商標取消審判
2024-300549
エイニミルク、エイツーミルク
- 審判番号
- 2024-300549
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2017-117493
- 登録番号
- 6044548
- 請求日
- 2024年08月06日
- 審決日
- 2026年05月19日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ファーマーズホールディングス 株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 【被請求人】ザ エイツー ミルク カンパニー リミテッド
- 【被請求人代理人】田中 克郎
- 【被請求人代理人】稲葉 良幸
- 【被請求人代理人】廣中 健
- 【被請求人代理人】太田 雅苗子
- 審判長/審判官
- 審判長 真鍋 伸行
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 山田 和彦
- 分類
- T132 .1 -Y (W29)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第2号、商標法第2条第3項第8号、商標法第38条第5項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6044548号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6044548号商標(以下「本件商標」という。)は、「a2 MILK」の文字を標準文字で表してなり、平成29年9月5日に登録出願、第29類「粉乳,牛乳,クリーム,バター,チーズ,ヨーグルト,乳飲料」及び第5類の商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同30年5月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年8月23日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和3年(2021年)8月23日から同6年(2024年)8月22日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第29類「粉乳,牛乳,クリーム,バター,チーズ,ヨーグルト,乳飲料」(以下「請求に係る指定商品」という。)について取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び令和6年12月3日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同7年1月16日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
なお、以下、証拠の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」のように簡略して表記する場合があり、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第5号証には本件商標が要証期間に使用されていることは示されていない。
(1)本件商標について
本件商標は、「a2 MILK」の欧文字及び数字からなる。甲第1号証は、2011年8月15日の内閣府、食品安全委員会の資料である。そこには、オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)が公表したファクトシートの概要が記載されており、その中に「牛乳中のたん白質の約80%はカゼインたん白質である。(中略)主なカゼインの一つはベータカゼインである。様々な型のベータカゼインが存在するが、最も一般的なのはベータカゼインA1(この型を多く含むミルクはA1ミルクとして知られている)及びベータカゼインA2(このタイプを多く含むミルクはA2ミルクとして知られている)である。」という記載がある。すなわち、「ベータカゼインA2を多く含むミルクはA2 Milk(原文の英語)として知られている」のである。甲第2号証ないし甲第4号証にも同じことが記載されている。また、甲第5号証ないし甲第8号証に示されているように、日本においてもA2ミルク(A2牛乳)という言葉が、乳中のベータカゼインがA2タイプのミルク(牛乳)のことであることが広く知られている。
本件商標は、語頭が小文字であるが、称呼「エイツーミルク」は「A2 Milk」「A2ミルク」と同一であって、「A2 Milk」とはつづりも同じであるので、需要者は本件商標が「A2 Milk」「A2ミルク」のことを指すものと認識していると考えられる。
したがって、語頭が小文字ではあるものの、本件商標は、「A2 Mi1k」「A2ミルク」という普通名称(乳中のベータカゼインがA2タイプのミルク(牛乳))を表示した商標であって、需要者にそのように認識をされているものである。
(2)本件商標の使用について
