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特許拒絶査定不服審判

2024-006461

多層容器および多層プリフォーム

審判番号
2024-006461
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-138032
請求日
2024年04月16日
審決日
2026年06月02日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】大日本印刷株式会社
  • 【請求人代理人】宮嶋 学
  • 【請求人代理人】浅野 真理
審判長/審判官
  • 審判長 八木 誠
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 一ノ瀬 薫
分類
P18 .121-WZ (B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-138032「多層容器および多層プリフォーム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年2月18日出願公開、特開2021-20694〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年7月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年 3月17日付け:拒絶理由通知書 令和5年 5月23日 :意見書、手続補正書 令和5年 8月29日付け:拒絶理由通知書 令和5年10月31日 :意見書、手続補正書 令和6年 1月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (令和6年 1月30日 :原査定の謄本の送達) 令和6年 4月16日 :審判請求書、手続補正書 令和7年12月25日付け:拒絶理由通知書 令和8年 2月27日 :意見書 第2 本願発明 本願の請求項1~4に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)は、それぞれ令和6年4月16日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。 「加温容器用の多層容器であって、 内側から、バージンポリエステルにより構成される層と、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層と、リサイクルポリエステルにより構成される層とを備え、 前記バージンポリエステルが、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステルから選択され、 前記リサイクルポリエステルがアンチモン触媒を含み、 前記ガスバリア性樹脂がポリアミドを含む、ことを特徴とする、加温容器用多層容器。」 第3 当審拒絶理由の概要 令和7年12月25日付けで、当審で通知した拒絶理由は、概ね、次の理由を含むものである。 本願発明1は、下記引用文献1に記載された発明及び下記引用文献2に記載された事項、下記引用文献5に記載された事項及び周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 引用文献1 特表平10-500078号公報 引用文献2 特開2017-165453号公報 引用文献3 特許第5720123号公報 引用文献4 特開2005-195684号公報 引用文献5 特許第5446554号公報 第4 当審の判断 1 引用文献に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1 ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている(なお下線は当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示し、空白行も行数に含み、引用部分の摘記において旧字体は新字体に置き換えた。以下同様。)。 (ア)11ページ27~28行 「第1図Aを参照して、プリフォームは3つの材料層、包囲する内側層20、包囲するバリア層22、包囲する外側層24から好ましくは形成されている。」 (イ)12ページ16~27行 「それぞれ領域IA、IBおよびICを拡大して詳細に示した第1図A-第1図Cを詳細に参照して、内側層20は好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)あるいはポリエチレンナフタレート(PEN)から形成される。PENは、食品薬品局(FDA)が許可するならば好ましい材料である。バリア層22は好ましくはPEN、サランおよびエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)あるいはBArex 210のようなアクリロニトリル共重合体から形成される。サランの用語は、例えば塩化ビニリデンおよび塩化ビニルあるいはアクリル酸メチルを重合させることにより作られるポリマーを示すその通常の市場における意味で使用される。公知の別のモノマーも含まれる。塩化ビニリデンポリマーは最も一般的に使用されるが、他の酸素バリア材料も公知である。」 (ウ)13ページ15~26行 「第1図A-第1図Cにおいて、バリア層22および外側層24はそれぞれ一定の厚さAAおよびBBを有して示されている。