商標取消審判
2024-300310
コネクサス、コネクス
- 審判番号
- 2024-300310
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2011-084691
- 登録番号
- 5538209
- 請求日
- 2024年05月15日
- 審決日
- 2026年03月17日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】カーリン・メディカル・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】青木 博通
- 【請求人代理人】片山 礼介
- 【請求人代理人】中田 和博
- 【請求人代理人】青島 恵美
- 【被請求人】アイピーシー システムズ インコーポレイテッド
- 【被請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【被請求人代理人】中村 稔
- 【被請求人代理人】田中 伸一郎
- 【被請求人代理人】藤倉 大作
- 【被請求人代理人】相良 由里子
- 【被請求人代理人】石戸 孝
- 【被請求人代理人】北原 絵梨子
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 大島 康浩
- 分類
- T132 .1 -Z (X42)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5538209号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5538209号商標の指定役務中、第42類「VPN回線及び専用通信回線(専用線)を利用したアプリケーションソフトウェアの提供,複数のユーザーによる通信ネットワークへの同時接続を可能にするためのコンピュータシステム及びコンピュータプログラムの貸与」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5538209号商標(以下「本件商標」という。)は、「CONNEXUS」の文字を標準文字で表してなり、2011年(平成23年)11月3日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成23年11月25日に登録出願、第37類「音声及びデータ通信システムのための通信機器の設置工事及び保守」及び第42類「VPN回線及び専用通信回線(専用線)を利用したアプリケーションソフトウェアの提供,複数のユーザーによる通信ネットワークへの同時接続を可能にするためのコンピュータシステム及びコンピュータプログラムの貸与及び保守」を指定役務として、同24年11月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年5月30日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和3年(2021年)5月30日から同6年(2024年)5月29日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証(以下、証拠の記載にあたっては、甲第○号証を甲○、乙第○号証を乙○のように記載する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第42類「VPN回線及び専用通信回線(専用線)を利用したアプリケーションソフトウェアの提供,複数のユーザーによる通信ネットワークへの同時接続を可能にするためのコンピュータシステム及びコンピュータプログラムの貸与」(以下「請求に係る役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙8ないし乙10、乙15ないし乙17はいずれも英語で記載されており、日本における連絡先は示されていない。乙8の左方に電話番号らしきものが記載されているが、米国の電話番号であると思われ、少なくとも日本の電話番号ではないことは明白である。また、乙10及び乙17の最後の頁においても米国、ロンドン、香港の連絡先のみが記載されており、日本の連絡先の記載はない。乙10及び乙17の最後の頁に「Tokyo」の記載が見られるが、これは単に被請求人が東京にもオフィスを有していることを示しているにすぎない。上記の点に鑑みると、乙8ないし乙10、乙16及び乙17のいずれも日本における本件商標の使用を立証するものではない。なお、乙15は単に被請求人の会社説明にすぎない。
また、商標法上、広告及び取引書類に関する商標の使用については「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)と定義づけられているところ、乙8ないし乙10及び乙17のサービス説明資料、カタログ及びリーフレット、並びに、乙15及び乙16のウェブサイトが要証期間内に日本において展示、頒布又は電磁的方法により提供されたことを示す証拠は何ら提出されていない。
