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商標異議申立

2024-685011

アンマニ、オンマンリン、エンマンリン

審判番号
2024-685011
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
—
請求日
2024年07月10日
審決日
2025年03月17日
公報発行日
2025年06月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】Xin Hee Co., Ltd.
  • 【異議申立人】ジョルジオ アルマーニ エス.ピー.エー.
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人筒井国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 雅也
  • 審判官 馬場 秀敏
  • 審判官 板谷 玲子
分類
T1651.222-Y (W25) / T1651.25 -Y (W25) / T1651.261-Y (W25) / T1651.262-Y (W25) / T1651.263-Y (W25) / T1651.271-Y (W25)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第11号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

国際登録第1734102号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

国際登録第1734102号商標の商標登録を維持する。

理由

1 本件商標 本件国際登録第1734102号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、2023年(令和5年)3月24日に国際商標登録出願、第25類「Hosiery; gloves [clothing]; clothing; neckties; girdles; wedding dresses.」を指定商品として、令和6年3月14日に登録査定され、同年5月10日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も有効に存続しているものである。 (1)登録第3127123号商標 商標の構成 ARMANI 指定商品 第25類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成5年3月4日 設定登録日 平成8年3月29日 (2)国際登録第833734号商標 商標の構成 ARMANI 指定商品・役務 第3類、第8類、第11類、第12類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第25類、第27類、第32類、第36類、第39類、第41類及び第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 国際商標登録出願日 2004年(平成16年)7月19日 優先権主張日 2004年(平成16年)6月1日(Switzerland) 設定登録日 平成17年10月21日 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。 (1)申立人の周知・著名性について 申立人は、デザイナーであるジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)により1975年にイタリアのミラノに設立されたファッションハウス(最新の高級服のメーカー)であり、高級ホテル(アルマーニ ホテルズ)や高級リゾートのチェーンビジネスのみならず、世界中でカフェやバー、ナイトクラブの運営も行っている(甲3)。 「アルマーニ(Armani)」ブランドには、“ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)”、“エンポリオ アルマーニ(Emporio Armani)”、“アルマーニ コレッツィオーニ(Armani Collezioni)”、“アルマーニ ジーンズ(Armani Jeans)”、“アルマーニ エクスチェンジ(Armani Exchange)”、などが含まれており、アルマーニ エクスチェンジの商品は、31か国の270店舗とブランドのウェブサイトにおいて、限定で販売されている(甲3)。 Wikipedia(日本語)によれば、アルマーニブランドは、ファッション業界で最も権威のあるブランドと紹介され、メインブランド「ジョルジオ アルマーニ」の他、複数の姉妹ブランド、化粧品、リゾート、高級レストランなど多彩な事業を展開して「アルマーニ」と総称される(甲4の1)。 (2)申立人の創立者ジョルジオ・アルマーニについて 申立人は、イタリアのファッションデザイナーであるジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)氏により1975年に設立されたものである(甲3~甲5)。 