商標取消審判
2024-300789
リーフ
- 審判番号
- 2024-300789
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1984-129177
- 登録番号
- 1932355
- 請求日
- 2024年10月28日
- 審決日
- 2025年05月15日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】勝野 かおり
- 【被請求人】株式会社 ミズホHD
- 【被請求人代理人】あいそう弁理士法人
- 【被請求人代理人】向山 正一
- 【被請求人代理人】村山 信義
- 【被請求人代理人】伊藤 正典
- 審判長/審判官
- 審判長 高橋 幸志
- 審判官 清川 恵子
- 審判官 白鳥 幹周
- 分類
- T131 .1 -Y (101)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条第2項、商標法第50条第1項、商標法第38条第5項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第1932355号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第1932355号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「LEAF」の欧文字と「リーフ」の片仮名を上下二段に横書きした構成からなり、第2類「肥料」を指定商品として、昭和59年12月13日に登録出願、同62年2月25日に設定登録され、その後、平成19年6月6日に指定商品を第1類「肥料」に書換登録され、現に有効に存続するものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年11月13日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、同3年11月13日から同6年11月12日までの期間である(以下「要証期間」という。)。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように省略して記載し、また、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁の要旨
(1)乙1ないし乙6の1について
ア 乙2の1及び乙2の2
商品「肥料」の表面ラベルに「リーフA液材」(以下「リーフA液材」とする商標を「被請求人商標1」という場合がある。)との表示が記載されており、裏面ラベルに肥料の名称として「リーフAゴールド」、生産した年月が令和1年11月と記載されており、要証期間内において本件商標が付された商品が販売等されていたかは不明である。なお、この商品が要証期間内において販売等されていたものであったとしても、この被請求人商標1は、本件商標と同一又は社会通念上同一とはいえない。
乙2の2は、商品の梱包資材の表面に「リーフA液材」との表示が記載されているが、この証拠からは、梱包資材を使用した商品がいつ製造、販売されたか不明である。
イ 乙2の3及び乙2の4
商品パッケージ及び梱包材の正面に貼付されたラベルに「リーフLAリキッドアミノ」と表示されており、アルファベット文字「L」の中にリキッド、アルファベット文字「A」の中に「アミノ」なる記載がまとまり良く配置されている(以下、「本件使用態様A」という。)。また、バッケージ及び梱包材の正面に貼付されたラベルに、「2022.03」と記載されている。
この2022.03が商品の製造年月を指すのであれば、要証期間内の証拠と認識されるが、のちに詳述するとおり、本件使用態様Aは、本件商標と同一又は社会通念上同一とはいえないものである。
ウ 乙3
乙3の1及び乙3の3は株式会社ミズホ(以下単に「ミズホ」という場合がある。)による2021年10月1日及び同年11月1日から2024年7月31日の商品別・売上明細表であり、そこに「リーフ・A液材(3kg)」及び「リーフLA」と記載されているが、内部資料と思われるため、これのみでは本件商標が要証期間内に使用されていたことを示す証拠とはならない。