なお、乙8左方(資料の向きで見た場合下方)のコピーライト表示には「2021」との記載が見られるが、2021年は要証期間外である可能性がある。また、乙18は2017年11月28日付けであり、要証期間外である。
したがって、乙8ないし乙10、乙16ないし乙18には「CONNEXUS UNIGY」(以下、部分的に小文字のものも含め「本件使用商標1」という。)又は「CONNEXUS VOICE」(以下、部分的に小文字のものも含め「本件使用商標2」という。)が付されているものの、これらは、要証期間内の日本における本件商標の使用を証明するものではなく、また、当該資料に記載されているサービスが、現在日本で提供されている役務と同じものであるとは限らない。そもそも、日本で本件指定役務を提供しているのであれば、これに関する日本語のサービス説明資料やカタログ等が存在しないのは不自然である。
(2)一方、乙11ないし乙14には、日本の住所と思われる記載が見られる。
しかしながら、外国語で作成された文書を提出して書証の申出をするときは、取り調べを求める部分についてその文書の翻訳文を添付しなければならないとされている(商標法施行規則第22条8項で準用する特許法施行規則第61条)ところ、乙11ないし乙14には翻訳文が添付されていない。
したがって、これらの資料は本審判の証拠として採用されるべきではない。また、日本における取引書類が全て英語で記載されているのも不自然である。
(3)前述のとおり、日本において本件使用商標1及び本件使用商標2の下で提供されているサービスについての説明資料等が存在しないことに加え、乙11ないし乙14の記載内容からは、乙11ないし乙14が何の役務に関する取引書類であるのか定かではない。
乙5及び乙6によると、被請求人が通常使用権者であると主張するA社及びB社は電気通信事業者であり、かつ、被請求人提出の英文のサービス説明資料等(乙8ないし乙10及び乙17)及びプレスリリース(乙18)の記載によると、被請求人が日本において提供していると主張するサービスは、証券取引所間や金融トレーダーと取引相手間の接続の提供、ネットワークヘの接続用回線の提供等の通信サービスであると思われ、これらは第38類「電気通信」に含まれる役務である。特に、乙10の2頁目に「private‘Connexus Voice’ circuits」(被請求人提出の抄訳によると「プライベートな「Connexus Voice」回線」)等と記載されていることからも、本件使用商標2の下で提供されている被請求人の役務は第38類の「電気通信」であり、第42類の本件指定役務に該当しないことは明白である。
また、被請求人は「VPN接続…による通信プラットフォームの提供及びネットワーク通信のためのアプリケーションソフトウェアの提供等の役務について世界的に、「CONNEXUS」の商標を統一的に使用している」と主張しているが、自身の本国である米国において、「CONNEXUS」単独の商標について、第38類の「音声及びデータ統合通信システム機器のリース,電気通信及び情報技術,インターネットプロトコル(IP),仮想専用ネットワーク及び専用線サービス、すなわち、グローバル通信ネットワークを介した音声・データ・画像・ビデオ・オーディオ・静止画・音声・アプリケーション及び情報の送信の性質を有するマルチキャストの送信,グローバル通信ネットワークヘの複数のユーザーによる双方向アクセスのための電気通信機器・部品・消耗品及びシステムのリース」についてのみ権利を所有しており、第42類の「アプリケーションソフトウェアの提供」等について「CONNEXUS」単独の商標権を取得していない(甲3、甲4)。当該事実は、被請求人が本件商標である「CONNEXUS」の下で提供する役務は第38類「電気通信」の範疇の役務であることを裏付けるものである。仮に、本件使用商標1及び本件使用商標2の下で何かしらのアプリケーションソフトウェアが提供されている場合があるとしても、これらは第38類の役務に付随するサービスにすぎず、独立の役務ではない可能性がある。
また、被請求人は、本件商標を少なくとも、第42類「VPN回線及び専用通信回線(専用線)を利用したアプリケーションソフトウェアの提供」について使用していると主張しているが、乙10の4頁目の記載から、専用通信回線を通じて提供されているのは第38類の「電気通信」の役務のみであると思われる。不使用取消審判において登録の取消を免れるためには、当該審判請求を受けた指定役務と同一の役務についての使用を立証しなければならず、当該指定役務と類似の役務についての使用を立証したとしても登録の取消は免れない。したがって、仮に、何かしらのアプリケーションソフトウェアが提供されている場合であっても、本件商標登録の取消を免れるためには、これが「VPN回線」又は「専用通信回線(専用線)」を利用して提供されるものであることまでも立証する必要があるが、被請求人は、その点を立証する資料を提出していない。
