商標異議申立
2023-900034
ピイテイゼロ、ゼロ
- 審判番号
- 2023-900034
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-081184
- 登録番号
- 6647298
- 請求日
- 2023年02月09日
- 審決日
- 2024年01月19日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社デサント
- 【権利者代理人】岡村 太一
- 【権利者代理人】恩田 俊郎
- 【異議申立人】ピレッリ エ コンパニア ソシエタ ペル アチオニ
- 【異議申立人代理人】村井 康司
- 【異議申立人代理人】魯 佳瑛
- 審判長/審判官
- 審判長 冨澤 武志
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T1651.22 -Y (W25) / T1651.261-Y (W25) / T1651.262-Y (W25) / T1651.263-Y (W25) / T1651.271-Y (W25) / T1651.222-Y (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1号、商標法第4条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6647298号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6647298号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6647298号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和4年7月13日に登録出願、第25類「被服,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,ショートパンツ,ジーンズパンツ,ゴルフパンツ,スウェットパンツ,トレーニングパンツ,パンツスーツ,ロングパンツ,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,アンダーパンツ,キャミソール,タンクトップ,ティーシャツ,ズボン及びパンツ,和服,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ナイトキャップ,帽子,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,靴類,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,水上スポーツ用特殊衣服,運動用特殊靴,乗馬靴,ウインドサーフィン用シューズ」を指定商品として、同年11月21日に登録査定、同年12月1日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標(以下、まとめて「申立人商標」という。)は、以下の(1)ないし(3)のとおりであり、これらの商標権は、現に有効に存続している。
(1)国際登録第1402844号商標(以下「申立人商標1」という。)
商標の態様:P ZERO
国際商標登録出願日:2018年3月12日
優先権主張:2018年3月5日 Italy
設定登録日:令和元年8月30日
指定商品:第16類及び「stirrup leathers; girths of leather; chin straps, of leather;」を含む第18類の商品
(2)国際登録1433648号商標(以下「申立人商標2」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
国際商標登録出願日:2018年3月2日
優先権主張:2018年2月20日 Italy
設定登録日:令和2年7月31日
指定商品:第16類、「stirrup leathers; girths of leather; chin straps, of leather;」を含む第18類の商品及び第25類「Clothing, footwear, headgear; clothing of imitations of leather; leather clothing; gowns; robes; bathrobes; bandanas (neckerchiefs); berets; underwear; smocks; training shoes; stockings; slippers; socks; breeches; short-sleeve shirts; shirts; jackets (stuff-) [clothing]; top hats; coats; hoods [clothing]; belts [clothing]; belts (money-) [clothing]; tights; shoulder wraps; detachable collars; hats; suits; beachwear; neckties; ascots; headbands [clothing]; pocket squares; scarves; jackets [clothing]; skirts; gloves [clothing]; ready-to-wear clothing; knitwear [clothing]; jumpers; leg warmers; leggings (trousers); liveries; singlets; hosiery; swimsuits; sweaters; muffs [clothing]; maniples; mantillas; sleep masks; skorts; boxer shorts; bathing drawers; waistcoats; trousers; parkas; pelisses; shirt yokes; pyjamas; cuffs; ponchos; pullovers; brassieres; sandals; bath sandals; bath slippers; gymnastic shoes; beach shoes; training shoes; lace boots; outerclothing; petticoats; slips (undergarments); shirt fronts; ankle boots; boots; T-shirts; combinations [clothing]; uniforms; veils [clothing]」
(3)国際登録第777901号商標(以下「申立人商標3」という。)
商標の態様:PZERO
国際商標登録出願日:2002年2月22日
優先権主張:2002年2月19日 Italy
設定登録日:平成14年11月15日
指定役務:第14類、「leather products」を含む第18類の商品及び第25類「Clothing, footwear and headgear」
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。
以下、証拠の記載にあたっては、「甲第○号証」を「甲○」と記載する。
(1)本件商標と申立人商標の比較
本件商標は、語尾に「O」の内側左上から内側右下へ引かれた斜線を加えた図を備えているものの、同図は「0(ゼロ)」を一般的に表す「斜線付きゼロ」を意図したものであり、その他の要素に何ら装飾が施されておらず、全体としてまとまりよく表されており、その構成から「PT ZERO」の欧文字を太字斜体と表しているにすぎない一方で、申立人商標は、いずれも「PZERO」の欧文字を左横書きしてなり、「P」と「ZERO」の間にスペースがあるものとないものがある。
以上のとおり、本件商標は、語尾が多少図案化されているものの、略文字商標と認識できる程度の装飾しか施されておらず、申立人商標の全欧文字を同じ順序で含んでおり、分断されやすい「P」と「ZERO」の間の「T」の欧文字1字の有無の相違があるにすぎない。
つまり、本件商標と申立人商標の明らかな相違点は、「T」の欧文字1字の違いしかなく、外観上の差異はわずかである。
また、本件商標は、その構成からは「ピイテイゼロ」又は「ゼロ」といった称呼が生じるが、申立人商標からは、「ピイゼロ」、「ピゼロ」及び「ゼロ」の称呼が生じるから、本件商標の称呼は、申立人商標から生じ得る複数の称呼の1つ「ゼロ」と同一称呼が生じる。
本件商標及び申立人商標からは特段の意味が生じないが、語頭の「PT」又は「P」とそれに続く「ZERO」は共に辞書に載録されている語であるだけでなく、一般的に知られている語であるから、「PT」又は「P」と「ZERO」に分断され、「ZERO」に関連することを想起し得る。
また、「ZERO」という語は辞書に載録されている語であるが、特許庁の商標実務において識別力がないとされる欧文字1文字又は2文字の組み合わせは極めて限定的であり、非常に独創性の高い商標である。さらに、「P」は申立人の商号の頭文字であり、「P」の欧文字を図案化した商標登録を有している(甲5、甲6)。
上述の申立人商標の独自性の高さを踏まえて、本件商標は、申立人商標の外観と違いがわずかであり、同一称呼が生じ得るものであり、関連した観念が想起され得ることから、申立人商標との類似性は極めて高い。
また、本件商標は、申立人商標と「T」の欧文字の有無の相違しかないことから、本件商標が申立人商標と何らかの関係を有すると想起し得る商標である。
(2)本件商標の指定商品と申立人商標の指定商品の比較
本件商標の指定商品は、上記1の第25類の商品及び第9類「腰部に装着される落下防止用ハーネス及び安全ベルト(乗物又はスポーツ用を除く。)」(決定注:本件商標には第9類は存在しないので、当該記載は誤記と認める。)である。
一方で、申立人商標1及び申立人商標2(決定注:「申立人商標2及び申立人商標3」の誤記と認める。)は、第25類を指定しており、その指定商品は上述の指定商品と重複している。また、申立人商標3(決定注:申立人商標1の誤記と認める。)は、第25類ではなく、第16類及び第18類を指定しているが、第18類の指定商品の一部は、本件商標の類似群の一部と重複している(甲7、甲8)
(3)申立人商標の周知・著名性について
申立人は、1872年に創業されたイタリアのミラノに本社を置くメーカーであり、創業直後は、伝動ベルト、バルブ、絶縁体、各種機械製品を生産販売していたものの、1897年にはケーブル分野の生産を開始し、英国が独占していた欧州のケーブル分野のリーディングカンパニーに成長し、イタリア本土と島を結ぶ海底通信ネットワークや鉄道電化のための政府契約を獲得し、1883年にはイタリアオペラの最高峰と言われるミラノのスカラ座がピレリのケーブルで送電された2,880個の白熱灯で照らされたりなど、大きく社会貢献をしている会社に成長した。
