特許拒絶査定不服審判
2024-013292
茶飲料
- 審判番号
- 2024-013292
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-228397
- 請求日
- 2024年08月19日
- 審決日
- 2025年09月17日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】アサヒ飲料株式会社
- 【請求人代理人】林 一好
- 【請求人代理人】来間 清志
- 【請求人代理人】祐成 篤哉
- 審判長/審判官
- 審判長 天野 宏樹
- 審判官 植前 充司
- 審判官 加藤 友也
- 分類
- P18 .121-WY (A23F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2019-228397「茶飲料」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 6月24日出願公開、特開2021- 93974、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和 1年12月18日を出願日とする出願であって、令和 5年10月23日付けで拒絶理由が通知され、令和 6年 2月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年 5月27日付けで拒絶査定がされ、同年 8月19日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和 7年 2月19日に上申書が提出されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
本願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2017-46598号公報
引用文献2:特開2002-65227号公報
第3 特許請求の範囲の記載及び本願発明1~3
本願の特許請求の範囲の記載は、令和 6年 8月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲のとおりであり、その請求項1~3に記載された事項により特定される発明を、以下、「本願発明1」~「本願発明3」という。
「【請求項1】
4-エチルフェノールと、大麦、ハトムギ、玄米、及びハブ茶からなる群より選択される少なくとも1種の抽出物とを含み、
前記4-エチルフェノールの含有量が10~100ppbである、
茶飲料。
【請求項2】
前記4-エチルフェノールの含有量が15~50ppbである、請求項1に記載の茶飲料。
【請求項3】
大麦及びハトムギの抽出物を含有する、請求項1又は2に記載の茶飲料。」
第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項等
(1)引用文献1の記載事項等
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、「菊花風味を有する飲食物の香味改善剤」に関し、次の記載がある(下線は当審による。「・・・」は記載の省略を意味する。)。
(ア)
「【0001】
本発明は、菊花風味を有する飲食物に適用する香味改善剤に関し、当該香味改善剤は、トランス-4,5-エポキシ-(E)-2-デセナール、(Z)-1,5-オクタジエン-3-オン、特定の芳香族化合物、並びに特定のエチルピラジンからなる群より選ばれた1種又は2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
さらに、本発明は、菊花フレーバー及び上記香味改善剤を含有する菊花フレーバー組成物、菊花風味を有する飲食物に所定量の上記香味改善剤が配合されている飲食物、菊花風味を有する飲食物に上記香味改善剤を所定量で添加する菊花風味飲食物の香味改善方法、並びに、菊花風味を有する飲食物に上記菊花フレーバー組成物を所定量で添加する菊花風味飲食物の香味改善方法、に関する。」
(イ)
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、消費者の嗜好に合った、天然で良質の菊花が有する好ましい香味や風味を付与できる、菊花風味を有する飲食物用の香味改善剤、菊花フレーバー及び当該香味改善剤からなる組成物、当該香味改善剤を添加した菊花風味飲食物、並びに当該香味改善剤を極微量の範囲で添加することを特徴とする菊花風味飲食物の香味改善方法を提供することである。」
(ウ)
「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、菊花茶などの菊花風味飲食物が発する菊花特有の芳香・風味を向上させ、より芳醇な香味に改善させる作用を持った成分を探索した。
【0010】
その結果、トランス-4,5-エポキシ-(E)-2-デセナール、4-メチルフェノール、4-エチルフェノール、(Z)-1,5-オクタジエン-3-オン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-エチル-3,5(6)-ジメチルピラジン、エチルシンナメート、メチルシンナメート、メチル3-フェニルプロパノエート、エチル3-フェニルプロパノエートの1種又は2種以上、好ましくは全てを、菊花風味を有する成分と共存させた場合に、フレッシュな菊花香のボリューム感を付与する効果を有すること、換言すると菊花香のグレードアップ効果を有することを見出した。
