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特許拒絶査定不服審判

2024-003151

バンドストップフィルタ及びマルチバンドストップフィルタ

審判番号
2024-003151
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-513185
請求日
2024年02月22日
審決日
2024年10月15日
公報発行日
2025年03月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】安徽安努奇科技有限公司
  • 【請求人代理人】山尾 憲人
  • 【請求人代理人】岡部 英隆
審判長/審判官
  • 審判長 千葉 輝久
  • 審判官 稲葉 崇
  • 審判官 丸山 高政
分類
P18 .113-Z (H03H) / P18 .121-Z (H03H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-513185「バンドストップフィルタ及びマルチバンドストップフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年11月 3日国際公開、WO2022/227347、令和 5年 6月27日国内公表、特表2023-527098〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2021年(令和3年)8月20日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 5年 7月 4日付け 拒絶理由通知書 9月13日 意見書・手続補正書 10月19日付け 拒絶査定 令和 6年 2月22日 審判請求書・手続補正書 6月13日 前置報告書 以下では、令和5年10月19日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和6年2月22日の手続補正書による補正を「本件補正」という。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1~7を、(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~7へと補正するものである。なお、(2)における下線は補正箇所を示す。 (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 入力ポート(A)と、出力ポート(B)と、少なくとも2つの共振器と少なくとも1つの誘導性素子(110)とを含む少なくとも1つのバンドストップフィルタリングユニットを含み、ここで、前記少なくとも2つの共振器は、少なくとも1つの第1共振器(120)及び少なくとも1つの第2共振器(130)を含み、 前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、 前記バンドストップフィルタリングユニットは1つの前記第1共振器(120)、1つの前記第2共振器(130)及び1つの前記誘導性素子(110)を含み、 前記第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)の第1端との間に接続され、前記第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)の第2端との間に接続され、前記第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、 前記第1共振器(120)の共振周波数と前記第2共振器(130)の共振周波数との差はゼロより大きく且つ前記第2共振器(130)又は第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅以下である、 バンドストップフィルタ。 【請求項2】 前記誘導性素子(110)の共振周波数は前記第1共振器(120)及び前記第2共振器(130)のストップバンド周波数よりも大きい、 請求項1に記載のバンドストップフィルタ。 【請求項3】 前記バンドストップフィルタは少なくとも2つの前記バンドストップフィルタリングユニットを含み、隣接する2つのバンドストップフィルタリングユニットの共振周波数の差はゼロより大きく且つ前記隣接する2つのバンドストップフィルタリングユニットのうちのいずれか1つのバンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅以下である、 請求項1に記載のバンドストップフィルタ。 【請求項4】 前記誘導性素子(110)はインダクタンス素子を含み、 前記インダクタンス素子の第1端は前記誘導性素子(110)の第1端として、前記インダクタンス素子の第2端は前記誘導性素子(110)の第2端とする、 請求項1から3のいずれか1項に記載のバンドストップフィルタ。 【請求項5】 前記第1共振器(120)、前記第2共振器(130)はそれぞれ弾性表面波共振器、弾性薄膜共振器及び薄膜空洞共振器のうちの少なくとも1つを含む、 請求項2に記載のバンドストップフィルタ。 【請求項6】 少なくとも2つの請求項1から5のいずれか1項に記載のバンドストップフィルタを含み、前記少なくとも2つのバンドストップフィルタが直列接続され、前記少なくとも2つのバンドストップフィルタの共振周波数の差は前記少なくとも2つのバンドストップフィルタのうちの1つのバンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅よりも大きい、 マルチバンドストップフィルタ。 【請求項7】 前記少なくとも2つのバンドストップフィルタにおいて、異なるバンドストップフィルタにおけるバンドストップフィルタリングユニットの数が同じ又は異なる、 請求項6に記載のマルチバンドストップフィルタ。