商標異議申立
2023-900027
ケンタウロス、エムシイ
- 審判番号
- 2023-900027
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-072573
- 登録番号
- 6643846
- 請求日
- 2023年01月31日
- 審決日
- 2023年12月20日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社青龍寺
- 【権利者代理人】小林 宜延
- 【異議申立人】株式会社 ユナイテッドエフォート
- 【異議申立人代理人】泉 克文
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T1651.23 -Y (W21) / T1651.271-Y (W21) / T1651.222-Y (W21)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項8号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6643846号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6643846号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6643846号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和4年6月23日に登録出願、第21類「台所用品(「ガス湯沸かし器・加熱器・調理台・流し台」を除く。),ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),おけ用ブラシ,ガラス製又は陶磁器製の包装用容器,プラスチック製の包装用瓶,清掃用具及び洗濯用具,アイロン台,貯金箱,お守り,おみくじ,花瓶,靴べら」を指定商品として、同年11月11日に登録査定され、同月22日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録に係る異議申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する登録商標は、以下の1ないし4のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第1776712号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和57年9月8日に商標登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年6月25日に設定登録され、その後、平成18年3月1日に指定商品を別掲2のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第2073760号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和59年7月17日に商標登録出願、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同63年8月29日に設定登録され、その後、平成21年10月28日に指定商品を第6類「金属製彫刻」、第9類「映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済ビデオディスク及びビデオテープ」、第16類「印刷物,書画,写真,写真立て」、第19類「石製彫刻,コンクリート製彫刻,大理石製彫刻」及び第20類「額縁,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻」とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第2110912号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和59年7月17日に商標登録出願、第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年2月21日に設定登録され、その後、同21年10月28日に指定商品を第9類「眼鏡」及び第14類「時計」とする指定商品の書換登録がされたものである。
4 登録第2116135号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和61年2月18日に商標登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年2月21日に設定登録され、その後、同21年10月28日に指定商品を別掲3のとおりの商品とするとする指定商品の書換登録がされたものである。
引用商標1ないし引用商標4をまとめていう場合は、以下「引用商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の記載にあたっては、「甲○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 商標法第4条第1項第15号の適用について
(1)本件商標
本件商標(甲1)は、「KENTAUROS」の欧文字を、その中央にある「A」の欧文字の位置で逆V字状に屈曲させてその周囲を枠で囲むことで、その全体を逆V字状(「へ」の字状)に形成し、その下方に、ギリシア神話に登場する半人半獣のケンタウロス像(馬の首から上が人間の上半身に置き換わったような姿をしている)をデフォルメして配置するとともに、前記ケンタウロス像の頭部にオートバイ用ヘルメットを被せ、さらに、前記ケンタウロス像に重なるようにオートバイ用チェーンをほぼ円形に配置した構成であり、その指定商品は、第21類に属する商品である。
(2)引用商標
ア 引用商標の構成(デザイン)は、全て同一(完全に同一)であり、引用商標の構成(デザイン)は、昭和39年(1964年)に、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」(甲13)のリーダー(以下「元リーダー」という。)(故人)と数名の仲間によって結成された同クラブを表示するマーク(標章)として、同クラブのメンバーであったデザイナー(以下「デザイナー」という。)(故人)によって創作されたものである(甲12)。
