商標異議申立
2023-900287
エム、エムラテン、ラテン
- 審判番号
- 2023-900287
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-031583
- 登録番号
- 6746994
- 請求日
- 2023年12月28日
- 審決日
- 2024年12月02日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】陪伴成▲長▼▲創▼意▲設▼▲計▼(杭州)有限公司
- 【権利者代理人】亀山 夏樹
- 【異議申立人】“ドクター マーチン” インターナショナル トレーディング ゲーエムベーハー
- 【異議申立人代理人】弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所
- 【異議申立人】“ドクター マーチン” マーケティング ゲーエムベーハー
- 【異議申立人代理人】弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 馬場 秀敏
- 分類
- T1651.261-Y (W25) / T1651.262-Y (W25) / T1651.263-Y (W25) / T1651.271-Y (W25) / T1651.272-Y (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項16号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第16号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6746994号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6746994号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6746994号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和5年3月24日に登録出願、第25類「被服,セーター,ワイシャツ類及びシャツ,ズボン,靴及び運動用特殊靴,ティーシャツ,ドレス,ジャージー製運動用衣服及びジャージー製運動用特殊衣服,コート,フード付きのプルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ」を指定商品として、同年10月5日に登録査定、同月20日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する国際登録第1386379号商標(以下「引用商標」という。)は、「MARTIN」の欧文字を書してなり、2018年(平成30年)7月26日に国際商標登録出願(事後指定)、第25類「Footwear, namely shoes and boots except golf shoes.」を指定商品として、令和2年4月17日に設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第16号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)申立人と申立人ブランドの周知著名性について
申立人は、世界中で周知著名な靴・ブーツのブランド「ドクターマーチン(Dr.Martens)」(以下「申立人ブランド」という。)に関連する商標を、日本を含む世界中で保有している。
申立人ブランドは、1945年に、ドイツ人医師のクラウス・マルテンス博士及びヘルベルト・フンクによって開発された、エアークッションの効いた靴底(通称バウンシングソール)や、靴底を一周する黄色の縫い目(ステッチ)を特徴とした靴・ブーツのブランドである(甲3)。近年の日本の裁判例では、この靴底を一周する黄色の縫い目(黄色のウェルトステッチ)について、申立人が継続的、独占的に使用してきたものであるとして、不正競争防止法上の周知な商品等表示として認められている(東京地判 令和2年(ワ)第31524号)。
申立人ブランドは、英国を拠点としつつ、イタリア、ドイツ、米国など製品を販売する国際的なブランドであるが、日本においても、51の直営店及びオンラインにて全国規模で販売されている(甲4)。
申立人ブランドの製品は、上述のデザインに加え、耐久性が強く、耐熱・耐寒・耐摩耗性に優れていることから、世界中で人気を集め、日本においても、おしゃれなファッションアイテムの一つとして、若者を中心に人気を得ている。
申立人ブランドは、1960年に最初のモデル「1460」が誕生し、2020年に60周年を迎えた(甲5)。
現に、日本での2019年3月期の売上高は、60億3,700万円、前年比42%拡大と発表されている(甲6)。
世界全体では、2022年3月期のグローバル売上高は、前期比18%増の9億830万ポンド(約1,507億円)と報道されている(甲7)。
これらの数字からも、申立人ブランドが、周知著名なブランドであることが分かる。
(2)商標法第4条第1項第11号又は同項第15号
本件商標は、別掲のとおり、欧文字のMを略六角形状の図形で囲み、その下部に、欧文字の「M.latin」を配した構成よりなり、本件商標中、その図形部分と欧文字の「M.latin」は、外観上、取引上一体不可分に結合しているとはいい難く、視覚上分離できる。
したがって、本件商標中、「M.latin」の欧文字部分は、独立して商取引の対象となるものである。
そこで、当該欧文字部分についてみると、当該欧文字部分は、引用商標と「M」「A」「T」「I」「N」の文字を共通にする。特に、語頭の「M」及び末尾の「tin」が共通している点で、本件商標と引用商標は、全体として外観上、近似した印象を与える。
次に、引用商標からは、「マーティン」又は「マーチン」の称呼が生じる。
本件商標の欧文字部分は造語であり、特定の称呼は存在しないところ、その構成文字中、3文字目の「l」が2文字目の「.」と相まって記号のように看取できることから、欧文字と捉えられる「M」「atin」の部分から「マーティン」又は「マーチン」の称呼が生ずると考えられる。
それゆえ、本件商標は、引用商標と共通の称呼を生じさせる。
最後に、引用商標からは、「ツバメ科の数種の鳥の総称、(特に)イワツバメ」、「男性の名」、又は申立人ブランドの周知著名性から「ドクターマーチンブランド」の観念が生じる(甲8)。そして、本件商標の欧文字部分は、その引用商標と近似した文字構成と引用商標又は申立人ブランドの周知著名性より、需要者は、「ドクターマーチン」の観念が想起されると考えられる。
本件商標と引用商標は、類似群「22A01」の範疇に属する商品を指定しており、両者の指定商品が同一又は類似である。
上述の申立人の周知著名性を考慮すると、本件商標が、特に、その指定商品「履物」に使用された場合、取引者、需要者は、本件商標から、申立人及びそのブランドを想起すると考えられる。
以上より、本件商標と引用商標は、外観、観念及び称呼において、互いに相紛れるおそれがある類似の商標と解されるべきものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第16号
