商標異議申立
2023-900193
リアリティキャプチャー、リアリティ、キャプチャー
- 審判番号
- 2023-900193
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-138675
- 登録番号
- 6712309
- 請求日
- 2023年08月30日
- 審決日
- 2024年03月21日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ESRIジャパン株式会社
- 【異議申立人】株式会社 StockGraphy
- 【異議申立人代理人】Authense弁理士法人
- 【異議申立人】エピック・ゲームズ・インコーポレーテッド
- 【異議申立人代理人】田中 克郎
- 【異議申立人代理人】稲葉 良幸
- 【異議申立人代理人】廣中 健
- 【異議申立人代理人】小林 奈央
- 【異議申立人代理人】橋 沙耶香
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 阿曾 裕樹
- 分類
- T1651.25 -Y (W094142) / T1651.271-Y (W094142) / T1651.222-Y (W094142)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6712309号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6712309号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6712309号商標(以下「本件商標」という。)は、「Reality Capture」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年12月5日に登録出願、第9類、第41類及び第42類に属する別掲1のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同5年6月7日に登録査定され、同月28日に設定登録されたものである。
2 申立人が引用する商標
(1)申立番号01に係る登録異議申立人(以下「申立人1」という。)が引用する商標は、「Reality Capture」の欧文字からなり、米国のEpic Games社が、その業務に係る商品「画像処理用コンピュータプログラム」等の名称として日本を含めた全世界で使用し、日本国内においても周知・著名であると主張されているものである。
(2)申立番号02に係る登録異議申立人(以下「申立人2」という。)が引用する商標は、「RealityCapture」の欧文字からなる商標及び別掲2のとおりの構成からなる商標であり、スロバキアにおいて2016年に開発、発売された三次元コンピュータグラフィックを生成するための「フォトグラメトリ」用コンピュータソフトウェアの商標として全世界で使用され、周知著名であると主張されているものである。
以下、上記申立人をまとめて「申立人」と、「RealityCapture」の商標を「引用商標」という。
3 登録異議の申立ての理由
(1)申立番号01に係る登録異議の申立ての理由
申立人1は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第17号証(以下「甲01-○」のように表記する。)を提出した。
ア 引用商標について
(ア)Epic Games社の著名性
Epic Games社は1991年に設立されたアメリカの企業である。本社はノースカロライナ州ケーリーにあり、世界各地に40以上のオフィスがある、インタラクティブエンターテイメントのリーディングカンパニーであり、3Dエンジン技術のプロバイダーである。
また、同社は3.5億以上のアカウントと25億以上のフレンド接続数を持つ、世界最大級のゲームのひとつである「フォートナイト」を運営している。また、著名なリアルタイム3D制作ツールであるUnreal Engineも開発し、コンピュータソフトウェアやビデオゲーム業界において、世界レベルで大変著名な企業である(甲01-2)。
(イ)引用商標の周知著名性
引用商標は、もともとはソフトウェア開発会社であるCapturing Realityが開発してきたものであるが、同社を米国のEpic Games社が2021年に買収したことから、その後は同社が全世界で販売等を手掛けている。
そして、「Reality Capture」は、米国のEpic Games社が販売・提供するコンピュータソフトウェアの名称として我が国内で広く認知されている(甲01-3~甲01-17)。
イ 本件商標と引用商標の同一・類似性
本件商標は標準文字からなる「Reality Capture」である。また、引用商標も「Reality Capture」であるから、両商標は同一である。
ウ 本件商標と引用商標の指定商品(役務)の類似性
本件商標は、3Dコンピュータグラフィック用コンピュータソフトウェアやコンピュータによるデジタル画像処理、電子計算機プログラムの設計・作成又は保守などを指定するものである。