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 入力ポート(A)と、出力ポート(B)と、少なくとも2つの共振器と少なくとも1つの誘導性素子(110)とを含む少なくとも1つのバンドストップフィルタリングユニットを含み、ここで、前記少なくとも2つの共振器は、少なくとも1つの第1共振器(120)及び少なくとも1つの第2共振器(130)を含み、 前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、 前記バンドストップフィルタリングユニットは1つの前記第1共振器(120)、1つの前記第2共振器(130)及び1つの前記誘導性素子(110)を含み、 前記第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)の第1端との間に接続され、前記第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)の第2端との間に接続され、前記第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、 前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とは部分的にオーバーラップするように設けられ、且つ、前記バンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅を、前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とが併せられたストップバンド周波数帯域幅とするように、前記第1共振器(120)の共振周波数と前記第2共振器(130)の共振周波数との差はゼロより大きく且つ前記第2共振器(130)又は第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅以下である、 バンドストップフィルタ。 【請求項2】 前記誘導性素子(110)の共振周波数は前記第1共振器(120)及び前記第2共振器(130)のストップバンド周波数よりも大きい、 請求項1に記載のバンドストップフィルタ。 【請求項3】 前記バンドストップフィルタは少なくとも2つの前記バンドストップフィルタリングユニットを含み、隣接する2つのバンドストップフィルタリングユニットの共振周波数の差はゼロより大きく且つ前記隣接する2つのバンドストップフィルタリングユニットのうちのいずれか1つのバンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅以下である、 請求項1に記載のバンドストップフィルタ。 【請求項4】 前記誘導性素子(110)はインダクタンス素子を含み、 前記インダクタンス素子の第1端は前記誘導性素子(110)の第1端として、前記インダクタンス素子の第2端は前記誘導性素子(110)の第2端とする、 請求項1から3のいずれか1項に記載のバンドストップフィルタ。 【請求項5】 前記第1共振器(120)、前記第2共振器(130)はそれぞれ弾性表面波共振器、弾性薄膜共振器及び薄膜空洞共振器のうちの少なくとも1つを含む、 請求項2に記載のバンドストップフィルタ。 【請求項6】 少なくとも2つの請求項1から5のいずれか1項に記載のバンドストップフィルタを含み、前記少なくとも2つのバンドストップフィルタが直列接続され、前記少なくとも2つのバンドストップフィルタの共振周波数の差は前記少なくとも2つのバンドストップフィルタのうちの1つのバンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅よりも大きい、 マルチバンドストップフィルタ。 【請求項7】 前記少なくとも2つのバンドストップフィルタにおいて、異なるバンドストップフィルタにおけるバンドストップフィルタリングユニットの数が同じ又は異なる、 請求項6に記載のマルチバンドストップフィルタ。」 2 本件補正の目的 (1)本件補正は、本件補正前の請求項1において「前記第1共振器(120)の共振周波数と前記第2共振器(130)の共振周波数との差はゼロより大きく且つ前記第2共振器(130)又は第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅以下である、」とあるのを、「前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とは部分的にオーバーラップするように設けられ、且つ、前記バンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅を、前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とが併せられたストップバンド周波数帯域幅とするように、前記第1共振器(120)の共振周波数と前記第2共振器(130)の共振周波数との差はゼロより大きく且つ前記第2共振器(130)又は第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅以下である、」(下線は変更部分)と変更して、「第1共振器(120)」及び「第2共振器(130)」の周波数特性の関係を限定するものである。 よって、本件補正は、本件補正前の請求項1が有する発明特定事項に限定を付加するものである。 また、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 (2)したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 本件補正の適否 前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に示した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められる。 なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のA~Fに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。 【請求項1】 A 入力ポート(A)と、出力ポート(B)と、少なくとも2つの共振器と少なくとも1つの誘導性素子(110)とを含む少なくとも1つのバンドストップフィルタリングユニットを含み、ここで、前記少なくとも2つの共振器は、少なくとも1つの第1共振器(120)及び少なくとも1つの第2共振器(130)を含み、 B 前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、 C 前記バンドストップフィルタリングユニットは1つの前記第1共振器(120)、1つの前記第2共振器(130)及び1つの前記誘導性素子(110)を含み、 D 前記第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)の第1端との間に接続され、前記第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)の第2端との間に接続され、前記第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、 E 前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とは部分的にオーバーラップするように設けられ、且つ、前記バンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅を、前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とが併せられたストップバンド周波数帯域幅とするように、前記第1共振器(120)の共振周波数と前記第2共振器(130)の共振周波数との差はゼロより大きく且つ前記第2共振器(130)又は第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅以下である、 F バンドストップフィルタ。 (2)引用文献1の記載事項 ア 原査定で引用された国際公開第2011/108289号(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。 (ア)「[0001] 本発明は、弾性波フィルタ装置に関する。特に、本発明は、帯域通過フィルタ部と、帯域通過フィルタ部に接続されている帯域阻止フィルタ部とを備える弾性波フィルタ装置に関する。」 (イ)「[0021] (第1の実施形態) 以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1に示す弾性波フィルタ装置1を例に挙げて説明する。但し、弾性波フィルタ装置1は、単なる例示である。本発明に係る弾性波フィルタ装置は、弾性波フィルタ装置1に何ら限定されない。 [0022] 図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置1の等価回路図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置1における帯域通過フィルタ部10の等価回路図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置1の略図的断面図である。 [0023] 図1に示すように、弾性波フィルタ装置1は、入力端子2と、出力端子3とを備えている。入力端子2と出力端子3との間には、帯域通過フィルタ部10と、第1の帯域阻止フィルタ部20とが直列に接続されている。なお、本実施形態では、帯域通過フィルタ部10が第1の帯域阻止フィルタ部20よりも入力端子2側に配置されているが、帯域通過フィルタ部10は、第1の帯域阻止フィルタ部20よりも出力端子3側に配置されていてもよい。 [0024] 弾性波フィルタ装置1は、通過帯域と、通過帯域よりも高域側に位置する阻止帯域とを有する。具体的には、本実施形態では、阻止帯域は、2.50GHz~2.57GHzである。通過帯域は、2.40GHz~2.48GHzである。通過帯域は、主に帯域通過フィルタ部10により形成されている。阻止帯域は、主に第1の帯域阻止フィルタ部20により形成されている。」 (ウ)「[0027] 図1に示すように、第1の帯域阻止フィルタ部20は、ラダー型のフィルタ部である。第1の帯域阻止フィルタ部20は、入力端子2と出力端子3との間に直列に接続されている直列腕21を有する。具体的には、直列腕21は、図2に示す端子10bと出力端子3との間に接続されている。 [0028] 直列腕21には、少なくともひとつのインダクタL1が設けられている。本実施形態では、具体的には、直列腕21には、ひとつのインダクタL1が設けられている。もっとも、直列腕21には、複数のインダクタが設けられていてもよい。その場合は、複数のインダクタは、直列腕21において直列に接続される。なお、本実施形態では、インダクタL1のインダクタンス値は、3nHである。 [0029] 直列腕21とグラウンド電位との間には、複数の並列腕22a,22bが接続されている。具体的には、本実施形態では、直列腕21とグラウンド電位との間には、2つの並列腕22a,22bが接続されている。並列腕22aは、帯域通過フィルタ部10とインダクタL1との間の接続点と、グラウンド電位との間に接続されている。並列腕22bは、インダクタL1と出力端子3との間の接続点と、グラウンド電位との間に接続されている。並列腕22aには、第1の並列腕共振子P1が設けられている。並列腕22bには、第2の並列腕共振子P2が設けられている。並列腕22aには、グラウンド電位に接続されるグラウンド電極24aが設けられている。並列腕22bには、グラウンド電位に接続されるグラウンド電極24bが設けられている。本実施形態では、並列腕22a,22bは、グラウンド電極24a,24bにより、それぞれ別個にグラウンド電位と接続されている。すなわち、本実施形態では、第1及び第2の並列腕共振子P1,P2は、グラウンド電極24a,24bにより、それぞれ別個にグラウンド電位と接続されている。グラウンド電極24a,24bとが一体として設けられていることにより、並列腕22a,22bが共通化された上でグラウンド電位と接続されていてもよいが、並列腕22a,22bはそれぞれ別個にグラウンド電位と接続されていることが好ましい。並列腕22a,22bがそれぞれ別個にグラウンド電位と接続されていることにより、すなわち、第1及び第2の並列腕共振子P1,P2がそれぞれ別個にグラウンド電位と接続されていることにより、阻止帯域における減衰量を大きくすることができる。 [0030] 本実施形態においては、第1の並列腕共振子P1と第2の並列腕共振子P2とは、弾性波共振子である。具体的には、第1の並列腕共振子P1と第2の並列腕共振子P2とは、弾性表面波共振子である。弾性表面波共振子は、一般的に、圧電基板と、圧電基板上に形成されており、互いに間挿し合っている一対のくし歯電極を有するIDT電極と、IDT電極が設けられている領域の弾性表面波伝搬方向の両側に配置されている反射器とを有する。 [0031] もっとも、第1及び第2の並列腕共振子P1,P2は、弾性表面波共振子でなくてもよい。第1及び第2の並列腕共振子P1,P2は、弾性境界波共振子であってもよいし、バルク波共振子であってもよい。 [0032] 第1の並列腕共振子P1は、共振周波数f1を有する。第2の並列腕共振子P2は、共振周波数f2を有する。第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1と第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2とは、阻止帯域に位置する。第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2は、第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1よりも高い。具体的には、本実施形態では、第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1は、2.5GHzである。第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2は、2.507GHzである。」 (エ)「[0035] 以上説明したように、本実施形態では、相対的に共振周波数が低い第1の並列腕共振子P1のインピーダンス値z1は、相対的に共振周波数が高い第2の並列腕共振子P2のインピーダンス値z2よりも大きい。換言すれば、第1の並列腕共振子P1と第2の並列腕共振子P2とが、f1<f2,z1>z2の関係を満たすように構成されている。