商標異議申立
2023-900195
フィットビーイング
- 審判番号
- 2023-900195
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-000172
- 登録番号
- 6715471
- 請求日
- 2023年08月31日
- 審決日
- 2024年06月28日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】深▲せん▼小▲ちぇ▼科技有限公司
- 【異議申立人】グーグル エルエルシー
- 【異議申立人代理人】稲葉 良幸
- 【異議申立人代理人】田中 克郎
- 【異議申立人代理人】石田 昌彦
- 【異議申立人代理人】右馬埜 大地
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T1651.261-Y (W14) / T1651.262-Y (W14) / T1651.263-Y (W14) / T1651.271-Y (W14)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6715471号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6715471号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6715471号商標(以下「本件商標」という。)は、「Fitbeing」の文字を標準文字で表してなり、令和5年1月4日に登録出願、第14類「時計,時計バンド,時計鎖,ストップウオッチ,時計側(時計の部品),電気時計,ボクシングなどの各種スポーツ用のストップウォッチ,計時用具,時計用化粧箱,カレンダー機能のついた電子卓上時計」を指定商品として、同年6月16日に登録査定され、同年7月7日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、以下の(1)ないし(4)とおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続している。
(1)国際登録第1094793号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:FITBIT
国際商標登録出願日:2011年(平成23年)5月25日
設定登録日:平成24年12月14日
指定商品・指定役務:第9類及び第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
(2)国際登録第1117233号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:FITBIT
国際商標登録出願日:2012年(平成24年)3月1日
設定登録日:平成26年5月16日
指定商品:第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
(3)国際登録第1218353号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:FITBIT
国際商標登録出願日:2013年(平成25年)12月20日
優先権主張日:2013年(平成25年)12月3日(United States of America)
設定登録日:平成27年6月19日
指定商品・指定役務:第9類及び第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
(4)登録第6104677号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:FITBIT(標準文字)
登録出願日:平成29年6月29日
設定登録日:平成30年12月7日
指定商品・指定役務:第9類、第10類、第14類、第42類、第44類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
なお、引用商標1ないし引用商標4をまとめていうときは、以下「引用商標」という。
3 登録異議の申立ての理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の記載に当たっては、「甲第1号証」を「甲1」のように表記する。
(1)引用商標の周知・著名性について
ア 申立人及びフィットビット社の概要について
申立人は、人工知能、オンライン広告、検索エンジン技術、クラウドコンピューティング、コンピュータ、ソフトウェア、量子コンピューティング、電子商取引、家庭用電化製品に重点を置いている米国のテクノロジー企業である。
引用商標は、ワイヤレス対応の身体装着可能な、最先端の技術を用いた商品、例えば、いわゆるスマートウォッチ(腕時計型携帯情報端末)(決定注:本決定においては、以下、単に「腕時計型携帯情報端末」という。)、歩数計・心拍数・睡眠の質、階段の昇り具合など、人間の活動量をモニタリングし、測定する機能を備えたアクティビティトラッカー、及びスマートスケール(ワイヤレス対応の体重計、体組成計)、並びにそれら装置とともに用いるソフトウェア、さらにそれらに関連する各種サービスに使用される商標である(甲3)。
米国の調査会社IDCの調査によれば、2015年の第3四半期における、世界のウェアラブルデバイスの出荷台数は約2,100万台であり、そのシェア1位は「FITBIT」の470万台であった(米国アップル社のAppleWatchは2位)(甲4)。
