商標異議申立
2023-900213
チャンドラーバッツ、チャンドラー、バッツ
- 審判番号
- 2023-900213
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-103043
- 登録番号
- 6721923
- 請求日
- 2023年09月26日
- 審決日
- 2024年07月18日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ラ ポテンシア リミテッド ライアビリティー カンパニー
- 【権利者代理人】柴田 雅仁
- 【異議申立人】デイヴィッド チャンドラー
- 【異議申立人代理人】杉村 憲司
- 【異議申立人代理人】杉村 光嗣
- 【異議申立人代理人】門田 尚也
- 【異議申立人代理人】長嶺 晴佳
- 【異議申立人】グループ オーセンティック、エルエルシー
- 【異議申立人代理人】杉村 憲司
- 【異議申立人代理人】杉村 光嗣
- 【異議申立人代理人】門田 尚也
- 【異議申立人代理人】長嶺 晴佳
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T1651.22 -Y (W0918252835) / T1651.23 -Y (W0918252835)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項8号商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第8号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6721923号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6721923号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6721923号商標(以下「本件商標」という。)は、「CHANDLER BATS」の文字を横書きしてなり、2022年(令和4年)3月15日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、令和4年9月6日に登録出願、第9類「野球用ヘルメット,ソフトボール用ヘルメット」、第18類「バックパック,運動用バッグ」、第25類「被服,ハット(帽子),その他の帽子,着圧スリーブ(運動用特殊衣服),野球用スライディングショーツ,ソフトボール用スライディングショーツ」、第28類「野球ボール,ソフトボール,野球用バット,ソフトボール用バット,野球用グローブ,バッティング用グローブ,ソフトボール用グローブ,野球用ミット,ソフトボール用ミット,野球用ミット,運動用具,バット用グリップ,野球バッド用・ソフトボールバッド用バッグ,野球バッド用・ソフトボールバッド用ケース,ひじ当て(運動用具),手甲プロテクター(運動用具),手首保護サポーター(運動用具),すね当て及び脚当て(運動用具)」及び第35類「野球ボール・ソフトボール・野球用バット・ソフトボール用バット・野球用グローブ・バッティング用グローブ・ソフトボール用グローブ・野球用ミット・ソフトボール用ミット・野球用ヘルメット・野球用ミット・運動用具・バット用グリップ・運動用バッグ・野球バッド用バッグ及びソフトボールバッド用バッグ・野球バッド用ケース及びソフトボールバッド用ケース・ひじ当て(運動用具)・手甲プロテクター(運動用具)・手首保護サポーター(運動用具)・すね当て及び脚当て(運動用具)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,バックパックの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服・ハット(帽子)・その他の帽子・着圧スリーブ(運動用特殊衣服)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同5年6月20日に登録査定、同年7月31日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第8号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
(1)申立人「デイヴィッド・チャンドラー」及び「Chandler」バットについて
申立人であるデイヴィッド・チャンドラー(以下「チャンドラー氏」という。)は、元々高級家具のデザイナー・職人であったが、2009年、米国ペンシルベニア州イースト・ノーリントンでバット製造専門会社を設立し、「Chandler」バットの製造を開始した。
チャンドラー氏が製造する「Chandler」バットは、そのほとんどがメープル(楓)製であり、メープル材は、硬くて反発係数が高いというホームランバッターに適した性質を有する。また、軽く耐久性にも優れており、使用による凹みが少ないという特徴も有する。このような特性・特徴に加え、チャンドラー氏独自の高い技術の効果も相侯って、高密度・高反発で折れにくいバットが完成した。
2012年ニューヨーク・ヤンキースに移籍してきた有名選手が、ヤンキースのチームメートに「このバットはまるでゴルフボールを金属バットでかっとばしたみたいによく飛ぶ」と紹介したことがきっかけで、「Chandler」バットは、メジャーリーガーの間において口伝えで瞬く間に広まる。設立後わずか3年で、チャンドラー氏の「Chandler」バットは、メジャーリーグ市場のうち20パーセントを占めるまでに成長する。そして、「Chandler」バット愛用者には、シーズンMVP受賞者やホームランダービーで2連覇を達成した者、首位打者等のトップメジャーリーガーが名を連ねることになる。
このように、チャンドラー氏による「Chandler」バットは、会社設立の2009年からわずか数年で、メジャーリーグにおいて、そして、その他の下部リーグ、大学・高校野球の選手や野球愛好家の間で、チャンドラー氏が製造する、チャンドラー氏自身の名前を冠したブランドのバットであるとして周知・著名となった。
