特許拒絶査定不服審判
2024-010759
静電容量検出装置
- 審判番号
- 2024-010759
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-557421
- 請求日
- 2024年06月28日
- 審決日
- 2026年06月24日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アルプスアルパイン株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 柳 重幸
- 審判官 谷垣 圭二
- 分類
- P18 .121-WZ (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-557421「静電容量検出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 4月21日国際公開、WO2022/080224〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)10月7日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和2年10月14日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年11月30日付け:拒絶理由通知書
令和6年 2月 5日 :意見書の提出
同年 3月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 4月 2日 :原査定の謄本の送達)
同年 6月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 9月30日付け:拒絶理由通知書
同年12月 4日 :意見書、手続補正書の提出
以下、令和2年10月14日を「優先日」という。
また、令和7年9月30日付けで当審において通知した拒絶理由通知を、以下「当審拒絶理由通知」といい、令和7年12月4日に請求人が提出した意見書を、以下「意見書」という。
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年12月4日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
対象物との間の静電容量を検出する静電容量検出装置であって、
前記対象物との間の静電容量を検出する検出電極と、
前記検出電極に近接して配置されたアクティブシールド電極と、
前記アクティブシールド電極に供給される交流電圧を出力する電圧出力回路と、
前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第1調整回路と、
前記検出電極の一端に接続される反転入力端子と、前記第1調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第1演算増幅器と、
前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第2調整回路と、
前記検出電極の他端に接続される反転入力端子と、前記第2調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第2演算増幅器と
を備え、
前記検出電極は、その一端と他端との間に5kΩ以上270kΩ以下の抵抗値を有し、
前記アクティブシールド電極は、前記検出電極との間の静電容量が前記第1演算増幅器もしくは前記第2演算増幅器の出力電圧値の動作範囲に基づいて決定される所定範囲内となるように構成される
ことを特徴とする静電容量検出装置。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Gまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】を元に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
X 対象物との間の静電容量を検出する静電容量検出装置であって、
A 前記対象物との間の静電容量を検出する検出電極と、
B 前記検出電極に近接して配置されたアクティブシールド電極と、
C 前記アクティブシールド電極に供給される交流電圧を出力する電圧出力回路と、
D 前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第1調整回路と、
E 前記検出電極の一端に接続される反転入力端子と、前記第1調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第1演算増幅器と、
F 前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第2調整回路と、
G 前記検出電極の他端に接続される反転入力端子と、前記第2調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第2演算増幅器と
を備え、
A1 前記検出電極は、その一端と他端との間に5kΩ以上270kΩ以下の抵抗値を有し、
B1 前記アクティブシールド電極は、前記検出電極との間の静電容量が前記第1演算増幅器もしくは前記第2演算増幅器の出力電圧値の動作範囲に基づいて決定される所定範囲内となるように構成される
ことを特徴とする
X 静電容量検出装置。」
<参考図>
【図1】
[図:0001438702000001.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「技術分野
[0001]
本発明は、静電容量検出装置に関する。
背景技術
[0002]
下記特許文献1には、絶縁基板の表面に配置された導電部における複数の電極部、複数の端子部、およびそれぞれを接続する端子配線部を有する配線基板において、端子配線部の線幅や抵抗値を条件付けすることで、ノイズ電流が制御回路に流れ込むのを阻止する技術が開示されている。
[0003]
また、下記特許文献2には、基材のそれぞれの面に互いに交差する方向に配向された第1センサー群と第2センサー群とを備え、第1センサー群と第2センサー群とによって長方形状のタッチセンサー有効領域が形成されたタッチセンサーパネルにおいて、センサー長の条件を決めることで、タッチセンサー有効領域の長尺化に伴うタッチ感度の低下を防止でき、且つタッチ検出に寄与しない領域の介在を回避できる技術が開示されている。
先行技術文献
特許文献
[0004]
特許文献1:国際公開第2015/005319号
特許文献2:国際公開第2019/064595号
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005]
しかしながら、従来の相互容量方式を利用した静電容量検出装置においては、検出電極の抵抗値が低いほど静電容量の検出値低下が少なくなるため、一般的に抵抗値を抑えた検出電極が好まれるものの、検出電極の抵抗値について明確な仕様が規定されてなく、都度シミュレーションを行って仕様を決定する必要があった。
[0006]
一方、絶対自己容量方式を利用した静電容量検出装置は、検出電極の抵抗値に応じて検出電極の静電容量が変化することを利用しているため、検出電極の抵抗値の範囲と、検出電極とアクティブシールド電極との間の静電容量とに制限が生じ、この範囲を外れた場合、検出性能が十分に発揮できないという問題があった。
…(中略)…
[0008]
一実施形態によれば、抵抗傾斜を有する検出電極における静電容量値の変化に基づいて、対象物の近接位置を検出することが可能な静電容量検出装置において、検出回路の動作範囲に応じて、静電容量値の良好な検出を行うことができる。
…(中略)…
[0011]
(静電容量検出装置100の構成の一例)
図1は、一実施形態に係る静電容量検出装置100の構成の一例を示す図である。図1に示す静電容量検出装置100は、例えば自己容量方式の静電容量検出を利用したタッチパネル等であり、対象物10との間の静電容量を検出する。すなわち、静電容量検出装置100は、自己容量方式の静電容量検出により、検出電極111に対する対象物10(例えば、操作者の指)の近接を検出することができる。
[0012]
図1に示すように、静電容量検出装置100は、静電容量検出部110、第1AFE(Analog Front End)ブロック120、第2AFEブロック130、第1電圧出力回路141、および第2電圧出力回路142を備える。
[0013]
静電容量検出部110は、検出電極111およびアクティブシールド電極112を有する。検出電極111は、導電性を有する素材が用いられて形成される、薄板状且つ帯状(長手形状)の部材である。検出電極111は、対象物10との間の静電容量を検出する。具体的には、検出電極111は、対象物10が近接することにより、対象物10との間の静電容量が変化する。本実施形態では、検出電極111は、抵抗性を有するITO(Indium Tin Oxide)により構成される。これにより、検出電極111は、その長手方向における一端とその他端との間に、抵抗傾斜を有するものとなっている。また、本実施形態では、検出電極111は、その一端と他端との間に、5kΩ以上270kΩ以下の抵抗値を有する。
[0014]
