商標異議申立
2024-685002
インシール
- 審判番号
- 2024-685002
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- —
- 請求日
- 2024年01月10日
- 審決日
- 2024年10月01日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】Innolcon Medical Technology (Suzhou) Co., Ltd.
- 【異議申立人】エチコン エンドサージェリー インコーポレーテッド
- 【異議申立人代理人】岡村 信一
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T1651.261-Y (W10) / T1651.262-Y (W10) / T1651.263-Y (W10) / T1651.255-Y (W10) / T1651.271-Y (W10)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第43条の2第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
国際登録第1681190号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
国際登録第1681190号商標の商標登録を維持する。
理由
1 本件商標
本件国際登録第1681190号商標(以下「本件商標」という。)は、「Inseal」の欧文字を横書きしてなり、2022年(令和4年)6月23日に国際商標登録出願、第10類「Surgical robots; knives for surgical purposes; medical apparatus and instruments; dental apparatus, electric; saws for surgical purposes; diagnostic ultrasound instruments for medical use; scalpels; surgical apparatus and instruments; surgical cutlery; dental apparatus and instruments.」を指定商品として、令和5年7月3日に登録査定され、同年11月2日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第4809350号商標(以下「引用商標」という。)は、「ENSEAL」の文字を標準文字で表してなり、平成16年3月15日に登録出願、第10類「医療用及び外科用機械器具」を指定商品として、同年10月8日に設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は商標法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨申し立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出した。
(1)本件商標について
本件商標は「Inseal」の欧文字からなり、当該文字は、「封印する」という意味合いの英単語であって、「インシール」と称呼されるものである(甲4)。
(2)引用商標について
引用商標は「ENSEAL」の文字よりなり、当該文字は「inseal」と語源を同じくし、「封印する」という意味合いを有する英単語で、「インシール」と称呼されるものである(甲5、甲6)。
また、引用商標は、申立人が世界的規模で販売している「人体や動物の組織の凝固及び脈管組織の癒合(シーリング)に使用されるバイポーラ(双極)電極式の鉗子(手術機器製品)」の商標である(甲7、甲8)。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 商標の類似
本件商標と引用商標は共に欧文字で構成され、語頭の「I」と「E」の文字のみを異にし、後続の5文字を同じくするものであるから、外観上相応の類似性が認められる。
また、本件商標と引用商標とは、語源を同じくする英単語で、共に「封印する」ほどの意味合いを有することから、両商標は観念を同じくし、仮に、需要者が両商標から明確な観念を想起しないとしても、接頭辞「in-」、「en-」が共に名詞を伴って「中へ入れる」、「その状態にする」ほどの意味の動詞をつくることを知っている需要者は少なくないから、観念上非類似と評価すべきではない。
例えば、オンライン英和辞典・和英辞典「weblio」によれば、「incupsulate」と「encapsulate」(カプセルに入れる)、「incline」と「encline」(傾く)等の同義語か、あるいは、一方が他方の古語であり、観念は同一の単語がある。
そして、両商標は共に「インシール」と称呼されるものであるから、称呼も同一である。
したがって、本件商標と引用商標とは、三点観察の総合的考察の結果として需要者の印象・記憶・連想において互いに相紛れるおそれの高い類似商標とみるべきである。
イ 商品の類似
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが互いに類似することは疑う余地がない。
ウ 本件商標の指定国・地域における審査結果
本件商標は、我が国、アラブ首長国連邦、オーストラリア、ブラジル、コロンビア、欧州連合知的財産庁、英国、インドネシア、インド、韓国、メキシコ、マレーシア、ロシア、タイ、トルコ、米国の16の国・地域を領域指定する国際登録である。
そして、このうち、アラブ首長国連邦、オーストアリアなどの10の国・地域について、申立人又は申立人が属するジョンソン アンド ジョンソングループの中核企業であるジョンソン アンド ジョンソン社その他同グループ内関連会社名義の商標登録・国際登録「ENSEAL」との抵触を理由に、領域保護を拒絶されている(甲9(決定注:甲10が重複して提出されており、甲9の提出はない。)~甲24)。
これらは、英語圏以外の国の商標登録要件審査においても「Inseal」と「ENSEAL」とが互いに類似するものと判断された事実を示すものである。
そして、保護認容声明・登録査定を受けた国は、我が国、韓国、トルコの3か国にすぎず、トルコでは「ENSEAL」は商標登録されていない。
(4)商標法第4条第1項第10号及び同項15号該当性について
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは互いに類似する。
また、引用商標の使用対象商品である「バイポーラ鉗子」は、従来製品が単なる凝固止血の器具であったのに対し、高い凝固止血能力を有しながら組織の切開能力をも備えた画期的な手術用機械器具であり(甲7、甲8)、引用商標は外科医等の需要者間で世界的に広く知られている。
そうすると、仮に、両商標が非類似であるとしても、レールデュタン事件最高裁判決(最判平10(行ヒ)第85号)の示す判断基準及び商標審査基準の示す考慮事由に照らして、本件商標は引用商標との関係において狭義又は広義の混同を生じるおそれがあるというべきである。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性
申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
申立人は、引用商標を使用した「バイポーラ鉗子」は、外科医等の需要者の間で世界的に広く知られている旨主張しているところ、当該商品に係る製品カタログ(甲7)及び当該商品の記事を掲載した書籍を紹介するウェブサイト(甲8:2010年11月発行)によれば、引用商標を使用した「バイポーラ鉗子」が2010年頃から製造販売されていることはうかがえるものの、我が国における申立人の業務に係る商品の広告の範囲・方法等の宣伝広告の規模、市場シェア等の販売実績に係る具体的な証拠の提出がないことから、引用商標が申立人の業務に係る商品に使用されているとしても、その使用をもって、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されている状態にあると判断することができず、申立人の提出に係る証拠を総合して考察してみても、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「Inseal」の欧文字からなるものであり、当該文字は、一般的な辞書に採録がなく、特定の意味合いをもって親しまれているものではないから、一種の造語を表したものと理解されるものである。
そして、造語からなる商標にあっては、親しまれた英語読み風又はローマ字読み風に称呼するのが一般的であるところ、本件商標は、その構成文字に相応して、「インシール」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおり「Enseal」の欧文字からなるものであり、当該文字は、一般的な辞書に採録がなく、特定の意味合いをもって親しまれているものではないから、一種の造語を表したものと理解されるものである。
そして、我が国おいて一般的に親しまれている英語である「entry」、「ending」及び「engine」が、それぞれ「エントリー」、「エンディング」及び「エンジン」と発音されることに照らせば、「Enseal」の文字からなる引用商標は「エンシール」の称呼を生じるとみるのが自然である。
そうすると、引用商標からは、「エンシール」の称呼のみが生じ、特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標を比較してみると、両者は、上記ア及びイのとおりの構成からなるところ、外観の識別上重要な要素である語頭において、「I」と「E」の文字の差異を有し、また、本件商標の語頭以外の文字が小文字から構成されるのに対し、引用商標は大文字のみから構成されるという差異を有するものであり、これらの差異が、両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえない。
そうすると、両商標は、外観上、明確に区別できるものである。
また、本件商標から生じる「インシール」の称呼と引用商標から生じる「エンシール」の称呼とを比較すると、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音において、「イ」と「エ」の音の差異を有するものであり、この差異が5音という比較的短い音構成において、両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、聞き誤るおそれのないものというのが相当である。
さらに、両商標はいずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において明確に区別できるものであるから、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
エ 小括
上記ウのとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたと認めることはできないものであり、また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
また、本件商標と引用商標は、上記(2)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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