一方で、引用商標は画像処理用ソフトウェアの名称として広く使用されているから、引用商標が使用されている商品(役務)と本件商標の指定商品(役務)は類似関係にある。
エ 商標法第4条第1項第10号該当性
(ア)引用商標が広く認識されていること
上記のとおり、引用商標がEpic Games社が販売等する画像処理用ソフトウェアとして日本を含む世界中において著名性を獲得している事実がある。よって、引用商標は、我が国で広く認識されている。
(イ)本件商標と引用商標の類似性
上記のとおり、本件商標と引用商標は同一である。また、引用商標が使用されている商品(役務)と本件商標の指定商品(役務)は類似関係にある。
(ウ)小括
以上より、本件商標は、著名な米国のEpic Games社が販売等する画像処理ソフトウェアとして広く認識されている引用商標と類似関係にあり、また引用商標が使用されている商品(役務)と本件商標の指定商品(役務)は類似関係にある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
オ 商標法第4条第1項第15号該当性
(ア)本件商標と引用商標の類似性の程度
上記のとおり、本件商標と引用商標は同一である。
(イ)引用商標の周知性の程度
上記のとおり、引用商標は、Epic Games社が販売等する画像処理用ソフトウェアとして日本を含む世界中において著名性を獲得している事実がある。
(ウ)商品(役務)の関連性の程度
上記のとおり、本件商標の指定商品(役務)と、引用商標が使用されている商品(役務)は類似関係にある。
したがって、本件商標に係る指定商品(役務)と、引用商標が使用されている商品(役務)は、高い関連性を有している。
(エ)Epic Games社の著名性について
上記のとおり、Epic Games社はコンピュータソフトウェアやビデオゲーム業界において、世界レベルで大変著名な企業である。
(オ)小括
以上より、本件商標は、Epic Games社が販売等する画像処理ソフトウェアとして広く認識されている引用商標と同一であり、本件商標の指定商品(役務)と引用商標が使用されている商品(役務)は類似関係にあり、かつ、Epic Games社はコンピュータソフトウェア等の分野において世界的に大変著名な企業である。
すなわち、引用商標は、Epie Games社が提供するソフトウェアの名称として我が国を含む世界で周知であるから、これと同じ本件商標を商標権者が指定商品(役務)に使用した場合には、Epic Games社が販売等する商品と出所の混同を引き起こす可能性が極めて高い。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
カ 商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標は、周知商標である引用商標と同一である。また、引用商標は、本件商標の登録出願時には既に全世界で販売等がされ周知となっており、本件商標は、周知商標である引用商標を不正の目的をもって使用するものと推認される。
同製品を販売等するEpic Games社が、本件商標権者に対し、周知商標である引用商標と同一又は類似の商標を商標登録する許可をした事実は確認できない。
すなわち、本件商標は、周知商標である引用商標が日本で商標登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせる等の不正の目的をもって先取り的に出願したものに該当すると考えられるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
キ Epic Games社と申立人1の関係について
申立人1は、Epic Games社より、引用商標に係るソフトウェアの正規販売代理店として認定されている(甲01-17)。
こういった点からも、引用商標がEpic Games社が提供するソフトウェアの名称として、我が国で著名であるということが分かる。
(2)申立番号02に係る登録異議の申立ての理由
申立人2は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号又は同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第11号証(枝番号を含む。以下「甲02-○」のように表記する。)を提出した。
ア 引用商標の周知著名性について
(ア)引用商標は「RealityCapture」の欧文字からなるものである。引用商標の使用態様は、申立人2のウェブサイトやその製品の販売店のうちの一社のウェブサイトなどで確認できる(甲02-2の1、2)。
引用商標は、後述するとおり、本件商標の登録出願前から、申立人2の取扱いに係る三次元コンピュータグラフィック生成用コンピュータソフトウェア、いわゆる「フォトグラメトリ」用のソフトウェアについて、我が国を含む世界中で継続して使用された結果、申立人2の業務に係る商品及び役務を表す商標として、日本を含む世界中の需要者、取引者の間に広く認識されている周知著名な商標である。
フォトグラメトリとは、「デジタルカメラ等で多面的に撮影した複数のデジタル写真をコンピュータで画像解析し、3次元コンピュータグラフィックス等を得るプロセスを指す言葉として用いられる」(甲02-2の3)。
