商標取消審判
2024-300240
ダイナマイト
- 審判番号
- 2024-300240
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2003-035988
- 登録番号
- 4739145
- 請求日
- 2024年04月11日
- 審決日
- 2026年03月23日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オール エリート レスリング リミテッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】井上 満
- 【請求人代理人】磯田 一真
- 【被請求人】株式会社 K―1ジャパンホールディングス
- 【被請求人代理人】田中 克郎
- 【被請求人代理人】稲葉 良幸
- 【被請求人代理人】佐藤 俊司
- 【被請求人代理人】阪田 至彦
- 【被請求人代理人】太田 知成
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 真鍋 伸行
- 分類
- T132 .1 -Y (Y41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4739145号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第4739145号商標(以下「本件商標」という。)は、「Dynamite!」の欧文字及び記号を横書きしてなるものであり、平成15年5月2日に登録出願され、第16類「雑誌,新聞」、第35類「広告,職業のあっせん,街頭及び店頭における広告物の配布,商品の実演による広告,郵便による広告物の配布,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,輸出入に関する事務の代理又は代行」及び第41類「格闘技トーナメント興行の企画・運営又は開催」を指定商品及び指定役務として、同16年1月9日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年5月2日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和3年5月2日から令和6年5月1日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第41類「格闘技トーナメント興行の企画・運営又は開催」についての登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、令和6年7月10日付け答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年9月6日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)、同8年2月6日付け口頭審理陳述要領書及び同年3月2日付け上申書において、その理由を要旨次のように述べ、甲第1号証を提出した。
なお、以下、証拠の表示については、甲(乙)第1号証を「甲(乙)1」のように省略して表示する場合がある。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第41類「格闘技トーナメント興行の企画・運営又は開催」(以下「本件審判請求に係る指定役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁書による主張
(1)乙1及び乙2について
乙1には、K-1なる格闘技イベントの解説がなされているのみであり、また、乙2には、株式会社M-1スポーツメディア(以下「M-1社」という。)に関する会社情報が記載されているが、商標を特定する記載がないため、商標法第50条に規定されている登録商標の使用事実が証明されたということはできない。
(2)乙3について
ア 乙3に関する被請求人の主張
被請求人は、乙3の1ページ目下部の「2024.12/14 SAT K-1 WORD GP 2024 FINAL「Dynamite!」日本:代々木第一体育館」なる記載を根拠に、当該「Dynamite!」の欧文字及び記号(以下「本件使用商標」という。)が、要証期間内である2024年2月17日に、被請求人の通常使用権者たるM-1社により本件審判請求に係る指定役務について使用されたものであると主張する。
イ しかしながら、乙3に記載された本件使用商標は、要証期間内の使用と認められるべきではない。なぜなら、本件審判事件の要証期間は2021年5月3日から2024年5月2日(合議体注:要証期間は「2021年5月2日から2024年5月1日まで」の誤り。)であるところ、当該イベントの実施予定日は2024年12月14日であり、これは要証期間外であることが明らかである。
被請求人の主張は、要証期間外の時期に予定されていてまだ一度も行われてもいないイベントについて、その告知だけでも要証期間内に行われてさえいれば、商標の使用と認められるべき、という主張に他ならない。
たしかに、商標の使用について、指定役務に関する広告等を内容とする情報に標章を付したものを提供する行為は商標の使用に該当すると規定されている(商標法第2条第3項第8号)。
しかしながら、商標法第2条第3項に規定する使用は形式的に使用態様を列挙したにすぎないものであり、これに該当すれば全て商標の使用と認められるべきではない。
特に、商標に信用が化体しているか否かを判断する不使用取消審判制度においては、使用に該当するか否かを形式的に判断すべきでなく、商標に信用が化体し得るか否かという実質的な基準で判断すべきである。
本件でいえば、本件審判請求に係る指定役務の実施日が要証期間内であることが求められるべきであり、単にその宣伝広告が要証期間内であれば足りると容易に考えるべきではない。なぜなら、告知だけが要証期間内に行われていれば足りるとすれば、例えば全く実施されるかもわからない20年後や30年後のイベントについて、とりあえず何らかの告知だけをし続けていれば、要証期間内の使用と認められ、何ら信用の化体していない商標までも不使用取消を免れ保護されることとなってしまい、真に保護されるべき商標の保護が十分にできないという事態になり得るからである。
したがって、不使用取消審判制度においては、商標が取り消されるべきか否かの判断基準は、商標に保護すべき信用が実際に化体しているか否かを基準とすべきである。まだ実施されておらず、実際に実施されるかも定かでないイベントの告知にすぎない表示により、保護すべき信用が化体しているとは合理的に考えることはできない。
