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特許無効審判

2024-800164

吸入器具

審判番号
2024-800164
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2008-546694外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
5020257
請求日
2024年11月29日
審決日
2025年10月15日
公報発行日
2025年12月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1123.121-Y (A61M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5020257号発明「吸入器具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由

目次 ▾ 17項目
理 由

第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨

1 請求の趣旨

特許第5020257号の特許請求の範囲の請求項1、請求項2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

2 答弁の趣旨

本件審判請求は成り立たない。

審判費用は請求人の負担とする。

との審決を求める。

第2 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第5020257号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成18年12月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年12月22日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年 6月22日に特許権が設定登録されたものである。

そして、本件無効審判に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 6年11月29日 :審判請求書、甲第1、2号証、証拠説明書の提出
令和 7年 2月 3日 :手続補正書(方式)の提出(請求人)

同年 5月28日 :審判事件答弁書の提出

同年 6月19日付け:審理事項通知書

同年 7月23日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人)

同年 8月19日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)

同年 9月 9日 :口頭審理

以下、令和 7年 2月 3日提出の手続補正書(方式)により補正された審判請求書を、「審判請求書」という。

第3 本件発明

本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、2の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
繊維性の筒状プラグと、
前記筒状プラグの周囲に巻かれた紙ラッパーと、
前記筒状プラグのほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くにある芳香物質と、
前記紙ラッパー周囲に巻かれた気密ホイルと、
を備えることを特徴とする吸入器具。
【請求項2】
前記繊維性の筒状プラグがセルロースアセテート繊維から成ることを特徴とする請求項1に記載の吸入器具。」

第4 請求人の主張及び証拠方法

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1 請求人の主張の概要

本件発明は、甲第1号証(以下「甲1」という。)に記載された発明及び甲第2号証(以下「甲2」という。)に記載された事項に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2 証拠方法

請求人から提出された証拠は、次の甲1及び甲2である。

甲1:特開平6-269270号公報
甲2:実開昭54-131600号公報及び実願昭53-27306号(実開昭54-131600号)のマイクロフィルム

第5 被請求人の主張及び証拠方法

1 被請求人の主張の概要

本件発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に反するものではなく、同法第123条第1項第2号に該当するものではない。

2 証拠方法

被請求人から証拠は提出されていない。

第6 当審の判断

1 甲1発明

(1)甲1には、次の記載事項及び図示事項がある。なお、下線は、当審において付した。以下同様。

ア「【0014】図1及び図2に示す如く、シガレット10は煙草棒体11及び本発明によるフイルター12の第一の好ましい例を含む。煙草棒体11は通常の包装材料13で包まれ、一方フイルター12は通常の吸口14で包まれている。フイルター12はセルロースアセテートトウ周囲層20及び中央紙芯21を含む。セルロースアセテート周囲層20は、好ましくは多孔質プラグ包装材料22によって包まれた通常のセルロースアセテートトウである、しかしながら所望によっては包装する必要のないフイルターを作るため、周囲層20の外面の蒸気結合又はスプレー被覆の如き自己支持性フイルター棒体技術を使用できる。紙芯21は波形にされ、円筒状の形に集束され、プラグ包装紙23で包まれた紙ウエブである。

【0015】紙包装材料23は芯21の加工性のみならずその美的外観を改良し、又実質的に完全な同軸性を確実にすることを助ける。可溶性煙草成分の如き香味料及び他の添加剤は、濾過された煙の主観的効果を増強するためプラグ包装材料23に付与できる。同様の結果は再構成煙草材料の如き煙草含有材料からプラグ包装材料23を形成することによっても達成できる。プラグ包装材料23は周囲層20及び芯21の間で放射方向に煙及び空気を自由に移動できるようにするため多孔質であるのが好ましい。同時にプラグ包装材料23の存在は、周囲層20及び芯21の間の界面に沿って煙が流れるのを防止することを助ける。」

イ「【0016】フイルター12の最も好ましい例は約24.45 mmの円周及び約258mgの平均重量を有する。芯21の断面積はフイルター12の全断面積の約60%をなすのが好ましい。フイルター12は好ましくは約130mmW.G.ないし約160mmW.G.のRTDを有し、中央芯21のRTDは約350mmW.G.ないし約450mmW.G.であるのが好ましい。更に好ましくはフイルター12は約146mmW.G.のRTDを有し、中央芯21のRTDは約400mmW.G.である。」

