商標無効審判
2024-890002
ヒタシ
- 審判番号
- 2024-890002
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2022-038869
- 登録番号
- 6621366
- 請求日
- 2024年01月16日
- 審決日
- 2024年12月18日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 日立製作所
- 【請求人代理人】弁理士法人第一国際特許事務所
- 【被請求人】王玉英
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 馬場 秀敏
- 分類
- T111 .271-Z (W21)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6621366号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6621366号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6621366号商標(以下「本件商標」という。)は、「hitasi」の文字を標準文字で表してなり、令和4年4月5日に登録出願、第21類「未加工又は半加工のガラス(建築用のものを除く。),かいばおけ,水飼い用おけ,電気式歯ブラシ,つめ用ブラシ,くし用容器,化粧用ブラシ,園芸用手袋,ガラス製アンプル型瓶,デカンター,魔法瓶,オーブンミトン,食卓マット(紙製又は織物製のものを除く。),飲物用ストロー,小鳥用水盤,観賞魚用水槽,台所用具及び清掃用具」を指定商品として、同年9月16日に登録査定され、同月29日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が、本件商標に係る無効の理由に該当するとして引用する登録商標及び標章は、以下の1及び2のとおりである。
1 請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(16)のとおりであり、その商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第645376号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:昭和37年3月3日
設定登録日:昭和39年6月22日
書換登録日:平成17年1月12日
指定商品:第6類、第9類、第11類、第19類及び第21類に属する商標登録原簿に記載の商品
(2)登録第723441号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:昭和35年7月19日
設定登録日:昭和41年10月20日
書換登録日:平成19年1月24日
指定商品:第5類、第9類、第10類、第16類、第17類、第20類、第21類、第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
(3)登録第745887号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:昭和35年7月19日
設定登録日:昭和42年6月26日
書換登録日:平成19年8月29日
指定商品:第3類、第8類、第10類、第14類、第18類、第21類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品
(4)登録第984592号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:昭和43年7月24日
設定登録日:昭和47年10月11日
書換登録日:平成15年8月13日
指定商品:第4類ないし第6類、第8類、第10類、第11類、第14類、第16類、第18類ないし第21類、第24類及び第26類ないし第28類に属する商標登録原簿に記載の商品
(5)登録第1375212号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:昭和35年7月19日
設定登録日:昭和54年3月23日
書換登録日:平成21年2月12日
指定商品:第6類、第16類ないし第18類、第20類ないし第22類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品
(6)登録第1392809号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:昭和49年7月31日
設定登録日:昭和54年9月28日
書換登録日:平成21年9月2日
指定商品:第6類、第16類ないし第18類、第20類ないし第22類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品
(7)登録第1492488号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:昭和43年3月27日
設定登録日:昭和56年12月25日
書換登録日:平成14年11月13日
指定商品:第7類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載の商品
(8)登録第1698222号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:昭和52年3月25日
設定登録日:昭和59年6月21日
書換登録日:平成18年6月28日
指定商品:第6類ないし第9類、第11類、第12類、第15類ないし第17類、第19類ないし第21類、第26類及び第28類に属する商標登録原簿に記載の商品
(9)登録第1720572号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:昭和56年6月3日