すなわち、通過帯域に近い共振周波数を有する第1の並列腕共振子P1のインピーダンス値z1が、通過帯域から遠い共振周波数を有する第2の並列腕共振子P2のインピーダンス値z2よりも大きくされている。本実施形態では、第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1が、第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2と異ならされているため、阻止帯域を広くすることができる。」 (オ)「[0040] 上記第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置1を実施例1として用意した。第1の並列腕共振子P1のインピーダンス値z1と第2の並列腕共振子P2のインピーダンス値z2とをz1<z2の関係とした点以外は実施例1の弾性波フィルタ装置1と同じ構成を有する弾性波フィルタ装置を比較例1として用意した。第1の並列腕共振子P1のインピーダンス値z1と第2の並列腕共振子P2のインピーダンス値z2とをz1=z2の関係とした点以外は実施例1の弾性波フィルタ装置1と同じ構成を有する弾性波フィルタ装置を比較例2として用意した。なお、比較例2の弾性波フィルタ装置では、第1の並列腕共振子P1のインピーダンス値z1が実施例1の弾性波フィルタ装置1と同じ大きさとされており、第2の並列腕共振子P2のインピーダンス値z2が実施例1の弾性波フィルタ装置1よりも大きくされていることにより、第1の並列腕共振子P1のインピーダンス値z1と第2の並列腕共振子P2のインピーダンス値z2とがz1=z2の関係とされている。 [0041] 図4~図6に、実施例1の弾性波フィルタ装置1の周波数特性と、比較例1の弾性波フィルタ装置の周波数特性とを示す。図5は、図4における領域Aを拡大して示したものである。図6は、図4における領域Bを拡大して示したものである。 [0042] 図4及び図5から明らかなように、通過帯域における高域側の挿入損失は、f1<f2,z1>z2の関係である実施例1の弾性波フィルタ装置1の方が、f1<f2,z1<z2の関係である比較例1の弾性波フィルタ装置よりも小さい。実施例1の弾性波フィルタ装置1では、通過帯域に近い共振周波数を有する第1の並列腕共振子P1のインピーダンス値z1が大きいため、通過帯域における高域側の挿入損失が小さくなっている。一方、比較例1の弾性波フィルタ装置では、通過帯域に近い共振周波数を有する第1の並列腕共振子P1のインピーダンス値z1が小さいため、通過帯域における高域側の挿入損失が大きくなっている。また、通過帯域から減衰帯域への移行領域における急峻性は、f1<f2,z1>z2の関係である実施例1の弾性波フィルタ装置1の方が、f1<f2,z1<z2の関係である比較例1の弾性波フィルタ装置よりも高い。 [0043] 図4及び図6から明らかなように、通過帯域よりも高域側に位置する阻止帯域における減衰量は、f1<f2,z1>z2の関係である実施例1の弾性波フィルタ装置1の方が、f1<f2,z1<z2の関係である比較例1の弾性波フィルタ装置よりも大きい。実施例1の弾性波フィルタ装置1では、通過帯域から遠い共振周波数を有する第2の並列腕共振子P2のインピーダンス値z2が小さいため、阻止帯域における減衰量が大きくなっている。一方、比較例1の弾性波フィルタ装置では、通過帯域から遠い共振周波数を有する第2の並列腕共振子P2のインピーダンス値z2が大きいため、阻止帯域における減衰量が小さくなっている。」 (カ)図1 [図:0001420077000001.jpg] 図1によれば、入力端子2は、帯域通過フィルタ部10の入力側に接続され、帯域通過フィルタ部10の出力側はインダクタL1の入力側に接続され、インダクタL1の出力側は出力端子3に接続されている。 また、第1の並列腕共振子P1の第1端は、帯域通過フィルタ部10の出力側とインダクタL1の入力側との間に接続され、第1の並列腕共振子P1の第2端は、グラウンド電極24aに接続される。 さらに、第2の並列腕共振子P2の第1端は、出力端子3とインダクタL1の出力側との間に接続され、第2の並列腕共振子P2の第2端は、グラウンド電極24bに接続される。 (キ)図4 [図:0001420077000002.jpg] (ク)図5 [図:0001420077000003.jpg] (ケ)図6 [図:0001420077000004.jpg] 図6において実施例1として示される特性は、弾性波フィルタ装置1の周波数特性である([0041])から、図6によれば、弾性波フィルタ装置1は、2.5GHz付近に挿入損失が局所的に極大(図6において下向きのピーク)となる周波数があり、その前後の周波数において挿入損失は鋭く変化している。また、2.505GHz~2.51GHzにも、挿入損失が局所的に極大となる周波数があり、その前後の周波数において挿入損失は鋭く変化している。 イ 引用発明 前記アの記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~lに分説し、「分説a」のようにして参照する。 「a 帯域通過フィルタ部と帯域阻止フィルタ部とを備える弾性波フィルタ装置であって、([0001]) b 弾性波フィルタ装置1は、入力端子2と、出力端子3とを備えており、入力端子2と出力端子3との間には、帯域通過フィルタ部10と、第1の帯域阻止フィルタ部20とが直列に接続されており、([0023]) c 弾性波フィルタ装置1は、通過帯域と、通過帯域よりも高域側に位置する阻止帯域とを有し、阻止帯域は、2.50GHz~2.57GHzであり、阻止帯域は、主に第1の帯域阻止フィルタ部20により形成されており、([0024]) d 第1の帯域阻止フィルタ部20は、入力端子2と出力端子3との間に直列に接続されている直列腕21を有し、([0027]) e 直列腕21には、ひとつのインダクタL1が設けられており、([0028]) f1 直列腕21とグラウンド電位との間には、2つの並列腕22a,22bが接続されており、 f2 並列腕22aは、帯域通過フィルタ部10とインダクタL1との間の接続点と、グラウンド電位との間に接続されており、並列腕22bは、インダクタL1と出力端子3との間の接続点と、グラウンド電位との間に接続されており、 f3 並列腕22aには、第1の並列腕共振子P1が設けられており、並列腕22bには、第2の並列腕共振子P2が設けられており、 f4 並列腕22aには、グラウンド電位に接続されるグラウンド電極24aが設けられており、並列腕22bには、グラウンド電位に接続されるグラウンド電極24bが設けられており、 f5 並列腕22a、22bは、グラウンド電極24a、24bにより、それぞれ別個にグラウンド電位と接続されており、([0029]) g 第1の並列腕共振子P1と第2の並列腕共振子P2とは、弾性表面波共振子であり、([0030]) h1 