特許拒絶査定不服審判
2024-015763
微粒子汚染を有するモノアルキルスズトリアルコキシド及び/又はモノアルキルスズトリアミド、並びに対応する方法
- 審判番号
- 2024-015763
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-203172
- 請求日
- 2024年10月02日
- 審決日
- 2025年11月11日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】インプリア・コーポレイション
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】式見 真行
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 高松 大
- 審判官 川村 大輔
- 分類
- P18 .113-Z (G03F) / P18 .121-Z (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-203172「微粒子汚染を有するモノアルキルスズトリアルコキシド及び/又はモノアルキルスズトリアミド、並びに対応する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 3月14日出願公開、特開2023- 36768〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2022-203172号(以下「本件出願」という。)は、令和2年1月22日(パリ条約に基づく優先権主張 2019年1月30日 米国)に出願した特願2020-8700号の一部を、2022年(令和4年)12月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年12月22日 :上申書、手続補正書の提出
令和5年10月27日付け:拒絶理由通知書
令和6年 2月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 5月21日付け:拒絶査定
令和6年10月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 5月 9日 :上申書の提出
(以下、令和6年10月2日に提出された手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1~14に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のものである。
「放射線感受性有機金属組成物を濾過するための装置であって、
周囲雰囲気から閉鎖される容器であって、出口および入口を含む複数のポートを備えるように構成された容器、
1以上のインペラー型ポンプ、
1以上のフォトレジストグレードのフィルター、
フロー内の粒子濃度を測定するように構成された粒子アナライザー、ならびに
フローが入口に、収集容器に、更なる濾過構成に、又はウエハートラックへの送達のプロセスラインに至るようにフローを選択的に方向付ける1以上のバルブ
を有して成り、
溶媒および前記放射線感受性有機金属組成物を含んで成る流体のフローが出口、1以上のインペラー型ポンプ、1以上のフォトレジストグレードのフィルター、粒子アナライザー、および1以上のバルブを通して方向付けられ、
前記有機金属組成物が、モノアルキルスズトリアルコキシド又はモノアルキルスズトリアミドを含んで成る、装置。」
3 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、(新規性・進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、あるいは、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2009-276487号公報
第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2009-276487号公報)は、本件優先日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。
なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す(以下同様。)。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト樹脂含有溶液の製造方法、レジスト樹脂含有溶液、及びろ過装置に関する。更に詳しくは、脈動を発生し難くすることによって、微粒子などの異物の含有量を効率的に低減させたレジスト樹脂含有溶液を得ることが可能なレジスト樹脂含有溶液の製造方法、この製造方法によって得られるレジスト樹脂含有溶液、及びレジスト樹脂含有溶液の製造方法に用いるろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レジスト材料を使用したリソグラフィ技術の進歩により、半導体素子や液晶表示素子の微細化が急速に進行している。微細化の方法としては、露光光を短波長化することや、液浸露光が知られている。
