商標異議申立
2023-900155
タカツキミンショー
- 審判番号
- 2023-900155
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-053735
- 登録番号
- 6692530
- 請求日
- 2023年07月03日
- 審決日
- 2024年04月23日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】藤本 芳貴
- 【異議申立人】藤川 隆広
- 【異議申立人代理人】奈良 泰宏
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 杉本 克治
- 分類
- T1651.25 -Y (W354145) / T1651.22 -Y (W354145) / T1651.23 -Y (W354145)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項8号商標法4条1項10号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第10号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6692530号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6692530号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6692530号商標(以下「本件商標」という。)は、「高槻民商」の文字を標準文字により表してなり、令和3年4月30日に登録出願、第35類「税務書類の作成に関する情報の提供,中小企業に対する経営の指導又は助言,経営の診断又は経営に関する助言」、第41類「金融制度・社会保険制度に関する知識の教授及び説明会・講演会・相談会等の企画・開催・運営,中小企業者の生活・福祉・地位の向上に関する知識の教授及び説明会・講演会・相談会等の企画・開催・運営,税務に関する知識の教授及び説明会・講演会・相談会等の企画・開催・運営,雑誌・書籍の制作,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」及び第45類「労働関係保険の官公庁への各種届出・書類作成・提出の代行,労働関係保険の官公庁への各種届出・書類作成・提出の代行に関する情報の提供,社会保険に関する手続の代行」を指定役務として、同5年4月4日に登録査定され、同月24日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、「高槻民主商工会」の文字よりなる標章(以下「引用商標」という。)であり、「高槻民商」はその略称であるというものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第8号及び同項第10号に違反して登録されたものであり、その登録は同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
1 理由の要点
本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、以前「大阪商工団体連合会」の一員であったものの、現在離脱している者であり、仮に一員であったとしても、全会員の総意に基づくものとはいえず、権限を有する者ではないから、本件商標は全く権限を有さない者の出願であって、不当な利益を得ることを目的として出願され、適正な商道徳に反し、著しく社会妥当性を欠くものである。
これに基づいて商標登録の維持を認めることは、公正な取引秩序の維持からみても不相当であって、商標法の目的にも反するものである。
したがって、本件商標は、剽窃的な商標として商標法第4条第1項第7号に該当する。
そして、本件商標は、「高槻民商」の文字を書してなるものであるが、これは「高槻民主商工会」の略称であるとともに、「民主商工会」は「民商」として長年にわたって使用された結果、各地域において親しまれ定着しており、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であり、かつ、その権限を有する者の承諾を得ているものではないので商標法第4条第1項第8号及び同項第10号にも該当する。
2 具体的理由
(1)商標法第4条第1項第7号に該当する根拠
申立人は、大商連(大阪商工団体連合会)の現会長であり、大阪の各地域における民商、すなわち本件に該当する「高槻民商再建準備会」(本事件が生じたため、再建準備会としている。)が加盟している(甲2)。
大商連(大阪商工団体連合会)は、「都道府県商工団体連合会」に加盟し、「大阪商工団体連合会」は、「全国商工団体連合会」(略称:全商連)に加盟している(現在全国約600の組織がある。)(甲3、甲4)。
よって、「高槻民主商工会」(高槻民商)は、「大阪商工団体連合会」の加盟団体であり、さらには「全国商工団体連合会」(略称:全商連)の加盟団体でもある。
全国的な組織である「〇〇民主商工会=〇〇民商」は全国に約600あり、それを統括しているのは、全国商工団体会連合会(全商連)及び各都道府県連、すなわち本件の場合は「大阪商工団体連合会」であり(甲3)、「大阪商工団体連合会」の会長は申立人であるが(甲2)、申立人は、今回のような商標登録出願を行う際、権限なき者が登録出願し権利化することは容認しておらず、承諾はもちろん、事前の通知すらも得ていない。
