特許拒絶査定不服審判
2024-014156
医療装置の制御方法および医療装置
- 審判番号
- 2024-014156
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-131918
- 請求日
- 2024年09月04日
- 審決日
- 2025年04月16日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シーメンス ヘルスケア ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
- 【請求人代理人】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
- 【請求人代理人】山口 巖
- 【請求人代理人】山本 浩
- 【請求人代理人】竹本 美奈
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 浩
- 審判官 藏田 敦之
- 審判官 萩田 裕介
- 分類
- P18 .121-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-131918「医療装置の制御方法および医療装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 4月 6日出願公開、特開2023- 48111〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2022年(令和4年)8月22日(パリ条約による優先権主張 2021年9月27日 独国)を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 5年 1月19日 手続補正書
同年11月21日付け 拒絶理由通知書
令和 6年 2月 9日 意見書・手続補正書
同年 5月 8日付け 拒絶査定
同年 9月 4日 審判請求書
以下では、令和5年5月8日付け拒絶査定を「原査定」という。
第2 本願発明
本願の請求項1~15に係る発明は、令和6年2月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりである。ここで、各構成単位冒頭の「A」などは便宜のため当審にて付した分説番号であり、以下、各構成単位について該分説番号を用いて「構成A」などということがある。
「 【請求項1】
A 少なくとも1つのLiDARセンサ(6)を備えた衝突制御システム(6;11)を有する走行可能な移動式医療装置(1)を自動的に制御するための方法であって、
B ・前記移動式装置(1)を自律的にまたは人力で補助して第1の速度で移動させるステップと、
C ・前記移動式装置(1)の移動中に、前記移動式装置(1)の周辺部の少なくとも一部と前記移動式装置(1)の固定場所に固定された装置セクションとを一緒に、前記少なくとも1つのLiDARセンサ(6)により周期的にスキャンするステップと、
D ・前記LiDARセンサ(6)によって記録された前記周辺部のスキャンデータを評価するステップであって、前記移動式装置(1)の走行方向(10)にある前記周辺部の抽出領域においてオブジェクトをチェックする、ステップと、
E ・前記LiDARセンサ(6)によって記録された、固定された前記装置セクションのスキャンデータを評価するステップであって、前記LiDARセンサ(6)の機能性をチェックする、ステップと、
F ・これらの評価の結果に基づいて前記移動式装置(1)の速度を調節するステップと、
G を有する方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由2は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2017/0347979号明細書
2.国際公開第2021/072380号
第4 引用文献の記載等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された米国特許出願公開第2017/0347979号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。また、原文の摘記の後に当審訳を示す。(下線は当審において付与した。以下同様。)。
ア 「[0036] It is proposed that a mobile medical device, such as, for example, a C arm x-ray device, be equipped with the room detection system. In other words the medical device will be provided with one or advantageously with a number of sensors for spatial position recognition. On the mobile device itself such sensor can e.g. be: laser scanners, 3D depth cameras, normal RGB cameras, preferably arranged around the device with corresponding fish-eye optics and subsequent sharpening of the images for a 360° circular view, capacitive sensors, ultrasound sensors or sensors for magnetic tracking, which operate on the basis of electromagnetic wave propagation. Likewise possible is the use of infrared cameras, as will be used for the stereoscopic tracking method. With the aid of these sensors and corresponding methods for sensor data fusion, the mobile medical device can detect a part of the room and above all its direct environment.」
([0036]例えばCアームX線装置のような移動式医療装置に、部屋検出システムが備えられていることが提案される。換言すれば、医療装置には、1つ又は有利には多数の空間的な位置を認識するためのセンサが設けられている。移動式装置自体のそのようなセンサは、例えば、レーザースキャナ、3次元深さカメラ、通常のRGBカメラであり得、好ましくは、対応する魚眼レンズを備え、360°の円形ビュー用に画像を鮮明化する、静電容量センサー、超音波センサー、または磁気追跡用センサーが、電磁波伝播に基づいて動作するデバイスの周囲に配置される。同様に赤外線カメラを使用することが可能であり、立体視追従方法のために使用することができる。これらのセンサ及びセンサデータの融合方法によって、移動型医療装置は、部屋内の一部又はその全ての直接環境を検出することができる。)
イ 「[0037] However this is often not sufficient for moving a medical device freely in the room in an automated manner, since the sensors to be used, in particular the sensors of the optical type, cannot see behind blocking objects and thus no complete physical map of the environment is able to be established for route and collision computation. Therefore it is proposed to provide the room in which later the movement of the medical device is to take place, additionally with one or more permanently-installed sensor units. The choice, number and arrangement of these stationary sensors depend, inter alia, on the geometry of the room. Basically the same sensors for room and/or object detection as are able to be used with the mobile device enter into consideration as stationary sensors. Preferably 3D depth cameras will be used as stationary sensors. If infrared cameras are used as stationary sensors, suitable markers are attached to the medical device (and if necessary to other objects to be detected), e.g. marker geometries reflecting actively or passively in the infrared spectrum.」
([0037]しかしながら、これは、自動化された方法で部屋内で医療装置を自由に移動させるのに十分でないことが多く、特に、光学式のセンサに用いるセンサは、遮蔽物の背後を見ることができず、したがって環境の完全な物理的地図、経路および衝突計算のために確立することができないからである。従って、後述する医療装置の移動が行われることになる部屋を用意し、さらに、追加で1つ又は複数の固定配置のセンサユニットを用いることが提案されている。これらの固定センサの選択、数及び配置は、とりわけ、部屋の幾何学的形状に依存する。基本的に移動装置と共に使用されることができるように、室温及び/又は物体検出に同一センサを固定センサとして考慮に入れる。好ましくは、3D深度カメラは、固定センサとして使用される。赤外線カメラが、固定センサとして使用される場合、適切なマーカーは、医療装置(及び必要であれば検出されるべき他のオブジェクト)に、例えば能動的または受動的に赤外スペクトルを反射するマーカー形状に取り付けられている。)
ウ 「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
[0064] Referring now to the figures of the drawing in detail and first, particularly, to FIG. 1 and FIG. 5 thereof, there is shown a C-arm x-ray device 1 with a plurality of wheels 2, preferably with three or more wheels, as means of movement. The wheels 2 are preferably able to be driven independently of one another, for example by means of separate drives 4, activated by a drive control 3, in particular electric motor drives 4. In a preferred implementation, the wheels are omnidirectional wheels 2. The drive control 3 is embodied as part of a central processing unit 5 of the x-ray device 1.」
(発明の詳細な説明
[0064]ここで図面を詳細に参照すると、まず、特に図1及び図5には、移動手段として複数の車輪2、好ましくは3つかそれ以上の車輪2を有するCアームX線装置1が示されている。車輪2は、好ましくは、例えば、駆動制御手段3により作動させられる別個の駆動装置4により、互いに独立して駆動することができるものであり、特に、駆動装置4は特定の電気モーター駆動装置4である。駆動制御手段3は、X線装置1の中央処理装置5の一部として形成されている。)
エ 「[0065] The x-ray device 1 comprises a man-machine interface, which has a touch screen 6 as its display device. The touch screen 6 will be activated by an evaluation and control unit 7, which thus controls all displays on the touch screen 6 and also receives all inputs or user interactions. The evaluation and control unit 7 is embodied as part of the central processing unit 5 of the x-ray device 1.」
([0065] X線装置1は、その表示装置としてタッチスクリーン6を有しているマンマシンインタフェースを有している。タッチスクリーン6は、評価および制御ユニット7によってアクティブ化され、評価および制御ユニット7はタッチスクリーン6上のすべての表示を制御し、すべての入力またはユーザー操作を受け取る。評価および制御ユニット7は、X線装置1の中央処理装置5の一部として形成されている。)
オ 「[0067] FIG. 1 shows a diagram of the model 13 of the operating room 14 as a type of physical map with the model 11 of the x-ray device 1 placed in the correct position. In the figure the model 11 of the x-ray device 1 is shown by way of example in an overhead view with a C-arm angulated by 90°. In the situation shown in FIG. 2 the C-arm of the x-ray device 1 is located in the non-angulated travel position, which is also reflected in the mapped model 11.
