商標異議申立
2023-900113
ホロスマート
- 審判番号
- 2023-900113
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-087770
- 登録番号
- 6678548
- 請求日
- 2023年05月16日
- 審決日
- 2024年01月17日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】杭州光粒科技有限公司
- 【権利者代理人】叶野 徹
- 【異議申立人】サノフイ
- 【異議申立人代理人】山尾 憲人
- 【異議申立人代理人】川本 真由美
- 【異議申立人代理人】寺田 花子
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 渡邉 あおい
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T1651.22 -Y (W09) / T1651.261-Y (W09) / T1651.262-Y (W09) / T1651.263-Y (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項11号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第7号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6678548号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6678548号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6678548号商標(以下「本件商標」という。)は、「HOLOSMART」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年7月28日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年12月9日に登録査定され、同5年3月8日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第6465284号商標(以下「引用商標」という。)は、「SOLOSMART」の欧文字を横書きしてなり、令和3年1月22日に登録出願、第9類及び第10類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年11月2日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標は、「HOLOSMART」を表してなるものであり、その構成文字から「ホロスマート」なる称呼が生じ、該文字は辞書に載録がないことから特定の意味合いを生じさせない一種の造語と認識され、観念が生じないものである。
イ 引用商標は、「SOLOSMART」を表してなるものであり、その構成文字から「ソロスマート」なる称呼が生じ、該文字は辞書に載録がないことから特定の意味合いを生じさせない一種の造語と認識され、観念が生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標とを比較すると、外観について、いずれの商標も構成文字9文字と同じ文字数からなるところ、このうち、8文字が共通し、両商標は近似した印象を与える。時と場所を異にする離隔的観察によれば、需要者はこれらを見誤るおそれが十分にある。よって、両者は外観上類似する。
称呼について、本件商標は「ホロスマート」、引用商標は「ソロスマート」と称呼されるところ、両者の差異は「ホ」と「ソ」であるが、両音は母音(o)が共通する近似した音である。さらに各商標から生じる他の音は全て共通するため、両商標が称呼され、聴覚されるときに需要者に与える全体的印象は近似するものとなり、互いに聴別し難くなる。よって、両者は称呼上も類似する。
観念について、両者は特定の意味合いを生じさせない造語であるから、比較できないものである。
してみれば、本件商標と引用商標は、観念上比較できないとしても、外観及び称呼において、互いに類似する商標であるというのが相当である。
エ 本件商標に係る指定商品のうち「コンピュータ,眼鏡型携帯情報端末,情報処理用コンピュータソフトウエア,モバイル機器のためのアプリケーションソフトウェア,現実世界の環境と電子データを統合する移動装置用の拡張現実用コンピュータソフトウエア,データ及び文書の収集用・送信用・保管用及び検索用のコンピュータソフトウエア,身体装着式携帯情報端末,歩数計,分量計量器,着用可能なアクティビティトラッカー,音響情報の無線送信用装置,身体に装着可能なビデオディスプレイモニター,バッテリー充電装置,指輪型携帯情報端末,時計の形をしたスマートフォン,アプリケーションソフトウェア」と引用商標に係る指定商品は、互いに類似するものである。
オ したがって、上記商品について、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 本件商標の登録出願時である令和4年春には、自民党政務調査会が「医療DX令和ビジョン2030」を発表する等、患者自身が自らの医療情報へアクセスでき、データに基づく健康や治療の維持が可能になる医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)の重要性・必要性に関する議論が活発化していたので(甲3)、医療分野でデジタル技術を積極的に活用していく機運が高まっていた時期であったと推察される。
イ 申立人は、ワクチン、糖尿病及び循環器疾患の各領域で医薬品の開発・提供に取り組む製薬・バイオテクノロジー企業で、本件商標の登録出願前から糖尿病領域でのデジタルツールの活用を検討していた。糖尿病治療では血糖管理のためインスリン療法が一般的に行われているところ、申立人は、「SOLOSMART」を開発し、インスリンの投与量や投与時間などの情報がスマートフォン等のデジタルデバイスに記録されるようにして、患者自身が正確なデータを把握できるだけでなく、医療従事者もクラウドを通じてそれらの情報を確認でき、より的確な指導が行えるように準備を進めてきたところである。
このように医療DXの考え方が徐々に浸透し始めた本件商標の登録出願時、デジタル技術を活用する「SOLOSMART」は、コンピュータソフトウエア関連の分野においても注目度が高かったものと推測される。また、糖尿病の有病者数は約1,000万人、とりわけ国民病としても知られていることから、申立人の「SOLOSMART」の認知度は日本における正式なローンチ前であっても、医療従事者のほか糖尿病患者等にもある程度知られていたものとも考えられ、さらに「SOLOSMART」はメディアでも取り上げられた(甲4)。