2021年1月、申立人は米国の家庭用電化製品及びフィットネス関連商品の製造を行うフィットビット,インコーポレイテッド(以下「フィットビット社」という。)を買収した(甲5)。
フィットビット社は、2008年以来、ワイヤレス対応の身体装着可能な、最先端の技術を用いた商品、例えば、腕時計型携帯情報端末や、歩数計、心拍数、睡眠の質、階段の昇り具合など、人間の活動量をモニタリングし、測定する機能を備えたアクティビティトラッカー、スマートスケール(ワイヤレス対応の体重計、体組成計)、さらに、それら装置とともに用いるソフトウェアの製造、販売を行ってきた。
2008年、フィットビット社はTechCrunch50で次点に選ばれ、2009年には米国のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー、アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで毎年1月に開催される電子機器の業界向け見本市)で「イノベーション受賞者」と「ヘルス&ウェルネス部門最優秀賞」の両方に選ばれる快挙を成し遂げた。
2016年、フィットビット社はその年の最も革新的な米国企業50社中37位にランクインした。また同年、フィットビット社は、コンサルティング会社デロイトが行ったランキング「Fast 500 North America」の46位にランクインした。
フィットビット社は、本国アメリカのみならず、日本を含む海外でも目覚ましい成長を遂げている。
イ 引用商標がフィットビット社の基幹ブランドであること
フィットビット社が販売するほとんど全ての製品に、引用商標が製品名の一部として使用されていることから、引用商標は、フィットビット社の主力製品である腕時計型携帯情報端末、アクティビティトラッカー、スマートスケール及びそれらのソフトウェア、関連するサービスのブランド名として周知、著名となっている。
特に、リストバンド型アクティビティトラッカーや腕時計型携帯情報端末は、日本を含む世界中で最も人気のある製品の一つである。
ウ 「FITBIT」がリストバンド型アクティビティトラッカーや腕時計型携帯情報端末として、最も人気のある製品の一つであること
我が国においては、大手総合小売店や、大手家庭電化用品販売店で取り扱われている。
腕時計型携帯情報端末又はリストバンド型アクティビティトラッカーである引用商標を付した商品は、新聞や雑誌、インターネット記事で大きく取り上げられ、高い知名度を誇っている。
エ 「FITBIT」の紹介記事等
引用商標を付した商品である、腕時計型携帯情報端末又はリストバンド型アクティビティトラッカーは、新しいモデルが発表されるたびに、有力メディアによるインターネット記事において紹介されており(甲6~甲10)、着実に市場に浸透していった。
上記で説明したように、単に引用商標を付した腕時計型携帯情報端末又はリストバンド型アクティビティトラッカー等といえども、多数の機種、モデルが存在することから、これら引用商標を付した商品の各機種、モデルを比較し、対象としたモデルの性能、機能の解説を内容とする、引用商標を付した商品を特集した記事も存在する(甲11、甲12)。
引用商標を付した商品である、腕時計型携帯情報端末又はリストバンド型アクティビティトラッカーは、腕時計型携帯情報端末としての機能が高いのはもちろんのこと、アクティビティトラッカーとしての機能に大変優れていることが着目されて、健康増進、フィットネス、ダイエット等の美容に高い興味を持っている需要者間で人気の商品となっており、引用商標を付した商品であるリストバンド型アクティビティトラッカーや腕時計型携帯情報端末を用いた、健康増進、フィットネス、ダイエット等の美容法がインターネットを通じて紹介されている(甲13、甲15)。
オ まとめ
このように、本件商標の登録出願前から、引用商標は、腕時計型携帯情報端末、アクティビティトラッカー、及びスマートスケール(ワイヤレス対応の体重計、体組成計)、並びにそれら装置とともに用いるソフトウェア、さらにそれらに関連する各種サービスの名称として、我が国の一般消費者等の需要者、商品の販売者等の取引者の間で広く知られており、我が国を含む世界的に周知又は著名な商標としての地位を獲得していた事実は疑いようがないのであり、本件商標の査定時においても継続してその周知著名性を維持していた。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標の類似性について
(ア)称呼について
本件商標は、構成文字に相応して「フィットビーイング」の称呼が生じる。
これに対して、引用商標は、構成文字に相応して「フィットビット」の称呼が生じる。
本件商標より生ずる「フィットビーイング」と引用商標より生ずる「フィットビット」の称呼とを比較するに、両者は、語頭音において、「フィットビ」の音が共通しており、「フィ」と「ビ」が、ともに強い響きの音であるばかりでなく、これらの音にアクセントが置かれてより強く、明瞭に発音される。これに対して、語尾音においては、前者が「ーイング」、後者が「ット」となっているところ、語尾音は他の音に比べて明確さを欠く発声をもって発音されるのが通例であり、「ー(長音)イング」と「ット」の音は、ともに前の「ビ」の音に吸収されて余韻として残る程度の極めて弱い音となって、明確に聴取し難く、その差異は一層薄れがちとなる。
