商標異議申立
2023-900145
テイシイエル、トランスコンテナリミテッド、トランスコンテナ
- 審判番号
- 2023-900145
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2020-008952
- 登録番号
- 6691050
- 請求日
- 2023年06月22日
- 審決日
- 2023年12月21日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社トランスコンテナ
- 【権利者代理人】日野 修男
- 【異議申立人】ティーシーエル テクノロジー グループ コーポレーション
- 【異議申立人代理人】木村 満
- 【異議申立人代理人】松嶋 さやか
- 【異議申立人代理人】吉松 こず恵
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 良成
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 阿曾 裕樹
- 分類
- T1651.22 -Y (W38) / T1651.23 -Y (W38) / T1651.271-Y (W38) / T1651.222-Y (W38)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項8号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6691050号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6691050号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6691050号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、令和2年1月27日に登録出願、同5年2月20日に登録審決され、第38類「電子計算機端末による通信,携帯電話による通信」を指定役務として、同年4月19日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、日本及び世界各国において需要者及び取引者間に広く認識されていると主張されている、申立人及びTCLグループが使用する商標「TCL」(以下、「引用商標」という。)である。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第77号証(以下「甲○」と表記する。)を提出した。
1 申立人及びそのグループ会社について
(1)沿革とシェア
1981年、中国にて、申立人の前身であるTTK家庭電器(恵州)有限公司として設立、その後、1985年にTCL通信機器有限公司が設立され、TCLブランドが立ち上げられた。オーディオテープの生産から始まり、電話機の開発・製造、1990年代には、カラーテレビをはじめ家電機器の開発・製造・販売を行って着実に成長を遂げ、1997年にTCL Corporationを設立(甲1~甲4)、1999年には、中国において馳名商標として認定されるほどに、TCL Corporationの商標「TCL」は著名となった(甲5)。
TCL Corporationの発展は中国国内にとどまらない。1999年、ベトナム市場に参入し、中国企業の海外進出の重要な一歩を踏み出して以降、フランスのトムソン社のカラーテレビ事業、アルカテル・ルーセントの携帯電話事業、ヒューレット・パッカードの子会社パームを買収し、インテルコーポレーション、松下電器産業、東芝、シャープ、ソニー、パナソニック等世界の大手電気メーカーと次々と提携し、世界規模で着実に事業を拡大した(甲1、甲3)。2004年には、TCL Corporationの代表者が、米国のビジネス雑誌フォーチュン誌によって世界で最も影響力のあるビジネスリーダーに選出された(甲6)。
2019年、TCL Corporationは、申立人とTCL Industries Holdingsに分社し、両社はともにTCLグループとして発展している。TCL Industries Holdingsは、その傘下に、TCL Electronics、TCL Communications等を擁し、スマートフォン等の通信機器をはじめスマートデバイス製品の開発・製造とサービスに重点を置いている(甲4)。
申立人の主な事業構造は、半導体ディスプレイ事業、新エネルギー太陽光発電・半導体材料事業、産業金融事業及びその他の事業で構成されており、それぞれの事業分野において、社名に「TCL」を冠した子会社を擁し、多角的に事業経営を行っている。申立人の売上高(営業収益)は、順調に推移している(甲7~甲9)。