([0067] 図1は、X線装置1のモデル11が正しい位置に配置された、一種の物理マップとしての手術室14のモデル13の図を示している。この図では、X線装置1のモデル11が、Cアームが90°角度を付けられた俯瞰図で例として示されている。図2に示されている状況では、X線装置1のCアームは角度が付けられていない移動位置にあり、これはマップされたモデル11にも反映されている。)
カ 「[0069] The model 11 of the x-ray device 1 will be placed in accordance with its actual spatial position in the room 14, for example an operating room, on the touch screen 6 and will be presented in relation to its environment. In the examples illustrated the x-ray device 1 is mostly located in the vicinity of a patient table 15 and there are further objects located in the operating room 14, such as for example cabinets 16 in fixed locations and mobile medical devices 17, see FIG. 6, wherein, for the sake of simplicity, the same reference characters will be used for the real objects mapped in FIG. 6 and the virtual objects mapped in FIGS. 1 to 4.」
([0069] X線装置1のモデル11は、タッチスクリーン6に、部屋14、例えば手術室内の実際の空間的位置に応じて配置され、その環境に関連して表示される。X線装置1は、患者テーブル15の近傍に配置され、手術室14には、例えば固定位置にあるキャビネット16や移動可能な医療機器17などのオブジェクトがさらに配置されている。図6を参照すると、簡潔にするために、図6にマッピングされた実際のオブジェクトと、図1から4にマッピングされた仮想オブジェクトには、同じ参照文字が使用されている。)
キ 「[0070] The position can be established for example with the aid of optical sensors, such as for example a number of laser scanners and 3D depth cameras and/or stereoscopic navigation cameras. Other sensors such as ultrasound sensors and capacitive proximity sensors can also be included. Furthermore a fusion of the room detection data of a number of independent sensor and/or camera systems is also possible and advantageous, since a direct line of sight of an individual sensor system for monitoring the entire room geometry is very unlikely. Details for the method for room detection preferably used here will be described further on in this document.」
([0070] 位置は、例えば、複数のレーザースキャナや3次元深さカメラのような光学センサ、および/または、立体ナビゲーションカメラを用いて特定することができる。超音波センサや静電容量式近接センサのような他のセンサもまた含めることができる。さらに、部屋全体の形状を監視するための個別のセンサーシステムの直接の視線を確保することはほとんど不可能であるため、複数の独立したセンサ及び/又はカメラシステムの部屋内検出データの融合も可能であり、有利である、ここで、好ましい部屋内を検出するための方法についての詳細は、この文書においてさらに説明する。)
ク 「[0072] The room model 13 will be created by the evaluation and control unit 7, preferably exclusively using current sensor data. In other embodiment variants of the invention, data which has not been currently established by sensors, but which is stored in a file 21 to which the evaluation and control unit 7 has access, in particular for positions and extensions of objects, can additionally be used for the creation of the room model 13.」
([0072]部屋モデル13は、評価および制御ユニット7によって生成され、好ましくは、もっぱら現在のセンサデータを使用して生成される。本発明の他の変形実施形態では、現在センサによって確立されていないが、評価および制御ユニット7がアクセスするファイル21に格納されるデータをさらに部屋モデル13の作成に使用することができる。)
ケ 「[0078] Subsequently preferably two options are provided for how the x-ray device 1 can be moved from the actual position 9 to the destination position 22. In an automatic mode the most favorable route 24 computed by the evaluation and control unit 7 will be displayed to the user on the physical map. In this case a time-optimized route can preferably be involved. Such a route proposal is depicted in FIG. 2. The user can confirm this route 24 and have the x-ray device 1 moved with the aid of a suitable, first fail-safe initiation mechanism along this route 24.
