商標異議申立
2023-900127
イタロバレンティノ、イタロバレンチノ、イタロバレンティーノ、イタロバレンチーノ
- 審判番号
- 2023-900127
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-111238
- 登録番号
- 6683584
- 請求日
- 2023年05月30日
- 審決日
- 2026年06月10日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】有限会社ティーアンドケーデザインアソシエイション
- 【異議申立人】ヴァレンティノ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
- 【異議申立人代理人】山尾 憲人
- 【異議申立人代理人】田中 陽介
- 【異議申立人代理人】久保 怜子
- 審判長/審判官
- 審判長 板谷 玲子
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 藤田 和美
- 分類
- T1651.261-Z (W25) / T1651.262-Z (W25) / T1651.263-Z (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法43条の3第2項商標法43条の21号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第7号、商標法第43条の9第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6683584号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6683584号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6683584号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和4年9月12日に登録出願、第25類「被服,履物,帽子,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品として、同5年2月17日に登録査定、同年3月24日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議申立ての理由において、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第10号に該当するとして引用する商標は、以下の2件であり、これらの商標権は、いずれも、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第852071号商標(以下「11号引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和43年6月5日
設定登録日:昭和45年4月8日
書換登録日:平成22年8月11日
指定商品:第25類「被服(手袋を除く)」並びに第20類及び第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(2)登録第972813号商標(以下「11号引用商標2」という。)
商標の構成:VALENTINO
登録出願日:昭和45年4月16日
優先権主張日:1969年(昭和44年)10月16日(オランダ王国)
設定登録日:昭和47年7月20日
書換登録日:平成16年5月26日
指定商品:第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり」並びに「腕止め」を含む第26類及び第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
2 当合議体が、商標法第43条の9第1項に基づき職権により審理を行った結果、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、以下の2件であり、これらの商標権は、いずれも、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5435918号商標(以下「11号引用商標3」という。)
商標の構成:VALENTINO(標準文字)
登録出願日:平成23年4月5日
設定登録日:平成23年9月2日
指定商品:第25類「男性用被服,女性用被服,子供用被服,コート,レインコート,オーバーコート,ジャケット,ドレス,スーツ,スポーツに適したズボン,ズボン,ブラウス,プルオーバー型シャツ,ティーシャツ,ワイシャツ類及びシャツ,セーター類,プルオーバー型セーター,ベスト,ガウン,ズボン下,シュミーズ,パンツ,下着,靴下,ネクタイ,スカーフ,ストッキング,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服,運動用特殊衣服」
(2)国際登録第975800号商標(以下「11号引用商標4」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
国際商標登録出願日:2008年7月22日
優先権主張日:2008年5月26日(Italy)
設定登録日:平成21年6月12日
指定商品:第25類「Clothing, footwear, headgear.」及び「Leather and imitations of leather, and goods made of these materials and not included in other classes; whips, harness and saddlery.」を含む第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
以下、11号引用商標1ないし11号引用商標4をまとめていうときは、単に「11号引用商標」という。
3 申立人が、本件商標にかかる登録異議申立ての理由において引用する商標は、別掲4ないし別掲8のとおりの構成からなる標章(以下、別掲4を「引用商標1」、別掲5を「引用商標2」、別掲6を「引用商標3」、別掲7を「引用商標4」及び別掲8を「引用商標5」という場合があり、これらをまとめていう場合は「引用商標」という。)であり、いずれも、申立人が同人の業務に係る商品「婦人服,紳士服,靴,ネクタイ,ベルト,バッグ,時計,眼鏡,サングラス,化粧品,香水,ネックレス,イヤリング,ピアス,ブレスレット,家具,インテリア,シガレットケース等」に使用して、我が国、イタリア、欧州、北米、アフリカ、アジア等において需要者の間に広く知られている旨主張するものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項19号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号の規定により、その登録が取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第107号証(以下「甲○」と記載する。)を提出した。
1 具体的理由
(1)本件商標について
本件商標は、2022年9月12日付けで、有限会社ティーアンドケーデザインアソシエイション(以下「商標権者」という。)によって登録出願され、2023年3月24日に設定登録されたもので、本件商標において優先権主張はされておらず、その先願権発生日は出願日である2022年9月12日である(甲1)。
(2)申立人について
