商標異議申立
2023-900036
アスヤク
- 審判番号
- 2023-900036
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-075643
- 登録番号
- 6648475
- 請求日
- 2023年02月10日
- 審決日
- 2023年09月19日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ジェイフロンティア株式会社
- 【異議申立人】株式会社 ネクスウェイ
- 【異議申立人代理人】上原 空也
- 【異議申立人代理人】並川 久里子
- 【異議申立人代理人】並川 啓志
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 綾 郁奈子
- 分類
- T1651.261-ZC (W0935394244) / T1651.262-ZC (W0935394244) / T1651.263-ZC (W0935394244) / T1651.271-ZC (W0935394244)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の3第2項商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第43条の2第1号、商標法第43条の3第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6648475号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6648475号商標の指定商品及び指定役務中「第9類 電子応用機械器具及びその部品,電子計算機用プログラム,第35類 商品の販売に関する情報の提供,商品の注文の受付・配送に関する事務処理の代行及びこれに関する情報の提供,商品の配送又は宅配に関する事務処理の代行,第42類 電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,第44類 オンラインによる医療相談,調剤及び診療に関する情報の提供,服薬指導,医師・クリニック・病院・薬局等の医療機関に関する情報の提供,病院の予約の媒介又は取次ぎ,病院の予約状況に関する情報の提供」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務についての商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6648475号商標(以下「本件商標」という。)は、「アスヤク」の文字を標準文字で表してなり、令和4年6月30日に登録出願、第9類、第35類、第39類、第42類及び第44類に属する、別掲1のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和4年11月8日に登録査定、同年12月5日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用した登録第6172690号商標(以下「引用商標」という。)は、「アスヤクLABO」の文字を標準文字で表してなり、平成30年8月30日に登録出願、第9類、第35類、第41類、第42類及び第44類に属する、別掲2のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和元年8月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、異議申立の全趣旨によれば、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するから、同法第43条の2第1号により、第9類「全指定商品」、第35類「全指定役務」、第39類「全指定役務」、第42類「全指定役務」及び第44類「全指定役務」の登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第16号証を提出した。
(1)申立人による主張・立証の前提
申立人は、現在の我が国において、「LABO(LAB、ラボ)」の文字を語尾に含む商標と含まない商標とが存在する場合、現実の取引において需要者・取引者は、両商標が付された商品・役務の出所に関してどのように認識する傾向があるのかを調査した。
その結果、我が国の需要者・取引者は「LABO(LAB、ラボ)」の部分を捨象した構成部分により当該商品・役務の出所を認識する強い傾向が存在することを発見した。
このような現在の我が国における現実の状況に鑑みると、引用商標「アスヤクLABO」と本件登録商標「アスヤク」とは互いに類似し、その結果、引用商標「アスヤクLABO」を冠した商品・役務に接した需要者・取引者は、本件商標「アスヤク」を冠した商品・役務と出所の混同を起こすことは明らかである。