【0003】
このように半導体素子や液晶表示素子の製造にはレジスト材料が使用されるが、このレジスト材料を使用した場合、形成されるレジストパターンの表面に欠陥(即ち、ディフェクト)が生じやすいという問題があった。このディフェクトは、現像後のレジストパターンを上部から観察した際に検知される不具合全般のことであり、ディフェクトが発生する要因の一つとしては、例えば、溶液状態のレジスト材料(レジスト樹脂含有溶液)中に固形状の異物が存在することなどが挙げられる。
【0004】
最近では、高解像度のパターンニングが要求されるようになり、ディフェクトの改善が試みられている。例えば、微粒子などの異物を除去するために、ミクロン単位の孔径の小さいフィルタにレジスト樹脂含有溶液を通液させ、ろ過を行った後、容器に充填して製品とする方法、いわゆる1回通過方式が知られている。しかし、このような1回通過方式は、製造開始時において、フィルタから充填口までの流路内部に異物(微粒子など)が存在しているおそれがある。そのため、製品(レジスト樹脂含有溶液)に微粒子などの異物が混入してしまうことを防止するために十分な端きりをする必要性があり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
そこで、レジスト材料を、フィルタが設置された閉鎖系内を循環させることによって、レジスト材料中の異物の含有量を低減する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002-62667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、最先端の分野で要求されるレベル以下にまでディフェクトの発生を抑制することが可能なレジスト材料を得ることは困難であった。即ち、特許文献1に記載の方法は、レジスト材料を循環させてろ過する際に、ポンプで送液を行うため、ポンプに由来する異物(微粒子など)が混入する場合があった。また、ポンプを使用することに起因して、循環するレジスト材料に大きな脈動が生じる。そのため、一度フィルタに捕捉された異物が、フィルタから抜け出てしまうという問題があった。そのため、レジスト樹脂含有溶液中の微粒子などの異物の含有量を十分に低減させることが困難であった。そこで、得られるレジスト樹脂含有溶液中の、微粒子などの異物の含有量を効率的に低減させることが可能なレジスト樹脂含有溶液の製造方法が切望されていた。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、脈動を発生し難くすることによって、微粒子などの異物の含有量を効率的に低減させたレジスト樹脂含有溶液を得ることが可能なレジスト樹脂含有溶液の製造方法、この製造方法によって得られるレジスト樹脂含有溶液、及びレジスト樹脂含有溶液の製造方法に用いるろ過装置を提供するものである。」
イ 「【発明の効果】
【0017】
本発明のレジスト樹脂含有溶液の製造方法は、脈動を発生し難くすることによって、微粒子などの異物の含有量を効率的に低減させたレジスト樹脂含有溶液を得ることができるという効果を奏するものである。
【0018】
本発明のレジスト樹脂含有溶液は、微粒子などの異物の含有量が低減されているため、ディフェクトの発生が少ないという効果を奏するものである。
【0019】
本発明のろ過装置は、脈動が発生し難いものであるため、微粒子などの異物の含有量を効率的に低減させたレジスト樹脂含有溶液を得ることができるという効果を奏するものである。」
ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
・・・略・・・
【0029】
[1-2]ろ過工程:
本実施形態のレジスト樹脂含有溶液の製造方法は、レジスト樹脂と微粒子とを含有する原溶液から前記微粒子を除去するろ過工程を含むものであり、このろ過工程は、原溶液を、ろ過装置内を循環させて行う。
【0030】
[1-2-1]ろ過装置:
ろ過装置としては、図1に示すように、排液口付近に開閉バルブ11aが配置され、原溶液を貯留し、その内部を加圧可能な加圧タンク11と、加圧タンク11から排液される原溶液をろ過するフィルタを有するろ過器13と、ろ過器13のフィルタによってろ過されたフィルタ処理液を貯留する緩衝タンク15と、緩衝タンク15に貯留されたフィルタ処理液を加圧タンク11に投入する投入ポンプ17と、加圧タンク11内に不活性ガスを供給するガス供給器19とを備え、加圧タンク11内の圧力を、ガス供給器19から供給される不活性ガスによって所定の圧力に加圧し、加圧された加圧タンク11内の圧力によって、加圧タンク11から原溶液を排液するろ過装置100を例示することができる。更に、図1に示すろ過装置100は、加圧タンク11とろ過器13とを接続する第一配管、ろ過器13と緩衝タンク15とを接続する第二配管、緩衝タンク15と投入ポンプ17とを接続する第三配管、投入ポンプ17と加圧タンク11とを接続する第四配管、第一配管の途中に配置された流量計21、流量計21とろ過器13との間に配置された圧力計23、ろ過器13と緩衝タンク15との間に配置された圧力計25、及び、第三配管の途中で分岐する充填口を有する充填用配管を備えている。ろ過装置100は、原溶液から微粒子を除去してレジスト樹脂含有溶液を得た後、レジスト樹脂含有溶液が充填用配管に流れるよう流路を変更し、充填用配管の先端部に配置した充填用容器31にレジスト樹脂含有溶液を充填するものである。なお、図1は、本発明のレジスト樹脂含有溶液の製造方法に用いるろ過装置の一実施形態を示す模式図である。
【0031】
このようなろ過装置を用いると、このろ過装置内を循環する原溶液が脈動を発生に難いという利点がある。即ち、フィルタ前後の圧力差の変動量が小さくなるという利点がある。図2は、図1のろ過装置を用いた場合の、ろ過時間とフィルタ前後の圧力差の値との関係を示すグラフであり、ΔP1は、所定時間内における、フィルタ前後の圧力差の最大値と最小値との変動量を示している。
・・・略・・・
【0035】
一方、本実施形態のレジスト樹脂含有溶液の製造方法は、図1に示すろ過装置100のようなろ過装置を用いるものであり、加圧タンク内の圧力を、ガス供給器から供給される不活性ガスによって所定の圧力に加圧し、加圧タンク内の圧力によって原溶液を排液する。このように加圧タンク内の圧力によって原溶液を送液するため、原溶液に脈動を発生させ難いという利点がある。そして、原溶液に生じる脈動が小さいと、フィルタに捕捉した微粒子などの異物がフィルタから抜け出てしまうことを防止することができるため、得られるレジスト樹脂含有溶液中の異物の含有量を効率的に低減させることができる。
・・・略・・・
【0038】
加圧タンクは、原溶液を貯留し、その内部を加圧可能なものである限り特に制限はないが、例えば、その上部に配置される、原溶液を投入するための原溶液投入口と、その下部に配置される、原溶液を排出するための原溶液排出口と、その上部に配置される、不活性ガスを供給するためのガス供給口と、加圧タンク内の圧力(内圧)を測定する内圧計と、貯留されている原溶液を撹拌する撹拌器と、フィルタ処理液が投入されるためのフィルタ処理液投入口と、原溶液排出口に配置された開閉バルブとを備えるものであることが好ましい。
【0039】
ろ過器は、加圧タンクから排液される原溶液をろ過するフィルタを有するものであり、例えば、一つの上記フィルタと、原溶液を供給するための供給口と、フィルタによってろ過されたろ液(フィルタ処理液)を排出するための排出口と、を備えるものなどを例示することができる。このようなろ過器としては、具体的には、直径72~1500mm、高さ100~3000mmの円柱状のものなどを挙げることができる。なお、ろ過器のサイズが大きくなる程、または、ろ過装置が大きくなる程、外乱因子が多く、またデッドスペースが大きくなるため、原溶液の脈動によってフィルタから抜け出てしまう異物の割合が増加する。そのため、ろ過装置(またはろ過器)が大きくなる程、脈動を低減させることが重要になる。
【0040】
フィルタとしては、例えば、中空糸膜フィルタ、イオン交換樹脂などを挙げることができる。これらは、カートリッジタイプのフィルタを用いることができる。フィルタの孔径は、特に制限はないが、0.005~0.5μmであることが好ましく、0.005~0.1μmであることが更に好ましく、0.005~0.05μmであることが特に好ましい。上記圧力が0.005μm未満であると、フィルタにおける圧力損失が大きくなりすぎるため、十分な流速で原溶液を送液することが困難になり、レジスト樹脂含有溶液の製造時間が長くなるおそれがある。一方、0.5μm超であると、原溶液中の微粒子を十分に除去することが困難になるおそれがある。なお、本明細書において「フィルタの孔径」とは、30nm超の孔径については、そのフィルタによる、標準粒子(即ち、ポリスチレン粒子)の除去率によって決定される平均粒径を意味し、30nm未満の孔径については、バブルポイントによって推定されるメーカー公称値を意味する。
・・・略・・・
【0045】
投入ポンプとしては、従来公知のポンプを用いることができる。例えば、ベローズポンプ、ダイヤフラムポンプ、磁気浮上型渦巻ポンプなどを挙げることができる。
・・・略・・・
【0048】
上記ろ過装置としては、上述した、加圧タンク、ろ過器、緩衝タンク、投入ポンプ、及びガス供給器以外に、流量計、圧力計などを備えていてもよい。
【0049】
なお、ろ過装置中の加圧タンク、ろ過器、緩衝タンク、投入ポンプ、及びガス供給器などの機器をそれぞれ接続する配管の長さは、短くすることが好ましい。配管の長さを短くすると、微粒子などの異物が溜まるデッドスペースを減らすことができる。