1987年に、ジョルジオ・アルマーニ氏はアーティストとして既に、シャネル、ディオール、その他の人物と並んで、ファッション界のパンテオンに含められていた(甲4の2)。 ジョルジオ・アルマーニ氏は、同じくイタリアを代表するファッションデザインナーである、ジャンフランコ・フェッレ(Gianfranco Ferre)氏、ジャンニ・ヴェルサーチ(Gianni Versace)氏とともに、「ミラノの3G」と呼ばれ、その一翼を担い、世界中で知られている(甲5)。 その知名度を表す最たるものとして、ファッションデザイナーとしては2人目として、アメリカの「Time(タイム)」誌の表紙を1982年飾り、イタリア人としては、2人目である(甲5)。 また、1981年のGQ誌の「メンズ・スタイル・アウォード・フォー・ベスト・ファッションデザイナー賞」を皮切りに、1985年にはイタリア政府からイタリア共和国功労勲章「コメンダトーレ章」を、1986年にはその最高位「グランデ・ウッフィチャーレ章」を、1987年には「共和国功績勲章」、「大騎士賞」を授与され、イタリア国内にとどまらず、1988年にはスペイン国王から、世界最高のファッションデザイナーに贈られる「クリストバル・バレンシアガ賞」を、1989年には日本でも「繊研賞」を授与されており、数々の受賞歴がある(甲5)。 その名が世界中に轟くきっかけとなったのは、1980年、映画で、著名な俳優の衣装協力をしたことがきっかけであり、その後も数々の映画衣装を担当した結果、映画のクレジットに、2005年時点で300回登場している(甲5)。 かかる映画とのつながりのため、アルマーニの顧客リストには、ハリウッドを代表する俳優達が名を連ねており、その結果、ジョルジオ・アルマーニ自身並びにそのメイン・ブランドであるジョルジオアルマーニの衣装や商品はメディアに数多く登場し、需要者にも広く知られることとなっている。 ジョルジオ・アルマーニ自身の評伝として2007年に「ジョルジオ・アルマーニ帝王の美学」が日本経済新聞社から発行されているほか、同年に日本ファッション・エデイターズ・クラブにより「FECデザイナー・オブ・ザ・イヤー」に選出もされている(甲5)。 つまり、20世紀で最も成功したデザイナーであり、著名な番付「フォーブズ(Forbs)」の世界長者番付にもランクインされている(甲5)。 上記及び前記(1)で述べたことは、ファッション業界で知名度の高い雑誌「VOGUE」の記事においても同様に記載されている(甲6)。 (3)申立人に関する事業について 2016年に、ジョルジオ アルマーニ財団は設立された。“ジョルジオ アルマーニ”、“エンポリオ アルマーニ”、“アルマーニ エクスチェンジ”の3つのブランドを中心に展開している(甲7の1)。 まず、1975年に、ジョルジオアルマーニとセルジオ ガレオッティがジョルジオアルマーニS.p.A.を設立した。 1981年に、“エンポリオ アルマーニ”と“アルマーニ ジーンズ”のラインが立ち上がり、第1号店がミラノにオープン、1982年に、“アルマーニ ジュニア”のラインを発表し、1983年に“ジョルジオ アルマーニ”第1号店がミラノにオープン、1991年に、“A|X”(アルマーニ エクスチェンジ)ラインを発表し、第1号店がニューヨークのソーホーにオープン、2007年に、コンセントストア「アルマーニ/銀座タワー」をオープン、2022“A|X”(アルマーニ エクスチェンジ)の第1号店がミラノにオープンされた(甲7の2)。 2020年まで、アルマーニグループの流通ネットワークは、他の小売業者との連携に加えて、自社で所有及び運営する623か所の店舗で構成されている(甲7の3)。 (4)申立人の日本での事業について 申立人は、1987年に、Giorgio Armani Japan株式会社を設立したのが日本でのビジネスの始まりであり、このときに、西武デパートの池袋店、渋谷店に店舗をオープンさせている。 その翌年の1988年に旗艦店を東京都千代田区紀尾井町にオープンしたほか、デパートの伊勢丹新宿や名古屋、神戸にも店舗をオープンさせ、その後1989年から1997年にかけて、Giorgio ArmaniとセカンドラインのEmporio Armaniのブランドの店舗の出店を続け、現在は日本全国に69店舗を出店している。 1999年に大阪御堂筋、2001年に東京・表参道に路面店をオープンしている。 2005年にジョルジオ・アルマーニ展を六本木ヒルズ、森アートギャラリーで開催し、ジョルジオ・アルマーニ氏も来日して聖徳記念絵画館前でショーを開催した。この他、オートクチュールラインArmani Priveを日本で発表している。 1987年の日本進出から20年目の2007年、東京・銀座にArmani Towerをオープンし(2016年に東急プラザ銀座へ移転)、日本武道館にてイベントを開催している。 続いて2009年にGiorgio Armani六本木店をけやき坂にオープンし、2013年にはEmporio Armani Caffeを日本初でオープンしている(甲7の2,甲8の1)。 以上のとおり、日本進出から30年を経過した現在でも、日本で認知される高級ブランドの1つとして、東京の銀座や青山のみならず日本各地で出店を続け、現在では日本国内で、申立人が直接運営する90店舗を擁しており、申立人のブランドの日本国内での知名度が高いことがうかがえる(甲7の4)。 