また、申立人は一連の「アスヤク」を冠するサービス(「アスヤクLABO」、「アスヤクサービス」、「アスヤクLIFE研修」、「アスヤクDIポータル」(いずれも、商標登録・出願済み)等を大々的に展開している。
このような事実の下、「アスヤク」の語が辞書に掲載されていない創作性の高い印象的な言葉である一方、「LABO」が識別力の弱い言葉である以上、被申立人が「アスヤク」の語を使用した場合、需要者・取引者が出所を混同するおそれが存在することは明らかである。
なお、「アスヤク」の語は、「薬剤師がより多くの役割を果たし、医療業界全体に貢献することができるようになる(薬剤師(ヤクザイシ)の明日(アス)を作る)」から命名された申立人の創作にかかる造語である。
以上を前提として、本件商標「アスヤク」が引用商標「アスヤクLABO」を他人の先行商標として商標法第4条第1項第11号、同項第15号により取り消されるべき旨を、次のとおり主張・立証する。
(2)商標法第4条第1項第11号が適用されるべき点
ア 本件商標
本件商標は「アスヤク」の標準文字からなる商標であるため、その構成文字に相応して「アスヤク」の称呼が生じるものの、辞書に掲載されていない造語を表したものと看取できる。
イ 引用商標
他方、引用商標は、前記のとおり「アスヤクLABO」の標準文字からなる商標であり、その構成中「アスヤク」の文字部分がカタカナ文字で表されているのに対し、「LABO」の文字部分がローマ文字で表されているものであるから、引用商標は、カタカナ文字とローマ文字という文字種の相違により、視覚上、「アスヤク」と「LABO」の二つの語に分離して看取される。
そして、「アスヤク」が造語であるため、「LABO」との間に観念上の強い結合が存在しないことから尚更に、「アスヤク」と「LABO」とは不可分的に結合しているものと認められないものである。
また、引用商標の構成中「LABO」の文字は、英語の「Laboratory」に相当する研究室や実験室などの意味を持つ言葉として一般的に認識されている。そして、医薬品・薬剤の研究開発を行う場合には、専門の研究室や実験室において実験や試験を行う必要がある。そのため、引用商標の指定商品・役務中、特に「医薬品・薬剤」に関する商品・役務に関して「LABO」の文字は、商品・役務の特徴等を表示したものにすぎず、自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
そうすると、引用商標に接する取引者、需要者は、引用商標の構成中、独立して自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得る「アスヤク」の文字部分を強く支配的な印象を与える部分として抽出して要部として認識し、その部分より生ずる称呼をもって取引に当たる場合もあるというべきである。これは、「アスヤク」の文字が耳慣れない・見慣れない特徴的な造語であることから尚更である。
したがって、引用商標は、その構成文字全体に相応して「アスヤクラボ」の一連の称呼を生ずるほか、単に「アスヤク」の称呼をも生じ得るものである。
ウ 商品・役務の類似
本件商標の指定商品・役務中、以下の商品・役務は、引用商標の指定商品・役務と同一又は類似である。
第9類「電子応用機械器具及びその部品,電子計算機用プログラム」
第35類「商品の販売に関する情報の提供,商品の注文の受付配送に関する事務処理の代行及びこれに関する情報の提供,商品の配送又は宅配に関する事務処理の代行」
第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」
第44類 全ての指定役務
エ 小括
以上より、本件商標と引用商標とは、外観において相違するとしても、「アスヤク」の称呼が共通し、かつ、「アスヤク」の語が耳慣れない・見慣れない特徴的な造語であることから「アスヤクという名の出所から提供等される商品・役務」ほどの観念を共通にする類似の商標といえる。
(3)商標法第4条第1項第15号が適用されるべき点
ア 引用商標の周知・著名性
(ア)申立人に関して
申立人である株式会社ネクスウェイは、株式会社リクルートにおけるビジネスコミュニケーションに関する一事業部門として1985年に設立された。
そして、2004年にはリクルート社から分社独立し、現在では、TIS株式会社(後述)を中心とする国内外40にも及ぶグループ会社の一翼をなす情報通信提供サービス企業であり、2022年9月30日現在で約13,000もの法人を顧客として有し、これら顧客に対する様々な形での情報通信分野における支援業務を行い高い評価を受けている。
なお、上記TIS株式会社は、東京証券取引所の最上位カテゴリーである東証プライムに上場する国内大手のシステムインテグレーター企業である。また、同社は、JPX日経インデックス400の構成銘柄の一つとして選定されていることから、日本経済の中で重要な役割を果たす高い水準を保持した企業であるとの認定がなされている企業であるといえる。
(イ)引用商標が冠されたサービスの概要