・・・略・・・
【0052】
本実施形態のレジスト樹脂含有溶液の製造方法のろ過工程は、原溶液を、連続的にろ過装置内を循環させて行うことができる。
【0053】
原溶液を、連続的にろ過装置内を循環させる方法を、図1に示すろ過装置100を用いて具体的に説明する。まず、原溶液を貯留した加圧タンク11の開閉バルブ11aを閉じた状態で、加圧タンク11内に、ガス供給器19)から不活性ガスを供給し、加圧タンク11内の圧力が所定の圧力になるまで加圧する。次に、開閉バルブ11aを徐々に開け、加圧タンク11内の圧力を維持した状態で、加圧タンク11内の圧力によって加圧タンク11からろ過器13に原溶液を送液し、ろ過器13で原溶液をろ過し、ろ液(フィルタ処理液)を緩衝タンク15に貯留する。次に、ろ過器13でろ過を続けた状態で、緩衝タンク15内のフィルタ処理液を、投入ポンプ17によって加圧タンク11内に投入する。このとき、加圧タンク11内の液面が一定に保たれるように、加圧タンク11からろ過器13に送液する溶液の送液量と、投入タンク17から加圧タンク11に供給する溶液の供給量とのバランスを調節する。以上のように原溶液を処理することを、連続的に循環させるということとする。
・・・略・・・
【0057】
[2]レジスト樹脂含有溶液:
本発明のレジスト樹脂含有溶液の一実施形態は、本発明のレジスト樹脂含有溶液の製造方法によって製造されるものである。このようなレジスト樹脂含有溶液は、微粒子などの異物の含有量が低減されているため、ディフェクトの発生が少ないものである。
【0058】
[3]ろ過装置:
本発明のろ過装置の一実施形態は、レジスト樹脂と微粒子とを含有する原溶液を貯留し、その内部を加圧可能な加圧タンクと、加圧タンクから排液される原溶液をろ過するフィルタを有するろ過器と、ろ過器のフィルタによってろ過されたフィルタ処理液を貯留する緩衝タンクと、緩衝タンクに貯留されたフィルタ処理液を加圧タンクに投入する投入ポンプと、加圧タンク内に不活性ガスを供給するガス供給器と、を備え、加圧タンク内の圧力を、ガス供給器から供給される不活性ガスによって所定の圧力に加圧し、加圧された加圧タンク内の圧力によって、加圧タンクから原溶液を排液するものである。このようなろ過装置は、脈動が発生し難いものであるため、微粒子などの異物の含有量を効率的に低減させたレジスト樹脂含有溶液を得ることができる。
【0059】
本実施形態のろ過装置は、上記[1-2-1]で説明したろ過装置と同様のものを用いることができる。」
エ 「【図1】
[図:0001433719000001.jpg]
」
(2)引用発明1
ア 引用文献1の【0038】における「加圧タンクは、・・・その下部に配置される、原溶液を排出するための原溶液排出口・・・を備えるものであることが好ましい。」との記載、同【0039】における「ろ過器は、加圧タンクから排液される原溶液をろ過するフィルタを有するものであ」るとの記載、同【0049】における「ろ過装置中の加圧タンク、ろ過器、緩衝タンク、投入ポンプ、及びガス供給器などの機器をそれぞれ接続する配管の長さは、短くすることが好ましい。」との記載によれば、引用文献1に記載された「ろ過装置」は、原溶液排出口、ろ過器、緩衝タンク、投入ポンプ、及びガス供給器が配管によって接続したものと認められる。
イ 上記(1)及びアによれば、引用文献1には、図1に記載された実施形態に係る「ろ過装置」の発明として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。なお、括弧内の数字は、引用文献1において引用発明1の認定根拠となった段落番号を示す。
「排液口付近に開閉バルブが配置され、原溶液を貯留し、その内部を加圧可能な加圧タンクと、加圧タンクから排液される原溶液をろ過するフィルタを有するろ過器と、ろ過器のフィルタによってろ過されたフィルタ処理液を貯留する緩衝タンクと、緩衝タンクに貯留されたフィルタ処理液を加圧タンクに投入する投入ポンプと、加圧タンク内に不活性ガスを供給するガス供給器とを備え、加圧タンク内の圧力を、ガス供給器から供給される不活性ガスによって所定の圧力に加圧し、加圧された加圧タンク内の圧力によって、加圧タンクから原溶液を排液するろ過装置であって、
ろ過装置は、原溶液から微粒子を除去してレジスト樹脂含有溶液を得た後、レジスト樹脂含有溶液が充填用配管に流れるよう流路を変更し、充填用配管の先端部に配置した充填用容器にレジスト樹脂含有溶液を充填し、
(【0030】)
加圧タンクは、原溶液を貯留し、その上部に配置される、原溶液を投入するための原溶液投入口と、その下部に配置される、原溶液を排出するための原溶液排出口を備え、(【0038】)
ろ過器は、加圧タンクから排液される原溶液をろ過するフィルタを有するものであり、(【0039】)
フィルタの孔径は、0.005~0.5μmであり、(【0040】)
投入ポンプは、磁気浮上型渦巻ポンプであり、(【0045】)
原溶液排出口、ろ過器、緩衝タンク、投入ポンプ、及びガス供給器が配管によって接続した、(上記アの認定事項)
