商標異議申立
2023-900085
エーユーコナン、エーユー、コナン、コンプリートコナン、コンプリート
- 審判番号
- 2023-900085
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-096361
- 登録番号
- 6670613
- 請求日
- 2023年04月14日
- 審決日
- 2024年01月31日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社新紀元社
- 【異議申立人】コナン プロパティズ インターナショナル エルエルシー
- 【異議申立人代理人】笠原 智恵
- 【異議申立人代理人】星野 真太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 山田 啓之
- 審判官 杉本 克治
- 分類
- T1651.13 -Y (W0941) / T1651.22 -Y (W0941) / T1651.261-Y (W0941) / T1651.262-Y (W0941) / T1651.263-Y (W0941) / T1651.272-Y (W0941)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項7号商標法4条1項11号商標法4条1項16号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第7号、商標法第9条の2、商標法第43条の2、商標法第43条の3第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6670613号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6670613号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6670613号商標(以下「本件商標」という。)は、「英雄コナン」の文字と「COMPLETE CONAN」の文字を上下2段に表してなり、令和4年8月22日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラム,眼鏡,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」及び第41類「セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」を指定商品及び指定役務として、同年12月26日に登録査定、同5年2月9日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標について商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する国際登録第915453号商標(以下「引用商標」という。)は、「CONAN」の欧文字を表してなり、2006年2月6日にスウェーデン国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条及び商標法第9条の2による優先権を主張して、2006年(平成18年)7月11日に国際商標登録出願、第41類「Publishing services; providing online publications; providing electronic publications; providing on-line and electronic publications in the nature of daily planners, address books, appointment books, date books, engagement books, game score books, notebooks, albums, scrapbooks and check books; providing on-line and electronic publications in the nature of cards, greeting cards, occasion cards, holiday cards, Christmas cards, invitations, flash cards, trivia cards, trading cards, gift cards, and game score cards; on-line and electronic publications in the nature of graphic reproductions of photographic prints, graphic art prints, collectable stamps, puzzles, calendars, posters, maps and diagrams; development, production, and performance of plays, musicals and theatrical stage shows; art and cultural events.」及び第30類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品及び指定役務として、平成21年2月13日に設定登録され、その後、指定商品又は指定役務については、2016年(平成28年)年7月7日に国際登録簿に記録された指定商品又は指定役務の一部取消しにより、第30類の商品が取り消されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第7号、同項第11号及び同項第16号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、証拠の表記に当たっては、以下、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して記載する場合があり、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する。