引用商標に含まれている「KENTAUROS」の欧文字は、前記モーターサイクル・クラブの名称「ケンタウロス」に対応する欧文字であり、引用商標は、それ自体が同クラブを表示するマーク(標章)でもあるから、中央にある「A」の欧文字の位置で逆V字状に屈曲させてその周囲を枠で囲んだ「KENTAUROS」の欧文字を上部に配置し、その下部に、ギリシア神話に登場する半人半獣のケンタウロス像をデフォルメして配置するとともに、ケンタウロス像の頭部にオートバイ(モーターサイクル)用ヘルメットを被せ、さらに、ケンタウロス像に重なるようにオートバイ用チェーンをほぼ円形に配置した構成になっている。
創作者であるデザイナーの意図は不明であるが、前記ケンタウロス像が選ばれた理由は、当該像がオートバイに乗っている人の姿に似ていて、本件商標を見る人に「オートバイライダー」を想像させることから、前記モーターサイクル・クラブの名称「ケンタウロス」のマーク(標章)にふさわしいと考えたのではないか、また、前記ケンタウロス像は、片方の手でチェーンの一端を掴んでいるが、これはムチを打って馬を進ませる状況をイメージして、チェーンを打ってオートバイを進ませる姿を表現したものではないかと推測される。
以上述べたことから理解されるように、引用商標の構成(デザイン)は非常に特徴的・独創的であって、前記モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」のイメージにふさわしいマーク(標章)として、創作者であるデザイナーが強いこだわりを持って創作したものである。
イ 引用商標の構成(デザイン)は、前記モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」を表示するマーク(標章)であるだけではなく、同クラブ「ケンタウロス」の元リーダーが運営していたモーターサイクルショップ「ケンタウロス」を表示するマーク(標章)でもあり、さらに、前記ショップ「ケンタウロス」の運営主体である「株式会社ケンタウロス」(以下「ケンタウロス社」という。)を表示するマーク(標章)でもある。
引用商標は、ケンタウロス社が、昭和57年から同61年に特許庁に登録出願して登録を受けたものであり(甲2~甲5)、同社が販売する商品(引用商標の指定商品)について長年使用され、その後、平成27年になって、ケンタウロス社が所有する引用商標に係る商標権は申立人が正当に譲り受けた(甲6~甲9)。
申立人が引用商標に係る商標権をケンタウロス社から正当に譲り受けるまでは、引用商標の使用者はケンタウロス社であったが、申立人が引用商標を譲り受けた後も、申立人とケンタウロス社との間で締結された専用使用権設定契約に基づく専用使用権(甲22)により、引用商標の使用者はケンタウロス社である。
なお、前記モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の元リーダーは、2022年10月15日に逝去した(甲10)が、後継者(二代目のリーダー)が存在しているため、前記モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」は、同後継者をリーダーとして今も活動しており(甲10)、今後も活動を続けていくことが予定されている(甲13)。
(3)本件商標と引用商標の比較・検討
本件商標の構成(デザイン)は、引用商標と同一であり、他方、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品とは同一ではなく、類似でもない。
しかし、引用商標は、それらの指定商品について、昭和57年頃から現在に至るまで約40年の長期にわたって継続して我が国で使用されてきており、申立人(専用使用権者)の業務に係る商品を表示するマークとして、需要者に広く認識されている。これは、本件商標の登録出願日及び登録日当時も同様である。
よって、引用商標の構成(デザイン)と全く同一の構成(デザイン)を持つ本件商標が、その指定商品について使用されると、申立人(専用使用権者)の業務に係る商品の出所について混同を生じるおそれがあるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)引用商標の周知性
ア ケンタウロス社の店舗による使用
(ア)前記(2)で述べたように、引用商標の構成(デザイン)は、昭和39年に元リーダーと数名の仲間によって結成された前記モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」を表示するマーク(標章)として、デザイナーによって創作されたものである。
その後、引用商標は、ケンタウロス社によって、それらの指定商品について、それらの登録出願日である昭和57年ないし同61年頃から現在に至るまで、約40年の長期間にわたって継続して使用されてきた。
引用商標が使用される具体的な商品には、前記モーターサークル・クラブ「ケンタウロス」にちなんで、オートバイ愛好者が嗜好する商品が多いが、広範囲に及んでいる。
そして、引用商標を使用するケンタウロス社は、昭和48年に設立登記されてから現在に至るまで活動を継続している会社であり、同社の業務は引用商標の広範囲にわたる指定商品をカバーしている(甲20、甲21、甲34)。
(イ)引用商標は、例えば、皮革製のジャケットやベストの背面、ワッペンの表面(甲14、甲15)、Tシャツの前面、トートバッグの側面に付されたり、ジーンズ(デニム製ズボン)のラベルの表面に付され、そのラベルがジーンズの後面の上端部に縫い付けられている(甲30、甲31)。このように、引用商標を商品に付す形態は、商品の種類によって変動する。
なお、引用商標のこのような使用形態は、「デザイン・装飾」としての使用であると同時に、自他商品識別機能を発揮する商標的使用でもあるから(「NBA事件」 大阪地判平成5年1月13日)、引用商標の使用形態が商標的使用ではないとして問題になることはない。
引用商標が付された商品(以下「使用商品」という。)は、ケンタウロス社が設置した店舗で実際に販売されており、使用商品に付された引用商標を来店者に見える形で、展示ケースの外部に陳列して販売されている(甲31)。
なお、前記店舗で展示されている商品は、使用商品のすべてではなく、使用商品の告知資料(広告等)には掲載されているが、同店舗では展示・販売されていない商品も存在する。