加えて、申立人は、最先端技術の探求を重要視しており、2019年までの累積特許出願件数は11,261件であった。2022年には研究開発に107億8000万人民元を投資し、累積特許出願件数は14,741件となった。特に、量子ドットエレクトロルミネッセンス分野における技術・材料特許の出願件数は2,244件に達し、世界第2位である(甲7、甲9)。
申立人及びそのグループ会社(以下、「TCLグループ」という。)は、その確かな技術力で世界市場におけるシェアを拡大し、TCLグループの商品は、現在160ヵ国以上で提供されている。とりわけテレビ市場での発展はめざましく、米国では、2014年から売上げ実績を急速に伸ばし、わずか5年後の2019年には米国におけるテレビ売上げシェア第1位となった(甲10)。市場調査機関OMDIAによれば、TCLグループは、2018年から2020年まで連続して世界テレビ出荷台数市場シェア第2位となり、2021年には、LCDテレビのトップブランド世界第2位に、2022年のテレビブランドの世界ランキング第2位、98インチテレビの世界シェアは第1位となった(甲1、甲11、甲12、甲53)。こうして、中国の著名企業グループであるTCLグループは、遅くとも2018年から現在に至るまで、世界的影響力を有する大手ハイテクブランド企業グループとして、世界各国において需要者及び取引者間に広く認識されている。
(2)出展と受賞
TCLグループは、アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで毎年開催される電子機器の見本市である国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)や、ドイツのベルリンで開催される家電製品の見本市である国際コンシューマ・エレクトロニクス展(IFA)等、世界的な大規模見本市に継続して出展し、世界中の取引者・需要者に認識されている。甲13から甲15はCES2018、甲17はCES2022に出展した際のTCLブースの様子を撮影したものである。CES2022ではブースで、最新のディスプレイテクノロジー、テレビ、モニター、モバイルデバイス、ARメガネ、家電製品の展示を行った。
加えて、TCLグループ及びその商品は、2014年以降、権威ある賞を多数受賞している(甲1、甲4、甲13、甲16、甲18~甲21)。
TCLブランドは、CES2017、CES2018と2年連続で、世界CEブランドの上位50社に選出され、2018年「液晶テレビカテゴリーでの北米市場シェア増加率首位」に選ばれた。遅くとも2018年には、米国で最も成長著しいテレビブランドの一つとして認められていた。TCLグループのテレビは、2017年に、CES、IFA、EISAの権威ある賞を受賞し、それ以降発表・発売する商品も受賞を続けている。デザイン性にも優れており、2017年以降、レッドドット・デザイン賞、iFデザインアワードを受賞し続けている。液晶テレビをはじめとするTCL商品は、遅くとも2017年以降現在に至るまで、高い評価を受けて世界的に需要者及び取引者間に広く認識されている。
(3)協賛・提携等
TCLグループは、ゲーム、スポーツ、エンターテインメント、そしてテクノロジーを通じて、人々に感動と幸せを与えることを信条としており、なかでもスポーツスポンサーシップはTCLのグローバルブランド戦略の核をなしている。2018年、サッカーのスーパースター、ネイマール選手とのパートナーシップを締結した(甲22)。甲23は、ネイマール選手とのパートナーシップ締結式の様子と「TCL」ユニフォームを着用したネイマール選手の写真入り商品パッケージの写真である。また、同年、国際バスケットボール連盟(FIBA)との包括的なグローバルパートナーシップを締結し、以後、FIBAの代表的な大会での重要な商権及び国際バスケットボール連盟女子バスケットボールワールドカップでのスポンサーシップに加え、ワールドカップにおけるプレゼンテーションスポンサーシップ権を獲得し、コート上で高いブランドビジビリティを確保、出場選手(TCLプレイヤー・オブ・ザ・ゲーム)のプレゼンターにもなっている(甲22、甲24、甲25)。他に、NBAのミネソタ・ティンバーウルブズとミネソタ・リンクス(アメリカ)、フィリピンバスケットボール協会(フィリピン)、サッカーチームのサンノゼ・アースクェイクス、ブラジルサッカー同盟(ブラジル)、ロサリオ・セントラル・フットボールクラブ(アルゼンチン)、メルボルンカップ、メルボルン・ビクトリー・フットボールクラブ(オーストラリア)等ともパートナーシップを締結した(甲22)。
2019年、南米サッカー連盟が主催する、世界で最も古いナショナルチームによるサッカーの大陸選手権大会であるコパ・アメリカのグローバルパートナーとなり現在もスポンサーである(甲4、甲26、甲27)。南米の主要都市の空港では、コパ・アメリカのグローバルパートナーとして、TCLグループの商標「TCL」が電光掲示板等に大きく掲げられている(甲28、甲29)。2020年には、eスポーツの大会であるCall of Duty Challenge Asia eSportsのタイトルスポンサーとなった(甲4)。