([0078] 続いて、好ましくは、X線装置1が、現在位置9から目的地22に移動するための方法について、2つのオプションが提供される。自動モードでは、評価および制御ユニット7によって計算された最適経路24は、物理地図上でユーザに表示されることになる。この場合に時間最適化されたルートが使用されることが好ましい。このような経路の提案は、図2に示されている。ユーザは、この経路24を確認し、この経路24に沿って、第1のフェールセーフ開始機構の助けを借りて、X線装置1を移動させることができる。)
コ 「[0080] In this case the evaluation and control unit 7 looks after the collision recognition, via the drive control 3, for steering and driving of the wheels 2 of the x-ray device 1. The user only has to give the actual movement command. The current actual position 9 and all recognized static and dynamic objects 15, 16, 17 will preferably, both before the actual movement of the x-ray device 1, namely for planning the route 24, and also during the movement of the x-ray device 1, namely for controlling the process of traveling on the route 24, will be updated continuously on the physical map shown as the operator interface 8, i.e. in the room model 13, and in the collision computer.」
([0080]評価および制御ユニット7は、衝突認識を行った場合、駆動制御部3を介して、X線装置1の車輪2の操舵と駆動を行う。ユーザは、実際の移動コマンドを与える必要があるだけである。現在の実際の位置9と認識されたすべての静的及び動的オブジェクト15、16、17は、好ましくは、X線デバイス1の実際の移動の前に、即ち経路24を計画するために、およびX線装置1の移動中にも、すなわち経路24上の移動プロセスを制御するために、オペレータインタフェース8と表示される物理マップ、つまり部屋モデル13と衝突コンピュータ内で、継続的に更新されることになる。)
サ 「[0082] If the evaluation and control unit 7 recognizes the threat of a collision during the movement of the x-ray device 1 during an automatic approach to the destination position 22 because of changed object positions in the environment of the x-ray device 1, then it displays this situation on the physical map and, where possible, proposes an alternate route 26 automatically calculated previously. At least however an avoidance maneuver is undertaken, in order to move around the obstacle. If avoidance is not possible, the movement of the x ray device 1 will be slowed down via the drive control 3 and, if necessary, stopped or the movement will be continued once the obstacle has removed itself from the route. A corresponding control command will be output by the evaluation and control unit 7 to the drive control 3 of the x-ray device 1. Preferably there is provision for the user to confirm the respective control command. If the command is confirmed by the user, the drive control 3 uses the alternate route 26, in order to move the x-ray device 1 to the predetermined destination or in order to realize one of the other specified options. If the operator does not confirm the command the movement process will be interrupted in any event.」
([0082] 評価および制御ユニット7は、X線装置1の周囲にあるオブジェクトの位置が変化したために、X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険があると認識した場合には、この状況を物理マップ上に表示し、可能な場合には、予め自動的に計算された代替経路26を提案する。ただし、少なくとも障害物を迂回するための回避操縦が行われる。回避が不可能な場合は、X線装置1の移動は駆動制御部3によって減速され、必要に応じて停止されるか、または、障害物が経路から外れると移動が続行される。対応する制御指令は、評価および制御ユニット7によってX線装置1の駆動制御部3に出力される。好ましくは、ユーザは、対応する制御コマンドを確認するようになされている。コマンドがユーザによって確認された場合、駆動制御部3は、X線デバイス1を所定の目的地に移動させるか、または、他の指定されたオプションのうちの1つを実現するために、代替経路26を使用する。オペレータがコマンドを確認しない場合には、移動処理は、いずれにしても中断されることになる。)
上記ア~サの記載事項から、以下、シ~スの事項が導かれる。
シ 段落[0072]には、「部屋モデル13は、評価および制御ユニット7によって生成され、好ましくは、もっぱらに現在のセンサデータを使用して生成される。」と記載されているから、引用文献1には、評価及び制御ユニット7は、現在のセンサデータを使用して部屋モデル13を生成する点が記載されているといえる。
また、段落[0067]及び[0069]には、それぞれ、「図1は、X線装置1のモデル11が正しい位置に配置された、一種の物理マップとしての手術室14のモデル13の図を示している。」及び「X線装置1は、患者テーブル15の近傍に配置され、手術室14には、例えば固定位置にあるキャビネット16や移動可能な医療機器17などのオブジェクトがさらに配置されている。」と記載されており、当該記載における「モデル13」は、段落[0072]における、評価及び制御ユニット7が生成した「部屋モデル13」を意味し、また、当該記載における「患者テーブル15」及び「例えば固定位置にあるキャビネット16や移動可能な医療機器17などのオブジェクト」は、「モデル13」に「配置されている」ものであることは明らかであるから、引用文献1には、部屋モデル13が、患者テーブル15、移動型医療機器17、キャビネット16などのオブジェクトを含む点が記載されているといえる。
また、段落[0070]には、「位置は、例えば、複数のレーザースキャナや3次元深さカメラのような光学センサ、および/または、立体ナビゲーションカメラを用いて特定することができる。」と記載されており、当該記載の「位置」が、段落[0069]における「患者テーブル15」、「例えば固定位置にあるキャビネット16や移動可能な医療機器17などのオブジェクト」等の位置であることは、明らかである。よって、引用文献1には、患者テーブル15、移動型医療機器17、キャビネット16などのオブジェクトの位置は、レーザースキャナなどの光学センサにより特定されたものである点が記載されているといえる。
以上より、引用文献1には、評価及び制御ユニット7は、現在のセンサデータを使用して部屋モデル13を生成し、部屋モデル13は、レーザースキャナなどの光学センサにより位置が特定された患者テーブル15、移動型医療機器17、キャビネット16などのオブジェクトを含む点が記載されているといえる。
ス 段落[0078]には、「自動モードでは、評価および制御ユニット7によって計算された最適経路24は、物理地図上でユーザに表示されることになる。・・・ユーザは、この経路24を確認し、この経路24に沿って、第1のフェールセーフ開始機構の助けを借りて、X線装置1を移動させることができる。」と記載されている。
また、段落[0080]には、「評価および制御ユニット7は、衝突認識を行った場合、駆動制御部3を介して、X線装置1の車輪2の操舵と駆動を行う。ユーザは、実際の移動コマンドを与える必要があるだけである。」と記載されており、「ユーザは、実際の移動コマンドを与える」のは、段落[0078]において、「ユーザは、この経路24を確認し」た後に行われるものであり、また、「ユーザは、実際の移動コマンドを与え」ると、「評価および制御ユニット7は、」「駆動制御部3を介して、X線装置1の車輪2の操舵と駆動を行」い、段落[0078]における「この経路24に沿って」、「X線装置1を移動させる」ものとなることは、明らかである。
よって、引用文献1には、ユーザがこの経路24を確認し、移動コマンドを与えると、評価および制御ユニット7は、駆動制御部3を介してX線装置1の車輪2の操舵および駆動を行い、この経路24に沿ってX線装置1を移動させることができる点が記載されているといえる。
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)ア~サの記載事項及びシ、スの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「空間的な位置を認識するためのセンサであるレーザースキャナと評価及び制御ユニット7と駆動制御部3とを備え、複数の車輪2を有するX線装置1を自動化された方法で移動させる方法であって、(段落[0036]、[0037]、[0064]、[0065])
