商標異議申立
2023-900143
- 審判番号
- 2023-900143
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-120662
- 登録番号
- 6689427
- 請求日
- 2023年06月19日
- 審決日
- 2024年03月01日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】山耕株式会社
- 【異議申立人】モンスター エナジー カンパニー
- 【異議申立人代理人】柳田 征史
- 審判長/審判官
- 審判長 冨澤 武志
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T1651.261-Y (W18) / T1651.262-Y (W18) / T1651.263-Y (W18) / T1651.271-Y (W18)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6689427号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6689427号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6689427号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、令和4年10月6日に登録出願、第18類「かばん類,袋物」を指定商品として、同5年3月13日に登録査定され、同年4月13日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は以下の1及び2のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
1 登録第5788675号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品:第9類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:平成26年12月25日
設定登録日:平成27年8月28日
2 登録第5431413号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第5類、第29類、第30類、第32類及び第33類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:平成22年10月27日
設定登録日:平成23年8月12日
第3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第494号証(枝番号を含む。以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。)を提出した。
1 申立人の使用に係る爪の図柄の周知著名性
(1)MONSTERブランドの創設と爪の図柄の使用
申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり(甲3)、創業時以降、アルコールを含有しない飲料(炭酸飲料、天然ソーダ水、清涼飲料、フルーツジュース、エナジ一ドリンク等の飲料製品の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事していたが、2015年6月以降はエナジードリンクの事業に注力している(甲2、甲58)。
申立人は、2002年に「MONSTER」なるエナジードリンクのブランド(以下「MONSTERブランド」という。)を創設し、米国で同年3月から広告宣伝を開始し、同年4月から製造販売を開始した。MONSTERブランドのエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)の第1号は、個別製品名として「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」が採用された(甲4、甲7、甲18、甲58)。
これ以降現在に至るまで、申立人は、「MONSTER」(モンスター)の頭字「M」とモンスターの爪の形状を象って創作した図柄(甲328)(以下「爪の図柄」という。)を申立人商品の出所識別標識として日本を含む全世界で継続的に使用している。
2002年に米国で最初に発売されたMONSTERブランド第1号のエナジードリンク「MONSTER ENERGY」は、従来の清涼飲料製品にはほとんど採用されていなかった黒色をベースにした容器(缶)が採用され、当該容器は、中央の上部に爪の図柄を大きく目立つ態様で表示し、下方にブランド名の「MONSTER」の文字を特徴的な書体で表示(甲416)したデザイン(甲58)が特徴的であり、その独特のデザインから放たれる野性味あふれる独特な雰囲気が経済・ビジネス界でも注目を浴び(甲56、甲57)、若い世代の男性を中心に人気商品となった。