設定登録日:昭和59年10月31日
書換登録日:平成17年5月25日
指定商品:第3類、第6類、第8類、第11類、第14類、第16類ないし第18類、第20類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品
(10)登録第4670241号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:平成14年1月9日
設定登録日:平成15年5月9日
指定商品及び指定役務:第6類ないし第11類、第15類、第16類、第18類、第20類ないし第22類、第28類、第30類、第35類ないし第38類及び第40類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
(11)登録第5123441号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:平成19年4月1日
設定登録日:平成20年3月28日
指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
(12)登録第5123447号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:平成19年4月1日
設定登録日:平成20年3月28日
指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
(13)登録第5123448号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:平成19年4月1日
設定登録日:平成20年3月28日
指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
(14)登録第5123450号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:平成19年4月1日
設定登録日:平成20年3月28日
指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
(15)登録第5123458号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:平成19年4月1日
設定登録日:平成20年3月28日
指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
(16)登録第5227755号商標
商標の構成:HITACHI
登録出願日:平成19年4月1日
設定登録日:平成21年5月1日
指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
以下、上記(1)ないし(16)の登録商標をまとめて「引用商標」という。
2 請求人が本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、請求人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、その業務に係る商品及び役務について使用し、需要者の間に広く知られていると主張する「HITACHI」の欧文字を横書きしてなるもの(以下「使用商標」という。)である。
第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、「hitasi」の文字を標準文字で表してなり、同じ書体、同じ大きさをもって、全体として一連にまとまりよく一体的に表されているものであって、一般の辞書等に掲載がないことから、一種の造語というべきものである(甲1)から、全体として一体的に看取されるものであり、「ヒタシ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、いずれも「HITACHI」の文字を全体として一連にまとまりよく一体的に表されているものであって、後述のとおり、我が国においては、請求人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、著名なものである(甲2)から、「ヒタチ」の称呼を生じ、「請求人及びそのグループ会社に係るブランド」の観念を生じるといえる。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観
本件商標と引用商標とは、語頭の「hita(HITA)」と語尾の「i(I)」の5文字のつづりを共通にし、5文字目において「s」と「CH」の文字の差異を有する点、及び本件商標が欧文字の小文字で表されているのに対し、引用商標は欧文字の大文字で表されている点において相違する。
しかしながら、本件商標及び引用商標の外観上の差は、両者がいずれも標準文字で表され、語頭の「hita(HITA)」と語尾の「i(I)」の5文字のつづりを共通にしているのであるから、大きく異なるとはいえない。
そして、欧文字からなる商標の使用においては、その構成文字について、大文字と小文字とを相互に変換して表記することが一般に行われていることからすれば、欧文字が大文字であるか小文字であるかの違いは、それほど強く印象付けられるものではないというべきである。
しかも、商標の外観上の類否を判断するに当たっては、時と場所を異にして離隔的に観察する方法によるべきである。
以上よりすると、両商標において使用されている文字及びそのつづりが近似していることからすれば、両商標の外観は、大文字表記と小文字表記という違いがあることを考慮しても、互いに極めて相紛らわしいものであるというべきである。
イ 称呼
本件商標から生じる「ヒタシ」の称呼と引用商標から生じる「ヒタチ」の称呼とは、両称呼が共に3音で構成され、「シ」と「チ」の差異音を有するものの、当該差異音は取引者、需要者の印象に残り難い語尾に位置するものであり、かつ、母音「i」を共通にするから、それぞれを一連に称呼した場合には、全体の語調、語感が近似したものとなり、互いに聴き誤るおそれがあるというべきである。
