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商標取消審判

2024-300629

アクアライン

審判番号
2024-300629
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願1999-069986
登録番号
4421328
請求日
2024年09月06日
審決日
2025年10月30日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【請求人】三原 舞緒
  • 【被請求人】株式会社 トミーインターナショナル
  • 【被請求人代理人】井澤 幹
  • 【被請求人代理人】弁理士法人井澤国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 小林 正和
  • 審判官 渡邉 あおい
  • 審判官 杉本 克治
分類
T132 .1 -Z (Z10)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法50条
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第1号、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第4421328号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第4421328号商標の指定商品中、第10類「医療用機械器具,スポイト」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第4421328号商標(以下「本件商標」という。)は、「Aqualine」の欧文字と「アクアライン」の片仮名を2段に横書きしてなり、平成11年8月4日に登録出願、第10類「医療用機械器具,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),耳栓,家庭用電気マッサージ器,耳かき」を指定商品として、同12年9月29日に設定登録されたものである。 そして、本件審判請求の登録は、令和6年9月26日にされたものであり、この登録前3年以内の期間(令和3年(2021年)9月26日~同6年(2024年)9月25日)を、以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張の要点 請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び令和6年12月9日付け答弁書(以下「第1答弁書」という。)に対する同7年2月12日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、その理由を要旨次のように述べている。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、第10類「医療用機械器具,スポイト」(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 第1答弁書における答弁に対する弁駁 (1)本件審判請求に係る指定商品のいずれかに商標を使用しているか否か 被請求人が提出した証拠の乙第1号証ないし乙第5号証、特に乙第2号証を見ると、この製品(Aqualine LC)は、金属製、セラミック製、又はプラスチック製のdental bracket(歯矯正の時に歯表面に取付ける歯矯正用部品)等を歯に取付けるためのadhesive(接着剤)であると説明されており、乙第2号証の7.の使用方法の説明を見ても歯の表面に塗布される接着剤であることが分かる。 また、乙第1号証の写真を見ると、その接着剤が容器に入っており、その容器は接着剤を歯表面に塗布するために接着剤を押し出すことができる構造となっている。つまり、容器は接着剤用の容器であり、接着剤の付属品である。 乙第1号証及び乙第2号証から、この製品は第5類の「歯科用接着剤」に該当することが分かる。なお、乙第3号証ないし乙第5号証だけ見ても製品(Aqualine LC)が何であるか分からない。 被請求人は、第1答弁書において、乙号証の製品は「第10類の医療用機械器具」の下位概念の「歯科用充てん用器具」に該当すると主張している。しかし、「歯科用充てん用器具」は「歯科用充てん剤(補綴物)」を充てんするために用いられる器具であり、製品(Aqualine LC)はその容器内部にゲル状のものが入っているところを見ると、被請求人は補綴物ではなくゲル状の歯科用充てん剤を充てんする器具を意図して「歯科用充てん用器具」と主張しているといえる。しかし、歯科用充てん剤は主に根管充填剤を指し、根管充填剤は根管治療において歯の根の中の空洞に充てんするものである。なお、「歯科用充てん材料」は第5類に属しており、仮に「Aqualine LC」の製品の容器の中にゲル状の「歯科用充てん剤」が入っているとしても、「Aqualine LC」の製品は第5類の「歯科用充てん材料」ということになり、第10類の医療用機械器具に該当するとはいえない。 