申立人は、上記の個別製品「MONSTER ENERGY」の発売後、翌年2003年からは米国外での販売も開始し(甲58)、2002年以降、現在に至るまで「MONSTER」の文字を包含する個別製品名を使用して、味わいが異なる様々なエナジードリンクの販売を継続しており、当該個別製品の全てに爪の図柄を顕著に表示した容器を採用している(甲19~甲32、甲407~甲415)。
申立人商品は、現在、世界130か国以上で販売されており、米国で最も売れているエナジードリンクであり、全世界では2017年の米ドルベースで第2位の売上げを記録(甲58)した世界でも有数のブランドといえるものである。
国内市場における申立人商品は、申立人と国内独占販売契約を締結したアサヒ飲料株式会社(以下「アサヒ飲料」)を通じて、2012年から現在まで継続して販売されている。
国内発売第1号の申立人商品は、2012年3月15日に広告を開始し、同年5月8日に発売された「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」の2種類であり(甲5~甲7、甲12、甲14、甲58)、上記2種の個別製品が発売されると、その直後から国内でもたちまち人気商品となり、同年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8、甲65~甲67)、その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9、甲65~甲67)。
さらに、上記2種の新発売以降も、現在に至るまで、味わいが異なる様々なMONSTERブランドの個別製品の製造、販売を継続している(甲10、甲13、甲15~甲17、甲59~甲62、甲101~甲103、甲323、甲324、別紙1)。
(2)販売国及び売上高
本件商標の登録出願前の2010年時点で、申立人商品は、世界57か国以上で販売されており、国内販売を開始した2012年時点では世界90か国以上で販売されており、「米国No.1のエナジードリンク」として国内の需要者の間で認知されていた(甲7、甲10)。
2019年5月14日時点では、日本に加えて世界130か国以上で販売され、米国で最も売れているエナジードリンクであり、全世界では2017年の米ドルベースで第2位の売上げを記録した(甲58)。
申立人商品は、2002年の発売以来、220億缶以上が販売され、世界中で毎年30億缶以上を売上げ、全世界で総額350億米ドルを超える収益を生み出している。全世界における小売販売額は毎年60億米ドルを超え、申立人の全売上の90%以上を占める(甲58)。
また、米国外の需要者に対する申立人商品の2016年の総売上高は、24.6%増の約8億8,870万米ドルであり、2015年は前年の約6億5,790万米ドルから8.4%増の約7億1,320万米ドルであり、2014年は、前年の約5億8,060万米ドルから13.3%増加の約6億5,790万米ドルであり、2013年は前年の約5億1,400万米ドルから13%増加した。なお、2012年は、前年の3億8,100万米ドル以上からおよそ35%増加の約5億1,400万米ドルであり、2011年は前年の2億4,060万米ドルから58%以上増加した(甲58)。
日本国内の市場では、2012年5月の販売開始から2018年12月までの期間において約8億3,800万缶を超える申立人商品を販売し、当該期間の総販売額は5億7,600万米ドルを超え、日本円で620億円以上に達した。申立人商品は、日本のコンビニエンスストア、自動販売機、キオスク、スーパーマーケット、列車の売店、会員登録が必要な会員制ストア、店舗、ゲームセンター、ドラッグストア及びホームセンターなどを通じて販売されている(甲58)。
(3)爪の図柄の使用態様
申立人は、MONSTERブランドの統一されたイメージを確立、浸透させるため、2002年のMONSTERブランド創設以降現在に至るまで、全世界的に変わることなく一貫して、申立人商品のすべての個別製品名に「MONSTER(モンスター)」の文字を使用し、その包装容器(缶、瓶)には特徴的書体で表示した「MONSTER」の文字(甲416)に加えて、MONSTERの頭文字「M」とその爪を象った爪の図柄を独立して看者の目を惹きつける顕著な態様で表示して使用している。
また、別紙1及び2から明らかなとおり、申立人商品のすべての個別製品に統一的デザインの包装容器(缶、瓶)が採用されており、その正面には、大きく目立つ態様で表示し爪の図柄が独立して看者の目を惹く顕著な態様で表示されている(甲7、甲10、甲14、甲15、甲19~甲32、甲58~甲62、甲101~甲103、甲127、甲128、甲253、甲256、甲257、甲263、甲264、甲291、甲323、甲324、甲353~甲361、甲407~甲415、甲434~甲446、甲460、甲475~甲477、甲451~甲453、甲478~甲480)。
(4)広告宣伝活動
申立人は、エナジードリンクの中心的需要者層である若い世代の男性(甲401)にMONSTERブランドを強くアピールするため、独自のマーケティング戦略に基づいて申立人商品の広告宣伝活動を全世界的に行っている。
申立人が2002年以降に費やした広告費は、2019年5月14日時点で46億米ドルを超え、我が国では、申立人商品の販売を開始した2012年から2017年末までに広告宣伝費として7,680万米ドルを費やした(甲58)。