申立人は、1933年に生まれたValentino Garavani氏(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)が立ち上げた引用商標に係るブランド「VALENTINO」を世界的に展開しており、本国イタリア及び日本、欧州、北米、アフリカ、アジア等において婦人服、紳士服、靴、ネクタイ、ベルト、バッグ、時計、眼鏡、サングラス、化粧品、香水、ネックレス、イヤリング、ピアス、ブレスレット、家具、インテリア、シガレットケース等の販売を行っていることが、審決においても認められている(甲5)。
(3)引用商標について
引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5は、引用商標に係るブランドの創業者の名前及びその名前をロゴ化した「V(図形)」を含む商標であり、「VALENTINO」(引用商標2)は、デザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏が1959年にローマで独立して店舗を開いた後、1960年に最初のコレクションを発表した際に使用が開始されている(甲5)。
引用商標の使用実績及び著名性は、既に複数の審決において認められており(甲5~甲11)、これら審決においても明らかなとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏のデザインによる商品は、バッグ、アクセサリー、婦人服、紳士服、香水、化粧品、家具、インテリア、ベルト、靴等広範囲にわたり、「Valentino Garavani」及び「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」、その略称である「VALENTINO」又は「ヴァレンティノ」は、各種ファッション雑誌、新聞記事等において、ファッション関連の商品のデザイナー「Valentino Garavani(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」の略称として、また、同氏のデザイナーブランドである「Valentino Garavani」及び「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」を示す表示として、現在においても繰り返し使用されている(甲5)。
上記商品は、本国イタリア及び日本を含む世界各国において販売されており、審決においても、我が国における当該ブランドのショップリストが認定されており(甲5)、現在の申立人ホームページからも日本全国において多数の店舗(24店舗)を有することが明らかであることに加え(甲12)、全世界においても店舗を有している(甲13)。
(4)引用商標の使用及びその周知性について
ア 使用期間
引用商標1の「VALENTINO GARAVANI」は、デザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏が1959年に独立して店舗を開いた後、1960年に最初のコレクションにて使用されているとおり、本件商標の出願日である2022年9月12日以前にイタリア及び我が国を含む世界各国で大々的に使用されている(甲5)。
引用商標に係るブランドの創業者ヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏は、1967年にはデザイナーとして最も栄誉があるファッションオスカー賞を受賞し、作品がライフ誌、ニューヨークタイム誌等著名な新聞、雑誌に「Valentino Garavani(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」の作品として掲載され、「Valentino Garavani」とともに「VALENTINO」の名が世界に知れわたり、我が国においても、1976年9月にヴァレンティノ・ガラヴァーニの76秋冬コレクションが大阪ロイヤルホテルで開催したことが、新聞各社によって報道されている(甲5)。
引用商標に係るブランドであるヴァレンティノは、継続して世界的なラグジュアリーブランドとして著名人を含む多くの人々に愛用された結果、2000年には創立40周年を迎え、世界的に著名なファッション・ライフスタイル雑誌Vogueの日本版にも特集が掲載されている(甲14)。著名な米国のTIME誌においても、当該ブランドの創立40周年を取り上げる記事が掲載され、レーガン大統領夫人等数々の著名人がヴァレンティノの商品を愛用していたことが紹介されている(甲15)。
そして、2008年にヴァレンティノの新しいクリエイティブディレクターが来日した際は、女性政治家や女性モデル等を含む日本の著名人が来日イベントに参加したことが多く報じられている(甲16)。
イ 販売実績
ヴァレンティノの事業に目を向けると、例えば、眼鏡類についての2006年から2011年までの世界各国における売上では、日本市場だけで、ヨーロッパや他のアジアの重要な市場と同等若しくはそれ以上の規模で事業が展開されていることが確認できる(甲17)。
また、2014年および2015年の靴、バッグ、ジュエリー、香水の各国売上においても、地域別の概算として、他の東アジア各国の合算項目とは別項目にて、日本だけが計算されており、具体的な国別の売上げでは、例えばジュエリーについては本国イタリアを上回り、アメリカ、香港に次ぐ売上げとなっている(甲18)。
甲第19号証は、2005年から2014年までの日本国内における各種商品の売上を示しており、被服、アクセサリー、時計、眼鏡類、香水等が幅広く販売されていることを示している。なお、別項目のREDとは、ヴァレンティノブランドにおける若者向けのラインである。甲第20号証は、2015年から2022年の日本における申立人の当該ブランドの商品売上高であり、甲第21号証はインターネット通販の注文数や返品数である。申立人の日本における売上高は平均して年間57億円以上を確保しており、需要者等に広く認知されているといえる。
甲第22号証及び甲第23号証は、申立人のブランドの化粧品及び眼鏡類の販売ライセンス契約書である。
ウ 宣伝広告
ヴァレンティノは、日本を含む世界中において宣伝広告も継続的かつ大々的に行っており、甲第24号証は2017年から2021年までの日本における広告宣伝費であり、甲第25号証は2020年から2022年までのインターネット広告掲載履歴一覧である。申立人は継続して年間2億7,000万円以上の広告費を費やし、上述のとおり、相当な売上に結びついている。
甲第26号証は、イタリア、日本、アジアにおける広告画像を表示したスライドであり、雑誌「VOGUE girl」(2013年3月12日発行及び同年8月30日発行)、雑誌「ELLE girl」(2013年3月12日発行及び同年9月12日発行)、ウェブサイト「ELLEonline」(2013年3月11日~17日及び同年9月9日~15日)、東京青山の広告用掲示板(2013年3月1日~28日及び同年9月1日~28日)、雑誌「ヴァンサンカン」(2014年2月28日発行、同年8月28日発行)、地下鉄表参道駅の広告用掲示板(2014年3月~7月、同年8月~12月)にヴァレンティノの広告が掲載されたことを示している。
また、2020年から2021年における実際のブランド広告や雑誌に掲載された記事が多数ある中、例えば2020年1月1日の雑誌Numeroにおいては(発行部数5万部)、国民的人気アイドルグループの元メンバーが申立人のブランドの商品を着用して他の同グループ元メンバーと一緒に掲載されている(甲27、甲28)。
また、2020年5月18日発行の雑誌WWDジャパン(発行部数3万5000部)においては、申立人の引用商標に係るブランドの新最高経営責任者(CEO)の就任が取り上げられている(甲29、甲30)。
2020年3月1日発行の富裕層向け雑誌「Richesse」においては(発行部数4万部)、世界的女性モデルが申立人のブランドの商品を着用して大々的に掲載されている(甲31、甲32)。
2021年12月6日付け発行の雑誌WWDジャパンにおいては、ルイヴィトンのデザイナーを追悼する記事にて、他の有名ブランドのデザイナーとともに申立人ブランドのクリエイティブ・ディレクターであるピエールパオロ・ピッチョーリ氏が写真とともに掲載されている(甲33)。