X線装置1に備えられた光学式のセンサは、遮蔽物の背後を見ることができないため、追加で1つ又は複数の固定配置のセンサユニットを用い、評価及び制御ユニット7は、現在のセンサデータを使用して部屋モデル13を生成し、部屋モデル13は、レーザースキャナなどの光学センサにより位置が特定された患者テーブル15、移動型医療機器17、キャビネット16などのオブジェクトを含み、自動モードでは、評価及び制御ユニット7によって計算された現在位置9から目的地22までの最適経路24が物理マップ上でユーザーに表示され、ユーザがこの経路24を確認し、移動コマンドを与えると、評価および制御ユニット7は、駆動制御部3を介してX線装置1の車輪2の操舵および駆動を行い、この経路24に沿ってX線装置1を移動させることができ、(段落[0037]、[0078]、認定事項シ、認定事項ス)
X線装置1の移動中、ルート24上の移動プロセスを制御するために、現在の実際の位置9と静的及び動的オブジェクト15、16、17は物理マップ上で継続的に更新され、(段落[0080])
評価および制御ユニット7が、X線装置1の周囲にあるオブジェクトの位置が変化したために、X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険があると認識した場合、障害物を回避して移動するための回避操作が行われ、回避が不可能な場合は、X線装置1の移動は駆動制御部3によって減速され、必要に応じて停止される、(段落[0082])
方法。」
2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された国際公開第2021/072380号(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。また、原文の摘記の後に日本語訳を示す。(日本語訳は、引用文献2の日本語ファミリー文献である特表2022-551507号公報を参照し、当審で付したものである。)。
ア 「[0003] It can be difficult to provide robust distance accuracy down to a few centimeters in all conditions, particularly at an economical cost for the LIDAR system. Promising new detector technologies, like single photon avalanche diodes (SPADs), are attractive but have significant drawbacks when used to measure time-of-flight and other signal characteristics due to their limited dynamic range, particularly over a broad range of ambient conditions and target distances. Additionally, because of their sensitivity to even a small number of photons, SPADs can be very susceptible to ambient levels of background noise light.」
([0003] 全ての条件で、特にライダーシステムの経済的なコストで、数センチメートルまでの堅牢な距離精度を提供することは困難であり得る。単一光子アバランシェダイオード(SPAD)などの有望な新しい検出器技術は魅力的であるが、特に広範囲の周囲条件及び目標距離にわたって、飛行時間及び他の信号特性を測定するために使用されるとき、それらの限られたダイナミックレンジに起因する重大な欠点を有する。加えて、SPADは、少数の光子に対してもそれらの感度が高いため、周囲レベルの背景ノイズ光の影響を非常に受け易い可能性がある。)
イ 「[0065] Sections below introduce an illustrative automotive LIDAR system, followed descriptions of example techniques to detect signals by a light ranging system, and then different embodiments are described in more details. I. ILLUSTRATIVE AUTOMOTIVE LIDAR SYSTEM」
([0065] 以下のセクションで例示的な自動車用ライダーシステムを紹介し、光測距システムによって信号を検出するための例示的な技術の続く説明、そして次に、異なる実施形態をより詳細に説明する。)
ウ 「V. IDENTIFYING EARLY REFLECTIONS FROM THE SYSTEM HOUSING
[0135] The examples above have illustrated single pulses or multiple pulses as part of a pulse train that are transmitted from a light source, reflected off of objects in the surrounding environment, and then detected by a photosensor. These reflections are recorded in a histogram memory and form “peaks” in the histogram after a number of repeated shots in a measurement. The locations of these peaks can then be used to determine a distance between the optical measurement system and objects in the surrounding environment. However, these examples are not meant to be limiting. In addition to the intended peaks caused by the pulse train reflecting off objects of interest in the surrounding environment, the histogram memory may also include other peaks resulting from more immediate, unintended reflections of the pulse train, as well as peaks that do not necessarily result from the pulse train at all. For example, additional peaks may correspond to external light sources, sunlight, reflections, or other ambient light phenomena in the surrounding environment. In these cases, instead of only detecting a single peak, the optical measurement system may detect multiple peaks that may consequently be present in the histogram memory. In addition to extraneous peaks resulting from external light sources, an initial peak may result from a reflection of the pulse train off of an internal housing of the optical measurement system.」
(V.システムハウジングからの初期反射の識別
[0135]上記の例は、光源から送信され、周囲環境の物体から反射され、次いで、光センサによって検出される、パルス列の一部としての単一パルスまたは複数パルスを例示している。これらの反射は、ヒストグラムメモリに記録され、測定における幾つかの繰り返されたショットの後、ヒストグラムに「ピーク」を形成する。次いで、これらのピークの場所は、光学測定システムと周囲環境内の物体との間の距離を判定するために使用され得る。しかしながら、これらの例は、限定することを意味するものではない。周囲環境内で関心対象の物体から反射するパルス列によって引き起こされる意図されるピークに加えて、ヒストグラムメモリはまた、パルス列のより即時の意図しない反射から結果的に生じる他のピーク、及び必ずしもパルス列から結果として生じるとは限らないピークも含み得る。例えば、追加のピークは、外部光源、太陽光、反射、または周囲環境内の他の周囲光現象に対応し得る。これらの場合、単一のピークのみを検出することに代えて、光学測定システムが、ヒストグラムメモリ内に結果的に存在し得る複数のピークを検出し得る。外部光源から結果的に生じる無関係なピークに加えて、初期ピークは、光学測定システムの内部ハウジングからのパルス列の反射から結果的に生じ得る。)