申立人商品の広告宣伝活動の特徴は、従来のテレビコマーシャルや印刷媒体(新聞、雑誌)を用いた広告はほとんど行わず、これに代わり、国際的に活躍する有名人気アスリート、チーム、ミュージシャン等に対するスポンサー活動を中核に据え、スポーツイベント等や大手コンビニエンスストアとタイアップした申立人商品のサンプル配布、販売キャンペーン、MONSTERブランドの非売品グッズの配布などを頻繁に実施している。
また、申立人商品の中心的な需要者層である10~30代の若い世代が一般に多く利用(甲404、甲405)するウェブサイトやソーシャルメディアなどのインターネットメディアを駆使した情報発信によって、MONSTERブランドの認識度を高め、申立人商品の販売促進を行っている(別紙9)。
加えて、申立人商品及びMONSTERブランドの広告活動の一環として、申立人は、MONSTERブランドをアパレルメーカー等に使用許諾し、様々なMONSTERブランドライセンス商品(Tシャツ、スウェットシャツ、パーカー、帽子、ヘルメット、かばん類、ステッカー、転写シール等)をライセンシーを通じて、あるいは、申立人が運営するオンライン通販サイトやスポーツイベント等の会場で販売している。また、ビデオゲーム会社と提携してMONSTERブランドを使用したビデオゲームソフトの開発や当該ビデオゲームの発売とタイアップした申立人商品の共同販売促進活動を継続的に実施している(甲58 ほか)。
MONSTERブランドの国内市場での人気、ブランド認知度の高まりに便乗して、申立人の商標権を侵害する様々な模倣品(帽子、衣類、手袋、バッグ、ステッカー、転写シール等)が海外で製造されており、税関で輸入が差し止められた事案が多数存在する(甲169~甲224、別紙8)。
(5)第三者の記事(表彰等)
申立人とそのMONSTERブランドは、「TIME」「FORTUNE」「NEWSWEEK」「FORBES」といった我が国でも購読できる有名経済・ビジネス誌で度々紹介され、また、数々の賞を受賞している(甲54、甲55、甲391~甲393)。
このような数々の受賞歴に加え、有名経済・ビジネス誌には、申立人の有名アスリート等に対するスポンサー活動を通じたMONSTERブランドのマーケティング戦略やその業績の高成長ぶりを賞賛する記事が数多く掲載されている(甲49~甲53、甲56、甲57)。
(6)国内外における商標登録
申立人は、我が国を含む世界150を超える国及び地域において、MONSTERブランドマークを商標登録している(甲58、甲490~甲494)ほか、爪の図柄は、申立人の本国である米国では、爪の図柄の図案画、並びに爪の図柄をMONSTERブランドのエナジードリンクの黒地の缶の正面及び裏面に描いた作品について著作権登録も取得している(甲486、甲487)。
(7)ブランド認知度及び市場占有率
本件商標の登録出願前に発行された2012年及び2014年の複数のエナジードリンク市場についてのウェブサイト及び市場調査に関する記事(甲311、甲314、甲317~甲320、甲383~甲385)を総合すれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時の国内エナジードリンク市場における申立人商品のブランド認知度は、首位のレッドブル(RedBull)に次ぐ第2位であり、両者が「二大ブランド」として認識されていたことは明らかである。
さらに、2013年の国内エナジードリンク市場出荷総数の約950万ケース(30本換算)のうち、レッドブル(RedBull)が550万ケース、申立人商品が240万ケースを占め、当該二大ブランドで市場の8割以上を独占していたことは明らかである。
したがって、2013年の時点で申立人商品のエナジードリンク市場における占有率は既に25%を超えていたことは明らかである。
そして、上記の市場調査以降の2016年ないし2022年の複数のエナジードリンク市場についてのウェブサイト及び市場調査に関する記事(甲312、甲321、甲322、甲448、甲476、甲479、甲450)を総合すれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、国内エナジードリンク市場において、申立人商品の販売額が全体の約40%を占めて首位であったこと、また、販売数量においても申立人商品が首位であったこと、さらには、国内販売市場の約40%を独占している申立人商品のすべての個別製品に爪の図柄が商品出所識別標識として使用されていたことが明らかである。
(8)小括
上記項目(1)ないし(7)で述べた事実を総合的に勘案すれば、申立人の登録及び使用に係る爪の図柄は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
2 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由