繰り返しになるが、乙第2号証ではこの製品(Aqualine LC)は、金属製、セラミック製、又はプラスチック製のdental bracket(歯矯正の時に歯表面に取付ける歯矯正用部品)等を歯に取付けるためのadhesive(接着剤)であると説明されている。また、乙第1号証の写真の容器は接着剤の付属品の容器である。このため、この製品(Aqualine LC)は「歯科用接着剤」であり「医療用機械器具」ではない。この製品(Aqualine LC)が「歯科用充てん剤」や「歯科用充てん材料」ではないことと、この製品(Aqualine LC)がスポイトでもないことを念のため付言する。 (2)登録商標を使用しているか否か 商標法第50条第1項及び同条第2項で規定されているように、登録商標と同一商標(社会通念上同一も含む)を使用しているかが問題となる。被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第3号証及び乙第5号証を見ると、使用している商品は「Aqualine」ではなく「Aqualine LC」であり、乙第4号証にはAL1000等が記載されているだけである。「LC」等の末尾に付される文字を含めた商標全体がグレード、モデル等を含めて表すタイプの商標である場合もあるが、乙第1号証ないし乙第5号証を見ると他にグレード、モデル等はなく、一貫して「Aqualine LC」の商標が乙号証の製品に使用されている。このため、「Aqualine LC」が乙第1号証等に示されている製品の製品名であると考えるのが自然である。 そうすると、登録商標の「Aqualine」の部分に対し「Aqualine LC」は非類似商標となり、登録商標と同一商標(社会通念上同一も含む)ではない。 (3)第1答弁書の主張及び立証について 被請求人は、本件商標を、本件審判請求に係る指定商品に使用していると主張しているが、上記のとおり乙第1号証ないし乙第5号証ではそれが証明されておらず、また、乙各号証の製品に「Aqualine」の商標を使用していると主張しているが、上記のとおり乙第1号証ないし乙第5号証でも、それが証明されていない。 第3 被請求人の主張の要点 被請求人は、結論同旨の審決を求め、第1答弁書及び弁駁書に対する令和7年6月30日付け答弁書(以下「第2答弁書」という。)において、その理由を要旨、以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。 以下、証拠の記載に当たっては、乙第1号証を「乙1」のように簡略して記載する場合がある。 1 第1答弁書における主張 (1)本件商標の使用事実の要点 被請求人は、本件取消審判の予告登録日より遡って3年以内に日本国内において、本件商標を取消請求対象商品中、少なくとも「医療用機械器具」の下位概念に当たる「歯科用充てん用器具」について使用している。 ア 乙第1号証は、被請求人が製造し輸出販売している製品「歯科用充てん用器具」(以下「使用商品」という。)の写真である。使用商品には、本件商標と、製造・販売元である被請求人の海外用企業名「TOMY INTERNATIONAL INC.」が印字されており、製品番号「AL1000」も印字されている。 イ 乙第2号証は、使用商品の説明書である。 ウ 乙第3号証は、使用商品を製造委託している会社から被請求人宛ての請求書であって、請求書の項目に本件商標の印字が確認でき、請求書の日付はどれも本件取消審判の予告登録日より遡って3年以内のものである。 よって、これらの行為は商標法第2条第3項第1号、同項第8号に掲げる「使用」に当たるものである。 (2)取引書類の説明 ア 乙第4号証は、使用商品を輸出していることを示すインボイスである。インボイスの項目には、使用商品の製品番号である「AL1000」の印字が確認できる。 イ 乙第5号証は、使用商品の「輸出届証明書」であり、ここにも本件商標の印字が確認できる。 以上、本件商標を付した使用商品が、本件取消審判の予告登録前3年以内に取引された事実を裏付けるものである(商標法第2条第3項第2号)。 (3)まとめ 上述したごとく、本件取消審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が本件審判請求に係る指定商品中「医療用機械器具」について、登録商標と社会通念上同一の商標を使用していることが明らかである。 よって、請求人の請求は成り立たない。 2 第2答弁書における主張 (1)使用商品は、医療用機械器具に該当する複合商品である。 使用商品は、「歯科用充てん剤」を容器に封入した状態で販売される商品であるが、単なる充てん剤のチューブや包装に収まっているものではない。 使用商品は、施術において実際に使用される「注入型の医療器具」に充てん剤を組み込んだ状態で製品化されたものである。 このような商品形態は、単に充てん剤を販売するための便宜的な包装ではなく、歯科医療現場で実際に使用される医療用器具(充てん用のシリンジ・注入機器)を製品の不可欠な構成要素として含んでいる点に特徴がある。 すなわち、使用商品は、「充てん剤の販売」であると同時に、「充てん用の医療器具の販売」でもあるという複合的性質を有しており、医療用機械器具(第10類)に該当する。 (2)複合商品の取扱いと商標使用の認定基準 このような商品形態は、例えば「おもちゃ付き菓子(食玩)」のように、2つ以上の異なる分類要素(第28類+第30類)を併せ持つ商品と同様であり、商標実務上「複合商品」、「一体不可分の商品」として取り扱われるものである。 このような複合商品については、構成要素のいずれか一方が指定商品に該当する場合であっても、商品全体が一体として流通し、販売され、取引の対象となっていれば、「使用」の事実として評価されるのが判例・審査実務の基本的立場である(商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号参照)。 したがって、本件において、本件商標が付された注入器型の製品が、その機能上、形態上、流通上、単なる包装資材ではなく、「歯科用充てん用器具」としての実質を有している以上、商標法における「使用」は、第10類の指定商品に対して有効に成立すると解するべきである。 (3)請求人の主張の誤り 請求人は、使用商品が「歯科用充てん剤」であることをもって、本件商標の使用は第5類に限定されると主張するが、これは商品形態の実態を無視し、使用実績を過度にわい小化するものである。 実際には、使用商品は、単に薬剤を封入しただけのものではなく、製品全体として第10類に該当する医療用機械器具として取引されている実情がある。 (4)社会通念上同一について 「Aqualine LC」は、構成中の「Aqualine」が自他商品の識別標識として独立して看取され得るものであり、後半の「LC」は補助的表示に過ぎず、「Aqualine」と「社会通念上同一の商標」として評価されるべきである。 ア 「Aqualine」という語が商標の冒頭に配置され、目立つ印象を与える一方、「LC」の文字は、小文字に比して短く、説明的、補助的な構成に過ぎず、視認性の上で支配的印象を与えない。商標の構成全体として「Aqualine」の識別力が維持されており、当該文字が主たる識別標識として機能している。 イ 「Aqualine LC」は、「アクアライン エルシー」と発音され得るが、「Aqualine」部分が主要な称呼として理解され、商取引上も略称として「Aqualine」と呼ばれることが多く、補足語「LC」は識別力が弱いか、シリーズ名的、型番的用法にとどまる。 ウ 「Aqualine」は、水や清涼感といった観念を喚起しやすい造語風の語感で、強い観念的連想を持つ。「LC」は、これを変更、修飾するものではなく、独立した観念を付加するものでもない。 エ 以上より、使用商品は、「医療用機械器具」と「歯科用充てん剤」の双方の性質を有する一体不可分の複合商品であり、そのうち、第10類の指定商品に該当する構成要素について現に使用がある以上、商標法上の「使用」が成立することは明らかであり、また、「Aqualine」と「Aqualine LC」は社会通念上同一である。 第4 当審の判断 1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (1)乙第1号証は、被請求人が、製造し輸出販売している「歯科用充てん用器具」の写真とするもので、写真の右上部には外装の箱とおぼしき直方体(以下「使用商品の箱上部」という。)が表示されており、その表面に「Aqualine LC」の欧文字、その下部に小さく「Light Cure Orthodontic Adhesive」の欧文字、さらにその下部に「TOMY INTERNATIONAL INC.」の欧文字が表示されており、使用商品の箱上部の側面部には、「Aqualine LC」、「AL1000」、「2022-09」等の文字が表示されている。 また、使用商品の箱上部の下欄には、当該箱上部の下側部分に、商品(以下「収納商品」という。)とおぼしきものが、固定されるように構成された収納トレイ状の中に納められている表示があり、この収納商品は、右端及び中間部に突起がある黒色の棒状のものであって、その左側部分の白色着色部分に黒色文字で「TOMY INTERNATIONAL INC.」、「Aqualine LC」等の文字が表示されている。 なお、上記写真は、画像のみであって、当該写真の撮影日、撮影場所、撮影者を示す証左や記載は認められない。 (2)乙第2号証は、被請求人が、収納商品の説明書の写しとするもので、1葉目の上部に水色の複数の円を半円弧状に2重に配置した図形の左側に「Aqualine LC」の欧文字、及び、その下部に小さく「Light Cure Orthodontic Adhesive」の欧文字、さらにそれらの下部に「Aqualine LC is a light-cure adhesive resin for Orthodontic bonding for metal, ceramic and plastic brackets to tooth surface」の欧文字、その下部に「Aqualine LC」の欧文字を左側に、右側に青色で何らかの模様を描いた部分からなる図形と、それにかかるように収納商品等を配置し、さらには、その右側に、「AL1000」、「KIT SET」、「Bonding Paste」、「Etchant Gel」等の欧文字、そして、最下段に「TOMY INTERNATIONAL INC.」の欧文字が表示されている。 2葉目の左側上部に「Aqualine LC」の欧文字、そして、右側下部に「TOMY INTERNATIONAL INC.」