ろ過装置。」
第3 進歩性についての判断
1 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)濾過装置
引用発明1の「ろ過装置」は、技術的にみて、本願発明の「濾過するための装置」及び「装置」に相当する。
また、引用発明1の「レジスト樹脂含有溶液」は、技術的にみて、本願発明の「放射線感受性有機金属組成物」と「放射線感受性」「組成物」である点で共通する。
してみると、引用発明1の「ろ過装置」は、「原溶液から微粒子を除去してレジスト樹脂含有溶液を得」るものであるから、引用発明1の「ろ過装置」と、本願発明の「濾過するための装置」は、「放射線感受性」「組成物」を濾過するものである点で共通する。
(2)容器
引用発明1の「加圧タンク」は、「原溶液を貯留」するものであるから、技術的にみて、本願発明の「容器」に相当する。
また、引用発明1の「加圧タンク」は、技術的にみて、本願発明の「容器」における「周囲雰囲気から閉鎖される」という要件を満たすものである。
さらに、引用発明1の「加圧タンク」は、「その上部に配置される、原溶液を投入するための原溶液投入口と、その下部に配置される、原溶液を排出するための原溶液排出口を備え」るものであるところ、当該「原溶液投入口」及び「原溶液排出口」は、本願発明の「入口」及び「出口」に相当する。
してみると、引用発明1の「加圧タンク」は、技術的にみて、本願発明の「容器」における「出口および入口を含む複数のポートを備えるように構成され」るという要件を満たすものである。
(3)インペラー型ポンプ
引用発明1の「磁気浮上型渦巻ポンプ」が、本願発明の「インペラー型ポンプ」に相当することは技術常識である。(必要ならば、特開2007-14937号公報の【0102】、特開2006-205040号公報の【0014】参照)。
(4)フォトレジストグレードのフィルター
ア 「フォトレジストグレードのフィルター」の解釈
対比に先立ち、本願発明の「フォトレジストグレードのフィルター」における「フォトレジストグレード」という用語の解釈について検討する。
本件補正後の請求項6等は請求項1の記載を引用するものであるところ、当該請求項6に係る発明において、はじめて「1以上のフォトレジストグレードのフィルター」の「粒子濾過精度」が特定されていることに照らせば、本願発明における「フォトレジストグレードのフィルター」とは、レジストに通常要求される最低限の不純物濃度レベルが得られる程度の濾過性能を備えたフィルターを意味すると解するのが相当である。
イ 対比
ここで、引用発明1の「ろ過器のフィルタ」は、「レジスト樹脂含有溶液」の「原溶液をろ過する」ものであるところ、引用発明1の「ろ過装置」における「フィルタ処理液」は、「微粒子を除去してレジスト樹脂含有溶液を得た後、レジスト樹脂含有溶液が充填用配管に流れるよう流路を変更し、充填用配管の先端部に配置した充填用容器にレジスト樹脂含有溶液を充填」して使用に供されるものである。
そうすると、上記解釈及びフィルタの機能に照らせば、引用発明1の「ろ過器のフィルタ」は、「フォトレジストグレードのフィルター」に相当するといえる。
(5)流体のフロー
引用発明1の「ろ過装置」は、「原溶液排出口、ろ過器、緩衝タンク、投入ポンプ、及びガス供給器が配管によって接続した」ものであるから、技術的みて、本願発明の「(濾過するための)装置」と、「放射線感受性組成物組成物を含んで成る流体のフローが出口、1以上のインペラー型ポンプ、1以上のフォトレジストグレードのフィルターを通して方向付けられる」点で共通する。
以上(1)~(5)を総合すると、本願発明と引用発明1は、
「放射線感受性組成物を濾過するための装置であって、
周囲雰囲気から閉鎖される容器であって、出口および入口を含む複数のポートを備えるように構成された容器、
1以上のインペラー型ポンプ、
1以上のフォトレジストグレードのフィルター、ならびに
放射線感受性組成物組成物を含んで成る流体のフローが出口、1以上のインペラー型ポンプ、1以上のフォトレジストグレードのフィルターを通して方向付けられる、装置。」
である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点1]
本願発明の「装置」は、「溶媒」及び「モノアルキルスズトリアルコキシド又はモノアルキルスズトリアミドを含んで成る」「放射線感受性有機金属組成物」を含む「流体」を「濾過するため」のものであるのに対し、引用発明1の「ろ過装置」は、「レジスト樹脂含有溶液」の「原溶液」をろ過するためのものである点。
[相違点2]
本願発明の「装置」は、「フロー内の粒子濃度を測定するように構成された粒子アナライザー」を有しているのに対し、引用発明1は、このような粒子アナライザーを有していない点。
[相違点3]
