特許拒絶査定不服審判
2024-012985
動物用トイレ
- 審判番号
- 2024-012985
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-036842
- 請求日
- 2024年08月09日
- 審決日
- 2026年06月08日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社大貴
- 【請求人代理人】大坂 憲正
- 審判長/審判官
- 審判長 小島 寛史
- 審判官 立澤 正樹
- 審判官 岡崎 彦哉
- 分類
- P18 .121-WZ (A01K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 36842「動物用トイレ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 9月22日出願公開、特開2022-137358〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年3月9日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和 6年 1月15日付け:拒絶理由通知
同年 3月21日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月 8日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
同月21日 :原査定の謄本の送達
同年 8月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年11月15日付け:前置報告書
令和 7年 1月29日 :上申書の提出
令和 8年 1月26日付け:拒絶理由通知
同年 3月25日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~21に係る発明は、令和8年3月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
室内に設置される動物用トイレであって、
底面部及び側面部を有する箱状の本体部と、
動物の出入口を有し、前記本体部を上方から覆うフードと、
前記フードの内部空間の空気を排出することにより、当該内部空間の換気をする換気装置と、を備え、
前記内部空間の前記空気が、脱臭処理を経ることなく、前記換気装置により前記室内に排出されて当該室内に拡散するように構成されていることを特徴とする動物用トイレ。」
第3 当審において通知した拒絶理由
当審において通知した令和8年1月26日付けの拒絶理由のうち、本願の請求項1に係る発明に対する理由2の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.独国実用新案第202015100547号明細書
2.特開2004-24180号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2002-142600号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載、引用発明及び周知技術
1 引用文献1の記載事項、引用発明
(1)引用文献1に記載された事項
令和8年1月26日付けの拒絶理由通知で引用文献1として引用された、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった独国実用新案第202015100547号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、括弧書きは当審訳を示す(下線は、当審で付した。以下、他の引用文献も同様。)。
ア 段落[0001]-[0010]
「
[図:0001437795000001.jpg]
[図:0001437795000002.jpg]
[図:0001437795000003.jpg]
[図:0001437795000004.jpg]
」
([0001]本発明は猫用トイレに関する。
[0002]ここでいう猫用トイレとは、猫などの動物だけでなく、犬、ウサギ、モルモットなどの他の動物も排泄するための容器を指す。
[0003]動物は、家の中やケージなどにいる場合、猫用トイレで排泄することが知られている。
[0004]一般的な猫用トイレは、猫が足を踏み入れることができる開いたトレイ、または、側壁の開口部から猫が出入りできる閉じた容器で構成されており、その開口部にはフラップが付いている場合と付いていない場合がある。トレイには砂や砂利などが詰められている。
[0005]しかし、一般的な猫用トイレには、動物が排泄した後、糞尿によって不快で、時には広範囲に及ぶ臭いがトイレの外に漂うという欠点がある。