の欧文字が、それぞれ表示されているほかに、数字で項目を設けて、欧文字にて表示がされている。 なお、乙第2号証は、外国語で作成された書面であるが、その翻訳文は提出されていない。 (3)乙第3号証は、被請求人が、使用商品を製造委託している会社から、被請求人に宛てた請求書の写しと主張するもので、1葉目の上部中央には「御請求明細書」の文字と、その下段に「22年5月20日」の文字、右側には「サンメディカル株式会社」の文字と、同社の住所及び電話番号の記載、同社の社判とおぼしき印影、それらの左側には「(株)トミーインターナショナル 御中」及び同社の住所の記載があり、その下段に「(自)22年4月21日~(至)22年5月20日」と、さらに、その下段の枠内に、「今回御買上額」、「今回御請求額」としてそれぞれ黒く塗り潰された部分が、その下段の枠内には、「月日」として「5.12」、「受注No 相手品番/品名」、「単位」及び「数量」として「077499 Aqualine LC Kit キット 67 00」、 「077499 Aqualine LC Kit キット 3 00」、「077375 Aqualine LC Bonding Paste 個 36 00」、「077375 Aqualine LC Bonding Paste 個 35 00」、「077375 Aqualine LC Bonding Paste 個 1 00」、「077375 Aqualine LC Bonding Paste 個 128 00」及び「077499 Aqualine LC Etchant Gel 個 40 00」との記載が、並びに、最下段の枠内に、「会長」、「社長」等の4つの役職名の下欄枠内に、それぞれ押印がなされている。 また、同2葉目は、上部中央の「御請求明細書」の下欄の日付が「23年8月18日」、その左右に記載された会社名等は1葉目と同じであり、その下段に「(自)23年7月21日~(至)23年8月20日」と、その2つ下の枠内には、「月日」として「8.9」、「受注No 相手品番/品名」、「単位」及び「数量」として「090153 Aqualine LC Kit キット 12 00」等、3段の記載がある。 さらに、同3葉目は、上部中央の「御請求明細書」の下欄の日付が「24年2月20日」、その左右に記載された会社名等は1葉目と同じであり、その下段に「(自)24年1月21日~(至)24年2月20日」と、その2つ下の枠内には、「月日」として「2.15」、「受注No 相手品番/品名」、「単位」及び「数量」として「096525 Aqualine LC Bonding Paste 個 2 00」等、4段の記載がある。 (4)乙第4号証は、使用商品を輸出していることを示すインボイスと主張するもので、1葉目の上部に、「TOMY INTERNATIONAL INC.」並びに欧文字による住所及び電話番号の記載、その下段には、中央に「INVOICE」及び右端部に「No.OL2223」と、その下段に「Tokyo,Japan 30th June 2022」の記載、並びに、中央の細線で挟まれた部分に「Description of Goods」の欧文字と、その下の直線を挟んだ下部に「AL1000 DENTAL CEMENT」の記載がある。 また、同2葉目においても、中央の細線で挟まれた部分に「Description of Goods」の欧文字と、その下の直線を挟んだ下部に、「AL1000 DENTAL CEMENT」の記載がある。 (5)乙第5号証は、使用商品の輸出届証明書と主張するもので、上部中央に「CERTIFICATE」の記載、中段付近に「Medical device:Aqualine LC / Kit:Aqualine LC Kit AL1000 / Components:Aqualine LC Bonding Paste AL1001 / Aqualine LC Etchant Gel AL1002 / Accessory: Aqualine LC Etchant Gel Needle Tips AL1003」の記載、並びに、外務省及び厚生労働省の担当者の証明用の記名押印がなされている。 2 判断 以上、上記1によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商品について ア 被請求人は、使用商品が、本件審判請求に係る指定商品のうち「医療用機械器具」の範ちゅうに属する「歯科用充てん用器具」であると主張するが、乙第1号証の写真には、箱状の画像上に「Light Cure Orthodontic Adhesive」の表示があり、「Orthodontic」が「歯列矯正」を意味する「orthodontics」の形容詞形の意味を、「Adhesive」が「接着剤」等をそれぞれ意味する(いずれも「新英和中辞典 第7版」株式会社研究社)ことから、当該画像中の「Orthodontic Adhesive」からは、「歯列矯正の接着剤」程の意味を容易に理解させるものである。 ところで、接着剤は、接着させるものの材質や、用途、原材料により、多様に分類されるものであるが、接着剤自体に含有される溶剤の揮発や、構成する物質が空気中の水分等に触れること等により硬化する、という接着剤の性質上、密閉されている等の包装容器に収納されて取引される商品も、多数存在するといえる。 