第1の並列腕共振子P1は、共振周波数f1を有し、第2の並列腕共振子P2は、共振周波数f2を有し、第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1と第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2とは、阻止帯域に位置し、 h2 第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2は、第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1よりも高く、第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1は、2.5GHzであり、第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2は、2.507GHzであり、([0032]) i 第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1が、第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2と異ならされているため、阻止帯域を広くすることができ、([0035]) j1 入力端子2は、帯域通過フィルタ部10の入力側に接続され、帯域通過フィルタ部10の出力側はインダクタL1の入力側に接続され、インダクタL1の出力側は出力端子3に接続されており、 j2 第1の並列腕共振子P1の第1端は、帯域通過フィルタ部10の出力側とインダクタL1の入力側との間に接続され、第1の並列腕共振子P1の第2端は、グラウンド電極24aに接続され、 j3 第2の並列腕共振子P2の第1端は、出力端子3とインダクタL1の出力側との間に接続され、第2の並列腕共振子P2の第2端は、グラウンド電極24bに接続され、(図1) k 弾性波フィルタ装置1は、2.5GHz付近に挿入損失が局所的に極大となる周波数があり、その前後の周波数において挿入損失は鋭く変化しており、2.505GHz~2.51GHzにも、挿入損失が局所的に極大となる周波数があり、その前後の周波数において挿入損失は鋭く変化している、(図6) l 弾性波フィルタ装置。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 発明特定事項A(「入力ポート(A)と、出力ポート(B)と、少なくとも2つの共振器と少なくとも1つの誘導性素子(110)とを含む少なくとも1つのバンドストップフィルタリングユニットを含み、ここで、前記少なくとも2つの共振器は、少なくとも1つの第1共振器(120)及び少なくとも1つの第2共振器(130)を含み、」)について (ア)引用発明の「弾性波フィルタ装置1」は、「入力端子2」、「出力端子3」を備えており(分説b)、「入力端子2」、「出力端子3」は、本件補正発明の「入力ポート(A)」、「出力ポート(B)」にそれぞれ相当する。 (イ)引用発明の「インダクタL1」(分説e)は、本件補正発明の「誘導性素子(110)」に相当する。 また、引用発明の「第1の並列腕共振子P1」、「第2の並列腕共振子P2」(分説f3)は、本件補正発明の「第1共振器(120)」、「第2共振器(130)」にそれぞれ相当する。 (ウ)引用発明では、「第1の帯域阻止フィルタ部20」は「直列腕21を有し」(分説d)、「直列腕21には、ひとつのインダクタL1が設けられて」いる(分説e)から、「第1の帯域阻止フィルタ部20」は、「インダクタL1」を含む。 また、「直列腕21とグラウンド電位との間には、2つの並列腕22a,22bが接続され」(分説f1)、「並列腕22aには、第1の並列腕共振子P1が設けられており、並列腕22bには、第2の並列腕共振子P2が設けられて」いる(分説f3)から、「第1の帯域阻止フィルタ部20」は、「第1の並列腕共振子P1」及び「第2の並列腕共振子P2」を含む。 したがって、引用発明では、「第1の帯域阻止フィルタ部20」は、「インダクタL1」、「第1の並列腕共振子P1」及び「第2の並列腕共振子P2」を含む。 したがって、引用発明の「第1の帯域阻止フィルタ部20」は、2つの共振器と1つの「インダクタL1」を含み、2つの共振器は、1つの「第1の並列腕共振子P1」及び1つの「第2の並列腕共振子P2」を含んでいるといえる。 そして、「第1の帯域阻止フィルタ部20」は、これらの回路要素が一体となり、帯域阻止、すなわち、バンドストップのフィルタリングを行うものであるから、バンドストップフィルタリングユニットであるといえ、本件補正発明の「バンドストップフィルタリングユニット」に相当する。 (エ)前記(ア)~(ウ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「入力ポート(A)と、出力ポート(B)と、少なくとも2つの共振器と少なくとも1つの誘導性素子(110)とを含む少なくとも1つのバンドストップフィルタリングユニットを含み、ここで、前記少なくとも2つの共振器は、少なくとも1つの第1共振器(120)及び少なくとも1つの第2共振器(130)を含」む点で一致する。 イ 発明特定事項B(「前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、」)について (ア)引用発明の「グラウンド電極24a」及び「グラウンド電極24b」は、「グラウンド電位に接続される」ものである(分説f4)から、その電位はグラウンド電位に固定されているものと認められ、また、電極は、接続のための一端であるといえるから、「グラウンド電極24a」及び「グラウンド電極24b」は、固定電位端であるといえる。 そして、「グラウンド電極24a」を第1の固定電位端、「グラウンド電極24b」を第2の固定電位端と称することは任意であるから、引用発明の「グラウンド電極24a」、「グラウンド電極24b」は、本件補正発明の「第1固定電位端」、「第2固定電位端」にそれぞれ相当する。 (イ)引用発明では、「入力端子2は、帯域通過フィルタ部10の入力側に接続され、帯域通過フィルタ部10の出力側はインダクタL1の入力側に接続され」(分説j1)「第1の並列腕共振子P1の第1端は、帯域通過フィルタ部10の出力側とインダクタL1の入力側との間に接続され」る(分説j2)。 すなわち、引用発明では、「入力端子2」、「帯域通過フィルタ部10」及び「インダクタL1」が、この順に接続されており、「帯域通過フィルタ部10」と「インダクタL1」との間に、「第1の並列腕共振子P1」の第1端が接続されている。 そして、「帯域通過フィルタ部10」と「インダクタL1」との間は、「帯域通過フィルタ部10」の前段である「入力端子2」と「インダクタL1」との間であるともいえるから、引用発明では、「入力端子2」と「インダクタL1」との間に、「第1の並列腕共振子P1」の第1端が接続されているといえる。 また、引用発明では、「第1の並列腕共振子P1の第2端は、グラウンド電極24aに接続され」る(分説j2)。 