[0006]本発明は、上記およびその他の欠点の少なくとも一つに対する解決策を提供することを目的とする。
[0007]本発明は、猫その他の動物が排泄できる猫用トイレに関するものであり、該トイレは、動物が出入りするための扉またはフラップ付きの開口部と、砂、砂利等を入れた取り外し可能なトレイを取り付けたり取り外したりするための閉鎖可能な開口部とを有する閉鎖可能な容器とを基本として構成され、該閉鎖可能な容器には、内蔵ファンの形態の吸引装置と、抽出された空気を家屋等の換気システムに排出するための排気接続部が設けられている。
[0008]ここでいう閉鎖可能な容器とは、必ずしも気密性を保つ必要はなく、閉鎖された空間を画定する容器であって、その閉鎖空間内に空気の流れを可能にするのに十分な隙間や溝を有する容器を意味する。
[0009]利点の一つは、吸引装置が猫用トイレの不快で広範囲に及ぶ臭いを取り除くため、トイレの内外に不快な臭いが発生するのを防ぐことができる点である。
[0010]これにより、動物とトイレ周辺にいる人々の両方の快適性が向上する。)
イ 段落[0020]-[0021]
「
[図:0001437795000005.jpg]
[図:0001437795000006.jpg]
」
([0020]図1および図2に示す猫用トイレ1は、基本的に閉鎖可能な容器2から構成されており、この容器2には、フラップ4を有する開口部3と、蓋6によって閉じることができる閉鎖可能な開口部5が設けられている。この蓋6は、閉鎖可能な容器2の上部7に設けられている。
[0021]この場合、フラップ4は、閉鎖可能な容器2の開口部3の側部8に蝶番式に取り付けられている。開口部3は閉鎖可能な容器2の側壁9aに位置しており、動物10がフラップ4を容易に開けることができ閉鎖可能な容器2に入ることができる。)
ウ 段落[0024]
「
[図:0001437795000007.jpg]
」
([0024]閉鎖可能な容器2内には、砂14、砂利、または猫砂用トイレの充填材として使用できるその他の材料が充填された、取り外し可能なトレイ13が収められている。取り外し可能なトレイ13は、好ましくはプラスチックなどの洗浄可能な材料で作られている。)
エ 段落[0026]-[0037]
「
[図:0001437795000008.jpg]
[図:0001437795000009.jpg]
」
([0026]さらに、閉鎖可能な容器2には、内蔵型の送風機15の形態の吸引装置が設けられており、この送風機15は閉鎖可能な容器2の側壁9bに設置されている。ただし、送風機15は、例えば蓋6など、別の場所に配置されることも排除されない。
[0027]閉鎖可能な容器2には、排気を換気システムに送るための排気管接続部16も備えられている。排気システムは、簡略化のため図示されていない。この場合、接続部16は送風機15と同じ高さに位置している。
[0028]さらに、存在センサ17も設けられており、この存在センサ17は、閉鎖可能な容器2の内部、フラップ4を備えた開口部3の反対側の側壁9cに沿って配置されている。また、タイマー18も設けられており、このタイマー18は、存在センサ17と一体化されている。
[0029]存在センサ17は、例えば、モーションセンサまたは赤外線センサとして実現することができる。
[0030]別個のタイマー18を設けること、タイマー18を送風機15に組み込むこと、またはタイマー18を省略することも排除されない。
[0031]猫用トイレ1の仕組みは非常にシンプルで、以下のとおりである。
[0032]猫用トイレ1を使いたい動物10は、フラップ4が付いた開口部3から閉鎖可能な容器2に入ることができる。
[0033]存在センサ17は、動物10が侵入した際にそれを検出し、タイマー18に信号を送信する。
[0034]タイマー18は、送風機15が所定の設定時間の間にオンされるように設定される。
[0035]動物10は取り外し可能なトレイ13内で排泄することができ、閉鎖可能な容器2内の空気は排出管16を通って換気システムに排出される。
[0036]これにより空気が入れ替わり、閉鎖可能な容器2から不快な臭いが除去される。
[0037]動物10が猫用トイレ1から出た後も送風機15が一定時間作動し続けるように設定時間を選択することで、動物が猫用トイレ1から出た後の糞尿の臭いも除去される。)
オ 図1-2
「
[図:0001437795000010.jpg]
」
(2)看取事項
上記(1)イに摘記した段落[0021]の「閉鎖可能な容器2の側壁9a」、上記(1)エに摘記した段落[0026]の「閉鎖可能な容器2の側壁9b」及び同段落[0028]の「側壁9c」との記載を踏まえると、上記(1)オの図1―2から、「容器2は底面、側壁9a、9b、9cを有する箱状であること」が看取される(以下、「看取事項1-1」という。)