さらに、本発明者は、上記の成分を菊花茶等の菊花風味飲食物に極微量の特定範囲で添加することにより、新鮮でナチュラルな甘さを有する菊花様風味を付与でき、美味しい菊花風味飲食物の提供を可能とするという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。」
(エ)
「【0020】
以下に、本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
〔I〕菊花風味を有する飲食物
本発明の香味改善の対象とされる菊花風味とは、菊花それ自体又は菊花の抽出物に由来する風味をいう。・・・
従って、菊花風味を有する飲食物とは、菊花自体又は菊花の抽出物を含む菊花茶飲料、菊花茶と緑茶やプーアル茶等との混合茶飲料、菊花若しくは菊花抽出物入りのゼリーやキャンデーなどが例示される。」
(オ)
「【0066】
〔実施例42~81〕
下記表9の処方に従って、各成分を常法により混合して本発明の菊花フレーバー組成物を調製した。
その際の、香味改善剤の配合は、表10~13に別に記載している。
【0067】
【表9】
[図:0001427664000001.jpg]
【0068】
【表10】
[図:0001427664000002.jpg]
」
(カ)
「【0080】
〔試験例4〕(菊花混合茶)
菊花10g、仙草10g、蛋花(インドケイソウ)1g、布渣叶(ミクロコス・パニクラタ)0.5g、夏枯草0.3g、甘草0.3g、金銀花0.3gに、水1,000g、砂糖100g、クエン酸0.2g、クエン酸三ナトリウム0.5gを加えて1時間煮出した。
茶こしで濾して室温まで冷却し、配合例42~82で調製した菊花フレーバー組成物及びエタノールそれぞれ2gを加え、水で1,000gに重量調整した。
・・・
評価点と風味のコメント(自由記述)を表18~19に示す。
【0081】
【表18】
[図:0001427664000003.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アの記載のうち、特に試験例4の実施例131の記載に着目して整理すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「菊花10g、仙草10g、蛋花(インドケイソウ)1g、布渣叶(ミクロコス・パニクラタ)0.5g、夏枯草0.3g、甘草0.3g、金銀花0.3gに、水1,000g、砂糖100g、クエン酸0.2g、クエン酸三ナトリウム0.5gを加えて1時間煮出し、次いで、茶こしで濾して室温まで冷却し、配合例49(合議体注:「配合例49」については、上記アの【0066】~【0068】の記載を参照のこと)として調製した菊花フレーバー組成物(菊花フレーバー組成物100質量部中の4-エチルフェノールの割合は0.0005質量部)及びエタノールそれぞれ2gを加え、水で1,000gに重量調整した、菊花混合茶。」(以下、「引用発明」という。)
(2) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、「健康茶および健康飲料並びにその製造方法」に関し、次の記載がある(「・・・」は記載の省略を意味する。)。
ア
「【請求項1】 イネ科植物の緑葉処理物を含む健康茶であって、
前記緑葉処理物は、揉み処理されていると共に、γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid)を乾燥時重量で500mg/100gより多く含有することを特徴とする健康茶。
・・・
【請求項4】 イネ科植物の緑葉健康茶と、
昆布茶,松葉茶,エゾウコギ茶,ソバ茶,明日葉茶,グァバ茶,ユーカリ茶,ビワの葉茶,アロエ茶,ゲンノショウコ茶,センブリ茶,ウコン茶,スギナ茶,河原決明茶,ウラジロガシ茶,ドクダミ茶,ハブ茶,菊花茶,シソ茶,アマチャヅル茶,オオバコ茶,桜茶,甘茶,柿の葉茶,カモミールティ,しょうが湯,紅花茶,サフラン茶,コンフリー茶,シイタケ茶,杜仲茶,ギムネマ茶,マテ茶,ウーロン茶,ハトムギ茶,ルイボスティ,クコ茶,ヨモギ茶,イチョウ葉茶,紅茶,玄米茶,麦茶,ウラジロガシ茶,カキオドシ茶,カミツレ茶,カリン茶,桑の葉茶,ゲンノショウコ茶,ゴボウ茶,サフラン茶,シソ茶,ショウガ茶,スギナ茶,セキショウ茶,タラノキ茶,タンポポ茶,ナタマメ茶,ニワトコ茶,ネズミモチ茶,ビワの葉茶,メグスリノキ茶,ユーカリ茶,羅漢果茶,緑茶,しょうが茶とからなる群より選択された一つまたは複数の茶とが混合された健康茶であって、
前記イネ科植物の緑葉健康茶は、揉み処理されていると共に、γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid)を乾燥時重量で500mg/100gより多く含有することを特徴とする健康茶。」
イ
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は健康茶および健康飲料並びにその製造方法に係り、特に栄養価値の高い新規な健康茶およびその製造方法並びに栄養価値の高い新規な健康飲料およびその製造方法に関する。」
ウ
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、イネ科植物の緑葉を用いた新規な健康茶および健康飲料並びにその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、イネ科植物の緑葉を用いた、機能性食品としての価値の高い健康茶および健康飲料並びにその製造方法を提供することにある。」
エ
