商標拒絶査定不服審判
2024-014578
アイピイエスバンキング、アイピイエス、バンキング
- 審判番号
- 2024-014578
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2023-060090
- 請求日
- 2024年09月11日
- 審決日
- 2025年05月08日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイ ピース,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】田中 克郎
- 【請求人代理人】石田 昌彦
- 【請求人代理人】遠藤 祐吾
- 【請求人代理人】中河 香一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 大塚 正俊
- 分類
- T18 .13 -Z (W39) / T18 .272-Z (W39)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、特許法第150条第5項、商標法第3条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2023-60090拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和5年6月1日の登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年12月6日付け:拒絶理由通知書
令和6年3月7日:意見書の提出
令和6年6月11日付け:拒絶査定
令和6年9月11日:審判請求書の提出
令和7年2月25日付け:証拠調べ通知書
令和7年4月7日:意見書の提出
2 本願商標
本願商標は、「iPSバンキング」の文字を標準文字で表してなり、第39類「幹細胞及び細胞の保管,幹細胞及び細胞の保管に関する助言及び情報の提供,寄託を受けた物品の倉庫における保管」を指定役務として登録出願されたものである。
3 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、「iPSバンキング」の文字を標準文字で表示してなるところ、その構成中の「iPS」の文字は、「iPS細胞(万能細胞の一種。幹細胞と同様に増殖して各種の細胞へと分化することが可能な細胞。)」を指称する語として使用されている実情が認められる。また、医療に係る分野においては、細胞等、生物体の組織を保管し、いつでも提供できるような状態に保っておくことを、「バンキング」と称している実情が認められ、このことは、iPS細胞の分野においても同様である。そうすると、本願商標は、全体として「iPS細胞の保管」程の意味合いを容易に理解させるものである。そのため、本願商標を、その指定役務に使用した場合、これに接する需要者は、当該役務が「iPS細胞の保管に係る役務」であること、すなわち、役務の質・用途を表示したものとして認識するものとみるのが相当であり、また、本願商標を「iPS細胞の保管に係る役務」以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
4 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲1(1)ないし(5)及び別掲2(1)ないし(8)に示したとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、証拠調べの結果を通知した。
5 証拠調べに対する請求人の意見の要点
証拠調べ通知書に提示されている証拠には、「iPS」と「バンキング」の両単語を含む使用例は少ないことに加え、提示されている証拠は様々な説明的な語と併せて使用されているものである。そのため、これらの使用例があることをもって、「iPSバンキング」のみからなる本願商標について、需要者が直接的・具体的に役務の質・用途等を認識する根拠とはならないというべきである。
したがって、本願商標は、その指定役務との関係において商標としての識別機能を十分に発揮し得るものであるから、本願商標は、商標法第3条1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではない。
6 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号の趣旨
商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が、商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、指定商品又は指定役務との関係で、その商品の品質、その役務の質等その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品又は自他役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される。
そうすると、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、本件審決時において、本願商標がその指定商品又は指定役務との関係で、商品の品質、役務の質等その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、将来を含め、指定商品又は指定役務の取引者、需要者によって商品又は役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号判決、平成26年(行ケ)第10056号判決、平成27年(行ケ)第10107号判決、平成27年(行ケ)第10232号判決参照)。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、前記2のとおり、「iPSバンキング」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「iPS」の文字は、「(induced pluripotent stem cell)体細胞から作られる多能性幹細胞。体細胞に数種類の因子を加え、培養することでできる。再生医療や疾患メカニズムの研究、創薬に用いる。」(出典:「広辞苑 第七版」岩波書店)の意味を有する語である。
また、別掲1のとおり、本願の指定役務に関連する分野において、細胞等、生物体の組織を保管し、いつでも提供できるような状態に保っておくことを「バンキング」や「○○バンキング」(○○には、保管の対象物が入る。)と称している事実(別掲1)があることを踏まえると、本願商標は構成全体として「iPS細胞の保管」程の意味合いを容易に理解させる。
そして、原審において示された事実及び当審における職権による調査によれば、本願の指定役務に関連する分野において、「iPSバンキング」及びこれと同義である「iPS細胞バンキング」や「iPSバンク」の語が、「iPS細胞の保管」程の意味を有する語として一般的に使用されている事実(別掲2)が見受けられる。
このような実情を踏まえると、本願商標は、これをその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「iPS細胞の保管」であると認識するというのが相当である。
そうとすると、本願商標は、その指定役務との関係において、役務の質を表示したものとして一般に認識されるものであって、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当ではなく、自他役務の識別力を欠くというべきである。
また、本願商標は、これをその指定役務中、「iPS細胞の保管」以外の役務に使用するときは、これに接する需要者に、その役務があたかも「iPS細胞の保管」に関する役務であるかのように、役務の質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、証拠調べ通知書に提示されている証拠には、「iPS」と「バンキング」の両単語を含む使用例は少ないことに加え、提示されている証拠は様々な説明的な語と併せて使用されているものである。そのため、これらの使用例があることをもって、「iPSバンキング」のみからなる本願商標について、需要者が直接的・具体的に役務の質・用途等を認識する根拠とはならない旨主張する。
しかしながら、上記(2)のとおり、本願の指定役務に関連する分野において、本願の指定役務に関連する分野において、「iPSバンキング」及びこれと同義である「iPS細胞バンキング」や「iPSバンク」の語が、「iPS細胞の保管」程の意味を有する語として一般的に使用されている事実を踏まえると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「iPS細胞の保管」であると認識するというのが相当である。
イ 請求人は、過去の登録例、及び過去の審決例を挙げて、本願商標も登録されるべき旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標がその指定役務との関係において、自他役務の識別標識として機能し得るか否かは、当該商標の構成態様と指定役務との関係や取引の実情をも踏まえて個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の示す登録例と本願商標とは、構成態様や指定役務が異なり、事案を異にするものであり、本願商標が自他役務の識別力を欠くものであることは、上記(2)のとおりであるから、登録例や審決例があるからといって、その判断が左右されることはない。
ウ したがって、請求人による上記主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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