ウ 図1「

[図:0001429834000001.jpg]

」

エ 図2「

[図:0001429834000002.jpg]

」

(2)上記(1)アの特に下線部の記載及びウ、エの図面の記載からすると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

なお、甲1において、「プラグ包装紙23」と「プラグ包装材料23」は同じ構成要素を指すから、以下では「プラグ包装紙23」に表記を統一する。同様に、「中央紙芯21」、「紙芯21」、「芯21」は、以下では「紙芯21」に表記を統一する。

「セルロースアセテートトウ周囲層20を含むフイルター12と、
フイルター12を包む通常の吸口14と、
紙芯21を包むプラグ包装紙23に付与された可溶性煙草成分の如き香味料及び他の添加剤と、
を備えるシガレット10。」

2 甲2記載事項

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(1)甲2には、次の記載事項及び図示事項がある。

ア「本考案は、たばこにアルミホイル又は不燃物(4)を巻きつけて火災の危険を少なくしたものでその実施例を図面によつて詳述するとたばこ(1)とフイルター(3)との間から両方にアルミホイル又は不燃物(4)を巻きつけ、更にアルミホイル又は不燃物(4)に多数の小穴(5)・・を設けたもので、たばこを吸いアルミホイル(4)附近迄吸つて捨てるとアルミホイル(4)は金属製の為火熱がアルミホイル(4)に吸収されて早期に火が消え、たばこのニコチンを含んだ煙がでないし、火災の危険も少ない。尚アルミホイルの小穴(5)・・はたばこの火がすぐに消えないようにする為の空気穴である。」(明細書第1ページ第11行~第2ページ第3行)

イ 第1図「

[図:0001429834000003.jpg]

」

(2)上記(1)を踏まえると、甲2には、以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。

「たばこにアルミホイル又は不燃物(4)を巻きつけ、アルミホイル又は不燃物(4)にたばこの火がすぐに消えないようにする為の空気穴である多数の小穴(5)を設けたこと。」

3 対比・判断

(1)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア) 甲1発明の「セルロースアセテートトウ周囲層20を含むフイルター12」は、セルロースアセテートトウからなり、図1、2より筒状であることが看て取れるから、本件発明1の「繊維性の筒状プラグ」に相当する。

(イ) 甲1発明の「フイルター12を包む通常の吸口14」と、本件発明1の「筒状プラグの周囲に巻かれた紙ラッパー」とは、筒状プラグの周囲に巻かれたラッパーの限りで一致する。

(ウ) 甲1発明の「紙芯21を包むプラグ包装紙23に付与された可溶性煙草成分の如き香味料及び他の添加剤」と、本件発明1の「筒状プラグのほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くにある芳香物質」とは、筒状プラグにある芳香物質の限りで一致する。

(エ) 甲1発明の「シガレット10」は、上記ア~ウに係る構成を備えるものであり、フイルター12を介して煙を吸入するものであるから、本件発明1の「吸入器具」に相当する。

よって、本件発明1と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]

「繊維性の筒状プラグと、
前記筒状プラグの周囲に巻かれたラッパーと、
前記筒状プラグにある芳香物質と、
を備えることを特徴とする吸入器具。」

[相違点1]

本件発明1は、筒状プラグの周囲に巻かれたラッパーが「紙」であるのに対し、甲1発明は、「フイルター12を包む通常の吸口14」が紙であるか不明である点。

[相違点2]

本件発明1は、芳香物質が「筒状プラグのほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くにある」のに対し、甲1発明は、可溶性煙草成分の如き香味料及び他の添加剤がプラグ包装紙23に付与されているが、当該プラグ包装紙23がフィルター12との関係でどこにあるか特定されていない点。

[相違点3]