アクティブシールド電極112は、導電性を有する素材が用いられて形成される、薄板状且つ帯状の部材である。アクティブシールド電極112は、検出電極111に近接して配置されている。本実施例においては、アクティブシールド電極112は、検出電極111の裏側に重ねて設けられる。アクティブシールド電極112は、第1電圧出力回路141および第2電圧出力回路142から交流電圧が供給されることにより、検出電極111と同電位に駆動される。また、アクティブシールド電極112は、検出電極111との間の静電容量Crsが30pF以上130pF以下となるように配置されている。なお、図1において、第1電圧出力回路141と第2電圧出力回路142とは、別々の電圧出力回路であるかのように記載されているが、1つの電圧出力回路を第1電圧出力回路141と第2電圧出力回路142とに用いてもよい。
[0015]
第1AFEブロック120は、静電容量検出部110の一端に接続されている。第1AFEブロック120は、静電容量検出部110の一端側から、検出電極111と対象物10との間の静電容量を検出する。第1AFEブロック120は、ATT121および第1演算増幅器122を有する。ATT121は、「第1調整回路」の一例であり、第1電圧出力回路141により出力された交流電圧の振幅を調整する。言い換えれば、ATT121は、第1電圧出力回路141から出力されてアクティブシールド電極112の一端に供給される交流電圧の振幅を調整する。第1演算増幅器122は、検出電極111の一端に接続される反転入力端子(-)と、ATT121により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子(+)との電圧差を増幅して、出力信号AFEOUT1として、上位のコントローラ(図示省略)へ出力する。
[0016]
第2AFEブロック130は、静電容量検出部110の他端に接続されている。第2AFEブロック130は、静電容量検出部110の他端側から、検出電極111と対象物10との間の静電容量を検出する。第2AFEブロック130は、ATT131および第2演算増幅器132を有する。ATT131は、「第2調整回路」の一例であり、第2電圧出力回路142により出力された交流電圧の振幅を調整する。言い換えれば、ATT131は、第2電圧出力回路142から出力されてアクティブシールド電極112の他端に供給される交流電圧の振幅を調整する。なお、第1電圧出力回路141と第2電圧出力回路142とが同一(単一)の電圧出力回路により構成されている場合には、ATT131は、第1電圧出力回路141により出力された交流電圧の振幅を調整すると言える。第2演算増幅器132は、検出電極111の他端に接続される反転入力端子(-)と、ATT131により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子(+)との電圧差を増幅して、出力信号AFEOUT2として、上位のコントローラへ出力する。
…(中略)…
[0022]
(静電容量値の変化の一例)
図3は、一実施形態に係る第1AFEブロック120および第2AFEブロック130によって検出される静電容量値の変化の一例を示す図である。既に説明したとおり、検出電極111は、一端と他端との間で、抵抗傾斜を有する。」
「【図3】
[図:0001438702000002.jpg]
」
「[0023]
このため、検出電極111における対象物10の近接位置が、検出電極111の一端(図3に示すB)に近づくにつれて、検出電極111の一端と対象物10との間の抵抗値が徐々に小さくなり、すなわち、検出電極111の一端側に設けられた第1AFEブロック120によって検出される静電容量値(図3において実線で示されている)が徐々に大きくなる。
[0024]
反対に、検出電極111における対象物10の近接位置が、検出電極111の一端(図3に示すB)に近づくにつれて、検出電極111の他端(図3に示すA)と対象物10との間の抵抗値が徐々に大きくなり、すなわち、検出電極111の他端側に設けられた第2AFEブロック130によって検出される静電容量値(図3において点線で示されている)が徐々に小さくなる。
[0025]
したがって、上位のコントローラは、第1AFEブロック120によって検出される静電容量値と、第2AFEブロック130によって検出される静電容量値との比によって、検出電極111における対象物10の近接位置を特定することができる。
[0026]
(出力電圧値の変化の一例)
図4は、一実施形態に係る第1AFEブロック120および第2AFEブロック130による出力電圧値の変化の一例を示す図である。」
「【図4】
[図:0001438702000003.jpg]
」
「[0027]
本実施形態では、第1AFEブロック120および第2AFEブロック130に供給される電圧は、ホバー検出を行うことが可能な電圧の最小値である5Vである。図4に示す例では、第1AFEブロック120および第2AFEブロック130の出力電圧値の動作範囲として、0-4Vが使用されている。
[0028]
そのうち、検出電極111の浮遊容量に応じて発生するオフセット電圧の電圧範囲として、0-2Vが使用されている。また、対象物10の検出位置に応じて電圧値が直線的に変化する検出領域の電圧範囲として、2-4Vが使用されている。
[0029]
すなわち、一実施形態に係る第1AFEブロック120および第2AFEブロック130において、出力電圧値から、ホバー操作を含めた対象物10の位置検出を良好に行うためには、検出領域の電圧範囲として、2Vの電圧範囲が必要である。このためには、オフセット電圧の電圧範囲を、2V以下に抑える必要がある。
[0030]
(抵抗値Rpおよび静電容量Crsの好適な範囲)
図5は、一実施形態に係る静電容量検出部110(図2に示す積層構造を有する)における、オフセット電圧の電圧範囲が2V以下となる領域(抵抗値の範囲および静電容量値の範囲)の、シミュレーション結果を示す図である。」
「【図5】
[図:0001438702000004.jpg]
」
「[0031]
図5に示すグラフおいて、縦軸は、検出電極111の一端から他端までの抵抗値Rpを示す。また、図5に示すグラフおいて、横軸は、検出電極111とアクティブシールド電極112との間の静電容量Crsを示す。
[0032]
図5に示すシミュレーション結果によれば、一実施形態に係る第1AFEブロック120および第2AFEブロック130は、検出電極111の一端から他端までの抵抗値Rpを、5kΩ以上270kΩ以下とし、検出電極111とアクティブシールド電極112との間の静電容量Crsを、30pF以上130pF以下とすることにより、オフセット電圧の電圧範囲を2V以下とすることができる。これにより、一実施形態に係る静電容量検出装置100は、第1AFEブロック120および第2AFEブロック130の出力電圧値から、ホバー操作を含めた対象物10の位置検出を、良好に行うことができる。
[0033]
実際の製品においては、抵抗値Rpおよび静電容量Crsは、検出電極111のサイズ、検出電極111とアクティブシールド電極112とのギャップ等が調整されることにより、上記した好適な範囲となるように調整される。
[0034]
ここで、抵抗値Rpおよび静電容量Crsが、上記した好適な範囲外である場合について説明する。
[0035]
例えば、抵抗値Rpが5kΩ未満の場合、オフセット電圧が2Vに収まらなくなり、センサーの検出範囲が縮小する虞がある。また、抵抗値Rpが5kΩ未満の場合、対象物10の近接位置の変化による静電容量値の変化が小さすぎて、静電容量値から対象物10の近接位置を高精度に検出できなくなる虞がある。
[0036]
また、抵抗値Rpが、抵抗値270kΩ以上の場合、オフセット電圧が2Vに収まらなくなり、センサーの検出範囲が縮小する虞がある。また、抵抗値Rpが、抵抗値270kΩ以上の場合、抵抗値が高すぎて、静電容量の変化が直線的ではなくなり、静電容量値から対象物10の近接位置を高精度に検出できなくなる虞がある。また、抵抗値Rpが、抵抗値270kΩ以上の場合、検出電極111のインピーダンスが高いためSN比が劣化する虞がある。
[0037]
また、静電容量Crsが30pF未満の場合、オフセット電圧が2Vに収まらなくなり、センサーの検出範囲が縮小する虞がある。この範囲を拡大するためには、IC内部のアクティブシールド電極112のレベルシフトコンデンサの値を大きくしなければならず、IC設計上の制約になる虞がある。
[0038]
また、静電容量Crsが静電容量130pF以上の場合、オフセット電圧が2Vに収まらなくなり、センサーの検出範囲が縮小する虞がある。この場合、IC内部の調整コンデンサの値は小さくなる方向でIC設計上の制約とはならないが、静電容量による位相遅れによってオフセットが取り切れなくなる虞がある。この場合、位相調整回路を追加すれば改善できるが、回路規模が増加する虞がある。」
3 当審拒絶理由通知における拒絶の理由の概要
当審拒絶理由通知における拒絶の理由のうち、本願の補正前の請求項1に係る発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
2.国際公開第2018/116706号
4.国際公開第2019/064858号(主たる引用文献)
4 引用文献4の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献4に記載された事項