(イ)引用商標は、2016年2月にスロバキア共和国のCapturing Reality社によって開発、リリースされ、今日では世界中のコンピュータグラフィックデザイナーをはじめとするエンジニア、プロフェッショナルの現場で使用されるフォトグラメトリ・ソフトウェア、すなわち、仮想空間内において使用される三次元モデル生成用コンピュータソフトウェア(以下、「本件ソフトウェア」という。)の名称であり、商標である。本件ソフトウェアは、写真やレーザースキャンのデータから美しく正確な3Dモデルを自動で作成できるというものであり、「対象物を重複して撮影した複数の写真データから、カメラの位置(距離、角度)を推定して3Dモデルを生成するフォトグラメトリソフトウェア。写真解析、レーザースキャン、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、無人航空機=通称ドローン)測量に対応。他のフォトグラメトリソフトウェアと比較しても高品質な3Dモデルを生成できる」ものである。本件ソフトウェアが使用される分野は、ビデオゲームの開発、映画制作、測量、エンジニアリング、建築、VR・メタバースの制作など多岐にわたるものである。本件ソフトウェア「RealityCapture」は、これらの多様な分野のコンピュータソフトウェア開発者、コンピュータグラフィックデザイナー、エンジニア、その他の専門家やコンテンツクリエイターに使用されている(甲02-2の4、甲02-3の1)。
(ウ)申立人2は、2021年3月にCapturing Reality社を買収し、以後、全世界で大々的に本件ソフトウェアの販売を行っている。日本においても、当該買収は大々的に報道され(甲02-2の5、6)、本件ソフトウェアの高い性能が専門家の間で話題を呼び、本件ソフトウェアの価格を減額したこととも相まって、日本のユーザーの間にも急速に導入が広まっている。
2021年8月27日には、株式会社StockGraphyが申立人2との間で本件ソフトウェアの販売代理店契約を締結し、同社が日本市場向けに本件ソフトウェアを販売し、その使用方法や関連する3D技術などの情報発信を行うウェブサイト「BEGIN3D.com」をローンチしたことが報道され、その後、2022年12月14日までの間に、同社や本件ソフトウェアに関する報道がされた(甲02-3の1~11)。
2023年以降も株式会社StockGraphyは、本件ソフトウェアに関して様々な宣伝広告活動や、販売促進のための「期間限定お値引き」等のキャンペーンを企画し、実施してきた(甲02-3の12~14)。
(エ)また、本件ソフトウェアは、エンジニア、コンピュータグラフィックデザイナー、ソフトウェア開発者及びコンテンツ制作者の間でもその使用方法や効果について話題となっており、インターネットや様々なソーシャルメディアプラットフォーム上においても、本件商標の登録出願日前から数多くの言及がされている。「エンジニアに関する知識を記録・共有するためのサービス」とされるエンジニア、プロフェッショナル向けの電子掲示板「Qiita」に、2018年3月16日から2022年12月24日の間にアップロードされた本件ソフトウェアに関する言及や記事がある(甲02-4の1~16)。
さらに、インターネット上の記事や雑誌には、本件ソフトウェアについて言及、解説するものがある(甲02-4の17~19、甲02-5)。
(オ)これらの資料に照らせば、引用商標は2016年の本件ソフトウェアのローンチと同時に使用が開始され、我が国においても、遅くとも2018年にはフォトグラメトリの技術を利用して行う3次元データの作成に興味を有するコンピュータグラフィックデザイナー、ソフトウェア開発者、コンピュータエンジニア等の間で話題になり、申立人2がCapturing Reality社を買収して、本格的に日本市場での本件ソフトウェアの宣伝、広告及び販売に注力を始めた2021年以降急速に認知を広げていった。そして遅くとも、本件商標の登録出願日の時点において、引用商標は、本件ソフトウェアの名称として我が国における需要者・取引者、とりわけ、仮想空間における三次元モデルの作成に興味、関心を有するコンピュータグラフィックデザイナー、ゲームソフト制作者、エンジニア等のプロフェッショナルの間において広く認識され、周知著名となっていたものであり、その周知著名性が今日においても維持されている。
イ 商標法第4条第1項第10号該当性について
(ア)引用商標の周知性
前記で詳述したとおり、引用商標は、2016年の本件ソフトウェアのローンチと同時に使用が開始され、遅くとも2018年頃から我が国においてもコンピュータエンジニアらの間で話題となっていた。引用商標は、2021年の申立人によるCapturing Reality社の買収と、本格的な日本市場への参入、それに伴う広告宣伝の結果、申立人2の業務に係る商品及び役務を表す商標として、本件商標の登録出願時及び査定時において、我が国におけるフォトグラメトリ・ソフトウェアの需要者、取引者の間において広く知られるに至っている周知な商標である。
(イ)本件商標と引用商標の類似性