(3)引用発明
上記(1)-(2)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「猫用トイレ1であって、([0020])
基本的に閉鎖可能な容器2から構成されており、([0020])
容器2は底面、側壁9a、9b、9cを有する箱状であり、(看取事項1-1)
この容器2には、フラップ4を有する開口部3と、蓋6によって閉じることができる閉鎖可能な開口部5が設けられており、([0020]、[0021])
この蓋6は開閉可能な容器2の上部に設けられており、([0020])
フラップ4は、閉鎖可能な容器2の開口部5の側部8に蝶番式に取り付けられており、([0021])
開口部3は閉鎖可能な容器2の側壁に位置しており、動物10がフラップ4を容易に開けることができ閉鎖可能な容器2に入るものであり、([0021])
閉鎖可能な容器2内には、砂14、砂利、または猫砂用トイレの充填材として使用できるその他の材料が充填された、取り外し可能なトレイ13が収められており、([0024])
閉鎖可能な容器2の側壁9bに内蔵型の送風機15の形態の吸引装置が設けられ、([0027])
閉鎖可能な容器2の内部に、モーションセンサまたは赤外線センサとして実現される存在センサ17が配置され、([0028]、[0029])
存在センサ17は、動物10が侵入した際にそれを検出し、タイマー18に信号を送信し、タイマー18は、送風機15が所定の設定時間の間にオンにされるように設定され、([0033]、[0034])
閉鎖可能な容器2内の空気は、排出管16を通って換気システムに排出される、([0035])
猫用トイレ1。([0020])」
2 引用文献2
(1)引用文献2に記載された事項
令和8年1月26日付けの拒絶理由通知で引用文献2として引用された、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-24180号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 段落【0016】-【0019】
「【0016】
図1は、本発明の一実施例を示す脱臭機能付きペット用ボックスの外観斜視図、図2は、同脱臭機能付きペット用ボックス内部の砂落とし部斜視図、図3は、同脱臭機能付きペット用ボックスの脱臭機の内部構造図、図4は、同脱臭機能付きペット用ボックスの脱臭機の外観図、図5は、同脱臭機能付きペット用ボックスのドアの検知手段側面図、図6は、同脱臭機能付きペット用ボックスの制御回路のブロック図である。
【0017】
図1において、本体ボックス部4は、分解可能な上箱部1と下箱部2で構成されプラスチック成形品などにより制作されている。前面にはペットが出入りする出入り口があり、その出入口にはドア3が開閉自在に取り付けられていて、動物がドア3を押して出入りする際に開閉するもので、ドアの開放度が少なく臭いが外部に拡散しにくい構造となっている。
【0018】
ドア3には、図5に示すようなドア3の開又は閉の際動作するマイクロスイッチ15からなる検知手段が設置されている。
【0019】
また、図3に示すようなファンモータ5、フィルター6、脱臭要素7、制御回路8などから構成された脱臭機9が本体ボックス部4内部の臭気を脱臭して外部へ排出するように上箱部1の上部に脱着自在に設けられている。」
イ 段落【0025】
「【0025】
次に、動物の入退室検知動作について説明する。図5に示すように、ドア3が開閉するとき、ドア3がA方向又はB方向に動く度に、ドア開閉検知バネ22が駆動ピン23を押し下げてマイクロスイッチ15を動作させ、スイッチが閉じ検知信号を発生する。次にこの検知パルスによって、タイマー回路14がスタートし、時間のカウントが始まる。それと同時にタイマー回路14の出力信号がモータ駆動回路16に入り、モータ駆動回路16からファンモータ5に出力信号が出され、ファンモータ5が回転し、吸気部20から本体ボックス部4内部の悪臭を吸入する。タイマー回路14は一定時間後、停止信号を発生し、モータ駆動回路16を経由して信号が伝わり、ファンモータ5を自動的に停止させる。」
ウ 【図1】
「
[図:0001437795000011.jpg]
」
(2)引用文献2記載の技術事項
上記(1)から、引用文献2には次の事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。
「上箱体1と下箱体2で構成される本体ボックス部4と、(【0017】)
上箱体の前面にはペットが出入りする出入り口があり、その出入口にはドア3が開閉自在に取り付けられ、(【0017】)
ドア3には、ドア3の開又は閉の際に駆動するマイクロスイッチ15からなる検知手段が設置された脱臭機能付きペット用ボックスにおいて、(【0018】、【0016】)
