全国的に周知されていたことを認識していたことは明らかである。本件商標のうち本件図形の部分、特に(ア)「V」の文字に相当する2本の線分とこれと交差する「L」の文字に相当する2本の線分は、引用商標と各線分の頂点の位置関係、線分の太さ及び線分の角度がほぼ全て一致しており、その類似の傾向は極めて高い。被請求人は、単に引用商標を参考にしたにとどまらず、周知著名な引用商標を模写したということさえ可能である。
被請求人は、このように本件商標を、請求人の引用商標や特徴的なデザインに酷似させることにより、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等にフリーライドすることを企図していることは明白である。
確かに、現時点で被請求人が本件商標を使用している態様を確認することはできないが、被請求人が権利者である登録商標の使用例はウェブサイト等で確認できる(甲18)ところ、商標のウェブサイトでの使用であればその態様は極めて自由であり、不正の目的をもって使用される可能性は十分に高いと考えられる。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、と答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
1 本件商標について
本件商標は、アドビ インコーポレイテッドが提供している「Adobe Fonts」から、被請求人によって選定されたフォントで構成されたものである。被請求人は、「VINTAGES」の頭文字である「V」を選定し、選定した「V」の高さ、幅、端部の丸みの程度などの図形的要素を加工した。次に、被請求人の苗字である「MARUYAMA」の頭文字である「M」を選定し、「M」の高さ、幅、端部の丸みの程度などの図形的要素を加工し、さらに、「M」を分割する加工を施して「V」と重ね合わせ、独特な図形を作成した。
本件商標は、「V」のアルファベットを有する図形(以下、「本件図形」と呼称する)が大きく現わされ、その下方に「*MARU des VINTAGES*」の文字、及び「KY●JI MARUYAMA」の文字を上下2段に表されてなる(以下、これらをまとめて「本件文字」と呼称する)。また、本件図形は、本件文字に比べ、ひときわ目立つように大きく表されているから、本件商標を見る者に強い印象を与えるとともに、注意を引くものである。
本件図形は、抽象的であって、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないため、特定の称呼及び観念は生じない。
さらに、本件文字は、一般の辞書等に載録された特定の意味合いを有する語とは認められず、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められない。本件商標は、その構成中の本件図形と本件文字とが、外観上不可分に結合しておらず、本件図形は、ひときわ目立つように大きく表されており、これを見る者に強い印象を与えるとともに、その注意を引くものである。そして、本件図形と本件文字は、いずれも特定の観念は生じないものであり、これらが構成全体として、何らかの特定の意味合いを生じるものではない。
本件商標は、その構成中の本件図形を要部と認定され、特定の称呼及び観念が生じない。
2 引用商標について
引用商標は、「L」と「V」のモノグラムからなる商標であり、その構成全体より、「エルブイ」の称呼を生じ得る。そして、ブランドとしての「LOUIS VUITTON」及び「ルイ・ヴィトン」の観念が生じる。
3 本件商標の構成中の本件図形と引用商標の類似性について
本件図形は、その構成中に「V」の欧文字を有することは確認し得るとしても、分割された「M」の文字を含め、「V」以外の構成部分を含めた全体としては、何を表したのか特定できない程度に加工されたものである。
したがって、「L」と「V」のモノグラムからなる引用商標と本件図形とは、その全体の構成が異なり、その印象において相違し、外観において相紛れることはない。
また、本件図形より、特定の称呼は生じないのに対し、引用商標は、「エルブイ」の称呼を生じるから、本件図形と引用商標とは、称呼において相紛れることはない。
さらに、本件図形は、特定の観念が生じないのに対し、引用商標は、ブランドとしての「LOUIS VUITTON」及び「ルイ・ヴィトン」の観念が生じるから、観念において相紛れることはない。
以上により、本件図形と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相違することから、これらを総合すると、取引者及び需要者において、相紛れるおそれがない非類似の商標であり、別異の商標というべきである。
4 本件商標と引用商標の類似性について
本件商標の構成全体と引用商標の類否についても、両者は外観において、その全体の構成が異なり、その印象において相違するため、外観において相紛れるおそれはない。また、本件商標の構成中の本件文字「*MARU des VINTAGES*」及び「KY●JI MARUYAMA」より生じる「マルデヴィンテージキョージマルヤマ」と引用商標より生じる「エルブイ」は、その音数が明らかに相違することから、これらは、称呼において相紛れることはない。さらに、本件商標は、特定の観念が生じないのに対し、引用商標は、ブランドとしての「LOUIS VUITTON」及び「ルイ・ヴィトン」の観念が生じるものであるから、これらは観念において相紛れない。
したがって、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれがない非類似の商標というべきであり、別異の商標であるといえる。
5 商標法第4条第1項第11号について