本件商標は「Reality Capture」の欧文字を標準文字により書してなるのに対して、引用商標は「RealityCapture」の文字を顕著に表示してなるから、両者は構成文字を同一にし、「リアリティキャプチャー」の称呼を同一にする極めて類似の程度の高い商標である。
(ウ)本件指定商品と引用商標が使用される商品の同一性
本件商標は、引用商標が使用され、周知となった本件ソフトウェアと同一又は類似する商品であるところの、第9類「3Dコンピュータグラフィック用コンピュータソフトウェア,画像処理用コンピュータプログラム,画像処理装置,画像処理用のコンピュータソフトウェア,音楽データ・動画データ・文字データ・静止画像データのダウンロード・管理・処理・再生用コンピュータプログラム,地理情報システム用のコンピュータプログラム,全地球測位装置(GPS),全地球測位システム(GPS)受信機,コンピューターオペレーティングシステムソフトウェア,アプリケーションソフトウェア,電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品・附属品,人工知能を搭載した電子計算機用プログラム」を指定商品とする。また、本件商標は第42類「仮想現実用ソフトウエアの提供,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),3Dプリンター用のコンピュータプログラムの提供」を指定役務とするところ、これらの役務は引用商標が使用され、周知となった本件ソフトウェアと備考類似の関係にある。
(エ)小括
したがって、本件商標は、その指定商品役務のうち上記指定商品及び指定役務について、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている引用商標との関係で、商標法第4条第1項第10号に該当する。
ウ 商標法第4条第1項第15号該当性について
(ア)引用商標の周知著名性及び独創性
前記で詳述したとおり、引用商標は、遅くとも2016年の本件ソフトウェアのローンチと同時に使用が開始され、遅くとも2018年頃から我が国においてもコンピュータエンジニアらの間で話題となり、2021年の申立人によるCapturing Reality社の買収と、本格的な日本市場への参入、それに伴う広告宣伝の結果、申立人2の業務に係る商品及び役務を表す商標として、本件商標の登録出願時及び査定時において、我が国における3Dモデリングソフトウェアの需要者、取引者の間において広く知られるに至っている周知な商標である。
また、「RealityCapture」という語は既成語ではなく、一般の辞書にも載録のない語である。したがって、引用商標の独創性の程度は極めて高い。
(イ)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標は、「RealityCapture」の欧文字を標準文字で書してなる商標であり、引用商標と略同一の構成であるから、両商標は、称呼、観念及び外観を同一にする商標である。よって、その類似性の程度は極めて高い。
(ウ)本件商標の指定商品・役務と引用商標の使用商品・役務との関連性並びに商品・役務の取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品中、第9類の「3Dコンピュータグラフィック用コンピュータソフトウェア,画像処理用コンピュータプログラム,画像処理装置」などと、引用商標が使用される本件ソフトウェア(三次元コンピュータグラフィック生成用コンピュータソフトウェア)は、相互の関連性は極めて強いものがあり、その取引者及び需要者も共通する。
また、本件商標の指定役務中、第41類「コンピュータによるデジタル画像処理,動画の電子画像処理,デジタル画像処理技術に関する知識の教授」などや、第42類「電子計算機を用いた画像処理システムの電子計算機プログラムの設計・作成又は保守,画像処理用コンピュータソフトウェアの開発,画像処理用コンピュータハードウェアの設計に関する助言」などについても、申立人2の商品又は役務、すなわち三次元コンピュータグラフィック生成用コンピュータソフトウェアを使用して行われ、あるいはその操作に習熟するための教育であったり、それを利用して提供されるコンピュータゲームの提供などの娯楽の提供に係るものである。したがって、これらの役務と本件ソフトウェアとの関連性は高く、その取引者及び需要者も重複する。
本件ソフトウェアや、本件商標の指定商品役務にある上記商品役務などの取引者は、バーチャルリアリティゲームのためのバーチャルコンテンツや、三次元地図等の制作のために写真やレーザースキャンを利用した3Dモデルの生成作業を行う専門家や専門家に近い知識や関心を有するハイ・アマチュアを需要者とするものである。このため、その需要者、取引者の範囲は、一般的な日用品と比較すると狭く限定的である。よって、本件商標の指定商品役務の需要者、取引者と、引用商標が使用される本件ソフトウェアの需要者、取引者は洗練された需要者、取引者は、その範囲は重複する。
以上のとおり、本件商標の指定商品・役務と引用商標の使用商品・役務とは同一であるか、密接な関連性があり、またその取引者及び需要者も同一であるか、重複する。
(エ)出所の混同を生ずるおそれ