被請求人が提出した乙第1号証及び乙第2号証は、被請求人を説明する資料である。被請求人は、本件商標の使用について乙第3号証ないし乙第5号証により説明しているので、以下乙第3号証ないし乙第5号証について検証を行う。
ア 乙第3号証について
乙第3号証が示すのは、オンラインショッピングサイト「UBuy」のホームページである。当該ショッピングサイトは、日本語で表示されているものの、被請求人が運営するものではない。また、いずれにも被請求人の住所が記載されていない。したがって、オンラインショッピングサイト「UBuy」に、被請求人の商品が掲載されていても、そのことをもって、被請求人の本件商標が使用されているとはいえない。
なお、以上のことは、本件商標について別途請求されている取消2024-300064の、審判官合議体による暫定的見解と同様である(甲9)。
イ 乙第4号証について
被請求人は、後記する第3(2)アのとおり、乙第4号証を参照し、「当該ページには「a2 Milk」の表示がされている他、表示されている商品の包装には「a2 Milk」の文字が表示されている(乙4の2)。」と主張している。
乙第4号証の1の上部には、コップに注がれる牛乳を背景とした、商品の包装を示すと思われる画像が示されている。当該画像の下部には、青地に、太字で比較的大きなフォントで「Full Cream milk」という文字が表記され、その下に小さなフォントで「Premium instant a2 Milk powder」という文字が表記されている。Weblio英和辞書(甲10~甲12)によると、「Premium」には、「品質がよくて高価な、高級な」という意味があり、「instant」には、「インスタント食品」という意味があり、「powder」には、「粉、粉末」という意味がある。「a2 Milk」は、上記(1)で説明したとおり、「A2 Milk」「A2ミルク」という普通名称(乳中のベータカゼインがA2タイプのミルク(牛乳))の表示である。
してみると、乙第4号証の1の上部の画像中に、小さく表記された「Premium instant a2 Milk powder」という文字は、「特別高級(高品質、高価)なインスタントA2ミルク粉末」という意味であり、商品の説明にすぎない。
ところで、令和3年(行ケ)第10076号(知財高等裁判所、甲13)では、「商標法上、商標の本質的機能は、自他商品又は役務の識別機能にあると解するのが相当であるから(同法3条参照)、同法50条にいう「登録商標の使用」というためには、当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されることを要すると解するのが相当である。」と判示されている。
この判示に照らしてみると、商品の説明にすぎない上記の「Premium instant a2 Milk powder」という文字は、商品の出所を表示するものではなく、自他商品を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されているとはいえないため、登録商標の使用には当たらない。
そして、乙第4号証の1の下部には、目立たないグレーのフォントで小さく「a2 Milk」と表記されている。この表記は、乳中のベータカゼインがA2タイプのミルク(牛乳)を意味しているにすぎず、商品の出所を表示するものではなく、自他商品を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されているものではないため、登録商標の使用には当たらない。
また、乙第4号証の1に示される上記包装には、被請求人の住所の表記がない。この理由からも、被請求人の登録商標の使用が認められない。
さらに、乙第4号証の1は、表記されている日本語が不自然である。例えば、上記のグレーのフォントの「a2 Milk」の下には、大きなフォントで、「a2フルクリームのオーストラリアの輸入からの即刻の粉乳1つのkg-カルシウム、自然なA2タンパク質、気密の袋で高い」という不自然な日本語が表記されている。このようなウェブページを見た、日本語を母国語とする需要者は、意味がわかりにくい日本語に注意が向いてしまい、仮にウェブページ内に商標が表示されていたとしても、商標が表示されていることにすら気付かない可能性が高い。
したがって、仮にウェブページ内で商標が使用されているとしても、その商標の使用は、自他商品を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様での使用とはいえない。この理由からも、乙第4号証の1における「a2 Milk」の表記は、登録商標の使用には当たらない。
ウ 乙第5号証について
被請求人は、後記する第3(2)イのとおり、乙第5号証を参照し、「当該ページに表示されている商品の包装には、「a2 Milk」の文字が表示されている(乙5の2)。」と主張している。