したがって、乙3は、指定役務の実施日が要証期間外である以上、本件使用商標が要証期間内に使用されたという証拠にはなり得ない。
ウ 被請求人は、乙3をインターネット上で掲載したのは、被請求人の通常使用権者であるM-1社であると主張する。
しかし、乙3がM-1社により掲載されたことを示す証拠はない。
仮に、乙3号がM-1社により掲載されたものであるとしても、本件商標に関してM-1社が被請求人の通常使用権者であることを示す証拠は何もない。
なお、被請求人は、乙7及び乙8において、A氏が両者の取締役の地位にあることを理由に、M-1社と被請求人がグループ関係にあるとか、M-1社が被請求人の統括・指導のもとにあると主張するが、これらを示す具体的な証拠はない。
さらに、両者間に通常使用権が発生していることを示す証拠もない。仮にA氏が両者の取締役の地位にあり、M-1社と被請求人がグループ関係にあり、M-1社が被請求人の統括・指導のもとにあったとしても、これらのことは、M-1社が2024年2月17日時点で被請求人の通常使用権者であったことの証拠とはいえない。
したがって、M-1社は被請求人の通常使用権者ということはできないので、乙3が本件商標の通常使用権者により使用された証拠と認められるべきでない。
(3)乙4及び乙5について
被請求人は、乙4及び乙5は、K-1イベントの2024年全スケジュールが掲載されたもので、K-1イベントについて広く認知されていることを示す証拠であると主張する。
しかしながら、乙3において「Dynamite!」と記載されていた同イベントの名称が乙4及び乙5では「Tounament」と記載されており、「Dynamite!」の表示がなされていない。
内容が精査されているはずのニュース記事に「Dynamite!」の文字がイベント名として全く使用されていないことから、実は「Dynamite!」の文字が使用されているのは乙3と、外国向けにその画像がそのまま転載された乙6だけであると考えられる。
いずれにしろ、乙4及び乙5により商標法第50条に規定されている登録商標の使用事実が証明されたということはできない。
(4)乙6について
乙6は、被請求人が「海外にまで『K-1 WORLD GP 2024』の年間スケジュールが伝搬していることが認められる。」と主張することから明らかなように、外国向けの記事であり、その内容がどうであれ商標法第50条に規定されている日本国内における登録商標の使用事実が証明されたということはできない。
(5)乙7及び乙8について
いずれも法人の現在事項証明書の写しであるが、商標を特定する記載が一切ないため、商標法第50条に規定されている登録商標の使用事実が証明されたということはできない。
なお、前述のとおり、両証拠に同一人物が取締役として掲載されていることをもって、両社の関係は全く不明であるし、ましてや本件商標に関し通常使用権が発生しているという証拠にもならない。
(6)まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した乙1ないし乙8は、いずれも本件商標を本件審判請求に係る指定役務について使用していた証拠とは認められない。
本件審判の予告登録日前3年以内に被請求人又は通常使用権者により日本国内において本件商標と社会通念上同一と認められる商標が、指定役務「格闘技トーナメントの興行の企画・運営又は開催」について使用されていたとは認められない。
3 口頭審理陳述要領書(令和8年2月6日付け)による主張
(1)乙9(契約書)について
乙9の1頁目と2頁目で、文字等の外観や書式に違いがある。また、割印があるにもかかわらず契印がなく、1頁目と2頁目を綴じた形跡も確認できず、内容的にも不自然な点が存在する。
(2)乙14(請求書)及び乙15(支払明細)について
被請求人は、乙14(請求書)及び乙15(支払明細)等を提出しているが、被請求人とM-1社の取締役が共通であることからすれば、乙14は、任意の日付や内容、金額等で作成できる書類であり、乙3が契約書に基づく使用であることの証明とはなり得ず、また、乙14は、項目立て等が不自然である。
仮に乙15における取引が存在したとしても、上記のとおり乙14が任意に作成可能な書類である以上、乙15が乙9(契約書)に対応することの証明とはならない。
(3)以上より、乙9、乙14及び乙15の信用性に疑念があるというべきである。
4 上申書(令和8年3月2日付け)による主張
(1)乙3、乙9及び乙14の信憑性について
ア 乙3について
乙3は、M-1社が運営するWEBサイトのプリントアウトであり、M-1社は当該WEBサイトを任意に作成、修正、アップロード等可能な立場にある。
よって、被請求人が本件審判請求を知得した時点で、被請求人がM-1社に依頼して当該WEBサイトを作成(又は修正/捏造等)してアップロードさせ、2024年6月21日17時46分(乙3左上)の時点で乙3をプリントアウトすることは十分可能である。
さらに、被請求人が改変できない外部記事(乙4、乙5)には改変以前の古い情報が掲載されていること、時点でM-1社の上記WEBサイトは削除されていることなどは、乙3が捏造であることを強く推察させる状況証拠である。
以上のとおり、乙3は、被請求人が本件審判請求の事実を知ったのちに、本件商標の使用の事実を捏造等するために作成したものである可能性を否定できず、本件商標の使用を立証するものと評価されるべきではない。
イ 乙9(契約書)について
乙9(契約書)もまた、上記の被請求人とM-1社の関係からして、両社の合意があれば任意の内容及び日時で作成可能な書類であり、乙9による「正当使用権者による使用」の立証を認めるべきではない。
加えて、乙9(契約書)は、登録取消回避のために真っ先に検討した筈の証拠であるが、答弁書提出の段階では提出されず、審尋への応答として回答書(2025年9月9日)で初めて乙9が提出されたものである。
しかも、口頭審理陳述要領書(2026年1月23日)で被請求人は、使用許諾契約書の提出が遅延した理由として、「両社が業務上、緊密な関係にある・・・ことを示すことで足りると考えたからである」と述べていることから、有印私文書である契約書の捏造にまで手を染める必要はないと考えた)」との意味ではないかと疑うべきである。
上記の経緯から、乙9は捏造されたもの、あるいは、少なくとも答弁書(2024年7月10日)の段階では存在しなかったことが強く推認されるべきである。