ウ 観念
本件商標は、特定の観念が生じないことから、引用商標とは比較することができないものである。
エ 指定商品及び指定役務について
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務とは、類似する。
(4)その他
請求人は、引用商標のほかにも、本件商標の指定商品と指定商品及び指定役務が類似する「HITACHI」の文字と他の要素を組み合わせた商標、「日立」、「ヒタチ」又は「ひたち」の文字を配した等の47件の登録商標を有している。
(5)小括
本件商標と引用商標とは、観念は比較することができず、外観が互いに極めて相紛らわしいものであって、称呼も近似することを踏まえれば、両商標は極めて近似する類似の商標というべきあって、両商標の指定商品及び指定役務も同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人について
請求人は、1910年に創業した総合電機メーカーであり、創業当初から発電機などの国産化を目指して電機メーカーとして発展してきた。1924年には国産初の大型電気機関車を完成、1932年には電気冷蔵庫1号を完成させるなどした。また、1950年代からコンピューターの開発に着手し、1960年代には他社に先駆けてコンピューター事業を本格化し、1965年には国産コンピューター「HITAC5020システム」、1975年には大型コンピューター「HITAC Mシリーズ」を完成させるなどした。加えて、1965年には希土類蛍光体を使用したカラーブラウン管を完成、1969年にはオールトランジスタカラーテレビを開発量産化、1987年にはカラー液晶投射式大型ディスプレイ装置を完成、1990年には高精細TFTカラー液晶ディスプレイを開発した。
結果、請求人は、我が国を代表する電機メーカーとなった(甲3)。
請求人及びそのグループ会社の2022年度の売上収益は10兆8811億円、従業員数は約32万人に及ぶ(甲4の1)。
請求人の2022年度の売上高は、我が国の上場会社で第11位、10兆8811億円であり、業種が電気機器としては第2位である(甲5)。
したがって、請求人及びそのグループ会社(以下「請求人等」という。)は、我が国有数の企業であることは明らかである。
現在の請求人等の業務範囲は、非常に広範囲に及んでいる。
請求人等は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」の3つを成長の柱として、グローバルで社会イノベーション事業のさらなる進化と成長をめざしている。主な製品・サービスは、「デジタルシステム&サービス」では、フロントビジネスとして金融機関、官公庁・自治体、社会インフラなどミッションクリティカル領域のIT/デジタルシステム、ITサービスとしてDXソリューション・サービス、サービス&プラットフォームとしてデザイン、デジタルエンジニアリング、データアナリティクス、クラウドサービス、ITプロダクツ、「グリーンエナジー&モビリティ」では、エネルギーソリューション(パワーグリッド、原子力、再生可能エネルギー、分散型電源)、鉄道システム(車両、信号・制御、サービス・保守、スマートモビリティ、ターンキー)、「コネクティブインダストリーズ」では、アーバンGr.として昇降機・ビルサービス(エレベーター・エスカレーターなど)、家電・空調システム、アドバンストテクノロジーGr.としてヘルスケア(生化学免疫分析装置、細胞自動培養装置、粒子線治療システムなど)、計測・分析(半導体計測評価装置、電子顕微鏡など)、インダストリーGr.として産業・流通ソリューション、ロボティクスSl、上下水道・ユーティリティソリューション、産業用機器を提供している(甲4の2)。
(2)使用商標の著名性
ア 請求人等は、我が国において、遅くとも1914年より使用商標を様々な商品及び役務について使用を開始しており、以降、現在に至るまで、請求人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、その業務に係る商品及び役務について継続して使用している(甲6~甲8)。
イ 請求人等の業務に係る商品は、2020年において、業務用エアコン(業務用冷暖房装置)の分野で業界シェアが第3位、家庭用エアコンのランキングでは第20位までに3つの機器がランクイン(2位、12位、18位)、及び冷蔵庫・洗濯機ほか白物家電の売れ筋ランキングでは3位、4位、10位、14位、17位にランクインしている(甲9~甲11)。
また、家電業界売上ランキング(2021~2022年)において5位、売上高は3,966億円にのぼる(甲12)。
ウ 請求人等は、以下のとおり、請求人等に係る商品及び役務の宣伝広告をしている。
(ア)テレビ広告
請求人等は、広告媒体としてテレビを積極的に活用しており、例えば、TBS系列で毎週土曜日21:00から21:54に放送されている「日立 世界・ふしぎ発見」は、請求人等がメインスポンサーとなり、1986年から30年以上にわたって放送されている長寿番組であり、全国31局で放映されている(甲13、甲14)。
請求人等は、上記テレビ番組を含め多くのテレビCMを放送しており、その冒頭に使用商標を表示している(甲15の1~4)。
また、請求人等は、近年、インターネットを用いた広告等にも力を入れており、特にYouTubeでは専用チャンネルを設け、全動画の再生件数は、数億回に及ぶ(甲15の5)。
(イ)新聞による広告
請求人等は、近年においては広告をデジタルシフトしているため、数は少なくなっているものの、例えば、日本経済新聞に2015年から2018年にかけて総計25回の広告を掲載している(甲16の1)。
(ウ)屋外広告
請求人等は、1957年より現在まで大阪・通天閣に「HITACHI」の文字からなるネオンサインを表示している(甲16の2)。