乙3の2は、2022年2月2日及び同年2月28日に発行されたミズホと株式会社中四国クボタとの間の取引資料(納品書(控)及び請求書)であり、そこに「リーフ・A液材(3kg)」と記載されている(以下、「本件使用態様B」という。)。乙3の4は、2024年2月5日及び同年2月29日に発行されたミズホと株式会社ヰセキ九州との間の取引資料(納品書(控)及び請求書)であり、そこに「リーフLA」と記載されている(以下、「本件使用態様C」という。)。のちに詳述するとおり、本件使用態様B及び本件使用態様Cは、本件商標と同一又は社会通念上同一とはいえないものである。
エ 乙6
乙6はミズホのウェブサイトの写しであり、ここには商品「葉面散布材」に関して、「リーフLA」(本件使用態様C)及び本件使用態様Aが使用されている。本件使用態様A及びCは、本件商標と同一又は社会通念上同一とはいえない。
オ 乙1の4ないし乙1の10、乙5の1ないし乙5の4
乙1の4ないし乙1の10はミズホによる商品カタログであり、乙5の1ないし乙5の4はミズホによる会報とのことであるが、これらの商品カタログ及び会報が要証期間内に対外的に頒布されたかどうかは不明である。仮にこれらの商品カタログ及び会報が要証期間内に対外的に頒布されていたものであったとしても、いずれも本件商標と同一又は社会通念上同一とはいえないものである。
(2)本件商標と本件使用態様AないしCが社会通念上同一といえるかについて
ア 本件商標は上段にアルファベット文字の「LEAF」を大きく記載し、その下段に片仮名の「リーフ」をより小さいフォントで記載した2段書きにした構成態様からなる。「LEAF」は「葉」を意味する極めて平易な英単語であり、本件商標からは「(植物の)葉」という単一の観念を容易に想起させるものであるといえる。
イ 本件使用態様Aは「リーフLAリキッドアミノ」と表示されており、アルファベット文字「L」の中にリキッド、アルファベット文字「A」の中に「アミノ」なる記載がまとまり良く配置された構成態様からなるものである。
ウ 本件使用態様Bは「リーフ・A液材(3kg)」と表示されており、「リーフ」と他の要素である「・A液材(3kg)」がまとまり良く結合している。
エ 本件使用態様Cは、「リーフLA」なる要素がまとまり良く構成されている。
オ 本件使用態様AないしCは、いずれも「リーフ」と他の要素をまとまり良く結合させた態様からなる商標であり、本件商標とは外観が大きく異なるものである。
また、本件使用態様AないしCは、いずれも「リーフ」の要素を含むものであるが、片仮名の「リーフ」からは、上記の「植物の葉」以外にも「reef(礁)」「lief(喜んで、快く)」といった多様な意味合いが想起されるものであり、インターネット辞書で「リーフ」は「外国語由来の言葉。主に英語の「Leaf」と「Reef」のことを指すが、日本語はLとRを区別できないため同じ表記になるだけで、両者はまったく違う単語である」として、(ア)英語で「葉」を表す言葉。茶葉などを指して使われる場合もある。表記は「leaf」、(イ)英語で「礁」を表す言葉。水面に見え隠れする岩やサンゴ礁のこと。表記は「reef」、(ウ)リーフレットのこと。宣伝・広告・案内・説明などのために、1枚の紙に刷られた印刷物である、などの複数の意味合いを有する旨が記載されている(甲2)。
本件使用態様AないしCは、「リーフ」以外にも多くの要素が結合された態様であるうえに、本件商標からは「(植物の)葉」という単一の観念を容易に想起させるものである一方、単に片仮名の「リーフ」のみが表示された場合、多様な観念を想起させるものといえ、ゆえに、本件商標から生じる観念と、本件使用態様AないしCから生じる観念は大きく異なるものである。
カ 商標法第38条第5項において、社会通念上同一の商標とは、「(ア)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、(イ)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、(ウ)外観において同視される図形からなる商標」とされており、特許庁発行の審判便覧53-01において、登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用は社会通念上同一であるとされている一方で、例えば「ピース」⇔「peace(平和)」「piece(小片)」、「ホール」⇔「hall(公会堂)」「hole(穴)」のように、同一の称呼を生ずる場合であって、平仮名及び片仮名とローマ字のいずれかに別異の観念が含まれるときの相互間の使用については、社会通念上同一の商標の使用には該当しない旨が明記されている。