(1)引用商標として示す爪の図柄は、「MONSTER」(モンスター)の語の頭文字「M」とヴェロキラプトル(恐竜)の爪の形から着想を得て、独創的なデザインに高められた創造標章である。爪の図柄は、申立人のMONSTERエナジードリンクの缶を、ギザギザの金属の縁を残して引き裂く「爪」のイメージを喚起させるデザインとして考案され、採択されたものであり、生来的に商品出所識別力が極めて強い商標ということができる。
爪の図柄の図案画並びにこれを黒地の「MONSTER」エナジードリンク缶の正面及び裏面に描いた作品は、米国で著作権登録もなされている(甲486、甲487)。
爪の図形(引用商標1)は、左向きに尖った微細な突起部を有する上端部からおおむね垂直下方向の細く尖った下端部へ延びる若干長さが異なる細長い帯様図形3本を、おおむね互いに平行に均等間隔で並べ、当該3本のうち中央の帯様図形を最も長くしたものから構成される商標であり、各帯様図形の輪郭線は滑らかではなく、不規則な形状の微細な突起を多数有する。
(2)本件商標は、左上方向の細く尖った上端部から右斜め下方向の細く尖った下端部へ延びる若干長さが異なる細長い帯様図形3本に赤色を付して茶色で縁取りしたものを、おおむね互いに平行に均等間隔で並べ、当該3本のうち中央の帯様図形を最も長くしたものから構成される商標であり、各帯様図形の輪郭線は滑らかではなく、不規則な形状の微細な突起を多数有する。
(3)本件商標は、不規則な輪郭線と細く尖った先端部を有する細長い帯様図形3本をおおむね互いに平行かつ均等間隔で並べ、当該帯様図形のうち、中央に位置するものを最も長くして構成されている点、各帯様図形の輪郭線が滑らかではなく、不規則な形状の微細な突起を多数有する点で、爪の図柄(引用商標1)と構成の軌跡を同じくするものであり、出所識別標識として記憶に残る外観の印象が極めて近似している。
加えて、本件商標は、不規則な輪郭線と細く尖った先端部を有する図形3本を並べ、中央に位置するものを最も長くした外観が、モンスター、恐竜等の「鋭く尖った強靭な爪」の観念を喚起させる点で、爪の図柄(引用商標1)から想起連想される観念と共通する。
したがって、本件商標と爪の図柄(引用商標1)を時と場所を異にして離隔的に観察した場合、本件商標と爪の図柄(引用商標1)は、外観においては記憶に残る印象が極めて近似し、「鋭く尖った強靭な爪」といった観念を想起連想させる点で共通し、出所識別標識として相紛らわしい印象を与えることが明らかであるから、両商標は類似のものというべきである。
(4)本件商標は、第18類「かばん類,袋物」(以下「本件指定商品」という。)に使用されるものであり、本件指定商品は、引用商標1の登録に係る指定商品中の第18類「バッグ,バックパック,財布,ブリーフケース,スーツケース,キーケース,ダッフルバッグ,書類入れかばん,ハンドバッグ,汎用スポーツバッグ,汎用のキャリーバッグ,その他のかばん類,袋物」と同一又は類似のものである。
そして、引用商標1は、本件商標よりも先に登録出願されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
上記のとおり、本件商標は、申立人の使用に係る爪の図柄と外観の印象及びこれより想起連想される観念が共通し、商品出所識別標識として紛らわしいものであるから、両者の類似性の程度は極めて高い。
申立人及びその商標ライセンシーは、本件指定商品を含む様々な一般消費者向け商品に爪の図柄を使用している(甲16、甲17、甲47、甲48、甲58、甲63、甲64、甲68~甲71、甲75~甲79、甲87~甲100、甲108、甲111~甲115、甲117~甲119、甲123、甲124、甲132~甲135、甲138~甲145、甲147~甲168、甲226~甲230、甲232、甲233、甲235~甲237、甲239~甲256、甲265、甲267~甲270、甲272~甲274、甲283、甲284、甲286~甲289、甲291~甲293、甲296、甲323、甲324、甲335、甲336、甲338~甲352、甲354、甲434、甲436、甲438、甲440、甲441、甲443、甲451、甲454~甲465、甲467~甲473、甲475、甲478、甲481~甲485)。
したがって、本件商標は、申立人及びその商標ライセンシーが爪の図柄を実際に使用しているライセンス商品と同一又は類似のものに使用されるものであり、爪の図柄は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、MONSTERエナジードリンクをはじめとする申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして取引者、需要者の間で広く認識されていた。
本件指定商品の最終的な需要者は一般消費者であり、申立人商品の最終的な需要者も一般消費者であるから、本件指定商品と申立人商品は、需要者を共通にする。
また、一般に、本件指定商品(かばん類、袋物)については、商標をワンポイントマークとして商品に直接表示することが多く行われているという取引の実情がある。
このような本件指定商品の取引の実情に照らせば、本件商標と爪の図柄は、商品出所識別標識として需者の記憶に残る外の印象が極めて近似するというべきであり、恐竜等の「鋭く尖った強靭な爪」といった共通の観念を喚起させることとあいまって、同一の出所を表示するものであると需要者を誤信させる可能性が高い。