加えて、エンターテイメント産業では、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス、ハリウッドに劇場「TCLチャイニーズ・シアター」を有し、ワーナー・ブラザーズ・ピクチャーズとも提携している(甲4)。TCLチャイニーズ・シアターは、アカデミー賞授与式が行わる他、ハリウッドで崇敬される俳優や女優のサインや足型などが刻まれたブロックタイルで有名な、カリフォルニアで最も人々が訪れる観光名所の一つである。2013年1月に、申立人の前身であるTCL Corporationがこの劇場の命名権を獲得し、以後名称を「TCLチャイニーズ・シアター」に変更した(甲30)。
多くの有名スポーツ選手とのパートナーシップ契約、世界的スポーツイベントへのスポンサーシップ契約、世界的観光名所の名称等各業界での協賛・提携による宣伝広告効果は絶大である。遅くとも2018年から現在に至るまでTCLグループ及びTCLブランドは世界中の多くの人々に広く認識されている。
(4)日本でのTCL商品の販売と商標「TCL」の使用
TCLグループのスマートフォンは、以前より日本市場において、格安スマートフォンとして人気であった。遅くとも2014年には、TCL Communication Japan Inc.(TCLコミュニケーションジャパン株式会社)によって日本市場で販売されており(甲31、甲32)、2016年には、全国家電量販店、UQモバイルオンラインショップ等で(甲33、甲34)、2017年の商品は、全国家電量販店、イオンモバイル、オンラインショップでも販売された(甲35)。毎年新しいスマートフォンが販売されており、現在も日本国内で流通している(甲32~甲38)。
2015年9月に、株式会社TCL JAPAN ELECTRONICS(以下、「TCLジャパン」という。)が設立され、2017年から日本市場で液晶テレビの販売が開始された(甲1、甲39)。2019年、家電量販店やホテルなどの法人向け販売を開始して日本の液晶テレビ市場に本格参入した。以降、毎年新たな商品を発表、発売し、急速にシェアを拡大している(甲40~甲43)。2023年1月には、ソニーを抜いて日本国内液晶テレビ市場シェア第4位となり(甲44)、2023年上半期のスマートテレビ売れ筋ランキングでは、TVS REGZA、シャープ等をおさえて第1位となった(甲45)。
TCLジャパンの売上高(営業収益)の推移は下記のとおりである。
2016年 10,764,494円
2017年 94,485,877円
2018年 543,485,244円
2019年 1,382,303,274円
2020年 3,476,959,496円
2021年 6,839,541,908円
確かな技術力により開発・製造されているTCLテレビは日本国内での評価も高い。2020年、国内最大級を誇るオーディオビジュアル機器の総合アワードVGPの技術賞等を受賞し(甲46)、2021年には日本マーケティングリサーチ機構による調査の3部門でナンバー1を獲得した(甲47)。TCLテレビは、2019年以降急速にシェアを拡大し、遅くとも2020年から現在に至るまで日本国内において需要者及び取引者間に広く認識されている。
TCLジャパンは、「X」などのソーシャルメディアやYouTubeによる情報発信を積極的に行っている(甲77)。加えて、ブランド戦略としてスポーツスポンサーシップに注力しており、日本国内において独自に契約を行っている。2021年、横浜DeNAベイスターズとのオフィシャルスポンサーシップ契約を締結し、ナイター試合の冠協賛を行った。バックスクリーンに「TCL」ロゴを掲出し、球場でのリプレイ検証広告、TCLホームラン賞等のキャンペーンを行い、TCLブランドは日本全国に認識された(甲48、甲49)。2022年には、フィギュアスケートの紀平梨花選手とアンバサダー契約を締結、山手線内の中吊り広告、新商品体験会でのトークショー等を行った(甲50~甲52)。2023年、サッカー日本代表である堂安律選手とアンバサダー契約を締結、堂安選手出演のコマーシャル動画を多数公開しており、山手線内のデジタルサイネージ広告、テレビCMも放送している(甲53、甲54)。さらに、昨今盛り上がりをみせるFIBAバスケットボールワールドカップ2023の応援キャンペーンとして、バスケットボールワールドカップの観戦チケットのプレゼント企画も行っている(甲55)。TCLジャパンの日本での年間広告費の推移は以下のとおりである。
2017年 1,330,001円
2018年 4,594,182円
2019年 42,780,310円
2020年 113,538,167円
2021年 184,123,263円
TCLジャパンのスポーツスポンサーシップによる宣伝広告効果は絶大であり、TCLブランド及びTCLグループは日本国内で広く認識されている。
2 商標「TCL」とハウスマークとしての使用について