(エ)商品カタログ
請求人等が製作するカタログ等には、必ずその表紙に「HITACHI」の文字を表示している(甲8)。
(オ)プロサッカークラブのメインスポンサー
請求人等は、プロサッカークラブ「柏レイソル」のメインスポンサーである。柏レイソルは、請求人の本社サッカー部が前身であり、1993年に「日立FC柏レイソル」とクラブ名を変更し、その後1996年にチーム名を「柏レイソル」に変更した。歴代のユニフォームには、当初から現在に至るまで、その胸部分に使用商標が表示されている。(甲17~甲19)
エ 請求人に係る防護標章登録
請求人は、本件商標の指定商品に類似する商品について、「HITACHI」の文字からなる登録第433710号商標及び登録第1492488号商標に係る防護標章登録を有している。
オ 以上のとおり、使用商標は、請求人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、非常に幅広い商品及び役務について使用されており、我が国国内において著名であることは明らかである。
(3)混同を生ずるおそれの有無
ア 本件商標と使用商標の類否及び指定商品に係る取引の実情
(ア)本件商標と使用商標の類否
使用商標は、引用商標と同じく欧文字の大文字で「HITACHI」と書してなるものである。
そうすると、本件商標と使用商標とは、上記1と同様に、観念上は比較することができないものであって、外観上が互いに極めて相紛らわしいものであって、称呼も近似することを踏まえれば、両商標の類似性は極めて高いというべきである。
(イ)指定商品に係る取引の実情
本件商標の指定商品中「電気式歯ブラシ」並びに本件商標の指定商品中「魔法瓶」「台所用具」(例:鍋、湯沸かし等)及び「清掃用具」と用途を共通にする電気式ものには、商標がいわゆるワンポイントマークとして付されているものも多くある(甲20の1~16)。
加えて、本件商標の指定商品中「魔法瓶」及び「台所用具及び清掃用具」の非電気式のものでも、いわゆるワンポイントマークとして付されているものも多くある(甲20の17~28)。
このようなワンポイントマークは、比較的小さいものであって、そのような態様で付された商標の構成は視認しにくい場合があるといえる。
そうすると、上記(ア)のとおり、両商標の類似性が極めて高いことを踏まえると、ワンポイントマークとして使用された場合などに、本件商標は、使用商標とより類似して認識されるおそれがあるというべきである。
イ 使用商標の周知著名性及び独創性の程度
使用商標は、請求人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、我が国国内において著名であることは明らかである。
欧文字で表した「HITACHI」の文字を遅くとも1914年より長年にわたり請求人等が一貫して使用してきたことを踏まえれば、使用商標は、相当程度独創性が高いというべきである。
ウ 本件商標の指定商品と請求人等の業務に係る商品等との関連性の程度
本件商標は、その指定商品を第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とするものである。
一方、請求人等は、総合電機メーカーとしての技術を基礎として幅広い事業を行い、現在、使用商標を使用し、本件商標の指定商品を含め、幅広い分野の事業を行っている。
特に、本件商標の指定商品中「電気式歯ブラシ」は、化粧用具の一種であるとともに衛生用の家庭用電熱用品であり、請求人等の主力商品の一つである電気製品である(甲22)。
請求人等は、過去において商品「電気式歯ブラシ」を販売しており、現在においても、衛生用の家庭用電熱用品(ビューティー・ヘルスケア商品)として、「ヘアドライヤー」「電気式髭剃り(シェーバー)」を販売している。
また、本件商標の指定商品中「つめ用ブラシ,くし用容器,化粧用ブラシ」は、主に化粧の際に使用される非電気式の道具であって、家庭内の鏡台又は洗面台等において電気式の「ヘアドライヤー」と共に使用される場合が多い商品であることから、その用途を共通にする(甲21の1~4、甲22)。
加えて、本件商標の指定商品中「魔法瓶」、「台所用具」(例:鍋、湯沸かし等)及び「清掃用具」には電気式ものが含まれないとしても、一般的にその用途を共通にする電気式の商品が販売されていることは周知の事実であり、請求人等も多くのそれらの電気式の商品(電気ケトル、電気炊飯器、クッキングヒーター、オーブントースター、電子レンジ、ブレンダー、クリーナー(ロボット式のものを含む。))を販売している。
さらに、請求人等は、本件商標の指定商品中の「台所用具」に属する商品「釜」について、クッキングヒーター用の商品として鍋、フライパン等を販売している(甲21の5~13)。
以上よりすると、本件商標の指定商品と請求人等が販売する商品は、その用途を共通にすること多いことから、密接な関連性が高い商品であることは明らかである。
エ 商品の取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品は、そのほとんどが家庭内で使用されるものであるから、一般消費者を対象としている商品である。
一方、請求人等の業務に係る商品は、家電品等の一般消費者を対象としている商品を多く含むから、本件商標の指定商品と請求人等の業務に係る商品とは、その取引者、需要者を共通にする。
そして、本件商標の指定商品はその多くについて購入する者が特別の知識を有しない一般消費者であることを考慮すると、需要者全体の注意力が高いと直ちに認めることはできないのであって、本件商標と使用商標とを直接対比した場合に外観及び称呼上の印象を異にすると考えられる差異についても、需要者の注意が向けられないままに商品の選択、購入がされる場合が少なくないものと考えられる。
(4)小括
以上のとおり、使用商標「HITACHI」は、請求人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、本件商標の指定商品を含め、幅広い商品及び役務について使用されており、我が国国内において著名なものである。