バリア層22の厚さは、それが内側層20と共押出成形されるので、同様に変更される。しかしながら、バリア層22は支持するための手段としてではなくバリア物質としてだけ機能するのでこのことは一般的に必要ではなく、また均一なバリアの厚さは他の層の厚さとは関係なしにバリアとして機能するもので十分である。外側層24の厚さBBは、射出モールド(第2図Bに図式的に示した)により決定され、また典型的には、プリフォーム10の全体に亘って均一な厚さである。外側層24は典型的には、キャップ付けのためのねじ付き形成のようなプリフォームおよび続く容器(第4図に示した)を構造的に変更するために、また同様に容器に対して色付けあるいは印付けのような美観のために用いられる。」 (エ)13ページ27行~14ページ7行 「プリフォーム10のねじ付きの上側部12の拡大した断面図を第1図Dに示した。プリフォーム10の上側部の開いた端26を参照して判るように、内側層20は、内側層20の残りに対して実質的に横切って延在し、バリア層22および外側層24の上縁30および32上にそれぞれ延在するリップ28を含んでいる。・・・リップ28は内側層20を、例えば注ぎ出し(pouring)の間においても容器からの内容物の取り出しの間においても、容器(第4図に示した)内に保持された内容物に接触する唯一の層として維持するために形成される。」 (オ)16ページ7~10行 「外側層24を形成するために使用されるメルトは、好ましくは、リサイクルされたPETであり、またこれは色および表面のデザインのような美観の特徴、およびねじ付けおよびフランジ付けのような機能的な特徴を形成するために使用される。」 (カ)16ページ14~22行 「第4図を参照して、容器58は上記したブローモールド操作を経てプリフォーム(第1図参照)から形成される。・・・ 第4図の領域4A、4Bおよび4Cのそれぞれの拡大した詳細な説明図をそれぞれ示した第4図A-第4図Cを参照して、容器58は内側層68、バリア層70および外側層72を含んでいる。」 (キ)17ページ13~20行 「第4図Cを参照して、ねじ付きの上側部60において、プリフォーム10のねじ付きの上側部12(第1図参照)と直接的に対応して、内側層68はブローモールドされないので中間部の厚さCより厚い厚さEを有している。プリフォーム10に対して上記し、また第1図Dに示したように、上端78において、内側層68は、外側のリサイクルされた層72が容器58から出る内容物に接触しないようにするために外側のリサイクルされた層72上に延在する、リップ28を含んでいる。これは上記においてプリフォーム10およびこれを作るためのプロセスにおいて詳しく説明した。」 (ク)「【図1】 [図:0001437723000001.jpg] 」 (ケ)「【図4】 [図:0001437723000002.jpg] 」 イ 引用発明 上記アを参照し、特に第1図A~Dに記載されたプリフォーム10から形成された容器58に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、カッコ内は、理解促進のため特に参酌すべき段落等である。 「内側層20、バリア層22及び外側層24を有する多層プリフォーム10から形成された容器58であって、(上記ア(ア)、(カ)) 前記容器58は内側層68、バリア層70および外側層72を有し、(上記ア(カ)) 前記内側層68がポリエチレンテレフタレート(PET)から形成されるとともに前記外側層72がリサイクルされたPETから形成され、(上記ア(イ)、(オ)) 前記バリア層70は、好ましくはPEN、サランおよびエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)あるいはBArex 210のようなアクリロニトリル共重合体から形成される(上記ア(イ)) 容器。」 (2)引用文献2 ア 引用文献2に記載された事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「【請求項16】 前記プラスチックボトルを構成する材料がポリエチレンテレフタレートであり、前記ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることを特徴とする 請求項1乃至15のいずれか1項に記載のプラスチックボトル。」 「【0007】 そこで本発明の目的は、加熱等によって内部が陽圧化された際にも底部や、胴部の変形が抑えられ、加温時にもくびれが維持され、意匠性と、実用性とを兼ね備えたプラスチックボトル、及び充填体を提供することにある。」 「【0040】 更に、プラスチックボトルを構成する材料がポリエチレンテレフタレートであり、ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられる構成によれば、高い透明性を有し、耐熱性に優れ、意匠性と、実用性とを兼ね備えたプラスチックボトルを提供することができる。」 「【0070】 ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン-1,2-ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。」 「【0137】 本開示は、内容物として液体が充填される種々の充填体の製造に好適に利用することができる。・・・特に、陽圧の条件下でも容器の変形が抑えられるため、店舗等での加温販売に適しており、自動販売機での使用にも適している。」 