「TCL」は英語の辞書等に掲載のない造語である。TCLグループが使用する商標「TCL」は、お客様にとってのコアバリューである「The Creative Life」の意味を込めた造語商標である(甲3、甲56、甲57)。
TCLグループは、TCLブランドの立ち上げ以来、一貫して商標「TCL」をハウスマークとして約40年間にわたり、世界各国において使用し続けている。TCL商品は、世界160ヵ国以上で販売されており、TCLグループは、アフリカ、アジア-パシフィック、欧州、南米、中東、北米の国と地域向けに、35言語による81のホームページを開設している(甲58)。甲59から甲64は、例として、西アフリカ、韓国、イタリア、ウルグアイ、トルコ、メキシコ向けのウェブサイトの打ち出しであり、それぞれのサイトのトップページの左上に、商標「TCL」が一律に使用されていることが示されている。甲58のウェブページからリンクされた81のサイトでも同様に使用されている。加えて、各国の工場にも「TCL」が掲げられている。例として、甲65はポーランド工場、甲66はベトナム工場、甲67はメキシコ工場、甲68はタイ工場の外観の写真である。また、シンガポールでは「TCL」のタクシーが(甲69)、米国ラスベガスでは「TCL」の二階建てバスが走行しており(甲70)、宣伝広告を行っている。
3 商標登録の実績
申立人は、「TCL」商標を世界各地で使用することによって知名度を高めただけでなく、世界各国で登録することによって商標の保護に努めてきた。具体的には、申立人名義の商標の一覧である甲71と、申立人の前身であるTCL Corporation名義の商標の一覧である甲72の計548件である。一覧にリストされているのは全て、「TCL」又は「TCL」を含む商標である。申立人は、上記の他に、我が国においても、合計22件の「TCL」又は「TCL」を含む登録商標・出願を保有している(甲73)。
4 TCLグループ及び商標「TCL」の著名性について
上記で述べたとおり、1999年に中国で馳名商標と認定された申立人及びグループ企業の使用商標「TCL」は、1999年から現在に至るまで中国国内で需要者及び取引者の間に広く認識されており著名である。TCLグループは、半導体ディスプレイ事業、新エネルギー太陽光発電・半導体材料事業、産業金融事業、スマートフォン等の通信機器をはじめとするスマートデバイス事業等、多角的な事業経営をグローバルに行っている。TCLグループの主力商品である液晶テレビは、各方面で高評価を受け、権威ある賞を毎年受賞し、世界のテレビ売り上げシェアでは、2018年から2022年まで第2位を誇っている。米国では、2019年にテレビ市場売上げシェア第1位となった。ブランド戦略としてのスポーツスポンサーシップ契約、世界的観光名所の名称等各業界での協賛・提携による宣伝広告効果も加わり、遅くとも2018年から現在に至るまで、TCLグループは世界的影響力を有する大手ハイテクブランド企業として世界各国で認識されおり、TCLグループの液晶テレビについて使用されている商標「TCL」は、世界各国の需要者及び取引者間に広く認識されている。
日本においては、遅くとも2014年にはTCLのスマートフォンが販売されており、2019年に日本のテレビ市場に本格参入して以降、急速にそのシェアを拡大し、また高評価を受けて、TCLテレビ及びTCLグループは、遅くとも2020年には日本国内の需要者及び取引者に広く認識されていた。TCLジャパンのスポーツスポンサーシップによるブランド戦略の効果も加わり、TCLブランドは日本国内において知名度を高め続けている。
上記で述べたとおり、TCLグループは、一貫して商標「TCL」をハウスマークとして約40年間使用し続けており、「TCL」は、TCLグループを表す略称として世界的に広く認識されている。
以上より、TCLグループ及びTCLグループの使用する商標「TCL」は、本件商標の登録出願時及び査定時において、中国はもちろん、日本及び世界各国にて、需要者及び取引者間に広く認識されていた。
5 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、その構成中左側に「TCL」の欧文字を白抜きで表した青地の地球儀状の円形図形を配し、その右側に「TRANSCONTAINER LIMITED」の欧文字を青色で書してなる。「TCL」の文字は、「TRANSCONTAINER LIMITED」に比して一際大きく、目立つ態様であり、「TCL」を含む図形部分が独立して自他役務の識別標識として機能し得るものである。これに接する取引者・需要者は、当該文字「TCL」に強く注意を引かれ、かつ、印象づけられ、申立人及びそのグループ会社の使用する商標「TCL」を容易に想起・連想し得るものである。