上記のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び査定時において、申立人2の商品及び役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものであり、その周知性の程度は極めて高い。また、本件商標と引用商標とは、実質的に同一の商標であり、類似性の程度は極めて高い。そして、本件商標の指定商品及び役務には、引用商標が使用される本件ソフトウェアと同一又は同種の商品が含まれ、さらに、三次元コンピュータグラフィック生成用コンピュータソフトウェアを使用して提供される娯楽サービスや、その操作に習熟するための教育サービス、それを利用して提供されるコンピュータゲームの提供などの娯楽の提供等、本件ソフトウェアと高い関連性を有し、その取引者及び需要者も同一であり、重複している。
これらを併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品及び役務について使用する場合、これに接する取引者、需要者は、申立人2が提供する本件ソフトウェアについて周知性を獲得した申立人2の引用商標を連想、想起し、本件商標を使用した商品・役務が申立人2又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品・役務であるかのように誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがある。
(オ)小括
以上の事実に基づき総合的に勘案すれば、本件商標をその指定商品及び役務について使用する場合、これに接する取引者、需要者は、本件ソフトウェアについて使用され、周知性を獲得した申立人の引用商標を連想、想起し、本件商標が申立人に関係し、あるいは申立人に由来するものと誤信し、本件商標を使用した商品・役務があたかも申立人2又はそれと経済的・組織的に何らかの関係を有する者の取り扱う業務に係る商品・役務であると誤認して取引にあたるから、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
そして、本件商標の登録を認めた場合には、申立人2の引用商標が持つ顧客吸引力ヘのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を免れない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
エ 商標法第4条第1項第19号該当性について
(ア)引用商標の周知性
前記で詳述したとおり、引用商標は、遅くとも2016年の本件ソフトウェアのローンチと同時に使用が開始され、遅くとも2018年頃から我が国においてもフォトグラメトリ技術を利用した3Dデータの生成に興味を有するコンピュータグラフィックデザイナー、ゲーム開発者、エンジニアらの間で話題となり、2021年の申立人2によるCapturing Reality社の買収と、本格的な日本市場への参入、それに伴う広告宣伝の結果、申立人2の業務に係る商品及び役務を表す商標として、本件商標の登録出願時及び査定時において、我が国におけるフォトグラメトリー用ソフトウェアの需要者、取引者の間において広く知られるに至っている周知な商標である。
(イ)本件商標と引用商標の類似性
本件商標は、「Reality Capture」の欧文字を標準文字で書してなる商標であり、引用商標と略同一の構成であるから、両商標は、称呼、観念及び外観を同一にする商標である。よって、両商標は類似する。
(ウ)本件商標権者の「不正の目的」
以下の事情を総合して考察すると、本件において、本件商標権者が引用商標の存在を知らなかったものとは到底考え難い。
a 引用商標は、本件商標の登録出願時において、申立人2が開発、販売する本件ソフトウェアの名称として世界的に周知性を獲得していた。本件ソフトウェアは2016年にスロバキア共和国の企業によって開発されたものであり、代表的なフォトグラメトリ用ソフトウェアとして知られ、我が国おいても、2018年頃からコンピュータエンジニアや3Dデータの作成に興味関心を有する需要者の間で話題となっていた。2021年3月に申立人2がCapturing Reality社を買収した後、日本では株式会社StockGraphyが本件ソフトウェア販売及び3D技術の活用事例などの情報発信を行うウェブサイトを立ち上げるなどした結果、2022年12月の本件商標の登録出願時には、デジタル写真から3Dデータを作成するフォトグラメトリー用ソフトウェアの中でも代表的な製品として、3Dモデルの作成に興味関心を有する需要者の間では周知となっていた。
b 本件商標権者は、2002年4月に米国ESRI社のGIS(地理情報システム)製品である「ArcGIS」の日本国内総販売代理店として設立された法人であり、その主たる取扱製品は米国Esri社のGISソフトウェア、画像処理製品、GISデータ製品及び関連ソフトウエアである。ESRIは、後述する申立人2の「Unreal Engine」というゲームエンジンソフトウェアのライセンスを受け、当該ソフトウェアを使用している。このように、本件商標権者は申立人2と同一の産業分野に属し、同種の製品を扱っている事業者であり(甲02-8)、本件商標の指定商品及び指定役務は、まさに「3Dコンピュータグラフィック用コンピュータソフトウェア,画像処理用コンピュータプログラム」「コンピュータによるデジタル画像処理」「電子計算機を用いた画像処理システムの電子計算機プログラムの設計・作成又は保守,画像処理用コンピュータソフトウェアの開発,仮想現実用ソフトウエアの提供」などを含むから、本件商標権者が、デジタル写真から3Dデータを作成する「フォトグラメトリーソフトウェア」の中でも代表的な製品として、3Dモデルの作成に興味関心を有する需要者の間では周知となっていた本件ソフトウェア及びその名称を知らなかったとは到底考えられない。