本件商標権者は、以前「大阪商工団体連合会」の一員であったものの、現在離脱している者であるとともに、仮に一員であったとしても、全会員の総意に基づくものとはいえず、権限を有する者ではない。
よって、本件商標は全く権限を有さない者の出願であって、不当な利益を得ることを目的として出願されたものということができ、適正な商道徳に反し、著しく社会妥当性を欠く行為というべきものであり、これに基づいて商標登録を認めることは、公正な取引秩序の維持からみても不相当であって、商標法の目的にも反するものである(甲5~甲8)。
したがって、本件商標は、剽窃的な出願として商標法第4条第1項第7号に該当するものとして拒絶されるべきものである。
(2)商標法第4条第1項第8号及び同項第10号に該当する根拠
高槻民商(高槻民主商工会)は、発足して70年以上の歴史があり、「高槻民商」は、長年継続して活動し、地域に根付いている(甲9、甲13~甲15)。
全国商工団体連合会のウェブサイトには、メニューに「民商・全商連とは」とあり、中央には「全都道府県に約600の事務所、会員16万人! 最寄りの民商を探す」というバナーがあり、バナーをクリックすると全国にある民商を探すことができ(甲10)、大阪で検索をすれば当該「高槻民主商工会」を確認することができる。
このように、各地域の名称、例えば高槻市である場合は「高槻民主商工会」(高槻民商)となるもので、「〇〇民主商工会=〇〇民商」として全国的に周知されている。
民主商工会(=民商)は、自営業・小企業・フリーランスなど、小規模な事業者が助け合い、励まし合って、営業と暮らしを守る団体という記事が紹介されている。
したがって、本件商標は「高槻民商」の文字を書してなるものであるが、これは他人の名称(正規加盟団体)の略称と同一であり、かつ、その他人の承諾を得ていないため、商標法第4条第1項第8号に該当するとともに、本件商標「高槻民商」は「高槻民主商工会」の略称であるとともに、「民主商工会」は「民商」として長年にわたって使用された結果、各地域において親しまれ定着しており、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であるので、同項第10号にも該当する。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第第4条第1項第7号、同項第8号及び同項第10号に違反して登録されたものである。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
申立人は、「大阪商工団体連合会」(大商連)の第76期の会長であるところ、当該「大阪商工団体連合会」には、大阪の各地域における「民主商工会」(決定注:高槻市の場合、「高槻民主商工会」であるが、申立人の主張によれば、現在は「高槻民商再建準備会」と称する団体とされる。)が加盟している(甲2、甲4)。
また、「大阪商工団体連合会」は、「都道府県商工団体連合会」の加盟団体であり、さらに「全国商工団体連合会」(略称:全商連)の加盟団体でもある(甲3)。
そして、「大阪商工団体連合会」の加盟団体としての「高槻民主商工会」(以下「本件団体」という場合がある。)は、昭和24年頃に設立され、発足後70年以上の歴史があることがうかがえる(甲9、甲13)。
しかしながら、「高槻民主商工会」の文字からなる引用商標が本件団体により提供される具体的な役務について使用された状況等を客観的に示す証拠や、引用商標を用いて提供する役務の提供数(取扱数)、取引額など引用商標の取引実績(事業規模)等を示す主張はなく、ほかに引用商標が本件団体の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と認めるに足りる証左も見いだせないから、提出された証拠及び主張のみをもって、引用商標である「高槻民主商工会」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件団体の業務に係る役務について使用する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることはできず、また、「高槻民商」の文字が本件団体の著名な略称であると認めることもできない。
2 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、上記第1のとおり「高槻民商」の文字を標準文字で表してなり、また、引用商標は、上記第2のとおり「高槻民主商工会」の文字からなるところ、「民商」の文字が「民主商工会」の略称として使用される場合もあることから(甲10)、「高槻民商」の文字は、「高槻民主商工会」の略称ということができるとしても、上記1のとおり、「高槻民商」の文字は、「高槻民主商工会」の著名な略称とは認められないものであるから、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標であるとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものといえない。
3 商標法第4条第1項第10号について
上記2のとおり、「高槻民商」の文字は「高槻民主商工会」の略称ということができるから、「高槻民商」の文字からなる本件商標と「高槻民主商工会」の文字からなる引用商標とは、その観念を共通にするといえるため、一定程度の類似性を有し、また、本件商標の指定役務の一部が本件団体の提供する役務と同一又は類似するといえる。
しかしながら、上記1のとおり、引用商標は、他人(本件団体)の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認められないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。