イ 引用文献2記載事項 上記アから、引用文献2には以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 「加温容器用ポリエステル容器を、重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられたポリエチレンテレフタレートから構成することで、透明性と耐熱性を向上すること。」 (3)周知技術1 ア 引用文献3 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 「【0013】 一方、回収PETのメカニカルリサイクルの方法においても種々の方法が提案されているが、基本的には、回収PETを粉砕、洗浄、異物分別等を行った後、フレーク又はペレット状にする所謂マテリアルリサイクルによる再生PETを、熱、真空脱気、清浄ガス等の種々の手段で更に厳密且つ高度に洗浄を行うことにより、PETの汚れを確実に取り除く方法である。 ・・・ また、バージンのPETを製造した際に使用された触媒をそのまま含有していることから、PET樹脂の製造に一般的に用いられるGe、Sb、Ti、Alを含有する金属化合物を複数種含有している。」 「【0018】 (ポリエステル構造体) ・・・ 尚、本発明のポリエステル構造体は、前述した通り、メカニカルリサイクルによる再生PETが回収PETを生成したときに用いた金属触媒を含んでいることから、ケミカルリサイクルによる再生PETの金属触媒、更にはバージンPETの金属触媒が含有されていることから、Ge、Sb、Ti、Alから成る金属化合物群のうち、少なくとも二種以上を含有するものである。」 「【0027】 (メカニカルリサイクルによる再生PET) ・・・メカニカルリサイクルに相当する再生PET材料TEST-Aとして使用した。・・・金属含有量はアンチモン(Sb)元素換算で100ppm、ゲルマニウム(Ge)元素換算で24ppm、チタン(Ti)元素換算で2ppmであった。」 イ 引用文献4 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 「【0044】 本発明におけるポリエステル樹脂は、通常上記の多価カルボン酸と多価アルコールを重縮合する事によって得られるが、更にポリエチレンテレフタレート(PET)を重縮合反応に用いることが好ましい。このPETは、廃物より回収されたリサイクルPETであっても良い。・・・」 「【0054】 上記の重縮合反応に既述のリサイクルPETを用いると、同PET製造時に用いられたアンチモン触媒の残査を含む可能性があるが、この場合、アンチモンの含有量は100ppm以下、更には50ppm以下にする事が好ましい。」 ウ 周知技術1 上記ア、イのとおり、以下の事項(以下「周知技術1」という。)は当業者にとって周知の事項である。 「メカニカルリサイクルされたPETがアンチモン触媒を含み得ること。」 (4)引用文献5 ア 引用文献5に記載された事項 引用文献5には、以下の事項が記載されている。 「【0027】 このような加温用プラスチックボトル10は、合成樹脂材料を射出成形して製作したプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより作製することができる。なおプリフォームすなわち加温用プラスチックボトル10の材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)を使用する事が好ましい。 【0028】 また、加温用プラスチックボトル10は、2層以上の多層成形ボトルとして形成することもできる。即ち押し出し成形または射出成形により、例えば、中間層をMXD6、MXD6+脂肪酸塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)等のガスバリア性及び遮光性を有する樹脂(中間層)として3層以上からなるプリフォームを押出成形後、吹込成形することによりガスバリア性及び遮光性を有する多層ボトルを形成しても良い。なお、このような中間層は、加温用プラスチックボトル10のうち少なくとも胴部20内に設けることが好ましい。また底部30において、底部30の中央部を除く領域に中間層を設けることが好ましい。ケース落下等の衝撃を受けた際この部分がデラミ(層間剥離)を起こすおそれがあるからである。ガスバリア性及び遮光性を有する為に、多層にするだけでなく熱可塑性樹脂同士をブレンドしたブレンドボトルを形成しても良い。」 イ 引用文献5記載事項 上記アから、引用文献5には以下の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。 「加温用プラスチックボトル10の材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)を使用する事が好ましく、また、例えば、中間層をMXD6、MXD6+脂肪酸塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)等のガスバリア性及び遮光性を有する樹脂として3層以上からなるプリフォームを押出成形後、吹込成形することによりガスバリア性及び遮光性を有する加温用多層ボトルを形成しても良いこと。」 (5)周知技術2 ア 引用文献6 引用文献6(特開2016-198912号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0003】 従来、プラスチック容器の胴部を多層構造とし、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからなる表層の間にメタキシリレン基含有ポリアミドからなるバリア層を設けることによって容器内部へ酸素が侵入することを防ぐ方法が知られている。