c ところで、本件ソフトウェアについては、申立人2が開発、提供する世界的に著名なゲームエンジン(ゲーム開発用ソフトウェア)である「Unreal Engine」などのウェブサイトでも広告されている(甲02-10)。
このように、申立人2は、世界的に著名なゲームエンジンである「Unreal Engine」を開発し、提供している。「ゲームエンジン」とは、「コンピュータゲームのソフトウェアにおいて、共通して用いられる主要な処理を代行し効率化するソフトウェアの総称である」とされ、申立人2が提供する「Unreal Engine」はゲームエンジンを代表するソフトウェアの代表的な例として紹介されている(甲02-9の1)。2014年には、申立人2の「Unreal Engine」は「ギネス・ワールド・レコーズ」において、「最も成功したビデオゲームエンジン」に選ばれ(甲02-11)、現在そのライセンシーの数は数百万人に及ぶ。
d しかるに、本件商標権者の公式ブログ「ArcGISブログ」において、2020年12月28日に「Unreal Engine・Unityの中で地球をハンドリング!?」との記事(甲02-9の2)を掲載していることなどから、本件商標の登録出願時において、本件商標権者が申立人2の存在及び申立人2が提供するゲームエンジン「Unreal Engine」の存在を覚知していたことは疑う余地がなく、本件ソフトウェアは「Unreal Engine」のプラグインであるから、「Unreal Engine」用のプラグインである「ArcGIS Maps SDKプラグイン」を提供、販売する本件商標権者が、本件ソフトウェアの存在及びその名称が「Reality Capture」であること、そして本件ソフトウェアがフォトグラメトリ用ソフトウェアの代表的な製品として世界的に周知著名なものであることを知らなかったとみることは到底できない。
e かかる事情を考慮すると、本件商標権者が、世界的に周知著名であった引用商標と同一の文字からなる本件商標を、引用商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、採択・出願し、登録したことは明白であり、不正の目的をもって、本件商標の登録出願をしたといえる。
(エ)小括
したがって、本件商標は、他人である申立人2の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の提出証拠及びその主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)「RealityCapture」は、対象物を重複して撮影した複数の写真データから、カメラの位置(距離、角度)を推定して3Dモデルを生成するフォトグラメトリソフトウェア(以下「本件使用商品」という。)であり、その販売元であるCapturingReality社は、2021年3月に申立人2に買収された(甲02-2の4)。
(イ)2021年8月27日付けのプレスリリースによれば、申立人2と申立人1は、本件使用商品に関する日本市場における販売代理店契約を締結し、その商品販売及び情報発信を行うウェブサイトをローンチした(甲02-3の1)。
(ウ)2021年9月30日から本件商標の登録出願日までの間のプレスリリースにおいて、本件使用商品の販売やセール、補助金などの情報が掲載されている(甲02-3の2、3、5~10)。
(エ)電子掲示板「Qiita」やブログ記事、インターネット上の記事情報などにおいて、2018年3月16日から本件商標の登録出願日までの間の記事に、本件使用商品の使用方法や使用報告などの情報が掲載されている(甲02-4の1~9、17、19、甲01-9、甲01-15)。
(オ)雑誌記事において、2019年から本件商標の登録出願日までの間の記事に、本件請求商品への言及や、それに適したパソコンの紹介などが掲載されている(甲02-5の1~5)。
(カ)本件使用商品の我が国又は外国における販売規模(売上高、販売数量など)、広告宣伝規模(広告宣伝費、広告宣伝媒体など)などを具体的に示す証拠はない。
イ 上記認定事実によれば、本件使用商品は、2021年8月頃(外国ではそれ以前)から我が国の販売代理店を通じて販売開始し、その後、本件商標の登録出願時(2022年12月5日)まで継続した販売実績があり、利用者も一定数が存在するとしても、その販売期間は約1年半程度にすぎず、その販売規模や広告宣伝規模、市場占有率なども明らかではないから、引用商標の需要者の間における認知度の程度は明らかではない。
