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特許拒絶査定不服審判

2024-015011

アームを有するマグネットフック

審判番号
2024-015011
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-105669
請求日
2024年09月03日
審決日
2026年05月25日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】執行 由朗
審判長/審判官
  • 審判長 川口 真一
  • 審判官 柿崎 拓
  • 審判官 関口 哲生
分類
P18 .121-WZ (A47G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-105669「アームを有するマグネットフック」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月 2日出願公開、特開2021-183111〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願は、令和2年5月22日の出願であって、令和6年1月29日付けの拒絶理由の通知に対し、令和6年3月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和6年6月18日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和6年9月3日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後、当審において、令和7年12月5日付けで拒絶理由が通知され、令和8年1月22日に意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 この出願の請求項に係る発明は、令和6年9月3日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「固定する壁面に対して垂直方向、または上方向に傾斜するアーム(2)を有するフックであり、固定面からフック先端までの本体(1)の全長が、土台(3)の直径2倍以上の約10cm~約13cmとなるアーム(2)を有し、本体(1)をプラスチック製や錆びない素材で設け、本体(1)にバスタオルを掛けても保持する全長と強度を有するアーム(2)を設け、土台(3)に磁石(4)を設け、磁性体金属面に本体(1)を固定し、浴室内で起きるヒートショック事故の予防を目的とすることを特徴とするアームを有するマグネットフック」 第3 拒絶の理由 令和7年12月5日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、概略、次のとおりのものである。 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、次の引用文献1から把握できる公然知られた発明又は公然実施をされた発明、及び電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献2に掲載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:タオル ローブ フック SUS 304 ステンレス スチール ウォール マウント バスルーム キッチン用 (2パック,ブラック),[online],[text],[取得日 2025.12.03],取得先<https://www.amazon.co.jp/dp/B0871GYJ1J/?th=1> 引用文献2:受賞ギャラリー 2017 グッドデザイン賞 マグネットフック シリコンマグネットフック「iフック・jフック」,[online],[text],[取得日 2025.12.03],取得先<https://www.g-mark.org/gallery/winners/9dda2e68-803d-11ed-af7e-0242ac130002?years=2017> 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1に掲載された事項 当審拒絶理由で引用された前記引用文献1には、次の事項が掲載されている。 ア「 [図:0001437823000001.jpg] 」 イ「 [図:0001437823000002.jpg] 」 ウ「 [図:0001437823000003.jpg] 」 エ「 [図:0001437823000004.jpg] 」 オ 「 [図:0001437823000005.jpg] 」 カ 前記アにおいて「クリックしてフルビューを表示する」と示された複数の画像には、次の寸法が示された画像、及びバスルームでの使用態様が示された画像が含まれている。 