2024年まで、日本において、ジョルジオ アルマーニストアは21か所、エンポリオ アルマーニストアは52か所、アルマーニ エクスチェンジストアは18か所、EA7エンポリオ アルマーニストアは1か所、アルマーニ カーザストアは1か所を出店している(甲7の4)。 東京・銀座にある伝統のある小学校の制服のデザインをしたことが全国のテレビ局により報道され、ハイブランドであるジョルジオ アルマーニをデザイナーとして迎えた、公立小学校の是非が広く問われる事態となっているが、これも、ジョルジオ アルマーニが日本全国で高級ブランドであることが広く知られているからに他ならない。 申立人は“ジョルジオアルマーニ”について11の店舗を東京に有している(甲8の4)。 (5)引用商標の周知・著名性について 以上(1)から(4)で述べるように、申立人とそのブランドである“ジョルジオ アルマーニ”、“エンポリオ アルマーニ”は40年以上も世界各国で広く事業活動を行っている。1982年からアルマーニグループの3つのブランドの2つとして世界各国で展開に際して使用されている。したがって、その保有するブランド(商標)と引用商標は、日本国内のみならず、世界各国で周知・著名なものとして認知されていることに疑いはない(甲8)。 また、“A|Xアルマーニ エクスチェンジ”ブランドは、2017年より、上記ブランドとともに、申立人の3大注力ブランドの1つとなっており、若者を中心に人気を博し、店舗数は、アルマーニグループ内でも最多となって、世界中で馴染みあるブランドラインと認識されている(甲6)。 ア 売上高 2014年ないし2023年の申立人のアニュアルレポート(年次報告)によれば、2012年ないし2023年の売上高は、2012年に約29億ユーロ、日本円で約4,783億円(1ユーロ163.34円で換算。以下同じ。)を記録して以降、2022年には約46億ユーロであり、日本円で約7,487億円、2023年には約45億ユーロであり、日本円で約7,294億円を記録している(甲9)。 上記金額を見ても、申立人ブランドの世界での市場規模は大きく、ブランドの持つ価値が高く、申立人の商標並びにブランドが需要者に周知されていることが分かる。 イ 日本での売上高 2019年ないし2023年の日本における引用商標を付した被服類商品の売上高は、約20億から27億円に達している。 ウ 広告宣伝費 申立人が日本において費やした“ARMANI”ブランドに関する2019年ないし2023年の広告宣伝費は、約4億7千万円から5億8千万円であり、申立人がその所有するブランドの育成と価値の向上に力を入れていることが分かる。 エ 引用商標を広告・宣伝を目的に使用された例 申立人の日本向けのインターネットホームページの写し(甲10)によれば、引用商標が複数のページに表示され、商品にも、引用商標がよく表れ、申立人のビジネスと引用商標とが密接に関わっており、引用商標が国内外の消費者の目に触れる機会が多いことが分かる。 オ 日本国内での雑誌等への掲載事例 申立人は日本国内で、雑誌等へ引用商標が付された商品の広告掲載を多数行っており(甲11)、日本国内の需要者に引用商標が認知されているといえる。 カ 世界各国での引用商標の商標登録例 申立人は、72か国を指定した、マドリッド協定議定書に基づく国際登録商標を所有し、引用商標の世界的な法的保護を確保の上、使用しており(甲12の1~4)、その他、国際分類25類の指定商品について、“ARMANI”に関連する商標は、82か国における180件の商標登録がある(甲12の5)。 キ Brand Financeによる評価 英国に拠点を持つ、世界のブランドの評価を行う事業者Brand Finance社(甲13の1)は、2017年のイタリアのブランドトップ50を分析している(甲13の2)(決定注:上記内容の甲第13号証は提出されていないものと思料する。なお、提出された甲第13号証は、Googleにおける「恩曼琳」の検索ページである。)。この第9頁,第14,15頁には、トップ10のブランドが列記されており、申立人のブランドの総称である“Armani”について、第10位にランク付けしている。金融商品の格付と同様の評価体系を有しており、最高ランクAAA+であるところ、ArmaniブランドはAA+の評価を得ている。また2016年は第12位であったものの、2017年には第10位にランクアップしている。 また同第14頁には、より詳細にトップ50のイタリアブランドを列記しており、第10位に、申立人のArmaniブランドはランク付けされている。 (6)本件商標と引用商標との類似性 上述のように、申立人の引用商標「ARMANI」は、ファッション業界において世界的に周知・著名であるといえる。 また、申立人の店舗、商品、雑誌の多くに、引用商標は目立つように表示されている(甲8、甲10、甲11)。引用商標に係るブランドは、アルマーニのブランド群の中でも、もっとも識別性のある表示であり、申立人の3大重要ブランドのいずれにも含まれる名称であるため、引用商標は申立人にとって極めて重要であり、良く使用される商標である。