本件商標は、欧文字の「latin」を含むところ、該文字は、名詞として「1(古代ローマの)ラテン語、2(古典時代以後の)ラテン語、3 ラティウム 古代ローマ人、4(1)ラテン民族(2)ラテンアメリカ人」等の意味を、形容詞として「1(1)ラテン民族の(2)ラテン系民族の、中南米諸国民の、2 ローマカトリック教会の、3 ラティウム人の 4 ラテン文字の、ローマ字の」の意味を有する(甲9)。
また、中南米諸国に由来するファッションは、「ラテンファッション」の呼称で我が国においても親しまれている(甲10)。
このような事実から、本件商標が、その指定商品に使用された場合、これに接する需要者は、「latin」の文字から、その商品が、「中南米諸国で製造された被服、履物」、「中南米諸国でデザインされた被服、履物」、「中南米諸国に関連する被服、履物」等であると認識するといえるから、本件商標が、中南米諸国以外の国で製造・デザインされた被服、履物等に使用される場合、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
現に、過去にも、「LATIN」の欧文字を普通の書体で表してなる商標が、商品の品質を表示するものとして、拒絶されている(甲11)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
申立人は、ドイツ国の法人であり、申立人ブランドは、1960年に最初のモデル「1460」が誕生し、2020年に60周年を迎えた(甲3、甲5)。
申立人ブランドの我が国での2019年3月期の売上高は、60億3,700万円、前年比42%拡大と発表され(甲6)、世界全体では、2022年3月期のグローバル売上高は、前期比18%増の9億830万ポンド(約1,507億円)と報じられている(甲7)。
イ しかしながら、申立人の提出に係る証拠を参照すると、「ドクターマーチン」、「DR.MARTENS」又は「Dr.Martens」の文字及び靴の画像がウェブサイトの写し(甲3~甲5)に掲載されていることは認められるものの、これらに引用商標が表示されていること及び引用商標が申立人の取扱いに係る商品に使用されていることは確認できない。
また、申立人の業務に係る商品について、我が国及び外国において引用商標の使用を開始した時期、使用期間、使用地域等、その商品の売上高、シェア等の販売実績及び営業規模、並びに引用商標に係る広告宣伝の費用、方法、回数及び期間等については、その事実を客観的、かつ、具体的に把握することができる証拠は何ら提出されていない。
ウ そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、「M」様の白抜きを内包する略六角形状の黒色図形、及び、その下部に配した「M.latin」の文字からなるところ、上部の図形部分と下部の文字部分とは、視覚的に分離して看取されるというのが相当であり、その文字部分から「エムラテン」の称呼を生ずる。
そして、本件商標の文字部分は、同じ書体、同じ大きさ、同間隔をもってまとまりよく一連に表してなるものであり、その構成文字全体から生じる「エムラテン」の称呼も一連によどみなく称呼し得るものであり、その全体として親しまれた意味合いを想起させることのない造語として認識されるというのが相当である。
また、本件商標を構成する図形部分は、特定の事物等を表すものと認識されるというべき事情は見いだせないから、これより特定の称呼及び観念を生じないものである。
したがって、本件商標からは、「エムラテン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標は、「MARTIN」の欧文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「マーティン」又は「マーチン」の称呼が生じ、当該文字は、我が国において特定の意味合いを理解させる程に親しまれた語とはいえないから、特定の観念は生じない。
したがって、引用商標からは、「マーティン」又は「マーチン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観においては、その全体において図形の有無の相違があり、本件商標の文字部分と引用商標との比較においても、「.」の有無や2文字目以降の欧文字が「la」であるか「AR」であるかなど、構成文字が異なることから、両者は、外観上、判然と区別し得るものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「エムラテン」の称呼と引用商標から生じる「マーティン」及び「マーチン」とは、音数及び構成音の差異を有し、両者をそれぞれ一連に称呼しても、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。
そして、観念においては本件商標及び引用商標は、ともに特定の観念を生じないから、観念上、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において区別できることから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似する商品を含むとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていると認めることはできないものである。
また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、その類似性の程度は高いとはいえない。
そうすると、たとえ本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性があり、その需要者を共通にする場合があるとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはないというのが相当である。
してみれば、本件商標は、その権利者が本件商標をその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、上記(2)で認定のとおり、その文字部分の全体をもって特定の意味合いを有しない一体不可分の造語とみるのが相当である。
そして、申立人の提出に係る証拠によれば、たとえ「latin」の文字が名詞として「ラテン語、古代ローマ人、ラテン民族、ラテンアメリカ人」等の意味を、形容詞として「ラテン民族の、中南米諸国民の、ラティウム人の」等の意味を有するものであり(甲9)、また、「ラテンファッション」の表示の下、「ブラジル直輸入のフィットネスウェアとコロンビアジーンズ」、又は「ブラジル編」との記載がある(甲10)としても、本件商標の上記構成において、「latin」の文字部分が具体的な商品の品質を表すものとして認識されるというべき事実は見いだせない。
以上からすると、本件商標は、その指定商品との関係において、「latin」の文字部分が商品の品質を具体的に表示するものと直ちに認識、理解されるものではないから、商品の品質について誤認を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第16号のいずれにも該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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