したがって、引用発明では、「第1の並列腕共振子P1」の第1端は「入力端子2」と「インダクタL1」との間に接続され、「第1の並列腕共振子P1」の第2端は、「グラウンド電極24a」に接続されている。 (ウ)引用発明では、「第2の並列腕共振子P2の第1端は、出力端子3とインダクタL1の出力側との間に接続され、第2の並列腕共振子P2の第2端は、グラウンド電極24bに接続され」る(分説j3)。 (エ)前記(ア)~(ウ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され」る点で一致する。 ウ 発明特定事項C(「前記バンドストップフィルタリングユニットは1つの前記第1共振器(120)、1つの前記第2共振器(130)及び1つの前記誘導性素子(110)を含み、」)について 引用発明の「第1の帯域阻止フィルタ部20」は、1つの「第1の並列腕共振子P1」、1つの「第2の並列腕共振子P2」及び1つの「インダクタL1」を含んでいる。(前記ア(ウ)) したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記バンドストップフィルタリングユニットは1つの前記第1共振器(120)、1つの前記第2共振器(130)及び1つの前記誘導性素子(110)を含」む点で一致する。 エ 発明特定事項D(「前記第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)の第1端との間に接続され、前記第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)の第2端との間に接続され、前記第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、」)について 引用発明では、「第1の並列腕共振子P1」の第1端は「入力端子2」と「インダクタL1」の入力側との間に接続され、「第1の並列腕共振子P1」の第2端は、「グラウンド電極24a」に接続され(前記イ(イ))、「第2の並列腕共振子P2」の第1端は、「出力端子3」と「インダクタL1」の出力側との間に接続され、「第2の並列腕共振子P2」の第2端は、「グラウンド電極24b」に接続される(前記イ(ウ))。 また、「インダクタL1」の入力側、出力側は、「インダクタL1」の第1端、第2端であるといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)の第1端との間に接続され、前記第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)の第2端との間に接続され、前記第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され」る点で一致する。 オ 発明特定事項E(「前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とは部分的にオーバーラップするように設けられ、且つ、前記バンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅を、前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とが併せられたストップバンド周波数帯域幅とするように、前記第1共振器(120)の共振周波数と前記第2共振器(130)の共振周波数との差はゼロより大きく且つ前記第2共振器(130)又は第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅以下である、」)について (ア)引用発明では、「阻止帯域は、2.50GHz~2.57GHz」であり(分説c)、これは、「第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1」を「第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2」と「異なら」せることで、「阻止帯域を広く」したものである(分説i)。 共振器や共振回路を単独で帯域阻止フィルタとして用いた場合に、当該共振器や共振回路の共振周波数の付近に阻止帯域を有するフィルタ特性が得られることは技術常識である(例えば国際公開第2009/099248号の段落[0020]、[0021]、図2、3を参照。)から、引用発明において、「第1の並列腕共振子P1」の「共振周波数f1」を「第2の並列腕共振子P2」の「共振周波数f2」と異ならせることで「阻止帯域」を広くするとは、「共振周波数f1」を中心周波数とする「第1の並列腕共振子P1」の阻止帯域(以下「共振子P1阻止帯域」という。)と、「共振周波数f2」を中心周波数とする「第2の並列腕共振子P2」の阻止帯域(以下「共振子P2阻止帯域」という。)を統合した1つの「阻止帯域」を生じさせることを意味するものと認められる。また、「第1の並列腕共振子P1」単独での帯域阻止フィルタは、「共振子P1阻止帯域」では信号の通過を阻止し、「共振子P1阻止帯域」以外では信号を通過させるものであり、「第2の並列腕共振子P2」単独での帯域阻止フィルタは、「共振子P2阻止帯域」では信号の通過を阻止し、「共振子P2阻止帯域」以外では信号を通過させるものであると解されるから、「共振子P1阻止帯域」と「共振子P2阻止帯域」との間に隙間の帯域があると、「第1の並列腕共振子P1」と「第2の並列腕共振子P2」を組み合わせて用いても、当該隙間の帯域では信号が通過するものとなり、「共振子P1阻止帯域」と「共振子P2阻止帯域」を統合した1つの「阻止帯域」が生じないから、「共振子P1阻止帯域」と「共振子P2阻止帯域」は当然重複する部分があるものと認められる。 このことは、引用発明において、「第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1は、2.5GHzであり、第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2は、2.507GHz」である(分説h2)ところ、「弾性波フィルタ装置1は、2.5GHz付近に挿入損失が局所的に極大となる周波数があり、その前後の周波数において挿入損失は鋭く変化しており、2.505GHz~2.51GHzにも、挿入損失が局所的に極大となる周波数があり、その前後の周波数において挿入損失は鋭く変化して」おり(分説k)、「共振周波数f1」付近で挿入損失が大きくなる周波数特性と、「共振周波数f2」付近で挿入損失が大きくなる周波数特性を統合した周波数特性となっていると認められる点とも整合する。 (イ)引用発明では、「阻止帯域」は「第1の帯域阻止フィルタ部20により形成」されている(分説c)から、「阻止帯域」は、「第1の帯域阻止フィルタ部20」が備えるものである。 また、帯域阻止フィルタにより形成される阻止帯域は、電気信号の通過を阻止、すなわちストップする周波数バンドであるから、「阻止帯域」は、ストップバンド周波数帯域であるといえる。 