商標拒絶査定不服審判
2024-004291
シュードーテーチャク
- 審判番号
- 2024-004291
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2023-052043
- 請求日
- 2024年03月12日
- 審決日
- 2025年02月17日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社リコー
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 鯉沼 里果
- 審判官 小俣 克巳
- 分類
- T18 .13 -Z (W09) / T18 .272-Z (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2023- 52043拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和5年5月15日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年10月20日付け:拒絶理由通知書
令和5年11月22日 :意見書の提出
令和5年12月22日付け:拒絶査定
令和6年 3月12日 :審判請求書の提出
令和6年10月24日付け:審尋
令和6年11月22日 :回答書の提出
2 本願商標
本願商標は、「摺動定着」の文字を標準文字で表してなり、第9類「青写真複写機,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,郵便切手のはり付けチェック装置,プロジェクター,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,ファクシミリ,電話機,携帯電話機,移動体通信機,その他の電気通信機械器具,電子応用静電複写機,コンピュータ用プリンター,コピー機能・ファクシミリ機能・スキャナー機能付きプリンター,コンピュータホワイトボード,コンピュータ,コンピュータプログラム及びコンピュータソフトウェア,その他の電子応用機械器具及びその部品,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」を指定商品として登録出願されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、「摺動定着」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「摺動」の文字は「滑り動くこと。特に、機械部品や地層・断層についていう。」の意味を有し、「定着」の文字は「しっかりとつくこと。固着して容易に離れなくなること。」の意味を有する語として使用されている。
そして、本願の指定商品に関する分野において、「滑らかな平面や円筒形の内面と円柱形がお互いに擦りながら滑らせて移動する動き」を表す語として「摺動」の文字が使用され、「転写後のコピー用紙上のトナーを固着させること」を表す語として「定着」の文字が使用されている。
また、本願の指定商品に関する分野において、用紙と接触するベルトを滑らせる等して用紙上のトナーを固着させるプリンターの研究・開発や販売等が行われている実情がうかがえることから、本願商標は全体として、「用紙と接触するベルトを滑らせる等して用紙上のトナーを固着させる」ほどの意味合いを容易に理解させる。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、「用紙と接触するベルトを滑らせる等して用紙上のトナーを固着させる商品」(例えば、用紙と接触するベルトを滑らせる等して用紙上のトナーを固着させるコンピュータ用プリンター)又は「用紙と接触するベルトを滑らせる等して用紙上のトナーを固着させるときに使用する商品」(例えば、そのようなときに使用するコンピュータプログラム及びコンピュータソフトウェア)等であると認識するにとどまるというのが相当であるから、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認められる。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記の商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。
4 当審における審尋
当審において、上記1の審尋により、別掲1及び2に掲げる事実を記載した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの暫定的見解を示し、期間を指定した上で請求人に対し意見を求めた。
5 審尋に対する請求人の回答(要旨)
(1)本願商標は全体として識別力を発揮する一連一体の造語であって、「摺動」と「定着」とに分離観察した上で部分的な語彙から全体の観念を導き、それを直ちに商品の品質を普通に用いられる方法で表したものとする判断には納得できない。
(2)「別掲1」で提示された「定着」の語の意味合い及びその用例は、ごく一般的な「定着」の意味合いと、「○○定着」の用例に過ぎず、市場に投入された商品における「摺動定着」の態様の用例は見られない。また、(「摺動定着」の語が含まれる)「別掲2」は、特許公開公報であって、これをもって本願商標が需要者にとって記述的・一般的な語であるとはいえない。
(3)「薬袋定着(登録第4720911号)」について登録が認められたことから、これが具体的商品の品質を想起し得ないか間接的に品質を表示するにとどまるものであることを示していると考えるところ、本願商標も同様に取り扱われるべきである。
6 当審の判断
(1)本願商標について