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当すること
ア 「英雄コナン」の語について
(ア)原作について
「英雄コナン」は、死去したロバート・E・ハワード氏(以下「ハワード氏」という。)が1930年代にウィアード・テールズ等に発表したヒロイック・ファンタジーのシリーズ(以下「本件作品」という。)で、これまで何度も翻訳書籍が刊行されている小説の名称であり、かつ、当該作品に登場する主人公を指す語である(甲1の1)。
(イ)書籍等における使用
a 早川版書籍
1970年に株式会社早川書房(以下「早川書房」という。)が、「征服王コナン」を出版しており(甲3の1)、それ以来、1973年までの間に「風雲児コナン」、「冒険者コナン」、「不死鳥コナン」等(以下、総称して「早川版書籍」という。)の計8冊を出版した(甲3の2~甲3の8)。
早川版書籍は、本件作品を網羅的に収録したものであって、タイトルに「英雄コナン・シリーズ」という文言を含んでいる(甲3)のみならず、表紙の最上部に赤字で目立つように記載されている(甲5、甲6)ため、「英雄コナン」の用語は、早川版書籍において、その内容に本件作品が含まれることを示すキーワードとして使用されていることは明らかである。
b 創元社旧版書籍、創元社新訂版書籍
株式会社東京創元社(以下「東京創元社」という。)が1971年以降に旧版書籍、2006年以降に新訂版書籍の2つの版を出版している(以下、それぞれ総称して「創元社旧版書籍」、「創元社新訂版書籍」という。)。すなわち、創元社旧版書籍は、「コナンと髑髏の都」、「コナンと石碑の呪い」等、創元社新訂版書籍は、「黒い海岸の女王」、「魔女誕生」等を出版している(甲8)。
創元社旧版書籍及び創元社新訂版書籍は、本件作品を網羅的に収録したものである。そして、東京創元社は、ウェブサイトにおいて、創元社新訂版書籍の宣伝広告をするとともに、参考資料として創元社旧版書籍及び早川版書籍を紹介しているが、当該ウェブサイトの上部の目立つ位置において、「英雄コナンの事跡を記している」と記載している(甲4)。そのため、「英雄コナン」の用語は、創元社旧版書籍及び創元社新訂版書籍において、その内容に本件作品が含まれることを示すキーワードとして使用されていることは明らかである。
c 映画
本件作品を原作とした映画が制作されており、「コナン・ザ・グレート」(1982年)、「キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2」(1984年)、「コナン・ザ・バーバリアン」(2011年)と我が国でも公開されている(甲9。以下、それぞれを「本件映画1」、「本件映画2」及び「本件映画3」といい、これらをまとめて「本件映画」という。)。本件映画を収録したDVD等も販売されている(甲10)。
本件映画1及び2のDVD等に対しては、収録されている映画の原作が「英雄コナン」である旨指摘するレビューが認められる(甲10の3、甲10の6)。このように、消費者は、本件映画の原作(本件作品)を示す語として「英雄コナン」の語を使用しているのであり、「英雄コナン」の語は、その内容が、本件作品であることを示す語であることを意味している。
また、本件映画3の作品紹介において、「R・E・ハワードが生んだ蛮族の英雄コナンがよみがえる。」と記載され(甲11)、かかる記載は、作品紹介文で最も目を引く第一文であり、かつ、太字で目立つように記載されているところ、本件映画3の内容を説明するために、「英雄コナン」の語が適切であること、すなわち、「英雄コナン」の語は、その内容が、本件作品であることを示す語であることを意味している。
d ゲーム
本件作品を原作にした「プレイステーション3」及び「Xbox360」用コンピューターゲーム「CONAN」(以下「本件ゲーム1」という。)が、我が国では2007年に発売されている(甲12の1~甲12の3)。
また、同じく本件作品を原作にした「プレイステーション4」、「Xbox360」及びPC用のコンピューターゲーム「Conan EXILES」(日本語版タイトルは「Conan Outcasts」)(以下「本件ゲーム2」といい、本件ゲーム1及び2をまとめて「本件ゲーム」という。)が、2018年に発売されている(甲12の4、甲12の5、甲13)。本件ゲームに対しては、原作が「英雄コナン」である旨指摘するレビューがある(甲12の3、甲12の5)。このように、消費者は、本件ゲームの原作を示す語として使用しており、「英雄コナン」の語は、その内容が、本件作品であることを示す語であることを意味している。また、本件ゲーム2の商品紹介において、「英雄コナンの世界で繰り広げられるオンラインマルチプレイサバイバルゲーム」と記載され(甲13)、かかる記載は、作品紹介文で最も目を引く第一文であり、かつ、目立つように記載されているところ、「英雄コナン」の語が、その内容が、本件作品であることを示す語であることを意味している。さらに、本件ゲーム2を紹介する記事(甲14)においても同様である。
以上のとおり、本件作品を題材として書籍、映画、ゲームにおいて、「英雄コナン」の語が使用されており、その時期も1970年の「征服王コナン」の出版時を最初として、それ以来一貫して、使用されている。
本件作品の著者であるハワード氏は、死去しており、本人によりその続編が描かれることはない。また、各書籍は、本件作品を収録したものであり、いずれも本件作品を内容としていることに変わりはない。よって、「英雄コナン」の語により、取引者、需要者の認識において、本件作品、又は本件作品を原作としたコンテンツという、具体的な内容を理解することは明らかである。
イ 「英雄コナン/COMPLETE CONAN」の語について
「COMPLETE」の文字部分は、シェイクスピア全集といった用例(甲15)が示すように、「全集」という意味合いにおいて使用される。また、「CONAN」の文字部分は、一般に、人物やキャラクターの名称や当該名称をもつキャラクターを主人公とする作品の名称を示す用語として認識されているところ、「英雄コナン」の文字部分に対応して、「英雄コナン」を示すものとして認識される。