本件商標については、下段に記載された「リーフ」が多様な意味合いを想起させる言葉である点を考慮すれば、「上段」及び「下段」から生じる観念が同一のものになるとはいえないものであるから、上記審判便覧のとおり、本件使用態様AないしCは、本件商標と社会通念上同一の商標についての使用といえないことは明らかである。
(3)「LEAF(リーフ)」を含む商標の併存登録例について
本件使用態様AないしCは「リーフ」に他の要素を結合させた態様からなる商標である。特許庁において本件商標の指定商品である「肥料」を指定商品及び役務に含み、「LEAF(リーフ)」を含む複数の商標が、本件商標と併存登録されている(登録第2017148号商標「LEAFPLUS」、登録第5080766号商標「ナチュラルリーフ」ほか)。
このような事実から、特許庁の審査において、本件商標と本件使用態様AないしCのように、「LEAF(リーフ)」と、他の構成要素を含む商標は非類似の商標であると認められてきたことからすれば、本件商標と本件使用態様AないしCは、非類似の商標であると認識されるものである。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙6(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由(要旨)
(1)株式会社ミズホが本件商標の通常使用権者であることについて
乙1に示すように、平成27年(2015年)3月9日に本件商標権者は、本件商標をミズホから譲り受けた。譲受時において、譲受人である本件商標権者の代表取締役はAであり、譲渡人であるミズホの代表取締役もAである。ミズホからの本件商標権者への譲渡は、無償譲渡であった(乙1の1~乙1の3)。
本件商標権者とミズホの代表取締役Aは、本件商標の譲受時から現在にいたるまでかわらず、また、本件商標権者およびミズホの住所は、愛知県名古屋市で同じである(乙1の1)。
(2)本件商標に関する通常使用権について
本件商標権者は、本件商標について、ミズホからの譲受時(平成27年(2015年)3月9日)に、ミズホに対して、期間の定めのない無償の通常使用権を許諾した。通常使用権の許諾合意時において、本件商標権者およびミズホの代表取締役はAであり、通常使用権の許諾合意は、黙示のものであった。
(3)ミズホによる商標「リーフA」、「リーフLA」の使用について
ミズホは、本件商標の譲渡前より、「リーフA液材」(被請求人商標1)を高級アミノ酸液肥に付し、販売していた(乙1の4(2008年9月カタログ)、乙1の5(2014年4月カタログ))。
また、本件商標の譲渡後においても、ミズホは黙示による通常使用権の許諾に基づき、「リーフA液材」を高級アミノ酸液肥に付したものを、少なくとも2021年11月ごろまで販売した(乙1の6(2015年9月カタログ)、乙1の7(2021年11月カタログ))。さらに、ミズホは、2022年から、「リーフA液材」(高級アミノ酸液肥)の後継版である葉面散布用アミノ酸液肥に「リーフLA」(以下「リーフLA」とする商標を「被請求人商標2」という場合がある。)を付したものの販売を開始し、現在においてもその販売を継続している(乙1の8(2022年6月カタログ)、乙1の9(2023年2月カタログ)、乙1の10(2024年6月カタログ))。
そして、ミズホによる葉面散布用アミノ酸液肥に被請求人商標2を付したものの販売は、3年を超え、現在に至っており、ミズホによる被請求人商標1及び2(以下被請求人商標1及び2をまとめていうときは単に「被請求人商標」という。)を付したアミノ酸液肥の販売は、15年を超えており、多くの農産物生産者に利用されている。
上記からもミズホが、本件商標についての通常使用権を保有すること、そして、通常使用権者として、被請求人商標を付したアミノ酸液肥を販売(使用)していることは明らかである。
そして、「リーフA液材」における「A」は、識別力の無いアルファベット1文字の付加であり、「液材」は、識別力のない商品形態を示すものであり、「リーフA液材」の使用は、「リーフ」の使用に該当する。また、「リーフLA」における「LA」は、識別力の無いアルファベット2文字の付加であり、「リーフLA」の使用は、「リーフ」の使用に該当する。
(4)要証期間におけるミズホによる本件商標の使用について
ア 本件商標を商品または商品の包装に付して販売(譲渡)した事実