そして、本件商標は、使用商標と極めて類似性の高い商標であり、ワンポイントマークとして使用された場合などにより類似して認識されるおそれがあること、使用商標が相当程度独創性の高い商標であること、本件商標の指定商品は請求人等が使用する商品と用途を共通する商品を含み、かつ、関連性の高い商品であること、また、その需要者が共に一般消費者であること、などを併せ考慮すると、本件商標をその指定商品について使用するときは、その取引者、需要者に使用商標を想起、連想させ、当該商品が、請求人等との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう混同を生じるおそれがある商標に該当するというべきである。
(5)その他
ア 知財高裁判決について
請求人は、第三者に係る第11類を指定商品とする登録第6280832号商標「hihachi」について、異議申立(異議2020-900280)を行い、当該登録商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとして取り消された。
当該異議事件は知財高裁でも争われたが、知財高裁は、「本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,・・・検討した事情を総合的に考慮すると,注意力がそれほど高いとはいえない一般消費者が,被告補助参加人及びそのグループ会社の業務に係る商品及び役務を表示するものとして極めて高い周知著名性を有する引用商標に相当程度類似し,取り扱う商品も密接に関連する本件商標が付された商品に接した場合には,当該商品が被告補助参加人及びそのグループ会社の業務に係る商品であると混同するおそれがあるというべきである。」と判示している(知財高裁 令和4年1月27日判決 令和3年(行ケ)第10092号、甲23)。
イ 商標法第4条第1項第15号の規定及び防護標章の登録制度の存在意義について
請求人は、上記(1)及び(2)のとおり、我が国有数の企業である。そして、使用商標は、請求人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として使用され、著名なるものである。
本件商標は、上記(4)のとおり、商品の出所について混同を生じさせる登録を無効にすべきものであって、本件商標の登録が維持されるとすれば、我が国有数の企業のハウスマーク及び冠ブランド名と類似する商標を関連性の高い商品に認めることとなり、商標法第4条第1項第15号を空文化し、防護標章登録制度の存在意義を失わせるものと考える。
第4 被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。
第5 当審の判断
1 本件審判の請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人は何ら争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)使用商標の周知著名性の程度
ア 請求人提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、1910年に創業した総合電機メーカーであり、創業以来、電動機、電気機関車、家庭用電気機器、通信機器、電子計算機などの多種の商品を取り扱い(甲3、甲6、甲7)、現在では、その業務範囲は、請求人のグループ会社を含め、IT/デジタルシステム、エネルギーソリューション、鉄道システムの提供など広範囲に及んでいる(甲4)。
(イ)請求人等の2022年度の売上収益は10兆8,811億円であり、同売上高は我が国の上場会社で第11位、電気機器の業種では第2位である(甲4の1、甲5)。
また、日本国内における請求人等の2022年度の売上収益は3兆2,286億円である(甲4の1)。
(ウ)請求人等の業務に係る商品は、2020年において、「おすすめBEST」と称するウェブサイトで業務用エアコンが業界シェア第3位(甲9)、「価格.com」と称するウェブサイトの「エアコン・クーラー 人気売れ筋ランキング」で2位、12位、18位(甲10)、「Amazon.co.jp 売れ筋ランキング」の「冷蔵庫・洗濯機ほか白物家電の売れ筋ランキング」で3位、4位、10位、14位、17位(甲11)にそれぞれ位置しており、「業界動向 SEARCH.COM」と称するウェブサイトの「家電業界 売上高ランキング(2021~2022年)」で請求人が5位に位置し、その売上高は3,966億円(甲12)とされている。
(エ)請求人等は、我が国において、遅くとも1914年から使用商標の使用を開始し、現在に至るまで、請求人等の業務に係る様々な商品(家庭用電気機器、通信機器、電子計算機など)について継続して使用している(甲6~甲12)。
(オ)請求人等は、使用商標を、1986年から2024年3月まで継続して多数の局で放映されたテレビ番組「日立 世界・ふしぎ発見」におけるCMやその他のCM及び1995年からプロサッカーリーグに昇格したサッカークラブ「柏レイソル」のユニフォームの胸部分に、使用商標を表示するなど、自社の広告宣伝において、使用商標を表示している(甲13~甲15、甲17~甲19)。
また、使用商標は、遅くとも2018年以降、請求人等の商品カタログの表紙に表示され(甲8、甲21)、請求人のウェブサイトにも表示されている(甲8)。
イ 判断
上記アのとおり、請求人等の2022年度の売上収益は、10兆8,811億円であり、売上高は我が国の上場会社において第11位、電気機器の会社において第2位、日本国内での売上収益は3兆2,286億円であり、請求人等は1914年から現在まで継続して請求人等の業務に係る商品(家庭用電気機器、通信機器、電子計算機など)について使用商標を使用し、また、請求人等は1986年頃からテレビCM等で使用商標を表示した請求人等又は請求人等の取扱いに係る商品の宣伝広告をし、さらに、使用商標は請求人等の商品カタログの表紙や請求人のウェブサイトに表示されていることなどからすれば、使用商標は、本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、請求人等の業務に係る商品を表示するものとして及び請求人等のハウスマークとして需要者の間に広く認識されているものと認めるのが相当である。