エ 「[0136] FIG. 10 illustrates a representation of the histogram memory that includes a peak 1002 resulting from reflections off of the housing of the optical measurement system. When the light source generates one or more pulses for the emitted pulse train, these pulses may pass through a window or other transmissive material in the housing of the optical measurement system. However, some of the light emitted by the light source may reflect off of the window of the housing back towards the photosensors instead of passing entirely through the window. Additionally, some of the light emitted by the light source may reflect off of an internal surface of the housing itself. For example, some incidental light may be reflected off portions of the housing around the transmissive window or off other internal materials of the optical measurement system. Portions of the light reflected off the housing of the optical measurement system may be received by the photosensors, and stored in the histogram memory just as reflected pulses would be detected and stored from objects of interest in the surrounding environment.」
([0136] 図10は、光学測定システムのハウジングからの反射から結果的に生じるピーク1002を含むヒストグラムメモリの表現を例示する。光源が、放出されたパルス列に対して1つ以上のパルスを生成するとき、これらのパルスは、光学測定システムのハウジング内の窓または他の透過性材料を通過し得る。しかしながら、光源によって放出された光の一部は、完全に窓を通過する代わりに、ハウジングの窓から反射して光センサに戻り得る。加えて、光源によって放出された光の一部は、ハウジング自体の内面から反射し得る。例えば、幾つかの入射光は、透過性の窓の周囲のハウジングの部分から、または光学測定システムの他の内部材料から反射され得る。光学測定システムのハウジングから反射された光の一部分は、光センサによって受信され、反射パルスが周囲環境の関心対象の物体から検出及び記憶されるのと同じように、ヒストグラムメモリ内に記憶され得る。)
オ 「C. Detecting Window Blockage
[0163] In addition to detecting dirty or partially obscured windows, the first detected peak may also be used to determine whether the optical measurement system is blocked by a foreign object. As described above, many operating environments, such as an automotive environment, may provide situations where the optical measurement system may be subject to adverse conditions. Some of these environments may cause the optical measurement system to become completely blocked from the surrounding environment. For example, a plastic bag may blow onto the optical measurement system. A person may place their hand in front of the optical measurement system. The optical measurement system may be purposely disabled with tape or other objects placed in front of the optical measurement system. In any of these environments, it may be useful to detect when such a blockage occurs and where such blockage may be located.」
(C.窓の閉塞の検出
[0163] 汚れているか、または部分的に隠された窓を検出することに加えて、最初に検出されたピークはまた、光学測定システムが異物によって閉塞されているか否かを判定するためにも使用され得る。上記のように、自動車環境などの多くの動作環境は、光学測定システムが悪条件に曝され得る状況を提供し得る。これらの環境の幾つかは、光学測定システムを周囲環境から完全に閉塞させ得る。例えば、プラスチックバッグが光学測定システム上に吹き付けられる場合がある。人が、光学測定システムの前に手を置く場合がある。光学測定システムは、光学測定システムの前に置かれたテープまたは他の物体によって意図的に無効化される場合がある。これらの環境のいずれにおいても、そのような閉塞がいつ発生し、そのような閉塞がどこに位置し得るかを検出することが有用であり得る。)
カ 「[0166] When a blocking object is sufficiently close to the optical measurement system such that it prevents a substantial portion of the light emitted by the optical measurement system from being reflected off of other objects in the surrounding environment, the system may determine that a blockage has occurred. This determination may be made when the magnitude of the initial peak 1504 meets or exceeds the blockage threshold 1506. As illustrated in FIG. 15B the reflections off the housing and the blocking object may combine to increase the magnitude of the peak 1504 above the threshold 1506. When this occurs, any of the remedial actions described above may be triggered. For example some embodiments may cause a warning to be generated for a user and/or an automotive system. Some embodiments may shut down any photosensors in the array that detect the blockage. Some embodiments may activate other emergency or safety systems indicating that the optical measurement system is no longer providing an accurate depiction of objects in the surrounding environment, and so forth.」
([0166] 閉塞物体が光学測定システムに十分に近接しており、それにより、光学測定システムによって放出された光のかなりの部分が周囲環境内の他の物体から反射されることを防止するとき、システムは、閉塞が発生したと判定し得る。この判定は、初期ピーク1504の大きさが閉塞閾値1506を満たすか、または超えるときに行われ得る。図15Bに例示されるように、ハウジング及び閉塞物体からの反射は、結合して、閾値1506を上回るピーク1504の大きさを増加させ得る。これが発生するとき、上記の是正措置のいずれかがトリガされ得る。例えば、幾つかの実施形態は、ユーザ及び/または自動車システムに対する警告を生成させ得る。幾つかの実施形態は、閉塞を検出するアレイ内の任意の光センサをシャットダウンし得る。幾つかの実施形態は、光学測定システムがもはや周囲環境内の物体の正確な描写を提供していないことなどを示す、他の緊急または安全システムを起動し得る。)
キ 「XVI. ADDITIONAL EMBODIMENTS
[0269] While some embodiments disclosed herein have focused on the application of light ranging within the context of 3D sensing for automotive use cases, systems disclosed herein can be used in any application without departing from the scope of the present disclosure. For example, systems can have a small, or even miniature, form factors that enable a number of additional use cases, e.g., for solid-state light ranging systems. For example, systems can be used in 3D cameras and/or depth sensors within devices, such as mobile phones, tablet PCs, laptops, desktop PCs, or within other peripherals and/or user-interface devices. For example, one or more embodiments could be employed within a mobile device to support facial recognition and facial tracking capabilities, eye tracking capabilities, and/or for 3D scanning of objects.