さらに、乙9の裏付け根拠として提出された証拠は、乙14(請求書)及び乙15(支払明細)のみであり、これら以外にない。乙14は特に上記両社の関係に照らせば容易に作成や改変が可能な証拠であり、その内容に客観性も信憑性も認められない。
現に、被請求人は、口頭審理において乙9及び乙14に記載の金額の差の理由を全く弁明できていない。
このような乙14及び乙15により、乙9の真正性は証明され得ない。
むしろ、乙9の裏付けとして乙14及び乙15しか提出されず、通常であれば、使用許諾契約の後に、格闘技イベント実施のための準備(会場の予約や出場選手・所属事務所等との交渉、広告発注、放映権の交渉)などの記録が大量に存在する筈であるにもかかわらず、他の客観的な証拠が何一つ提出されない事実こそが、乙9が事後的に作成されたことを裏付けていると考えるべきである。
なお、乙9に対応するもう一方の契約書の原本(M-1社のもの)は、請求人側の強い要請にもかかわらず、口頭審理においても提出されていない。提出の準備が間に合わなかったとの主張は、被請求人は口頭審理期日までに十分な期間を有していたこと、及び、上記の両社の関係に照らせば、不提出の理由として認められるべきではない。
ウ 乙14(請求書)について
乙14(請求書)もまた事後的に作成又は改変された可能性を指摘する。乙14は被請求人単独で作成可能な書類であり、何ら証拠的価値はない。
さらに、乙14の合計の請求金額だけは乙15に合わせてあるが、口頭審理で提出された原本では、乙14の「Dynamite!商標使用料」は乙9の金額と全く整合していないこと、乙14「Dynamite!商標使用料」、「※web宣伝使用料」などの記載はいかにも商標法第2条第3項第8号等の条文に合致させるために取って付けたような唐突で不自然な記述といわざるを得ないことなどからして乙14もまた捏造の可能性が強く疑われるべきである。
エ 小括
以上より、乙3、乙9及び乙14には信憑性がない。これらを根拠とする正当権利者による使用の事実の主張は認められるべきではない。
(2)本件商標を使用した大会が開催された事実について
ア 事実
令和8年2月19日に実施した第1回口頭審理(以下「第1回口頭審理」という。)において、2024年12月14日のイベントで本件商標は使用されなかった事実が明白となった。
被請求人の説明によれば、「Dynamaite!」の標章は、一定規模の大きなイベントにのみ使用するところ、そのような規模に達しなかったため、本件商標が使用されることはなかったということであり、乙10の記載内容とも整合する。すなわち、乙10はM-1社による公式な試合結果「MATCH RESULT」であるところ、大会名として「Dynamaite!」の記載は一切ない。
これらのことから、2024年12月14日のイベントにおいて「Dynamaite!」は一切使用されなかった事実が明らかであり、「Dynamaite!」というイベントは実施されなかったということである。
イ 保護すべき信用が存在しない旨の主張
商標法第2条第3項に規定する使用は形式的に使用態様を列挙したにすぎないものであり、これに該当すれば全て商標の使用と認められるべきではない。特に、不使用取消審判制度においては、使用に該当するか否かについて、形式的に判断すべきでなく、商標に保護すべき信用が化体しているか否かという、実質的な基準で判断すべきと考える。
本件では、本件商標は実際の格闘技イベントにおいて全く使用されなかったのであるから、指定役務「格闘技トーナメント興行の企画・運営又は開催」に関し、何らかの保護すべき信用が化体しているとは考えられない。
実際には全く行われなかったイベントについて、告知だけが要証期間内に行われていれば足りるとすれば、例えば全く実施されるかもわからない20年後や30年後のイベントについて、とりあえず何らかの告知だけをし続けていれば、商標の使用と認められ、何ら信用の化体していない商標までも不使用取消を免れ保護されることとなってしまい、真に保護されるべき商標の信用が十分に保護できないという事態になりかねない。
これは本当に商標を使用しようとする者の商標採択の余地を不当に狭める結果となり、真に保護すべき信用が保護されないという結果になってしまう。
本件でいえば、全く実施されることのなかったイベントの告知にすぎない表示により、保護すべき信用が化体していると考えることはできない。
したがって、「Dynamaite!」というイベントが実際には実施されなかった以上、保護すべき信用は存在しないから、乙3のみの記載を根拠に商標法第2条第3項第8号の使用を認めるべきではない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書、令和7年8月5日付け審尋に対する同年9月8日付け審判事件回答書、同8年1月23日付け口頭審理陳述要領書及び同年2月26日付け審判事件上申書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙15を提出した。
1 答弁書による主張
本件商標は、被請求人の通常使用権者により、要証期間内に本件審判請求に係る指定役務について使用されているから、本件審判の請求は成り立たない。
(1)被請求人及び格闘技イベント「K-1」について
被請求人は、キックボクシングを基本とする打撃系格闘技イベントの「K-1(ケーワン)」(以下「K-1」という。)を統括する会社である。
K-1は、空手やキックボクシング等の打撃系立ち技格闘技における世界最強の格闘者を決める大会を行うとのコンセプトのもと、1993年に創設したイベントに端を発し、ヘビー級を中心とするパワフルで迫カのある格闘技として、世界的に高い知名度を獲得しており、日本国内各地で大会が開催されている。
K-1の大会は、1993年4月30日に第1回大会として「K-1 GRAND PRIX’93~10万ドル争奪格闘技世界最強トーナメント~」が開催され、8選手による無差別級トーナメントが行われた。その後、1997年には「三大ドームツアー」と称してナゴヤドーム、大阪ドーム、東京ドームで大会を開催し、1998年には日本人選手を主軸とする「K-1 JAPAN」シリーズを立ち上げた。また、2000年には「K-1 GRAND PRIX」シリーズを「K-1 WORLD GP」シリーズと改称し、北米、ヨーロッパ、豪州などで地区予選大会を開催するなど本格的に世界進出を開始した。2002年にはミドル級(-70kg)部門の「K-1 WORLD MAX」シリーズを立ち上げ、同年、国立霞ヶ丘競技場では初となる格闘技イベント「Dynamite!」を開催し、K-1は、ピーク時には国内地上波3局と135カ国でテレビ放映され、最高9万人の大観衆を集めた(乙1)。