「 [図:0001437823000006.jpg] [図:0001437823000007.jpg] 」 キ 前記ア、ウ、カによると、「タオル ローブ フック SUS 304 ステンレス スチール ウォール マウント バスルーム キッチン用」は、固定する壁面に対して垂直方向に延びるアームを有する、バスルームでも使用可能なフックであり、固定面からフック先端までの本体の全長が、スタンド径5cmよりも長い6cmとなるアームを有し、該アームは、本体にハンガーに吊されたバスローブを掛けても保持できる全長と強度を有するように設けられていることが把握できる。 ク 前記イによると、「この商品について」の欄に「SUS 304ステンレス鋼製、防錆、固体と耐久性」と掲載されているから、「タオル ローブ フック SUS 304 ステンレス スチール ウォール マウント バスルーム キッチン用」は、その本体を、SUS 304ステンレス鋼製の防錆素材で設けているといえる。 ケ 前記エの「インストール」の説明を踏まえると、スタンドにネジを締めて、壁面に本体をインストールすることが把握できる。 (2)引用発明 引用文献1に掲載された「タオル ローブ フック SUS 304 ステンレス スチール ウォール マウント バスルーム キッチン用」は、前記(1)オによると、「amazon.co.jpでの取り扱い開始日」が2020年4月12日であるから、引用文献1の前記(1)ア~ケの事項を総合すると、引用文献1に掲載された事項から、次の発明(以下「引用発明」という。)が、この出願の出願前に公然知られ、又は公然実施をされていたと認められる。 「固定する壁面に対して垂直方向に延びるアームを有するフックであり、固定面からフック先端までの本体の全長が、スタンド径5cmよりも長い6cmとなるアームを有し、本体をSUS 304ステンレス鋼製の防錆素材で設け、本体にハンガーに吊されたバスローブを掛けても保持できる全長と強度を有するアームを設け、スタンドにネジを締めて、壁面に本体をインストールし、バスルームでも使用可能なタオル ローブ フック SUS 304 ステンレス スチール ウォール マウント バスルーム キッチン用。」 2 引用文献2 当審拒絶理由で引用された、前記引用文献2には、次の事項が掲載されている。そして、次の(1)及び(2)によると、引用文献2に掲載された事項は、2017年グッドデザイン賞についてのものであるから、この出願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものと認められる。 (1)「 [図:0001437823000008.jpg] [図:0001437823000009.jpg] 」 (2)「 [図:0001437823000010.jpg] [図:0001437823000011.jpg] [図:0001437823000012.jpg] 」 第5 対比・判断 1 対比 以下、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「固定する壁面に対して垂直方向に延びるアームを有するフック」は、本願発明の「固定する壁面に対して垂直方向、または上方向に傾斜するアーム(2)を有するフック」に相当する。 (2)引用発明の「スタンド」及び「スタンド径」は、それぞれ本願発明の「土台(3)」及び「土台(3)の直径」に相当し、引用発明の「固定面からフック先端までの本体の全長が、スタンド径5cmよりも長い6cmとなるアームを有」することは、本願発明の「固定面からフック先端までの本体(1)の全長が、土台(3)の直径2倍以上の約10cm~約13cmとなるアーム(2)を有」することと、固定面からフック先端までの本体の全長が、土台の直径以上であるアームを有する点において共通する。 (3)引用発明の「本体をSUS 304ステンレス鋼製の防錆素材で設け」ることは、本体が錆びない素材で設けられるものといえ、本願発明の「本体(1)をプラスチック製や錆びない素材で設け」ることに相当する。 (4)引用発明の「本体にハンガーに吊されたバスローブを掛けても保持できる全長と強度を有するアームを設け」ることは、本願発明の「本体(1)にバスタオルを掛けても保持する全長と強度を有するアーム(2)を設け」ることと、本体に所定の物品を掛けても保持する全長と強度を有するアームを設ける点において共通する。 (5)引用発明の「スタンドにネジを締めて、壁面に本体をインストール」することは、本願発明の「土台(3)に磁石(4)を設け、磁性体金属面に本体(1)を固定」することと、固定面に本体を固定する点において共通する。 (6)引用発明の「バスルーム」は、本願発明の「浴室」に相当し、引用発明の「バスルームでも使用可能」という事項は、本願発明の「浴室内で起きるヒートショック事故の予防を目的とする」という事項と、浴室内で使用される点において共通する。 (7)引用発明の「タオル ローブ フック SUS 304 ステンレス スチール ウォール マウント バスルーム キッチン用」は、本願発明の「アームを有するマグネットフック」と、アームを有するフックである点において共通する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>及び<相違点2>で相違する。 <一致点> 固定する壁面に対して垂直方向、または上方向に傾斜するアームを有するフックであり、固定面からフック先端までの本体の全長が、土台の直径以上であるアームを有し、本体をプラスチック製や錆びない素材で設け、本体に所定の物品を掛けても保持する全長と強度を有するアームを設け、固定面に本体を固定し、浴室内で使用される、アームを有するフック。 <相違点1> 本願発明は、本体(1)の全長が、「土台(3)の直径2倍以上の約10cm~約13cm」となるアーム(2)を有し、本体(1)に「バスタオル」を掛けても保持する全長と強度を有するアーム(2)を設け、「浴室内で起きるヒートショック事故の予防を目的とする」のに対し、引用発明は、本体の全長が、「スタンド径5cmよりも長い6cm」となるアームを有し、本体に「ハンガーに吊されたバスローブ」を掛けても保持できる全長と強度を有するアームを設けるものであり、また、「バスルームでも使用可能」なものではあるものの、前記のような目的としているか明らかでない点。 <相違点2> 本願発明は、「土台(3)に磁石(4)を設け、磁性体金属面」に本体(1)を固定する、「マグネットフック」であるのに対し、引用発明は、「スタンドにネジを締めて、壁面に本体をインストール」するものであり、スタンドに磁石を設け、磁性体金属面に固定しているとはいえず、マグネットフックともいえない点。 2 判断 (1)相違点について 以下、<相違点1>及び<相違点2>について検討する。 ア <相違点1>について (ア)まず、引用発明は、「本体にハンガーに吊されたバスローブを掛けても保持できる全長と強度を有するアームを設け」るものであり、また「バスルームでも使用可能な」ものである。さらに、引用発明の「タオル ローブ フック SUS 304 ステンレス スチール ウォール マウント バスルーム キッチン用」(下線は当審で付与した。以下、同様である。)という名称からみて、バスローブと同様に、入浴後に用いられるバスタオルを掛けることも、当然、意図されていると解される。そして、引用発明のアームは、本体にハンガーに吊されたバスローブを掛けても保持できる強度を備えるものであるから、本体に「バスタオル」を掛けても、同様に、保持できることは明らかといえる。 このように、引用発明は、バスルーム(浴室)内で、ハンガーに吊されたバスローブを掛けるものであり、また、バスタオルを掛けることも意図されているといえる。そして、これらバスローブやバスタオルはバスルーム(浴室)内で使用されるためのものであるから、引用発明は、「浴室内で起きるヒートショック事故の予防」を図ることができるものといえ、該予防を目的として使用することができるといえる。 (イ)また、引用発明において、本体の全長や、スタンド径は、本体に掛ける物品の寸法及び重量、ユーザーとの接触による事故の可能性、壁面に対するフックの固定強度等を考慮の上、当業者が任意に設計し得る事項であり、本体の全長が、スタンド径の2倍以上の約10cm~約13cmとなるアームを設けることに、格別の困難性はない。 (ウ)そうすると、引用発明において、前記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 イ <相違点2>について (ア)引用文献2には、前記第4 2(1)及び(2)によると、シリコンマグネットフック、特に量感のあるものをかけるi型のiフックが掲載され、「受賞対象の詳細」に「磁石をシリコン樹脂で覆ったマグネットフックなので、これまで使えなかったユニットバスなど水に濡れる場所でも使えるようにしました。さらに、重いものをかけても滑りにくく、つかみやすくて安全なのが特徴です。また、吸着面を傷つけず、吸着時の衝撃音も軽減しています。」と掲載され、「背景」に「そこで、風呂場で磁石が使えないか調査したところ、ほとんどのユニットバスならば磁石が付くことを発見しました。」と掲載されている。 ここで、磁石が付くユニットバスの壁面は、磁性体金属面であるといえる。 以上によると、引用文献2には、ユニットバスの磁性体金属面に、磁石を付けるi型のシリコンマグネットフックが掲載され、該シリコンマグネットフックが吸着面を傷つけないことも示されていると認められる。 (イ)そして、引用発明は、「スタンドにネジを締めて、壁面に本体をインストール」するものであるが、該壁面への固定手段は、種々の固定手段のメリット、デメリットを勘案の上、当業者が任意に選択し得るものである。ここで、引用発明は、「本体にハンガーに吊されたバスローブを掛けても保持できる全長と強度を有するアームを設け」るものであり、さらに「バスルームでも使用可能な」ものであるから、ユニットバスでの使用も想定され得るものであって、引用発明において、引用文献2に掲載された、シリコンマグネットフックがユニットバスの磁性体金属面を傷つけないというメリットに着目し、磁性体金属面からなるユニットバスの壁面を対象として、磁石を用いた固定手段の採用を試みることは、当業者が容易に想到し得たものである。 