なお、野球競技者・野球愛好家の多い我が国においても、上述のとおり多くのトップメジャーリーガーの間で「Chandler」バットが設立後数年で広まったことにより、プロ野球選手や学生の野球選手、そして、多くの野球愛好家に広く知られるところとなり、本件商標の登録出願時の2022年には、本件指定商品・指定役務の分野、取引者・需要者の間で周知・著名となっていた。
さらに、その後、「Chandler」バットは、2023年度メジャーリーグでホームラン王となった有名選手が、2023年シーズンより使用を開始したバットであるとして、その周知性・著名性は、本件指定商品・指定役務の分野、取引者・需要者の間で更に高まった(甲3)。
(2)本件商標の基礎出願である米国出願(第97312938号)について
本件商標の基礎出願である米国出願第97312938号は、2023年1月24日に出願公告されたが、その後、申立人であるチャンドラー氏によって情報提供がなされ、当該情報提供の結果、米国特許商標庁において当該商標の審査が担当審査官に差し戻された(甲5)。担当審査官は、2023年3月1日付けの商標審査基準副長官室からの情報提供メモランダム(甲6)の指令に基づき、2023年4月4日付けで、最初の拒絶理由通知(甲3)を通知した(甲5)。拒絶の理由は以下の2点である。
ア 情報提供者(チャンドラー氏)の提出に係る証拠が検討された結果、チャンドラー氏の名前(すなわち、「Chandler」の語)が著名であり、また、チャンドラー氏が「Chandler」バットの創業者であり、商標中に使用される「Chandler」の語は、チャンドラー氏を一義的、かつ、明確に指称していると認識されることを理由に、「CHANDLER」の語からなる当該商標がその商品・役務に使用されると、チャンドラー氏と何等かの関係があると誤認されると判断され、当該商標の出願人(ラ・ポテンシア・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)による登録は認められないと判断されている(甲3)。
イ 審査官は、チャンドラー氏が木製バット業界で相当程度周知・著名であり、一般需要者は当然のごとく、チャンドラー氏と当該商標に係る商品との間に関連性があると考えると判断し、チャンドラー氏の書面による承諾が提出されることを要求している(甲3)。
なお、申立人であるチャンドラー氏が、当該米国出願の出願人(すなわち、本件商標の権利者「ラ・ポテンシア・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー」、以下「ラ・ポテンシア社」という。)に上記承諾書を提供する意図はない。
以上のとおり、本件商標の基礎出願である米国出願第97312938号は、チャンドラー氏との関係を誤認させるものであり、また、チャンドラー氏の承諾を得たものではない、との理由で拒絶となっており、当事者であるチャンドラー氏に承諾書の提供の意図がないことから、結果的に登録となる見通しはない。
ウ なお、ラ・ポテンシア社は、2023年10月4日付けで、上記拒絶理由通知に応答したが、担当審査官は、米国出願第97312938号に係る商標(すなわち、本件商標と同一の商標)に関係する訴訟が、現在、チャンドラー氏とラ・ポテンシア社の間で係属中であることを理由に、米国出願第97312938号の審査を、上記訴訟が終了するまで中止すると通知した(甲7)。つまり、ラ・ポテンシア社の上記応答にもかかわらず、2023年4月4日付けで通知した拒絶理由を維持することを決定している。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、その基礎出願がなされ、その構成文字である「CHANDLER」の語を姓とするチャンドラー氏本人の出身地である米国において、基礎となる米国出願が、上述(2)に記載の理由で拒絶を受けているものである。チャンドラー氏本人の出身地である米国において本人の承諾がないため登録が許可されない商標出願を基礎出願とする本件商標は、その出願の経緯において社会的相当性を著しく欠くものであるといえ、我が国においても、その登録を認めることは、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないことは明らかである。また、チャンドラー氏の本国である米国において、本人に承諾の意図がないため、人格権保護の観点から登録が認容されない商標と同一の商標を我が国において登録を認容することは、国際信義に反するものであるともいえる。
すなわち、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、「Chandler」バットの創始者である申立人デイヴィッド・チャンドラーの姓(ファミリーネーム)と同一であり、上述のとおり、「Chandler」バットは、本国の米国のみならず、野球の盛んな我が国において、本件指定商品・指定役務の業界、取引者・需要者の間で周知・著名であり、また、当該バットのブランド名である「Chandler」が、創業者であるチャンドラー氏の名前であることも広く認識されているところである。チャンドラー氏が「Chandler」バットの製造を2009年に開始してから数年(少なくとも、設立3年後には「Chandler」バットは、メジャーリーグ市場の20パーセントを占めていた。)で、「Chandler」バットは、チャンドラー氏製造のバットとして広く認識されるに至っており、本件商標の登録出願時には、本件指定商品・指定役務の分野、取引者・需要者の間で周知・著名となっていた(甲3)。また、現在に至るまで継続して周知・著名である。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に規定する「他人の氏名の著名な略称」に該当することが明らかである。また、本件商標の登録について、「他人」に該当するチャンドラー氏から承諾が得られていないことも、上述のとおりである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当し、人格権保護の観点から登録を認めるべきでない。