したがって、国内の需要者の目にも触れる機会は多く、申立人の商標として認知され、服飾・身の回り品関連の商品等に引用商標「ARMANI」が付されていた場合には、容易に申立人の引用商標が想起され、記憶の中で対比されることとなる。 商標の類否判断は、外観・称呼・観念をバランス良く対比しながらなされるところ、本件商標は、上段に欧文字の「ANMANI」、下段に漢字の「恩曼琳」を配している。下段の漢字のうち、中央の「曼」は日本では使用されることが極めて稀であるため、どのように呼称すれば良いか、日本の需要者にはわからないと考えられる。そうとすると、上段の欧文字の「ANMANI」の方が主に需要者の目に留まり、自他商品識別力を発揮することは明らかである。 横書きの商標は、左から読み起こし理解する。引用商標「ARMANI」も本件商標の上段「ANMANI」も、英語のアルファベット6文字からなり、語順も、語頭から2文字目の「R」と「N」が異なる以外は同一であるので、文字列がほぼ同一である。引用商標の「R」の特徴として、左側には垂直方向の縦の線、右の方は、縦の線の中央から右下へ向かった、右下がりの斜めの線を有し、この2つの特徴を、本件商標の上記違いのある文字についても共通にする以上、需要者をして、本件商標は、引用商標と外観上類似する商標と捉えることは至極自然である。 本件商標の上段の欧文字「ANMANI」からは、称呼「アンマニ」が生ずる。また下段の漢字は、上述のとおり、中央の「曼」は日本では使用されることが極めて稀であり、本件商標の下段の漢字「恩曼琳」は中国語の漢字そのまま使うものと考え、日本の需要者は、容易に判読できないと考えられ、つまり、本件商標の称呼は、上段の欧文字「ANMANI」から生ずる「アンマニ」である。 ここで、引用商標「ARMANI」は著名商標であり、称呼「アルマーニ」を生ずる表示として日本国内で知られており、本件商標とは、語頭から2つ目の音「ン」と、引用商標の2つ目の音「ル」が異なる点と、4音説目に長音が存在する点で異なる。ここで、本件商標の「ン」は、それに続く「マ」が口を閉じて発音する音(閉音)であることから、それを発音するために、鼻母となる。鼻音であるから、鼻腔に空気を通す音であり、極めて弱い音である。また、閉じたくぐもった音であることから、引用商標の「ル」が口唇を突き出して発音する母音「ウ」段の音であって、引用商標の中間の「マ」にアクセントがあることに鑑みれば、「ル」は全体の中でも弱く発音する音である。そうすると、本件商標と引用商標の発音は、どちらも一気によどみなく発音できるほか、5つの母音の種類も順序も同一、強弱も極めて近く、構成音数がほぼ同一であることから、「アンマニ」と「アルマーニ」の全体の称呼は極めて近似している。また、引用商標が有する長音は、審査基準に弱音とされており、語の長さの調子を変えるだけであって、発音される音自体を変えないから、全体の称呼に与える影響は小さい。したがって、本件商標と引用商標とは、称呼上類似する。 本件商標の下段の漢字「恩曼琳」は、インターネット上では、本件商標出願人の商標としてしか検出できず、造語であると考えられる(甲13)。とすれば、本件商標の「恩曼琳」からは特定の観念が生じない。前記のとおり、日本の需要者にとっては読み起こすことのできない漢字であるから、観念上の対比に寄与しない。一方、本件商標の上段部分「ANMANI」も辞書等に掲載されておらず、造語であり特定の観念を生じない。したがって、引用商標と対比できないか、引用商標の外観及び称呼と類似するので、観念において、本件商標と引用商標と観念が類似するものとして需要者に認知させるものである。 以上により、本件商標は引用商標とは外観上極めて紛らわしく、称呼上も極めて類似する。引用商標が著名商標であることから、本件商標の商品と、引用商標の商品の出所について、需要者をして混同を生ぜしめるおそれがあることは明らかであり、本件商標と引用商標とは類似である。 商品については、本件商標と引用商標とが同一又は類似する指定商品である。 (7)商標法第4条第1項第10号違反について 本件商標は、引用商標と外観・称呼上類似し、著名な引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあることから、引用商標との関係で、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。 (8)商標法第4条第1項第11号違反について 本件商標の登録出願の日前に登録された申立人の引用商標に外観・称呼上類似し、本件商標に係る指定商品は、申立人の引用商標の指定商品と類似するため、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 (9)商標法第4条第1項第15号違反について 前述の類否判断の基準からすると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号に違反して登録されたと確信するものであるが、この類否判断の基準をもってしても本件商標と引用商標とが類似するとはいい得ないとした場合であっても、引用商標が申立人の商標として日本国内において周知・著名であることからすると、本件商標がその指定商品について使用されたときには、需要者・取引者をして、申立人の提供する商品であるかの如く、又は申立人と経済的・組織的に何らかの関連を有するものの提供に係る商品であるかの如く、その出所について需要者をして誤認混同を招くことは明らかである。 