当審拒絶理由通知における拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である国際公開第2019/064858号(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
ア 段落[0011]~[0028]、[図1]~[図8]
「[0011]
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態における操作入力装置について説明する。本実施の形態における操作入力装置は、自動車等のドアに取り付けられているドアハンドルに内蔵されているものであり、操作情報を入力する機能を有している。
[0012]
具体的には、本実施の形態における操作入力装置は、図1に示すように、自動車等のドア10に取り付けられているドアハンドル100である。このドアハンドル100の内部には、図2に示されるように、静電容量を検出するためのセンサ110が内蔵されている。このセンサ110は略長方形の形状の抵抗体であり、センサ110の長手方向の長さはLであり、長手方向における一方の端部110aと他方の端部110bとの間の抵抗は、5kΩ以上300kΩが好ましい。尚、本実施の形態においては、センサ110の面方向に平行な長手方向をX方向とし、センサ110の面に垂直な方向、即ち、センサ110の長手方向に垂直な方向をY方向として記載する場合がある。」
「[図1]
[図:0001438702000005.jpg]
[図2]
[図:0001438702000006.jpg]
」
「[0013]
本実施の形態においては、図3に示すように、センサ110の一方の端部110aには、第1の電流計121を介し第1の交流電源131が接続されている。即ち、センサ110の一方の端部110aと第1の交流電源131との間には、第1の電流計121が接続されている。また、センサ110の他方の端部110bには、第2の電流計122を介し第2の交流電源132が接続されている。即ち、センサ110の他方の端部110bと第2の交流電源132との間には、第2の電流計122が接続されている。また、第1の電流計121及び第2の電流計122には、制御部150に接続されている。尚、第1の交流電源131及び第2の交流電源132は、電源部と記載する場合があり、第1の電流計121及び第2の電流計122は、移動電荷量を測定するものであるため、第1の電荷量測定部及び第2の電荷量測定部と記載する場合がある。」
「[図3]
[図:0001438702000007.jpg]
」
「[0014]
本実施の形態におけるドアハンドル100では、第1の交流電源131によりセンサ110の一方の端部110aに交流電圧が供給されており、センサ110の一方の端部110aに供給される交流電流の電流量は、第1の電流計121により測定することができる。また、第2の交流電源132によりセンサ110の他方の端部110bに交流電圧が供給されており、センサ110の他方の端部110bに供給される交流電流の電流量は、第2の電流計122により測定することができる。
[0015]
本実施の形態においては、第1の交流電源131及び第2の交流電源132は、同じ周波数であって、同じ位相で、同じ電圧の振幅の交流電圧を出力している。また、第1の交流電源131と第2の交流電源は単一電源として共用する事もできる。従って、図4Aに示すように、ドアハンドル100の近傍に何も存在していない状態においては、ドアハンドル100に内蔵されているセンサ110の一方の端部110a及び他方の端部110bには電流は殆ど流れない。このため、第1の電流計121及び第2の電流計122においては電流は検出されない。」
「[図4A]
[図:0001438702000008.jpg]
」
「[0016]
これに対し、図4Bに示すように、ドアハンドル100の近傍に指200が近づいた場合には、指200は導電性を有しているため、指200とセンサ110との間に静電容量が形成され、第1の交流電源131及び第2の交流電源132よりセンサ110に電流が流れる。この際、指200に最も近いセンサ110の部分110cと一方の端部110aとの間が抵抗となり、指200に最も近いセンサ110の部分と他方の端部110bとの間が抵抗となる。」
「[図4B]
[図:0001438702000009.jpg]
」
「[0017]
このため、第1の交流電源131から供給される交流電流は、センサ110の一方の端部110aを通り、指200に最も近いセンサ110の部分110cに向かう。従って、第1の交流電源131から供給される交流電流は、センサ110の一方の端部110aと、指200に最も近いセンサ110の部分110cとの間に形成される抵抗を通る。また、第2の交流電源132から供給される交流電流は、センサ110の他方の端部110bを通り、指200に最も近いセンサ110の部分110cに向かう。従って、第2の交流電源132から供給される交流電流は、センサ110の他方の端部110bと、指200に最も近いセンサ110の部分110cとの間に形成される抵抗を通る。よって、図4Bに示されるように、センサ110に指200を近づけた場合には、センサ110の一方の端部110aには、第1の交流電源131より交流電流Iaが流れ、センサ110の他方の端部110bには、第2の交流電源132より交流電流Ibが流れる。尚、本実施の形態における操作入力装置は、指200により操作されるものであるため、指200を操作体と記載する場合がある。
[0018]
従って、図5Aに示すように、センサ110と指200との距離Yが短い場合、センサ110と指200との間に形成される静電容量の値は大きいため、流れる交流電流Ia及び交流電流Ibの値は大きく、交流電流の和Is(=Ia+Ib)の値も大きくなる。図5Bは、交流電流Ia、交流電流Ib、及び、交流電流の和Is(=Ia+Ib)の値の様子を示す図である。また、図6Aに示すように、センサ110と指200との距離Yが長い場合、センサ110と指200との間に形成される静電容量の値は小さいため、流れる交流電流Ia及び交流電流Ibの値は小さく、交流電流の和Is(=Ia+Ib)の値も小さくなる。図6Bは、交流電流Ia、交流電流Ib、及び、交流電流の和Is(=Ia+Ib)の値の様子を示す図である。」
「[図5A]
[図:0001438702000010.jpg]
」
「[図5B]
[図:0001438702000011.jpg]
」
「[図6A]
[図:0001438702000012.jpg]
」
「[図6B]
[図:0001438702000013.jpg]
」
「[0019]
このように交流電流の和Is(=Ia+Ib)の値と、センサ110と指200との間の距離Yとの間には相関関係があり、センサ110と指200との間の距離Yが長いと交流電流の和Isは小さく、距離Yが短いと交流電流の和Isは大きくなる。具体的には、交流電流の和Isは、距離Yの累乗に反比例の関係にあることが、経験上知見として得られており、センサ110と指200との間の距離Yと交流電流の和Isとは、図7に示されるような関係にある。これを数式により表すと、数1に示される式となる。A、Bは定数である。
[0020]
[数1]
[図:0001438702000014.jpg]
」
「[図7]
[図:0001438702000015.jpg]
」
「[0021]
以上のように、第1の電流計121により測定される交流電流Iaと、第2の電流計122により測定される交流電流Ibとの和Isの値より、センサ110と指200との距離Yを算出することができる。
[0022]
(操作入力装置による指の位置の検出方法)
次に、本実施の形態における操作入力装置による指の位置の検出方法について図8に基づき説明する。尚、制御部150等には、数1に示す式、または、図7に示されるように、センサ110と指200との間の距離Yと交流電流の和Isとの相関関係に関する情報が予め記憶されているものとする。また、下記の制御は、制御部150において行われるものとする。」
「[図8]
[図:0001438702000016.jpg]
」
「[0023]
最初に、ステップ102(S102)において、交流電流Ia、Ibを測定する。具体的には、第1の電流計121により交流電流Iaを測定し、第2の電流計122により交流電流Ibを測定する。
[0024]
次に、ステップ104(S104)において、交流電流Iaと交流電流Ibより交流電流の和Is(=Ia+Ib)を算出する。
[0025]
次に、ステップ106(S106)において、交流電流の和Isより、センサ110から指200までの距離Yを算出する。
[0026]
以上により、本実施の形態における操作入力装置により指の位置、即ち、本実施の形態における操作入力装置におけるセンサ110から指200までの距離Yを算出することができる。
[0027]
本実施の形態においては、センサ110の面積が大きく、指200とセンサ110との間の静電容量は大きくなるため、高い精度で、指の位置を検出することができる。
[0028]
また、本実施の形態における操作入力装置は、簡単な構造であり、センサ110から指200が離れても操作情報入力することが可能である。従って、指200の操作範囲があまり限定されることはなく、様々な操作情報を入力することができる。」
イ 段落[0029]~[0032]、[図9]~[図11]
「[0029]