(4)被請求人が提出した証拠のうち要証期間内の日本における本件使用商標1と本件使用商標2の使用に関するものとしては乙11ないし乙14のみであるが、本件指定役務との関係で「UNIGY」の語も「Voice」の語も識別力があり、「CONNEXUS UNIGY」「Connexus Unigy」「Connexus Voice」全体で同書・同大にまとまりよく表されているため、乙11ないし乙14に付されている本件使用商標1及び本件使用商標2のいずれも全体として一体不可分の商標である。
被請求人は、乙9や乙10において「CONNEXUS」の右上に(R)表示(審決注:(R)は、○内に表された「R」の文字を表す。以下、同じ。)を付していることを挙げて、需要者等が「CONNEXUS」が主たる役務の識別標識であることが分かるように使用してきた旨主張するが、前述のとおり、これらの資料はいずれも日本における本件商標の使用を示す資料ではないため、被請求人が日本において同様の態様で使用してきたことを立証するものではない。また、前述のとおり、被請求人は、米国において「CONNEXUS」単独の商標について第38類の役務についてのみ権利を取得しているという事実(甲3及び甲4)に鑑みると、乙9や乙10における「CONNEXUS」の右上の(R)表示は、第38類の役務との関係で付されているにすぎないと考えるのが自然である。
以上の理由から、本件使用商標1及び本件使用商標2は全体として一体不可分の商標であり、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙22を提出した。
1 本件商標(乙1、乙2)は、本件商標の商標権者が株式の100%を保有する同社の日本国内の事業子会社であり、かつ本件商標の通常使用権者である、東京都港区所在するA社(乙3)、及び、同じく東京都港区に所在するB社(乙4)により、本件商標の指定役務中、少なくとも、第42類「VPN回線及び専用通信回線(専用線)を利用したアプリケーションソフトウェアの提供」について、本件審判請求の予告登録日である令和6年(2024年)5月14日前3年間の間に、日本国内において使用されている。
2 本件商標権者は、昭和48年(1973年)創業の米国のフィンテック企業であり、主に金融取引において使用されるSaaS型通信プラットフォームや通信・接続用のアプリケーションソフトウェア及び各種インフラ(接続用回線又は接続用の通信機器等)の提供及び販売を行っており、本件商標権者の取引先及びサービス提供先の顧客は、日本を含む全世界に7,000社以上存在する(乙15)。本件商標権者は日本国内においても長年にわたり継続的にサービスを提供しており、例えば、乙18として提出するプレスリリースでは、日本証券取引所に対し、本件商標権者が米国シカゴの金融市場との相互接続サービスを提供する旨の記載がある。本件商標権者は、同社が提供するサービスのうち、VPN接続(インターネット上に仮想の専用回線を設ける接続方式)による通信プラットフォームの提供及びネットワーク通信のためのアプリケーションソフトウェアの提供等の役務について、世界的に、「CONNEXUS」の商標を統一的に使用している(乙16並びに乙8ないし乙10。なお、商標は「CONNEXUS」と全て大文字で記載するものの他、「Connexus」「connexus」等、大文字と小文字を変換したものも含まれる)。
3 日本国内においては、本件商標権者の事業子会社であるA社及びB社が、本件商標権者に代わり本件商標権者の業務に係る商品及び役務の国内向けの販売又は提供を行っている(乙3~乙6)。本件商標権者は世界各国に複数の事業子会社を有しているが、日本国内で事業を行う子会社として、A社及びB社が含まれており、両社は本件商標権者の100%子会社である(乙7)。A社及びB社は、関東総合通信局を管轄とする電気通信事業者として届出をしており(乙5)、A社は通信機器の輸出入・販売・賃貸・保守及び管理等を、B社は、日本国内における各種金融機関に対するローカルエリアネットサービスの提供、IPCグローバルネットワークにアクセスするためのPOPの提供等をそれぞれ業務内容とする(乙3、乙4)。A社及びB社は、本件商標権者から、本件商標権者の業務に係る商品及び役務の日本国内での販売又は提供、及び、これらの商品及び役務について本件商標権者が日本国内で登録する商標の使用をすることについて本件商標権者から許諾を受けており、本件商標についても同様にその使用につき許諾を受けている。よって、A社及びB社は、いずれも、本件商標について通常使用権を有する。以下、両社をまとめて「本件使用権者」という場合がある。