乙第5号証の2を参照すると、乙第5号証の1には、商品の包装を示すと思われる画像が示されている。当該画像には、中段部付近に、2段書きで「A2 PROTEIN」(A2タンパク質)と表記された牛、並びにそれぞれ2段書きで「A1 PROTEIN」(A1タンパク質)及び「A2 PROTEIN」(A2タンパク質)と表記された牛が、左右に並んで表示されており、その上方には「The a2 Milk difference」(A2ミルクの違い)との表記がある。また、上記牛の下方には、「a2 comes from cows that naturally produce only the natural a2 protein and no a1」(a2は、生まれつき天然のa2タンパク質のみを生産し、a1を生産しない、牛に由来する)との表記、及び「Published research suggests a2 Milk may help avoid stomach discomfort in some people」(出版された研究は、a2ミルクが、一部の人々において胃の不快感を防ぐのを助ける場合があることを示している)との表記がある。以上の表記は、上記2(1)のことと同様の、乳中のベータカゼインがA2タイプのミルク(牛乳)である場合の効能を説明している。すなわち、乙第5号証の1に示された上記画像に示されているのは、商品ないし商品の効能の説明にすぎず、そこに表記されている「a2 Milk」は、商標としての表示ではない。
さらに、乙第5号証の1に示される上記包装には、被請求人の住所の表記がない。この理由からも、被請求人の登録商標の使用が認められない。
(3)むすび
以上説明したように、本件商標を被請求人が要証期間内に使用した事実は示されていない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書及び令和8年1月26日付け審尋(以下「審尋」という。)及び弁駁書に対する同年3月19日付け回答書(以下「回答書」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁書における主張
請求人は、審判請求書において、本件商標が、要証期間に、請求に係る指定商品について、使用されていない旨を主張している。
しかしながら、以下に述べるように、本件商標は、被請求人が、請求に係る指定商品中、「粉乳,牛乳」について、要証期間に使用している。
(1)被請求人について
被請求人は、ニュージーランドにおいて2000年に設立されたA2コーポレイションリミテッドの承継人として、牛乳、粉ミルクその他の乳製品、酪農製品の製造・販売を行うニュージーランド有数の企業である。被請求人が開発し、販売する乳製品は、A1型と呼ばれるプロテインを含有しないことによって、消化しやすいなどの優れた特徴を有することから市場で人気を博し、本国の二ュージーランドはもとより、オーストラリア、中国、韓国、米国等でその商品を販売するなど、活発な事業活動を行っていることが我が国においても報道されている(乙1、乙2)。
(2)本件商標の使用について
本件商標は、「a2 MILK」の欧文字及び数字からなるところ、本件商標を付した商品「粉乳,牛乳」が日本国内において販売されている。
以下では、被請求人が本件商標をその指定商品である「粉乳,牛乳」について要証期間に使用したことを示す資料を提出する。
ア 本件商標を付した商品「粉乳」が日本国内において販売され、宣伝・広告されていること
オンラインショッピングサイト「Ubuy」(乙3)は、日本国外で販売されている商品について、日本に在住する顧客からの受注を受け、販売し、購入者指定の日本の住所に配送するサービスを提供している越境eコマースウェブサイトであるところ、以下に示すとおり「Ubuy」のウェブサイト上で、本件商標を付した被請求人の商品が、日本の需要者向けに展示され、宣伝広告されている事実がある。
すなわち、乙第4号証の1は、「Full cream milk」との商品名で販売されている被請求人の商品「粉乳」の販売画面である。
「製品詳細」の欄には、「3歳以上の子供、十代の若者、大人に適しています」との記載があり、「アイテムフォーム」として「粉末」とあるから、当該商品は一般消費者向けの粉末ミルクであることがわかる。
当該ページには「a2 Milk」の表示がされている他、表示されている商品の包装には「a2 Milk」の文字が表示されている(乙4の2)。乙第3号証に示す「Ubuy」のウェブサイトでは、ウェブページの右上部分に配送先の国と言語を選択できるプルダウンメニューがあり、これを操作することによって、ウェブページ内の言語が日本語で表示され、価格も日本円で表示される。乙第4号証の1においても商品の価格が日本円で「JPY7952」と表示され、「カートに追加」のボタンを押すことで、商品が買物かごに追加される。
これらのウェブページは日本語で表示され、取引通貨も日本円で表示されるから、「Ubuy」のウェブサイトは日本において「商業的効果(commercial effect)」を有するものと認められる。したがって、かかるウェブページ上における商標の使用は、日本国内における商標の使用行為に当たる。
そうすると、乙第4号証の1において商標「a2 Milk」がその包装容器に付された商品を譲渡のために展示する行為は、日本国内において、「商品の包装に標章を付したものを譲渡のために展示する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当し、「商品に関する広告」ないし「商品に関する取引書類」を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。そして、当該ウェブページに表示されている商品の包装に付されている「a2 Milk」は、本件商標「a2 MILK」と欧文字の字体(大文字・小文字)のみを異にするものであって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標(商標法第38条第5項)である。