その他にも、申立人のブランド広告や雑誌掲載例は多数あり、その一部を提出している(甲34~甲81)。
エ 審決例
引用商標の継続的な使用の結果、審決においても、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏の名前は、「Valentino Garavani」とフルネームで表示され、紹介されることも多いものの、辞書類、新聞、雑誌等に掲載された中には、単に「VALENTINO」、「Valentino」、「ヴァレンティノ」、「バレンチノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っている」旨認定されている(甲5~甲11)。
また、申立人以外の名義により「VALENTINO」、「Valentino」を含む商標が登録されている事実が認められるものの、これらについては、「『Valentino Garavani』(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)以外の、『VALENTINO』の文字を含むデザイナーに係るブランドが、単に『ヴァレンティノ』若しくは『VALENTINO』と略称されている事実は存在しない」と審決にて判断されている(甲5)。
オ 引用商標に関する近年の著名性
不服2004-20018号審決において上記認定がされた後においても、申立人の各引用商標の著名性は継続して維持されている。
近年の引用商標に係るブランドの財務報告においては、売り上げが世界的に堅調である中、日本は他のアジア諸国とは別項目で報告され、市場としての存在感を示している(甲82)。
甲第12号証は現在の日本の店舗リストだが、大都市の有名百貨店に店舗を構えている上、流行をけん引するようなブランドしか入居しないGINZA SIX、渋谷スクランブルスクエア、表参道ヒルズ等の新しい商業施設にも店舗を構えている。
さらに、申立人は自らのブランドを法的に守り、維持するために多大な費用を費やし世界各国で商標登録出願を行い、登録を保有し、権利リスト(甲83)にあるとおり、商標「VALENTINO」、「Valentino Garavani」及び「V(図形)」を中心として世界中において登録がされている。当該リストは、申立人が1959年から海外出願を大々的に行った結果、その国数は世界156ヶ国に上ることを示している。
近年の動向として、2019年には、世界的に著名な雑誌である米国のTIME誌が選ぶ「最も影響力のある100人」に引用商標に係るブランドのクリエイティブディレクターを務めるピエールパオロ・ピッチョーリ氏が選出され、日本においても話題となった(甲84)。
また、ヴァレンティノは、国内の新聞やテレビ等のメディアにおいても著名なラグジュアリーブランドとして頻繁に取り上げられている(甲85~甲91)。
東京の渋谷が再開発により新たな魅力を高めつつあるという報道の中においても、その変貌を象徴するものとして話題となった商業施設である渋谷スクランブルスクエアに当該ブランドが入居したことが2019年12月の朝日新聞において取り上げられ(甲92)、さらに、一世を風靡したディズニーのアニメ映画「アナと雪の女王2」の主役を演じ、主題歌を歌った女優が、米国ハリウッドで開かれたアカデミー賞授賞式のステージで着たドレスがヴァレンティノのドレスであることを2020年2月11日のスポーツ新聞デイリースポーツが報じている(甲93)。
また、近年アパレルブランドが新たな顧客を獲得するためゲームや仮想現実等のバーチャル空間に進出する事例が相次ぐ中、ヴァレンティノが任天堂の人気ゲーム「あつまれどうぶつの森」の中でプレイヤーが着ることが出来る服を提供していることが朝日新聞の記事に掲載され、2020年9月17日の朝日放送のテレビ番組「おはよう朝日です」にて取り上げられている(甲94)。
さらに、引用商標中、欧文字「V」を楕円の中に配してつなげた「V(図形)」商標については、単独でもヴァレンティノブランドを象徴するデザインとして大々的に使用されている。上記の商標登録リストにおいても、当該商標は1997年当時から出願されており、長年商標「V(図形)」を単独で配したバッグ等を様々なデザインで展開している。甲第95号証は、2019年の広告において、著名なモデルが当該商標を配したバッグを身に付けていることを示している。甲第96号証は、ファッション業界における最もメジャーなイベントであるパリファッションウィークにおいて上記モデルが商標「V(図形)」を配したバッグを持っている写真である。ヴァレンティノのこのシリーズのバッグは、他の著名人にも多く愛用されており、世界的な女性歌手や女優等が所有しているところがファッション関連の記事に取り上げられている(甲97)。
2020年には、アメリカで開催されたニューヨーク・ファッション・ウィークにおいてCDFA(アメリカファッションデザイナー協会)が選出するグローバル女性デザイナー賞にヴァレンティノのピエールパオロ・ピッチョーリ氏が選出されて受賞し、これが世界最古のファッション誌のサイト「Harper’s BAZAAR」や著名ファッション誌サイト「VOGUE」に取り上げられており、我が国の繊研新聞においても報じられている(甲98~甲101)。
近年においても引用商標の著名性が継続していることは、不服2017-10825審決においても認定されており、当該審決においては、「商品『時計』について引用商標と類似の商標を使用した場合、時計はファッション関連の商品であり、引用商標が使用されるファッション関連の商品群と関連性を有し、その需要者は共に一般消費者であり共通するため、ヴァレンティノ・ガラヴァーニのブランドを連想又は想起させ、経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する業務に係る商品であるかのように、出所について混同を生ずるおそれがあるというべき」と判断されている(甲11)。
また、近年デジタル分野における宣伝広告・販売促進活動が事業の明暗を分けるような状況にある中、甲第102号証は世界のアパレル分野のラグジュアリーブランドのデジタルマーケティングの動向を調査した報告書である。対象は2頁に列挙された37の著名ラグジュアリーブランドであり、ヴァレンティノも含まれている。当該調査はデジタルマーケティングの活用度合に関する調査であり、3頁に記載のオンライン販売の利便性やウェブサイトにアクセスした際のカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の充実度等、複数の項目について調査されており、調査範囲が全世界である項目については日本も対象であることが記載されている。
まず、調査結果が5頁のグラフにて視覚的に示されており、ヴァレンティノは縦軸のデジタル戦略到達度及び横軸のデジタルカスタマーエクスペリエンスにおいてハイスコアを獲得していることが明らかである。6頁においては、各ブランドのオンライン販売を行っている国が表になっており、ヴァレンティノはカバーしている国数において37ブランド中の首位を獲得しており、19頁においては、対象ブランド中ヴァレンティノを含む4ブランドが日本の「伊勢丹三越ラグジュアリー」という百貨店伊勢丹三越のラグジュアリーブランド専用サイトでオンライン販売を行っていることが記載されている。デジタルとリアルでのカスタマーエクスペリエンスを融合したサービスとして、「Reserve&Try(予約&試着)」というサービスがあり、オンラインで商品を見つけて店舗での試着を予約した後、店舗に出向いて試着するサービスとなっているところ、当該サービスを始めたブランドとしてヴァレンティノを含む4ブランドが取り上げられている(甲102(74頁))。当該調査報告の結論部分においては、イタリアの高級ファッションのオンライン販売サイトYnapでヴァレンティノを扱っており、ヴァレンティノを含む8ブランドが世界のオンライン販売において最も存在感があることが記載されている(甲102(84頁))。