本願発明の「装置」は、「1以上のバルブを有してなり」、当該「1以上のバルブ」が、「フローが入口に、収集容器に、更なる濾過構成に、又はウエハートラックへの送達のプロセスラインに至るようにフローを選択的に方向付け」、さらに「溶媒および前記放射線感受性有機金属組成物を含んで成る流体のフローが出口、1以上のインペラー型ポンプ、1以上のフォトレジストグレードのフィルター、粒子アナライザー、および1以上のバルブを通して方向付けられ」るように構成されているのに対して、引用発明1は、上記方向付けを行う1以上のバルブを備えるか否かが不明である点。
2 相違点についての判断
(1)相違点1について
ア 「放射線感受性有機金属組成物を濾過するための装置」の解釈
相違点1に係る本願発明1の「放射線感受性有機金属組成物を濾過するための」との特定事項は、「装置」についての、いわゆる用途限定である(以下、上記特定事項に係る限定を「本件限定」という。)。
そして、用途限定が付された物がその用途に特に適した物を意味する場合は、当該用途限定が付された物を、その用途が意味する形状、構造、組成等(以下「構成等」という。)を有する物であると解すべきであるが、そうでない場合は、いわゆる用途発明に該当する場合を除き、当該用途限定は物を特定するための意味を有さないと解するのが相当である。
ここで、用途発明とは、(i)ある物の未知の属性を発見し、(ii)この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明である(特許・実用新案審査基準 第III部 第2章 第4節 「3.物の用途を用いてその物を特定しようとする記載(用途限定)がある場合」を参照。)と解されるところ、本願発明が「装置」の発明であること、本願発明の「(濾過するための)装置」が、従来濾過対象と当業者に認識されていなかった放射線感光性有機金属組成物が新たに濾過対象となることが発見された(未知の属性による新たな用途の発見)などの事情は見いだせないから、本件限定を備えた本願発明を用途発明と解すべき余地はない。そして、このことは、請求人も認めるところである。(令和6年2月6日提出の意見書3頁下から14行~9行)。
そこで、以下、本件発明の「装置」が「放射線感受性有機金属組成物を濾過するための」という本件限定に特に適した物(装置)を意味しているといえるかについて検討する。
(ア) レジストパターンの欠陥の要因の一つである、放射線感受性組成物に含まれる異物を除去するためにろ過を行うことは、本件出願の優先日前における技術常識である(引用文献1の【0003】、【0004】)。
(イ) ここで、放射線感受性組成物は、通常、感光性樹脂、非感光性バインダー、モノマー、重合開始剤及びその他添加剤といった原料成分を含むものであるところ、本件出願の優先日前において、様々な原料成分を用いた組成が多岐に渡る組成物が知られており、一般に濾過装置とは、こうした多岐に渡る様々な組成物に含まれる微粒子の除去のための濾過に用いることができる装置であって、特定の組成物の濾過にのみに用いることができる性質のものでないことは明らかである。
(ウ) そして、本願発明の「濾過するための装置」が備える発明特定事項である「容器」、「インペラー型ポンプ」、「フォトレジストグレードのフィルター」、「粒子アナライザー」及び「バルブ」といった各構成機器・部材を備えたものは、本件出願の優先日前に公知又は周知であり(上記1(2)~(5)、下記(2)及び(3)参照)、前記「フォトレジストグレードのフィルター」について放射線感受性有機金属組成物に特有の濾過性能が特定されたものでないことは上記1(4)で述べたとおりであり、さらには、上記「容器」について「周囲雰囲気から閉鎖される」との特定があるものの、当該閉鎖の程度が放射線感受性有機金属組成物に求められる特有のものであるとの技術常識も認められない。
そうすると、本件限定が付された本願発明の「装置」が「放射線感受性有機金属組成物を濾過するための」という用途に特に適した物を意味しているとはいえない。
(エ) その他、本件明細書等の記載をみても、本件限定が付された本願発明の「装置」が「放射線感受性有機金属組成物を濾過するため」に特に適した物を意味すると解すべき根拠はない。
(オ) よって、本願発明の「装置」が、「放射線感受性有機金属組成物を濾過するための」という本件限定に特に適した物を意味しているとはいえない。
イ 上記アで検討したとおり、本件限定は、本願発明の「装置」が「放射線感受性有機金属組成物を濾過するため」に特に適した物であることを特定するものではない。そして、このことは濾過対象が、「溶媒」及び「モノアルキルスズトリアルコキシド又はモノアルキルスズトリアミドを含んで成る」「放射線感受性有機金属組成物」であっても同様である。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