申立人は、2013年より現在に至るまで、全国約67,000軒・施設の調剤薬局・病院薬剤部(これは、我が国の全調剤薬局・病院薬剤部の95%に該当。)に対して、薬剤師にとって必要な医薬品情報がまとめられた状態で郵送する「医薬情報おまとめ便サービス」を通じて、医薬品の適正使用、ひいては国民の健康保持に資してきたという実績がある。
このような薬剤師に対する支援業務を更に発展させるべく、従来は、上記のような全調剤薬局・病院薬剤部の95%をカバーしていた「医薬情報おまとめ便サービス」の中で行われてきた「アスヤクLABO」サービスを切り離した形で独立させ、2019年2月1日に正式に開始されたのが、申立人が提供する一連の「アスヤク」を冠するサービス(「アスヤクLABO」、「アスヤクサービス」、「アスヤクLIFE研修」、「アスヤクDIポータル」等)である。
「アスヤク」の語は、「薬剤師がより多くの役割を果たし、医療業界全体に貢献することができるようになる(薬剤師(ヤクザイシ)の明日(アス)を作る)」から命名された申立人の創作にかかる造語である。
引用商標が冠された役務の内容は、従来区々に散在していた薬剤師の業務に役立つあらゆる情報が、整理した形でまとまって提供されるWebプラットフォームであり、会員登録を行うことにより会員限定コンテンツの閲覧や該当コンテンツに参加することが可能となる。
(ウ)引用商標の周知・著名性
以上のような内容をなす引用商標が冠されたサービスは、従来にはない内容のユニークさと内容の充実度、更には薬剤師にとっての高い利便性から急激に閲覧回数を伸ばし、2022年11月現在では同ウェブサイトは、月間259,875回もの閲覧数を誇っている(甲8)。これは、厚生労働省発表の令和2年12月31日現在における全国の薬剤師数が321,982人であることから、全薬剤師が毎月ほぼ一回は、同ウェブサイトを訪問していると考えられる(甲9)。
また、引用商標が冠されたサービスは、右肩上がりで急激に会員数を伸ばし、2022年12月時点では、43,500人もの会員を誇り(甲10)、これは全薬剤師の「7人に1人」が同サービスの会員であるといえるものである。
なお、引用商標を冠するサービスの会員の中には、例えば、公益社団法人日本薬剤師会・各府県薬剤師会の複数の役員層・代表者層等の他医薬業界の重鎮的存在が名を連ねているという事実があり、このことは引用商標を冠したサービスの質の高さを示すと同時に、引用商標「アスヤクLABO」の周知著名性を高めることに資しているものである。
また、同サービスは、ウェブ版日本経済新聞、会社四季報等ウェブ上でも頻回に取り上げられ(甲11~甲13)、さらには、現時点で世界的検索サービスGoogleで「アスヤクLABO」の語を検索した場合、その検索結果は、申立人の引用商標を冠したサービスおよび一連のアスヤクサービスに関するウェブサイトのみが検索される(甲14)。
また、株式会社ネグジット総研が行ったアンケート調査では、引用商標は、約75%の薬剤師により認知されている(甲15)。
以上の各事実から引用商標は、周知著名であることは明らかである。
かかる引用商標の周知著名性は、一般社団法人薬局支援協会・公益社団法人富山県薬剤師会、一般社団法人富士宮市薬剤師協会、公益社団法人福岡県薬剤師会、一般社団法人長野県薬剤師会、帝京大学薬学部、一般社団法人日本病院薬剤師会、日経BP日経ドラッグインフォメーション編集部、公益社団法人日本薬剤師会の役員層・代表者層などが発行した多数の周知証明書(甲16)により明確に証明されている。
イ 混同のおそれ
(ア)商標の類似性の程度、周知性の程度、独創性の程度
引用商標から「アスヤク」の部分のみが抽出されて本件商標「アスヤク」と対比されるため、本件商標「アスヤク」と引用商標「アスヤク」が称呼及び観念において共通する類似の商標であることはさきに述べたとおりである。したがって、引用商標と本件商標の類似性の程度は高い。
また、引用商標は、周知著名の程度が高い。
さらに、「アスヤク」の語は、「薬剤師がより多くの役割を果たし、医療業界全体に貢献することができるようになる(薬剤師(ヤクザイシ)の明日(アス)を作る)」から命名された申立人の創作にかかる造語である。したがって、引用商標の独創性は高いものである。
(イ)指定商品役務の関連性の程度・需要者の共通性
本件商標中の引用商標と抵触する指定商品・役務は、本来的に取引の経験則上、類型的に関連性の程度が高く需要者が共通するとして定められた商品・役務である。そこで、本件商標中の残余の指定商品・役務について検討する。
まず、第35類「薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に関しては、もとより引用商標が薬剤師を対象とする役務であるため、相互の関連性は極めて強く、かつ需要者は同一である。