ドア3が開閉するとき、ドア3がA方向又はB方向に動く度に、ドア開閉検知バネ22が駆動ピン23を押し下げでマイクロスイッチ15を動作させ、検知信号を発生し、ファンモータ5が回転し、吸気部から本体ボックス1内部の悪臭を吸入し、一定時間後、停止信号を発生し、ファンモータ5を自動停止させること。(【0025】)」
3 引用文献3
(1) 引用文献3に記載された事項
令和8年1月26日付けの拒絶理由通知で引用文献3として引用された、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-142600号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 段落【0016】
「【0016】図1に示すように、本実施形態の猫用のトイレ10は、上面が開放した浅い箱体形状の排泄物処理砂用の容器11と、容器11の上面を覆う着脱可能なドーム状のカバー12と、カバー12の天井部12bに形成された貫通孔12cに吸気口16aを挿入して取り付けられた電動式の排気ファン16と、排気ファン16の排気口16bに基端部17aが連結されるとともにその先端部17bが後述する家屋の窓18に設けられた外気連通口19に連結可能な伸縮性の排気チューブ17とを備えている。カバー12の正面側面部には、ほぼ四角形状の切欠部12aにヒンジ13を介して揺動可能に垂下した開閉扉14が設けられ、この開閉扉14の下部を逆U字状に切欠して猫の出入口15が形成されている。」
イ 段落【0020】
「【0020】また、図3に示すように、カバー12の天井部12b内部には、カバー12内に入ってきた猫を検知するセンサ24が配置され、センサ24から検知信号が送られると排気ファン16を一定時間だけ作動させる自動制御回路25が排気ファン16の一部に内蔵されている。
【0021】電源スイッチ21をON位置にセットすると、猫がカバー12に入ったことを検知して排気ファン16が一定時間作動するように設定され、C位置にセットすると排気ファン16は連続的に回転する。」
ウ 段落【0024】-【0025】
「【0024】また、電源スイッチ21をON位置にセットすると、出入口15からカバー12内へ猫が入ったことを検知して、排気ファン16が一定時間だけ作動するように設定され、猫が排泄した直後など悪臭が発生しやすい間だけ排気ファン16を自動的に作動させ、それ以外の間は排気ファン16を停止させておくことができるので、節電および騒音軽減に有効である。なお、電源スイッチ21をC位置にセットすると、排気ファンは16は作動し続けるので、排泄物27から発生する悪臭がひどい場合や、悪臭が常時発生する場合などにも臨機応変に対処することができる。
【0025】本実施形態では、センサ24が猫を検知すると同時に排気ファン16が作動開始するように設定されているが、この設定条件に限定するものではないので、自動制御回路25の設定条件を変更することにより、例えば、センサ24が猫を検知して排気ファン16が作動するまでに時間差を設け、排泄を終えた猫がカバー12から出て行った後に排気ファン16が作動するように設定をすることも可能である。したがって、猫が排気ファン16の回転音などに怯えてトイレ10の使用を嫌がるような場合にも対処することができる。」
エ 【図1】
「
[図:0001437795000012.jpg]
」
(2)引用文献3記載の技術事項
上記(1)から、引用文献3には以下の事項(以下、「引用文献3記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「上面が開放した浅い箱体形状の排泄物処理砂用の容器11と、容器11の上面を覆う着脱可能なドーム状のカバー10と、カバー10の天井部12bに形成された貫通孔12cに吸気口16aを挿入して取り付けられた電動式の排気ファン16と、(【0016】)
カバー12の正面側面部には、猫の出入口15が形成される猫用のトイレにおいて、(【0016】)
カバー12の天井部12b内部には、カバー12内に入ってきた猫を検知するセンサ24が配置され、センサ24から検知信号が送られると排気ファン16を一定時間だけ作動させ、(【0020】)
センサ24が猫を検知して排気ファン16が作動するまでに時間差を設け、排泄を終えた猫がカバー12から出て行った後に排気ファン16が作動するように設定可能であること。(【0025】)」
4 引用文献9
(1) 引用文献9に記載された事項
本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であり、周知技術を示すために当審において新たに引用する実用新案登録第2512499号公報(以下、「引用文献9」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、引用文献の参照番号について、審査及び審判の手続において異なる文献に同じ参照番号が付されることがないように、本審決において新たに引用した文献については、「引用文献9」等の表記とした。以下、同様である。