乙第4号証の1は本件審判の請求後である令和6年11月8日に「Ubuy」の表示画面を印刷したものではあるが、当該頁の「製品詳細」の欄には「Date First Available」として「2021-03-27 02:36:56」と記載されているから、本件要証期間である2021年3月1日以降今日に至るまで被請求人の商品は継続して販売されているものである。
したがって、乙4号証の1に示すようなインターネット上での商標の使用行為が、本件審判の予告登録日よりも前から継続して行われていたものであることは明らかである。
イ 本件商標を付した商品「牛乳」が日本国内において販売され、宣伝・広告されていること
乙第5号証の1は、「GRASS FED」との商品名で販売されている被請求人の商品「牛乳」の販売画面である。
当該ページに表示されている商品の包装には、「a2 Milk」の文字が表示されている(乙5の2)。
乙第3号証に示す「Ubuy」のウェブサイトでは、ウェブページの右上部分に配送先の国と言語を選択できるプルダウンメニューがあり、これを操作することによって、ウェブページ内の言語が日本語で表示され、価格も日本円で表示される。乙第5号証の1においても商品の価格が日本円で「JPY1908」と表示され、「カートに追加」のボタンを押すことで、商品が買物かごに追加される。
これらのウェブページは日本語で表示され、取引通貨も日本円で表示されるから、「Ubuy」のウェブサイトは日本において「商業的効果(commercial effect)」を有するものと認められる。したがって、かかるウェブページ上における商標の使用は、日本国内における商標の使用行為に当たる。
そうすると、乙第5号証の1において商標「a2 Milk」がその包装容器に付された商品を譲渡のために展示する行為は、日本国内において、「商品の包装に標章を付したものを譲渡のために展示する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当し、「商品に関する広告」ないし「商品に関する取引書類」を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。そして、当該ウェブページに表示されている商品の包装に付されている「a2 Milk」は、本件商標と欧文字の字体(大文字・小文字)のみを異にするものであって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標(商標法第38条第5項)である。
乙第5号証の1は本件審判の請求後である令和6年11月8日に「Ubuy」の表示画面を印刷したものではあるが、当該頁の「製品詳細」の欄には「Date First Available」として「2023-04-01 20:00:08」と記載されているから、要証期間である2021年3月1日ないし2024年3月1日までの期間に相当する2023年4月1日以降今日に至るまで、被請求人の商品は継続して販売されているものである。したがって、乙5号証の1に示すようなインターネット上での商標の使用行為が、本件審判の予告登録日よりも前から継続して行われていたものであることは明らかである。
上記ア及びイにおいて説明したとおり、被請求人が、要証期間に、日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標を付した商品「粉乳,牛乳」を譲渡のために展示し、かかる商品について「商品に関する広告」ないし「商品に関する取引書類」を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為を行っていたことは明らかである。
2 回答書における主張
(1)審尋に対する回答
乙第5号証について
乙第6号証は、乙第5号証に示した商品パッケージの正面、背面及び側面を撮影したものである。
乙第6号証の3頁目に示す「側面」において赤い枠で囲った部分には、米国コロラド州ボールダーに所在する「ザ エイツー ミルク カンパニー」の名称及び住所等の表示がある。
また、乙第7号証は本件商標権者の「2024年年次報告書」であるところ、その133頁にあるとおり、「ザ エイツー ミルク カンパニー」は、米国に所在する本件商標権者の100%子会社である。また、乙第7号証の68頁から71頁、146頁によれば、その役員D氏も共通していることがわかる。また、「ザ エイツー ミルク カンパニー」の住所は、本件商標権者の米国市場向けウェブサイトの「Terms of Use」(利用規約)のページの末尾に連絡先として記載されている住所と同一である(乙8)。また、「ザ エイツー ミルク カンパニー」の住所は第三者が提供する事業者情報ウェブサイトに表示されている住所とも一致している(乙9)。