さらに、その後、1890年には二輪車用タイヤの生産を開始し、20世紀初頭の自動車産業の発展に伴い、1901年に自動車用タイヤの生産を始めている。
なお、2022年5月10日付け自動車春秋社の記事によると、世界のタイヤ売上高ランキング(2021年)で住友ゴム工業に次いで6位として紹介されている(甲9)。
また、日本語「ピレリ」で検索すると、例えば、2021年10月11日掲載、2022年6月23日更新のサイトである「主要タイヤメーカーのシェア率一覧!国産と外国産の違いは?各特長を解説」では、申立人は、「・・・F-1開催当初から参戦しているモータースポーツ界の古参でもあり、2011年以降はF-1のオフィシャルタイヤサプライヤーを務めています。ランボルギーニやフェラーリなど、ハイグレードな自動車メーカーの純正タイヤとしても有名です。・・・」と紹介されている(甲10)。
また、2022年7月20日公開のサイトである「タイヤメーカーお勧めランキング!メーカーごとの特徴を比較」では、申立人は、「・・・F1で使用されているタイヤといえば「ピレリ」という人がいるほど、開催当初からアルファロメオ・フェラーリ・マセラティなどにタイヤを供給していました。モータースポーツの経験を活かして開発しているので、タイヤの性能には期待ができます。スーパーカーに装着されているイメージのピレリ・・・」のように比較及び記載されている(甲11)。
以上のとおり、申立人の製品の品質は、高く評価されていることが分かる。
また、申立人の「P ZERO」ブランド商品は、世界ラリー選手権グループBの怪物として知られたランチア「デルタS4」用タイヤとして1985年終盤から1986年にかけて誕生した。
そして、その翌年の1987年にはそのままレースに出られる市販車をとして開発されたフェラーリ「F40」を具現化するためのタイヤとして市場投入されている。
その後、一般乗用車用としても販売が継続しており、「P ZERO」製品は、新たに「P ZERO COROSA」,「P ZERO NERO」、「P ZERO ROSSO」、「P ZERO WINTER」、「P ZERO SYSTEM」といったファミリーブランドを展開してきている。
なお、「P ZERO SYSTEM」及び「P ZERO ROSSO」は日本において12類で商標登録されている(甲12、甲13)。
以上のとおり、「P ZERO」の歴史は30年以上になり、現在も申立人のフラッグシップブランドとして位置づけられている(甲14)。
また、上記で紹介したサイトにおいて、「・・・F1で使用されているタイヤといえば「ピレリ」という人がいるほど、・・・」と紹介されているように、申立人はこれまで積極的にF1に参加している。
例えば、2011年以降はオフィシャルタイヤサプライヤーとして参加しており、世界の会場においては申立人の名前、ロゴ、そして、商品ブランド「P ZERO」はあちらこちらで見かけられる(甲15)。
なお、日本では、2020年及び2021年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により中止になったが、直近10年の日本グランプリの観客数は、2013年ないし2022年にかけて、122,000人ないし200,000人の間で推移している(申立人の主張、甲16)。
また、F1は様々なメディアが取り上げており、その価値としては2016年時点では、Fl日本グランプリに限定したメディア価値として約610万ユーロ(約8億円)といった算出も出ている。
以上のとおり、申立人は、世界的にも著名な企業のグループ企業であり、申立人商標は、日本でも広く使用されており、本件商標の出願日以前には広範囲で、申立人商標が需要者に知られている。
(4)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、出願の日前の商標登録出願に係る申立人商標に類似する商標であって、その商品又はこれらに類似する商品について使用をするものに該当するため、商標法第4条1項第11号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性について
商標法第4条第1項第11号に該当しない場合であっても、本件商標は、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であり、申立人商標は、一定の周知度・著名度を取得しているから、本件商標の指定商品について同項第15号に該当する。
(6)商標法第4条第1号第19号該当性について
本件商標と申立人商標は、その構成中、「ZERO」が共通しており、申立人商標は、日本を含む世界において一定の周知度を取得しているから、世界的にビジネスをしている本件商標の名義人が申立人商標の存在を知らない可能性は極めて低い。
よって、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(7)商標法第4条第1号第7号該当性について
上記異議理由に該当しないとした場合であっても、申立人商標は使用による信用が化体されており、商標法上、保護すべき商標であるので、本件商標の登録は、社会的相当性を欠く。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 当審の判断
(1)申立人商標の周知性について