ア 段落【0001】
「【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は室内置きペット用トイレに関する。」
イ 段落【0010】
「【0010】
【作用】以下、本考案の作用(使用方法)を説明する。先ず、室内の所定の場所に設置したトイレボックスに設けた各引出口に砂充填式トイレ及び網付き砂受けを挿入し、当該トイレボックス内でいつでも用足しができる状態となっている。そこで、ペットが用便をもよおした場合は、トイレボックスの小さい出入口から入り、先ず、砂受けに設けた網の上を通過後、一段高くなっている砂充填式トイレに入って、用足しをする。この際、トイレボックスの屋根には明採りを兼ねる換気孔が設けられていることから、砂受け及び砂充填式トイレは十分な採光があり、しかも砂充填式トイレの悪臭及びペット自体の臭いを室内に排気できる。尚、ペット自体の臭いは、当該ペットに用足し場所を喚起させ、確実な場所での用足しを確保できる。
ウ 【図1】
「
[図:0001437795000013.jpg]
」
(2)引用文献9記載の技術事項
上記(1)から、引用文献9には以下の事項(以下、「引用文献9記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「室内置きペット用トイレにおいて、(【0001】)
トイレボックスの屋根には明採りを兼ねる換気孔が設けられ、砂充填式トイレの悪臭を室内に排気すること。(【0010】)」
5 引用文献10
(1)引用文献10に記載された事項
本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であり、周知技術を示すために当審において新たに引用する米国特許出願公開第2007/0125308号明細書(以下、「引用文献10」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、括弧書きは当審訳を示す。
ア 段落[0002]
「
[図:0001437795000014.jpg]
」
([0002]本明細書における開示事項は、概してペット用品業界に関するものである。本明細書で説明する発明は、通気孔付き猫用トイレおよびその付属品という一般分類に属する。)
イ 段落[0004]-[0007]
「
[図:0001437795000015.jpg]
」
([0004] 多くのペットオーナーは、ペットを家の中で飼うことで、ペットの快適さを確保したいと考えている。家庭で飼われるペットは常に一緒にいられるだけでなく、極端な気候にさらされたり、病原菌を媒介する昆虫や他の野生動物と接触したりする必要がないため、健康面でも優れている。猫などのペットは、家の中で排泄する必要がある場合が多い。そのため、室内飼いの猫にとって、猫用トイレは必需品である。
[0005] 残念ながら、従来の猫用トイレは、家の中に不快な臭いがこもらないように、常に注意を払い、掃除をする必要がある。たとえ常に注意を払っていても、特に換気の悪い場所では、猫用トイレはしばしば不快な臭いを発生させる。
[0006] これらの問題を軽減するために、通気孔付きの猫用トイレや猫用トイレ容器、自動洗浄機能付きの猫用トイレが開発された。しかし、通気孔付きの猫用トイレや容器は、屋外への換気ダクトを設置するための高額な設置費用がかかる場合が多く、複雑なフィルターシステムが必要となることもある。自動洗浄機能付きの猫用トイレも高価であり、猫用トイレから発生する臭いを完全に防ぐことはできない。
[0007] したがって、この分野では、使いやすく、安価で、耐久性があり、効果的な通気性のある猫用トイレまたは猫用トイレ容器が求められており、臭いを拡散させ、猫用トイレ周辺にマスキング効果のある心地よい香りを提供できる必要がある。)
ウ 段落[0017]-[0021]
「
[図:0001437795000016.jpg]
[図:0001437795000017.jpg]
[図:0001437795000018.jpg]
」
([0017] 猫用トイレ排気システムの好ましい実施形態は、少なくとも以下の要素の一部を備える。前面に開口部があり、その開口部の上部にスイング式のペットドアが取り付けられた容器、容器上部に設置された保護スクリーン付きの排気ファン、容器内部に設置された芳香剤缶ホルダー、および排気ファン用の電源。好ましい実施形態では、芳香剤缶ホルダーの背後の内壁に第2のファンと第2の電源も備えられる。