上述したとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品が、引用商標に係る指定商品に含まれているとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、請求人の商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されており、本件商標の指定商品と請求人の商品が、生産者や需要者が共通する等の密接な関連性を有するものであるとしても、上述したとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であり、別異の商標であるため、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想、想起し、請求人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
7 商標法第4条第1項第19号について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されているが、上述したとおり、本件商標は、引用商標と非類似であるため、本号で規定されている「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標」には該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求することについて利害関係を有することについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理する。
1 引用商標の周知著名性について
請求人の主張及び提出証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人は、創設者の氏名である「ルイ・ヴィトン」「Louis Vuitton」の名称で150年以上の歴史を持つ世界的に知られるファッション・ブランドを擁するフランス法人であり、創設者のルイ・ヴィトンは、世界初の旅行かばん専門店を1854年パリに創業し、引用商標は、創設者の氏名のイニシャルである「L」の文字と「V」の文字を重ねて組み合わせたロゴであり、請求人の商品を表示するものとして、請求人の製造、販売に係る商品「かばん類、袋物、被服、靴、アクセサリー及びその他関連商品」(以下「請求人商品」という。)は、全世界において幅広く販売されており、請求人商品に引用商標を使用している(請求人の主張、甲16)。
(2)我が国においても、請求人の店舗は、昭和53年、銀座に第1号となる店舗を出店して以来、昭和56年にはLVJグループを設立し販売活動を拡大し、国内各地の百貨店や空港など現在60店舗が設置されている(請求人の主張、甲1、甲16)。
(3)請求人は、引用商標及び引用商標を含む商標についての登録商標を有しており(甲3~甲13)、また、無効審判において、引用商標と同一のロゴを含む商標が需要者の間に広く認識されている旨認定された(甲14)。
(4)税関ホームページによれば、引用商標及び引用商標を含む商標を付した「かばん・財布類、かばん金具、キーホルダー、南京錠、ファスナー・ボタン、スマートフォン・携帯電話用ケース及びアクセサリー、タブレット端末用ケース、洋服類、下着、ティーシャツ、マフラー・ネクタイ・靴下・手袋類、帽子、ベルト、靴類、サンダル類、眼鏡類、時計、身飾品、カフスボタン、ヘアアクセサリー、ネイルシール・付け爪、まくら、寝具及びベッドリネン、タオル・ハンカチ、レザークロス・ビニルクロス、喫煙用具、文房具・シール類、ペット用衣類・首輪類」について、関税法に基づき、有効期間を平成28年7月22日から令和6年11月19日までとして、輸入差止申立てが受理されている(甲15)。
(5)(4)に先立つ平成18年8月9日には、引用商標は、不正競争防止法第2条第1項第2号に定める著名な商品等表示であるとして経済産業大臣から関税法第69条の10(現:第69条の13)に関する意見を受けている(甲16)。
(6)以上(1)ないし(5)の事実を踏まえると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るブランド又は請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められ、その周知著名性の程度は高いものといえる。
2 本件商標と引用商標の類似性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、左側に「V」の欧文字と「V」の左側と交差する線分(以下「線分1」という。)、中央右側の右上から左下方向の斜めの線分(以下「線分2」という。)及び右端下部にある左上から右下方向への斜めの線分(以下「線分3」という。)(以下、線分1ないし線分3からなる部分を「本件図形」という。)を配し、その下に「*MARU des VINTAGES*」の文字及び「KY●JI MARUYAMA」の文字を上下2段に書してなる(以下、これら文字をまとめて「本件各文字」という。)ところ、本件図形と本件各文字とは、重なることなく配されており、それぞれが、視覚上、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえないものである。
また、本件商標の構成中の本件図形は、本件各文字に比べ、ひときわ目立つように大きく表されているから、本件商標を見る者に強い印象を与えるとともに、その注意を引くものであると認めるのが相当である。
さらに、本件商標の構成中の本件各文字は、その全体で一般の辞書等に載録された特定の意味合いを有する語とは認められず、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないものである。
そうすると、本件商標は、その構成中の本件図形と本件各文字とが、外観上不可分に結合しているとはいえず、本件図形は、ひときわ目立つように大きく表されており、これを見る者に強い印象を与えるとともに、その注意を引くものであり、本件図形及び本件各文字が構成全体として、何らかの特定の意味合いを生じるものではないことから、本件商標はその構成中の本件各文字を捨象し、本件図形のみを本件商標の要部として抽出し、この部分のみを引用商標と比較して商標の類似性の検討をすることも許されるというべきである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、「L」と「V」のモノグラムからなる商標であるから、その構成全体より、「エルブイ」の称呼を生じ得るものであり、上記1のとおり請求人に係るブランド又は請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められるから、ブランドとしての「LOUIS VUITTON」及び「ルイ・ヴィトン」の観念が生じるものである。