また、仮に、相違点1が実質的な相違点であったとしても、モノアルキルスズトリアルコキシド又はモノアルキルスズトリアミドを含んで成る放射線感受性有機金属組成物は、本件優先日前に周知であり(例えば、特表2018-502173号公報(特に【請求項1】、【0021】、【実施例】等参照)、特表2016-530565号公報、(特に【0070】等参照)、特表2019-500490号公報(特に【0023】~【0027】、【実施例】等参照))、引用発明1の「ろ過装置」における濾過対象として、「レジスト樹脂含有溶液」の「原溶液」に換えて、溶媒及びモノアルキルスズトリアルコキシド又はモノアルキルスズトリアミドを含んで成る放射線感受性有機金属組成物を選択し、これを濾過するのに適した構成となし、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について
ア 濾過装置に配置される粒子測定装置に関する周知技術の認定
濾過装置において、フロー内の粒子濃度を測定するように構成された粒子測定装置を配置することは、本件出願の優先日前における周知技術である(例えば、特開2006-24882号公報(特に【0025】、【図10】等参照)、特開2009-190921号公報(特に【0021】、【図1】等参照)、国際公開第2017/119350号(特に[0082])及び特開2016-51862号公報(特に【0029】~【0031】、【図7】等参照))。
イ 検討
引用発明1が濾過装置の発明である以上、その本来の目的(濾過)に照らせば、原溶液から微粒子を除去した後の溶液(フィルタ処理液)の微粒子濃度を測定する動機づけがあるから、例えば、引用発明1のフローにおける「ろ過器のフィルタ」の下流かつ緩衝タンクの上流位置に、上記周知技術である粒子測定装置を配置して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明1が奏するとされる粒子数を連続的にモニターできるとの効果及び選択された粒子数の値又は値の範囲のフローを方向付けできるとの効果(審判請求書6頁15~16行)は、上記周知技術である「フロー内の粒子濃度を測定するように構成された」粒子測定装置によって奏される効果として当業者が予測し得る効果であって格別顕著なものとはいえない。(必要ならば、国際公開第2017/119350号(特に[0082])及び特開2016-51862号公報(特に【0031】、【図7】等参照)
(3)相違点3について
ア 「1以上のバルブを有してなり」との構成
(ア) 引用発明1の「ろ過装置」は、「原溶液から微粒子を除去してレジスト樹脂含有溶液を得た後、レジスト樹脂含有溶液が充填用配管に流れるよう流路を変更し、充填用配管の先端部に配置した充填用容器にレジスト樹脂含有溶液を充填」するものである。
ここで、バルブは、一般に流路の変更をする常套手段であるから、引用発明1における上記「流路」の「変更」は、1以上のバルブによるものであるといえる。
したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。
また、バルブの有無が相違点でなければ、後記イ~ウに示す理由と同様の理由により、相違点3に係る本願発明の他の構成もまた実質的な相違点ではない。
(イ) 次に、バルブの点が実質的な相違点であった場合について検討する。
引用発明1において、流路を変更する手段として、常套手段であるバルブを採用することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内の事項である。
そして、引用発明1が、上記流路の変更がバルブによるものと認められる以上(あるいはバルブを採用することが容易である以上)、上記相違点1及び2に係る構成を採用し、バルブを有する(採用した)引用発明1の「ろ過装置」(以下「改変後の引用発明1」という。)は、後記イ~ウに示すとおり、相違点3に係る本願発明1の他の構成も具備することとなる。
イ 「溶媒および前記放射線感受性有機金属組成物を含んで成る流体のフローが出口、1以上のインペラー型ポンプ、1以上のフォトレジストグレードのフィルター、粒子アナライザー、および1以上のバルブを通して方向付けられ」るとの構成
改変後の引用発明1において、「溶媒」及び「放射線感受性有機金属組成物」を含んで成る流体のフローは、「原溶液排出口」、「ろ過器」(の「フィルタ」)、「粒子測定装置(粒子アナライザー)」、「緩衝タンク」、「1以上のバルブ」、「投入ポンプ(インペラー型ポンプ)」「が配管によって接続した」流路に沿って方向付けられるものである。このことは、改変後の引用発明1が、本願発明の「溶媒および前記放射線感受性有機金属組成物を含んで成る流体のフローが出口、1以上のインペラー型ポンプ、1以上のフォトレジストグレードのフィルター、粒子アナライザー、および1以上のバルブを通して方向付けられ」との構成を具備している。
ウ 「1以上のバルブ」が、「フローが入口に、収集容器に、更なる濾過構成に、又はウエハートラックへの送達のプロセスラインに至るようにフローを選択的に方向付ける」との構成