[0018] 図1に示す本発明の好ましい実施形態では、プラスチック製の長方形容器2に、ほぼ正方形の開口部1が切り込まれている。好ましい実施形態では、容器2の寸法は、奥行き25インチ、幅15インチ、高さ15インチであるが、様々なサイズが可能である。ほぼ正方形の開口部1の一辺の長さは約8インチである。正方形の開口部1の上部には、スイング式のペットドア7が取り付けられており、開口部1から臭いが漏れるのを防ぐため、通常は閉じた状態にしておくことができる。ペットドア7は、この好ましい実施形態では、開口部1のサイズに合わせて寸法が決められており、プラスチック製である。この好ましい実施形態では、ペットドア7はヒンジで取り付けられているが、様々な取り付け機構が当技術分野でよく知られており、ペットドア7を容器2上でスイングさせて開閉させることが可能である。
[0019] プラスチック製の取り外し可能な蓋3が容器2を覆う。取り外し可能な蓋3には、排気ファン5とペットや飼い主の怪我を防ぐための保護スクリーン6を備えた、プラスチック製の取り外し可能な上部4がある。この好ましい実施形態では、取り外し可能な上部4は、取り外し可能な蓋3の上方にピラミッド状に約5インチ突き出ているが、様々な形状や配置が可能である。この好ましい実施形態では、排気ファン5は、取り外し可能な上部4に内蔵されたバッテリーという電源に配線されている。
[0020] 排気ファン5を作動させる必要がない場合にバッテリーの過放電を防ぐため、取り外し可能な上部4には電源スイッチ(図示せず)が設けられている。この好ましい実施形態の排気ファン5は低騒音設計となっており、ペットを驚かせたり、容器2内部に設置された猫用トイレの使用を妨げたりすることを防ぐ。
[0021] 図2は、図1で説明した容器底部の好ましい実施形態を示す。容器2の底部には、通気性を高めるために容器2の底部を通して空気の流れを確保するためのメッシュスクリーン20が設けられている。メッシュスクリーン20は、一辺が約6インチの正方形である。容器21の底部には、ほぼ円形の香料缶ホルダー21が切り込まれており、芳香剤オイルの缶、またはその他の適切な香料ディスペンサーを収納できるように設計されている。)
エ 図1-2
「
[図:0001437795000019.jpg]
」
(2)看取事項
上記(1)イ-ウの「多くのペットオーナーは、ペットを家の中で飼うこと」、「猫などのペットは、家の中で排泄する必要がある場合が多い。そのため、室内飼いの猫にとって、猫用トイレは必需品である。」([0004])、との記載、「猫用トイレ排気システムの好ましい実施形態」として、「容器上部に設置された保護スクリーン付きの排気ファン」を有する([0017])との記載から、「猫用トイレ」は「家の中に設置され」、「容器上部」に「排気ファン」を有するものであることを踏まえると、上記(1)エの図1から、「排気ファン5から容器2内部の臭いが家の中に排気されること」が看取される(以下、「看取事項10-1」という。)。
(3)引用文献10記載の技術事項
上記(1)-(2)から、引用文献10には次の事項(以下、「引用文献10記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。
「家の中に設置する猫用トイレにおいて、([0004]-[0005])
容器2上部4に設置された保護スクリーン6付きの排気ファン5から構成される排気システムを備え、([0017])
排気ファン5から容器2内部の臭いが家の中に排気されること。(看取事項10-1 )」
6 周知技術について
(1)周知技術1について
上記2、3で示した、例えば、引用文献2記載の技術事項、及び引用文献3記載の技術事項のように、動物用トイレにおいて、以下の技術は、本願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。)であったと認められる。
<周知技術1>
「動物用トイレにおいて、トイレ本体を本体部と本体部を上方から覆うカバー部とから構成し、カバー部に動物が出入りするための出入口を配置すること。」
(2)周知技術2について
上記4、5で示した、例えば、引用文献9記載の技術事項、及び引用文献10記載の技術事項のように、動物用トイレにおいて、以下の技術は、本願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。)であったと認められる。
<周知技術2>
「動物用トイレにおいて、トイレ内部の空気を室内に排出すること」
第5 当審の判断
1 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「閉鎖可能な容器2」、及び「動物が」「入ることが可能な開口部」は、本願発明1の「本体部」、及び「動物の出入口」に相当し、引用発明の「容器2は底面、側壁9a、9b、9c」を有する「箱状」であることは、本願発明1の「本体部」が「底面部及び側面部を有する箱状」であることに一致する。