K-1は、2014年5月よりK-1実行委員会が主催しており、K-1実行委員会は、同年5月29日に、「K-1 WORLD LEAGUE」を発足して11月3日に旗揚げし、「K-1 WORLD GP IN JAPAN」(後に「K-1 WORLD GP JAPAN」と改称)の大会名のもと、2017年3月に“新生K-1史上最大のビッグマッチ”として「K’FESTA.1」を成功させるなど、2017年以降、定期的に大会を開催しており、格闘技の産業化を目指し、100年継続する事業を構築すること掲げて活動を行っている(乙1)。大会の運営は、被請求人のグループ会社であるM-1社が担当している(乙2)。現在、K-1は、「K-1 WORLD GP」がヘビー級(重量級)選手による格闘技戦、「K-1 WORLD MAX」が70キロ以下級(中軽量級)選手による格闘技戦と、階級を分けてそれぞれを開催しており、2024年は「Dynamite!」を年1回のビックマッチとなる格闘技戦と位置付け、開催を予定している。
(2)本件商標の使用について
上述のとおり、「Dynamite!」は、2024年のK-1大会における年1回のビックマッチとして位置付けられる格闘技戦であるところ、被請求人は、K-1大会の年間スケジュールを前年12月から当年1月にかけて検討し、2024年の年間スケジュールにおいて、2024年の年末に実施するビッグマッチの名称を「Dynamite!」とすることを決定し、上記年間スケジュールを、「K-1 WORLD GP 2024」として、K-1公式サイトの2024年2月17日付けのニュースページで一般に告示した(乙3)。当該年間スケジュールの内、年末の2024年12月14日(土)開催予定の「K-1 WORLD GP 2024 FINAL」には、「Dynamite!」の欧文字及び記号(本件使用商標)が表記されている(乙3)。
2024年の年間スケジュールは、K-1公式サイトにおける告知から2日後の2024年2月19日に、「【K-1】2024年全スケジュール発表、世界で4大会・日本で5大会。9・29代々木でK-1 WORLD MAX追加発表」の標題で、格闘技の専門誌である「ゴング格闘技」(株式会社アプリスタイル)のウェブサイトに業界ニュースとして掲載され(乙4)、同ウェブサイトのニュースは、同日に、Yahoo!ジャパンのインターネット記事にも掲載された(乙5)。同年5月16日には、「K-1 WORLD GP 2024 FINAL」に関連するニュースが米国の「Beyond KICK(ビヨンド・キック)」という格闘技サイトの二ュース記事(乙6)で報じられたが、同サイトには、K-1公式サイトの2024年2月17日付けのニュースページにおいて、本件使用商標を表記した「K-1 WORLD GP 2024」の年間スケジュールの画像がそのまま掲載されており、海外にまで「K-1 WORLD GP 2024」の年間スケジュールが伝播していることが認められる。
本件審判の予告登録日は、2024年5月2日であり、本件審判における要証期間(「審判の請求の登録前三年以内」(商標法第50条第1項))は、2021年5月3日から2024年5月2日であるから(合議体注:要証期間は「2021年5月2日から2024年5月1日まで」の誤り。)、2024年2月17日付けのニュースページ(乙3)は、要証期間内に掲載されたものである。
本件商標は、「Dynamite!」の欧文字及び記号を書したものであり、構成文字に照応して「ダイナマイト」の称呼と「ニトログリセリンを主剤とする爆薬の総称」という観念が自然に生じるものであるところ、上記ニュースページにおける本件使用商標は、字形や「!」(感嘆符)を含む文字構成が全く同一であるから、本件使用商標は、本件商標とは、称呼及び観念が同一である社会通念上同一の商標であることは明白である。
また、上記ニュースページは格闘技トーナメントの「K-1 WORLD GP 2024」の開催を告知するものであるから、これに本件使用商標を表示する行為は、「格闘技トーナメント興行の企画・開催又は開催」に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
さらに、上記ニュースページを含むK-1公式サイト(乙1~乙3)は、K-1大会の運営などを行っているM-1社が運営しているものであり(乙2)、M-1社は、被請求人の代表取締役(A氏)が取締役として名を連ねる被請求人のグループ会社である(乙7、乙8)。すなわち、M-1社は、被請求人の統括・指導のもとでK-1大会を運営しているものであるから、本件使用商標の使用者は、被請求人の通常使用権者である。
したがって、本件使用商標は、要証期間内に、被請求人の通常使用権者により、本件審判請求に係る指定役務について使用されていたものである。
2 審尋に対する審判事件回答書(令和7年9月8日付け)による主張
(1)本件商標の通常使用権者について
被請求人は、キックボクシングを基本とする打撃系格闘技イベントの「K-1(ケーワン)」を統括する会社であるところ、グループ会社のM-1社(乙2)に格闘技イベントの業務を委託しており、K-1実行委員会の主催のもとで、M-1社が企画・制作を担当している。被請求人とM-1社は、格闘枝イベントの運営において使用する被請求人の商標についても、商標権使用許諾契約を締結しており(乙9)、同契約書第3条において、使用する商標の期間と料金に関する定めを設けており、本件商標の「Dynamite!」も使用を許諾する商標として明確に記載している。
したがって、M-1社が本件商標の通常使用権者であることは明白である。
(2)乙3の「開催スケジュール」に記載のイベント(大会)の実施について
2024年2月17日付けニュース(乙3)における格闘技イベントは、同ニュースにあるスケジュールの日程で開催されており、同年12月14日にも、決勝戦を含む全18試合が開催されている(乙10)。同スケジュール(乙3)に表示の「K-1 WORLD GP 2024 FINAL『Dynamite!』」については、格闘技専門誌の「GONG」(コング)を発行する株式会社ジャパンコンテンツマネジメントが運営するウェブ版でも、「K-1 WORLD GP 2024 FINAL『Dynamite!』2024年12月14日(土)」の大会名で当日に告知された(乙11)。「GONG」のウェブ版では、第18試合(決勝戦) がハイライトシーンの写真付きで報じられた(乙12)が、ここでも、同イベントの名称、開催日及び開催場所が「K-1 WORLD GP 2024 FINAL『Dynamite!』2024年12月14日(土)東京・国立代々木競技場第一体育館」と表記されている(乙12)。