そうすると、「英雄コナン/COMPLETE CONAN」の文字は、「英雄コナン全集」であると理解され、本件作品、又は本件作品を原作としたコンテンツという、具体的な内容を示すにほかならない。
ウ 商標権者による使用
本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、2022年7月に「愛蔵版 英雄コナン全集1 風雲篇」、同年10月に「愛蔵版 英雄コナン全集2 征服篇」を出版しており、また、「愛蔵版 英雄コナン全集3 降魔篇」の出版を予定している(甲1。以下、総称して「商標権者書籍」という。)。
商標権者書籍は、本件作品を収録したものであるから、商標権者自身においても、本件商標は、本件作品を指すものとして使用していることは明らかである。
なお、商標権者は、申立人との書面における交渉において、「「英雄コナン全集」等の表示に関しては、あくまでも本件書籍の題号あるいは書籍の内容に関する説示的表示」である旨自認している(甲16)。
エ 小括
以上より、本件商標は、取引者、需要者の認識において、本件作品、又は本件作品を原作としたコンテンツを認識させるものであるところ、本件商標をその指定商品及び指定役務中、第9類「家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」及び第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」に使用するときは、単に「本件作品(あるいはそのテーマ音楽)を収録した商品」又は「本件作品に関する役務」であるという商品及び役務の品質(内容)及び質を表示するにすぎないものといえる。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、当該商品及び役務以外の商品及び役務に使用するときは、商品の品質及び役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号に該当すること
ア 本件作品の周知性について
(ア)本件作品の派生作品
本件作品は、その原作以外にも、申立人のライセンスの下、多くの派生作品が作成されており、その普及により本件作品が世界的に認知されるに至った(甲13、甲17~甲19)。
(イ)宣伝広告以外にも多額の費用を支出していること
申立人は、本件作品の宣伝広告と管理に関して多額の費用を支出し、その周知を行っている(甲17、甲20)。
(ウ)我が国におけるライセンス
創元社旧版書籍は、1970年当時、本件作品の出版社であったLancer Booksが付与した、翻訳して国内で販売する権利に基づくものである(甲21、甲25)。当時、本件作品に関して権限を有していた者の管理下において本件作品は、我が国で認知されるようになったといえる。
イ 「英雄コナン」に関する知的財産権
本件作品は、ハワード氏によって創作され、現在において、本件作品に関する知的財産権は、申立人に帰属していることが確認されている。すなわち、申立人及びその親会社である、Cabinet Licensing LLCの顧問であり、申立人及び本件作品のキャラクターに関する著作権及び商標権(以下「本件作品関連知的財産権」という。)の買収に関する交渉とクロージングを担当したFrederick U.Fierst氏によれば、申立人及び本件作品関連知的財産権の買収は、2002年7月17日と2003年2月28日の2回に分けて実施された。
そして、それ以来、同氏は本件作品関連知的財産権に係る権利の連鎖を調査しているところ、申立人が本件作品関連知的財産権の唯一の権利者であることを宣誓している(甲22)。なお、海外において、申立人に対して知的財産権が帰属することが認められた判決が存在する(甲20)。また、本件作品に関して、申立人は、我が国及び海外において、2023年5月23日時点で、104件の商標を保有している(甲23)。
ウ 小括
以上のとおり、申立人らが多大な費用を投じ、宣伝広告の努力をしてきたことにより、「英雄コナン」は、本件作品又はその派生作品の主人公として、我が国を含む世界において周知され、顧客吸引力を獲得するに至ったといえる。本件商標は、こういった申立人らの努力にフリーライドして商標権を取得し、営利活動を行おうとするものと考えざるを得ない。
また、本件商標が登録されたことにより、その指定商品及び指定役務の範囲において、商標権者以外の者が本件商標と同一又は類似する商標の使用が禁止されることになる。
しかしながら、商標権者は、本件作品やその派生作品を独占する権利を有していないのであるから、独占適応性を欠いている。
よって、本件商標の登録は、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害する行為であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第11号に該当すること
ア 本件商標について
本件商標は、漢字及び片仮名からなる「英雄コナン」の文字(以下「上段部分」という。)と欧文字からなる「COMPLETE CONAN」の文字(以下「下段部分」という。)を普通に用いられる方法で楷書して、上下2段に併記した態様からなる。
上段部分と下段部分は、その構成文字の種類が異なる上、その構成に応じてそれぞれ「エイユウコナン」、「コンプリートコナン」と異なる称呼が生じるため、分離して観察されるべきである。
さらに、下段部分中「COMPLETE」の文字は、一般的に「全部の、完璧な」といった意味で使用されているところ、書籍や電子出版物を制作したり提供したりする役務において表示される場合、役務の内容が、特定の著者の作品を網羅的に収録した「全集」である、という意味合いにおいて理解される。これは、国会図書館のデータベースにおいて、「コンプリート」で検索すると、図書や録音資料として4823件もの資料がヒットすることからも明らかである(甲24)。そうすると、下段部分は、「CONAN」に関する作品を網羅的に収録したものと理解されるのであり、この理解において、「COMPLETE」の文字は単に説明的に機能するのみで何ら識別機能を発揮しておらず、「CONAN」の文字において識別機能を発揮しているといえる。