本件発明1は、「紙ラッパー周囲に巻かれた気密ホイル」を有するのに対し、甲1発明はそのような気密ホイルを有さない点。

イ 判断

上記相違点について検討する。

(ア) 相違点1

シガレットのフィルターを包む吸口を紙とすることは、通常のことであって、甲1発明の「フイルター12を包む通常の吸口14」は通常紙でできているから、相違点1は実質的な相違点ではない。

(イ) 相違点2

甲1発明において、図2よりフイルター12の中心及びその近傍には紙芯21が位置している。また、図2より当該紙芯21は一定の直径を有していることが看取でき、また、甲1の上記1(1)アの「紙芯21は波形にされ、円筒状の形に集束され、プラグ包装紙23で包まれた紙ウエブである。」の記載及び上記1(1)イの「芯21の断面積はフイルター12の全断面積の約60%をなすのが好ましい」の記載からは、紙芯21が一定の直径を有しており、フイルター12のほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くに存在することが理解できる。そうすると、甲1発明において、フイルター12のほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くには紙芯21があり、それを包むプラグ包装紙23はフイルター12のほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くの領域よりも外側にあるから、プラグ包装紙23に付与された可溶性煙草成分の如き香味料及び他の添加剤はフイルター12のほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くにない。

よって、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1に記載されておらず、相違点2は実質的な相違点である。

そして、プラグ包装紙23が中心線近くに存在するように、紙芯21の直径とセルロースアセテートトウ周囲層20の直径の比率を変更することは、甲1に記載も示唆もされておらず、また、甲1の上記1(1)アの「紙芯21は波形にされ、円筒状の形に集束され、プラグ包装紙23で包まれた紙ウエブである。」という構造上そのような変更はできない。したがって、甲1発明の「可溶性煙草成分の如き香味料及び他の添加剤」をフイルター12のほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くに付与すること、及び「可溶性煙草成分の如き香味料及び他の添加剤」が付与された「プラグ包装紙23」をフイルター12のほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くに位置するものとすることは、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たとする理由がない。

(ウ) 相違点3

甲2には、上記2(2)のとおり、たばこにアルミホイルを巻きつけることが記載されているが、アルミホイルには空気穴である多数の小穴(5)が設けられているから、甲2のアルミホイルは本件発明1の「気密ホイル」に相当するものではない。したがって、仮に甲1発明に甲2記載事項を適用したとしても、相違点3に係る本件発明1の構成とはならない。

また、仮に当該小穴(5)を省略できたとしても、甲2のアルミホイルは消火のために設けられたものであるから、たばこの一部に常時巻き付けられるものであり、甲1発明に適用したとしても、本件発明1の上記相違点3に係る気密ホイルとはならない。

(エ) 小括

以上のとおり、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が本件発明1を容易に想到し得たとはいえないから、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2) 本件発明2について

本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであり、本件発明1は、上記(1)で述べたように、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2も同様の理由で、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 請求人の主張について

(1)請求人は、令和 7年 7月23日提出の口頭審理陳述要領書において、「甲1発明においても、紙芯の直径とセルロースアセテートトウ周囲層20の直径の比率次第では、プラグ包装紙23が中心近くに存在するといえる」とし、「甲1発明において、プラグ包装紙23が「セルロースアセテートトウ周囲層20のほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くにある」ことは、甲第1号証に記載されているも同然といえる」と主張している。

しかし、上記3(1)イ(イ)で検討したように、甲1発明の紙芯21は一定の直径を有し、プラグ包装紙23はその外側にあるのであるから、当該プラグ包装紙23が、セルロースアセテートトウ周囲層20のほぼ中心線上に又はほぼ中心線近くにあるということはできない。

(2)請求人は、審判請求書において、甲1発明に甲2記載事項を適用することで上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであると主張し、これに関して令和 7年 7月23日提出の口頭審理陳述要領書において、甲2記載事項において小穴(5)は必須の構成ではないため上記主張に誤りはない旨を述べている。

しかしながら、甲2のアルミホイルの小穴(5)は「たばこの火がすぐ消えないようにするための空気穴であ」り、当該アルミホイルの小穴(5)を設けなければ、たばこの火はすぐ消えてしまうのであるから、請求人の上記主張は誤りである。

したがって、請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由によっては、本件発明1、2についての特許を無効にすることはできない。

審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。

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2024-800164

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