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、指等のX方向及びY方向の位置を検出することにより、指等によるジェスチャー検出を行うものである。
[0030]
図4Bに示されるように、センサ110に対する指200の位置により、指200に最も近いセンサ110の部分110cとセンサ110の一方の端部110aとの間における抵抗の抵抗値、及び、指200に最も近いセンサ110の部分110cとセンサ110の他方の端部110bとの間における抵抗の抵抗値が変化する。具体的には、指200に最も近いセンサ110の部分110cとセンサ110の一方の端部110aとの距離が短いと抵抗値は低く、指200に最も近いセンサ110の部分110cとセンサ110の一方の端部110aとの距離が長いと抵抗値は高くなる。同様に、指200に最も近いセンサ110の部分110cとセンサ110の他方の端部110bとの距離が短いと抵抗値は低く、指200に最も近いセンサ110の部分110cとセンサ110の他方の端部110bとの距離が長いと抵抗値は高くなる。
[0031]
抵抗に同じ電圧を印加した場合、抵抗値の低い抵抗には、抵抗値の高い抵抗より電流が多く流れる。従って、センサ110に近づいている指200の位置が、センサ110の他方の端部110bよりも一方の端部110aに近い場合には、交流電流Iaは交流電流Ibよりも多く流れる。また、センサ110の一方の端部110aよりも他方の端部110bに近い場合には、交流電流Ibは交流電流Iaよりも多く流れる。
[0032]
具体的には、図9Aに示されるように、センサ110の一方の端部110aの近傍に指200が存在している場合には、図9Bに示されるように、交流電流Iaは交流電流Ibよりも多く流れる。また、図10Aに示されるように、センサ110の一方の端部110aと他方の端部110bとの中間の近傍に指200が存在している場合には、図10Bに示されるように、交流電流Iaと交流電流Ibとは略同じとなる。また、図11Aに示されるように、センサ110の他方の端部110bの近傍に指200が存在している場合には、図11Bに示されるように、交流電流Iaよりも、交流電流Ibは多く流れる。従って、交流電流Iaと交流電流Ibとの比率に基づき、センサ110の一方の端部110aから指200までのX方向における距離Xを算出することができる。」
「[図9A]
[図:0001438702000017.jpg]
[図9B]
[図:0001438702000018.jpg]
[図10A]
[図:0001438702000019.jpg]
[図10B]
[図:0001438702000020.jpg]
[図11A]
[図:0001438702000021.jpg]
[図11B]
[図:0001438702000022.jpg]
」
ウ 段落[0053]~[0056]、[図17]
「[0053]
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、図17に示されるようにセンサ110の裏側に集積回路160が設置されており、センサ110と集積回路160との間には、シールド電極170が設けられている構造のものである。センサ110とシールド電極170との間には絶縁層171が形成されており、集積回路160は絶縁体により形成された基板172の一方の面172aに設置されており、シールド電極170は基板172の他方の面172bに形成されている。集積回路160には、制御部150等の他、センサ110における検出に用いられる電子回路が設けられている。」
「[図17]
[図:0001438702000023.jpg]
」
「[0054]
本実施の形態においては、シールド電極170には、第1の交流電源131及び第2の交流電源132より供給される交流と同じ位相であって、同じ電圧の振幅の交流が供給されている。これによりセンサ110の裏面側からのノイズの影響を抑制することができるとともに、ダイナミックレンジを増やすことができるため、センサ110における感度を向上させることができる。
[0055]
尚、上記以外の内容については、第1または第2の実施の形態と同様である。
[0056]
実施の形態においては、基板のほぼ端部となるセンサの端部に交流電源を接続した場合について説明したが、センサの途中に接続されてもよい。その場合には、その接続部分が、上記において説明した実施の形態におけるセンサの端部に相当する。」
(2) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献4の記載事項を総合すると、引用文献4には、実施例([図3])に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「略長方形の形状の抵抗体であり、静電容量を検出するためのセンサ110が内蔵されている操作入力装置であって、([0012])
操作入力装置は、自動車等のドアに取り付けられているドアハンドルに内蔵されているものであり、([0011])
センサ110の長手方向における一方の端部110aと他方の端部110bとの間の抵抗は、5kΩ以上300kΩが好ましく、([0012])
センサ110の一方の端部110aには、第1の電流計121を介し第1の交流電源131が接続され、他方の端部110bには、第2の電流計122を介し第2の交流電源132が接続され、([0013])
ドアハンドル100では、第1の交流電源131によりセンサ110の一方の端部110aに交流電圧が供給されており、センサ110の一方の端部110aに供給される交流電流の電流量は、第1の電流計121により測定することができ、また、第2の交流電源132によりセンサ110の他方の端部110bに交流電圧が供給されており、センサ110の他方の端部110bに供給される交流電流の電流量は、第2の電流計122により測定することができるものであり、([0014])
ドアハンドル100の近傍に指200が近づいた場合には、指200は導電性を有しているため、指200とセンサ110との間に静電容量が形成され、第1の交流電源131及び第2の交流電源132よりセンサ110に電流が流れ、([0016])
センサ110に指200を近づけた場合には、センサ110の一方の端部110aには、第1の交流電源131より交流電流Iaが流れ、他方の端部110bには、第2の交流電源132より交流電流Ibが流れ、([0017])
第1の電流計121により測定される交流電流Iaと、第2の電流計122により測定される交流電流Ibとの和Isの値より、センサ110と指200との距離Yを算出する、([0021])
操作入力装置。」
5 引用文献2の記載事項及び引用文献2技術事項の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由通知における拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である国際公開第2018/116706号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。
ア 段落[0002]、[0003]
「[0002]
指などの対象物の近接を静電容量に基づいて検出するタッチセンサやタッチパッドなどの入力装置が知られている。入力装置に用いられる静電容量の検出方式には、一般に、相互容量式と自己容量式がある。相互容量式では、交差して配置された2つの電極間の静電容量が検出され、自己容量式では、グランドに対する検出電極の静電容量が検出される。
[0003]
自己容量式は、相互容量式に比べて静電容量の検出感度が高いという利点を有する。しかしながら、グランドと検出電極の間に容量の大きな寄生キャパシタが存在すると、検出結果の信号に寄生キャパシタの成分が大きな割合を占めるようになり、検出対象の容量成分のダイナミックレンジが小さくなるため、検出感度が低下する。また、寄生キャパシタの容量変動がノイズとなり、静電容量の検出精度が低下する。」
イ 段落[0009]
「[0009]
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、寄生キャパシタの影響による検出感度や検出精度の低下を抑制できる静電容量検出装置と、これを備えた入力装置を提供することにある。」
ウ 段落[0043]~[0068]、[図1]~[図3]
「[0043]
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る入力装置の構成の一例を示す図である。図1に示す入力装置は、センサ部1と、静電容量検出装置2と、処理部3と、記憶部4と、インターフェース部5を有する。」
「[図1]
[図:0001438702000024.jpg]
」
「[0044]
本実施形態に係る入力装置は、指やペンなどの対象物6がセンサ部1に近接した場合に、センサ部1に設けられた電極と対象物との間の静電容量を検出し、この検出結果に基づいて、対象物6の近接に応じた情報を入力する。例えば入力装置は、センサ部1に対する対象物6の近接の有無や、センサ部1と対象物6との距離などの情報を、静電容量の検出結果に基づいて取得する。入力装置は、例えばタッチセンサやタッチパッドなどのユーザーインターフェース装置に適用される。なお、本明細書における「近接」とは、近くにあることを意味しており、近接する物同士の接触の有無を限定しない。
[0045]
