商標取消審判
2024-300432
ピイエスエス
- 審判番号
- 2024-300432
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2017-138298
- 登録番号
- 6065101
- 請求日
- 2024年06月28日
- 審決日
- 2025年07月01日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】谷口 美津子
- 【被請求人】ちふれホールディングス 株式会社
- 【被請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 高橋 幸志
- 審判官 清川 恵子
- 審判官 白鳥 幹周
- 分類
- T132 .1 -Z (W01)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6065101号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6065101号商標の指定商品中、第1類「スキンケア用の化粧品又はせっけんの成分として用いられる化学品,その他の化学品,化学試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。)」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6065101号商標(以下「本件商標」という。)は、「PSS」の文字を標準文字で表してなり、平成29年10月20日に登録出願、第1類「スキンケア用の化粧品又はせっけんの成分として用いられる化学品,その他の化学品,化学試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。),工業用のり及び接着剤,高級脂肪酸」及び第3類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同30年7月27日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年7月18日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和3年7月18日から同6年7月17日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書において、その理由を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第1類「スキンケア用の化粧品又はせっけんの成分として用いられる化学品,その他の化学品,化学試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。)」(以下「請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して弁駁していない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書及び回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、乙第1号証を乙1のように簡略して記載し、枝番号の全てを示すときは枝番号の記載を省略する。
1 審判事件答弁書における主張
(1)本件商標権者(被請求人)について
本件商標権者は、埼玉県川越市芳野台二丁目8番59に所在する「ちふれホールディングス株式会社」であり、化粧品の開発、製造、販売を事業内容としている(乙1)。本件商標権者は、東京都文京区本駒込六丁目12番12に文京オフィスとして事業所を有している(乙1)。
(2)本件商標の使用について
本件商標権者は、肌の表面に作用して、肌内部を守る技術的理論として「PSS理論」(Performing Skin Surface)を構築した。本件商標は、当該技術的理論に基づく「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」について使用されたものである。
ア PSS理論
美白や健康に良いとされる成分を多く含み、食品分野で注目されている物質として、「リンゴポリフェノール」(以下「AP」という場合がある。)が存在する。本件商標権者は、APの抗酸化作用に着目した光老化の研究により、化粧品や成分そのものが肌内部に浸透しなくても「肌表面で作用し、肌内部で効果を発揮」することを解明し、これをPSS(Performing Skin Surface)理論と名付けた(乙2)。そして、「PSS理論」という語の構成中「理論」の文字部分は、「技術的理論」の名称としては識別力を有しない一方、その構成中「PSS」の文字部分は、「Performing Skin Surface」の略語として本件商標権者によって独自に考案された造語であり、強い識別力を発揮する。そのため、「PSS理論」という技術的理論の名称において、「PSS」の文字部分が要部として独立して識別力を発揮する。
イ 本件商標権者のウェブサイト
乙3の1及び乙3の2、乙4の1及び乙4の2は、本件商標権者の製造販売に係る化粧品及びその保湿成分(リンゴタンニン)を広告するウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)の写しであり、当該保湿成分の「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」について本件商標が使用されている。なお、乙3の1のウェブサイトでは、「会社概要」又は「ウェブサイト利用規約」をクリックすると、乙1の本件商標権者のホームページに移動する仕組みとなっている。