4 前記のとおり、本件商標権者は、VPN接続(インターネット上に仮想の専用回線を設ける接続方式)による通信プラットフォームの提供及びネットワーク通信のためのアプリケーションソフトウェアの提供等の役務について「CONNEXUS」の商標を使用しサービスの提供を行っているが、このうち、主に金融機関やトレーダーを対象としたクラウド型音声通信用プラットフォームサービスの出所表示として使用されている商標が「CONNEXUS UNIGY」である(「Connexus Unigy」と大文字と小文字を交えて記載したもの、及び、乙9に示す「Connexus」の文字の上に(R)の表示を付したものも含む。以下、これらをまとめて「本件使用商標1」という。乙8、乙9、乙16、乙17)。また、トレーダー向けに提供される専用回線によるSIP(Session Initiation Protocol:インターネットプロトコル(IP)ネットワークを通じて、音声やビデオ通話などのリアルタイムコミュニケーションを可能にする通信プロトコル)をベースとした音声通信サービスの商標として使用されているのが「CONNEXUS VOICE」(「Connexus Voice」と大文字と小文字を交えて記載したもの、及び、乙10に示す「Connexus」の文字の上に(R)の表示を付したものも含む。以下、これらをまとめて「本件使用商標2」という。乙10及び乙16。なお、乙18として提出するプレスリリースにも本件商標権者が提供するサービスの名称として「CONNEXUS VOICE」についての言及がある)。これらは、いずれも、専用回線を用いた通信用プラットフォームサービスであり、単なる通信用回線の提供にとどまらず、音声通信用の機器の貸与に加え、音声認識や保存・管理等の各種機能を有するアプリケーションソフトウェアをインターネット経由でユーザーに使用させるものであり、これらの役務は、本件商標の指定役務中、少なくとも第42類「VPN回線及び専用通信回線(専用線)を利用したアプリケーションソフトウェアの提供」に該当する(以下、当該役務を「本件使用役務」という)。
5 日本国内においては、本件使用権者を通じ本件使用役務の提供がなされており、本件商標権者は、本件使用権者を通じ、本件使用役務に本件使用商標1及び2を使用している。本件取消審判の要証期間内における本件使用商標1の使用を示す証拠として乙11及び乙12、本件使用商標2の使用を示す証拠として、乙13及び乙14を提出する。なお、これらの資料には顧客情報等が含まれるため、一部の情報についてマスキングを行っている。乙11及び乙12は、それぞれ、本件使用権者が日本国内の顧客向けに本件使用役務の提供を行った際のサービス提供契約の契約書であり、本件使用商標1が表示されている。乙13及び乙14は、それぞれ、本件使用権者が日本国内の顧客向けに本件使用役務の提供を行う際に顧客から受領した受注書の写しであり、本件使用商標2が表示されている。これらの契約書及び受注書は、いずれも、本件使用役務に関する取引書類に該当し、これらに本件使用商標1及び2を付し顧客に対し頒布する行為は商標の使用に該当する(商標法第2条第3項第8号)。
6 本件使用商標1及び2は、いずれも、前記2のとおり、本件商標権者が展開する「CONNEXUS」シリーズの商品・サービス群に属する本件使用役務について使用されるものであり、また、これらの商標が使用される際、例えば、乙9や乙10にあるとおり、「CONNEXUS」の文字に登録商標を意味する(R)の表示を付す等、本件使用役務の取引者及び需要者にとって「CONNEXUS」が主たる役務の識別標識であることが分かるように使用されているものである。よって本件使用商標1及び2において自他役務の識別機能を最も強く発揮する要部は「CONNEXUS」の文字部分にあるというべきである。特に、本件使用商標2は「CONNEXUS VOICE」の文字から構成されるところ、構成中「VOICE」の文字は、「音声」を意味する平易な英単語であり、本件使用役務の取引分野においても、音声を利用したソフトウェアに関連する商品・役務において商品やサービス名の一部に「VOICE」を含む名称が使用されることが多い(例えば、乙19~乙22)。かかる取引実情も鑑みれば、本件使用商標2の構成中「VOICE」の文字部分は、本件使用役務が音声を対象とした役務であること、すなわち、本件使用役務の質又は用途等を表示・説明する語として理解されるにすぎず、本件使用商標2において役務の識別標識たり得る部分は「CONNEXUS」の文字部分にあることは明らかである。そして、本件使用商標1及び2の構成中「CONNEXUS」の文字は本件商標の構成文字の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であり、本件商標と社会通念上同一の商標である。
第4 審尋
審判長は、被請求人に対し、令和7年12月25日付け審尋において、被請求人が提出した証拠によっては、要証期間に、本件商標権者又は通常使用権者が、請求に係る役務について、本件商標を使用していたことを被請求人が証明しているものとはいえない旨の合議体の暫定的見解及び請求人が提出した同6年12月5日付けの弁駁書に対する回答を求めた。
第5 審尋に対する回答