センサ部1は、指やペンなどの対象物6の近接を検出するための検出電極Esと、検出電極Esに近接して配置されたシールド電極Eaを有する。検出電極Esは、センサ部1において対象物が近接する領域に配置される。例えば、対象物6の検出領域の表面が絶縁性のカバー層で覆われており、カバー層より下層側に検出電極Esが配置される。シールド電極Eaは、対象物6以外の導体と検出電極Esとの静電結合を防止するための静電シールドであり、対象物6の検出領域において検出電極Esよりも下層側に配置される。
[0046]
図1に示すように、検出電極Esと対象物6との間には、静電容量の検出対象であるキャパシタCrgが形成される。シールド電極Eaと検出電極Esとの間には、キャパシタCrs(シールド電極側キャパシタ)が形成される。また、検出電極Esとグランドとの間には、寄生キャパシタCrglが形成される。
[0047]
静電容量検出装置2は、対象物6と検出電極Esとの間に形成されるキャパシタCrgの静電容量を検出し、その検出結果を示す信号Dsを出力する。
[0048]
処理部3は、入力装置の全体的な動作を制御する回路であり、例えば、記憶部4に格納されるプログラムの命令コードに従って処理を実行するコンピュータや、特定の機能を実現するロジック回路を含む。処理部3の処理は、コンピュータにおいてプログラムに基づいて実現してもよいし、少なくとも一部を専用のロジック回路で実現してもよい。
[0049]
処理部3は、静電容量検出装置2にから出力される検出結果の信号Dsに基づいて、対象物6がセンサ部1に近接しているか否かの判定や、対象物6とセンサ部1との距離の算出を行う。なお、後述する図9等の実施形態のように、センサ部1は複数の検出電極Esを含んでいてもよく、静電容量検出装置2は複数の検出電極Esの各々についてキャパシタCrgの静電容量の検出を行ってもよい。この場合、処理部3は、各検出電極Esについて得られた検出結果の信号Dsに基づいて、センサ部1における対象物6の近接位置や、対象物6の大きさなどを算出してもよい。
[0050]
また、処理部3は、外来ノイズの影響による静電容量検出装置2の検出感度の低下を回避するため、後述する静電容量検出装置2の第1交流電圧V1の周波数を変更する処理も行う。
[0051]
記憶部4は、処理部3を構成するコンピュータのプログラムや、処理部3において処理に使用されるデータ、処理の過程で一時的に保持されるデータなどを記憶する。記憶部4は、例えばDRAMやSRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクなど、任意の記憶デバイスを用いて構成される。
[0052]
インターフェース部5は、入力装置と他の装置(例えば入力装置を搭載する電子機器のホストコントローラなど)との間でデータをやり取りするための回路である。処理部3は、静電容量検出装置2の検出結果に基づいて得られた情報(対象物6の有無、対象物6の近接位置、対象物6との距離、対象物6の大きさなど)を、インターフェース部5によって図示しない上位装置に出力する。上位装置では、これらの情報を用いて、例えばポインティング操作やジェスチャ操作などを認識するユーザーインターフェースが構築される。
[0053]
次に、静電容量検出装置2の構成について説明する。図2は、第1の実施形態に係る静電容量検出装置2の構成の一例を示す図である。図2に示す静電容量検出装置2は、第1交流電圧V1を出力する第1電圧出力回路21と、第2交流電圧V2を出力する第2電圧出力回路22と、駆動電流Isを出力する電流出力回路23と、減算回路24と、A/D変換器25と、信号処理部26を有する。」
「[図2]
[図:0001438702000025.jpg]
」
「[0054]
第1電圧出力回路21は、シールド電極Eaに供給される第1交流電圧V1を出力する。例えば第1電圧出力回路21は、一定の振幅及び周波数を持つ正弦波の第1交流電圧V1を発生する。
[0055]
また、第1電圧出力回路21は、処理部3の制御に従って第1交流電圧V1の周波数を変更することが可能である。外来ノイズの周波数と第1交流電圧V1の周波数とが近いことによる検出感度の低下を回避するため、処理部3は第1交流電圧V1の周波数を変更する制御を行う。
[0056]
第2電圧出力回路22は、周波数と位相が第1交流電圧V1に等しく、かつ、振幅が第1交流電圧V1より小さい第2交流電圧V2を出力する。第2交流電圧V2の振幅は、キャパシタCrs(シールド電極側キャパシタ)に流れる電流I2と寄生キャパシタCrglに流れる電流I3とが相殺されるように調整される。すなわち、第2電圧出力回路22は、検出電極Esに近接する対象物6が存在しない状態(キャパシタCrgの静電容量がゼロの状態)における電流出力回路23の駆動電流Isがゼロになるように振幅が調整された第2交流電圧V2を出力する。
[0057]
第2電圧出力回路22は、例えば減衰器であり、第1交流電圧V1を減衰させた電圧を第2交流電圧V2として出力する。図2の例において、第2電圧出力回路22は、第1キャパシタCa及び第2キャパシタCbの直列回路を含む。第1電圧出力回路21は、この直列回路の両端に第1交流電圧V1を印加する。第1交流電圧V1が第1キャパシタCa及び第2キャパシタCbにより分圧されることで、第2キャパシタCbに第2交流電圧V2が生じる。第1キャパシタCaの一方の端子が第1電圧出力回路21の出力に接続され、第1キャパシタCaの他方の端子が第2キャパシタCbの一方の端子に接続され、第2キャパシタCbの他方の端子がグランドに接続される。
[0058]
第1キャパシタCa及び第2キャパシタCbの静電容量比は、キャパシタCrs(シールド電極側キャパシタ)に流れる電流I2と寄生キャパシタCrglに流れる電流I3とが相殺されるように調整される。すなわち、第1キャパシタCa及び第2キャパシタCbの静電容量比は、検出電極Esに近接する対象物6が存在しない状態における駆動電流Isがゼロになるように調整された値を持つ。後述する式(12)において示すように、第2キャパシタCbと第1キャパシタCaとの静電容量比が、寄生キャパシタCrglとキャパシタCrsとの静電容量比に一致した場合、キャパシタCrsに流れる電流I2と寄生キャパシタCrglに流れる電流I3とが相殺される。
[0059]
図2の例において、第1キャパシタCaの静電容量値は一定であり、第2キャパシタCbの静電容量値が調整される。すなわち、第2キャパシタCbは、検出電極Esに近接する対象物6が存在しない状態における駆動電流Isがゼロになるように調整された静電容量値を持つ。第2キャパシタCbは、可変容量のディスクリート部品でもよいし、IC内部の半導体チップ等に形成される部品でもよい。後者の場合、例えば第2キャパシタCbは、並列に接続された複数のキャパシタにより構成されており、レーザートリミング等で並列接続されるキャパシタの数を選択することにより静電容量値が調整される。
[0060]
電流出力回路23は、検出電極Esの電圧と第2交流電圧V2との電圧差が小さくなるように検出電極Esへ駆動電流Isを出力するとともに、駆動電流Isに応じた検出信号Voを出力する。
[0061]
図2の例において、電流出力回路23は、演算増幅器OP1と帰還キャパシタCagと帰還抵抗Ragを含む。演算増幅器OP1は、検出電極Esに接続される反転入力端子と第2交流電圧V2が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅し、この増幅結果を検出信号Voとして出力する。帰還キャパシタCagは、演算増幅器OP1の検出信号Voの出力端子と反転入力端子との間の経路に設けられる。帰還抵抗Ragは、帰還キャパシタCagと並列に接続される。
[0062]
図2の例において、帰還キャパシタCagの静電容量値及び帰還抵抗Ragの抵抗値はそれぞれ調整可能である。これらの素子の値を調整することにより、第1交流電圧V1及び第2交流電圧V2と検出信号Voとの位相差や、キャパシタCrgの静電容量値に対する検出信号Voの振幅のゲインが調整される。帰還キャパシタCag及び帰還抵抗Ragは、例えば素子値の調整が可能なディスクリート部品でもよいし、レーザートリミング等によって素子値の調整が可能なIC内部の部品でもよい。
[0063]
減算回路24は、検出電極Esに近接する対象物6が存在しない状態において演算増幅器OP1から検出信号Voとして出力される交流電圧に相当する基準交流電圧を、検出信号Voから減算する。この減算により、キャパシタCrgの静電容量に概ね比例した振幅を持つ交流電圧が得られる。減算回路24は、例えば全作動増幅器を含んでおり、検出信号Voから基準交流電圧を減算した結果を差動信号Vmとして出力する。
[0064]
図3は、減算回路24の構成の一例を示す図である。図3の例において、減算回路24は、全差動増幅器241と、抵抗R1~R7と、キャパシタC1~C3を有する。キャパシタC1は、全差動増幅器241の反転入力端子と非反転出力端子との間に接続される。キャパシタC2は、全差動増幅器241の非反転入力端子と反転出力端子との間に接続される。全差動増幅器241の反転入力端子には、直列に接続された抵抗R3及び抵抗R4を介して検出信号Voが入力される。抵抗R3の一端に検出信号Voが入力され、抵抗R4の一端に全差動増幅器241の反転入力端子が接続される。抵抗R3及び抵抗R4の接続中点は、抵抗R1を介して全差動増幅器241の非反転出力端子に接続される。全差動増幅器241の非反転入力端子には、直列に接続された抵抗R5及び抵抗R6を介して第2交流電圧V2が入力される。抵抗R5の一端に第2交流電圧V2が入力され、抵抗R6の一端に全差動増幅器241の非反転入力端子が接続される。抵抗R5及び抵抗R6の接続中点は、抵抗R2を介して全差動増幅器241の反転出力端子に接続される。キャパシタC3は、抵抗R3及び抵抗R4の接続中点と抵抗R5及び抵抗R6の接続中点との間に接続される。また、抵抗R5及び抵抗R6の接続中点には、抵抗R7を介して直流のバイアス電圧Vr1が入力される。」