本件ウェブサイトには、技術的理論の名称として「PSS理論」及び「PSS理論(Performing Skin Surface)」の表示(以下「本件表示」という。)があり、上述のとおり、本件表示は「PSS」の文字部分が要部として独立して識別力を発揮する。とりわけ、「PSS理論(Performing Skin Surface)」の表示は、「PSS」の語源となる「Performing Skin Surface」の文字が付され、各単語の語頭が大文字となっていることも相侯って、「PSS」の文字部分がより看取されやすい構成となっている。そして、本件ウェブサイトでは、本件表示とともに「PSS理論」の技術理論に基づくスキンケア用化粧品の保湿成分(リンゴタンニン)が広告されており、当該保湿成分は、「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」である。したがって、本件表示は本件商標の「PSS」の文字が要部として独立して看取されることから、本件ウェブサイトでは、「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」について本件商標が使用されている。この点、登録商標が他の文字と一体となって使用されている場合において、登録商標が要部として独立して看取されることで登録商標の使用を認められることは過去の審決で幾度も示されている(取消2023-300224、取消2022-300808、取消2022-300225など)。
また、本件ウェブサイトは、乙5に示すとおり、遅くとも要証期間内の2022年7月19日から今日に至るまで公開されている。乙3の2、乙3の3、乙4の2及び乙4の3は、ウェイバックマシーンの記録の写しであり、乙5は、乙3の1のウェブサイトのコンテンツ管理システム「WebRelease」の写しである。ウェイバックマシーンの記録内容については、過去の審決(取消2009-300356)では、提出された他の証拠と総合して、ウェイバックマシーンのウェブサイトにおける商標の使用にも信用性が備わっていると判断している。本件でも、乙5などの証拠と総合すれば、本件ウェブサイトが要証期間内に公開されていたことは認められる。
以上より、本件商標権者は、要証期間内に自社のホームページにおいて、「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」を広告する際、「PSS」の文字を要部とする本件表示により、本件商標を使用している。
なお、過去の知的財産高等裁判所の裁判例(知財高判令和3年6月29日、令和3年(行ケ)第10005号)では、広告がされた当時、実際に商品が販売されていないことや商品を販売する計画や予定の有無は、登録商標の使用有無の判断を左右しないと判示されていることを付言する。また、知的財産高等裁判所の「アイライト事件」判決(知財高判平成27年11月26日、平成26年(行ケ)第10234号)では、商標法50条の主な趣旨に鑑みれば、「商標法50条所定の「使用」は、当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきである」と判示されている。それゆえ、上述のとおり、要証期間内に「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」について使用されている本件商標が取り消されることは不使用取消審判制度の趣旨に反し、到底許されない。
2 回答書における主張
(1)本件商標権者のウェブサイトについて
乙3が本件商標権者のウェブサイトであることを示す証拠として乙6及び乙7を追加提出する。乙6は、株式会社日本レジストリサービスのドメイン名登録情報検索サービス「WHOIS」の検索結果(写し)である。乙6には、乙3のドメイン「hikarimirai.jp」の登録者が本件商標権者であることが示されている。また、乙7は、ドメインを「chifuregrp.co.jp」とする本件商標権者のウェブサイトの一部抜粋であって(乙1)、本件商標権者の取り扱いプランドが紹介されており、その中には乙3のブランド「HIKARIMIRAI」が含まれている。これらのことから、乙3が本件商標権者のウェブサイトであることは明らかである。加えて、実際に乙3のウェブサイトで「会社概要」又は「ウェブサイト利用規約」をクリックすると、乙1の本件商標権者のウェブサイトに移動する仕組みとなっている。
(2)本件商標の使用について
乙3及び乙4の記載から「PSS理論」が技術的理論の名称であることは自然と理解でき、「PSS」と「理論」では識別力に明らかな軽重の差があるため、取引者・需要者は「PSS」を要部として分離する。とりわけ、「PSS理論(Perfoming Skin Surface)」の記載では、括弧書きによって「PSS」の文字部分が一層引き立てられており、これに接した取引者・需要者は「PSS」を要部として分離するのが普通である。そもそもパリ条約第5条C(2)には、商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合には、その商標の登録の効力は失われないと規定されている。「PSS理論」は、本件商標の「PSS」に技術的理論の名称としては識別力を有しない「理論」の文字を加えたものであり、「PSS」の識別性に影響を与えることはない。
よって、乙3及び乙4において、本件商標権者が本件商標を使用していることは明らかである。
(3)使用商品について
乙3及び乙4には、化粧品の保湿成分として「リンゴタンニン」が紹介されており、これに接した取引者・需要者は、「リンゴタンニン」を「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」としても認識し得る。そのため、乙3及び乙4は使用商品の広告宣伝ページとしても機能する。なお、審判事件答弁書で述べたとおり、過去の裁判例(令和3年(行ケ)第10005号)によれば、使用商品が実在するか否かは、本件商標の使用有無の判断を左右しないことを改めて付言する。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)「HIKARIMIRAI」について
乙3の1及び乙3の2は、「HIKARIMIRAI」のブランドのウェブサイトであるところ、乙3の1及び乙3の2には、「Science Technology」として「肌表面に作用して、肌内部を守る。独自の技術「PSS理論」。」「「肌表面から美肌へ導く」というリンゴタンニンの性質、この原理を応用したのがPSS理論(Performing Skin Surface)です。」の記載、リンゴタンニンの注釈として「保湿成分」の記載があり(以下「PSS理論」を「使用商標」という。)、乙3の2の下部には、商品写真の上に、スキンケア、ベースメイク、ポイントメイクの記載がある。そして、当該ウェブサイトは2023年(令和5年)6月26日に存在していたことが認められる(乙3の3)。
そして、当該ウェブサイトは、URLを「https://www.hikarimirai.jp」とするところ、「WHOIS」と称するドメイン名登録情報検索サービスによれば、[Domain Name]を「hikarimirai.jp」とするものの[登録者名]が「ちふれホールディングス株式会社」であることから、本件商標権者が管理するものと認められる(乙6)。