そうとすれば、乙第1号証の写真は、画像下部の表示されている突起を有する黒色の棒状立体物が、歯科矯正用の接着剤を収納保存した容器であって、それを収納するトレイ状の容器に固定されて、使用商品の箱上部と当該箱上部に対となる箱の下側部分によって包装されて販売される状態の画像というべきであるから、乙第1号証の画像に表示されている商品は、「歯科矯正に用いられる接着剤」であるというべきである イ 乙第2号証は、外国語で記載されているもので、使用商品の説明書であるとしても、日本語の翻訳文が提出されていない等、その内容等については明確ではないものの、1葉目の上部に、「Aqualine LC」の欧文字のほかに、「Light Cure Orthodontic Adhesive」及び「Aqualine LC is a light-cure adhesive resin for Orthodontic bonding for metal, ceramic and plastic brackets to tooth surface」の文字があり、「Orthodontic Adhesive」及び「adhesive」、「for Orthodontic」の表示がされていることから、当該説明書の詳細については不明であるとしても、使用商品について、それが歯科矯正にかかる接着剤に関する説明がなされたものというべきである。 ウ そもそも、専ら歯科医師が使用する医療関係品には、器具器械と材料的なものとがあるが、「歯科用材料」は、専ら歯科医師が使用する医療関係品のうち、材料的な商品で、薬剤を除いたものが該当するところ、「歯科矯正に用いられる接着剤」は、専ら歯科医師が使用するものであって、器具器械ではなく、材料的なものというべきであって、これは、「専ら歯科医師が使用する医療関係品のうち、材料的な商品であって、薬剤を除いたもの」(「商品及び役務の区分解説[国際分類第12-2025版対応]」(特許庁商標課編)の、「第5類」、「歯科用材料(01C03)」参照。)に当たるといえ、「歯科矯正」が、歯科医師が行う治療、処置の類いの一といえることからしても、商標法施行規則別表の第5類に掲載の「歯科用材料」の範ちゅうの商品というべきである。 したがって、使用商品は、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうの商品「歯科用充てん用器具」ということはできない。 エ ところで、「歯科用充てん用器具」について見てみると、「許可医薬品等の副作用又は許可生物由来製品等を介した感染等による健康被害の迅速な救済を図り、並びに医薬品等の品質、有効性及び安全性の向上に資する審査等の業務を行い、もって国民保健の向上に資することを目的とする」(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第3条参照)独立行政法人医薬品医療機器総合機構が開設するウェブサイト「医療機器基準等情報提供ホームページ」には、「名称等 歯科用充填器」について「類別 器65 歯科用充填器」、「中分類 歯科診療室用機器」及び「定義 歯科用セメント、歯科用充填用コンポジットレジン、歯科用支台築造材料、歯科用小窩裂溝封鎖材、歯科用裏層材料、歯科用覆髄材料、歯科用仮封材等の歯科材料又は覆覃剤等の歯科用医薬品を歯牙に充填、塗布するため等に用いる再使用可能な手用器具をいう。ただし「歯科用圧入充填器」に該当するものを除く。」との記載があり(https://www.std.pmda.go.jp/scripts/stdDB/JMDN/stdDB_jmdn_resr.cgi?Sig=1&Select=1&jmdn_no=3131&kjn_no=0)、また、厚生労働省のウェブサイト中、「特定保険医療材料の定義について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219121.pdf)には、その176頁に「049 歯科充填用材料I (1) 定義 薬事承認又は認証上、類別が「歯科材料(5)歯科用接着充填材料」であって、一般的名称が「高分子系歯科小窩裂溝封鎖材」、「医薬品含有高分子系歯科小窩裂溝封鎖材」、「歯科充填修復用コンポジットレジン材キット」、「歯科充填用コンポジットレジン」、「医薬品含有歯科充填用コンポジットレジン」、「歯科小窩裂溝封鎖用グラスポリアルケノエート系セメント」、「医薬品含有歯科小窩裂溝封鎖用グラスポリアルケノエート系セメント」、「歯科小窩裂溝封鎖用グラスポリアルケノエート系レジンセメント」、「医薬品含有歯科小窩裂溝封鎖用グラスポリアルケノエート系レジンセメント」、「歯科用充填材料キット」、「医薬品含有歯科用充填材料キット」、「歯科充填用グラスポリアルケノエート系レジンセメント」、「医薬品含有歯科充填用グラスポリアルケノエート系レジンセメント」、「歯科間接修復用コンポジットレジン」、「医薬品含有歯科間接修復用コンポジットレジン」、「歯科間接修復用コンポジットレジンキット」、「医薬品含有歯科間接修復用コンポジットレジンキット」、「歯科用多目的グラスポリアルケノエートセメント」、「医薬品含有歯科用多目的グラスポリアルケノエートセメント」又は「歯科充填用アクリル系レジン」であること。」