両称呼は、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音を含む大部分の音である「フィットビ」を共通にしており、これらの音は印象の薄い上記語尾音とは異なって、強く響く音であるばかりでなく、アクセントが置かれて明瞭に強く発音されるので、両商標をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が極めて近似したものとなり、互いに聞き誤るおそれがある。
(イ)観念について
本件商標は、特定の観念を有しない造語というべきものであるところ、「FIT」の文字は、「合う」「適する」の意味のほか、「体の調子が良い」「健康な」の語義を有するものとして我が国でも馴染まれているといえる(ジーニアス英和辞典)。そして、英単語「FITNESS」にも通じており、取引界においては、「健康」を表すための造語を形成するための接頭語としても使用されている場合も少なくない。
そのため、本件商標からは、「何か、健康に関するもの」のような、漠然とした観念が生じる場合もあるといえる。
これと同様に、引用商標についても、特定の観念を有しない造語というべきものであるところ、「FIT」の文字は、「合う」「適する」の意味のほか、「体の調子が良い」「健康な」の語義を有するものとして我が国でも馴染まれているといえる(前掲書)。そして、英単語「FITNESS」にも通じており、取引界においては、「健康」を表すための造語を形成するための接頭語としても使用されている場合も少なくない。
そのため、引用商標からは、「何か、健康に関するもの」のような、漠然とした観念が生じる場合もあるといえる。
そうすると、本件商標と引用商標からは、ともに「何か、健康に関するもの」の観念を想起、連想する場合も少なくなく、この点において相紛らわしいといえる。
(ウ)外観について
本件商標と引用商標は、その構成する文字の前半である「F」「I」「T」「B」において共通しており、外観上も近似したものとなっている。
(エ)まとめ
そこで、異なる時間・場所を想定した隔離観察を行った場合、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念において相紛らわしいものであり、腕時計として利用されることの多い、腕時計型携帯情報端末やリストバンド型アクティビティトラッカーの利用者は、老若男女を含む一般消費者であることから、その注意力は決して高いものではなく、需要者等の通常の注意力のみをもってしては、本件商標と引用商標とを区別することは必ずしも容易ではない。
以上を総合すると、本件商標と引用商標とは、彼此紛れるおそれの高い類似の商標である。
イ 本件商標と引用商標の指定商品の類似性について
本件商標の指定商品「時計,時計バンド,時計鎖,ストップウオッチ,時計側(時計の部品),電気時計,ボクシングなどの各種スポーツ用のストップウォッチ,計時用具,時計用化粧箱,カレンダー機能のついた電子卓上時計」は、引用商標4の指定商品「時計用具,時計,ストップウォッチ,時計バンド」と同一又は類似のものである。
ウ 小括
よって、本件商標は、引用商標4との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標との類似性について
本件商標より生ずる称呼「フィットビーイング」と引用商標から生ずる称呼「フィットビット」は、印象の薄い語尾において、弱い音である「ー(長音)イング」と「ット」というわずかな違いがあるのみであり、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音において、強く響く音で、アクセントが置かれて明瞭に発音される「フィットビ」を共通にしているので、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が極めて近似したものとなり、互いに聞き誤るおそれがある。
両商標は、いずれも造語であるところ、「健康な」等の馴染まれた観念を有する「FIT」を語頭部に配している関係で、「何か、健康に関するもの」のような、共通した観念が生じる場合も少なくない。
本件商標は引用商標との関係においては、語頭部を含む構成文字の大半を共通にしており、外観上も紛れるおそれがある。
よって、本件商標と引用商標の類似性は高いといわなければならない。
イ 引用商標の周知、著名性及び独創性
引用商標に係る「FITBIT」の文字が、申立人の商標として国際的に著名であり、我が国においても、需要者、取引者間で広く知られるに至っている事実は前述したとおりである(甲6~甲15)。
引用商標の指定商品との関係では、「何か、健康に関するもの」の意味合いを示唆するものであるところ、既成語とは異なり、引用商標のごとき造語商標は、一般に、高い顕著性を有しているのであり、十分に独創的であるといえる。
ウ 本件商標と引用商標の指定商品の関連性の程度
引用商標の指定商品は、概ね「腕時計型携帯情報端末、歩数計・心拍数・睡眠の質、階段の昇り具合など、人間の活動量をモニタリングし、測定する機能を備えたアクティビティトラッカー、スマート/スケール(ワイヤレス対応の体重計、体組成計)、ヘッドフォン、並びに、それら装置とともに用いるソフトウェア」が含まれており、特に、「腕時計型携帯情報端末」「リストバンド型アクティビティトラッカー」との関係で周知又は著名なものとなっている。