4 商標法第4条第1項第7号について
申立人は、本件商標は全く権限を有さない者の登録出願であって、不当な利益を得ることを目的として登録出願された旨主張している。
そこで、当審において職権をもって調査したところ、本件商標の審査段階において、令和4年6月10日付けで提出された意見書に添付の証拠によれば、令和3年(2021年)6月24日の時点において、本件商標権者は、本件団体の会長であったことが認められる。
そうすると、その約2月前である本件商標の登録出願時(令和3年4月30日)においても、本件商標権者は、本件団体の会長であったことが推認でき、これを覆す証拠は見いだせない。
そして、「会長」とは、一般に「会の事務を統一して管理し、会を代表する人」(広辞苑第7版参照)を指すものである。
また、申立人提出の「月刊 民商 臨時増刊号 2022年8月発行」(甲5)に掲載されている全商連規約及びその他の証拠から、本件団体が本件商標の登録出願を行う際に、「大阪商工団体連合会」又はその会長である申立人の承諾が必要であるというべき事情は見いだせない。
他に、本件商標が全く権限を有さない者によって登録出願されたというべき事情は見いだせない。
してみれば、本件商標は、本件商標の登録出願がされた当時、本件団体の会長であった本件商標権者によって登録出願されたものであるということができるから、当該登録出願が全く権限を有さない者によって登録出願されたものということはできない。
その他、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的で剽窃的に登録されたものであることを具体的に示す証左は見いだせない。
さらに、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 申立人の主張について
(1)申立人は、権限なき者が商標登録出願し権利化することを容認しておらず、本件商標の登録出願は、承諾はもちろん事前の通知すらも得ていないし、全会員の総意に基づくものともいえず、権限を有する者の登録出願ではない旨主張している。
しかしながら、「商標法は、出願人からされた商標登録出願について、当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに、類型を分けて、商標登録を受けることができない要件を、同法第4条第1項各号で個別的具体的に定めているから、・・・同項第8号、同項第10号・・・の該当性の有無と密接不可分とされる事情については、専ら、当該条項の該当性の有無によって判断すべきであるといえる。また、当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や、国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた同法第4条第1項第19号の趣旨に照らすならば、それらの趣旨から離れて同項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである」(知財高裁平成19年(行ケ)第10391号同20年6月26日判決)。
そして、申立人の主張及び同人から提出された証拠を総合してみても、上記4のとおり、本件商標が全く権限を有さない者によって登録出願されたということはできず、本件商標権者と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、本件団体及びその上部団体(「大阪商工団体連合会」等)内部の当事者同士の私的な問題として解決すべき問題といわざるを得ないから、本件商標の登録出願について、その経緯が社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解することはできない。
(2)申立人は、本件商標は「高槻民商」の文字を書してなるものであるが、「民商」の文字は長年にわたって使用された結果、他人(「民主商工会」)の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標である旨主張している。
しかしながら、全国商工団体連合会のウェブサイトに「全都道府県に約600の事務所、会員16万人!」という記載があり(甲10)、「全国商工新聞」等に民主商工会(民商)の活動を紹介する記事がある(甲14、甲15)としても、「民商」の文字からなる商標の使用状況や、商標を用いて提供する役務の提供数(取扱数)、取引額など引用商標の取引実績(事業規模)等は不明であるから、これらの証拠のみによって「民商」の文字が「民主商工会」を表すものとして本件商標の役務の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないばかりでなく、仮にこれらの文字が需要者の間に一定程度知られていたとしても、本件商標の登録出願時において、本件商標権者は、上記4のとおり、本件団体の会長であったことに鑑みれば、同人が直ちに商標法第4条第1項第8号及び同項第10号にいう「他人」に当たるとも評価し難いところである。
(3)したがって、申立人のかかる主張はいずれも採用できない。
6 むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号及び同項第10号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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