また、第39類「鉄道による輸送、車両による輸送、船舶による輸送、航空機による輸送、貨物のこん包、貨物の輸送の媒介、貨物の積卸し、寄託を受けた物品の倉庫における保管、倉庫の提供、荷役機械器具の貸与、物品の配送、商品の輸送・こん包及び保管からなる物流管理、商品・貨物の輸送に関する情報の提供」は、概ね輸送関連役務であるといえる。ここで、輸送関連役務は、引用商標の「医薬品に関する医薬情報の提供」と深い関連性・需要者の共通性がある。なぜならば、医薬品の取扱に関する最大の注意点は品質管理であり、薬剤の輸送中・保管・物流管理などにおいては、まさに薬剤師の専門知識が必要不可欠となるからである。
以上のように、本件商標の指定商品・役務と申立人の業務に係る商品・役務とは、一定程度の関連性があり、その需要者を共通にすること等に鑑みれば、本件商標は、これをその指定商品・役務に使用した場合には、これに接する需要者は、申立人商標を連想、想起して、当該商品・役務が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品・役務であるかのように、商品・役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標というべきである。
(ウ)取引の実情
「LABO(LAB、ラボ)」の文字を語尾に含む商標と含まない商標とが存在する場合、我が国の需要者・取引者は「LABO(LAB、ラボ)」の部分を捨象した構成部分により当該商品・役務の出所を認識する強い傾向が存在するという現状の下、申立人は一連の「アスヤク」を冠するサービス(「アスヤクLABO」、「アスヤクサービス」、「アスヤクLIFE研修」、「アスヤクDIポータル」等を大々的に展開している。
そして、「アスヤク」の語が辞書に掲載されていない言葉であることから尚更、被申立人が「アスヤク」の語を使用した場合、需要者・取引者は出所を混同するおそれが存在することは明らかである。
(エ)小括
以上より、本件商標は引用商標との間で出所の混同を生じるおそれのある商標であるため、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)結論
以上から明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に該当するにもかかわらず商標登録されたものであるから、その登録は、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。
4 当審における取消理由通知
当審において、令和5年6月1日付けの取消理由通知書をもって、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)に対し、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、その指定商品及び指定役務は引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品又は役務を含むから、本件商標の指定商品及び指定役務中、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電子計算機用プログラム」、第35類「商品の販売に関する情報の提供,商品の注文の受付・配送に関する事務処理の代行及びこれに関する情報の提供,商品の配送又は宅配に関する事務処理の代行」、第42類及び第44類の全ての役務についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである旨通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
5 本件商標権者の意見
上記4の取消理由通知に対し、本件商標権者は、意見書を提出しなかった。
6 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標について
本件商標は、上記1のとおり、「アスヤク」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は辞書等に載録のない造語であり、その構成に応じて「アスヤク」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。
(イ)引用商標について
引用商標は、上記2のとおり、「アスヤクLABO」の文字を標準文字で表してなるところ、「アスヤク」の文字は、辞書等に載録のない造語であり、「LABO」の文字は、「研究所、研究室、実験室」等の意味を有する英語「laboratory」の略(「weblio英和辞典・和英辞典」、「コンサイス カタカナ語辞典 第5版」)である「ラボ」を認識させるものである。
そして、引用商標の構成は、「アスヤク」と「LABO」の間にスペースがなく一体的に表されているが、片仮名と欧文字という構成文字種が相違することから、「アスヤク」と「LABO」の2語からなるものと容易に認識されるものである。