本願商標は、「摺動定着」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、その構成中、「摺動」の文字は「滑り動くこと。特に、機械部品や地層・断層についていう。」を、「定着」の文字は「しっかりとつくこと。固着して容易に離れなくなること。」をそれぞれ意味する語(いずれも出典:広辞苑 第七版)である。
そして、印刷機器に関連する分野において、本願商標を構成する「摺動」及び「定着」の語は、機器に関する技術や特徴を説明する語として、取引者において、一般的に用いられている実情が確認できるところ(別掲2)、「定着」の語は、転写後のコピー用紙上のトナーを固着させることを意味し、その方法は、「熱ローラー定着」、「フラッシュ定着」、「圧力定着」、「IH定着」、「ベルト定着」のように、「○○定着」とそれぞれ称されていることが伺え(別掲1)、「摺動定着」の一連の文字が「定着装置の定着方式として、定着ベルトをプレスローラーに従動して回転させる」ことを表すものとして用いられている事実が、原審で提示した証拠の他にも確認できるものである(別掲2-1、別掲2-2)。
さらに、印刷業界では、トナーの定着技術の品質は、印刷物の見た目や耐久性に大きく影響することから、トナーの定着技術の向上に努め、高品質な印刷結果を実現するための研究開発が続けられている実情が確認できる(別掲1)。
そうすると、「摺動定着」の文字からなる本願商標を、その指定商品中の「青写真複写機,写真複写機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,ファクシミリ,電子応用静電複写機,コンピュータ用プリンター,コピー機能・ファクシミリ機能・スキャナー機能付きプリンター,コンピュータホワイトボード,コンピュータ,コンピュータプログラム及びコンピュータソフトウェア,その他の電子応用機械器具及びその部品」等の印刷機器に関連する商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、例えば「定着ベルトをプレスローラーに従動して回転させる定着装置の定着方式」のように、トナーの定着方法の一種を表示するもの、すなわち商品の品質、特徴を表示したものと看取、理解するにとどまるというのが相当であり、これを商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないというべきである。
さらに、本願商標は標準文字で表してなるから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものといえる。
してみれば、本願商標は、その商品の品質、特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、上記トナーの定着方式として「定着ベルトをプレスローラーに従動して回転させる定着装置の定着方式」に照応する印刷機器以外の印刷機器に関連する商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は一連一体の造語であって、本願商標を構成する各語に分離した上で、全体の観念を導き、それを商品の品質を普通に用いられる方法で表したものとする判断には納得できない旨主張している。
しかしながら、本願商標は印刷機器に関連する商品を含むものであるところ、印刷機器に関連する分野においては、上記(1)のとおり、本願商標を構成する「摺動」及び「定着」の各語が機器に関する技術や特徴を説明する語として一般的に使用されており、「○○定着」の語が定着方式を表示する語として用いられている実情がある上、定着技術の向上のため、研究開発等が進められている実情を鑑みれば、本願商標をその指定商品中の印刷機器に関連する商品に用いた場合には、これに接する取引者、需要者は、本願商標につき、当該商品が定着方法の一種、すなわち、そのような品質、特徴を有する商品であることを表したものと理解するにすぎないというのが相当である。
イ 請求人は、当審による審尋において列挙した証左における「摺動定着」の語の使用例は、特許公開公報内における使用例のみであり、市場に投入された商品における「摺動定着」の語の使用例ではないことから、本願商標に接した需要者は、商品の品質等を表示したものと認識しない旨主張している。
しかしながら、「商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべき」(東京高裁平成12年(行ケ)第76号、同年9月4日判決参照)であるから、そもそも同号の適用に当たっては、必ずしも、「摺動定着」の文字が、商品の品質を表すものとして実際に使用されている例が要求されるわけではないと解される。
そして、上記(1)のとおり、印刷機器に関連する分野においては、本願商標を構成する「摺動」及び「定着」の各語は、機器に関する技術や特徴を説明する語として、取引者において、一般的に用いられている実情が確認できるものである上、印刷機器に関連する商品は、その製造、流通過程においては、技術者等の取引者の関与があることは当審において顕著な事実であるから、当該取引者において、自他商品の出所識別標識として機能しないものである以上は、本願商標を印刷機器に関連する本願指定商品に使用しても、これを商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないというのが相当である。
ウ 請求人は、過去の登録例、審決例、異議決定例を挙げ、本願も同様に取り扱われるべきである旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様や取引の実情を踏まえて、個別具体的に判断されるべきものであるところ、本願商標についての判断は、上記(1)のとおりであるから、請求人が挙げる登録例等をもって本願商標の上記判断が左右されるものではない。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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