したがって、乙第5号証の商品包装上における商標の使用は、本件商標権者の使用にあたるものと十分に認められる。仮に、本件商標権者の使用に当たらないとしても、本件商標権者の100%米国子会社である「ザ エイツー ミルク カンパニー」が、本件商標権者から許諾を受けた通常使用権者として使用するものと認められるものである。
以上より、本件商標権者(被請求人)ないし本件商標権者から許諾を受けた通常使用権者である「ザ エイツー ミルク カンパニー」が、要証期間である2023年(令和5年)4月1日に、日本国内において請求に係る指定商品中「牛乳」に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して、インターネット(電磁的方法)により提供したものと、優に認めることができる。
(2)弁駁書に対する意見
ア 本件商標は商品の普通名称ではないこと
請求人は、2011年8月15日の内閣府、食品安全委員会のウェブサイト上の資料を根拠として、本件商標は「乳中のべータカゼインがA2タイプのミルク(牛乳)」の普通名称であると主張している。しかし、本件商標については特許庁による審査を経て十分に自他識別力を発揮する商標として登録が認められたものであり、かつ、登録日から5年を経過しているものでもある。請求人が指摘する資料は、食品安全委員会のホームページにアクセスし、その中に表示されている「世界の情報(検索ページ)」をクリックし、検索キーワードとして当該資料の番号を入力する等して初めて表示されるもので、かつ、13年も前の日付のものであり、一般の需要者、取引者が目にする機会はないと思われるものである。また、当該資料に付されている資料のリンクも、情報源として表示されているURLも、既にリンク先が表示されない状態である。よって、かかる資料の存在をもって本件商標が商品の普通名称であるということは到底できない。
イ 「Ubuy」における商標の使用は、被請求人の本件商標の使用であること
請求人は、オンラインショッピングサイト「Ubuy」に、被請求人の商品が掲載されていても、そのことをもって、被請求人の本件商標が使用されているとはいえない旨主張している。
しかし、本件商標について別途請求された取消2024-30064における令和7年2月3日付回答書において被請求人が述べたように、商標法第50条第1項の審判において証明されるべきは、登録商標と社会通念上同一の商標について商標の「使用」があったことにある。この点、商標法第2条第3項第2号は「商品の包装に標章を付したものを譲渡若しくは引き渡しのために展示する行為」(以下、「展示する行為」という。)を、また、同項第8号は「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(以下、「電磁的方法により提供する行為」という。)を、それぞれ商標の「使用」と定義しているところ、これらの「展示する行為」又は「電磁的方法により提供する行為」が商標権者自身によって行われる場合のみならず、「Ubuy」のような流通業者等が当該商品を販売等するにあたって「展示する行為」や「電磁的方法により提供する行為」を含むと解するべきである。
この点、知的財産高等裁判所平成25年3月25日判決は、「商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情のある場合はさておき、商標権者等が、その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり、登録商標を使用する場合のみを指すのではなく、商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当である。このように解すべき理由は、今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば、商品を製造した者が、自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず、むしろ、中間流通業者が介在した上で、消費者に販売することが常態であるといえるところ、このような中間流通業者が、当該商品を流通させる過程で、当該登録商標を使用している場合に、これを商標権者等の使用に該当しないと解して、商標法50条の不使用の対象とすることは、同条の趣旨に反することになるからである。」と判示している(乙10)。知的財産高等裁判所平成25年1月10日判決においても、「商標権者等が商品に付した商標は、その商品が転々流通した後においても、当該商標に手が加えられない限り、社会通念上は、当初、商品に商標を付した者による商標の使用であると解される」(乙11)とされている。
裁判所によるこれらの判示に従えば、商標権者が商標を付した商品が、流通経路を転々とする中で、商標権者以外の第三者(流通業者)によって、販売(譲渡)され或いは展示されるその行為は、商品に商標を付した者による商標の使用であると解すべきである。