「[図3]
[図:0001438702000026.jpg]
」
「[0065]
図3に示す減算回路24では、2つの入力(検出信号Vo,第2交流電圧V2)に対するゲインが異なっており、抵抗R7が接続された経路に入力される第2交流電圧V2のゲインが検出信号Voに比べて小さい。すなわち、減算回路24は、第2交流電圧V2に比べて減衰した交流電圧(基準交流電圧)と検出信号Voとの差を増幅し、その増幅結果を差動信号Vmとして出力する。また、減算回路24はローパスフィルタを構成しており、対象物6からキャパシタCrgを通じて入力される高周波成分を除去する。このローパスフィルタ機能により、後述するA/D変換器25における折り返し雑音が低減する。
[0066]
図2に戻る。
[0067]
A/D変換器25は、減算回路24から出力されるアナログの差動信号Vmをデジタルの信号Dmに変換する。A/D変換器25には、例えば差動入力方式のΔΣ型A/D変換器などを用いることができる。
[0068]
信号処理部26は、A/D変換器25から出力される信号Dmから、第1交流電圧V1と同じ周波数を持つ交流成分の振幅に比例した信号Dsを抽出する。信号処理部26は、例えば図2に示すように、第1交流電圧V1と同じ周波数を持つ信号Dxを信号Dmに乗算する乗算器261と、乗算器261の乗算結果から交流成分を除去するローパスフィルタ263とを有する。ローパスフィルタ263から出力される信号Dmは、キャパシタCrgの静電容量に概ね比例した値を持つ。」
エ 段落[0114]
「[0114]
図10A~図10Fは、外乱に対する妨害耐性のシミュレーション結果を示す図である。図10A~図10Fの各グラフにおいて、縦軸はSN比を示し、横軸は温度を示す。このSN比は、キャパシタCrgを介して検出電極にノイズを与えた場合における検出信号Voと、このノイズをゼロにした場合における検出信号Voとの比である。図10A~図10Cのシミュレーションでは、キャパシタCrsの静電容量が130pFであり、図10D~図10Fのシミュレーションでは、キャパシタCrsの静電容量が40pFである。また、図10A及び図10Dのシミュレーションでは、ノイズの周波数が駆動周波数の2倍であり、図10B及び図10Eのシミュレーションでは、ノイズの周波数が駆動周波数の3倍であり、図10C及び図10Fのシミュレーションでは、ノイズの周波数が駆動周波数の5倍である。これらのシミュレーションから、スイッチ回路(SW1、SW2)を構成するスイッチを帰還ループ内(演算増幅器OP1の出力端子と反転入力端子の間の経路)に設けることにより、これらのスイッチを帰還ループ外(入力ノードNiと検出電極Esiの間の経路)に設ける場合に比べて、常温(20℃)でのSN比が5dB程度向上することが分かる。」
(2) 引用文献2技術事項の認定
前記(1)で摘記した記載から、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献2技術事項」という。)。
<引用文献2技術事項>
「指やペンなどの対象物6の近接を検出するための検出電極Esと、検出電極Esの下層側に近接して配置されたシールド電極Eaを有し、([0045])
シールド電極Eaに供給される第1交流電圧V1を出力する第1電圧出力回路21と、([0054])
周波数と位相が第1交流電圧V1に等しく、検出電極Esに近接する対象物6が存在しない状態における電流出力回路23の駆動電流Isがゼロになるように、第1交流電圧V1を減衰させた電圧を第2交流電圧V2として出力する減衰器である第2電圧出力回路22と、([0056]~[0057])
検出電極Esに接続される反転入力端子と第2交流電圧V2が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅し、この増幅結果を検出信号Voとして出力する演算増幅器OP1を含む電流出力回路23と、([0061])
検出信号Voから基準交流電圧を減算した結果を差動信号Vmとして出力する減算回路24と、([0063])
減算回路24から出力されるアナログの差動信号Vmをデジタルの信号Dmに変換するA/D変換器25と、([0067])
A/D変換器25から出力されキャパシタCrgの静電容量に概ね比例した値を持つ信号Dmから、第1交流電圧V1と同じ周波数を持つ交流成分の振幅に比例した信号Dsを抽出する信号処理部26と、([0068])
を備えた静電容量検出装置2」
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点
(ア) 構成Xは、「対象物との間の静電容量を検出する静電容量検出装置」の発明であることを特定するものである。
(イ) 引用発明においては、「ドアハンドル100の近傍に指200が近づいた場合には、指200は導電性を有しているため、指200とセンサ110との間に静電容量が形成され、第1の交流電源131及び第2の交流電源132よりセンサ110に電流が流れ[る]」としているところ、「静電容量を検出するためのセンサ110が内蔵されている操作入力装置」は、「自動車等のドアに取り付けられているドアハンドルに内蔵されているもの」であるから、引用発明の「指200」は、「ドアハンドル100の近傍に」「近づいた」かどうか検知される対象物であり、本願発明の「対象物」に相当する。
(ウ) 引用発明における、「静電容量を検出するためのセンサ110」の「静電容量」は、「指200とセンサ110との間の静電容量」であるところ、「静電容量を検出するためのセンサ110が内蔵されている操作入力装置」は、前記(イ)を踏まえると、本願発明の「対象物との間の静電容量を検出する静電容量検出装置」に相当する。
(エ) そうすると、「静電容量を検出するためのセンサ110が内蔵されている操作入力装置」の発明である引用発明と、「対象物との間の静電容量を検出する静電容量検出装置」の発明である本願発明は、「対象物との間の静電容量を検出する静電容量検出装置」の発明である点において一致する。
イ 構成Aの観点
(ア) 構成Aは、「前記対象物との間の静電容量を検出する検出電極」を備えることである。
(イ) 引用発明の「静電容量を検出するためのセンサ110」である「略長方形の形状の抵抗体」について、前記アで検討したとおり、上記「静電容量」は、「指200」(対象物)と「センサ110」の間の「静電容量」であり、また、「指200は導電性を有しているため」としており、「指200」(対象物)を「静電容量」を形成するための一方の電極としてみると、「静電容量を検出するための」「抵抗体」は「静電容量」を形成するための他方の電極といえる。
(ウ) 前記(イ)の検討から、引用発明の「抵抗体」は、本願発明の「対象物との間の静電容量を検出する検出電極」に相当し、本願発明と引用発明の、構成Aの観点における一致点は以下のとおりである。
「前記対象物との間の静電容量を検出する検出電極」を備える点。
ウ 構成B~Gの観点
(ア) 構成B、Cの観点
a(a) 構成Bは、「前記検出電極に近接して配置されたアクティブシールド電極」を備えることであり、
(b) 構成Cは、「前記アクティブシールド電極に供給される交流電圧を出力する電圧出力回路」を備えることである。
b しかしながら、引用発明はこれら構成を有しない。
(イ) 構成D~Gの観点
a(a) 構成Dは、「前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第1調整回路」を備えることであり、
(b) 構成Eは、「前記検出電極の一端に接続される反転入力端子と、前記第1調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第1演算増幅器」を備えることであり、
(c) 構成Fは、「前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第2調整回路」を備えることであり、
(d) 構成Gは、「前記検出電極の他端に接続される反転入力端子と、前記第2調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第2演算増幅器」を備えることである。
b 引用発明は、「静電容量を検出するための」「センサ110の一方の端部110aには、第1の電流計121を介し第1の交流電源131が接続され、他方の端部110bには、第2の電流計122を介し第2の交流電源132が接続され」、「センサ110に指200を近づけた場合には、センサ110の一方の端部110aには、第1の交流電源131より交流電流Iaが流れ、他方の端部110bには、第2の交流電源132より交流電流Ibが流れ」るものである。