さらに、本件指定商品の最終的な需要者は一般消費者であるから、本件指定商品の通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
以上の事柄を総合すれば、本件商標が本件指定商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人がその商品及び役務の出所識別標識として長年継続使用している爪の図柄及び申立人を想起連想し、当該指定商品が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者(例えば、申立人から商標使用許諾を受けたライセンシー)の取り扱いに係るものであると誤信することにより、その出所について混同を生じるおそれがある。
また、爪の図柄は、申立人の商品の代表的出所識別標識として、その製造販売に係るMONSTERブランドのエナジードリンクのすべての個別製品に使用されていることに加えて、申立人から商標使用許諾を受けた者の製造販売に係るアパレル製品、かばん類、帽子、スポーツウエア、スポーツへルメット、ステッカー、ビデオゲームソフト等の各種ライセンス商品、申立人の支援を受けている世界的に有名なアスリート及びチームが競技会で着用又は使用するスポーツウエア、運動用具、自動車、オートバイなどに付されており、これらの大量の模倣品が水際で輸入差止めされる程度まで国内外で高い人気を獲得するに至っている。
このような事情の下で、爪の図柄を容易に想起連想させる本件商標が使用された場合は、2002年から現在に至る申立人による継続的使用と営業努力によって申立人の商品の出所識別標識として広く認識されるに至っている爪の図柄の出所表示力が希釈化するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであって(甲3)、我が国においては、アサヒ飲料を通じて、2012年5月に「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」の販売を開始し、その販売量は同年9月時点で年間売上目標の100万箱を突破し、12月には157万箱となった(甲5~甲9、甲12、甲14、甲58、甲65~甲67)。
イ 申立人は、我が国において、2013年5月に「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」(モンスターアブソリュートリーゼロ)(甲10ほか)、2014年8月に「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3)(甲59ほか)、同年10月に「MONSTER COFFEE」(モンスターコーヒー)(甲60ほか)、2015年7月に「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラ)(甲101ほか)、2017年6月に「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」(モンスターロッシ)(甲256ほか)、2018年4月に「MONSTER CUBA LIBRE」(モンスターキューバリブレ)(甲323ほか)、2019年4月に「MONSTER PIPELINE PUNCH」(モンスターパイプラインパンチ)(甲353ほか)、2020年6月に「MONSTER ULTRA PARADISE」(モンスターウルトラパラダイス)(甲434ほか)、2021年3月に「MONSTER SUPER COLA」(モンスタースーパーコーラ)(甲436ほか)、2022年4月に「MONSTER MANGO LOCO」(モンスターマンゴーロコ)(甲445ほか)、同年8月に「MONSTER REHAB LEMONADE TEA」(モンスターリハブレモネードティー)(甲478ほか)等の「MONSTER」の文字を包含する個別製品(以下、これらの商品と上記アの商品をまとめて「申立人商品」という。)の販売を開始し、当該個別製品の容器に、別掲4のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲4商標」という。)又はこれとともに別掲2及び別掲3の爪の図柄の商標(以下「申立人商標」という。)を表示している(甲7、甲10、甲59、甲60、甲101、甲256、甲323、甲353、甲434、甲436、甲445、甲478 ほか)。
ウ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、別掲4商標又はこれとともに申立人商標を使用している(甲73~甲80、甲82 ほか)。
エ 我が国において、別掲4商標又はこれとともに申立人商標が表示されたステッカー、衣類、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98 ほか)。
オ 平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標権を侵害する疑いがある貨物品(帽子、衣類など)が多数発見されている(甲169~甲224)。