との記載がある。 これらのウェブサイトの開設者が、公的機関といえることや、公表されているサイトの名称等を考慮すれば、当該ウェブサイトにおける表示内容は、医療用機械器具や歯科用材料についての考え方や定義を明らかにしているものといえ、この点を踏まえて、上記各サイトの記載をみたときには、「歯科用セメント、歯科用充填用コンポジットレジン」等の歯科用材料を歯牙に充填、塗布するため等に用いる再使用可能な手用器具について、歯科用充てん用器具とされているというべきである。 そして、「専ら歯科医師が使用する医療関係品のうち「器械器具」に該当する商品は、第10類「医療用機械器具」中の「歯科用機械器具」に属」(前掲「商品役務の区分解説」)するとされていることからしても、歯科用材料を歯牙に充填、塗布するため等に用いる再使用可能な手用器具である「歯科用充てん用器具」が、第10類「医療用機械器具」に属する「歯科用機械器具」の範ちゅうに含まれるものであって、歯科医師が歯科治療において歯牙に充填、塗布するための機能を有する容器に格納された歯科用材料は、「歯科用充てん用器具」に該当するものではない。 これに関して、被請求人は、第1答弁書及び第2答弁書において種々述べるも、使用商品が再使用可能な手用器具であることは何ら述べておらず、被請求人の主張及び同人の提出に係る全証拠を通じても、使用商品が再使用可能な手用器具であることを確認することができないものであるから、この点についての被請求人の主張は採用することができない。 また、被請求人は、使用商品が、単に薬剤を封入しただけのものではなく、施術に不可欠な、機器としての使用可能性、機能性を備えた充てん器具であり、製品全体として医療用機械器具として取引されている実情があると主張するが、使用商品又はそれに類する商品が、一般に医療用機械器具として取引されている実情を示す証拠の提出はなく、職権により調査しても、当該実情を見いだすことはできなかったため、当該被請求人の主張も採用することができない。 オ 被請求人は、使用商品は医療用機械器具に該当する複合商品であって、「歯科用充てん剤」を容器に封入した状態で販売される商品であるが、単なる充てん剤のチューブや包装に収まっているものではなく、施術に不可欠な「機器としての使用可能性・機能性」を備えた充てん器具であり、製品全体として医療用機械器具として取引されている実情がある旨、また、複合商品については、構成要素のいずれか一方が指定商品に該当する場合であっても、商品全体が一体として流通し、販売され、取引の対象となっていれば、「使用」の事実として評価されるのが、判例、審査実務の基本的立場であり、商標法上の「使用」が成立することは明らかである旨、さらには、被請求人は、使用商品は実際に使用される「注入器型の医療器具」に充てん剤を組み込んだ状態で製品化されたものであり、充てん剤販売のための便宜的包装ではなく、歯科医療現場で実際に使用される充てん用シリンジ・注入機器である医療用器具という不可欠な構成要素を含んでいる点に特徴があり、複合的性質を有する商品で、医療用機械器具に該当する旨主張する。 しかしながら、被請求人にかかる使用商品が、医療用機械器具として取引されている実情は、提出された全証拠を通じてみても、それを具体的に明らかにした証拠の提出が認められず、使用商品が、医療用機械器具として取引されているとは認められない。 カ そして、使用商品は、歯科矯正に用いられる接着剤といえるところ、接着剤としての性質上、保存のための容器から使用する器具への移し替えの際に、同剤が空気に触れて乾燥する、あるいは、容器内に張り付いてしまうなどの弊害が生じるおそれもあるというべきで、接着剤の包装容器部分に、施術の際に注入のために押し出したり、注入場所に注入しやすくするなどの容器の工夫は、容器に封入した接着剤についての、他社商品との優位性、差別化を図る程度の工夫や装飾とみるべきであって、医療用機械器具としての性質を有しているというべきではない。 したがって、この点に関する被請求人の主張は採用できない。 (2)使用者について 乙第1号証及び乙第2号証には、被請求人の法人名称の英語表記と認められる「TOMY INTERNATIONAL INC.」の表示があるから、使用者は、本件商標の商標権者である株式会社トミーインターナショナルである。 (3)小括 上記(1)及び(2)のとおり、使用者は本件商標の商標権者であることは認められるが、使用商品は、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属さないものであるから、被請求人は、本件商標の使用を証明したことにならない。 3 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をした事実を証明したと認めることはできない。 また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、その指定商品中「結論掲記の指定商品」について、商標法第50条の規定により登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-300629

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