上記で述べたように、申立人及びそのグループ会社の商標「TCL」は、中国では、1999年に馳名商標として認められており、その後も一貫して「TCL」の使用を継続し、発展を続けている。米国でも、2019年に米国テレビ市場売上げシェア第1位となり、「TCL」は、スマートテレビのブランドとして広く認識されている。TCLのスマートテレビは、各方面で高い評価を受け、世界シェア第2位を誇っている。TCLグループの商標「TCL」は、遅くとも2018年から現在に至るまで世界各国の需要者及び取引者間に広く認識されている。
日本でも、日本のテレビ市場に本格参入する以前から、TCLグループのニュースは頻繁に取り上げられており(甲76)、TCLグループの商標「TCL」が世界的に著名であることは日本国内の需要者及び取引者によって広く知られていた。2019年に日本のテレビ市場に本格参入してからは、急速にそのシェアを拡大し、2020年には日本国内においてもTCL商品が広く認識されるに至った。TCLジャパンのスポーツスポンサーシップによるブランド戦略の効果もあり、TCLブランドは日本国内において知名度を高め続けている。
上記で述べたとおり、申立人及びそのグループ会社の使用する商標「TCL」は、「The Creative Life」の意味を込めた造語商標である。
上記で述べたとおり、申立人及びそのグループ会社の使用する商標「TCL」は、申立人及びそのグループ会社の商号の一部であって、1985年のTCLブランド立ち上げ以来、一貫して使用しているハウスマークである。
上記で述べたとおり、申立人及びそのグループ会社は、半導体ディスプレイ事業、新エネルギー太陽光発電・半導体材料事業、産業金融事業、スマートフォン等の通信機器をはじめとするスマートデバイス事業等、多角的な事業経営をグローバルに展開する巨大企業グループである。
TCLグループであるTCL Communicationsは、スマートフォンの製造・販売を行っており、日本市場においても、TCLコミュニケーションジャパンによって2014年からスマートフォンが販売されている。スマートフォンは、本件商標の指定役務「携帯電話による通信」を行う通信業者のサービス窓口等で購入・販売されることが多く、需要者を共通とするものである。加えて、TCL Corporationは、スマートテレビであるTCL Android TVを2011年に発売以降、改良を重ね、Android TV、Google TVといったスマートテレビを次々と発表し(甲74)、2017年から日本においても販売している。スマートテレビとは、インターネットに接続して各種機能、コンテンツを提供する、通信機能を備えた次世代テレビである(甲74、甲75)。通信機能を備えるスマートテレビと本件商標の指定役務「電子計算機端末による通信,携帯電話による通信」とは、取引者・需要者を共通とし、密接な関連性を有する。多角経営を行う申立人又はそのグループ会社が関連事業として行う可能性も十分に考えられるものである。本件商標の指定役務について、本件商標が使用された場合には、これに接する需要者・取引者は、申立人及びそのグループ会社の使用している著名な商標「TCL」を想起、連想し、当該役務が、申立人及びそのグループ会社、又はそれらと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤信し、その役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
6 商標法第4条第1項第8号について
上記で述べたとおり、申立人及びそのグループ会社は、日本及び世界各国において著名であり、申立人及びそのグループ会社の社名に冠した「TCL」をハウスマークとして使用し続けた結果、世界各国において、「TCL」は、申立人及びそのグループ会社を表す略称であると認識されている。日本経済新聞電子版にて、「TCL」を検索すると、336件の記事がヒットする。そのうち、「TCL」の文字が、申立人又はそのグループ会社を表すものとして使用されているのは実に、323件である(甲76)。「TCL」は、日本国内において、申立人及びそのグループ会社の著名な略称として認識されているといえる。
本件商標は、上記で述べた構成及び態様からなり、申立人及びそのグループ会社の著名な略称「TCL」を含む図形部分が独立して自他役務の識別標識として機能し得るものである。
本件商標は、申立人及びそのグループ会社の承諾を得ずに登録されたものである。
よって、本件商標は、申立人及びそのグループ会社の著名な略称「TCL」を含む商標であって、申立人及びそのグループ会社の承諾を得ずに登録されたものであるため、商標法第4条第1項第8号に該当する。
7 商標法第4条第1項第19号について
上記で述べたとおり、申立人及びそのグループ会社が使用する商標「TCL」は、本件商標の登録出願時及び査定時において、日本及び世界各国において需要者・取引者に広く認識されていた。とりわけ、中国では、1999年に馳名商標として認められており、その後も一貫して「TCL」の使用を継続し、発展を続けている。米国でも、2019年に米国テレビ市場売上げシェア第1位となり、「TCL」は、スマートテレビのブランドとして米国において広く認識されている。日本でも、2019年に液晶テレビ市場に本格参入して以降シェアを急拡大しており、TCLジャパンのスポーツスポンサーシップによるブランド戦略により、急速に知名度を高め、広く認識されている。
