商標拒絶査定不服審判
2024-013342
アイピイエスクリニック、アイピイエス
- 審判番号
- 2024-013342
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2023-060091
- 請求日
- 2024年08月19日
- 審決日
- 2024年12月05日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイ ピース,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】田中 克郎
- 【請求人代理人】石田 昌彦
- 【請求人代理人】遠藤 祐吾
- 【請求人代理人】中河 香一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 清川 恵子
- 審判官 白鳥 幹周
- 分類
- T18 .13 -Z (W44) / T18 .272-Z (W44)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2023- 60091拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和5年6月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年11月 8日付け:拒絶理由通知書
令和6年 2月14日 :意見書の提出
令和6年 5月16日付け:拒絶査定
令和6年 8月19日 :審判請求書の提出
2 本願商標
本願商標は、「iPSクリニック」の文字を標準文字で表してなり、第44類「医療、衛生管理及び美容,スキンケア美容,ヘアトリートメント美容,ボディケア美容,メイクアップ,医療情報の提供,美容に関する情報の提供」を指定役務として登録出願されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、「iPSクリニック」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「iPS」の文字は、「iPS細胞」を認識させるものであり、これは「体細胞から作られる多能性幹細胞。体細胞に数種類の因子を加え、培養することでできる。再生医療や疾患メカニズムの研究、創薬に用いる。」の意味を有し、また、「クリニック」の文字は、「診療所」の意味を有する語である。
また、本願の指定役務を提供する分野において、「iPS」の文字が、「iPS細胞」を意味する語として使用されている実情、「iPS治療」の文字が、「iPS細胞を用いた治療」ほどの意味合いで使用されている実情、及び、病院等でiPS細胞を用いた医療が提供されている実情が認められる。
そうすると、本願商標を、その指定役務中、「iPS細胞を用いた医療を提供する診療所に関する役務」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、役務の質を表示したものとして認識するにとどまるといえ、本願商標は、単にその役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものといえる。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、「iPSクリニック」の文字を標準文字で表してなるものであり、その外観上、「iPS」の文字と「クリニック」の文字とを結合したものと、容易に看取し得るものである。
そして、その構成中「iPS」の文字は、そのうち「i」の文字のみが小文字であるという態様も相まって、「体細胞から作られる多能性幹細胞。」(出典:「広辞苑 第七版」)を意味する「iPS細胞」を容易に想起させるといえるものであって、それ以外の語を想起させるというべき事情は見当たらないものである。
また、「iPS細胞」は、原審提示の情報にあるように、再生医療などの医療分野を中心に、将来的に広く利活用されることが期待されており、研究が進められているものであって、その製作に世界で初めて成功した日本人がノーベル賞を受賞したこと(参考:「中外製薬」のウェブサイト https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/genome/genomep06.html)などもあり、我が国において、その意味も含め、一定程度広く知られているといえるものである。
そして、本願商標の構成中、「クリニック」の文字は、「診療所」(出典:同上)を意味する語として、広く一般的に使用、理解されているものであるから、本願商標全体としては、「iPS細胞の診療所」ほどの意味合いを容易に認識させるものといえる。
加えて、上述のとおり、「iPS細胞」は「幹細胞」の一種であるところ、別掲の情報にあるように、「幹細胞を用いた医療」が、「○○クリニック」と称する診療所において、広く提供されている実情も認められる。
以上のことからすると、本願商標をその指定役務に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、その役務が「iPS細胞を用いた医療を提供する診療所」において提供される役務であるという、その役務の質を表示したものと理解、認識するというのが相当であるから、本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえる。
また、本願商標を、その指定役務中、上述の役務以外の役務に使用するときは、それがあたかも「iPS細胞を用いた医療を提供する診療所」において提供される役務であるかのごとく、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるといえる。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「iPS細胞」は人工的に作られた多能性の幹細胞であることから、その用途や応用の場面は広く、「iPS細胞を用いた医療」と一口にいっても、その提供される医療サービスは眼科、循環器内科、心臓血管外科、脳神経内科など、多岐にわたる専門医により提供され、その内容も一つに特定できるものでないのであって、そのほかiPS細胞は疾病の原因究明や新薬の開発にも用いられているものであるから、本願商標よりは、iPS細胞を利用又は応用した最先端の医療や研究が提供されるであろうことが暗示的に観念されるに過ぎない旨主張する。
また、請求人は、「iPSクリニック」の文字が「iPS細胞を用いた医療を提供する診療所における医療」ほどの意味合いで使用されている実情もなく、将来的に一般的に使用される蓋然性もない旨主張する。
しかしながら、本願商標は、それ自体としては使用例が見受けられないとしても、上記(1)のとおり、本願商標を構成する各語の意味に加え、「iPS細胞」が、再生医療などの医療分野を中心に、将来的に広く利活用されることが期待されており、研究が進められている実情、及び、「幹細胞を用いた医療」が、「○○クリニック」と称する診療所において、広く提供されている実情に照らせば、本願商標をその指定役務に使用するときには、これに接する取引者、需要者によって、「iPS細胞を用いた医療を提供する診療所」において提供される役務であることを表示するものとして一般に認識されるものであり、将来も含め、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものというべきものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないとともに、自他役務識別力を欠くものというのが相当である。
そして、このことは、iPS細胞の用途が多岐にわたるものであることによって変わるものではない。
イ 請求人は、構成中に「iPS」、「クリニック」又は「細胞」の文字を有する商標に係る登録例を挙げ、本願商標もそれらと同様に登録を認められるべきである旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と指定商品・指定役務との関係や、その商品又は役務の分野における取引の実情をも踏まえて、個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の挙げた登録例は、商標の構成態様が本願商標とは異なるものである点において、本願とは、事案を異にするものというべきであり、また、過去の登録例が存在することをもって、上記判断が左右されるものではない。
ウ したがって、請求人の上記ア及びイの主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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