したがって、本件商標は、「CONAN」の文字において識別機能を発揮するのであり、これに応じて、「コナン」の称呼が生じるといえる。
そして、上述のとおり、上段部分の「英雄コナン」の文字は、本件作品及び作品の登場人物を想起させるから、本件商標からは、本件作品という観念が生じる。
また、それ以外にも、本件商標からは、「CONAN」の文字に応じて「コナン」の称呼が生じるところ、書籍の制作や電子出版物の提供といった役務との関係においては、当該書籍、電子出版物において登場する人物やキャラクター、著者の名称であるという観念が生じる。
イ 引用商標について
引用商標は、欧文字「CONAN」を普通に用いられる方法で楷書した態様からなり、その構成文字に応じて「コナン」の称呼のみが生じる。
また、書籍の制作や電子出版物の提供といった役務との関係においては、当該書籍、電子出版物において登場する人物やキャラクター、著者の名称であるという観念が生じる。
ウ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、外観において異なるといえども、称呼、観念のいずれの観点においても間違い得るものであり、同一又は類似の役務について使用されるときであっても、その出所について混同を生じるおそれがある、類似の商標というべきである。
そして、本件商標の指定役務は、第41類「セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」において、引用商標の役務と類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び職権による調査によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)「英雄コナン」について
a 「英雄コナン」(本件作品)とは、若くして死去したロバート・E・ハワード(ハワード氏)が1930年代に発表したヒロイック・ファンタジーの小説のシリーズである(甲1の1、甲4、甲11、甲14)。
b 本件作品は、1970年から1973年に早川書房から「英雄コナン・シリーズ」として「征服王コナン」等のタイトルにより出版され(甲3、甲5、甲6)、また、1971年から1974年に東京創元社から「コナン・シリーズ」として「コナンと髑髏の都」等のタイトルにより出版され(甲7)、さらに、2006年から2013年に同社から「コナン全集」として「黒い海岸の女王」等のタイトルにより出版された(甲8)。
c 本件作品は、現在は、「愛蔵版 英雄コナン全集1 風雲篇」(甲1の1、甲2の1)、「同2 征服篇」(甲1の2、甲2の2)及び「同3 降魔篇」(甲1の3)とのタイトルにより、商標権者から出版されている。
d 本件作品を原作とした「コナン・ザ・グレート」等のタイトルの映画(本件映画)が制作されており(甲9)、本件映画のDVD等が販売され(甲10)、当該DVD等の通販サイトのレビューにおいて、原作が「「英雄コナン」シリーズ」である旨が指摘されており(甲10の3、甲10の6)、本件映画の紹介記事においても「英雄コナンがよみがえる。」、「R・E・ハワードの小説「英雄コナン」シリーズをもとにした・・・」のように紹介されている(甲11)。
e 本件作品を原作とした「CONAN」又は「CONAN OUTCASTS」のタイトルの家庭用テレビゲーム機用のゲームソフト(本件ゲーム)が2007年及び2018年に発売され(甲12)、その通販サイトのレビューにおいて、本件作品が原作である旨が指摘されており(甲12の3、甲12の5)、本件ゲーム2の紹介記事においても「1930年代に出版されたファンタジー小説「英雄コナン」・・・シリーズをモチーフにした、広大なオープンワールド!」のように紹介されている(甲14)。
(イ)「COMPLETE CONAN」について
a 「complete」の語は、「全部の」等を意味する語であり、その用例として「the complete works of Shakespeare」により「シェイクスピア全集」の意味を表す(甲15)。
b 「CONAN」の語は、「男子の名」等を意味する英単語である(職権調査。「ランダムハウス英和大辞典 第2版」株式会社小学館。)。
c 商標権者は、「英雄コナン全集」の表示は、書籍の題号ないし内容に関する表示である旨自認している(甲16)。
d 「コンプリート」の片仮名を題号の一部に有する書籍が多数存在し、その中には、「・・・完全(コンプリート)ガイドブック・・・」のように「完全(コンプリート)」の文字を題号の一部に有するものが相当数存在し、また、「・・・―全記録集―COMPLETE WORKS」の文字を題号の一部に有するものが1件存在する(甲24)。
イ 判断
(ア)前記ア(ア)で認定した事実によれば、本件作品は、若くして死去したハワード氏が1930年代に発表したヒロイック・ファンタジーの小説のシリーズであり、1970年以降、早川書房、東京創元社及び商標権者からそれぞれ出版されるとともに、これを原作とする本件映画及び本件ゲームが制作されている。
そして、本件映画及び本件ゲームに関する通販サイトのレビュー及び紹介記事において、本件映画及び本件ゲームの原作が「英雄コナン」である旨の記載、紹介がされている。
そうすると、書籍、映画及びゲームといった分野においては、本件作品は「英雄コナン」と称する作品として知られているということができ、そのため、「英雄コナン」の文字からは、本件作品を認識させるものと判断するのが相当である。
(イ)前記ア(イ)で認定した事実によれば、「complete」の語は、「全部の」等を意味する語であり、当該語と「works(WORKS)」の語とを組み合わせた「complete works(COMPLETE WORKS)」の語により、「全集(全記録集)」の意味を表すものといえる。