Other use cases include forward-facing depth cameras for augmented and virtual reality applications in mobile devices.」
(XVI.追加の実施形態
[0269] 本明細書で開示される幾つかの実施形態は、自動車の使用事例に関する3D検知の文脈の範囲内で、光測距の用途に重点を置いているが、本明細書で開示されるシステムは、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の用途において使用することができる。例えば、システムは、例えば固体光測距システムのための、幾つかの追加の使用事例を可能にする、小さい、更には微小なフォームファクタを有することができる。例えば、システムは、携
帯電話、タブレットPC、ラップトップ、デスクトップPCなどのデバイス内の、または他の周辺機器及び/もしくはユーザインターフェースデバイス内の3Dカメラ及び/または深度センサにおいて使用することができる。例えば、1つ以上の実施形態は、顔認識及び顔追跡能力、視線追跡能力のサポート、ならびに/または物体の3Dスキャンのために、モバイルデバイス内で用いることができる。他の使用事例としては、モバイルデバイスにおける拡張現実及び仮想現実用途のための前面深度カメラが挙げられる。)
(2)引用文献2に記載された事項
上記(1)ア~キの記載事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「光源から送信され、周囲環境の物体から反射され、光センサによって検出されたパルス列をヒストグラムメモリに記録し、ヒストグラムに形成されたピークの場所は、光学測定システムと周囲環境内の物体との間の距離を判定するために使用され得る光学測定システムにおいて、ハウジングの窓からの反射から生じる初期ピークを、光学測定システムが異物によって閉塞されているか否かを判定するために使用し、初期ピーク1504の大きさが閉塞閾値1506を超えると、閉塞が発生したと判定し、他の緊急又は安全システムを起動し、(段落[0135]、[0136]、[0163]、[0166])
光学測定システムは、任意の用途において使用することができること。(段落[0269])」
第5 対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)構成A、Gについて
ア 本願発明の「LiDARセンサ」に関して、本願の発明の詳細な説明、段落【0008】には、「LiDARセンサ(LiDAR=light detection and ranging)」と記載されているように、「LiDAR」は「light detection and ranging」(当審訳:光による検知及び測距)を意味するものであるから、本願発明の「LiDARセンサ」は、光を用いて検知と測距を行うセンサであるといえる。
そして、引用発明1の「空間的な位置を認識するためのセンサであるレーザースキャナ」は、「レーザー」を使用して「空間的な位置を認識する」ものであって、「患者テーブル15、移動型医療機器17、キャビネット16」の「位置」を「特定」できるものであるから、「レーザー」、すなわち光を利用して、「患者テーブル15、移動型医療機器17、キャビネット16」等のオブジェクトの検知と位置把握のための測距を行うものであることは、明らかである。
よって、引用発明1の「レーザースキャナ」は、本願発明の「LiDARセンサ」に相当する。
イ 引用発明1の「評価及び制御ユニット7」は、「X線装置1の周囲にあるオブジェクトの位置が変化したために、X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険があると認識した場合、障害物を回避して移動するための回避操作が行われ、回避が不可能な場合は、X線装置1の移動は駆動制御部3によって減速され、必要に応じて停止される」ものであるから、衝突の制御を行うものといえる。
また、引用発明1において、「X線装置1の周囲にあるオブジェクトの位置が変化したために、X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険があると認識」することは、「レーザースキャナ」を含む「光学センサ」により「位置が特定され」、「物理マップ上で継続的に更新され」る「現在の実際の位置9と静的及び動的オブジェクト15、16、17」に基づいて行われることは自明であるから、上記「評価及び制御ユニット7」による衝突の制御は、「レーザースキャナ」を用いて行う制御であるといえる。
以上より、引用発明1の「評価及び制御ユニット7」及び「レーザースキャナ」は、本願発明の「少なくとも1つのLiDARセンサを備えた衝突制御システム」に相当する。
ウ 引用発明1の「複数の車輪2を有するX線装置1」は、本願発明の「走行可能な移動式医療装置」に相当する。
また、引用発明1において、「複数の車輪2を有するX線装置1を自動化された方法で移動させる」際に、「自動化された方法で移動させる」ための自動的な制御を行っていることは、自明である。
よって、引用発明1の「複数の車輪2を有するX線装置1を自動化された方法で移動させる方法」は、本願発明における「走行可能な移動式医療装置を自動的に制御するための方法」に相当する。
エ 以上より、引用発明1の「空間的な位置を認識するためのセンサであるレーザースキャナと評価及び制御ユニット7と駆動制御部3とを備え、複数の車輪2を有するX線装置1を自動化された方法で移動させる方法」は、本願発明の「少なくとも1つのLiDARセンサを備えた衝突制御システムを有する走行可能な移動式医療装置を自動的に制御するための方法」に相当する。
(2)構成Bについて
引用発明1において、「ユーザがこの経路24を確認し、移動コマンドを与えると、評価および制御ユニット7は、駆動制御部3を介してX線装置1の車輪2の操舵および駆動を行い、この経路24に沿ってX線装置1を移動させる」際に、「X線装置1」が自律的に移動することは自明であるから、引用発明1において、「ユーザがこの経路24を確認し、移動コマンドを与えると、評価および制御ユニット7は、駆動制御部3を介してX線装置1の車輪2の操舵および駆動を行い、この経路24に沿ってX線装置1を移動させる」ことは、本願発明において、「前記移動式装置を自律的に」「移動させる」ことに相当する。
また、「X線装置1の車輪2の操舵および駆動を行い、この経路24に沿ってX線装置1を移動させる」際には、「X線装置1」は何らかの所定の速度で移動することは明らかであり、当該速度は、本願発明の「第1の速度」に相当する。
以上より、引用発明1において、「ユーザがこの経路24を確認し、移動コマンドを与えると、評価および制御ユニット7は、駆動制御部3を介してX線装置1の車輪2の操舵および駆動を行い、この経路24に沿ってX線装置1を移動させる」ステップは、本願発明の「第1の速度で移動させるステップ」に相当し、「前記移動式装置を自律的にまたは人力で補助して」とする要件を満たしている。
(3)構成Cについて
引用発明1において、「空間的な位置を認識するためのセンサであるレーザースキャナ」は、「X線装置1」が備えるものであって、「X線装置1」から発するレーザーを用いてスキャンをするものであるから、「X線装置1」の周辺部の少なくとも一部をスキャンするものであることは、明らかである。
また、引用発明1の「レーザースキャナ」は、「患者テーブル15、移動型医療機器17、キャビネット16などのオブジェクト」の「位置」を「特定」するものであるから、引用発明1において、「X線装置1の移動中」「現在の実際の位置9と静的及び動的オブジェクト15、16、17は物理マップ上で継続的に更新」する際に、更新される「静的及び動的オブジェクト15、16、17」の位置は、「X線装置1の移動中」に「レーザースキャナ」により「継続的に」、すなわち周期的にスキャンされたものであることは明らかである。