現に、写真・動画投稿用SNSであるInstagramにおいてヴァレンティノの公式アカウントを確認すると、そのフォロワー数は1,728万人に上っている(甲103)。
甲第104号証は、高級ブランドの人気ランキングであり、ヴォレンティノは世界の名だたるブランドの中において、堂々18位にランクされ現在においても我が国において高い人気を有していることがわかる。
以上より、引用商標は、本件商標の出願時である2022年9月12日において、歴史ある著名ブランドとしての認知度が世界的に維持されており、今もなお我が国におけるアパレル分野の需要者・取引者の間で広く知られ、周知・著名であることは明らかである。
(5)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標と、申立人が所有する11号引用商標1及び11号引用商標2とは、以下のとおり、互いに類似する商標である(甲2、甲3)。
まず、本件商標と11号引用商標1及び11号引用商標2との外観を比較した場合、本件商標は手書き風の書体で「ITALOVALENTINO」と書した構成よりなるところ、両商標は共に欧文字「VALENTINO」を有し、両商標とも9文字からなる当該部分が大文字で書されており、全体として需要者が両者の外観を見誤るおそれがあり、両商標は外観において類似する。
観念においては、欧文字「VALENTINO」が申立人のブランド名として世界的に著名であることに加え、本件商標中「ITALO」は「イタリアの」等の意味を有する単語であり(甲105)、当該部分単独の識別力は弱いため、観念上「ITALO」と「VALENTINO」が分離され易い。両商標の欧文字「VALENTINO」からは、引用商標に係るブランドヴァレンティノの観念が生じ得るため、両商標は観念において類似する。
称呼においては、本件商標からは「イタロヴァレンティノ」の称呼が生じるほか、欧文字「VALENTINO」が世界的に著名であることから、「ヴァレンティノ」のみの称呼も生じる。他方、11号引用商標1及び11号引用商標2からも「ヴァレンティノ」との称呼が生じる。両商標からは、共通して「ヴァレンティノ」の称呼が生じる上、「イタロヴァレンティノ」と「ヴァレンティノ」を比較した場合においても、「イタロヴァレンティノ」の8文字中5文字が「ヴァレンティノ」と共通し、当該部分は成語ではなく、日本語には無い音でありながらはっきりとした日本人の耳に残りやすい称呼であるため、両者は称呼上類似する。
また、本件商標の指定商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり」は、11号引用商標1の指定商品「被服(手袋を除く)」及び11号引用商標2の指定商品「ガーター,靴下止め,ズボンつり」と同一である。
したがって、本件商標と11号引用商標1及び11号引用商標2は、外観・観念・称呼において類似し、同一の商品について使用された場合には、商品の出所について混同を生じるおそれがある類似商標であることは明白である。
以上より、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(6)本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性
上述のとおり、本件商標は11号引用商標1及び11号引用商標2と類似し、他の引用商標1及び引用商標2と比較した場合においても、欧文字「VALENTINO」が申立人のブランド名として世界的に著名であることから観念が類似する。称呼については、本件商標から「ヴァレンティノ」との称呼も生じる上に、本件商標が分離されなかった場合においても、8音中の5音の共通する部分の称呼が耳に残りやすく、外観上も当該部分が引用商標と共通する。
したがって、本件商標と引用商標は全体としての観念、称呼、外観が類似する。
また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は同一である。そして、引用商標は、本件商標の出願時に既に我が国のアパレル市場において広く知られた存在であることは明白である。
したがって、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(7)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性
まず、上述のとおり、本件商標と引用商標とは類似している。
そして、申立人は、1960年から引用商標1の使用を開始し、上記(4)で述べたように、引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5は本件商標の出願日以前から申立人の業務にかかる商品を表示するものとして世界各国における需要者の間に既に広く認識され、その周知・著名性は、本件商標の登録査定時においても継続している。
また、本件商標権者は、被服、履物、帽子、ベルト等、アパレル分野の商品を指定して出願を行っていることから、ファッション関連の商品を扱うことが業務内容であり、ヴァレンティノが世界的に著名なブランドであり被服や履物等の製造販売をおこなっていることは、同業者として当然認識していたはずである。かかる商標権者の出願は、申立人の引用商標の有する周知・著名性へのフリーライドの意図を有して、不正の目的をもって申立人が引用商標を使用していた商品を指定して登録出願したものであると考えざるを得ない。
ところで、商標審査基準改訂第15版によれば、「出願人がその商標を使用した場合、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがある」場合であって、「一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するもの」である場合、不正の目的をもって使用するものと推認すると明示されている(甲106)。
既に述べているとおり、本件商標は、出願日において我が国及び本国イタリアを含む世界各国において周知著名であった引用商標と類似する。また、引用商標は、申立人のアパレル分野における歴史ある功績により、世界的な知名度を獲得している商標である。
したがって、商標権者が偶然の一致をもって本件商標を第25類の申立人の展開する商品と同一の商品を指定して出願したとは到底考え難く、商標権者が不正の目的を有していたことは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当し、これに違反して登録されたものである。
(8)第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号に定める「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」は、商標審査基準改訂第15版によれば、「商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与える文字」等でなくても、「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合」も該当すると明示されている(甲107)。
本件商標は申立人の引用商標と類似していることは明白であり、引用商標をそのまま含む態様であるため、本件商標を引用商標と偶然に一致して採択したとは到底考えられず、商標権者が申立人によって既に使用されている商品と同一の商品を指定し、最初に本件商標を出願した際には既に引用商標にかかるブランドの存在を知っていたことは疑う余地はない。すなわち、商標権者は、引用商標に依拠し、本件商標を剽窃的に採択し、出願した蓋然性が極めて高いといえる。