前記第4の審尋に対し、被請求人からの回答はなかった。
第6 当審の判断
1 請求人及び被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(1)被請求人である本件商標権者は、1973年以来、金融市場へのアクセスを可能にする接続性やセキュリティ、取引ソリューションの提供を行う企業であり、世界に7,000以上の顧客を有しているとされる(乙15)。
(2)被請求人が、本件商標権者の通常使用権者と主張するA社及びB社は、いずれも東京都港区に所在する企業であり、両社とも電気通信事業者として届出をしている(乙3~乙5)。また、本件商標権者の作成に係る、英語による組織チャート(乙7)には、本件商標権者とA社及びB社の記載があるが、これら3社の資本関係等を客観的に示す証拠の提出はない。
(3)本件商標権者が提供する「CONNEXUS UNIGY」と称するサービスについて、サービス説明資料やリーフレット(乙8、乙9、乙17。翻訳部分。)において、「機能 管理プラットフォーム/・・・/SLA監視/通信サービス・・・」、「Connexus Unigyは、業界をリードするプラットフォームの専用プライベートクラウド配信であり、コンプライアンスを順守したトレーダーおよび規制対象ユーザー間のコミュニケーション、企業エコシステムの統合、ハイタッチおよびロータッチの実現を促進します。」、「Connexus Unigyは、・・・安全なクラウドベースのSaaSソリューションを提供します。・・・このソリューションには、Unigy Soft ClientとUnigy Mobile Clientアプリケーションも含まれています。」などと説明されている。なお、上記のサービスが日本国内で提供されている役務であることを示す記載はなく、上記のサービス説明資料やリーフレット等が日本国内で頒布等されたことを示す証拠の提出もない。
(4)本件商標権者が提供する「CONNEXUS VOICE」と称するサービスについて、カタログ(乙10。翻訳部分。)において、「プライベートな「Connexus(R) Voice」回線は専用の常時接続機能を提供します。」、「特別に設計されたConnexus Voiceは、フェイルセーフな取引通信を保証します。」などと説明されている。なお、上記のサービスが日本国内で提供されている役務であることを示す記載はなく、上記カタログが日本国内で頒布等されたことを示す証拠の提出もない。
(5)乙11及び乙12は、本件商標の通常使用権者が日本国内の顧客向けに役務の提供を行った際のサービス提供契約書(以下「本件契約書」という。)と主張するものであるところ、いずれも「CONNEXUS UNIGY ORDER」との表題の書面であること、文中にA社の社名及び日本の企業名とおぼしき記載があること、及び、乙11には2023年6月1日を示す「01-Jun-23」等の、乙12には2024年1月29日を示す「29-Jan-24」等の記載があることは確認できるものの、これらの書面は英語で作成されたものであり、翻訳の提出がないことから、その具体的な内容は不明である。
(6)乙13及び乙14は、本件商標の通常使用権者が日本国内の顧客向けに役務の提供を行う際に顧客から受領した受注書(以下「本件受注書」という。)と主張するものであるところ、いずれも、書面の表題に「CONNEXUS VOICE」の文字を有するものであること、文中にB社の社名及び日本の企業名とおぼしき記載があること、及び、乙13には2023年9月1日を示す「2023.9.1」の、乙14には2023年7月4日を示す「2023/7/4」の記載があることは確認できるものの、これらの書面は英語で作成されたものであり、翻訳の提出がないことから、その具体的な内容は不明である。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)「CONNEXUS UNIGY」の使用について
被請求人は、本件商標権者が提供する役務のうち、主に金融機関やトレーダーを対象としたクラウド型音声通信用プラットフォームサービスの出所表示として使用されている商標が「CONNEXUS UNIGY」(小文字で表されたものや、(R)を付したものを含む。本件使用商標1。)である旨主張する。
しかしながら、上記1(3)のとおりのカタログにおける「CONNEXUS UNIGY」の説明によれば、当該サービスが、クラウド上のプラットフォームやソフトウェアの提供に関するものであることは漠然とうかがえるものの、これが日本国内で提供される役務であるかが明らかでなく、上記カタログが日本国内で頒布等されたものであるかも不明である。
また、上記1(5)の本件契約書には、それぞれ本件使用商標1が表示されていること、A社の社名と日本の企業名とおぼしき記載があること、それぞれに記載された日付から、これらが、要証期間である2023年6月1日頃及び2024年1月29日頃に締結された契約書であることはうかがえるものの、それぞれ英語で作成された書面であって、具体的な契約内容を把握することができないから、結局、日本国内において、請求に係る役務が提供されたものと認めることはできない。