したがって、乙3の2024年2月17日付けニュースにおける格闘技イベントは、M-1社によってスケジュールどおりの2024年12月14日に開催されている。
(3)弁駁書における主張について
弁駁書における主張に対しては、上記(1)及び(2)で述べたほか、本件審判請求に係る指定役務の実施日が要証期間内であることが求められる旨の請求人の主張に対しては、商標法上そのような要件はなく、要証期間内の使用をいうのであれば、被請求人は、要証期間内における2024年2月17日に広告(告知)として本件使用商標を使用しており、これらは対外的にも公表され、形式的な使用等ではないことは、その後第三者が引用していることからも明らかである。
(4)結語
以上のとおり、M-1社は、本件商標の通常使用権者であり、M-1社が主催する格闘技イベントは、2024年2月17日付けニュース(乙3)における本件使用商標を表記したスケジュールにおいて告知され、同スケジュールのとおり2024年12月14日に開催されたのであるから、本件使用商標は、被請求人の通常使用権者により、要証期間内に、指定役務の「格闘技トーナメント興行の企画・開催又は開催」について使用されたものである。
3 口頭審理陳述要領書(令和8年1月23日付け)による主張
乙9(契約書)の提出時期について
被請求人が答弁書提出時に乙9を証拠として提出しなかったのは、被請求人は打撃系格闘技イベントのK-1大会を統括する会社であり、M-1社はK-1大会を運営する被請求人のグループ会社であることから、両社が業務上、緊密な関係にあることは明らかであり、それを証する証拠としては、被請求人の代表者がM-1社の取締役を務めていることを示すことで足りると考えたからである。実際、被請求人の代表者は、平成31(2019)年3月28日の就任から令和5(2023)年6月2日の辞任に至るまで、M-1社の代表取締役を務めており(乙8)、M-1社の代表取締役を辞任した後も、M-1社の取締役であるほか、契約書(乙9)に記名押印しているとおり、現在でもK-1大会における最高責任者であるが、請求人が令和6年9月6日付け弁駁書で被請求人とM-1社の関係を争い、同7年8月5日付け審尋が、被請求人とM-1社の商標使用許諾の合意を根拠付ける客観的な証拠を求めたため、被請求人は、同年9月8日付け審判事件回答書に添付して、契約書(乙9)の写しを提出したまでである。
そもそも、商標法第50条第1項に基づく審判における登録商標の使用事実の存否の立証は、その審決取消請求訴訟における事実審の口頭弁論終結時まで許されるものと解されているから、被請求人が上記回答書に添付して乙9を提出したことに、何ら不自然な点はない。
また、乙9(契約書)が被請求人とM-1社の間で真正に締結されたものであることを証するため、契約書に基づき被請求人がM-1社へ宛てた商標使用料の2024年12月31日付け請求書(乙14)、及び同請求に対するM-1社の支払の事実を証するインターネットバンキングによる2025年2月3日付け照会結果(支払明細)(乙15)を提出する。
4 審判事件上申書(令和8年2月26日付け)による主張
(1)格闘技トーナメント「K-1WORLD GP FINAL」当日における本件商標の使用について
本件商標の通常使用権者であるM-1社は、K-1大会の年間スケジュールを前年12月から当年1月にかけて検討し、2024年の年間スケジュールにおいて、2024年の年末に実施するビッグマッチの名称を、「K-1WORLD GP FINAL『Dynamite!』」として、「Dynamite!」を使用することを決定し、上記年間スケジュールを、K-1公式サイトの2024年2月17日付けのニュースページで一般に告示した(乙3)。K-1は、立ち技格闘技のプロスポーツであるところ、総合格闘技の選手との交流戦や著名な選手も参加する等、年末に実施するビッグマッチにふさわしい大会として「Dynamite!」の名称をこれまで使用してきた歴史があり、2024年の年末にはそのような大会を実施することを企図し、それを上記のニュースページ(乙3)で告知したが、実際には、選手の手配やスケジュールなどの関係で十分な出場者を確保できなかったため、最終的に「Dynamite!」の使用を断念した。格闘技業界では、1年以上前に大会スケジュールを決定し、当日の数か月ないし半年以上前にはそのスケジュールを告知ないし発表することが一般的であるが、大会当日までの期間が長いことや、その間、主要選手の負傷による対戦カードの変更なども相応に多く、その結果として、開催する名称を変更せざるを得なくなるケースは決して珍しいものではない。
この点に関し、請求人は、弁駁書において、本件指定役務の実施日が要証期間内であることが求められるべきであり、単にその宣伝広告が要証期間内で足りると容易に考えるべきではないと主張しているが、商標法第50条や、商標の使用の類型を定めた商標法第2条第3項各号において、役務の提供における商標の使用に関して、現実の提供を要件とするとは一切規定されていない。
したがって、弁駁書における請求人の上記主張は独自の見解に基づくものであって合理的な根拠を欠くものであるから、当初の予定に基づき、その宣伝広告に「Dynamite!」を使用していた本件において、要証期間経過後の大会当日において最終的に「Dynamite!」を使用しなかったことは、本件商標の使用の事実を左右するものではない。
(2)請求人の口頭審理陳述要領書における主張に対する補足説明等
請求人は、令和8年2月6日付け口頭審理陳述要領書において、審尋等に対する被請求人の対応が不適切であるとして、契約書(乙9)が作成されたことを裏付ける事実(作成時期、作成場所、作成趣旨、作成時の立会者等)の説明がされていない、答弁書提出時に契約書を提出しなかった理由がないと指摘する。
契約書(乙9)に関しては、第1回口頭審理における原本確認により書証としての成立が認められたが、この点を補足すると、契約書(乙9)が作成されたことを裏付ける事実については、契約書(乙9)の第7条の定めのとおり、同契約の有効期間は2024年1月1日から同年12月31日までの1年契約であるから、作成時期は、締結日にある2024年1月1日(乙9)、又は実作業として2023年末より少し前である。契約書(乙9)は、甲乙それぞれが郵送で原本を送付しあって確認・押印したため、特に定まった作成場所や立ち合いはない。作成趣旨は、上記第7条にあるとおり、1年間の契約であることをふまえ、定期的に締結されているものである。