「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、イネ科植物の緑葉を用いた新規な健康食品について鋭意研究を行った結果、イネ科植物の緑葉に、製茶の製造工程を適用することにより、栄養価値の高い健康茶および健康飲料が製造可能であることを見出した。そしてさらに、GABA富化処理工程を行うことにより、イネ科植物の緑葉に含まれたGABAが増加するため、イネ科植物の緑葉の高い栄養価値と、GABAの抗高血圧作用とを併せ持つ新規で栄養価値の高い健康茶および健康食品が得られることを発見するに至った。」
オ
「【0073】本実施の形態に係る健康茶の製造方法によって製造された健康麦若葉茶は、他の種類の茶葉または薬草茶を合組し、請求項4に係る発明の健康茶の一例としての健康合組茶とすることもできる。ここで、合組とは、異なる種類の茶を組み合わせることをいう。合組は、茶葉の合組機を用いて行う。合組工程により、消費地の嗜好性や価格に適するように、種々の健康合組茶を製造することが可能となる。
【0074】合組に用いる他の種類の茶葉または薬草茶には、例えば、昆布茶,松葉茶,エゾウコギ茶,ソバ茶,明日葉茶,グァバ茶,ユーカリ茶,ビワの葉茶,アロエ茶,ゲンノショウコ茶,センブリ茶,ウコン茶,スギナ茶,河原決明茶,ウラジロガシ茶,ドクダミ茶,ハブ茶,菊花茶,シソ茶,アマチャヅル茶,オオバコ茶,桜茶,甘茶,柿の葉茶,カモミールティ,しょうが湯,紅花茶,サフラン茶,コンフリー茶,シイタケ茶,杜仲茶,ギムネマ茶,マテ茶,ウーロン茶,ハトムギ茶,ルイボスティ,クコ茶,ヨモギ茶,イチョウ葉茶,紅茶,玄米茶,麦茶(麦の穂を原料としたもの),ウラジロガシ茶,カキオドシ茶,カミツレ茶,カリン茶,桑の葉茶,ゲンノショウコ茶,ゴボウ茶,サフラン茶,シソ,ショウガ茶,スギナ茶,セキショウ茶,タラノキ茶,タンポポ茶,ナタマメ茶,ニワトコ茶,ネズミモチ茶,ビワの葉茶,メグスリノキ茶,ユーカリ茶,羅漢果茶,緑茶,しょうが茶などを用いることができる。これらの他の種類の茶葉または薬草茶は、粉末化し、粉末状の形態で、健康麦若葉茶と合組してもよい。本実施の形態で製造した健康茶の一例としての健康合組茶は、最終的に、水分含量が5%以下、好ましくは3%以下となるように製造される。最終的な水分含量が5%より高い値となると、健康合組茶の貯蔵中に所望の風味、香味が失われるため好ましくない。ただし、健康合組茶の水分は、12%以下としてもよい。5%より高い値であっても、その後の貯蔵等の条件を選択して、風味の変化を防げばよい。」
2 対比・判断
(1) 本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の菊花混合茶は、本願発明の「茶飲料」に相当する。
また、引用発明の菊花混合茶は、菊花フレーバー組成物100質量部中に4-エチルフェノールを0.0005質量部含有するものを、混合茶製品1,000g中に2g含有するものであるから、引用発明の菊花混合茶は、菊花フレーバー組成物由来の4-エチルフェノールを10ppb含有するといえる。
ここで、引用発明の菊花混合茶は、植物原料である菊花10g、仙草10g、蛋花(インドケイソウ)1g、布渣叶(ミクロコス・パニクラタ)0.5g、夏枯草0.3g、甘草0.3g及び金銀花0.3gを含むものであるところ、これらの植物原料由来の4-エチルフェノールの含有量は記載されておらず、不明である。
してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「4-エチルフェノールを含む茶飲料。」
(相違点)
・相違点1-1
本願発明1は「大麦、ハトムギ、玄米、及びハブ茶からなる群より選択される少なくとも1種の抽出物を含む」と特定するのに対し、引用発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-2
茶飲料の4-エチルフェノール含有量について、本願発明1は「10~100ppb」と特定するのに対し、引用発明にはそのような特定がない点。
イ 判断
・相違点1-1について
引用文献1には、菊花茶を緑茶やプーアル茶などのチャノキの茶葉から得られる茶飲料と混合して混合茶を製造し得ることが例示されている(【0020】)が、菊花茶をチャノキの茶葉から得られる茶飲料とは異なる大麦茶、ハトムギ茶、玄米茶及びハブ茶からなる群より選択される少なくとも1種と混合して混合茶を調製することは、記載も示唆もされていない。
また、引用文献1及び2の全ての記載を見ても、引用文献2には、イネ科植物の緑葉健康茶と混合し得る茶飲料の選択肢としてハブ茶、菊花茶、ハトムギ茶、玄米茶及び麦茶を含む多数の茶飲料が列挙されているにすぎず(【請求項4】、【0073】、【0074】)、引用発明において「大麦、ハトムギ、玄米、及びハブ茶からなる群より選択される少なくとも1種の抽出物を含む」ものとする動機付けがあるとも言えない。
よって、引用発明において、相違点1-1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとは言えない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献1、2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本願発明2~3について
本願発明2~3はいずれも、本願発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。
そして、上記(1)のとおり、本願発明1は、引用発明及び引用文献1、2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本願発明2及び3もまた、引用発明及び引用文献1、2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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