・・・しかし、これらの方法は、高いバリア性と透明性が得られる点で優れているが、落下や外部からの衝撃に対して層間剥離を生じやすく、それによるバリア性の低下や外観の悪化がかねてより問題となっていた。 ・・・」 イ 引用文献7 新たに引用する引用文献7(特開昭58-197050号公報)には、以下の事項が記載されている。 「本発明者等は熱可塑性ポリエステル樹脂がもつ優れた力学的性質、耐薬品性、衛生性を何ら損うことなく、酸素に対する遮断性を向上するためにはメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂との多層にすればよいことを知見した。しかし、熱可塑性ポリエステル樹脂とメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂とは接着性が劣ることから積層で使用するとき層間剥離を生じて強度が低下したり、外観を損う等の問題を有している。」(3欄1~9行) ウ 周知技術2 上記ア、イ及び上記(4)アから、以下の事項(以下「周知技術2」という。)は当業者にとって周知である。 「ポリエチレン樹脂とメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂とは、積層で使用するとき、落下等の衝撃により層間剥離を生じるおそれがあること。」 2 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用文献1には、「内側層68」を形成する「ポリエチレンテレフタレート(PET)」として、リサイクルPETを用いることは記載されていないから、引用発明の「ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成される」「内側層68」は、本願発明1の「バージンポリエステルにより構成される層」に相当する。 引用発明の「バリア層70」及び「リサイクルされたPETから形成され」る「外側層72」は、それぞれ本願発明1の「ガスバリア層」及び「リサイクルポリエステルにより構成される層」に相当する。 引用発明の「容器58」は、「内側層68、バリア層70および外側層72を有」する多層容器であるから、本願発明1の「加温容器用の多層容器」と、「多層容器」である限りにおいて一致する。 引用発明の「PEN、サランおよびエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)あるいはBArex 210のようなアクリロニトリル共重合体」は、出願時の技術常識に照らせば、本願発明1の「ガスバリア性樹脂」に相当する。したがって、引用発明の「バリア層70」は、本願発明1の「ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層」に相当する。 そうすると、本願発明1と引用発明は以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (1)一致点 「多層容器であって、 内側から、バージンポリエステルにより構成される層と、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層と、リサイクルポリエステルにより構成される層とを備えた、 多層容器。」 (2)相違点 ア 相違点1 多層容器について、本願発明1では、「加温容器用」であるのに対し、引用発明では、その点が特定されていない点。 イ 相違点2 バージンポリエステルについて、本願発明1では、「マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステルから選択され」るのに対し、引用発明では、その点が特定されていない点。 ウ 相違点3 リサイクルポリエステルについて、本願発明1では、「アンチモン触媒を含む」のに対し、引用発明では、リサイクルされたPETがアンチモン触媒を含むとは特定されていない点。 エ 相違点4 ガスバリア性樹脂について、本願発明1では、「ポリアミドを含む」のに対し、引用発明では、「好ましくはPEN、サランおよびエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)あるいはBArex 210のようなアクリロニトリル共重合体から形成される」点。 3 判断 上記各相違点について検討する。 (1)相違点1及び相違点2について 上記1(2)に示したとおり、引用文献2には、「加温容器用ポリエステル容器を、重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられたポリエチレンテレフタレートから構成することで、透明性と耐熱性を向上すること。」(引用文献2記載事項)が記載されている。 そして、容器の用途は、その内容物によって当業者が適宜決定し得る設計的事項にすぎず、引用発明に係る容器を加温用途に用いることについても、引用文献1には、上記1(1)ア(イ)に示したとおり、内側層20やバリア層22を形成する樹脂として、耐熱性の高いPENが例示されていることからも、示唆されているといえる。 そうすると、引用発明において、引用発明を加温容器用多層容器とし、その際に「バージンポリエステル樹脂」の耐熱性を向上するために、引用文献2記載事項を参酌することで、「重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられたポリエチレンテレフタレート 」を採用することは、当業者にとって容易である。 (2)相違点3について 上記1(3)に示したとおり、メカニカルリサイクルされたPETがアンチモン触媒を含み得ること(周知技術1)は、当業者にとって周知の事項である。 そうすると、引用発明1の「リサイクルされたPET」も、アンチモン触媒を含むものである蓋然性が高い。 (3)相違点4について 上記1(4)に示した引用文献5記載事項のとおり、引用文献5には、加温用プラスチックボトル10の材料としてはPET(ポリエチレンテレフタレート)を使用し、中間層をMXD6、MXD6+脂肪酸塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)等のガスバリア性及び遮光性を有する樹脂として、ガスバリア性及び遮光性を有する加温用多層ボトルを形成することが記載されている。ここで、MXD6、MXD6+脂肪酸塩は、いずれもポリアミドである。 そして、引用発明の「バリア層70」と引用文献5記載事項の「中間層」は、いずれもPETを使用した多層容器にガスバリア性を付与する中間層であり、作用、機能が共通する。さらに、引用文献1には、上記1(1)ア(イ)に示したとおり、「公知の別のモノマーも含まれる。塩化ビニリデンポリマーは最も一般的に使用されるが、他の酸素バリア材料も公知である。」と記載されていることから、引用発明の「バリア層70」を構成する樹脂として他の酸素バリア材料を採用できることが示唆されているといえる。 そうすると、引用発明の「バリア層70」を、ポリアミドであるMXD6またはMXD6+脂肪酸塩を含むガスバリア性樹脂を含むものとすることに、格別の困難性は認められない。 (4)そして、これらの相違点1~4を総合的に勘案しても、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献5記載事項及び周知技術1の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (5)請求人の主張について 請求人は、令和8年2月27日提出の意見書において、以下のとおり主張する。 「また、引用文献1の17ページ21~26行には、 「容器58の多層のデザインは日々のリサイクルにおいて有用である。特に、容器58を形成する各層はこれらを引くことにより容易に分離でき、よってリサイクルの目的に適切に分割することができる。つまり、特定の材料がリサイクル可能でない場合には、これが他の層のリサイクルに影響を及ぼすことがない。1つより多くの材料が使用された場合、材料を分離して正しく分類できないために容器のリサイクルは困難である。」 と記載されています。かかる記載も踏まえますと、引用発明では、異なる材料で形成された各層を材料毎に分離してリサイクルできるようにしている結果、リサイクルするために非常に便利な容器を実現していると理解できます。 そして、引用文献1の12ページ19~22行には、バリア層の材料としてPEN等が記載されています。しかし、バリア層の材料としてポリアミドは引用文献1で挙げられていません。そうしますと、引用発明におけるバリア層にポリアミドを含ませても、内側層や外側層と分離しやすい性能をバリア層が維持できるか否かは、引用文献1の記載からは定かでありません。引用発明におけるバリア層にポリアミドを含ませ、各層を材料毎に分離してリサイクルするのに便利かどうか定かでない容器とする動機付けはなく、リサイクルするために非常に便利な容器を形成するという引用発明の目的に着目することなく、引用発明におけるバリア層をMXD6等のポリアミドを含むものとすることに格別の困難性は認められないとした審判官殿のご認定は、誤りであると言わざるを得ません。」 しかし、上記(3)で説示したとおり、引用発明の「バリア層70」を、ポリアミドであるMXD6またはMXD6+脂肪酸塩を含むガスバリア性樹脂を含むものとすることに十分な動機付けはある。また、上記1(5)に周知技術2として示したとおり、ポリエチレン樹脂とメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂とは、積層で使用するとき、落下等の衝撃により層間剥離を生じるおそれがあることが当業者にとって周知であることを踏まえると、引用発明の「バリア層70」を、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂であるMXD6またはMXD6+脂肪酸塩を含むガスバリア性樹脂を含むものとしたときに、容器を形成する各層が分離できなくなるとまでは考えにくく、むしろ、周知技術2を踏まえると各層を分離しやすくなると考えるのが自然であるから、引用発明の「バリア層70」を、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂であるMXD6またはMXD6+脂肪酸塩を含むガスバリア性樹脂とすることに阻害要因があるとも認められない。 したがって、請求人による上記主張は採用できない。 3 まとめ よって、本願発明1は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献5記載事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-006461

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