カ JMR生活総合研究所による消費者調査 No.196「エナジードリンク(2014年(平成26年)7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であった(甲311)。また、同消費者調査 No.232「エナジードリンク(2016年(平成28年)8月版)」でも、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」であり、2位は「モンスターエナジー」であった(甲312)。
キ 飲料総研の調査によれば、我が国における2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317 ほか)。
ク ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年(平成26年)4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTER ENERGY」であった(甲319)。
ケ True Dataの調査による全国のドラッグストアのPOSデータをもとにした買い物指数(2022年5月)によれば、レッドブル・エナジードリンクを抑え、モンスターエナジーの売り上げが独走状態となり、トップシェアを獲得した(甲448)。
コ 日経POS情報の調査によるエナジードリンク、メーカー別販売金額シェア(2022年9月)によれば、モンスターエナジーが40%前後のトップシェアを獲得している(甲450)。
サ 申立人及びアサヒ飲料は、本件商標の登録出願日前から、申立人商品のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等において、申立人商品の画像、別掲4商標、「MONSTER ENERGY」「モンスターエナジー」の文字若しくはこれらの文字とともに申立人商標を表示又は掲載している(甲69、甲71、甲101、甲112、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124 ほか)。
(2)上記(1)のとおり、申立人及びアサヒ飲料は、我が国において、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで、様々な申立人商品を販売するとともに、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じ、申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったこと、申立人商品の認知度が2014年(平成26年)において、その数値は31%と47.6%と差異はあるものの、いずれの調査でも第2位であったことが認められ、2016年(平成28年)の認知度はその数値は不明であるものの2位であったと推認できることに加え、2022年(令和4年)の販売金額シェアにおいて、申立人商品がトップシェアを獲得しているとされていることを併せみれば、申立人商品は、本件商標の登録出願の日(令和4年10月6日)前から、登録査定日(令和5年3月13日)はもとより現在においても継続して、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
そして、申立人商品は、そのほとんどの容器の中央に、「MONSTER ENERGY」の文字が別掲4のとおりの態様で表示、又は、これとともに申立人商標が表示されていること、及びニュースリリース、各種記事などにおいて「MONSTER ENERGY」「モンスターエナジー」と表示され、「モンスターエナジー」ブランドと称されていることから、「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字は、いずれも本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人及びアサヒ飲料の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえる。
しかしながら、申立人商品の広告宣伝は、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じて行われているものの、老若男女を問わず幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じたものとはいえないばかりか、我が国における申立人商品の清涼飲料に対する市場占有率等も確認することができないこと等を総合的に判断すると、申立人商品は、幅広い需要者層を有する一般的な清涼飲料の分野においてまでも、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
また、申立人商標は、ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト、販促用商品等において、「MONSTER ENERGY」若しくは「モンスターエナジー」又は別掲4商標とともに表示又は掲載されているように、常に当該文字等とともに表示等されていることからすれば、これに接する需要者は、そのような場合に限って、申立人商標を申立人及びアサヒ飲料の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されることはあるというべきである。