以上より、引用発明1において、「X線装置1の移動中、ルート24上の移動プロセスを制御するために、現在の実際の位置9と静的及び動的オブジェクト15、16、17は物理マップ上で継続的に更新」するステップは、本願発明の「前記移動式装置の移動中に、前記移動式装置の周辺部の少なくとも一部と前記移動式装置の固定場所に固定された装置セクションとを一緒に、前記少なくとも1つのLiDARセンサにより周期的にスキャンするステップ」と、「前記移動式装置の移動中に、前記移動式装置の周辺部の少なくとも一部」を「前記少なくとも1つのLiDARセンサにより周期的にスキャンするステップ」である点で共通する。
(4)構成Dについて
引用発明1において、「評価および制御ユニット7が、X線装置1の周囲にあるオブジェクトの位置が変化したために、X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険がある」との「認識」は、「レーザースキャナ」がスキャンした「X線装置1が目的地22に自動的に接近する」方向の領域における、「静的及び動的オブジェクト15、16、17」の有無のチェックにより行われることは、自明である。そして、引用発明1において、「レーザースキャナ」がスキャンした「X線装置1が目的地22に自動的に接近する」方向の領域、及び「静的及び動的オブジェクト15、16、17」は、それぞれ、本願発明の「前記移動式装置(1)の走行方向(10)にある前記周辺部の抽出領域」及び「オブジェクト」に相当する。
また、「レーザースキャナ」がスキャンした「X線装置1が目的地22に自動的に接近する」方向の領域における、「静的及び動的オブジェクト15、16、17」の有無は、「レーザースキャナ」のスキャンデータを評価することで判定されることも、自明である。
よって、引用発明1において、「X線装置1の移動中、ルート24上の移動プロセスを制御するために、現在の実際の位置9と静的及び動的オブジェクト15、16、17は物理マップ上で継続的に更新され」、「評価および制御ユニット7が、X線装置1の周囲にあるオブジェクトの位置が変化したために、X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険があると認識」するステップは、本願発明における、「前記LiDARセンサ(6)によって記録された前記周辺部のスキャンデータを評価するステップであって、前記移動式装置(1)の走行方向(10)にある前記周辺部の抽出領域においてオブジェクトをチェックする、ステップ」に相当する。
(5)構成Fについて
引用発明1において、「X線装置1の移動は駆動制御部3によって減速され、必要に応じて停止される」ことは、本願発明において、「前記移動式装置の速度を調節する」ことに相当する。
また、「X線装置1の移動は駆動制御部3によって減速され、必要に応じて停止される」ことは、「X線装置1の周囲にあるオブジェクトの位置が変化したために、X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険があると認識した」ことに基づいて行われることといえ、上記(4)の対比を踏まえると、「X線装置1の周囲にあるオブジェクトの位置が変化したために、X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険があると認識」することは、本願発明の「前記LiDARセンサ(6)によって記録された前記周辺部のスキャンデータ」の「評価」の結果により行われることといえる。
以上より、引用発明1において、「評価および制御ユニット7が、X線装置1の周囲にあるオブジェクトの位置が変化したために、X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険があると認識した場合、障害物を回避して移動するための回避操作が行われ、回避が不可能な場合は、X線装置1の移動は駆動制御部3によって減速され、必要に応じて停止される」ステップは、本願発明の「これらの評価の結果に基づいて前記移動式装置(1)の速度を調節するステップ」と、「前記LiDARセンサ(6)によって記録された前記周辺部のスキャンデータ」の「評価」「の結果に基づいて前記移動式装置(1)の速度を調節するステップ」である点で共通する。
2 一致点、相違点
上記1のとおりであるから、本願発明と引用発明1とは、下記(1)の点で一致し、下記(2)~(4)の点で相違する。
(1)一致点
「A 少なくとも1つのLiDARセンサを備えた衝突制御システムを有する走行可能な移動式医療装置を自動的に制御するための方法であって、
B ・前記移動式装置を自律的にまたは人力で補助して第1の速度で移動させるステップと、
C’・前記移動式装置の移動中に、前記移動式装置の周辺部の少なくとも一部を、前記少なくとも1つのLiDARセンサにより周期的にスキャンするステップと、
D ・前記LiDARセンサによって記録された前記周辺部のスキャンデータを評価するステップであって、前記移動式装置の走行方向にある前記周辺部の抽出領域においてオブジェクトをチェックする、ステップと、
F’・前記LiDARセンサによって記録された前記周辺部のスキャンデータの評価の結果に基づいて前記移動式装置の速度を調節するステップと、
G を有する方法。」
(2)相違点1(構成C)
本願発明は「前記移動式装置の移動中に、前記移動式装置の周辺部の少なくとも一部と前記移動式装置の固定場所に固定された装置セクションとを一緒に、前記少なくとも1つのLiDARセンサにより周期的にスキャンするステップ」を有すると特定されているのに対し、引用発明1は、「前記移動式装置の固定場所に固定された装置セクションとを一緒に」スキャンするとは特定されていない点。
(3)相違点2(構成E)
本願発明は、「前記LiDARセンサによって記録された、固定された前記装置セクションのスキャンデータを評価するステップであって、前記LiDARセンサの機能性をチェックする、ステップ」を有すると特定されているのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。
(4)相違点3(構成F)
本願発明は、「これらの評価の結果に基づいて前記移動式装置の速度を調節するステップ」と特定されており、当該発明特定事項における「これらの評価」は、「前記LiDARセンサによって記録された前記周辺部のスキャンデータ」の「評価」(構成D)及び「前記LiDARセンサによって記録された、固定された前記装置セクションのスキャンデータ」の「評価」(構成E)の2つの評価を含むのに対し、引用発明1は、当該2つの評価のうち、「前記LiDARセンサによって記録された、固定された前記装置セクションのスキャンデータ」の「評価」「の結果に基づいて前記移動式装置の速度を調節する」とは特定されていない点。
3 相違点について
事案に鑑み、相違点1~3を合わせて検討する。
(1)引用文献2記載事項の「光源から送信され、周囲環境の物体から反射され、光センサによって検出されたパルス列をヒストグラムメモリに記録し、ヒストグラムに形成されたピークの場所は、光学測定システムと周囲環境内の物体との間の距離を判定するために使用され得る光学測定システム」は、「光源から送信され」る光を利用して「周囲環境内の物体との間の距離を判定する」ものであるから、本願発明の「LiDARセンサ」に相当する。
引用文献2記載事項の「ハウジングの窓」は、「光学測定システム」に対して相対的な位置が固定された状態となっていることは明らかであるから、本願発明の「固定場所に固定された装置セクション」に相当する。また、引用文献2記載事項の「光学測定システム」が、周期的なスキャンを行うものであることは、自明である。
引用文献2記載事項において、「ハウジングの窓からの反射から生じる」「初期ピーク1504の大きさが閉塞閾値1506を超える」と判定することは、本願発明において、「固定された前記装置セクションのスキャンデータを評価」することに相当する。