また、答弁書提出時に契約書を提出しなかった理由は、被請求人としては、答弁書提出時では、本件商標の使用事実の立証が最も重要であると認識していたことに加えて、過去の審判でグループ会社等による登録商標使用が通常使用権者による商標の使用にあたると認定された先例が少なからず確認されるため、請求人の代表者がM-1社の取締役を務めている事実を立証すれば足りると考えたからにすぎない。
その他、請求人は、上記ニュースページのハードコピー(乙3)及び被請求人が令和8年1月23日付けの口頭審理陳述要領書に添付して提出した請求書(乙14)と支払明細(乙15)について、信用性に疑念があると論難する。この点については、第1回口頭審理において乙9、乙14及び乙15のいずれも原本確認により書証としての成立が認められたことから、被請求人としては、審判官合議体の判断に委ねる趣旨であるが、いずれにしても、請求人は上記主張を根拠付ける証拠を何ら提出していないから、被請求人としては、これ以上の説明及び反論の必要を認めない。
(3)請求人の期日におけるその他の主張について
請求人は、第1回口頭審理において、契約書(乙9)第3条に定められた商標「Dynamite!」の使用料金と比較して、請求書(乙14)における「Dynamite!商標使用料」が低廉である点を不自然であると指摘した。
しかしながら、契約書(乙9)第3条に「一大会あたり」と記載されているとおり、ここでの商標使用料金は一大会を通じた全体的な使用を前提としたものであるところ、被請求人は、年末に実施するビッグマッチにふさわしい大会として、当初は「Dynamite!」の名称を使用することを企図し、M-1社はこれをニュースページ(乙3)で告知したが、最終的には諸般の事情により大会当日における「Dynamite!」の使用を断念した。このため、結果的に「Dynamite!」の商標使用はウェブサイト上の告知にとどまったため、被請求人としては、実際の使用に照応すると考える対価を請求したにすぎず、請求書(乙14)の摘要欄にもその旨記載されている。そもそも、商標法第50条1項に定める審判に限らず、登録商標使用の要件として有償性は問題とならないから、期日における被請求人の指摘に何ら理由はないものと思料する。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及びその提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)M-1社は、格闘技興行(イベント)の企画・運営・制作などを事業内容とする企業であって(乙2、乙8、乙10など)、格闘技イベントであるK-1に関する興行の企画・制作をしており(乙10)、また、格闘技イベントなどに関することを内容としたウェブサイト(https://www.k-1.co.jp/)も運営している(乙1~乙3、乙10)。
(2)M-1社は、被請求人の代表取締役が取締役となっており(乙7、乙8)、被請求人のグループ会社であると被請求人は主張している。
(3)乙9は、被請求人とM-1社との間で作成された「商標権使用許諾契約書」(以下「契約書」という場合がある。)であり、本件商標を含む被請求人が所有する商標の通常使用権をM-1社に許諾する旨(契約書第1条ないし第3条)及びその契約期間は2024年1月1日から2024年12月31日までとする記載がある(契約書第7条)。
また、2葉目において、「2024年1月1日」の記載の下に、被請求人とM-1社双方の住所、名称及び代表取締役の氏名の記載並びに捺印がある。
(4)乙3は、M-1社が運営するウェブサイト(https://www.k-1.co.jp/)において、2024年2月17日に掲載された格闘技イベントに関するニュース記事であって、K-1に関する開催スケジュールが決定したとして「2024 K-1 開催スケジュール」の見出しとともに9開催の日程が掲載されており、その9開催目に「2024.12/14 SAT K-1WORLD GP 2024 FINAL「Dynamite!」 日本:代々木第一体育館」との記載がある。
また、その2葉目には「そして10.5大阪(エディオンアリーナ大阪)で最終予選、12.14東京(国立代々木競技場第一体育館)で無差別級世界トーナメント決勝の開催を発表しました。」との記載がある。
(5)乙10は、M-1社が運営するウェブサイト(https://www.k-1.co.jp/)において掲載された「MATCH RESULT」(試合結果)に関する記事であって、2024年12月14日に代々木第一体育館において、開催名を「K-1 WORLD GP 2024 in TOKYO FINAL」とした格闘技イベントの試合結果が対戦カードとともに掲載されている。
また、「GONG」のウェブサイト(https://gonkaku.jp)において、2024年12月14日に掲載された「K-1レポート」と記載された記事には、「K-1 WORLD GP 2024 in TOKYO FINAL「Dynamite!」2024年12月14日(土)東京・国立代々木競技場第一体育館」の記載の下、無差別級トーナメントの決勝(第18試合)の試合結果が対戦カードともに記載されているほか、写真付きのレポートの記事が掲載されている(乙12)。
なお、乙10に掲載されている格闘技イベントにおける第18試合の対戦カードと試合結果は、乙12に掲載されている格闘技イベントにおける決勝(第18試合)のものと同じ内容である。
(6)乙14は、被請求人がM-1社あてに作成した請求書であって、請求の内訳として、2024年12月14日に開催された格闘技イベントにおける「K-1商標利用料」及び「Dynamite!商標利用料」(摘要欄に「※Web宣伝使用料」)の記載及びその金額が記載されており、請求金額の支払期日を2025年1月31日としている。
(7)乙15は、被請求人の銀行口座における2025年1月1日から同月31日までの期間の取引に関する照会結果であって、取引日を2025年1月31日、取引区分を「振込BZ1」、摘要を「カ)エムワンスポーツメデイ」とする欄に入金金額が記載されており、その入金金額と乙14に記載の請求金額は同額である。
2 判断
上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)本件使用商標について
