商標拒絶査定不服審判
2024-018453
スミヨシ
- 審判番号
- 2024-018453
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2023-057686
- 請求日
- 2024年11月01日
- 審決日
- 2025年07月10日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】樽平酒造株式会社
- 【請求人代理人】旦 武尚
- 審判長/審判官
- 審判長 豊瀬 京太郎
- 審判官 清川 恵子
- 審判官 鯉沼 里果
- 分類
- T18 .13 -Z (W33) / T18 .14 -Z (W33) / T18 .17 -Z (W33) / T18 .27 -Z (W33)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法3条1項4号商標法3条2項商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第2項、商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第1項第4号、商標法第3条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2023-57686拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和5年5月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年11月30日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 2月16日 :意見書の提出
令和 6年 7月19日付け:拒絶査定
令和 6年11月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第33類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として登録出願されたものである。
その後、本願の指定商品は、上記1の手続補正書により、第33類「清酒」と補正されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、以下の(1)ないし(3)のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(1)本願商標は、筆文字風の「住吉」の文字を縦書きしてなるところ、当該構成態様は、本願商標に係る指定商品を取り扱う業界において、一般的に使用される構成態様の域を出ないとみるのが相当である。
そして、「住吉」の文字は、「摂津国の歌枕。今の大阪市南部の住吉区のあたり。」の意味を有する語である。
そうすると、本願商標を、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該商品が「大阪府大阪市住吉区及びその周辺地域で生産販売されている商品」であること、すなわち、商品の産地、販売地を表示したものとして認識するものとみるのが相当である。
また、上記認定によれば、本願商標を上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)本願商標は、筆文字風の「住吉」の文字を縦書きしてなるところ、当該構成態様は、本願商標に係る指定商品を取り扱う業界において、一般的に使用される構成態様の域を出ないとみるのが相当である。
そして、「住吉」の文字は、我が国においてありふれた氏の一つと一般に認識されるものである。
そうすると、本願商標は、単にありふれた氏を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
(3)本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり「住吉」の文字を縦書きしてなるところ、当該文字は「住吉」の漢字を一般的な書体である筆文字で表したものといえるものであり、普通に用いられる方法の範ちゅうのものと認められる。
そして、「住吉」は、「摂津国の歌枕。今の大阪市南部の住吉区のあたり。」(出典:広辞苑 第七版 株式会社岩波書店)を意味し、住吉大社や古くからの住宅街を有する大阪市南部の行政区の一として知られる住吉区が存在することから、本願商標に接する取引者、需要者は、これを大阪市南部の行政区である住吉区の区名を表示するものと容易に認識するものといえ、本願商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、その商品が大阪市南部の住吉区周辺で製造、販売されたものであること、すなわち、商品の産地、販売地を表示したものと認識させるものである。
また、本願商標を「大阪市南部の住吉区周辺で製造、販売された商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)商標法第3条第1項第4号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり「住吉」の文字を筆文字風の書体で縦書きしてなるところ、当該書体は普通に用いられる方法の範ちゅうのものと認められる。
そして、「住吉」は、「姓氏の一つ」(同掲書)であり、原審において説示したとおり、我が国においてありふれた氏と認められるものである。
してみれば、本願商標は、ありふれた氏である「住吉」を表したものというべき商標であるから、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
(3)商標法第3条第2項該当性について
請求人は、上記1の手続補正書により、指定商品を「清酒」と補正したうえで、本願商標は、請求人によって長年使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものである旨主張し、証拠方法として、原審において添付1ないし76、当審において添付76ないし85を提出していることから、請求人の主張及び同人が提出した証拠(原審において出願人(請求人)が提出した添付1ないし76は、原審添付1ないし原審添付76、当審において請求人が提出した添付76ないし85は、当審添付76ないし当審添付85と読み替える。)を提出している。
ア 商標法第3条第2項について