引用商標4は、「時計用具,時計,ストップウォッチ,時計バンド」にも使用される商標である。
本件商標の指定商品は「時計,時計バンド,時計鎖,ストップッウオッチ,時計側(時計の部品),電気時計,ボクシングなどの各種スポーツ用のストップウォッチ,計時用具,カレンダー機能のついた電子卓上時計」である。
腕時計型携帯情報端末が、腕時計と同じ要領で手首に装着して用いられる器具であること、主たる機能の一つとして、時計としての(時刻確認・計測)機能を備えていることからすれば、「腕時計型携帯情報端末」と本件商標の指定商品は、関連性の非常に高い商品といえる。
引用商標4の指定商品「時計用具,時計,ストップウォッチ,時計バンド」と本件商標の指定商品は、同一の商品といえる。
エ 需要者・取引者の共通性その他の取引の実情
申立人の行った調査によれば、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、申立人の商品と同じ「腕時計型携帯情報端末、アクティビティトラッカー、それらのソフトウェア」の製造、販売を行っており、腕時計型携帯情報端末、アクティビティトラッカーの機能にとって大変重要な位置を占める「アプリケーションソフトウェア」について本件商標を使用している(甲16)。
本件商標権者の取り扱う商品、役務は、「腕時計型携帯情報端末、アクティビティトラッカー、それらのソフトウェア、それらに関連するサービス」であり、いずれも申立人とフィットビット社の提供する「腕時計型携帯情報端末、アクティビティトラッカー、それらのソフトウェア、それらに関連するサービス」と競合する商品、役務ばかりであり、本件商標権者の取引者・需要者は、「腕時計型携帯情報端末、アクティビティトラッカー、それらのソフトウェア、それらに関連するサービス」の利用者となり、両商標の取引者・需要者は完全に同じとなる。
申立人及びフィットビット社とは何らの経済的・組織的関係を有しない本件商標権者により、申立人及び関連会社であるフィットビット社の周知著名商標「FITBIT」と相紛らわしい本件商標を用いて、引用商標の指定商品と関連性の高い商品である「時計,時計バンド,時計鎖,ストップウオッチ,時計側(時計の部品),電気時計,ボクシングなどの各種スポーツ用のストップウォッチ,計時用具,時計用化粧箱,カレンダー機能のついた電子卓上時計」が提供された場合、あたかも、申立人又は関連会社により提供される前記商品であるかのごとく、誤認を生じさせるおそれがある。
本件商標権者の需要者等である腕時計として利用されることの多い、腕時計型携帯情報端末やリストバンド型アクティビティトラッカーの利用者は、老若男女を含む一般消費者となり、その注意力の程度は決して高くはない。
オ 事業の多角化の可能性
腕時計型携帯情報端末やリストバンド型アクティビティトラッカーは、腕時計と同じ要領で手首に装着して用いられ、時計としての(時刻確認・計測)機能に加えて、受話・メッセージ受信・音楽再生といったスマートデバイスの機能、活動量計(アクティビティトラッカー)としての機能も備えた商品となっており、腕時計に代わる商品として選択されることの多い商品といえる。このため、近時においては、従来型の腕時計とともに、腕時計型携帯情報端末の製造、販売を行う、事業者が複数存在する(甲17、甲18)。
ある一つの事業者が単独で、従来型の腕時計と腕時計型携帯情報端末の双方を開発・販売を行うような事業環境が、取引界において既に存在しているのであり、将来において、申立人自らがこれら商品の販売事業を独自に展開することは想像に難くない。
カ まとめ
以上の事情を総合的に勘案すれば、本件商標は、これに接する需要者・取引者に対して、引用商標を連想させ、商品の出所について、あたかも、申立人又は申立人と経済的、組織的に関係する者により提供される商品であるかのごとく誤認を生じさせ、その登録を認めた場合には、引用商標の持つ顧客吸引力ヘのただ乗り(いわゆるフリーライド)や、その希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を免れない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人が2021年に買収した関連会社であるフィットビット社が製造販売する商品「fitbit」は、大型ディスプレイ、Googleのスマート機能、詳細な健康管理機能などを備える、腕時計型携帯情報端末であり、かつ、心拍数を記録する多用途のフィットネスリストバンド(以下「申立人商品」という。)である(甲3の1、甲5、甲6)。
(イ)申立人商品の我が国での販売開始は、2013年である(甲8)。
(ウ)SBクリエイティブ社のウェブサイト「ビジネス+IT」の記事によれば、「米IDCが12月に発表した調査によれば、2015年第3四半期の世界ウェアラブルデバイス市場の出荷台数は2100万台で、シェア1位はフィットビットの470万台となりました(アップルは2位で390万台)。」の記載がある(甲4)。
なお、我が国における申立人商品の販売実績や市場シェアなどを具体的に示す証拠はない。
(エ)申立人商品は、インターネット上の記事情報(2015年以降)において商品紹介記事が掲載されている(甲6~甲15)。
そして、上記記事中、2019年9月19日付けの「東洋経済オンライン」によれば、「「Fitbit」はアップルウォッチと何が違うのか」の見出しの下、「腕時計型端末「スマートウォッチ」の品ぞろえが充実してきた。最も有名で売れているのはアメリカのアップルが展開する「アップルウォッチ」だが、女性からじわりと人気を集めているのが同じくアメリカのフィットビットだ。日本ではまだメジャーとはいえないブランドだが、欧米では人気が高く、日本でも9月24日に主力となる新製品を投入し、知名度向上に躍起だ。」の記載がある(甲8)。