さらに、申立人商標は、申立人商品の容器に別掲4の商標とともに表示されてはいるものの、申立人商標のみが表示されている商品は見当たらない。
そうすると、申立人商標は、「MONSTER ENERGY」若しくは「モンスターエナジー」又は別掲4商標と関連なく、単独で表示された場合には、需要者においてエナジードリンクを表示するものとして理解されるとはいい難い。
したがって、申立人商標のみでは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
申立人は、本件商標は、引用商標1との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当すると主張しているので、本件商標と引用商標1との関係について、以下検討する。
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、左上方向から右斜め下方向に向かって延びる薄茶色の輪郭線内に赤色の上端から中央部分に向かって徐々に幅が太くなり、下端に向かって徐々に幅が細くなる不規則なギザギザ状の輪郭を有する若干長さの異なる帯様図形を、3本斜め方向に、中央の帯様図形を最も長くし、おおむね互いに平行に均等の間隔で配した構成からなるものである。
上記の構成からなる本件商標は、構成全体をもって特徴的な図形を表したものと認識されるものであり、当該図形は、特定の事物等を表すものとして認識されているというような事情も見いだせないことから、これより特定の称呼及び観念は生じないものである。
(2)引用商標1について
引用商標1は、別掲2のとおり、上端に左向きに突起を設け、黒色の下向きに徐々に幅が細くなる不規則なギザギザ状の輪郭を有するかぎ裂き状の長さの異なる帯様図形を、3本縦方向に、中央の帯様図形を最も長くし、おおむね互いに平行に均等の間隔で配した構成からなるものである。
上記の構成からなる引用商標1は、構成全体をもって特徴的な図形を表したものと認識されるものであり、上記1のとおり、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているということはできず、特定の事物等を表すものとして認識されているというような事情も見いだせないことから、これより特定の称呼及び観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1とは、不規則なギザギザ状の輪郭を有する帯様図形を3本縦方向に、中央の帯様図形を最も長くし、おおむね互いに平行に均等間隔で配されている点において共通するとしても、本件商標は、左上方向から左斜め下方向に向かって延びる薄茶色の輪郭線で赤色の上端から中央部分に向かって徐々に幅が太くなり、中央部分から下端に向かって徐々に幅が細くなる帯様図形3本から構成されるのに対し、引用商標1は、上端に左向きに突起を設け、黒色の下向きに徐々に幅が細くなる黒色のかぎ裂き状の縦方向の帯様図形3本から構成されるものであるから、その印象は顕著に異なるため、両者を時と所を異にして離隔的に観察した場合であっても、外観において、十分に区別し得るものである。
そして、本件商標と引用商標1は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないことから、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観において十分区別できるものであるから、両者は非類似の商標であり、別異の商標というべきである。
(4)小括
したがって、本件商標と引用商標1とは、上記のとおり、非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人商標の周知性について
上記1のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
(2)本件商標と申立人商標との類似性の程度
上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1とは、非類似の商標であるから、引用商標1と同一又は類似する申立人商標も、本件商標とは、非類似の商標であって、別異の商標であるから、類似性の程度は高いとはいえない。
(3)出所の混同を生ずるおそれについて
上記(1)のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、上記(2)のとおり、本件商標と申立人商標の類似性の程度は高いとはいえないことから、本件商標の指定商品の需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者をして申立人商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-900143