3 当審の判断
(1)「デイヴィッド・チャンドラー」及び「Chandler」バットの周知・著名性について
申立人は、申立人であるデイヴィッド・チャンドラー(チャンドラー氏)が2009年、米国ペンシルベニア州イースト・ノーリントンでバット製造専門会社を設立するとともに「Chandler」バット)の製造を開始した旨、及び「Chandler」バットが、上記会社設立後わずか数年で、メジャーリーグ及びその他の下部リーグ、大学・高校野球の選手や野球愛好家の間で、チャンドラー氏が製造するバットとして周知・著名となった旨、並びに当該バットのブランド名である「Chandler」が、チャンドラー氏の名前であるとして広く認識されている旨主張する。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠は、そのほとんどが、本件商標の基礎出願である米国出願第97312938号(以下「基礎出願」という。)の米国における審査過程において提出又は通知された書類であるところ、これらにおいて、「Chandler」バットが、申立人(チャンドラー氏)の業務に係る商品であることを客観的に示す証拠はなく、また、「Chandler」バットについての、我が国及び外国における売上高などの販売実績、広告宣伝の方法、規模及び費用等を客観的に把握できる証拠もないことから、我が国及び外国における、申立人の業務に係る「Chandler」バットの販売規模や広告宣伝規模を客観的に把握することができない。
また、「Chandler」が、チャンドラー氏の名前を表すものとして、我が国及び外国の需要者の間において広く認識されているとする具体的な証拠の提出もない。
そうすると、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、チャンドラー氏及び「Chandler」バットが、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできず、また、「Chandler」の文字が、チャンドラー氏の略称として広く知られていたものと認めることもできない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、基礎出願は、チャンドラー氏本人の出身地である米国において、同氏の承諾がないため登録が許可されないと判断されたものであるから、そのような出願を基礎とする本件商標を登録出願することは、その出願の経緯において社会的相当性を著しく欠くものであり、我が国においてその登録を認めることは、商標法の予定する秩序に反し、また、国際信義にも反する旨主張する。
しかしながら、たとえ基礎出願が米国において拒絶理由を通知されたものであるとしても、上記(1)のとおり、申立人の提出に係る証拠によっては、チャンドラー氏及び「Chandler」バットが需要者の間に広く知られているとは認められないものである。
そうすると、本件商標が、前記1のとおり「CHANDLER BATS」の文字からなるものであって、その構成中に「CHANDLER」の文字を有するとしても、これに接する需要者が、直ちにチャンドラー氏又は「Chandler」バットを認識するとはいえないし、本件商標が我が国においてどのような経緯で登録出願されたのかも不明であることからすれば、直ちに本件商標が、その登録出願の経緯において社会的相当性を欠くものとまではいうことができず、また、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、国際信義に反するものということもできない。
そして、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、又は社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見当たらない。
さらに、本件商標は、他の法律によってその商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくは国民を侮辱するものでもない。
以上を踏まえると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であるとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第8号該当性について
申立人は、本件商標が「Chandler」バットの創始者であるチャンドラー氏の姓(ファミリーネーム)と同一であり、「Chandler」バットは、本国の米国のみならず、野球の盛んな我が国において、本件指定商品・指定役務の業界、取引者・需要者の間で周知・著名であり、また、当該バットのブランド名である「Chandler」が、創業者であるチャンドラー氏の名前であることも広く認識されているから、本件商標は、「他人の氏名の著名な略称」に該当する旨主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、「Chandler」の文字が、チャンドラー氏の略称として広く認識されているものとは認められないことから、当該文字が、チャンドラー氏の略称であって著名なものとはいえない。
そうすると、本件商標がその構成中に「CHANDLER」の文字を有するとしても、これが他人の氏名の著名な略称を含むものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第8号に違反してされたものとはいえず、他に同法43の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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