(ウ)ケンタウロス社の店舗の様子の写真や、同店舗の営業日報、入荷票、領収書、棚卸報告書から理解されるように、使用商品を販売するケンタウロス社の店舗は、現実に営業活動を行っているが、店舗は非常に小規模であり、同店舗で販売される商品数も少数である(甲31~甲33)。
さらに、ケンタウロス社は、いわゆるネット販売を行っていないため、購入希望者は、前記店舗に足を運ばなければ、使用商品を購入することができない。
しかも、前記店舗の営業日報には、当該営業日に販売された個々の商品について、「購入者の氏名(又は氏)」が記載されている(甲32の8、甲33)が、これは特筆すべきことであり、同種の商品を販売する通常の店舗ではほとんど見ることができない。
前記店舗での販売形態に関するこれらの特徴は、使用商品が、いわゆる大量生産・大量販売を目指して製造されたものではないことに起因する。
使用商品の販売は小規模であり、販売数も少数であるのは、使用商品をモーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」のメンバーやファン(熱心な愛好者)、少なくとも、同クラブの創設者であり、元リーダーによる同モーターサイクル・クラブの設立趣旨や同氏の思考・行動の哲学、行動指針等に共感・共鳴する人々に購入してほしいと考えているからである。
したがって、使用商品の販売が小規模で地味なビルの一室で行われていること、使用商品の販売数が少数であること、大量生産・大量販売の商品ではないことは、引用商標が我が国で広く知られていないことには直結していない。
ケンタウロス社は、あえて、同社の前記店舗にわざわざ足を運ばないと使用商品を入手できない状況を作り、前記商品の希少性を高めているために、前記店舗を拡張したり、支店を他の場所に設置せず、委託販売も行わず、また、大規模な広告を打たず、便利なネット販売も行わない。
イ モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の活動に伴う周知著名性の拡大
引用商標は、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」が日本全国のオートバイ愛好者に広く知られるにつれて、広く知られるようになった。
(ア)モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の周知著名性について
当該クラブ「ケンタウロス」の公式ウェブサイトには、「ケンタウロス」の元リーダーの送別会(2022年11月19日)への案内が記載され、「活動報告」のページからは、少なくとも2010年から現在に至るまで、「ケンタウロス」が活動を継続し、平成26年(2014年)に「ケンタウロス50周年記念パーティー」が開催されたことが記載されており、同年は、昭和39年(1964年)の「ケンタウロス」結成からちょうど50年目にあたる(甲10)。
前記モーターサイクル・クラブをモデルとして制作された漫画「ケンタウロスの伝説」(1981年)と同漫画に基づいて制作された同名の劇場用アニメーション作品(アニメ映画)(1985年)が制作されたほか(甲11)、前記モーターサイクル・クラブ及びショップは、雑誌、新聞等でも多数紹介され、それらには引用商標がジャケットやベストなどの商品に使用され、同クラブのマークとして使用されている(甲12~甲18、甲23~甲28)。
バイクライフマガジン「道楽」第8号(平成27年発行)(甲23)の「日本一名の知れたモーターサイクルクラブ、ケンタウロス。」の記載やモーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」のメンバーが集まるショップ「ケンタウロス」の紹介記事は、当該雑誌が発行された2015年当時、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称が日本全国で知られていたことを示す。
また、「週刊朝日(1992年8月14-21日号)」(甲24)の「横浜ケンタウロスを目指して、北海道、九州、地球の裏側からも男たちがやってくる」との記載や「トルコ、イタリア、ドイツ、オランダ、アメリカ、カナダに支部を持つ」との記載は、当時、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称が日本全国で広く知られていただけでなく、一部の外国においても知られていたことを示す。
さらに、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」が発行した新聞(昭和61年発行)(甲27)には、ショップ「ケンタウロス」の紹介があり、当該ショップが販売するTシャツの広告が掲載されており、これらは、1986年当時、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名前が我が国で知られていたことを示す。
新聞「ペーパーケンタウロス」の復刊告知ハガキ(甲28)は、1985年当時、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名前が我が国で広く知られていたことを示す。
また、「モーターサイクル・クラブ」及び「日本」の語句でGoogle検索をすると、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」は第3位に表示され、我が国のモーターサイクル・クラブでは第1位であることが分かった(甲19)。
以上から、少なくとも1985年頃から現在に至るまで、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称は我が国で広く知られていた。
本件商標の登録出願と登録査定は、いずれも、2022年に行われているから、本件商標の登録出願時と登録査定時のいずれにおいても、同クラブ「ケンタウロス」の名称は我が国で広く知られていた。
(イ)ところで、引用商標は、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」を表示するマーク(標章)であるだけでなく、同クラブ「ケンタウロス」の元リーダーが運営していたショップ「ケンタウロス」を表示するマーク(標章)でもあり、さらに、前記ショップ「ケンタウロス」の運営主体であるケンタウロス社を表示するマーク(標章)でもある。