上記で述べたとおり、申立人及びそのグループ会社が使用している商標「TCL」は、TCLグループ固有の造語商標であり、商号の一部であって、ハウスマークである。一方、本件商標は、上記で述べた構成及び態様からなり、「TCL」を含む図形部分が独立して自他役務の識別標識として機能し得るものである。これに接する取引者・需要者は、本件商標の図形部分に記された「TCL」に強く注意を引かれ、かつ、印象づけられ、TCLグループの使用する商標「TCL」を容易に想起・連想し得るものである。
TCLグループの主力商品であるスマートテレビは、インターネットに接続して各種機能、コンテンツを提供する、通信機能を備えた商品である。通信機能を備えるスマートテレビと、本件商標の指定役務「電子計算機端末による通信,携帯電話による通信」とは、取引者・需要者を共通とし、密接な関連性を有する。多角経営を行う申立人又はそのグループ会社が関連事業として行う可能性も十分に考えられるものである。
本件商標の商標権者は、TCLグループ及びその商品が、中国、米国をはじめとする世界各国及び日本国内の需要者及び取引者に広く認識されている状況において、多角経営を行う世界的企業グループである申立人及びそのグループ会社の主力商品であるスマートテレビと密接に関連を有する役務について、TCLグループの商標「TCL」を容易に想起・連想し得る態様で「TCL」を含む商標の出願を行った。かかる状況から本件商標権者は、TCLグループの知名度を利用して不正の利益を得る目的をもって出願したものと推認される。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
8 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、上記で述べた不正の目的の下で出願されたものであり、国際及び国内の商道徳に反するものであって、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際及び国内の信義に反し公の秩序を害するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の提出証拠及び主張によれば、次の事実を認めることができる。
ア 申立人及びその関連会社は、1981年に中国で「TCL」ブランドを設立し、ディスプレイパネル、テレビ、モバイル機器などを取り扱い、160カ国以上で製品とサービスを提供している(甲1)。
イ 申立人らの販売するテレビは、2019年に米国における売上シェアが第1位、2020年に液晶テレビ出荷台数が世界2位になった(甲10、甲11)。
ウ 申立人らは、2015年にTCLジャパンを設立し、2017年に日本でのテレビ販売を開始、2019年から本格参入した(甲39)。
申立人らの液晶テレビの日本における市場シェアは、本格参入した2019年から1年ほどは3%程度のシェアであり、数字を伸ばし始めたのは2021年初頭からである(甲44)。
TCLジャパンの売上高(営業収益)は、2018年に約5億4千万円、2019年に約13億8千万円あり、年間広告費として、2018年に約4百6十万円、2019年に約4千3百万円を支出したとされる(申立人の主張)。
なお、申立人は、2020年以前の具体的な広告宣伝手法を具体的に示す証拠は提出していない。
エ 申立人の関連会社であるTCLコミュニケーションジャパン株式会社の製造、販売するスマートフォンは、格安スマートフォンとして、2014年以降、我が国おいて販売されている(甲31~甲38)。
なお、申立人は、上記商品の我が国における販売実績(売上高、市場シェア)や広告宣伝実績(広告宣伝費、広告宣伝手法)などを客観的に示す証拠を提出していない。
(2)ア 上記認定事実によれば、申立人らは引用商標「TCL」ブランドの下で、テレビやモバイル機器などを製造、販売する中国企業であり、米国や世界市場におけるテレビの市場シェアでは上位を占めている大手企業ではある。
しかしながら、申立人らの我が国におけるテレビ事業は、2019年の本格参入から1年程度(本件商標の登録出願日である2020年1月27日まで)にすぎず、その間の販売実績も多くはなく、具体的な広告宣伝手法は不明で、大規模な広告宣伝実績も確認できないから、仮に海外市場における大手企業であるとしても、少なくとも本件商標の登録出願時において、引用商標「TCL」が、我が国における一般消費者の間において広く親しまれたようなテレビブランドになっていたとはいい難い。
また、申立人らの取り扱うスマートフォンは、2014年頃から我が国おいて販売されているとしても、その販売実績や広告宣伝実績の多寡を評価できるような証拠もないから、本件商標の登録出願時において、引用商標「TCL」が、我が国の一般消費者の間において広く親しまれたようなスマートフォンブランドであったとはいえない。