申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、1872年に創業されたイタリアのミラノに本社を置くメーカーであり、1890年には二輪車用タイヤの生産を開始し、1901年に自動車用タイヤ(以下「申立人商品」という。)の生産を始めた(申立人の主張、甲10)。
また、ウェブサイトにおいて、申立人について、「・・・F-1開催当初から参戦しているモータースポーツ界の古参でもあり、2011年以降はF-1のオフィシャルタイヤサプライヤーを務めています。ランボルギーニやフェラーリなど、ハイグレードな自動車メーカーの純正タイヤとしても有名です。・・・」(甲10)、「・・・F1で使用されているタイヤといえば「ピレリ」という人がいるほど、開催当初からアルファロメオ・フェラーリ・マセラティなどにタイヤを供給していました。」(甲11)などの記載がある。
イ 申立人は、世界のタイヤ売上高ランキングにおいて、2020年は48億ドル、2021年は62億ドルでいずれも6位にランクインしていること(甲9)、タイヤメーカーの世界シェア率(2019年)において、3.6%で6位、タイヤメーカー世界売上シェア(2020年)において、3.2%で7位にランクインしていることがうかがえる(甲10、甲11)。
ウ 申立人は、1987年に、申立人商品に乗用車用「P ZERO」ブランドの使用を開始して以降、少なくとも30年以上にわたり、申立人商品に「P ZERO」を冠した「P ZERO COROSA」,「P ZERO NERO」、「P ZERO ROSSO」、「P ZERO WINTER」、「P ZERO SYSTEM」などを使用したことがうかがえる(甲10、甲14)。
エ 申立人に係る「P ZERO」の文字を使用したTシャツ及び帽子が販売されたことはうかがえる(甲7、甲8)が、甲7の証拠は、本件商標の登録査定後のものである。
オ 上記アないしエよりすれば、申立人は、1872年に創業されたイタリアのミラノに本社を置くメーカーであり、申立人に関するウェブサイトの記事や申立人の世界のタイヤ売上高ランキングやタイヤメーカーの世界シェア率などから、申立人商品を取り扱う分野においては、申立人は、ある程度知られていたことがうかがえる。
しかしながら、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品に「P ZERO」を使用していたこと、被服等に「P ZERO」を使用していたことがうかがえるとしても、申立人商標が使用された申立人商品の販売実績、宣伝広告費、規模及び範囲など、申立人商標の周知性を判断するための証拠は提出されていない。
その他、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標が申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていると判断し得る特別な事情はない。
以上からすると、申立人の提出に係る証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「PT ZERO」の欧文字(「O」の文字はデザイン化されている。以下同じ。)を横書きで表してなるところ、「PT」と「ZERO」の欧文字の間に1文字程度の間隔を有するとしても、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさでまとまりよく一体的に表してなるものである。
そして、本件商標はその構成中に、申立人商標を構成する「P」及び「ZERO」の文字を含んでいるとしても、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものであり、本件商標の構成中の「ZERO」の欧文字は、「(数字の)0、ゼロ」(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店発行)の意味を有する語であるとしても、上記のようなまとまりのよい構成においては、本件商標に接する需要者は、「PT」の欧文字を捨象して、「ZERO」の文字部分のみに着目するというよりは、むしろ「PT ZERO」の構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握するとみるのが相当である。
さらに、本件商標から生じる「ピーティーゼロ」の称呼も格別冗長ではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
したがって、本件商標は、構成全体に相応して、「ピーティーゼロ」の称呼のみを生じ、本件商標全体の構成文字については、辞書等に掲載が認められず、何らかの意味合いを理解させるものではないから、特定の観念を生じない。
イ 申立人商標
前記2のとおり、申立人商標1は、「P ZERO」の欧文字、申立人商標3は、「PZERO」の欧文字よりなり、申立人商標2は、その構成中に「P ZERO」の欧文字を有した構成よりなるところ、両商標は、「P」と「ZERO」の欧文字の間に1文字程度の間隔を有するとしても、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさでまとまりよく一体的に表してなるものである。
また、申立人商標3は、「PZERO」の文字を、同じ書体、同じ大きさ、等間隔でまとまりよく一体的に表してなるものである。