また、2021年8月27日の「CNET Japan」によれば、「フィットビット、国内でも「Fitbit Charge 5」を発売へ」の見出しの下、「・・・健康管理&フィットネストラッカー「Fitbit Charge 5」の先行予約を開始した。」、「・・・一部小売店のオンラインショップにて事前購入できるほか、アマゾン、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、上新電機、腕時計本舗、neel、TIMETIME、TicTACでの先行予約を開始する。」の記載がある(甲10)。
イ 以上によれば、申立人商品は、世界における市場シェアが高いウェアラブルデバイスであり、2013年以降に我が国でも継続して販売され、インターネット等を通じて商品紹介等もされている実情がある。
しかしながら、提出された証拠からは、我が国における申立人商品の販売実績や市場シェア、また、メディアを利用した積極的な広告宣伝実績などの存在は具体的に把握できず、さらに、2019年時点において我が国においてメジャーとはいえないブランドとも評されている。
そうすると、申立人商品「fitbit」及び引用商標「FITBIT」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、商品「腕時計型携帯情報端末」や「フィットネスリストバンド」などのウェアラブルデバイスと関連して、一部需要者の間においてある程度認知されていた可能性は考えられるものの、我が国における需要者の間に広く認識されていた商標と認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「Fitbeing」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ大きさ及び書体で、字間なく、横一列にまとまりよく一連一体の語を表してなるが、これは辞書等に掲載された成語ではなく、我が国で特定の意味を表すものとして親しまれている文字ともいい難い。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「フィットビーイング」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
イ 引用商標
引用商標4は、「FITBIT」の欧文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は辞書等に掲載された成語ではなく、我が国で特定の意味を表すものとして親しまれている文字ともいい難く、かつ、上記(1)のとおり、引用商標は、我が国における需要者の間に広く認識されていた商標ではない。
そうすると、引用商標4は、その構成文字に相応して、「フィットビット」の称呼を生じるが、特定の観念は生じないものというのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標4との類否について
本件商標と引用商標4を比較すると、外観においては、語頭「Fitb(FITB)」の構成文字を共通にするとしても、末尾の「ing」と「IT」の文字の差異を有し、文字数も8文字と6文字と異なるものであるから、当該差異により、判然と区別し得るものである。
次に、称呼においては、語頭の「フィットビ」の音を共通にするとしても、語尾の「ーイング」と「ット」の差異を有し、8音と6音というさほど長いとはいえない音数において、上記音の差異が全体の称呼に与える影響は小さいものとはいえず、語調、語感が明らかに異なることから、明瞭に聴別できるものである。
さらに、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標4は、観念において比較できないとしても、外観において判然と区別し得るものであり、称呼においても明瞭に聴別できるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標4とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標4の指定商品が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標(いずれも「FITBIT」の文字からなるもの)は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
また、本件商標と「FITBIT」の標準文字からなる引用商標4とは、上記(2)のとおり、非類似の商標であり、引用商標4と同じ構成文字からなる引用商標1ないし引用商標3についても同様に、非類似の商標であるから、類似性の程度は高いとはいえない。
そうすると、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との関連性の程度、需要者の共通性の程度などを考慮しても、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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