乙2の1は、「リーフA液材」の商品写真、乙2の2は、「リーフA液材」用の包装(段ボール)の写真である。被請求人商標1が付された商品は「高級アミノ酸液肥」(乙1の4~7)であるから、当該商品は、本件商標の指定商品「肥料」に該当する。なお、「リーフA液材」は、上述したように、後継版である「リーフLA」に置き換わったため、現在は販売されていない。
乙2の1(商品写真)に示すものは在庫であり、被請求人商標1が付された包装(段ボール)(乙2の2)についても、同様に在庫となって残っていたものである。
乙2の3は、「リーフLA」の商品写真、乙2の4は、「リーフLA」用の包装(段ボール)の写真である。被請求人商標2が付された商品は「葉面散布用アミノ酸液肥」(乙1の8~10)であり、当該商品は、本件商標の指定商品「肥料」に該当する。
イ 乙3の1及び乙3の3(売上明細表)、乙3の2及び乙3の4(納品書(控)および請求書)に示すように、令和4年2月2日付けにて、ミズホは、株式会社中四国クボタに、「リーフA液材」を6個販売し、令和6年2月5日付けにて、ミズホは、株式会社ヰセキ九州に、「リーフLA」を6個販売した。これらの販売行為は、商品または商品の包装に標章を付したものを販売する行為であり、商標法第2条第3項第2号規定の使用行為に該当する。なお、当該売上明細表の印刷は、本年12月及び11月に行ったものであり、上述したように、ミズホは、要証期間を含む長期間に亘って、継続的に、日本国内において、「リーフA液剤」及び「リーフLA」の販売を行っていたものであるが、それぞれの商品の販売実績のうちの要証期間における一部である。
(5)本件商標を商品に関する広告等に付して展示または頒布した事実
乙1の7ないし10(カタログ)から明らかなように、ミズホは、要証期間内に、日本国内において、被請求人商標を、商品に関する広告、取引書類等に付して展示または頒布した。なお、これらのカタログは、ミズホの店頭にて展示、および持ち帰り自由に配布(頒布)している他、一般の方も自由に出入りできる展示会で、持ち帰り自由に配布(頒布)していたものである。なお、そのような展示会としては、例えば、乙4の1(展示会チラシ)、乙4の2および乙4の3(ウェブサイトの写し)に示す、株式会社ヰセキ中四国の展示会(2023年11月3日~5日開催)等が挙げられる。これらの行為は、商品に関する広告等を内容とする情報に標章を付して展示または頒布する行為であり、商標法第2条第3項第8号規定の使用行為に該当する。
また、ミズホは、乙5の1(平成8(1996)年11月会報、乙5の2(2024(令和6)年5月会報)に示すように、少なくとも1996年11月から要証期間を含む2024年5月まで発行していた会報「THEミズホ」において、被請求人商標を使用していた。当該会報は、上記した乙5の2の他、乙5の3(2022(令和4)年9月会報)および乙5の4(2023(令和5)年11月会報)に示すように、要証期間内において複数回発行されており、その中で被請求人商標2を付した葉面散布シリーズ一次製品についての掲載を行っている。
当該会報は、主な内容として「全国の農家の好事例(ミズホの商品を使って収穫量が増えた事例等)のレポート」を載せ、会員ないし潜在的な需要者(例えば、会員である代理店の取引者等)に対して商品を広める役割を果たしていたものであり、取引者・需要者の中から募った会員(個人および代理店等)に対して発送する他、一般の方も自由に出入りできる展示会(例えば、乙4の1~3に示す展示会)等で、持ち帰り自由に配布(頒布)していたものである。
これらの行為は、商品に関する広告等を内容とする情報に標章を付して展示または頒布する行為であり、商標法第2条第3項第8号規定の使用行為に該当する。
(6)本件商標をネットワークを通じた広告において使用した事実
乙6(ウェブサイトの写し)から明らかなように、ミズホは、要証期間を含む現在に至るまで継続的に、被請求人商標2を、ネットワークを通じた広告において使用している。なお、Wayback Machineによれば、被請求人商標2の最初の掲載は、2022年5月26日である。(乙6の1)。
これらの行為は、要証期間における商品に関する広告等を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為であり、商標法第2条第3項第8号規定の使用行為に該当する。
(7)本件商標と被請求人商標の社会通念上の同一性について