また、本件商標に係る出願に際し、商標権者より承諾を受けていたと認める事実もない。
したがって、本件商標は、引用商標の顧客吸引力に便乗し、不当な利益を得る目的で出願した商標であるといわざるを得ない。
かかる状況において、本件商標の登録出願を正当化すれば、商標登録制度に対する信頼は損なわれ、また、市場流通秩序を乱し、需要者を混乱に陥らせることになりかねない。
そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くというべきであり、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、これに違反して登録されたものである。
第4 本件商標に対する取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第43条の3第2項の規定に基づいて、取り消すべきである旨の取消理由を令和7年12月16日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。
第5 商標権者の意見
商標権者は、前記第4の取消理由について、指定した期間内に意見を述べていない。
第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)「VALENTINO」商標について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張並びに職権調査によれば、次のとおりである。
(ア)「Valentino Garavani(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)」(以下「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」という。)は、デザイナーであり、1967年にはデザイナーとして最も栄誉があるファッション・オスカー賞を受賞した(申立人の主張)。
また、同人が1959年にローマで独立して店舗を開き、1960年に最初のコレクションを発表して以降、同人のデザインによる商品に使用されてきた「VALENTINO」、「Valentino」及び「ヴァレンティノ」(以下、これらをまとめて「VALENTINO等」という。)の表示は、同人の略称又はそのデザインに係る被服、靴、バッグ、ベルト及びアクセサリーなどのファッション関連の商品群に使用されるブランドを表すものとして、本国イタリア及び我が国、欧州、北米、アジア等における関連会社(甲4)等を通じて使用され、継続して行われてきた宣伝広告活動(甲26)やインターネットにおいて掲載されている(甲25)。
そして、2015年ないし2022年の我が国における「VALENTINO等」に係る商品の売上高は、平均して年間57億円以上である(申立人の主張)。
(イ)新聞情報
a 「渋谷、大人も楽しめる街へ 世界中の「感度高い客」にアピール 再開発、高級ブランドからビンテージまで」(朝日新聞 2019年12月5日 東京夕刊 5頁)の見出しの下、「213店舗が入る渋谷スクランブルスクエアは11月1日に開業した。駅改札に向かう通路に面した3階にヴァレンティノ、バレンシアガなど高級ブランドが集まる。」の記載がある(甲92)。
b 「温故知新、テーラード深化 細部や機能性で差別化/スニーカー激減 20年秋冬パリ・メンズ」(朝日新聞 2020年1月23日 東京朝刊 27頁)の見出しの下、「ストリート色を薄めてシックになったヴァレンティノのコートも、内側のベルトを垂らしてアクセントにしたり、シルエットを絞ったりする機能性があった。」の記載がある(甲85)。
c 「[定番物語]メキシコ五輪用に開発」(読売新聞 2020年7月20日 東京朝刊 22頁)の見出しの下、「薄く、柔らかい靴底は、足の動きに合わせてしなやかに屈曲し、履き心地は抜群だ。性別、年代、国籍を問わず愛用され、近年は、ジバンシィやヴァレンティノなどの高級ファッションブランドとの共同製作でも注目を集める。」との記載がある(甲87)。
d 「第92回アカデミー賞 松たか子 “未知の”大役全う アカデミー賞日本人初の快挙 世界の“エルサ”と熱唱リレー ハリウッドで授賞式」(デイリースポーツ 2020年2月11日 24頁)の見出しの下、「ステージには、ピンクベージュのヴァレンティノのドレス姿で登場した。」の記載がある(甲93)。
e 「20年CFDAファッション賞の受賞者発表 ウイメンズウエアにガブリエラ・ハースト」(繊研新聞 2020年9月17日)の見出しの下、「インターナショナルは、ウィメンズは「ヴァレンティノ」のピエールパオロ・ピッチョーリ、メンズは「ディオール」のキム・ジョーンズが受賞した。」の記載がある(甲101)。
f 「[モードUPDATE]春夏パリ・オートクチュール 各ブランド映像で発表」(読売新聞 2021年2月12日 東京夕刊 6頁)の見出しの下、「ヴァレンティノは創業地のローマにあるコロンナ美術館を会場に選んだ。歴史的な絵画や彫刻が展示されている中を、オーガンディにスパンコールを総刺しゅうした黄金色のドレスなどを着たモデルが歩き荘厳さを醸し出した。」の記載がある(甲88)。
g 「大胆にさっそうと、歩む私たち 2021年秋冬ミラノ・コレクション」(朝日新聞 2021年3月4日 東京夕刊 5頁)の見出しの下、「ヴァレンティノは、超ミニ丈の作品が目立った。創業の地ローマの古典的なドレス風のロング丈もあったが、「あらゆるものを短くした」とブランド。」の記載がある(甲89)。
h 「「ヴァレンティノ」21~22年秋冬オートクチュール アーティスト17人と協業」(繊研新聞 2021年7月27日)の見出しの下、「「ヴァレンティノ」はこのほど、伊ベネチアで21~22年秋冬オートクチュールコレクションを披露した。・・・「ヴァレンティノ・デ・アトリエ」と題したコレクションは、世界で活躍する17人のアーティストとのコラボレーションで服を制作した。」の記載がある(甲90)。
(ウ)雑誌等
a「VOGUE 日本版 2000年11月号」において、ヴァレンティノの創立40周年の特集記事が掲載された(甲14)。
b 2013年ないし2014年にかけて、「Vogue girl」(2013年3月12日発行、同年8月30日発行)、「ELLE girl」(2013年3月12日発行、同年9月12日発行)及び「ヴァンサンカン」(2014年2月28日発行、同年8月28日発行)の各雑誌において、また、「ELLEオンライン」のウェブサイト(2013年3月11日~17日、同年9月9日~15日)、東京青山の広告用掲示板(2013年3月1日~28日、同年9月1日~28日)及び地下鉄表参道駅の広告用掲示板(2014年3月~10月)において、ヴァレンティノの広告が掲載された(甲26)。
c 2020年ないし2022年にかけて発行された「Numero TOKYO」、「WWDジャパン」、「RICHESSE」、「ELLE JAPON」、「婦人画報」、「CLASSY」及びその他ファッション誌等において、ヴァレンティノの紹介記事及び商品が掲載された(甲27、甲29、甲31、甲34~甲81)。
(エ)SNS等
写真・動画投稿用SNSであるInstagramにおいてヴァレンティノの公式アカウントのフォロワー数が1,728万人に上っている(甲103)。
(オ)当審における職権調査
a 辞書
(a)「服飾辞典」(昭和63年9月5日、文化出版局発行)の64頁の「ヴァレンティーノ〔Valentino〕の項に「イタリアのデザイナー」との記載があり、29頁の「ヴァレンティーノ・ガラヴァーニ〔Valentino Garabani,1932~〕」の項に「ヴァレンティーノ」の語が「Valentino Garabani(ヴァレンティーノ・ガラヴァーニ)」を指称するものとして記載されている。