ある標章が商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは、出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品の販売数量又は売上高等、当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである(知的財産高等裁判所 平成24年(行ケ)第10285号、平成25年1月24日判決参照)。
また、商標法第3条第2項にいう「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、同法第3条第1項第3号ないし第5号に該当する出所表示機能を欠く商標であっても、永年使用されることにより、特定の者の出所表示としてその商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されるに至っている(特別顕著性がある)をいうと解される(知的財産高等裁判所 平成19年(行ケ)第10127号、同年11月22日判決参照)。
そこで、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するかについて、上記判決に照らし、以下、認定、判断する。
イ 事実認定
請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
(ア)請求人は1695年頃に創業し、1965年に井上酒造から現在の樽平酒造に改名し、「住吉」ブランドの複数種類の清酒を販売している(原審添付74、請求人の主張)。
(イ)筆文字風の書体で縦書きされた「住吉」の文字(以下「使用商標」という。別掲2)が付された清酒又はそのラベルが、1986年から2022年発行の雑誌及びカタログ(原審添付18ないし20、22、23、25ないし28、30、31、33ないし35、39、41、43、44、49ないし51、54、64、67等)並びに請求人ウェブサイト(原審添付74)に掲載された。
(ウ)「住吉」ブランドの清酒が、雑誌、刊行物、カタログ等において紹介された(原審添付18ないし67)。
(エ)2017年7月から2024年6月の出荷本数を銘柄別、月別に表示したとする帳簿の写しに、「住吉」ブランドの清酒名が表示されている(当審添付76ないし81。ただし、当審添付76ないし80の内容は不鮮明である。)。
(オ)「住吉」ブランドの清酒が、漫画「美味しんぼ」3巻及び4巻、漫画「酒のほそ道」25巻に掲載された(原審添付71ないし73)。
(カ)2019年9月から2024年2月の期間において、大阪府及び兵庫県所在の百貨店において「住吉」ブランドを含む清酒の試飲販売が期間限定で実施された(当審添付82)。
(キ)1988年、2008年及び2016年発行の雑誌及び会報に、使用商標を表示した請求人の広告が掲載された(原審添付68ないし70)。
(ク)2015年12月19日から2016年1月13日の期間に、YTS山形テレビにおいて、使用商標を付した清酒が表示された10秒スポットCMが7本放映された(当審添付83)。
ウ 判断
上記イによれば、請求人は、遅くとも1986年頃には、本願商標と同一又はそれと同一性を損なわない範囲の態様と認められる使用商標を商品「清酒」に使用を開始し、現在に至るまで、使用商標を付した商品「清酒」(以下「使用商品」という。)の販売を継続して行っていることが推認し得るものであり、使用商品は、複数の雑誌、刊行物、漫画、カタログ等において紹介されていることが認められる。
しかしながら、使用商品が販売されている店舗は、請求人所在の山形県の他には、関西圏の限定された地域の百貨店における期間限定の試飲販売にとどまり、スーパーや百貨店等が発行するカタログに使用商品が掲載されている事実が確認できるものの、これらカタログの発行部数や頒布の地域及び期間等の事実は明らかではなく、他に使用商品が全国規模で販売されていると認めるに足る証拠の提出はない。
また、使用商標に関する広告宣伝は、雑誌、テレビCM等において数件実施されたのみであり、雑誌等における紹介についても、その回数などからすれば、我が国の全国の需要者に広く認識されていることが推認できるほどに、頻繁に又は大規模に行われていたとは認められない。
さらに、使用商品の販売規模の多寡については、請求人が提出した使用商品の出荷本数に係る資料の多く(当審添付76ないし80)は不鮮明なものであり、出荷本数を把握できる資料(当審添付81)についてみても、売上高の記載はなく、本願指定商品の分野における使用商品の占める市場シェア等は不明であって、記載された出荷本数から、他者の同種のものと比べて著しく大きいものであると客観的及び相対的に評価、判断することはできない。
そして、需要者の認識度を客観的に示す証拠(アンケート結果など)は提出されていない。
以上のことからすると、提出された証拠をもってしては、本願商標が、その指定商品との関係において、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとは認められないから、本願商標は、商標法第3条第2項に規定する要件を具備しない。
(4)請求人の主張について
請求人は、使用商品は、山形県のみ等というものではなく、東京や大阪等、大都市において古くより親しまれてきたものであり、特段大々的に全国的なテレビCMなどを行わなくとも、新聞や雑誌などにおいて広告されているものであると共に愛飲家に古くより親しまれた銘柄の清酒であって、清酒に関係する多くの一般需要者にとっては何人かに係る商標であることを認識できる極めて著名な商標である旨主張する。
しかしながら、請求人の上記主張を客観的に裏付ける証拠の提出がない上、上記(3)のとおり、使用商品の販売や宣伝広告の規模は決して大きいということはできない。加えて、本願の指定商品を取り扱う業界の市場規模が不明であり、それを踏まえた使用商品の市場シェア等についての具体的な証拠も何ら提出されていないことから、使用商品が需要者の間に広く認識されたものと評価することはできない。
そうすると、本願商標が、その指定商品に使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできないことから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号、同項第4号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであって、また、同法第3条第2項に規定する要件を具備するものともいえないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-018453