c そして、引用発明においては、「センサ110の一方の端部110aに供給される交流電流の電流量は、第1の電流計121により測定することができ、また、第2の交流電源132によりセンサ110の他方の端部110bに交流電圧が供給されており、センサ110の他方の端部110bに供給される交流電流の電流量は、第2の電流計122により測定することができる」から、引用発明は、「センサ110」である「抵抗体」(本願発明の「検出電極」に相当する。)の「一方の端部110a」と「他方の端部110b」それぞれにおいて電気的測定値を取得する第1・第2手段を備えるといえる。
d そうすると、本願発明と引用発明は、「前記検出電極の一端に接続される電気的測定値を取得する第1手段」と、「前記検出電極の他端に接続される電気的測定値を取得する第2手段」を備える点で共通する。
e 一方で、引用発明の電気的測定値を取得する第1・第2手段は、「演算増幅器」ではない。
f また、前記(ア)bで示したように、引用発明は「アクティブシールド電極」と「アクティブシールド電極に供給される交流電圧を出力する電圧出力回路」を備えないから、当該「電圧出力回路」に係る「調整回路」も備えない。
(ウ) 前記(ア)、(イ)の検討から、本願発明と引用発明の、構成B~Gの観点における一致点及び相違点は、それぞれa及びbに示すとおりである。
a 構成B~Gにおける一致点
「前記検出電極の一端に接続される電気的測定値を取得する第1手段と、前記検出電極の他端に接続される電気的測定値を取得する第2手段を備える」点。
b 構成B~Gにおける相違点
本願発明が、
「前記検出電極に近接して配置されたアクティブシールド電極と、
前記アクティブシールド電極に供給される交流電圧を出力する電圧出力回路と、
前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第1調整回路と、
前記検出電極の一端に接続される反転入力端子と、前記第1調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第1演算増幅器と、
前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第2調整回路と、
前記検出電極の他端に接続される反転入力端子と、前記第2調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第2演算増幅器と」を備えるのに対して、
引用発明は、それら構成を有しない点。
エ 構成A1の観点
(ア) 構成A1は、「前記検出電極は、その一端と他端との間に5kΩ以上270kΩ以下の抵抗値を有」することである。
(イ) 引用発明では、「センサ110」である「抵抗体」の「長手方向における一方の端部110aと他方の端部110bとの間の抵抗は」、「5kΩ以上300kΩが好まし」いものである。
(ウ) 前記(イ)から、引用発明の「抵抗体」(本願発明の「検出電極」に相当する。)は、その抵抗値について、本願発明と「前記検出電極は、その一端と他端との間に5kΩ以上であって、かつ、所定の上限値以下の抵抗値を有する」点で共通する。
(エ) 一方で、抵抗値の「所定の上限値」について、引用発明では「300kΩが好まし」いとしており、本願発明の「270kΩ」とは異なる。
(オ) 前記(イ)~(エ)から、本願発明と引用発明の、構成A1の観点における一致点及び相違点は、それぞれa及びbに示すとおりである。
a 構成A1における一致点
「前記検出電極は、その一端と他端との間に5kΩ以上であって、かつ、所定の上限値以下の抵抗値を有する」点。
b 構成A1における相違点(「相違点2」)
「検出電極」の抵抗値の「所定の上限値」について、
本願発明は「270kΩ」であるのに対して、
引用発明は「300kΩが好まし」いとしている点。
オ 構成B1の観点
(ア) 構成B1は「前記アクティブシールド電極は、前記検出電極との間の静電容量が前記第1演算増幅器もしくは前記第2演算増幅器の出力電圧値の動作範囲に基づいて決定される所定範囲内となるように構成される」ことである。
(イ) 引用発明は「アクティブシールド電極」と「演算増幅器」を備えず、前記構成B1の前提となる構成を有しないから、本願発明と引用発明は前記ウ(ウ)bで示した相違点に加え、構成B1の観点において、以下の点で相違する。
構成B1における相違点
本願発明が、「前記アクティブシールド電極は、前記検出電極との間の静電容量が前記第1演算増幅器もしくは前記第2演算増幅器の出力電圧値の動作範囲に基づいて決定される所定範囲内となるように構成される」のに対して、
引用発明は、そのような構成を有しない点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「対象物との間の静電容量を検出する静電容量検出装置であって、
前記対象物との間の静電容量を検出する検出電極と、
前記検出電極の一端に接続される電気的測定値を取得する第1手段と、
前記検出電極の他端に接続される電気的測定値を取得する第2手段と、
を備え、
前記検出電極は、その一端と他端との間に5kΩ以上であって、かつ、所定の上限値以下の抵抗値を有する、
静電容量検出装置。」
である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1(構成B~G、B1の観点)
本願発明が、
「前記検出電極に近接して配置されたアクティブシールド電極と、
前記アクティブシールド電極に供給される交流電圧を出力する電圧出力回路と、
前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第1調整回路と、
前記検出電極の一端に接続される反転入力端子と、前記第1調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第1演算増幅器と、
前記電圧出力回路により出力された交流電圧の振幅を調整する第2調整回路と、
前記検出電極の他端に接続される反転入力端子と、前記第2調整回路により調整された交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅して出力する第2演算増幅器と」を備え、
「前記アクティブシールド電極は、前記検出電極との間の静電容量が前記第1演算増幅器もしくは前記第2演算増幅器の出力電圧値の動作範囲に基づいて決定される所定範囲内となるように構成される」のに対して、
引用発明は、それら構成を有しない点。
(イ) 相違点2(構成A1の観点)
「検出電極」の抵抗値の「所定の上限値」について、
本願発明は「270kΩ」であるのに対して、
引用発明は「300kΩが好まし」いとしている点。
7 判断
(1) 相違点1について
ア 引用文献2技術事項
前記5(1)ア及びイにおいて摘記した事項を踏まえると、引用文献2技術事項は、ノイズを抑えて検出感度を向上することを前提とした検出器の構成を開示するものであるといえるところ、引用文献2技術事項を再掲すると以下のとおりである。
<引用文献2技術事項>(再掲)
「指やペンなどの対象物6の近接を検出するための検出電極Esと、検出電極Esの下層側に近接して配置されたシールド電極Eaを有し、
シールド電極Eaに供給される第1交流電圧V1を出力する第1電圧出力回路21と、
周波数と位相が第1交流電圧V1に等しく、検出電極Esに近接する対象物6が存在しない状態における電流出力回路23の駆動電流Isがゼロになるように、第1交流電圧V1を減衰させた電圧を第2交流電圧V2として出力する減衰器である第2電圧出力回路22と、
検出電極Esに接続される反転入力端子と第2交流電圧V2が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅し、この増幅結果を検出信号Voとして出力する演算増幅器OP1を含む電流出力回路23と、
検出信号Voから基準交流電圧を減算した結果を差動信号Vmとして出力する減算回路24と、
減算回路24から出力されるアナログの差動信号Vmをデジタルの信号Dmに変換するA/D変換器25と、
A/D変換器25から出力されキャパシタCrgの静電容量に概ね比例した値を持つ信号Dmから、第1交流電圧V1と同じ周波数を持つ交流成分の振幅に比例した信号Dsを抽出する信号処理部26と、
を備えた静電容量検出装置2」
イ 引用発明における課題
ノイズを抑えて検出感度を向上することは、検出器における一般的な課題であるところ、引用文献4においても、前記4(1)ウで摘記したように、センサ110の下面に絶縁層171とシールド電極170を形成し、第1の交流電源131及び第2の交流電源132より供給される交流と同じ位相であって、同じ電圧の振幅の交流を供給することで、センサ110の裏面側からのノイズの影響を抑制し感度を向上できることが記載されていることから、引用発明がそのような課題を内包することは明らかである。
ウ したがって、前記イで示した課題を解決するため、引用発明に引用文献2技術事項を採用する十分な動機はあるというべきであり、これにより、以下の(ア)~(エ)に示す事項が導かれる。
(ア) 「センサ110」である「抵抗体」の下層側に近接してシールド電極を配置するようにして、本願発明の「アクティブシールド電極」に相当する構成とすること。
(イ) 当該シールド電極に供給される第1交流電圧を出力する第1電圧出力回路を備えるようにして、本願発明の「電圧出力回路」に相当する構成とすること。