ア 被請求人商標について
上述したように、使用権者(株式会社ミズホ)は、要証期間を含む長期間にわたり、本件商標と社会通念上同一視できる被請求人商標を日本国内において使用している。
上述したように、被請求人商標1における「A」は、識別力の無いアルファベット1文字の付加であり、「液材」は、識別力のない商品形態を示すものであり、被請求人商標1の使用は、「リーフ」の使用に該当する。また、被請求人商標2における「LA」は、識別力の無いアルファベット2文字の付加であり、被請求人商標2の使用は、「リーフ」の使用に該当する。
さらに、説明すると、「「リーフ」A液材」の「A」部分は、当該製品に含まれる「アミノ酸(Amino acid)」の頭文字を意味し、「液材」部分は当該製品の態様(液状)を示すにすぎないものである。また、「「リーフ」LA」の「LA」部分は、商品ラベル(乙2の3および4参照)において「リキッドアミノ」と示されているように、「Liquid Amino」すなわち「アミノ酸を含む液状のもの」という意味を示すにすぎないものである。
上記事情に鑑みると、被請求人商標のいずれにおいても、「リーフ」部分が商標的に機能している(識別力および出所表示機能を発揮している)といえ、「リーフ」の使用に該当する。
イ 被請求人商標が本件商標と社会通念上同一視できる商標であることについて
本件商標は欧文字(明朝体風)の「LEAF」を上段に、片仮名(ゴシック体風)の「リーフ」を下段に配してなる、二段書きの構成を備える商標である。これに対して、被請求人商標は片仮名の「リーフ」を含む商標である。なお、「LEAF」に比べて、「リーフ」は、文字が若干小さいものの十分に大きく、ルビ、ふりがなといったものではない。
ここで、「LEAF」の語は、「(植物の)葉」を意味する英単語として一般的に認識されており、欧文字の「LEAF」部分から「リーフ」の称呼が自然に生じることからすると、「リーフ」の片仮名は「LEAF」の欧文字の表音を示したものとして、両者は一体的に把握され、本件商標全体から「リーフ」の称呼が生じ得るものと認められる。
そうすると、本件商標と被請求人商標の称呼は同一であることが認められる。
さらに、上述したように、「LEAF」の語は「(植物の)葉」を意味するところ、本件商標における「LEAF」の欧文字(上段部分)からは「植物の葉」という観念を生じる。また、本件商標の指定商品である第1類「肥料」は、一般的に栽培植物の生長に必要な栄養分として土壌に施す物質のことであり、そうすると、本件商標の指定商品である第1類「肥料」に係る取引者、需要者は、「リーフ」の片仮名(下段部分)を、上段の「LEAF」の欧文字の表音を示すものとして認識するとともに、「リーフ」の片仮名から「LEAF」の欧文字と同じく「植物の葉」という観念を生じると考えられる。
一方、被請求人商標である片仮名の「リーフ」のみからなる商標についても、これが上記指定商品(肥料)に使用されることを想定すると、これらの商品の用途や性能等に関連した印象が生ずることの結果として、「植物の葉」といった観念が生ずるものと認めることができる。
そうすると、本件商標と被請求人商標とは、同一の観念を生ずるものと認められる。
なお、審判便覧(53-01)においても、社会通念上同一と認められる商標の例として、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」を挙げており、これは、本件商標(LEAF\リーフ)と被請求人商標(リーフ)の関係においても該当する。すなわち、本件商標は、上段(「LEAF」の欧文字)および下段(「リーフ」の片仮名)が(特に指定商品との関係で)観念(植物の葉)を同一としており、被請求人商標「リーフ」はその一方(本件商標の下段を構成する「リーフ」の片仮名)であるといえる。
なお、知財高裁平成29年(行ケ)第10118号において、PRTIMES(上段)ピーアールタイムズ(下段)の登録商標に対して、「本件チラシ1の下段に記載されている「ピーアールタイムズ」の片仮名は,本件商標の下段の片仮名と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章であると認められる。」と判示している(知財高裁平成27年(行ケ)第10086号審決取消請求事件も同様に判断されている。)。
以上より、本件商標と被請求人商標とは、社会通念上同一視できるものである。