イ 申立人は、引用商標の我が国における周知著名性と関連して、2020年以降の我が国における販売実績や広告宣伝実績などを根拠に含めて主張、立証している。
しかしながら、商標法4条第3項の規定によれば、同条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号は、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しないとされている。
本件商標の登録出願は、上記1のとおり、令和2年(2020年)1月27日であるから、2020年初頭以後の販売実績や広告宣伝実績は、本件商標の登録出願時における引用商標の知名度の向上に直接つながるような事実関係ではない。
ウ 以上のとおり、申立人提出の証拠によっては、引用商標「TCL」は、本件商標の登録出願時において、その使用に係る商品(テレビ、スマートフォン等)の我が国における需要者の間において周知、著名となり、広く知られるに至っていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知性
引用商標「TCL」は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時において、その使用に係る商品(テレビ、スマートフォン等)の我が国における需要者の間において周知、著名となり、広く知られていたものではない。
(2)本件商標と引用商標の類似性
ア 本件商標は、別掲のとおり、青色の円輪郭の図形内に「TCL」の欧文字を白抜きで、その右側に「TRANSCONTAINER LIMITED」の欧文字を青色で横書きしてなるところ、その構成中、「TCL」の文字部分は一般的な辞書等に掲載された語ではないが、「TRANS」の文字部分は「超えて」の意味を、「CONTAINER」の文字部分は「容器。コンテナ。」の意味を、「LIMITED」の文字部分は「限られた。〈会社が〉有限責任の。」の意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)である。そして、「TRANSCONTAINER LIMITED」の文字部分は、特定の会社(有限責任会社)の名称を表してなることを連想させるとしても、全体として具体的な意味合いを認識させるものではない。
また、本件商標の図形部分と文字部分は、同じ色彩(青色)で、間隔をさほど空けずに、左右に近接してまとまりよく配置されているもので、図形部分の内側の「TCL」の文字部分は、右側の文字部分の構成文字の頭文字に相当するような関連性もあるから、構成全体で右側の文字部分の会社名に通じるロゴを表してなると看取できる。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「ティーシーエル」及び「トランスコンテナリミテッド」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
イ 引用商標「TCL」は、辞書等に掲載された語ではない。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ティーシーエル」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、いずれも「TCL」の構成文字を含む点を共通にするものの、「TRANSCONTAINER LIMITED」の文字部分の有無のほか、図形部分の有無により、全体として記憶される印象は異なるものとなり、相紛れるおそれはない。また、称呼においては、複数生じ得る称呼のうちの一つである「ティーシーエル」の称呼を共通にするとしても、もう一つの「トランスコンテナリミテッド」の称呼の有無に明瞭な差違があるから、相紛れるおそれはない。さらに、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれはないから、これらを総合して考察すれば、同一又は類似の商品又は役務について使用するときであっても、その出所について誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえず、類似性の程度は高くない。
(3)本件商標の指定役務と引用商標の使用に係る商品の関連性
本件商標の指定役務は、無線又はその他の電磁的方法により情報を伝達するための手段の設置又は運用を行う通信業者により提供されるサービスであり、他方、引用商標の使用に係る商品(テレビ、スマートフォン等)は、テレビジョン受信機やスマートフォンなどを製造する情報通信機械器具製造業者により製造、販売される商品である。
上記役務及び商品は、通信分野と関連する商品及び役務であるという漠然とした共通点があるとしても、通常、同一事業者により取り扱われるような商品又は役務ではないから、それぞれの関連性の程度は低い。