(2)引用発明の「送風機の形態の吸引装置」は、「閉鎖可能の容器内の空気」を排出するものであるから、本願発明1の「内部空間の空気を排出することにより、当該内部空間の換気をする換気装置」に相当する。
(3)引用発明の「猫用トイレ」は、本願発明1の「動物用トイレ」に相当する。
(4)上記(1)-(3)から、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
「動物用トイレであって、
底面部及び側面部を有する箱状の本体部と、
内部空間の空気を排出することにより、当該内部空間の換気をする換気装置と、を備え、
動物の出入り口を有する、
動物用トイレ。」
<相違点>
本願発明1は、「動物用トイレ」が「室内に設置される」ことを特定しているのに対し、引用発明の「猫用トイレ」はそのような特定がなされていない点(以下、「相違点1」という。)。
本願発明1は、「動物用トイレ」が「箱状の本体部」と「前記本体部を上方から覆うフード」を備え、当該「フード」に「動物の出入口」が設けられているのに対し、引用発明は「猫用トイレ」が「容器」と「蓋」を備え、「容器」に「開口部」が設けられている点(以下、「相違点2」という。)。
本願発明1は、「前記内部空間の前記空気が、脱臭処理を経ることなく、前記換気装置により前記室内に排出されて当該室内に拡散するように構成されている」のに対し、引用発明は、「閉鎖可能な容器内の空気は、排出管を通って換気システムに排出される」ように構成され、「室内に排出され、当該室内に拡散する」ものではない点(以下、「相違点3」という。)
2 判断
(1)相違点1について
引用文献1の段落[0003]には、「動物は、家の中やケージなどにいる場合、猫用トイレで排泄することが知られている。」と記載され、段落[0009]には、「利点の一つは、吸引装置が猫用トイレの不快で広範囲に及ぶ臭いを取り除くため、トイレの内外に不快な臭いが発生するのを防ぐことができる点である。」と記載されており、引用発明の「猫用トイレ」は、少なくとも「室内に設置される」ことも想定されていることが明らかである。そうすると、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
(2)相違点2について
上記第4の6(1)で周知技術1として認定したとおり、「動物用トイレにおいて、トイレ本体を本体部と本体部を上方から覆うカバー部とから構成し、カバー部に動物が出入りするための出入口を配置すること」は周知技術1であり、当該周知技術1における「本体部を上方から覆うカバー部」は、本願発明1の「本体部を上方から覆うフード」に相当するものである。
そして、引用発明と当該周知技術1は動物用トイレの技術分野に属する点で共通し、共に、内部空間を設ける形状のものであるから、引用発明に周知技術1を適用して、相違点2に係る本願発明1の構成を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。
(3)相違点3について
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の動物用トイレにおいては、本体部の上方がフードで覆われているため、粒状体が本体部の外にこぼれにくいという利点がある。しかしながら、その反面、フードの内部空間に排泄物の悪臭が籠りやすいという問題がある。内部空間に籠った悪臭は、動物に不快感を与え、動物が動物用トイレでの排泄を嫌がる要因となりかねない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フードの内部空間に悪臭が籠りにくい動物用トイレを提供することを目的とする。」、
「 【0007】
この動物用トイレにおいては、フードの内部空間の換気をする換気装置が設けられている。換気装置により、フードの内部空間を換気することが可能となる。このため、当該内部空間に排泄物の悪臭が籠りにくくすることができる。」、
「 【0025】
動物用トイレ1の効果を説明する。動物用トイレ1においては、フード20の内部空間20cの換気をする換気装置30が設けられている。換気装置30により、内部空間20cを換気することが可能となる。これにより、排泄物の悪臭を動物用トイレ1の外部(例えば動物用トイレ1が設置された室内)に拡散させることができる。このため、内部空間20cに排泄物の悪臭が籠りにくくすることができる。したがって、内部空間20cに悪臭が籠りにくい動物用トイレ1が実現されている。」