そして、申立人商標の構成中の「ZERO」の欧文字は、「(数字の)0、ゼロ」(前掲書)の意味を有する語であるとしても、上記のようなまとまりのよい構成においては、申立人商標に接する需要者は、「P」の欧文字を捨象して、「ZERO」の文字部分のみに着目するというよりは、むしろ「P ZERO」又は「PZERO」の構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握するとみるのが相当である。
そうすると、申立人商標は、それぞれの構成文字全体に相応して「ピーゼロ」の称呼のみを生じ、申立人商標全体の構成文字については、辞書等に掲載が認められず、何らかの意味合いを理解させるものではないから、特定の観念を生じない。
ウ 本件商標と申立人商標との類否
本件商標と申立人商標とを比較すると、外観においては、両者は、「T」の文字の有無の差異を有するところ、「P」及び「ZERO」の文字を共通にするとしても、6文字又は5文字という比較的短い文字構成における当該差異が両者の外観の印象に与える影響は少なくないから、外観上、明確に区別できるものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「ピーティーゼロ」と申立人商標から生じる「ピーゼロ」の称呼とは、中間音の「ティー」の音の有無という明らかな差異を有するところ、長音を含む6音又は4音と短い音構成における当該差異が、称呼全体に与える影響は少なくないから、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、いずれも特定の観念を生じないから、両者は、観念において比較することができない。
したがって、本件商標と申立人商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標は、申立人商標と非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と申立人商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 申立人商標の周知性について
上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないものである。
イ 本件商標と申立人商標の類似性の程度について
上記(2)のとおり、本件商標と申立人商標とは、非類似の商標であるから、本件商標と申立人商標との類似性の程度は低いというべきである。
ウ 本件商標の指定商品と申立人商品との関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、上記1のとおり、「被服」等であり、申立人商品は「タイヤ」であるところ、両者は、商品の生産、販売部門、原材料及び用途が一致するとはいえず、需要者の範囲も異なることから、商品の関連性及び需要者の共通性が高いとはいえない。
エ 出所の混同のおそれについて
上記アないしウからすると、申立人商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていた商標とはいえないことに加え、本件商標と申立人商標との類似性の程度は低いものであり、本件商標の指定商品と申立人商品とは、商品の関連性及び需要者の共通性が高いとはいえない。
そうすると、本件商標は、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)がこれをその指定商品について使用をしても、これに接する需要者が、申立人商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
オ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていたとは認められないものである。
また、上記(2)のとおり、本件商標と申立人商標は、非類似の商標である。
さらに、申立人の提出した証拠からは、本件商標権者が我が国及び外国において不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的をもって本件商標を使用するものと認めるに足りる具体的事実を見いだせない。
そうすると、本件商標は、申立人商標の周知性へのフリーライドの意図を有し、申立人商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、その参入を阻害する等、不正の目的をもって使用するものとはいうことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標と申立人商標は、上記(2)のとおり、非類似の商標であり、かつ、申立人が提出した甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実も見いだせない。
また、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見あたらない。
さらに、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではなく、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合にも該当しない。
そうすると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものではなく、同項の規定に違反して登録されたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-900034