乙10の判決において述べられているように、今日の取引実情に照らせば、商品を製造した者が、自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず、むしろ、中間流通業者が介在した上で、消費者に販売することが常態であるといえるから、オンラインショッピングサイト「Ubuy」が本件商標権者自身によって運営されるショッピングサイトではないことを理由として、当該ショッピングサイトにおいて本件商標権者が市場においた商品を「展示する行為」や、これに関する広告等を「電磁的に提供する行為」が本件商標権者による商標の使用に当たらないということはできない。
ウ 本件商標は商標として表示されていること
請求人は、乙第4号証及び乙第5号証によって被請求人が示した本件商標の使用について、(ア)「Premium instant a2 Milk powder」という文字は、商品の説明にすぎず、商品の出所を表示するものではなく、登録商標の使用には当たらない、(イ)「a2 Milk」との表記は、商品の出所を表示するものではなく、登録商標の使用には当たらない、(ウ)包装に被請求人の住所の表記がないから、被請求人の登録商標の使用が認められない、(エ)仮にウェブページ内に商標が表示されていたとしても、商標が表示されていることにすら気付かない可能性が高い、(オ)乙5号証の1において示されているのは、商品ないし商品の効能の説明にすぎず、そこに表記されている「a2 Milk」は、商標としての表示ではない、などと主張している。しかし、「a2 Milk」は商標登録原簿に登録された被請求人の登録商標にほかならず、そもそも牛乳の普通名称ではないから、請求人の主張は当たらず、乙第5号証においては、「a2 Milk」にこれが登録商標であることを示す(R)マークと共に付されているから、これが商標(出所表示)として使用されているものであることは明らかである。また、商品の包装上に商標権者の100%子会社である「ザ エイツー ミルク カンパニー」の名称と住所が表示されていることは、上記(1)において説明したとおりである。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙5について
乙5の1は、オンラインショッピングサイト「Ubuy」の販売画面の写しである。
1ページの上部右側に「Daily Milk/a2 Milk」の記載があり、「a2 Milk」の右肩部分に登録商標を表すRマーク(○の中に「R」の文字。以下「Rマーク」という。以下同じ。)が付されている。また、中央部には、「THE a2 MILK COMPANY」の文字が記載された牛乳のパッケージの正面写真があり、その下に、中央に表示する写真を切り替えるための、パッケージの正面、裏面及び両側面を小さく表示した写真がある。
2ページの中央に「製品詳細」の見出しの下、「A2 Milk Grassfed 2% Reduced Fat Milk」、「栄養価の高い、おいしい牛乳のオプションを提供します」及び「Date First Available 2023-04-01 20:00:08」の記載、同下部に「製品説明書」の見出しの下、「a2 Milk Grass-Fed 2% Reduced Fat Milk,59 oz」の記載があり、その「a2 Milk」の右肩部分に登録商標を表すRマークが付されている。
5ページの中央に「JPY1908」の記載があり、その下に「カートに追加」、「今購入」の記載がある。
7ページの上部左側に「対象都市」の見出しの下、「Tokyo」、「Yokohama」、「Osaka」、「Nagoya」、「Sapporo」、「Kobe」、「Kyoto」及び「配達:日本」の記載がある。
乙5の2は、乙5の1の一部を拡大して印刷したものであって、牛乳パッケージが表示されており、その中央の白色部分内に「a2 Milk」の記載が4つあり、そのすべての右肩部分に登録商標を表すRマークが付されている。
(2)乙6について
乙6は、本件商標が付された被請求人商品の包装の外観態様を立証するための2025年作成の写真と被請求人が主張するものである。
2ページは、乙5の2に表示された牛乳パッケージと同じものが表示されており、その中央の白色部分内に「a2 Milk」の記載が4つあり、そのすべての右肩部分に登録商標を表すRマークが付されている。
3ページは、被請求人が牛乳パッケージの側面と主張するものであり、その中央右側に「Distributed by/The a2 Milk Company/PO Box 20651/Boulder,CO 80308/at plant number/stamped above.」(審決注:「/」は改行を表す。以下同じ。)の記載がある。
(3)乙7について
乙7は、「2024年年次報告書」の写しであり、以下の日本語訳は添付された抄訳に基づくものである。
第4葉の右側に「Group structure」(グループの構成)を見出しとする表が掲載されており、その表中に21の企業が記載されており、最上段に「Parent entity:/The a2 Milk Company Limited」(親会社:ザ エイツー ミルク カンパニー リミテッド)の記載があり、その右側の「Principal place of business」(主たる営業地)の欄に「New Zealand」(ニュージーランド)の記載がある。また、下から5つ目に「The a2 Milk Company」(ザ エイツー ミルク カンパニー)の記載があり、その右側の「Principal place of business」(主たる営業地)の欄に「USA」(アメリカ合衆国)の記載、「Proportion of ownership interest」(持分比率)の「2024」及び「2023」の各欄に「100%」の記載がある。