ウ また、申立人が引用商標を使用する主な商品は、糖尿病患者が使用するインスリンのペン型注入器に取り付けて使用する商品及び関連するソフトウェアであり(甲4)、上述のとおり患者がインスリン投与を行うとその情報が自動的にデジタルデバイスに記録されるというものである。一方で本件商標の指定商品は「モバイル機器のためのアプリケーションソフトウェア,データ及び文書の収集用・送信用・保管用及び検索用のコンピュータソフトウエア,身体装着式携帯情報端末,着用可能なアクティビティトラッカー」等、使用者が携帯して使用する商品や、これらの商品を通じて特定のデータを送信するソフトウェア及びこれらに関連する商品を列挙したものと推測される。すると、いずれの商品も「使用者による特定の行動や身体の状態の記録を、使用者が携帯する機器を通じて自動的に記録する」という点が共通する。よって、本件商標の指定商品は使用の目的・使用方法などが共通する、同一業務分野に属する商品であるといえる。
エ そして、上述のとおり、本件商標と引用商標はそれらの構成文字がわずか1文字のみ異なっているにすぎず、さらに、引用商標「SOLOSMART」は独創性の高い造語であることから、本件商標の商標権者は引用商標と類似する本件商標を任意に採択したものとはいい難く、むしろ、申立人の業務と同一分野において使用される引用商標に依拠し、剽窃的に採択使用するものとみることができる。加えて、本件商標に係る商標権者が出願をするに際し、申立人が承諾を与えたという事実もない。
してみれば、本件商標に係る商標権者が本件商標の登録出願に及んだ行為は、申立人の事業が今後日本で躍進するであろうことを予測して不当な利益を得る等の目的の下に出願し、権利を取得したものと推認させるものであり、不正の目的をもって使用する商標といわざるを得ない。
オ そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることは商品の取引において無用の混乱を生じさせ、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「HOLOSMART」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応し、「ホロスマート」の称呼を生じるものである。また、該「HOLOSMART」の文字は、一般的な辞書類に載録されている語ではなく、さらに、特定の意味合いを想起させるというべき事情は見当たらないから、本件商標は、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおり「SOLOSMART」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応し、「ソロスマート」の称呼を生じるものである。また、該「SOLOSMART」の文字は、一般的な辞書類に載録されている語ではなく、さらに、特定の意味合いを想起させるというべき事情は見当たらないから、引用商標は、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「HOLOSMART」と引用商標の構成文字「SOLOSMART」の比較において、両者は看者の目に留まりやすい先頭の文字において、「H」と「S」という文字の差異を有し、その差異が両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は小さくなく、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に、本件商標から生じる「ホロスマート」の称呼と引用商標から生じる「ソロスマート」の称呼を比較すると、両者は最も明瞭に聞き取りやすい語頭の音において、「ホ」と「ソ」という音の差異を有し、その差異が両称呼全体に与える影響は小さくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても語調語感が相違し、互いに聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、両商標は、ともに特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないものであるとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれはないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき特段の事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 申立人は、同人の「SOLOSMART」は日本における正式なローンチ前でも、コンピュータソフトウエア関連の分野において注目度が高く、医療従事者、糖尿病患者等にもある程度知られていた、本件商標の指定商品と引用商標を使用する商品は目的・使用方法などが共通する同一業務分野に属する商品である、本件商標と引用商標は構成文字が1文字のみ異なっているにすぎず、引用商標は独創性の高い造語であるから、本件商標は引用商標に依拠し剽窃的に採択使用するものであり、商標権者が本件商標の登録出願に及んだ行為は、不正の目的をもって使用する商標といわざるを得ないなどとして、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠き、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないから、商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張する。
イ しかしながら、引用商標は、これを使用する商品(インスリンペン型注入器とコネクトするデジタルキャップ)が2023年(令和5年)1月頃において市場投入に向けた準備が進められていたとされるにすぎず(甲4)、本件商標の登録査定の日(令和4年12月9日)においては、いまだ販売すらされていないものであるから、取引者、需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。また、上記(1)のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させるものということはできない。
そうすると、本件商標は、引用商標の周知・著名性にフリーライドし、これを剽窃的に採択使用するものということはできない。
さらに、本件商標の指定商品は、申立人が主張する上記商品と、極めて関連性が高い分野で使用されるものであるとはみられず、他に、本件商標が不当な利益を得るなど不正の目的をもって使用をするものであることを示す客観的な証拠など、その登録出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くものというべき特段の事情は見いだせない。
以上よりすれば、本件商標は、その登録を認めることが、商標法の予定する秩序に反するものということはできない。
ウ 加えて、本件商標は、その構成自体が、非道徳的、卑わい、差別的、矯激又は他人に不快な印象を与えるようなものでもない。
エ したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものということはできず、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第7号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-900113