乙3は、M-1社が運営するウェブサイトに掲載された記事であって、格闘技イベントである「K-1」(無差別級トーナメントを含む)に関するものであるところ、当該記事には「2024年の開催スケジュール」の9開催目に「2024.12/14 SAT K-1WORLD GP 2024 FINAL「Dynamite!」」との記載があり、その構成中「Dynamite!」の部分のみカギ括弧を付して、独立して目立つように表されていることから、当該「Dynamite!」の部分(本件使用商標)は、上記他の文字部分から外観上分離して看取されるものであって、かつ、役務の質等を表すものではないことから、独立して役務の出所識別標識としての機能を発揮し得る部分として認識されるものである。
そして、本件商標は、「Dynamite!」の欧文字及び記号を横書きしてなるものであるのに対し、本件使用商標「Dynamite!」も同じ綴りと記号を横書きしてなるものであるから、独立して役務の出所識別標識として理解、認識される本件使用商標「Dynamite!」と本件商標とは、社会通念上同一の商標であると認められる。
(2)本件使用商標の使用時期及び使用地域
乙3における本件使用商標の使用時期(ウェブサイト上の掲載日)は、要証期間内である2024年2月17日であり、また、乙3の記事は、日本国内(東京)での開催を含むものであって、同ウェブサイトは日本語で表示されているものであることから、同ウェブサイトの閲覧対象として、主に日本国内における需要者をその対象として掲載されていたものと認められる。
(3)本件使用商標の使用役務及び使用行為
M-1社は、上記1(1)のとおり、格闘技イベントである「K-1」に関する企画・制作をしている企業であって、上記1(4)のとおり、同社が運営するウェブサイトにおいて、自ら企画・制作する格闘技イベントである「K-1」(無差別級トーナメントを含む)の開催の告知、すなわち、当該イベントの広告を内容とする情報に本件使用商標を付して掲載していたものであることから、M-1社が本件使用商標を「格闘技トーナメント興行の企画・運営又は開催」について使用していたものであるといえる。
なお、請求人は、本件使用商標の使用について、本件審判請求に係る指定役務の実施日が要証期間内であることが求められるべきである旨主張する。
しかしながら、役務が提供される前にその役務に使用する予定の商標をあらかじめ新聞、雑誌、ウェブサイトなどに広告するような場合、その広告は既に商標の使用になるといえるものであって、本件についていえば、要証期間内である2024年2月17日に、開催予定である格闘技イベントに使用する予定の本件使用商標をあらかじめウェブサイト上の広告に使用したものであり、さらに、上記1(5)によれば、その格闘技イベントは、当該広告で告知された開催スケジュールどおり2024年12月14日に開催されたことからも、このウェブサイト上の広告での使用は、単に不使用取消しを免れるためだけの名目的な使用の行為であるとはいえず、この請求人の主張は採用することができない。
(4)本件使用商標の使用者について
上記1(3)によれば、被請求人(本件商標権者)は、2024年1月1日から2024年12月31日までを有効期間として、M-1社に対し、本件商標を使用すること(通常使用権)を許諾する旨の契約を締結したものであるから、M-1社は、本件商標の通常使用権者であることが認められ、乙3において、格闘技イベントの広告に本件使用商標を付してウェブサイト上に掲載された日である同年2月17日は、上記契約の有効期間内である。
なお、乙14(請求書)によれば、2024年12月14日に開催された格闘イベント(K-1 WORLD GP 2024 in TOKYO~FAINAL~)における請求の内訳として「K-1商標利用料」のほか、「Dynamite!商標使用料」が「web宣伝使用料」として記載されており、その請求金額の支払期日は2025年1月31日とされているところ、上記支払期日において、乙14に記載の請求金額と同額を、M-1社が被請求人の銀行口座に振り込んでいることが認められる(乙15)。
そうすると、乙3における格闘技イベントにおけるウェブサイト上の告知(広告)のように、M-1社が「Dynamaite!」の標章についてウェブサイトで使用した使用料(上記の「web宣伝使用料」に該当するとみられるもの)について被請求人に支払を行っているという事実は、M-1社と被請求人との間で、2024年12月14日に開催された格闘イベントに関して、M-1社が本件商標を使用することについて、その使用料金を支払うことを条件に被請求人がM-1社に対してその使用を許諾していたものと推認できることから、乙9(商標権使用許諾契約書)の契約内容が履行されているとみるほか、この事実のみからも、M-1社は、本件商標の通常使用権者であったというのが相当である。
したがって、本件使用商標の使用を含む乙3の記事は、上記契約の有効期間内である2024年2月17日にM-1社が運営するウェブサイト上に掲載されたものであって、かつ、M-1社が本件使用商標を使用することについて、被請求人からその使用の許諾を得ていたものと認められる2024年12月14日に開催された格闘イベントに関するものであるから、M-1社が本件使用商標を含む乙3の記事をウェブサイト上に掲載した行為は、本件商標の通常使用権者としての本件使用商標の使用行為であったと認められる。
(5)小括
以上によれば、本件商標の通常使用権者であるM-1社が、要証期間に日本国内において、本件審判請求に係る指定役務である第41類「格闘技トーナメント興行の企画・運営又は開催」に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を付して、M-1社が運営するウェブサイト上に掲載した行為は、役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法(インターネット)により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)をしていたものと認められる。
3 請求人の主張について
(1)乙3について
ア 請求人は、乙3がM-1社により掲載されたことを示す証拠はない旨主張するが、乙2において、URLを「https://www.k-1.co.jp/」とするウェブサイトの運営会社がM-1社であることが認められ、乙3に印字されたURLも「https://www.k-1.co.jp/」から始まるものであることから、乙3は、M-1社が運営するウェブサイトにおいて掲載されたものであるというのが相当であって、この請求人の主張は採用することができない。