(b)「岩波=ケンブリッジ 世界人名辞典」(1997年11月21日、株式会社岩波書店発行)の84頁の「ヴァレンティノ Valentino」の項に「ガラヴァーニ,ヴァレンティノ」の記載があり、223頁の「ガラヴァーニ,ヴァレンティノ Garabani,Valentino」の項に、「通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933-)」の記載がある。
(c)「新・田中千代服飾事典」(2004年4月1日 株式会社同文書院発行)の659頁の「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ[Valentino Garavani]」の項に「1980年代後半からパリを発表の場にした、イタリアのデザイナー。・・・1962年のコレクションの成功と1967年の「ファッション・オスカー」の受賞で、国際的に知られる。」等の記載がある。
(d)「英和ブランド名辞典」(2011年8月31日 株式会社研究社発行)の441頁の「Valentino Garavani ヴァレンティノガラヴァーニ,バレンチノガラバーニ」の項に「イタリアのローマのデザイナーValentino Garavani(1932-)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など.ローマ,フィレンツェ,ミラノなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字で書くこともある).」の記載がある。
(e)「新ファッションビジネス基礎用語辞典<増補改訂版>」(2006年11月3日、株式会社チャネラー発行)の834頁の「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ【Valentino Garavani】」の項に「ジャン・デッセ、ギ・ラロッシュのもとで修業を積み、’59年に独立。ローマにオート・クチュール・メゾンを構えて、’60年には初のコレクションを発表している。’62年に発表された「白だけの服」と名付けられた“白一色”のコレクションは意表をつく演出で大成功をおさめ、〈ヴァレンティノ〉の名を国際的に知らしめるものとなった。’67年、ファッション・オスカー賞を受賞。’69年にプレタ・ポルテ、’73年にはインテリアや小物類、’85年からは紳士服部門をスタート。’89年よりコレクションの場をパリに移している。」の記載がある。
(f)「早引きファッション・アパレル用語辞典」(2013年8月30日、株式会社ナツメ社発行)の64頁には、「ヴァレンティノ Valentino」の見出しの下、「イタリアのファッション・デザイナー、ヴァレンティノ・ガラヴァーニが1962年に発表したブランド。1968年、パリにブティックを開店。その後、ローマやロンドン、ミラノにも相次いで開店した。大胆で華麗なスタイルが人気で、イタリアン・ファッションの代表的存在。」の記載がある。
b 書籍
(a)「FASHION 20世紀のファッションデザイナー/1900-1999」(2001年日本語版)の276頁には、「ヴァレンティノ」の見出しの下、「イタリア人ヴァレンティノ・クレメンテ・ルドヴィコ・ガラヴァーニは「ヴァレンティノ」として世界的に有名になった。彼がこの世界に踏み入ることができたのは、賢明にも、研鑽を積むために1950年にパリに行ったからである。・・・ファッション界に入るきっかけとなったのは,国際羊毛事務局主催のコンテストでの優勝である。・・・ヴァレンティノが贅沢なエレガンスのクチュリエとして有名になったころ、1968年に驚くほど若々しいモダンな〈白のコレクション〉を発表した。これは彼の40年間の創作活動中の最高傑作といわれている。このコレクションをベースに、彼はジャクリーヌ・ケネディがオナシスと結婚したときのウェディングドレスをデザインした。明るいオレンジレッドはヴァレンティノのトレードマークになる。この色はシンプルな中にも刺激的なイブニングドレスに繰り返し使われた。ヴァレンティノは1968年からパリに自分のブティックを開いているが、1975年からはそこでプレタポルテ・コレクションも開催している。」の記載がある。
(b)「VALENTINO/ヴァレンティノ」(1996年10月4日、光琳社出版株式会社発行)の8頁に「国際的デザイナーの道をゆくヴァレンティノは、世界各地でコレクションを発表する。ヴァレンティノは、もちろんイタリアのプレス関係者の間でも人気があり支持されていた。」、同10頁に「ヴァレンティノは、ファッション史に残る数多くのスタイルを創り出している。・・・毎回発表する黒と白の組み合わせは、世界的に高く評価されており、豹、ゼブラ、ジラフといったアニマル・プリントの人気は衰えることをしらない。」、同17頁に「ヴァレンティノ・ガラヴァーニは、国境を越えて世界のヴァレンティノになった。」の記載がある。
(c)「世界のスターデザイナー43」(2005年12月15日、株式会社未來社発行)の59頁~60頁には、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の見出しの下、「ファッション界にも、スーパースターがいる。・・・ヴァレンティノのように移ろいやすいファッションの世界で、40年以上スーパースターであり続けている人はほかにいない。」の記載がある。
(d)「ヴォーグ・ファッション100年史」(2009年9月1日、株式会社ブルース・インターアクションズ発行)の370頁には、「VALENTINO/ヴァレンティノ」の見出しの下、「本名ヴァレンティノ・ガラヴァーニは、ミラノ芸術学校でフランス語とファッションデザインを学び、パリ・クチュール組合で技術を完璧に自分のものにした。」の記載がある。
(e)「最新ファッション業界のトレンドがよ~くわかる本[第2版]」(2016年12月23日、株式会社秀和システム発行)の194頁には、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の見出しの下、「創業者であるヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は1932年、北イタリアのヴォゲラ生れる。1959年、ローマでデザイン活動を始め、1960年、ブランド「ヴァレンティノ」(VALENTINO)をスタート。」の記載がある。
(f)「世界ファッション・デザイナー名鑑」(2021年3月25日、株式会社トゥーヴァージンズ発行)の141頁に「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ Valentino Garavani」の見出しの下、「1960年代はブランドとして劇的な発展を遂げた。『ヴォーグ』誌に新作を発表し、上流社会の大物や映画スターの女性たちのドレスを仕立てて顧客を増やしていった。1968年の”ホワイト・コレクション”はジャクリーン・ケネディの関心を引き、同年、彼女はヴァレンティノがデザインしたドレスを着て、海運王アリストテレス・オナシスと再婚した。このニュースでヴァレンティノの名前は世界中に広まり、アクセサリー、毛皮、メンズウェア、プレタポルテ、インテリア用品などの新しいラインも発表された。ブティックがローマとニューヨークと東京にオープン。1978年、香水の市場にも参入した。」との記載がある。
(g)「世界のラグジュアリーブランドはいま何をしているのか?」(2023年12月12日、東洋経済新報社発行)の358頁及び359頁に「ラグジュアリー大国の光と影」の見出しの下、「この他にもマックスマーラ、モンクレール、ドルチェ&ガッバーナ、フェラガモ、ゼニア、ヴァレンティノ、ブルネロ クチネリ、フルラ、リュー ジョーなどのブランドが広く知られている。・・・イタリアのラグジュアリーブランドには、グローバル競争において圧倒的に有利な二つの強みがある。クリエイティビティとエクスクルーシビティ(特別性)である。イタリアのブランドはこの二つを最大限に発揮することで2016年から快進撃を続けてきた。」との記載がある。
c 新聞