また、引用商標の構成中「LABO」の文字は、「研究所、研究室、実験室」等の意味を有する英語「laboratory」の略である「ラボ」を認識させるものであるところ、「研究所、研究室、実験室」等の文字が、商号や屋号に慣用的に付される組織の種類を表すものであることを考慮すると、「LABO」の文字は、そもそもの識別力が強い文字とはいえない。
一方で、引用商標の構成中「アスヤク」の文字は、辞書等に載録のない造語であるから、引用商標の指定商品及び指定役務との関係において、特定の意味を認識させない、極めて識別力の強い文字といえる。
よって、「LABO」の文字は、そもそもの識別力が強い文字とはいえないものであって、「アスヤク」の文字は、極めて識別力の強い文字といえるから、引用商標に接する取引者、需要者が、「アスヤクLABO」のうち「アスヤク」の文字部分に着目することは十分あり得るといえる。
そうすると、引用商標からは、その構成に応じて「アスヤクラボ」の称呼が生じるが、構成中の「アスヤク」の文字に相応して、単に「アスヤク」の称呼も生じるというのが相当であり、「アスヤクLABO」からも「アスヤク」からも、特定の観念は生じない。
(ウ)本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標構成中の「アスヤク」の文字部分を比較すると、いずれも「アスヤク」の文字を標準文字で表したものであるから、外観及び「アスヤク」の称呼を共通にするものである。
また、本件商標と引用商標構成中の「アスヤク」の文字部分は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者は観念において比較できないものである。
そうすると、本件商標と引用商標構成中の「アスヤク」の文字部分は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼を共通にするものであるから、これらを同一又は類似の商品又は役務について使用するときは、出所の混同を生じるおそれがある類似の商標といえる。
イ 本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務の類否
本件商標の指定商品である第9類「電子応用機械器具及びその部品,電子計算機用プログラム」と、引用商標の指定商品のうち第9類「電子計算機用プログラムその他の電子応用機械器具およびその部品」は、類似の商品である。
また、本件商標の指定役務のうち第35類「商品の販売に関する情報の提供,商品の注文の受付・配送に関する事務処理の代行及びこれに関する情報の提供,商品の配送又は宅配に関する事務処理の代行」と、引用商標の指定役務のうち第35類「経営の診断または経営に関する助言,事業の管理,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ビジネスデータの分析,インターネットウェブサイトを用いた市場調査およびその調査・分析の結果に関する情報の提供,会員制サービスであるソーシャルネットワーキング用ウェブサイトの事業運営,コンピュータデータベースへの情報構築及び情報編集」は、類似の役務である。
さらに、本件商標の指定役務のうち第42類の全ての役務と、引用商標の指定役務のうち第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成または保守,ウェブサイトの作成・保守,電子計算機用プログラムの提供,クラウドコンピューティング,オンラインによるコンピュータプログラムの提供,コンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸」は、類似の役務である。
最後に、本件商標の指定役務のうち第44類の全ての役務と、引用商標の指定役務のうち第44類の全ての役務は、類似の役務である。
ウ まとめ
したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、その指定商品及び指定役務のうち上記の商品及び役務は、引用商標の指定商品及び指定役務と類似する商品及び役務であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知・著名性について
申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、次のとおりである。
(ア)申立人は、1985年に設立された情報通信提供サービス企業である。
(イ)申立人は、2013年より現在に至るまで、全国約67,000軒・施設の調剤薬局・病院薬剤部に対して、薬剤師にとって必要な医薬品情報を郵送するサービスを提供してきており、2019年2月1日に「アスヤクLABO」サービスを開始した(甲11)。
(ウ)2022年11月時点で、「アスヤクLABO」サービスを提供するウェブサイトは、月間259,875回の閲覧数がある(甲8)。また、令和2年12月31日現在における全国の薬剤師数が321,982人である(うち、薬局の従事者は58.7%、医療施設の従事者は19.1%、医薬品関係企業の従事者は12.1%である。)(甲9)。