第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
(1)本件商標権者は、平成27年(2015年)3月9日に株式会社ミズホから本件商標の権利を譲り受けたものである。また、本件商標権者と株式会社ミズホの住所は同一であり、代表者も同一人である(乙1)。
(2)株式会社ミズホは、裏面に同社の名称及び住所の記載と「2022年6月現在」(乙1の8)及び「2023年2月現在」(乙1の9)の記載のある「Mリンシステム製品一覧 取扱説明書&作物別施肥基準」を表題とするカタログ(以下「本件カタログ」という。)の2葉目に、「リーフLA」(「L」と「A」の文字の上にはそれぞれ「リキッド」「アミノ」の片仮名文字が小さく書されている。)、その右側に「葉面散布用アミノ酸液肥」、「1ケース(3kg×6本)」、「指定配合肥料」等と記載し、「効果」として「アミノ酸が入った低臭タイプの葉面散布材です。葉肉を厚く、色つやを良くします。」との説明を掲載し、「リーフLA」の記載の下には、ポリタンク容器に「リーフLA」(「L」の黒文字中に白抜きで「リキッド」、「A」の黒文字中に白抜きで「アミノ」の記載がある。以下ポリタンク容器に付されたラベルの「リーフLA」は同じ。)が示されたラベルが貼付された商品写真を掲載している(乙1の8、9)。
なお、リーフLAは、2022年から販売を開始している(被請求人主張)。
(3)乙2の3の「リーフLA」の商品写真には、上記(2)の本件カタログと同じポリタンク容器に「リーフLA」(以下ポリタンク容器に付されたラベルの「リーフLA」を「使用商標」という。)が示されたラベルが貼付された商品写真があり、ラベルには、「アミノ酸補給葉面散布材」(以下「使用商品」という。)「NET3kg」の記載、製造日と思われる「2022.03」の記載、発売元として「株式会社ミズホ」と住所の記載がある。
(4)乙3の4の上部は、「24年2月5日」に株式会社ミズホから株式会社ヰセキ九州宛ての「納品書(控)」「No116379」の写しであり、品番・品名として「リーフLA」、数量「6本」の記載があり、下部は「24年2月29日」の株式会社ミズホから株式会社ヰセキ九州宛ての請求書の写しであり、「伝票日付 24/2/5」、「伝票No 116379」、「品名 リーフLA」、「数量 6本」の記載がある。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用者について
上記1(2)ないし(4)のとおり、株式会社ミズホは使用商標を付した使用商品を同人作成の本件カタログに掲載し、株式会社ミズホが株式会社ヰセキ九州に使用商品を販売していることから、使用商標の使用者は、株式会社ミズホといえる。
そして、上記1(1)のとおり、本件商標権者は、平成27年(2015年)3月9日に株式会社ミズホから本件商標の権利を譲り受けているところ、株式会社ミズホと本件商標権者の住所及び代表者は同一であることを踏まえれば、株式会社ミズホは本件商標の使用について黙示の許諾を受けた通常使用権者と推認できる。
よって、使用商標の使用者は、本件商標の通常使用権者である株式会社ミズホと認められる。
(2)使用商標について
本件商標は、別掲のとおり、「LEAF」の欧文字と「リーフ」の片仮名を上下二段に横書きした構成からなるところ、その構成からして、下段の片仮名は上段の欧文字の読みを表したものと無理なく理解できること、また、「LEAF」の欧文字は、「葉」を意味する英語として一般に親しまれた語といえることから、本件商標は「リーフ」の称呼を生じ、「葉」の観念を生じるものである。
一方、上記1(3)のとおり、使用商標は「リーフLA」の文字からなり、構成中の「LA」の文字にはそれぞれ「リキッド」「アミノ」の文字が小さく表されているところ、当該「LA」の文字は、上記1(2)の本件カタログの「リーフLA」の商品説明の「液肥」、「アミノ酸が入った・・」等の記載のとおり、使用商品が液体(リキッド)であり、アミノ酸(アミノ)配合であることを端的に表し、商品の品質を理解させる表示といえ、さらに指定商品を取り扱う業界では、欧文字2文字は、商品の品番や配合成分の略語等を表す文字として一般的に使用されているものであるから(例「バーディラッシュNN」https://www.jcam-agri.co.jp/product_g/eki.html 「HYPONeX ICL GT ハイKグリーン」https://www.baroness-direct.com/c/0000000100/0000000318/hp-001602 「国華園大菊液肥PK」 https://nafco-online.com/products/detail.php?product_id=10585757等)、使用商標の構成中の「LA」の文字部分は、自他商品の識別力がないかあるいは弱いものといえる。そうすると、使用商標は「リーフ」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を有する要部として認識、理解されるというのが相当である。