(a)「(文化の扉)ブランドロゴ、再び前面 一目で差別化、SNS映えで若者に人気」(2018/08/20 朝日新聞 朝刊 27ページ)の見出しの下、「ファッションの高級ブランドの商品で近年、ロゴを前面に出す服やバッグが目立つ。バブル景気に沸いた80年代や90年代に盛り上がった「ロゴ・ブーム」の再来だ。・・・今年6月、パリで開かれたメンズコレクションで、ヴァレンティノは全身にブランド名が入った上下そろいの服を披露。近年はウィメンズのランウェーにもロゴがあふれている。」の記載がある。
(b)「2020年春夏パリコレ 装う喜び・楽しさ 演出」(2019/10/11 東京読売新聞 朝刊 17ページ)の見出しの下、「9月23日~10月1日に開かれた2020年春夏パリコレクションでは、装うことの喜びや楽しさをドラマチックな演出や伝統の技巧で表現したブランドが印象に残った。・・・ヴァレンティノはショーの冒頭に純白のドレスを並べ、ブランドの根幹にあるクチュールの技術を見せつけた。一本一本羽根を縫い付けたシャツ、惜しみなく生地を使った優美なドレープのシャツドレスなどは、色柄がない分、その造形が際立った。」の記載がある。
d 雑誌
(a)「婦人画報 2018年11月号」(2018年10月1日、株式会社ハースト婦人画報社発行)の135頁には、「最強タッグによるクチュール的ダウン「ヴァレンティノ×モンクレール」のコート・・・イタリアの「ヴァレンティノ」といえば、オートクチュールメゾンを起源とし、圧巻のエレガンスを提案するラグジュアリーブランドです。」の記載がある。
(b)「婦人画報 2019年6月号」(2019年4月30日、ハースト婦人画報社発行)の160頁~162頁には、「より革新的に大胆に-2019春夏コレクションReport オートクチュルの華麗な冒険」の見出しの下、「花そのものの色のドレスをまとったモデルたち。「ヴァレンティノ」は花のように咲き誇る作品を発表した。正面の黒のドレスはナオミ・キャンベル。・・・明確なコンセプトと社会的なメッセージ・・・一番左は贅沢にファブリックを用いた「ヴァレンティノ」。人種・年齢を超えた「多様性」もアピールした。・・・「ヴァレンティノ」は手書き風の花柄や、一つ一つ丁寧に作った花飾りなど、模様も色も形もまさに花尽くし。」の記載がある。
(c)「るるぶ情報版 関東16 るるぶ銀座」(2017年5月1日、JTBパブリッシング発行)の31頁には、「GINZA SIX 完全ガイド」の見出しの下、「1階 6つの世界を代表するラクジュアリーブランドが店を構えるフロア。/6 VALENTINO(レディス・メンズ、バッグ&シューズ、ファッショングッズ/P19)・・・2階 高感度なファッションブランドやライフスタイルショップが入る、大人の女性のためのフロア。/5 VALENTINO(レディス・メンズ、バッグ&シューズ、ファッショングッズ/P19)」の記載がある。
(d)「Numero TOKYO 2016年7月号増刊」(2016年5月28日、株式会社扶桑社発行)の54頁及び55頁に、「my time to shine/ニッキー・ヒルトンの幸せのかたち」の見出しの下、「・・・Q5.お気に入りのブランドは?ヴァレンティノ、グッチ、アクアズーラはとても気に入っています。もう少しカジュアルなブランドだったら、トラーニやトップショップ、フォーメーションが好きです。・・・Q10.ウェディングドレス、素数でしたね。ドレスを作るまでに5回フィッティングしました。そのほとんどをパリにあるヴァレンティノのオートクチュールのサロン(世界で最もグラマラスなアトリエだと思う!)で行ったのだけど、フィテッィングが楽しみでなりませんでした。」の記載がある。
e インターネット情報
(a)「OSF」のウェブサイトにおいて、「ケリング(Kering)50億ユーロ超の評価額でヴァレンティノ(Valentino)の30%を買収」の見出しの下、「7月27日(現地時間)、ケリング(Kering)は、ヴァレンティノ(Valentino)の親会社であるカタールの投資会社メイフーラ(Mayhoola)から同ブランドの株式30%を17億ユーロで取得すると発表した。・・・現在、ヴァレンティノは25カ国以上に211の直営店を展開しており、2022年には14億ユーロの売上と3億5000万ユーロの経常EBITDAを記録している。この戦略的パートナーシップは、ヴァレンティノCEOのヤコポ・ヴェントゥリーニ(Jacopo Venturini)がメイフーラの傘下で実施したブランド向上戦略をさらに後押しし、ヴァレンティノを世界で最も賞賛されるラグジュアリーメゾンのひとつとして更に育てていくことが期待されている。メイフーラのCEO兼ヴァレンティノの会長でもあるラシッド・モハメド・ラシッド(Rachid Mohamed Rachid)は、次のように述べた。「ヴァレンティノはイタリアを代表するラグジュアリーブランドであり、メゾン・ド・クチュールの今後の発展のための戦略的パートナーとしてケリングを迎えることを大変嬉しく思います。私たちの指揮の下、ヴァレンティノは非常に魅力的なラグジュアリーブランドとしての基盤を強化し、ケリングとの次の章でもブランドを強化していきます。」の記載がある。
https://ouispeakfashion.com/jp/kering-becomes-a-significant-a-shareholder-of-valentino/
(b)「BUSINESS INSIDER」のウェブサイトにおいて、「世界で今、最もホットなファッションブランド トップ20」の見出しの下、「世界中の1万2000を超えるブランドを取り扱うファッション検索プラットフォームの「リスト(Lyst)」は、2019年第2四半期の人気ファッション・ブランド トップ20を発表した。・・・4位 ヴァレンティノ(Valentino)」の記載がある。
https://www.businessinsider.jp/post-195876
(c)「digital-zasshi.jp」のウェブサイトにおいて、「2020年度・高級ファッションブランド人気番付(ランキング)」の見出しの下、「シェアナンバーと言われる海外の高級ファッション情報サイト「VOGUE RUNWAY(旧STYLE.COM)」が発表している、世界の高級ファッションブランドの人気番付。2020年度12月下旬に、2020年度のブランド別・ページビューランキングが発表されました。・・・7位:ヴァレンティノ(イタリア)」の記載がある。
https://www.digital-zasshi.jp/luxury-brand/luxurybrand-2020ranking.html
イ 上記アの使用状況、広告宣伝の状況、販売実績等及び職権調査からすれば、「VALENTINO等」の商標は、本件商標の登録査定時である令和5年2月17日において、我が国において、本件商標に係る指定商品の分野の需要者の間に広く認識されている著名なファッションデザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設した会社のデザインに係る商品に使用されるブランドを表したものと把握されるものである。
(2)本件商標と11号引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、手書き風の書体で「ITALOVALENTINO」の欧文字を横書きしてなるものである。
そして、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、イタリア語は比較的親しまれた語であるところ、構成中の「ITALO」の欧文字が、「イタリアの」を意味するイタリア語(「伊和中辞典 第2版」株式会社小学館発行)であることからすると、当該文字から、商品の産地を想起させる場合も少なくないものといえ、自他商品識別機能が強いとはいい難いものである。