また、2022年12月時点で「アスヤクLABO」サービスは、43,500人の会員を有している(甲10)。
(エ)株式会社ネグジット総研が、2021年2月8日ないし2月25日に行ったWEBアンケート(調査対象:全国の保険薬局勤務管理薬剤師253名)において、引用商標は、約75%の管理薬剤師により「知っている」と回答された(甲15)。
(オ)引用商標の周知著名性について、一般社団法人薬局支援協会などの署名のある「証明書」が提出されている(甲16)。
イ 上記アによれば、申立人は「アスヤクLABO」という名称のサービスを2019年2月1日から開始しており、2022年11月時点で当該サービスを提供するウェブサイトは月間259,875回の閲覧数があり、43,500人の会員を有していること、株式会社ネグジット総研が、2021年2月8日ないし2月25日に行ったWEBアンケートにおいて、約75%の管理薬剤師により「知っている」と回答されたこと、引用商標の周知著名性について証明書があることが認められる。
しかしながら、「アスヤクLABO」という名称のサービスが開始されてから4年程度しか経過していないこと、全国の薬剤師数に対する当該サービスの会員数の割合からすると、当該サービスを提供するウェブサイトの閲覧者が一部の薬剤師に偏っていることも否定できず、WEBアンケートの対象者は、薬剤師のうち、薬局各店舗の責任者である管理薬剤師に限定されていること、引用商標の周知著名性についての証明書は、文面が全て同一であり、当該証明書の作成に申立人が積極的に関与していることがうかがわれ、その信ぴょう性は高いものとはいえないことからすると、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、引用商標が、一定の薬剤師の間において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして知られていたとしても、我が国の医薬品に関する医薬情報の提供の需要者において、広く認識されていたものと認めることはできない。
ウ 本件商標と引用商標の類似性について
上記(1)アのとおり、本件商標と引用商標は、類似の商標といえる。
エ 本件商標の申立役務と引用商標の指定役務との関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定役務である第35類「薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,寄託を受けた物品の倉庫における保管,倉庫の提供,荷役機械器具の貸与,物品の配送,商品の輸送・こん包及び保管からなる物流管理,商品・貨物の輸送に関する情報の提供」(上記(1)イにおいて、引用商標の指定商品及び指定役務と類似であるとした商品及び役務以外の本件商標の申立役務)のうち、第35類「薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標が周知であるとする「医薬品に関する医薬情報の提供」と、「薬剤(医薬品)」に係る役務であるという点において関連するものの、それらの役務の提供の手段、目的、業種等において明らかに異なり、需要者に必ずしも共通性が認められないものである。
また、第39類の上記役務については、役務間の関連性も需要者の共通性も認められない。
オ 出所の混同のおそれについて
以上からすると、本件商標と引用商標は類似するものの、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものとはいえず、本件商標の上記エの指定役務と申立人の提供する役務との関連性の程度や需要者の共通性の程度も低いものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれを本件商標の上記エの指定役務について使用しても、取引者、需要者が、その役務が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
カ まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、第9類の全ての指定商品、第35類「商品の販売に関する情報の提供,商品の注文の受付・配送に関する事務処理の代行及びこれに関する情報の提供,商品の配送又は宅配に関する事務処理の代行」、第42類及び第44類の全ての役務については、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきである。
しかしながら、本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務については、同法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものではないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-900036