上記「1以上のバルブ」が、「フローが入口に、収集容器に、更なる濾過構成に、又はウエハートラックへの送達のプロセスラインに至るようにフローを選択的に方向付ける」との構成(以下「本構成」という。)は、「1以上のバルブ」の機能を特定したものであるところ、その文言から明らかなように、フローが選択的に方向付けられる先は、「入口」、「収集容器」、「更なる濾過構成」及び「ウエハートラックへの送達のプロセスライン」から選択される任意の方向であることを意味すると理解される。
上記理解は、本構成の補正の根拠とされた、本件補正前の請求項3における「1以上の圧力トランデューサーは、および、流量計、ならびに、フローが入口に、収集容器に、更なる濾過構成に、または、ウエハー・トラックへの送達のプロセスラインに、又はそれらの組み合わせに至るようにフローを選択的に方向付ける1以上のバルブを更に有して成る」との記載(下線は当合議体が付したものである。)や、本件出願の図2に記載された実施形態についての、本件明細書【0049】~【0050】の記載(入口146と収集容器164に選択的に方向付けるバルブ165を有する実施形態や、バルブ166を使用して再循環配置において濾過された流れを収集容器168に迂回させる別の実施形態についての記載)からも理解できる事項である。
そして、改変後の引用発明1における「バルブ」は、上記アで述べたとおり、「原溶液から微粒子を除去してレジスト樹脂含有溶液を得た後、レジスト樹脂含有溶液が充填用配管に流れるよう流路を変更し、充填用配管の先端部に配置した充填用容器にレジスト樹脂含有溶液を充填」する構成における流路を変更する位置(引用文献1の図1において、流路から充填用容器31に分岐される分岐点近傍)に配置されるものである。そうすると、上記「バルブ」は、少なくともフローを[A]充填用容器31(本願発明の「収集容器」)及び[B]投入ポンプから加圧タンクの「原溶液を投入するための原溶液投入口」の2つの方向(任意の方向)に選択的に方向付ける機能を果たすものである。
したがって、上記理解を前提とすれば、改変後の引用発明1は、相違点3のうちの本構成を具備している。
エ 相違点3についてのまとめ
上記ア~ウによれば、相違点3は実質的な相違点ではない。
あるいは、引用発明1において、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(4)審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張の概略
審判請求人は、令和3年6月22日付けの審判請求書において、概略、以下の点を主張している。
(ア)主張1
本願発明が、粒子数を連続的にモニターでき、選択された粒子数の値または値の範囲に従ってフローを方向付けできるのに対して、引用発明1は、所望の粒子数を提供するために、濾過時間または濾過サイクル数の使用に重点を置いている点。
(イ)主張2
引用発明1は、有機高分子樹脂ベースの前駆体溶液の濾過に指向されているのに対して、本願発明の装置は、特にこれらの有機金属組成物の使用に適したように設計されており、特に、この装置は、水(周囲の水を含む)との早期/不用意な接触および、他の金属による汚染の混入を回避するように設計されている点。
(ウ)主張3
引用文献1は、フローを選択的に方向付ける1つ以上のバルブと共に、フローとインラインにある(in-line)粒子アナライザーを備えた装置を提供することを教示も示唆もしていない点。
イ 上記主張についての検討
(ア)主張1について
粒子数を連続的にモニターできる点及び選択された粒子数の値または値の範囲に従ってフローを方句付けできる点は、本願発明が奏する有利な効果を主張しているものと解される。
しかしながら、上記2(2)イで検討したとおり、上記効果は、当業者が予測可能なものであって格別顕著なものでない。そして、引用発明1が所望の粒子数を提供するために濾過時間または濾過サイクル数の使用に重点を置いているとの主張は、引用文献1の【表1】、【0069】~【0073】の記載を根拠にしたものであるが、当該記載における濾過時間または濾過サイクル数は、脈動が発生し難い製造方法(装置)と発生し易い製造方法(装置)について微粒子などの異物の除去効率を比較検証するための目安として設定された数値に過ぎないことは段落【0079】の記載から明らかである。
したがって、主張1は採用できない。
(イ)主張2について
上記(1)ア(ア)で検討したとおりである。
濾過するための装置の発明である本願発明において、有機金属組成物の使用に特に適したような構成(設計)を認定することはできない。また、水との早期/不用意な接触等についての主張も、これに特化した構成を本願発明において認定できないことは上記箇所で述べたとおりである。
したがって、主張2は本件出願の請求項1の記載に基づくものではないから採用できない。
(ウ)主張3について
上記(2)及び(3)で検討したとおりであって、主張3は採用できない。
以上より、審判請求人の主張はいずれも採用することはできない。
3 小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-015763