他方、構成中の「VALENTINO」の欧文字は、上記(1)イのとおり、我が国において、本件商標に係る指定商品の分野の需要者の間に広く認識されている著名なファッションデザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設した会社のデザインに係る商品に使用されるブランドである「VALENTINO等」の商標を表したものと把握されるものである。
そして、本件商標は、全体として特定の意味合いを認識させるものではない。
そうすると、本件商標は、その構成中の「VALENTINO」の欧文字が取引者、需要者に強く印象付けられて特に注意を引き、自他商品識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められることから、本件商標の構成中の「VALENTINO」の欧文字を要部として抽出し、他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるものである。
したがって、本件商標は、その構成文字全体から生じる「イタロバレンティノ」の称呼のほか、本件商標の要部である「VALENTINO」の欧文字に相応した「ヴァレンティノ」の称呼が生じ、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設した会社のデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念を生じるものである。
イ 11号引用商標
11号引用商標1は、別掲2のとおり、「VALENTINO」の欧文字をややデザイン化して表してなるものであり、また、11号引用商標2及び11号引用商標3は、前記第2の1(2)及び同2(1)のとおり、いずれも「VALENTINO」の欧文字からなるところ、11号引用商標1ないし11号引用商標3は、その構成文字に相応して「ヴァレンティノ」の称呼が生じ、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設した会社のデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念を生じるものである。
また、11号引用商標4は、別掲3のとおりの構成よりなるところ、その構成中、中段に配された「VALENTINO」の欧文字は、全体の中央に位置する上、下段の「GARAVANI」の欧文字の約2倍の大きさであって、商標全体の構成中、最も目を引く構成部分になっている上、我が国において、本件商標に係る指定商品の分野の需要者の間に広く認識されている著名なファッションデザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設した会社のデザインに係る商品に使用されるブランドを表したものと把握されるものであり、上記アと同様に、「VALENTINO」の欧文字が取引者、需要者に強く印象付けられて特に注意を引き、自他商品識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められることから、11号引用商標4の構成中の「VALENTINO」の欧文字を要部として抽出し、他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるものである。
そうすると、11号引用商標4は、全体から生じる称呼のほか、11号引用商標4の要部に相応した「ヴァレンティノ」の称呼が生じ、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設した会社のデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と11号引用商標との類否
(ア)外観について
本件商標は、上記アのとおり、その構成中の「VALENTINO」の欧文字部分が取引者、需要者に対し自他商品識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって、当該「VALENTINO」の欧文字は、11号引用商標の「VALENTINO」の欧文字とつづりを同じくするものであるから、本件商標と11号引用商標は、外観上相紛らわしいものであるといえる。
(イ)称呼について
本件商標は、その構成中の「VALENTINO」の欧文字より「ヴァレンティノ」の称呼を生じ、当該称呼は、11号引用商標より生じる「ヴァレンティノ」の称呼と共通するものであるから、本件商標と11号引用商標は、称呼を共通にするものである。
(ウ)観念について
本件商標と11号引用商標は、いずれも「ヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設した会社のデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念を生じるものであるから、観念において共通するものである。
(エ)小括
以上のとおり、本件商標と11号引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのある類似の商標というべきものである。
(3)本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品との類否
ア 本件商標の指定商品中、第25類「被服,帽子」は、11号引用商標1の指定商品中、第25類「被服(手袋を除く)」と同一又は類似する商品である。
イ 本件商標の指定商品中、第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」は、11号引用商標2の指定商品中、第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり」及び第26類「腕止め」と同一又は類似する商品である。
ウ 本件商標の指定商品中、第25類「被服,帽子,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」は、11号引用商標3の指定商品中、第25類「男性用被服,女性用被服,子供用被服,コート,レインコート,オーバーコート,ジャケット,ドレス,スーツ,スポーツに適したズボン,ズボン,ブラウス,プルオーバー型シャツ,ティーシャツ,ワイシャツ類及びシャツ,セーター類,プルオーバー型セーター,ベスト,ガウン,ズボン下,シュミーズ,パンツ,下着,靴下,ネクタイ,スカーフ,ストッキング,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服」と同一又は類似する商品である。
エ 本件商標の指定商品中、第25類「被服,履物,帽子,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」は、11号引用商標4の指定商品中、第18類「Leather and imitations of leather, and goods made of these materials and not included in other classes; whips, harness and saddlery.」及び第25類「Clothing, footwear, headgear.」と同一又は類似する商品である。
(4)小括
本件商標は、上記(2)のとおり、11号引用商標と類似するものであり、かつ、本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品とは、上記(3)のとおり、同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は同項の規定に違反してされたものであるから、その他の登録異議の申立ての理由について論及するまでもなく、その登録は、同法第43条の2第1号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-900127