そうすると、申立人の提出証拠によっては、本件使用商品の商品名である引用商標が、本件商標の登録出願時において、我が国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されている商標とはいえない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 引用商標の周知性
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時において、我が国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されている商標とはいえない。
したがって、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標とは認められない。
イ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標は、上記1のとおり、「Reality Capture」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「Reality」の文字は「現実」の意味を、「Capture」の文字は「を捕える」の意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)であるが、両語を結合して具体的な意味を有する成語となるものではなく、各語の語義を結合した意味合いも漠然としている。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「リアリティキャプチャー」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
(イ)引用商標は、「RealityCapture」の欧文字からなるところ、その構成文字は、上記(ア)と同様、具体的な意味を有する成語となるものではなく、各語の語義を結合した意味合いも漠然としている。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「リアリティキャプチャー」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
(ウ)本件商標と引用商標を比較すると、外観においては構成文字を共通にし、称呼においては構成音を共通にするが、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼を共通にするから、同一又は類似の商品又は役務について使用するときは、誤認混同を生じるおそれがあり、同一又は類似する商標と認められる。
ウ 以上のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標ではないから、本件商標は、引用商標とは同一又は類似する商標であるとしても、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時において、我が国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されている商標ではないから、本件商標と引用商標の類似性の程度やその指定商品及び指定役務と本件使用商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、本件商標は、その指定商品及び指定役務について使用されても、取引者、需要者をして申立人の業務に係る本件使用商品を連想又は想起させるとは考えにくく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 申立人2は、本件商標権者が、申立人の存在及びそれが提供するゲームエンジンの存在を覚知していたことは疑う余地がなく、本件使用商品の存在及び名称、そしてそれが世界的に周知著名なものであることを知らなかったとはいえないから、本件商標は、引用商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、採択、出願し、登録された旨を主張する。
しかしながら、仮に本件商標権者が本件使用商品及び引用商標を認識しながら本件商標を登録出願したとしても、それだけでは直ちに不正の利益を得る目的や、他人に損害を加える目的などの不正の目的に通じるものではない。
また、本件商標は、引用商標とは構成文字が共通し、その指定商品及び指定役務には本件使用商品と同一又は類似する商品が含まれるとしても、申立人提出の証拠からは、本件商標権者が、本件商標を用いて何らかの不正の利益を得たり、損害を加えるなど、具体的な行為に及んでいるような事実関係は把握できない。
そうすると、本件商標は、その登録出願の目的は必ずしも明らかではなく、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的など)をもって登録出願されたものと認めることはできない。
イ 以上によれば、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものとはいえないから、その他の要件について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-900193