あるいは、前記したように、引用発明において、壁面への固定手段は、種々の固定手段のメリット、デメリットを勘案の上、当業者が任意に選択し得るものであるから、引用文献2に掲載された、シリコンマグネットフックが吸着面を傷つけないというメリットに着目し、バスルームの壁面に磁性体金属面を貼り付けるなどするとともに、磁石を用いた固定手段の採用を試みることは、当業者が容易に想到し得たものである。 これらの際、引用文献2に掲載された磁石の素材が「ネオジム磁石」であることを踏まえると、該磁石による吸着力は強力なものであるから、前記<相違点1>についてで検討した、引用発明において、本体の全長が、スタンド径の2倍以上の約10cm~約13cmとなるアームを設けることが妨げられるものではない。 (ウ)そうすると、引用発明において、前記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (2)請求人の主張について ア 請求人は、令和8年1月22日に提出した意見書(以下、単に「意見書」という。)の「1.」において、「引用1はフックの全長は固定面からフック先端までが、土台面の直径より1cmだけ長い壁掛けフックでありますが、本案のフックの全長は土台直径の2倍以上となる全長約10~約13cmの長いアームを有するために、固定面からフック先端までがスペーサーとなるために、バスタオルのように嵩張る物を滑り落とさずに掛ける長いアームを有するフックであ」ると主張している。 しかしながら、前記(1)ア(イ)に示したように、引用発明において、本体の全長や、スタンド径は、本体に掛ける物品の寸法及び重量、ユーザーとの接触による事故の可能性、壁面に対するフックの固定強度等を考慮の上、当業者が任意に設計し得る事項であり、前記(1)イ(イ)に示したように、引用発明において、磁石を用いた固定手段を採用したとしても、本体の全長を、スタンド径の2倍以上の約10cm~約13cmとするアームを設けることが妨げられるものではない。 したがって、請求人の前記主張は採用できない。 イ 請求人は意見書の「1.」において、「引用1は、フックを固定するために、壁に穴をあけて、ハンマーとねじ回しでアンカーを打ち込む作業は、磁性体金属のユニットバスの壁には困難であり、壁を破損してしまい、本案のユニットバス用とは使用場所が違います。また、年配の方にはそのような取り付け工事な困難であり、本案はヒートショック事故の対象となる老人でも、簡単に取り付け、取り外しができます。また、本案はユニットバス壁以外でも、磁性体金属プレートを強力両面テープで接着する市販の金属プレートに、本案の有する磁石で固定するだけであります。」と主張している。 しかしながら、本願発明は、「ユニットバス用」であることについて、特定されておらず、請求人の「引用1は、・・・本案のユニットバス用とは使用場所が違います。」という主張は、この出願の特許請求の範囲の記載に基づくものではない。さらに、前記(1)イ(イ)に示したように、引用発明において、引用文献2に掲載された、シリコンマグネットフックが吸着面を傷つけないというメリットに着目し、磁石を用いた固定手段の採用を試みることは、当業者が容易に想到し得たものである。 したがって、請求人の前記主張は採用できない。 ウ 請求人は意見書の「1.」において、「引用1の形状を磁石固定式にすると、ステンレス鋼の本体が落下した時、その自重で床タイルの破損やご老人の足の指に落下すると大けがになる形状と自重でありますが、本案は軽量のプラスチック製または、細く軽量な針金状の金属であるため、本案と引用1とは形状、施工方法、利便性、購入される動機、ユニットバスでの使用が可能と全く異なります。」と主張している。 しかしながら、本願発明は、「本体(1)をプラスチック製や錆びない素材で設け」るものであり、本体(1)の素材について、プラスチック製又は錆びない素材であることが特定されているのみであり、請求人が主張する「軽量のプラスチック製」であることや、「細く軽量な針金状の金属」であることまで特定されていない。 したがって、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、前記主張は採用できない。 (3)本願発明の作用効果について 本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に掲載された事項から当業者が予測できる範囲のものである。 3 まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に掲載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。

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