第5葉の左側に「Company disclosures」(法人の開示事項)を見出しとする表が掲載されており、その表中に19の企業が記載されており、最上段に「The a2 Milk Company(Export)Limited」の記載があり、その右側の「Directors(or equlvalent)」(役員又は役員に相当する者)の欄にD氏の氏名の記載がある。また、下から5つ目に「The a2 Milk Company」の記載があり、その右側の「Directors(or equlvalent)の欄にD氏の氏名の記載がある。
第6葉の左側に「Corporate directory」(企業ディレクトリ)を見出しとする表が掲載されており、「Company」(企業)部分に「The a2 Milk Company Limited」の記載、「Registered office」(登記事務所)部分に「Level 10 51 Shortland Street Auckland 1010 New Zealand」(ニュージーランド国、オークランド、1010、51 ショートランド ストリート、 レベル 10)の記載がある。
(4)乙8について
乙8は、被請求人(商標権者)の米国市場向けウェブサイト「Terms of Use」(利用規約)のページ部分とされるものであり、以下の日本語訳は添付された抄訳に基づくものである。
7ページの下部に、連絡先として、「The a2 Milk Company/PO Box 20651/Boulder, Colorado 80308」(ザ エイツー ミルク カンパニー コロラド州80308 ボールダー ピーオー ボックス 20651)の記載がある。
2 認定事実
(1)被請求人は、本件商標権者から許諾を受けた米国に所在する通常使用権者「The a2 Milk Company」(以下、「ザ エイツー ミルク カンパニー」という場合がある。)が、要証期間に日本国内において請求に係る指定商品中「牛乳」に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して、インターネット(電磁的方法)により提供したと主張する。
(2)被請求人が提出した「2024年年次報告書」(乙7、以下「年次報告書」という。)は、本件商標権者を親会社とする企業グループに関するものと認められ、「ザ エイツー ミルク カンパニー」は、要証期間に当たる2023年及び2024年当時、本件商標権者の100%子会社であったと認められる。
(3)オンラインショッピングサイト「Ubuy」の販売画面は、日本語表記されており、配達先が日本となっており、日本の需要者向けのサイトと認められる(乙5)。
(4)乙5の1の製品詳細に「栄養価の高い、おいしい牛乳のオプションを提供します」の記載があることからすれば、当該サイトに掲載された商品は、「牛乳」(以下「使用商品」という。別掲参照。)と認められる。また、要証期間の2023年4月1日時点にサイトでの取扱が始まったことが認められ、そのパッケージには、「The a2 Milk Company」の名称及び住所が記載されていたことが推認される(乙5、乙6)。
(5)使用商品のパッケージには、登録商標であることを表すRマークが右肩に付された標章「a2 Milk」(以下「使用商標」という。別掲参照。)が表示されていることが認められる。
3 判断
(1)使用商標
本件商標は、「a2 MILK」の文字及び数字からなり、使用商標は、いずれも「a2 Milk」の文字及び数字からなるものである。
本件商標と使用商標は、前半「a2」を共通にするものであり、後半の文字部分の「MILK」と「Milk」は、2文字目以降の文字のつづりについて大文字小文字の差異はあるものの、構成文字を共通にするものである。
そうすると、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(2)使用商品
使用商品は「牛乳」であるから、本件審判の取消請求に係る指定商品中、第29類「牛乳」と同一の商品である。
(3)使用時期及び使用行為
上記1(1)のとおり、「Ubuy」で使用商品が取扱い開始となった日(「Date First Available」(当審訳:最初に入手可能となった日))は、2023年4月1日であり、使用商品が使用商標と共に掲載されており、使用商品のパッケージには、「Distributed by/The a2 Milk Company」(当審訳:提供者はザ エイツー ミルク カンパニー)の表示、サイトの画面には日本円の価格と認められる「JPY1908」の表示、「カートに追加」、「今購入」の表示が日本語で掲載されている。
そうすると、「ザ エイツー ミルク カンパニー」は、使用商品に使用商標を付し、2023年(令和5年)4月1日に、「Ubuy」を介して、日本の需要者向けに使用商品に関する広告を内容とする情報に使用商標を付してインターネットにより提供したといえる。