引用文献2記載事項において、「光学測定システムが異物によって閉塞されている」場合、「光学測定システムと周囲環境内の物体との間の距離を判定する」との「光学測定システム」の機能性が低下していることは、自明である。よって、引用文献2記載事項において、「光学測定システムが異物によって閉塞されているか否かを判定する」ことは、本願発明において、「LiDARセンサの機能性をチェック」することに相当する。
(2)引用発明1と引用文献2記載事項とは、LiDARセンサを用いた装置に関するものである点で共通する技術分野に属するものであり、また、安全性を高めるとの、共通する課題を有するものである。
そして、引用発明1は、「X線装置1が目的地22に自動的に接近する間に衝突の危険があると認識した場合、障害物を回避して移動するための回避操作が行われ、回避が不可能な場合は、X線装置1の移動は駆動制御部3によって減速され、必要に応じて停止される」ものであって、衝突を回避することで安全性を高めるものであるところ、さらに安全性を高めるために引用文献2記載事項の構成を適用し、「X線装置1に備えられた光学式のセンサ」が「X線装置1」の固定場所に固定された装置セクションについても周期的にスキャンし、当該固定場所に固定された装置セクションのスキャンデータを評価して、「光学式のセンサ」の機能性をチェックし、当該固定場所に固定された装置セクションのスキャンデータの評価による機能性のチェックにも基づいて、「X線装置1の移動は駆動制御部3によって減速され、必要に応じて停止される」構成とし、相違点1~3に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
4 小括
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 審判請求人の主張について
(1)ア 審判請求人は、審判請求書において、「本願発明1に記載された「LiDARセンサ(6)」と、引用文献1に記載された「レーザスキャナ32」とは、いずれもレーサ光を利用したセンサである点で共通するものの、引用文献1に記載された発明では、レーザースキャナ32は、複数の静止3Dカメラ31と共に使用され(FIG.6参照)、3D深度カメラ、全方位立体カメラ、超音波センサ、容量式近接センサで代用されてもよいことから(段落[0092]参照)、レーザ光をパルス状に照射し、対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測し、距離や位置、形状を3次元で測定する「LiDARセンサ(6)」とは全く異なるセンサであることは明らかである。」と主張しているので、当該主張について検討する。
イ 引用発明1において、「追加で1つ又は複数の固定配置のセンサユニットを用い」るのは、「X線装置1に備えられた光学式のセンサ」である「レーザースキャナ」「は、遮蔽物の背後を見ることができないため」であるから、「追加で1つ又は複数の固定配置のセンサユニットを用い」ることは、「レーザースキャナ」が単独で検出と測距を行えないことを意味するものではない。そして、引用発明1の「レーザースキャナ」は、そのレーザー光が届く範囲であれば、単独で「空間的な位置を認識」できるものであることは、明らかである。また、3D深度カメラ、全方位立体カメラ、超音波センサ、容量式近接センサ等の他のセンサで代用可能なことをもって「レーザースキャナ」が「LiDARセンサ」ではないともいえない。
よって、「引用文献1に記載された発明では、レーザースキャナ32は、複数の静止3Dカメラ31と共に使用され(FIG.6参照)、3D深度カメラ、全方位立体カメラ、超音波センサ、容量式近接センサで代用されてもよいこと」を理由に、引用発明の「レーザースキャナ」が「LiDARセンサ」とは異なるものであるとする審判請求人の上記主張は採用できない。
ウ また、上記主張においては、審判請求人は、「LiDARセンサ(6)」を、「レーザ光をパルス状に照射し、対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測し、距離や位置、形状を3次元で測定する」ものとしているが、上記1(1)で示した通り、「LiDARセンサ」における「LiDAR」は「light detection and ranging」(当審訳:光による検知及び測距)を意味するものであるから、光を用いて検知と測距を行うセンサであれば、「LiDARセンサ」であるといえる。そうすると、本願発明における「LiDARセンサ」との発明特定事項が、センサを、「レーザ光をパルス状に照射し、対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測し、距離や位置、形状を3次元で測定する」ものにまで限定するとはいえない。
よって、審判請求人の上記主張は、請求項の記載に基づくものではなく、採用できない。
また、仮に本願発明の「LiDARセンサ」が「レーザ光をパルス状に照射し、対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測し、距離や位置、形状を3次元で測定する」ものに限定されると解釈したとしても、引用発明1の「患者テーブル15、移動型医療機器17、キャビネット16などのオブジェクト」の「位置」を「特定」でき、「空間的な位置を認識するためのセンサであるレーザースキャナ」は、レーザ光を照射し、「患者テーブル15、移動型医療機器17、キャビネット16などのオブジェクト」等の対象物によって反射した光をスキャンし、距離や位置、形状を測定するものであることは明らかであり、また、放射線等を用いて距離の検出を行うセンサにおいて、放射線等が対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を用いて距離を検出することは、例を挙げるまでも無く周知技術であるから、引用発明1の「レーザースキャナ」を、上記周知技術を適用して「レーザ光をパルス状に照射し、対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測し、距離や位置、形状を3次元で測定する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
エ 以上の通りであるから、審判請求人の上記アの主張は採用できない。
(2)さらに、審判請求人は、「また、引用文献2には、光学測定システムにおいて、ハウジングから反射されたピークを用いて距離測定値を更正すること、及び、ハウジングから反射されるピークの大きさに基づいて窓が汚れていることや閉塞が発生したことを示すユーザに対する警告を生成することが記載されているものの、経済的なコストがかかるということを理由に、LiDARシステムは採用できないことが記載されており(段落[0003]参照)、この光学測定システムが、LiDARシステムではないことは明らかである。」と主張しているので、当該主張について検討する。
引用文献2において、背景技術についての記載である段落[0003]には、「全ての条件で、特にライダーシステムの経済的なコストで、数センチメートルまでの堅牢な距離精度を提供することは困難であり得る。」(当審訳)との記載があるが、当該記載は、ライダーシステムについて数センチメートルまでの堅牢な距離精度を提供するには経済的なコストが必要なことを意味するのであって、引用文献2に記載された発明が、ライダーシステムを採用しない発明についてのものであることを意味するものではない。
これは、引用文献2の段落[0065]に「以下のセクションで例示的な自動車用ライダーシステムを紹介し、光測距システムによって信号を検出するための例示的な技術の続く説明、そして次に、異なる実施形態をより詳細に説明する。」(当審訳)と記載されているように、発明を実施するための形態として「例示的な自動車用ライダーシステム」が記載されていることからも、明らかである。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-014156