(2)「My CHIFURE Online」 について
乙4の1及び乙4の2は、「My CHIFURE Online」を標題とするウェブサイトであり、上記(1)と同様に「肌表面に作用して、・・・「PSS理論」。」「「肌表面から美肌へ導く」・・・PSS理論(Performing Skin Surface)です。」の記載があり、その右横には、乙3の2のスキンケアの商品写真と同じものと認められる商品写真が掲載され、「店舗について」の項には、販売業者名として本件商標権者名と本店住所の記載がある。また、乙4の2には、「HIKARIMIRAI」の項に、乙3の2のスキンケアの商品写真の他に、乙3の2の商品写真と同じベースメイクの商品写真とメイクの商品写真が掲載されている。そして、当該ウェブサイトは2024年(令和6年)4月14日には存在していたことが認められる(乙4の3)。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商品について
本件商標権者は、上記1(1)の同人のウェブサイトにおいて「PSS理論」(使用商標)を掲載して、美肌に導く成分の性質やそれを応用した技術等を説明している。そして、通常そのような説明は、近くに表示された商品に関する説明であるところ、乙3の2や乙4の1及び乙4の2に掲載されている商品写真が示しているように、上記説明に対応する商品は化粧品であって、使用商標は化粧品の成分や技術に関する説明と捉えるのが自然である。
そうすると、使用商標は、化粧品について使用されているものといえるから、請求に係る指定商品の使用ということはできない。
なお、被請求人は、化粧品の保湿成分として「リンゴタンニン」が紹介されており、これに接した取引者・需要者は、「リンゴタンニン」を「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」としても認識し得るから、乙3及び乙4は請求に係る指定商品の広告宣伝ページとしても機能する旨主張しているが、乙3及び乙4において化粧品の保湿成分として「リンゴタンニン」が紹介されているとしても、上記のとおり、「リンゴタンニン」は化粧品の保湿成分、すなわち化粧品に含まれている成分表示として記載されていると理解するのが自然である。
そして、乙3及び乙4には「リンゴタンニン」が化粧品に用いられる化学品であることを説明する記載は見いだせない。
したがって、乙3及び乙4の記載から、「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」の説明とは認められず、また、乙3及び乙4のウェブサイトが「スキンケア用の化粧品の成分として用いられる化学品」の広告宣伝ページとも認めることはできない。
(2)使用商標について
使用商標は、「PSS理論」の文字からなるものであるところ、該文字は、本件商標にはない「理論」の欧文字を有してなるものであるから、本件商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標ということはできない。
そして、本件商標は、その構成各文字から「ピーエスエス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないのに対し、使用商標は、その構成文字から「ピーエスエスリロン」の称呼を生じ、「理論」の文字は、「見解、学説」等の意味を有する語である(出典「広辞苑第7版」)から、「PSSという見解、又は学説」ほどの意味合い、すなわち学説の一種類であることを想起させるものである。
そうすると、使用商標は、本件商標と同一の称呼及び観念を生じる商標ということもできない。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができない。
その他、被請求人提出の乙各号証には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の表示は見あたらない。
なお、被請求人は、「PSS理論」の文字は、技術的理論の名称であることは自然と理解でき、「PSS」と「理論」では識別力に明らかな軽重の差があるため、取引者・需要者は「PSS」を要部として分離するのが普通である旨主張している。
しかしながら、「PSS理論」の文字が技術的理論の名称であるならば、「理論」の文字を含めた全体として技術的理論の名称として認識され得るものというのが自然であり、技術的理論であるからといって「理論」の文字を捨象して単に「PSS」と称されている実情も見いだせない。そうとすれば、使用商標は、その文字全体から乙3及び乙4に掲載されている化粧品の保湿成分を説明する技術的理論として認識されるものとみるのが相当である。また、使用商標の構成中の「理論」の文字部分が指定商品との関係で自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないという実情も見いだせない。
以上からすると、使用商標は、その構成全体をもって、本件商標と社会通念上同一と認められるか否かについて判断すべきものであって、上記のとおり、社会通念上同一と認めることはできない。
よって、被請求人の主張を採用することはできない。
(3)小括
以上によれば、本件商標の商標権者が、要証期間に日本国内において、本件商標をその請求に係る指定商品に使用したことを認めることはできない。また、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることもできない。
その他、本件商標が要証期間に請求に係る指定商品について使用されたことを認めるに足る証拠はない。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、要証期間に日本国内において、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をした事実を証明したものということができない。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品に使用していなかったことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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