(3)本件図形と引用商標の類似性について
本件図形と引用商標との比較においては、その全体の構成は異なるものである。
しかしながら、本件図形の構成に占める割合が大きく顕著に表されている線分1と引用商標とは、線分1の構成中の「V」の左側と交差する線分と引用商標の構成中の「L」の横の長さが異なるものの、両者の頂点の位置関係、線分の太さ及び線分の角度がほぼ一致している(甲17)から、本件図形は、引用商標の特徴と共通にするものといえる。そして、本件図形の線分1が本件図形に占める割合は大きく顕著に表されていることから、線分2及び3に比べて、看者の注意をひく部分といえ、上記1のとおり引用商標が我が国の需要者の間に広く認識されているものであることも相まって、本件図形と引用商標との上記共通点によって特徴付けられる印象は、両者の相違点を考慮してもなおそれらの視覚的印象において近似するものといえる。
以上からすると、本件図形と引用商標とは、その全体の構成は異なるものの、本件図形の構成中の線分1と引用商標とは、外観において限りなく近似した印象を与えるものといえる。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。けだし、同号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の稀釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨からすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである。
そして、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決(平成10年(行ヒ)第85号))
(1)引用商標の周知著名性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るブランド又は請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されているものであって、その周知著名性の程度は高いものである。
(2)本件図形と引用商標の類似性の程度について
上記2のとおり、本件商標と引用商標は全体の構成は異なるものの、本件商標において顕著に表され看者の注意をひく部分といえる本件図形の構成中の線分1と引用商標とは、外観において極めて近似した印象を与えるものである。
(3)本件商標の指定商品と請求人商品の関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、第18類「かばん類,袋物」及び第25類「被服,履物」を含む商品であり、また、被請求人はウェブサイトにおいて商品「被服」を掲載していることや、被請求人に係るブランドでレザーアイテムと靴を取り扱っていることがうかがえるところ(甲18)、 請求人商品は「かばん類、袋物、被服、靴、アクセサリー及びその他関連商品」であり、本件商標の指定商品及び被請求人が取り扱う商品「被服」等と請求人商品とは、いずれもファッション関連の商品であるから、両者の関連性は高く、また、それぞれの需要者の範囲を共通にするものである。また、上記商品の需要者は一般消費者であるといえる。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(3)によれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るブランド又は請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められ、その周知著名性の程度が高いものであり、また、本件商標の指定商品及び被請求人の取扱商品と請求人商品の関連性は高く、需要者を共通にするものであり、本件商標の指定商品の需要者である一般消費者は商品の購入に際し、メーカー名などについて常に注意深く確認するとは限らないものと考えられる。
そして、本件商標と引用商標は全体の構成は異なるものの、本件商標から分離して類似性を比較することのできる本件図形の構成中の線分1の部分は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、周知著名性の程度が極めて高い引用商標と外観において極めて近似した印象を与えるものであり、引用商標の構成を基に創作されたとも推認し得るものである。
そうすると、上記3に示した商標法第4条第1項第15号の目的、趣旨からすれば、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであり、本件商標は、引用商標と類似しないとしても、高い周知性を有する引用商標と極めて近似する構成を含むものであり、その指定商品に使用をされた場合、これに接する取引者及び需要者が、引用商標を想起、連想し、当該商品が請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
(5)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は、同法第4条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
なお、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当する旨も主張しているが、当審は、上記のとおり、本件商標が同項第15号に該当するものと判断する。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-890021