これらの記載によれば、本願発明1は、「内部空間に籠った悪臭は、動物に不快感を与え、動物が動物用トイレでの排泄を嫌がる要因となりかねない。」という課題に対し、「フード20の内部空間20cの換気をする換気装置30」を設け、「換気装置30により、内部空間20cを換気」し、「動物用トイレ1」の「フード20の内部空間20c」の空気を「動物用トイレ1の外部(例えば動物用トイレ1が設置された室内)」に拡散することにより課題を解決できるものである。また、「拡散させる」先を「室内」に設定することは、発明の詳細な説明においては、「例えば」と記載されているように一つの例示に過ぎず、そのように設定することによる効果については記載されていない。
そして、「動物用トイレにおいて、トイレ内部の空気を室内に排出すること」については、上記第4の6(2)で示したように周知の技術(周知技術2)である。また、例えば、引用文献10の段落[0006]には、「通気孔付きの猫用トイレや容器は、屋外への換気ダクトを設置するための高額な設置費用がかかる場合が多く」なることが記載され、[0007]には、「使いやすく、安価で、耐久性があり、効果的な通気性のある猫用トイレまたは猫用トイレ容器が求められ」ていることが記載されている。
そうしてみると、引用発明における「閉鎖可能な容器内の空気は、排出管を通って換気システムに排出される」構成に替えて、設置コストの面を考慮して周知技術2を採用し、相違点3に係る構成とすることは、当業者が適宜選択できる設計的事項程度のことである。
また、「トイレ内部の空気を室内に排出する」ことによる効果は、室内の悪臭を甘受することと引き換えに、より簡易な構成とすることによりコスト面で有利となる程度のことであり、当業者の予測の範囲内に過ぎず、格別な効果を奏するものとはいえない。
(4)総合判断
上記(1)-(3)において検討したとおり、引用発明において、相違点1-3に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術1-2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1-3を総合的に勘案しても、本願発明1が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
3 小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明及び周知技術1-2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
4 請求人の主張について
請求人は令和8年3月25日提出の意見書において、下記の主張をしている。
「(2)進歩性について
本願発明の動物用トイレは、フードの内部空間の空気が、脱臭処理を経ることなく、換気装置により室内に排出されて拡散するように構成されています。
これに対し、引用文献1に記載された発明(以下「主引用発明」といいます。)において容器2内の空気は、排出管を通して換気システムに排出されます(同文献の段落0035)。それゆえ、主引用発明は、容器2内の空気が(トイレ1が設置された)室内に排出されて拡散するように構成されたものではありません。したがって、本願発明は、主引用発明と異なります。
また、フードの内部空間の空気を脱臭処理を経ずに室内に排出して拡散させることは、他の引用文献にも記載されていませんし、ましてや周知技術でもありません。それゆえ、主引用発明に他の引用文献に記載された発明や周知技術をどのように組み合わせたとしても、本願発明に想到することはできません。
特に主引用発明は、排泄物の悪臭がトイレの外に漂うという欠点を解消することを目的としており、そのために容器内の空気を吸引して換気システムに排出する構成を採用しています(引用文献1の段落0005~0007)。にもかかわらず、主引用発明において容器内の空気を室内に排出して拡散させるようにした場合、当然ながら、悪臭がトイレの外に漂うことになってしまいます。それでは、主引用発明の目的に反します。したがって、主引用発明において容器内の空気を室内に排出して拡散させる構成を採用するには、阻害要因があります。
よって、本願発明は、主引用発明等に基づいて容易に発明をすることができたものではありません。」
しかしながら、「動物用トイレにおいて、トイレ内部の空気を室内に排出すること」は周知技術2であり、上記2(3)で相違点3について判断したとおり、引用発明において当該周知技術2を採用することは、当業者が適宜選択できる設計的事項程度のことである。また、「トイレ内部の空気を室内に排出する」ことによる効果は、室内の悪臭を甘受することと引き換えに、より簡易な構成とすることによりコスト面で有利となる程度のことであり、当業者の予測の範囲内に過ぎず、格別な効果を奏するものとはいえない。したがって、請求人の前記主張は上記の判断を左右するものではなく、採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012985