(4)小括
以上のとおり、引用商標「TCL」は、本件商標の登録出願時において、我が国において周知、著名なものではなく、また、本件商標との類似性の程度は高くなく、その指定役務と引用商標の使用に係る商品(テレビ、スマートフォン等)との関連性の程度は低いから、本件商標は、その指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が、申立人又は引用商標との具体的な関連性を想起、連想するとは考えにくく、また、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号について
(1)本件商標と引用商標の類似
本件商標と引用商標は、上記2(2)のとおり、同一又は類似する商標ではない。
(2)不正の目的について
申立人は、本件商標権者は、TCLグループ及びその商品が、中国、米国をはじめとする世界各国及び日本国内の需要者及び取引者に広く認識されている状況において、その主力商品であるスマートテレビと密接に関連を有する役務について、「TCL」を含む商標の登録出願を行ったから、TCLグループの知名度を利用して不正の利益を得る目的をもって登録出願した旨を主張する。
しかしながら、本件商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時において、その使用に係る商品(テレビ、スマートフォン等)の我が国における需要者の間において周知、著名となり、広く知られていたものではなく、また、上記2(2)のとおり、引用商標とは類似する商標ではないから、申立人の主張は一部前提を欠くものであり、申立人主張の事実関係に基づき、本件商標の登録出願の目的を推し測ることはできない。
その他、申立人は、本件商標の登録出願の目的及び経緯から不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的)があることを具体的に裏付ける証拠を提出していない。
そうすると、本件商標は、申立人の提出証拠によっては、不正の目的をもって使用をするものとは認められない。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標ではなく、不正の目的をもって使用をするものとはいえないから、その他の要件について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、上記3(2)のとおり、申立人の提出証拠によっては、登録出願の目的及び経緯に不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的)をもって使用をするものとはいえない。
その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
そうすると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標ではないから、商標法4条第1項第7号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第8号について
(1)申立人の略称の著名性について
ア 引用商標「TCL」は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時において、その使用に係る商品(テレビ、スマートフォン等)の我が国における需要者の間において周知、著名となり、広く知られるに至っていたものではない。
イ 申立人は、日本経済新聞電子版における「TCL」の検索結果(甲76)を根拠に、「TCL」の文字が、日本国内において、申立人及びそのグループ会社の著名な略称として認識されている旨を主張するが、当該検索結果の中でも、申立人らを「TCL集団」や「TCL科技集団」などのように指称する記事も多く見られるから、引用商標「TCL」の表記だけで申立人らを特定できる略称として我が国で一般に認識されているとは考えにくい。
ウ 以上のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、申立人らの略称として、我が国において著名になっていたとは認められない。
(2)本件商標について
本件商標は、上記2(2)アのとおり、その構成中「TCL」の文字部分は、その右側の「TRANSCONTAINER LIMITED」(特定の会社の名称を連想させる。)の構成文字の頭文字に相当するような関連性があるから、構成全体で当該会社名に通じるロゴを表してなると看取できる。
そうすると、本件商標の構成中、「TCL」の文字部分は、申立人の略称であることを想起させるものではない。
(3)小括
以上によれば、本件商標は、他人(申立人)の著名な略称等を含む商標とはいえないから、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-900145