そして、2023年(令和5年)4月1日は要証期間内である。
(4)使用者
上記2(2)のとおり、「ザ エイツー ミルク カンパニー」は、本件商標権者の100%子会社であることから、両者は緊密な業務上のつながりがあると認められ、また、そのような関係にある中にあって、被請求人(本件商標権者)が「ザ エイツー ミルク カンパニー」による使用商標の使用について異議を述べたという事実も見当たらないことからすると、本件商標権者から「ザ エイツー ミルク カンパニー」に対して本件商標の使用について黙示の許諾があったものと推認し得る。
そうすると、「ザ エイツー ミルク カンパニー」は、使用商品に使用商標を付し、2023年(令和5年)4月1日に使用商品に関する広告を内容とする情報に使用商標を付してインターネットにより提供したのであるから、本件商標の使用者は、通常使用権者である「ザ エイツー ミルク カンパニー」である。
(5)小括
以上によれば、本件商標の通常使用権者である「ザ エイツー ミルク カンパニー」が、要証期間内である2023年(令和5年)4月1日に、日本国内において請求に係る指定商品中「牛乳」に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して、インターネット(電磁的方法)により提供したと認めることができる。
したがって、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品・・・に関する広告・・・を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
4 請求人の主張について
請求人は、オンラインショッピングサイト「Ubuy」は、日本語で表示されているものの、被請求人が運営するものではなく、被請求人の住所も記載されていないから、当該サイトに商品が掲載されていたとしても、被請求人の本件商標が使用されているとはいえない旨主張する。
しかしながら、乙10の判決においては、商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは、商標権者等がその製造に係る販売等の行為をするに当たり、登録商標を使用する場合のみを指すのではなく、商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むものと解するとされているところ、この判決から検討するに、上記1において認定した事実によれば、ア.オンラインショッピングサイト「Ubuy」で2023年(令和5年)4月1日に、「ザ エイツー ミルク カンパニー」の販売に係る使用商標が付された「牛乳」(使用商品)の取扱いが開始され、イ.当該サイトには、「ザ エイツー ミルク カンパニー」の販売に係る使用商標が付された使用商品の画像が掲載されており、ウ.使用商品の側面部分には、「ザ エイツー ミルク カンパニー」の販売に係る商品である旨の表示が認められる。
そうすると、たとえ「Ubuy」と「ザ エイツー ミルク カンパニー」との間の取引書類の提出がないとしても、使用商標が付された使用商品は、「ザ エイツー ミルク カンパニー」が市場に置くことで流通され、それが流通業者である「Ubuy」によって取り扱われたものといえ、当該サイトにおいて使用商標は、使用商品が、「ザ エイツー ミルク カンパニー」の製造に係るものであることを表示する機能を発揮しているものといえる。
したがって、第三者である小売事業者(中間流通業者)である「Ubuy」の販売における使用商標の使用は、「Ubuy」を介した「ザ エイツー ミルク カンパニー」の製造に係る使用商品に関する広告を提供しているというのが相当であるから、「ザ エイツー ミルク カンパニー」による使用商標の使用に該当するものというべきである。
また、請求人は、本件商標は語頭が小文字であるが、称呼「エイツーミルク」は「A2 Milk」「A2ミルク」と同一であるから、需要者は乳中のベータカゼインがA2タイプのミルク(牛乳)のことを指すものと認識しているものと考えられる旨主張している。
しかしながら、上記のとおり、使用商品のパッケージ背面には、本件商標と社会通念上同一と認められる「a2 Milk」の文字が表示されており、当該「a2 Milk」の文字自体は、一般の辞書類に採録されている語ではない上、当該文字については、それが本件商標権者の所有する登録商標である旨のRマークが右肩部分に付されている。
そうすると、上記使用商品に接する者は、そのパッケージ背面に表示されている使用商標について、本件商標権者の所有する登録商標であると看取、把握するといえるから、使用商標がA2タイプのミルク(牛乳)としてのみ認識され、自他商品等の識別標識としての機能を喪失しているとまではいえない。
したがって、請求人のこの主張も採用することはできない。
5 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において、通常使用権者が、その請求に係る指定商品中「牛乳」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-300549