(2)本件商標と使用商標との類似性の程度
ア 本件商標
本件商標は、上記第1のとおり「hitasi」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、その構成文字に相応して「ヒタシ」の称呼を生じるものである。また、当該「hitasi」の文字は、辞書等に特定の意味を有する語として載録されている等の事実は認められない。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「ヒタシ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 使用商標
使用商標は、上記第2の2のとおり、「HITACHI」の欧文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ヒタチ」の称呼を生じるものである。
そして、「HITACHI」の欧文字は、本件商標の登録出願の日及び登録査定時において請求人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるから、使用商標からは、「請求人等のブランド」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
したがって、使用商標は、その構成文字に相応して、「ヒタチ」の称呼を生じ、「請求人等のブランド」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と使用商標との類似性
(ア)外観について
本件商標及び使用商標は、6文字又は7文字のアルファベットからなるものであるところ、末尾を除く5文字目以降で「s」か「CH」かの異なる点を除いては、同じアルファベットが同じ順序でつづられており、使用されている文字及びそのつづりが近似しているものといえる。
また、本件商標及び使用商標は、いずれも特徴のない書体で表されたアルファベットが等間隔に配置されたものであり、まとまりよく構成されている。
以上を考慮すると、本件商標及び使用商標の外観は、時と場所を異にして接した場合、相紛らわしいものであるといえる。
(イ)称呼について
本件商標からは「ヒタシ」との称呼が生じ、使用商標からは「ヒタチ」との称呼が生じるところ、これらはいずれも3音からなるものである上、比較的印象に残りやすいといえる語頭及び2音目の「ヒタ」の音が共通する。そして、異なる部分である3音目の「シ」の音及び「チ」の音は、いずれも母音を「i」とする点で共通する上、通常は聴取し難い語尾に位置する音であることからすれば、本件商標及び使用商標の称呼を明確に区別することが困難な場合もあるというべきである。
以上を考慮すると、本件商標及び使用商標の称呼は、相紛らわしいものであるといえる。
(ウ)観念について
本件商標からは特定の観念を生じないのに対し、使用商標からは「請求人等のブランド」という観念が生じるものといえるから、本件商標及び使用商標は、観念において類似するものではない。
(エ)検討
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件商標及び使用商標は、観念において類似するものではないものの、外観及び称呼が相紛らわしいものであるといえる。
そして、後述のとおり、本件商標及び使用商標に係る需要者には一般消費者が含まれるものであるところ、一般消費者が通常有する注意力を踏まえると、外観及び称呼が相紛らわしい両商標を取り違えることは十分にあり得るといえることからすれば、両商標の類似性の程度は、相当程度高いというべきである。
(3)本件商標の指定商品と請求人等の業務に係る商品の関連性の程度、取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品は、前記第1のとおりであるところ、大手総合電機メーカーであり、多岐にわたる事業を展開している請求人等の業務に係る商品と関連性の高い商品であるといえる。
そうすると、本件商標の指定商品は、請求人等の業務に係る商品と密接な関連性を有するものであり、両商品は、取引者及び需要者の範囲を共通にするものといえる。また、上記の各商品には一般的な家庭用及び台所用の器具や化粧用具等が含まれることからすれば、上記の需要者には一般消費者が含まれるものといえる。
(4)出所混同が生ずるおそれの有無
本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、前記(1)ないし(3)において検討した事情を総合的に考慮すると、注意力がそれほど高いとはいえない一般消費者が、請求人等の業務に係る商品を表示するものとして極めて高い周知著名性を有する使用商標に相当程度類似し、取り扱う商品も密接に関連する本件商標が付された商品に接した場合には、当該商品が請求人等の業務に係る商品であると混同するおそれがあるといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は、同法第4条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
なお、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する旨も主張しているが、当審は、上記のとおり、本件商標が同項第15号に該当するものと判断する。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-890002