しかしながら、「complete(COMPLETE)」の語又はその片仮名表記である「コンプリート」の語それ自体単独で、「全集」の意味を表すものとはいえず、「全集」の意味を認識させるというべき事情も見いだせない。
また、「COMPLETE CONAN」の文字全体から、特定の意味合いを認識させるというべき事情も見いだせない。
(ウ)本件商標は、前記1のとおり、「英雄コナン」の文字と「COMPLETE CONAN」の文字を上下2段に表してなるものである。
そして、前記(ア)及び(イ)によれば、本件商標の上段部分の「英雄コナン」の文字からは、本件作品を認識させるといえるものの、下段部分の「COMPLETE CONAN」の文字からは、特定の意味合いを認識させないものである。
そうすると、たとえ、商標権者が「英雄コナン全集」の表示を書籍の題号ないし内容に関するものと自認しているとしても、「英雄コナン」及び「COMPLETE CONAN」の文字からなる本件商標は、全体として「英雄コナン全集」であること又は特定の書籍の題号若しくは内容を表したものと認識されるとは認めることができない。
他に、本件商標が商品の品質等又は役務の質等を表示したものと認識されるというべき事情は見いだせない。
してみると、本件商標は、商品の品質等又は役務の質等を表示したものと認識されるとはいえず、かつ、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるものともいえない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり、「英雄コナン」の文字と「COMPLETE CONAN」の文字を上下2段に表してなるものである。
そして、前記(1)イ(ア)のとおり、「英雄コナン」の文字からは、書籍、映画及びゲームといった分野においては、本件作品を認識させるものである。
また、本件商標の指定役務は、前記1のとおり、書籍、映画及びゲームに関連する役務であるといえる。
そうすると、本件商標は、その上段部分である「英雄コナン」の文字部分が、その指定役務との関係から、役務の質(内容)を表すものといえるため、出所識別標識としての称呼、観念が生じないものというべきである。
してみると、本件商標は、その構成全体から「エイユーコナンコンプリートコナン」の称呼を、下段部分の「COMPLETE CONAN」の文字部分から「コンプリートコナン」の称呼をそれぞれ生じ、また、特定の観念を生じないと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は、前記2のとおり、「CONAN」の欧文字を表してなるものであり、当該文字(語)は、前記(1)ア(イ)bのとおり、「男子の名」等を意味する英単語であるから、これより「コナン」の称呼を生じ、「男子の名」の観念を生じると判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標との比較について
本件商標と引用商標とを比較すると、「英雄コナン」の文字及び「COMPLETE CONAN」の文字からなる本件商標と「CONAN」の文字からなる引用商標とは、外観において明らかに異なるものであり、相紛れるおそれはないものである。
また、本件商標から生じる「エイユーコナンコンプリートコナン」又は「コンプリートコナン」の称呼と引用商標から生じる「コナン」の称呼とは、その構成音及び構成音数が明らかに異なるから、相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標からは特定の観念が生じないのに対し、引用商標からは「男子の名」の観念を生じるものであるから、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、たとえ、本件商標の指定役務に引用商標の指定役務と同一又は類似する役務が含まれているとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件作品に関する知的財産権は申立人に帰属しているとした上で、本件商標は申立人の努力にフリーライドして商標権を取得し、営業活動を行うとするものであること、また、商標権者は、本件作品やその派生作品を独占する権利を有さず、独占適応性を欠いていることから、本件商標の登録は、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害する行為である旨主張している。
前記1のとおり、本件商標は、「英雄コナン」の文字を含むものであり、前記(1)イ(ア)のとおり、「英雄コナン」の文字からは、本件作品を認識させるものである。
しかしながら、前記(2)アのとおり、本件商標は、その構成中「英雄コナン」の文字部分からは、出所識別標識としての称呼、観念が生じないものといえる。
そうすると、たとえ、申立人が主張するように、本件作品に関する知的財産権が申立人に帰属しているとしても、商標権者が本件商標を登録することは、申立人の使用する商標や努力にフリーライドすることとはいえないばかりか、商標権者が本件作品やその派生作品を独占することになるとはいえない。
してみると、本件商標の登録が、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害する行為であるということはできない。
他に、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第7号、同項第11号及び同項第16号に該当するとはいえず、その登録は同法第3条及び同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。
他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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