イ 請求人は、乙3は、被請求人が本件審判請求の事実を知ったのちに、本件商標の使用の事実を捏造等するために作成したものである可能性が否定できない旨述べ、その理由として、M-1社は乙3に係る当該ウェブサイトを任意に作成、修正、アップロード等可能な立場にあり、外部記事(乙4、乙5)には改変以前の古い情報が掲載されていることなどを主張する。
しかしながら、被請求人等により乙3が捏造又は改変等されたとする事実を裏付ける証拠等はなく、また、外部記事(乙4、乙5)の内容も、レイアウトや日付等の表記が異なる部分があるなど、乙3の記事をそのまま掲載したものではないことから、外部記事に「Dynamite!」の文字が掲載されていないことなどをもって、直ちに乙3が捏造又は改変等されたものであるということはできず、この請求人の主張は採用することができない。
(2)乙9について
請求人は、乙9は、被請求人とM-1社の関係から両社の合意があれば任意の内容及び日時で作成可能な書類であって、乙9による「正当使用権者による使用」の立証を認めるべきではなく、また、乙9は、本件審判における答弁書提出の段階では提出されず、審尋への応答として提出されているなどの経緯から、乙9は、捏造されたものか、少なくとも、答弁書提出の段階では存在しなかったことが推認される旨主張する。
しかしながら、乙9には、「2024年1月1日」の記載の下に、被請求人とM-1社双方の住所、名称及び代表取締役の氏名の記載並びに捺印があることから、2024年1月1日に被請求人とM-1社双方の意思に基づき作成されたものであると推認される。また、答弁書提出段階において乙9が提出されなかった理由について、被請求人が主張するとおり、被請求人の代表者がM-1社の取締役を務めていることを示すことで足りると考えたため、答弁書とともにM-1社が通常使用権者であることを立証する書証として商業登記情報(乙7、乙8)を提出したところ、請求人が被請求人とM-1社の関係を争い、審尋において、被請求人とM-1社の商標使用許諾の合意を根拠付ける客観的な証拠が求められたため、当該審尋に対する審判事件回答書に添付して、契約書(乙9)の写しを提出したためであるとし、その理由についても特段不自然であるとはいえず、他に被請求人等により乙9が捏造された又は答弁書提出の段階では存在しなかった事実を裏付ける証拠等はないことから、この請求人の主張は採用することができない。
(3)乙14について
請求人は、乙14は、被請求人が単独で作成可能な書類であり、さらに、乙14に記載の「Dynamite!商標使用料」の金額と、乙9に記載の「「Dynamite!」一大会あたり」の金額とが整合していないことなどから、乙14もまた捏造の可能性がある旨主張する。
しかしながら、乙14に記載の請求金額と乙15に記載の被請求人の銀行口座にM-1社が振り込んだ金額とが一致していることから、乙14そのものが直ちに捏造であるとはいい難く、また、乙9と乙14に記載の上記金額が整合しないことについても、被請求人はその理由として、乙9に記載の商標使用料金は一大会を通じた全体的な使用を前提としたものであるところ、当初は「Dynamite!」の名称を使用することを企図し、M-1社はこれをニュースページ(乙3)で告知したが、最終的には事情により大会当日における「Dynamite!」の使用を断念したため、結果的に「Dynamite!」の商標使用はウェブ上の告知にとどまったことから、実際の使用に照応すると考える対価を請求したため一致していない旨主張しており、当該主張は、下記(4)のとおりの実際に開催された格闘技イベントにおける「Dynamite!」の標章に関する使用の実情と矛盾なく説明できるものであって、特段不自然であるとはいえず、他に請求人等により乙14が捏造された事実を裏付ける証拠等はないことから、この請求人の主張は採用することができない。
(4)本件使用商標の使用行為について
請求人は、本件使用商標は、実際の格闘技イベントにおいて全く使用されなかったのであるから、全く実施されることのなかったイベントの告知にすぎない表示により、保護すべき信用が化体していると考えることはできず、「Dynamaite!」というイベントが実際には実施されなかった以上、保護すべき信用は存在しないといえるから、乙3のみの記載を根拠に商標法第2条第3項第8号の使用を認めるべきではない旨主張する。
しかしながら、上記2(3)で述べたとおり、ウェブサイトにおいて本件使用商標を付して格闘技イベントを開催する旨を告知する行為は、「格闘技トーナメント興行の企画・運営又は開催」について使用していたものであるといえ、実際に開催された格闘技イベントにおいて本件使用商標が使用されていなかったとしても、開催スケジュールどおり上記告知のイベントは2024年12月14日に開催されており、また、実際に本件使用商標が使用されなかった理由についても、被請求人はその理由として、年末に実施するビッグマッチにふさわしい大会として「Dynamite!」の名称をこれまで使用してきた歴史があるところ、本件使用商標を使用した大会を2024年の年末に実施することを企図し、それをウェブサイト上で告知したが(乙3)、実際には、選手の手配やスケジュールなどの関係で十分な出場者を確保できなかったため、最終的に「Dynamite!」の使用を断念した旨主張しており、当該主張は、その理由として特段不自然であるとはいえないことから、実際の格闘技イベントにおいて使用されなかったことをもって、乙3をウェブサイト上に掲載した時点において、本件使用商標を使用して格闘技イベントを開催する意思があったことを否定することはできない。したがって、このウェブサイト上の告知(広告)での本件使用商標の使用は、単に不使用取消しを免れるためだけの名目的な使用の行為であるとはいえず、この請求人の主張は採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、通常使用権者が、要証期間に日本国内において、本件審判請求に係る指定役務について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明したと認められる。
したがって、本件商標の登録は、本件審判請求に係る指定役務「格闘技トーナメント興行の企画・運営又は開催」について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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