そして、使用商標の構成中の「リーフ」の文字は、本件商標の下段の文字部分である「リーフ」とその構成文字を同じくするものであり、その使用商品との関係よりすれば、「葉」を意味する「LEAF」を片仮名で表したものと理解されるものというのが自然であるから、本件商標と使用商標は、「リーフ」の称呼及び「葉」の観念を共通にするものといえ、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と判断するのが相当である。
(3)使用商品について
上記1(3)のとおり、使用商品のラベルには「アミノ酸補給葉面散布材」と示されており、同じ使用商品が掲載された上記1(2)の本件カタログには、「葉面散布用アミノ酸液肥」、「指定配合肥料」と説明されていることからすれば、使用商品は、葉面からアミノ酸を補給させる液体肥料と認められるものである。
したがって、使用商品は指定商品「肥料」の範ちゅうに含まれる商品である。
(4)使用時期及び使用行為について
上記1(3)の使用商品のポリタンク容器のラベルには、使用商標と製造年月と思われる「2022年3月」の記載があるから、使用商標を付した使用商品は、2022年3月には存在したことが認められる。そして、上記1(4)のとおり納品書(控)及び請求書には、「品名 リーフLA」「数量 6本」の記載があり、上記1(2)のとおり、本件カタログ(2022年6月及び2023年2月作成)には「リーフLA」の記載のほか、使用商標が付された使用商品の写真と、1ケースは「3kg×6本」との記載があることから、納品書(控)及び請求書と本件カタログの商品名と数量が一致するものである。
以上よりすれば、上記1(4)の納品書(控)及び請求書で取引された商品は、本件カタログ及び上記1(3)の写真に掲載の使用商品と同一の商品と推認できるものであり、使用商品6本(1ケース)が「24年2月5日」に株式会社ミズホから株式会社ヰセキ九州に納品されたと推認できるものである。また、上記1(4)の納品書(控)及び請求書に取引書類として不自然な点も見当たらない。
そして、2022年3月及び2024年(令和6年)2月5日は、要証期間内である。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間に本件審判の請求に係る指定商品「肥料」に含まれる「アミノ酸補給葉面散布材」について、本件商標を付したものを譲渡したものと認めることができる。
そして、この行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は、使用商標は「リーフLA」と一体で表されたものであり、「リーフ」からは「葉」以外の複数の観念を生じるから、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とはいえない旨主張する。
しかしながら、使用商標構成中の「LA」は、上記2(2)のとおり識別力がないか弱いものといえるから、「リーフ」の文字部分が要部といえるものであり、「リーフ」の文字が「葉」以外の複数の意味を有するとしても、「リーフ」の文字が「葉」の意味合いを表す語として広く親しまれており、また、使用商品が「アミノ酸補給葉面散布材」であることからすれば、需要者が当該文字から「葉」の観念を想起するというのが相当というべきである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「葉面散布用アミノ酸液肥」について、本件商標の使用をしていたことを証明したものといえる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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