さらに、被請求人は、本件契約書に記載されたA社が、本件商標権者の通常使用権者であると主張するが、本件商標権者とA社の関係を示す証拠は、本件商標権者の作成に係る、英語による組織チャートのみであって、具体的な関係を把握することができない上、他に両社の資本関係等を客観的に示す証拠の提出もないから、A社が、本件商標権者の通常使用権者であると直ちに認めることができない。
したがって、提出された証拠によっては、本件使用商標1が本件商標と社会通念上同一の商標であるか否かにかかわらず、これが、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、請求に係る役務について使用されたものと認めることはできない。
(2)「CONNEXUS VOICE」の使用について
被請求人は、答弁書において、本件商標権者が提供する役務のうち、トレーダー向けに提供される専用回線によるSIPをベースとした音声通信サービスを表すものとして使用されている商標が「CONNEXUS VOICE」(小文字で表されたものや、(R)を付したものを含む。本件使用商標2。)である旨主張する。
しかしながら、上記1(4)のとおりのサービス説明資料やリーフレット等における「CONNEXUS VOICE」の説明によっては、当該サービスが、通信に関するものであることは漠然とうかがえるものの、これが、具体的にアプリケーションソフトウェアの提供や、コンピュータシステムないしコンピュータプログラムの貸与を独立して提供するものであるかが明らかでなく、請求に係る役務の範ちゅうに属するものであるかが判然としない。かつ、これが日本国内で提供される役務であるかが明らかでなく、上記サービス説明資料やリーフレット等が日本国内で頒布等されたものであるかも不明である。
また、上記1(6)の本件受注書には、それぞれ本件使用商標2が表示されていること、B社の社名と日本の企業名とおぼしき記載があること、それぞれの日付から、これらが、要証期間である2023年9月1日頃及び2023年7月4日頃に作成された受注書であることはうかがえるものの、それぞれ英語で作成された書面であって、具体的な契約内容を把握することができないから、結局、日本国内において、請求に係る役務が提供されたものと認めることはできない。
さらに、被請求人は、本件受注書に記載されたB社が、本件商標権者の通常使用権者であると主張するが、本件商標権者とB社の関係を示す証拠は、本件商標権者の作成に係る、英語による組織チャートのみであって、具体的な関係を把握することができない上、他に両社の資本関係等を客観的に示す証拠の提出もないから、B社が、本件商標権者の通常使用権者であると直ちに認めることができない。
したがって、提出された証拠によっては、本件使用商標2が本件商標と社会通念上同一の商標であるか否かにかかわらず、これが、日本国内において、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、請求に係る役務について使用されたものと認めることはできない。
(3)小括
以上のことからすると、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間内に日本国内において、請求に係る役務について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用したものとは認められない。
そして、その他、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間に日本国内において、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を請求に係る役務について使用をしていることを認めるに足りる証拠の提出はない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、要証期間内に日本国内において、本件商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが、請求に係る役務のいずれかについて、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していることを証明したとはいえない。
また、被請求人は、請求に係る役務について、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、指定役務中、請求に係る役務についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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