(ウ) 「第1の電流計121」と「第2の電流計122」それぞれに代えて、前記第1交流電圧を減衰させた電圧を第2交流電圧として出力する減衰器である第2電圧出力回路を設けるようにして、本願発明の「第1調整回路」、「第2調整回路」に相当する構成とすること。
(エ) 「抵抗体」に接続される反転入力端子と第2交流電圧が印加される非反転入力端子との電圧差を増幅し、この増幅結果を検出信号として出力する演算増幅器を設けるようにして、本願発明の「第1演算増幅器」、「第2演算増幅器」に相当する構成とすること。
エ 以上ア~ウから、引用発明に引用文献2技術事項を採用し、本願発明の前記相違点1に係る構成B~Gとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
オ 構成B1について
(ア) 引用発明に引用文献2技術事項を採用して、本願発明の「アクティブシールド電極」、「電圧出力回路」、「第1調整回路」、「第2調整回路」、「第1演算増幅器」、「第2演算増幅器」に相当する構成を備えるようにした際、演算増幅器に係る電気回路設計の観点からみて、演算増幅器を含む電気回路において、演算増幅器の出力が飽和しない回路パラメータを設定することは、当然に配慮すべき設計指針であるところ、引用発明に引用文献2技術事項を採用し、「センサ110」である「抵抗体」の下層側に近接してシールド電極を配置し、演算増幅器を備える場合において、回路パラメータである「抵抗体」と「抵抗体」に近接して配置されたシールド電極の間の静電容量を、演算増幅器の出力が飽和しない程度の値とすることは、前記設計指針に基づいて当業者が適宜設計し得たことである。
(イ) 構成B1については、次のa~cに示すように、引用発明に引用文献2技術事項を採用した際に、当業者にとって自明に導かれる事項にすぎないものであるともいえる。
a まず、本願発明において、「アクティブシールド電極」と「検出電極」との間の「静電容量」がどの程度であるかについては具体的数値として特定されていないものの、本願発明に係る請求項1の記載を引用する請求項2の以下の記載からみて、アクティブシールド電極と検出電極の間の静電容量が「30pF以上130pF以下」であると、前記構成B1を満たすと解するのが相当である。
「【請求項2】
前記アクティブシールド電極は、前記検出電極との間の静電容量が30pF以上130pF以下となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量検出装置。」
b ここで、引用文献2では、前記5(1)エにおいて摘記したように、シールド電極Eaと検出電極Esの間のキャパシタCrsを、「130pF」や「40pF」とすることが記載されており、また、引用発明に引用文献2技術事項を採用して具体的に設計するに際し、引用文献2の記載を参考にすることは、当業者にとって自明のことである。
c したがって、引用発明に引用文献2技術事項を採用した際に、「抵抗体」と「抵抗体」に近接して配置されたシールド電極の間の静電容量を「130pF」又は「40pF」とすることは、当業者が適宜なし得たことであり、構成B1は当業者にとって自明に導かれる事項にすぎないものである。
カ 相違点1の検討のまとめ
以上検討したとおり、引用発明において、本願発明の前記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2) 相違点2について
ア 抵抗値の範囲の意義
(ア) 本願明細書では、抵抗値を「5kΩ以上270kΩ以下」の範囲とすることについて、以下記載がある。
「[0030]
(抵抗値Rpおよび静電容量Crsの好適な範囲)
図5は、一実施形態に係る静電容量検出部110(図2に示す積層構造を有する)における、オフセット電圧の電圧範囲が2V以下となる領域(抵抗値の範囲および静電容量値の範囲)の、シミュレーション結果を示す図である。」
「【図5】
[図:0001438702000027.jpg]
」
「[0032]
図5に示すシミュレーション結果によれば、一実施形態に係る第1AFEブロック120および第2AFEブロック130は、検出電極111の一端から他端までの抵抗値Rpを、5kΩ以上270kΩ以下とし、検出電極111とアクティブシールド電極112との間の静電容量Crsを、30pF以上130pF以下とすることにより、オフセット電圧の電圧範囲を2V以下とすることができる。これにより、一実施形態に係る静電容量検出装置100は、第1AFEブロック120および第2AFEブロック130の出力電圧値から、ホバー操作を含めた対象物10の位置検出を、良好に行うことができる。」
(イ) ここで、図5に示すシミュレーション結果とは、前記(ア)で示した記載を考慮すると、検出電極とアクティブシールド電極の間の静電容量Crsが種々の値である場合それぞれにおいて、オフセット電圧が所定の値(2V)となる検出電極の抵抗値Rpをプロットしたものと認められる。
(ウ) この点に関し、本願明細書の段落[0026]~[0029]、[図4]の記載を踏まえると、「オフセット電圧の電圧範囲を2V以下とすること」が「ホバー操作を含めた対象物10の位置検出を良好に行うため」であることは読み取れるものの、そのことと抵抗値が5kΩ以上270kΩ以下であることとの関係は不明である。
(エ) 以上を踏まえると、図5に示すシミュレーション結果は、静電容量Crsの値により、オフセット電圧が所定の値(2V)となる抵抗値Rpが異なることを示しているものの、抵抗値が5kΩ以上270kΩ以下でありさえすれば、静電容量が30pF以上130pF以下のいずれの値においても、オフセット電圧が所定の値(2V)以下となることは示さないから、図5に示すシミュレーション結果からは、抵抗値の範囲の下限値が5kΩであること、また、上限値が270kΩであることのいずれにも、臨界的な意義を見いだすことはできない。
(オ) なお、本願明細書では、段落[0035]、[0036]に、「抵抗値Rpが5kΩ未満の場合、…(中略)…静電容量値の変化が小さすぎて…(中略)…近接位置を高精度に検出できなくなる虞がある」、「抵抗値Rpが、抵抗値270kΩ以上の場合、抵抗値が高すぎて、静電容量の変化が直線的ではなくなり、…(中略)…近接位置を高精度に検出できなくなる虞がある。また、…(中略)…検出電極111のインピーダンスが高いためSN比が劣化する虞がある。」なる記載があるが、これら記載は、抵抗値が低すぎる場合、高すぎる場合それぞれの一般的な事象を抵抗値の具体例を挙げて示すだけで、抵抗値の範囲の下限値が5kΩであること、また、上限値が270kΩであることの臨界的な意義を肯定するものではない。
イ 引用発明の抵抗値の範囲について
引用発明の「センサ110」である「抵抗体」は、「長手方向における一方の端部110aと他方の端部110bとの間の抵抗は、5kΩ以上300kΩが好まし」いものであり、ここで、どの程度の抵抗値を設定するかは当業者が適宜設計すべき事項である。
ウ そして、前記アで検討したように、抵抗値が「5kΩ以上」であることにも「270kΩ以下」であることにも臨界的な意義はないから、前記イの検討を踏まえると、引用発明の「5kΩ以上300kΩが好まし」いとされる範囲において、上限値をわずかに限定し「5kΩ以上270kΩ以下」程度の範囲とすることに、臨界的な意義や格別の効果があるとは認められない。
エ したがって、引用発明において、前記相違点2に係る本願発明の構成のごとく「5kΩ以上270kΩ以下」という抵抗値を採用することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲の事項である。
(3) 総合評価
前記(1)及び(2)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は意見書において以下ア、イを主張する。
ア 補正後の請求項1に係る発明は、第1演算増幅器あるいは第2演算増幅器の動作範囲において、ホバー操作を含めた対象物の位置検出を良好に行うための、検出領域の電圧範囲を、より好適に得ることができるという技術的効果を奏する。
イ いずれの引用文献においても、検出電極とアクティブシールド電極との間の静電容量値を、第1演算増幅器あるいは第2演算増幅器の動作範囲に基づく所定範囲にすることを開示していない。
(2) 請求人の主張についての検討
ア(ア) 前記(1)アの効果の主張について検討すると、請求項1では「ホバー操作」が行われることが特定されていないから、当該主張は請求項1の記載に基づいたものとは認められない。
(イ) 仮に、請求項1の記載から「ホバー操作」が行われることが明らかであるとしても、引用文献4の前記4(1)アで摘記した[0016]の記載から、引用発明は、指200とセンサ110との間に静電容量が形成されるような、指とセンサが離間した「ホバー操作」も検出の対象としているところ、そのような操作を考慮して演算増幅器の出力が飽和しない回路パラメータを設定することは設計事項にすぎず、その効果は、当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果とはいえない。
イ 前記(1)イの主張について検討すると、当該主張は、要するに前記相違点1に係る本願発明の構成B1は、いずれの引用文献にも開示されていないというものであるが、その点についての当合議体の判断は、前記7(1)オにおいて説示したとおりであるから、前記主張は採用できない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-010759