したがって、引用発明の「阻止帯域」は、「第1の帯域阻止フィルタ部20」が備えるストップバンド周波数帯域であり、「第1の帯域阻止フィルタ部20」のストップバンド周波数帯域であるといえる。 同様に、「共振子P1阻止帯域」は、「第1の並列腕共振子P1」のストップバンド周波数帯域であり、「共振子P2阻止帯域」は、「第2の並列腕共振子P2」のストップバンド周波数帯域であるといえる。 (ウ)引用発明では、「共振子P1阻止帯域」と「共振子P2阻止帯域」は重複する部分がある(前記(ア))から、「共振子P1阻止帯域」の幅と「共振子P2阻止帯域」の幅とは部分的にオーバーラップするように設けられているといえる。 (エ)引用発明では、「阻止帯域」は、「共振子P1阻止帯域」と「共振子P2阻止帯域」が統合されたものである(前記(ア))から、「阻止帯域」の幅は、「共振子P1阻止帯域」の幅と「共振子P2阻止帯域」の幅が併せられたものとなっていると認められる。 (オ)引用発明では、「第1の並列腕共振子P1の共振周波数f1は、2.5GHzであり、第2の並列腕共振子P2の共振周波数f2は、2.507GHz」である(分説h2)から、「第1の並列腕共振子P1」の共振周波数と「第2の並列腕共振子P2」の共振周波数の差は、0.007GHzであり、ゼロより大きい。 また、引用発明では、「共振周波数f1」は「共振子P1阻止帯域」の中心周波数であり、「共振周波数f2」は「共振子P2阻止帯域」の中心周波数である(前記(ア))から、「共振子P1阻止帯域」と「共振子P2阻止帯域」は重複する部分がある(前記(ア))ことを踏まえると、「共振子P1阻止帯域」の幅をB1、「共振子P2阻止帯域」の幅をB2とすると、「共振周波数f1」と「共振周波数f2」の差は、(B1+B2)/2より小さい。よって、「共振周波数f1」と「共振周波数f2」の差は、B1とB2の内の大きい方よりも小さくなることは明らかである。 したがって、引用発明では、「第1の並列腕共振子P1」の共振周波数と「第2の並列腕共振子P2」の共振周波数の差は、「共振子P1阻止帯域」の幅又は「共振子P2阻止帯域」の幅以下であると認められる。 (カ)前記(ア)~(オ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とは部分的にオーバーラップするように設けられ、且つ、前記バンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅を、前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とが併せられたストップバンド周波数帯域幅とするように、前記第1共振器(120)の共振周波数と前記第2共振器(130)の共振周波数との差はゼロより大きく且つ前記第2共振器(130)又は第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅以下である」点で一致する。 カ 発明特定事項F(「バンドストップフィルタ」)について 引用発明の「弾性波フィルタ装置」は、「帯域阻止フィルタ部」を備える(分説a)から、帯域阻止のフィルタ特性を有するものであり、バンドストップフィルタであるといえる。 したがって、引用発明の「弾性波フィルタ装置」は、本件補正発明の「バンドストップフィルタ」に相当し、本件補正発明と引用発明とは、「バンドストップフィルタ」である点で一致する。 キ 前記ア~カによれば、本件補正発明と引用発明とは 「入力ポート(A)と、出力ポート(B)と、少なくとも2つの共振器と少なくとも1つの誘導性素子(110)とを含む少なくとも1つのバンドストップフィルタリングユニットを含み、ここで、前記少なくとも2つの共振器は、少なくとも1つの第1共振器(120)及び少なくとも1つの第2共振器(130)を含み、 前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)との間に接続され、前記少なくとも1つの第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、 前記バンドストップフィルタリングユニットは1つの前記第1共振器(120)、1つの前記第2共振器(130)及び1つの前記誘導性素子(110)を含み、 前記第1共振器(120)の第1端は前記入力ポート(A)と前記誘導性素子(110)の第1端との間に接続され、前記第1共振器(120)の第2端は第1固定電位端に接続され、前記第2共振器(130)の第1端は前記出力ポート(B)と前記誘導性素子(110)の第2端との間に接続され、前記第2共振器(130)の第2端は第2固定電位端に接続され、 前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とは部分的にオーバーラップするように設けられ、且つ、前記バンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅を、前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とが併せられたストップバンド周波数帯域幅とするように、前記第1共振器(120)の共振周波数と前記第2共振器(130)の共振周波数との差はゼロより大きく且つ前記第2共振器(130)又は第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅以下である、 バンドストップフィルタ」である点で一致し、相違点がない。 (4)判断 前記(3)のとおり、本件補正発明と引用発明とは相違点がないから、本件補正発明は、引用発明と同一であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)効果についての判断 本件補正発明は引用発明と同一であるから、引用発明は本件補正発明と同一の効果を奏することが明らかであるため、本件補正発明の効果は格別のものではない。 (6)請求人の主張についての判断 ア 請求人は、以下の主張をしている。 「引用文献1は、弾性波フィルタ装置に関する。引用文献1の段落[0035]の内容からすると、オフィスアクションに示されているように、第1の平行アーム共振子P1の共振周波数と第2の平行アーム共振子P2の共振周波数との差が各共振子の阻止帯域幅よりも大きければ、2つの不連続な阻止帯域を発生させることができる。 しかし、補正後の請求項1によれば、第1の共振器の停止帯域幅と第2の共振器の停止帯域幅とが重なり、第1の共振器の共振周波数と第2の共振器の共振周波数とが近似するが等しくない。そこで、第1の共振器の阻止帯域幅と第2の共振器の阻止帯域幅を合わせて1つの大きな阻止帯域幅とし、帯域阻止フィルタリングユニットの阻止帯域幅を広くしている。 