本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と、同一又は類似の商品を指定している。したがって、被服に関連する商品の全てで周知・著名性は発揮され、商品等の出所の混同のおそれが生じることとなる。 したがって、本件商標が商標法第4条第1項第10号、第11号に違反して登録されたものではないとした場合であっても、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (10)商標法第4条第1項第19号違反について 前述のように、引用商標が、申立人の周知・著名な商標として世界各国で認識されることからすると、前記で分析したとおり、本件商標を指定商品に使用する場合には、ファッション業界において周知・著名な「ARMANI」商標に化体した知名度にフリーライドして、不正の利益を得る目的のもと使用することになり、本件商標は商標法第4条第1項第19号にも違反して登録されたものである。 4 当審の判断 (1)商標「ARMANI」の周知性について ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、ファッションデザイナーであるジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)氏により1975年にイタリアのミラノに設立された、衣服等のファッション関連商品等を製造、販売する法人である(甲3~甲5)。 (イ)申立人の取扱いに係るブランドとして、ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)、エンポリオ アルマーニ(Emporio Armani)、アルマーニ コレッツィオーニ(Armani Collezioni)及びアルマーニ エクスチェンジ(Armani Exchange)などがあり、例えば、アルマーニ エクスチェンジの商品は、31か国の270店舗とブランドのウェブサイトにおいて、限定で販売されているとされる(甲3、申立人の主張)。 (ウ)申立人に係るブランドは、「アルマーニ」と総称される(甲4、甲6)。 (エ)ジョルジオ アルマーニ氏は、1981年以降、数々のファッション関係の賞を受賞し、1989年には我が国においても「繊研賞」を受賞した(甲5)。また、同氏は1980年以降、映画への衣装協力も行い、その顧客にはハリウッドを代表する俳優が名を連ねるとされている(甲5)。 (オ)アルマーニグループの流通ネットワークは、他の小売業者との連携に加えて、自社で所有及び運営するアメリカ大陸、アジア太平洋及びヨーロッパに広がる623か所の店舗で構成されている(甲7の3)。また、申立人は、72か国を指定した、マドリッド協定議定書に基づく国際登録商標を所有し、引用商標の世界的な法的保護を確保しており、その他、「ARMANI」に関連する商標は、国際分類第25類の指定商品について、82か国における180件の商標登録がある(甲12、申立人の主張)。 (カ)我が国においては、1987年にGiorgio Armani Japan株式会社を設立し西武デパートの池袋店、渋谷店に店舗をオープンさせ(申立人の主張)、その後店舗数を拡大し2024年には約90店舗が出店されている(甲7の4)。 (キ)2014年ないし2023年の申立人のアニュアルレポート(年次報告)によれば、2012年ないし2023年の売上高は、2012年に約29億ユーロ、日本円で約4,783億円(1ユーロ163.34円で換算。以下同じ。)を記録して以降、2022年には約46億ユーロであり、日本円で約7,487億円、2023年には約45億ユーロであり、日本円で約7,294億円を記録している(甲9)。 また、2019年ないし2023年の日本における引用商標を付した被服類商品の売上高は、約20億から27億円に達しているとされる(申立人の主張)。 (ク)我が国向けの申立人のホームページの上部に「ARMANI」の文字が表示されている(甲10)。 また、我が国において2016年ないし2023年に発行されたとみられる各種雑誌に、「ARMANI EXCHANGE」、「EMPORIO ARMANI」、「GIORGIO ARMANI」、「アルマーニ」、「ARMANI」等の文字の表示とともに被服等の商品が掲載されている(甲11)。 イ 前記アを総合すると、申立人は、1975年の設立後、「アルマーニ」と総称される「GIORGIO ARMANI」等の「ARMANI」の文字を含む各種ブランドを展開して被服等の商品を製造、販売、宣伝広告したものであり、その結果、外国及び我が国において相当程度の売上高を記録しているものであり、商標「ARMANI」(以下「申立人商標」という。)は、申立人の業務に係る商品被服等(以下「申立人商品」という。)を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に一定程度の周知性を有していたものと認められる。 (2)本件商標と引用商標及び申立人商標との類似性について ア 本件商標 本件商標は、別掲のとおり、上段に「ANMANI」(2つの「A」については、中央部の横線がないデザイン化されたもの。以下同じ。)の欧文字、下段に上段と両端をそろえるように左右に直線を配して書された「恩曼琳」の漢字を表してなるところ、上段又は下段のいずれかの文字が、商品の品質等を表示するものであるなど、商品の出所識別標識としての称呼等が生じないというべき事情は見いだせない。 そして、本件商標は、その構成文字に応じて、上段の「ANMANI」の文字が「アンマニ」、下段の「恩曼琳」の文字が「オンマンリン」と称呼されるというのが相当であり、全体としては「アンマニオンマンリン」の称呼を生ずるものであって、親しまれた意味合いを想起させることのない造語として認識され、特定の観念を生じないものである。 なお、申立人は、本件商標の下段の漢字のうち、中央の「曼」は日本では使用されることが極めて稀であるため、どのように呼称すれば良いか、日本の需要者にはわからないと考えられるから、上段の欧文字の方が主に需要者の目に留まり、自他商品識別力を発揮することは明らかである旨、主張している。 しかしながら、「曼」の文字は、「曼殊沙華・曼珠沙華」、「曼荼羅・曼陀羅」などの語に用いられ、「マン」と読まれる漢字であり(「広辞苑 第七版」(株式会社岩波書店)参照)、需要者をしてその読みがわからないとはいい難いから、上記申立人の主張は採用できない。 イ 引用商標及び申立人商標 引用商標及び申立人商標(以下、これらをまとめていうときは「引用商標等」という。)は、いずれも「ARMANI」の文字からなるものであるところ、当該文字に相応して「アルマーニ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。 ウ 本件商標と引用商標等との対比 本件商標と引用商標等を比較すると、外観においては、その全体において漢字部分の有無等の相違があり、本件商標の欧文字部分と引用商標等とを比較しても、2文字目が「N」か「R」か、及び「A」の文字のデザイン化の有無において異なることから、両者は、外観上、判然と区別し得るものである。 また、称呼においては、本件商標から生じる称呼と引用商標から生じる称呼とは、音数及び構成音の差異を有し、本件商標の欧文字部分から生じる称呼「アンマニ」と引用商標から生じる称呼「アルマーニ」とを比較しても、2音目が「ン」か「ル」か、及び「マ」の後の長音の有無において異なることから、短い音構成における上記の差異は大きいものといえ、両者は、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。 そして、観念においては本件商標及び引用商標は、ともに特定の観念を生じないから、観念上、比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において区別できることから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。 (3)商標法第4条第1項第10号及び同項第11号について 前記(2)のとおり、本件商標と引用商標等は非類似の商標である。 したがって、本件商標の指定商品と申立人商品及び引用商標の指定商品とが同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第11号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第15号について 前記(1)のとおり、申立人商標は申立人商品を表示するものとして、需要者の間に一定程度の周知性を有しているとしても、前記(2)のとおり、本件商標と引用商標等は非類似の商標であって、別異の商標といえるものである。 そうすると、本件商標の指定商品と申立人商品の関連性の程度及び需要者の共通性を考慮しても、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標等を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が、他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第19号について 前記(1)のとおり、申立人商標は申立人商品を表示するものとして、需要者の間に一定程度の周知性を有しているとしても、前記(2)のとおり、本件商標と引用商標等は非類似の商標である。 そして、本件商標権者が引用商標等にただ乗りするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠の提出はなく、本件商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (6)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではなく、その他、同法第43条の2の各号に該当するというべき事情は見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-685011

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