また、引用文献1は、第1の平行腕共振器P1の共振周波数と第2の平行腕共振器P2の共振周波数とを異ならせることにより、停止帯域を広げることが可能であることを教示しているが、引用文献1における広げ方は広範かつ漠然としたものであり、本願発明の技術的解決手段は、2つの共振周波数(第1の共振器の共振周波数と第2の共振器の共振周波数)を、いずれか一方よりも大きな1つの共振周波数に統合することを特定したものである。したがって、引用文献1は、本願請求項1の発明に係る、少なくとも次の技術的特徴を教示していない。 「前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とは部分的にオーバーラップするように設けられ、且つ、前記バンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅を、前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とが併せられたストップバンド周波数帯域幅とするように、前記第1共振器(120)の共振周波数と前記第2共振器(130)の共振周波数との差はゼロより大きく且つ前記第2共振器(130)又は第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅以下である」(以下、本願発明の特徴という。)。 引用文献2は、弾性波フィルタに関するものであり、引用文献2は上記技術的特徴も教示していない。 補正後の本願請求項1における、本願発明の特徴に係る上記技術的解決手段により、フィルタは小型携帯機器の適用要件を満たし、停止帯域内の信号に対する抑圧効果を向上させることができる。その上、これらの技術的特徴は一般に知られていない。したがって、補正後の本願請求項1には進歩性があるものと思料いたします。」(審判請求書7~8頁) イ しかしながら、前記(3)オ(ア)のとおり、引用発明において、「第1の並列腕共振子P1」の「共振周波数f1」を「第2の並列腕共振子P2」の「共振周波数f2」と異ならせることで「阻止帯域」を広くするとは、「共振周波数f1」を中心周波数とする「第1の並列腕共振子P1」の阻止帯域(「共振子P1阻止帯域」)と、「共振周波数f2」を中心周波数とする「第2の並列腕共振子P2」の阻止帯域(「共振子P2阻止帯域」)を統合した1つの「阻止帯域」を生じさせることを意味するものと認められ、「共振子P1阻止帯域」と「共振子P2阻止帯域」は当然重複する部分があるものと認められる。 そして、前記(3)オのとおり、引用発明は、本件補正発明の発明特定事項Eの構成を備えている。 また、請求人は、本願発明の技術的解決手段は、2つの共振周波数(第1の共振器の共振周波数と第2の共振器の共振周波数)を、いずれか一方よりも大きな1つの共振周波数に統合することを特定したものであると主張しているが、本願の明細書の【0021】に「第1共振器120と第2共振器130との共振周波数が併せられて、バンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅を広げることができる」との記載はあるものの、当該記載は、第1共振器120の共振周波数と第2共振器130の共振周波数を1つの共振周波数に統合することを意味するものとは認められず、2つの共振周波数をいずれか一方よりも大きな1つの共振周波数に統合することは、特許請求の範囲にも、明細書にも記載されているとは認められない。なお、仮に、上記の主張が、本願発明では、第1の共振器による阻止帯域と第2の共振器による阻止帯域が1つの阻止帯域に統合される点を主張したものであるとすると、引用発明は、「共振子P1阻止帯域」と「共振子P2阻止帯域」を統合した1つの「阻止帯域」を生じさせるものであることは、上述のとおりである。 ウ したがって、請求人の主張は採用できない。 (7)小括 以上によれば、本件補正発明は、特許法29条1項3号に規定する発明である引用発明と同一であるから、同項の規定に違反し、特許を受けることができない。 また、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 4 本件補正についてのむすび 前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示した本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められる。 第4 原査定の概要 原査定の概要は、以下のとおりである。 1.(新規性)この出願の請求項1、2、4及び5に係る発明は、以下の文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の請求項1、2、4及び5に係る発明は、以下の文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 この出願の請求項3~7に係る発明は、以下の文献1に記載された発明及び文献3に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 文献1.国際公開第2011/108289号 文献3.特開2009-296167号公報(周知技術を示す文献) 第5 文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された文献1(この審決における引用文献1)の記載事項は、前記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。 第6 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]3で独立特許要件を検討した本件補正発明から、「前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とは部分的にオーバーラップするように設けられ、且つ、前記バンドストップフィルタリングユニットのストップバンド周波数帯域幅を、前記第1共振器(120)のストップバンド周波数帯域幅と前記第2共振器(130)のストップバンド周波数帯域幅とが併せられたストップバンド周波数帯域幅とするように、」との発明特定事項を削除したものである(前記第2[理由]2を参照)。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3に示したとおり、引用発明と同一であるから、同様に対比すると本願発明と引用発明とは全ての発明特定事項で一致する。 したがって、本願発明も、引用発明と同一であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に規定する発明である引用発明と同一であるから、同項の規定に違反し、特許を受けることができない。 また、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-003151

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