このような特性を有する引用商標は、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称が我が国で広く知られていくのに伴って、我が国で広く知られるようになってきた(甲24、甲25)。
これは、使用商品の前記店舗での販売形態に関する特徴、すなわち、使用商品が大量生産・大量販売を目指して製造されたものではないことにも起因する。
特に、前記モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」のメンバーは、オートバイ愛好者の集まりであり、集団となってしばしば数百キロの長距離を移動していたこと(甲11)を考慮すると、「ケンタウロス」の名称とともに特徴的な構成(デザイン)を持つ使用商品も広く知られ、そのメンバーの言動や彼らのファンの言動を通じて引用商標と使用商品も広く知られていた。
ウ 以上述べたように、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称と引用商標は、少なくとも1985年頃から現在に至るまで、我が国において広く知られているから、同クラブ「ケンタウロス」の名称は、我が国において周知であった。
(5)モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称及び引用商標の著名性
前記(4)イからすれば、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称及び引用商標は、少なくとも1985年頃から現在に至るまで、我が国において「著名」であったといえる。
なお、ケンタウロス社が使用商品の購入者として考えているのは、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」のメンバーやファン(熱心な愛好者)などであり、少なくとも、元リーダーによる同クラブ「ケンタウロス」の設立趣旨や、同氏の思考・行動の哲学、行動指針等に共感・共鳴する人々であって、使用商品を実際に購入している人々の間では、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称と引用商標は広く知られている。
したがって、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称と引用商標は、これらの需要者の間において、我が国において「著名」であるといえる。
また、使用商品を実際に購入していなくても、少なくともオートバイ愛好者であれば、間違いなく、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称と引用商標は知っていると推測されるから、使用商品の購入経験がないオートバイ愛好者の間でも、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称と引用商標は、広く知られている。
したがって、これらの需要者の間においても、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称と引用商標は、我が国において「著名」であるといえる。
(6)混同のおそれ
ア モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称と引用商標は、同クラブ「ケンタウロス」のメンバーやファン(熱心な愛好者)と同クラブの設立趣旨や創設者の思考・行動の哲学、行動指針等に共感・共鳴する人々からなる需要者や、使用商品の購入経験がないオートバイ愛好者からなる需要者の間において、我が国において「著名」であるといえる。
したがって、我が国において「著名」な引用商標の構成(デザイン)と全く同一の構成(デザイン)を持つ本件商標が、その指定商品について使用されると、ケンタウロス社の業務に係る商品の出所について混同を生じるおそれがある。
特に、引用商標の指定商品である一部の商品(皮革製のジャケットやベスト、ワッペン等)を好んで購入する傾向のあるオートバイ愛好者は、本件商標の指定商品であり日常的に身近で使用するマグカップ(台所用品)、日常的にオートバイ清掃に使う清掃用パッド(清掃用具)、交通安全用のお守り等も、好んで購入すると予想されるから、これらの商品については、商品としては非類似であっても、出所の混同が生じやすいから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
イ 仮に、引用商標が日本全国で周知であるとはいえないと認定された場合でも、引用商標はそれらの構成(デザイン)が非常に特徴的・独創的であって、前記モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」のイメージにふさわしいマークとして強いこだわりを持って創作されたものであること、引用商標は使用商品を販売する前記ショップ「ケンタウロス」を表示するマークであると同時に、前記ショップの運営主体であるケンタウロス社を表示するマークでもあるため、専用使用権者であるケンタウロス社のハウスマークに相当するものであるといえること、さらに、前記のとおり、引用商標の指定商品である一部の商品については、非類似商品であっても出所の混同が生じやすいことを考慮すると、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号の適用について
(1)引用商標の構成(デザイン)は、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」を表示するマークとして、同クラブのメンバーであったデザイナーが強いこだわりをもって創作したものであり、非常に特徴的・独創的なデザインとなっている。
上述したように、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称と引用商標は、同クラブ「ケンタウロス」のメンバーやファン(熱心な愛好者)と同クラブの設立趣旨や創設者の思考・行動の哲学、行動指針等に共感・共鳴する人々からなる需要者や、使用商品の購入経験がないオートバイ愛好者からなる需要者の間において、我が国において「著名」であるといえる。
しかも、本件商標の構成(デザイン)は、引用商標のそれと完全に同一である。
本件商標の登録出願日と引用商標のそれを比較すれば、引用商標がオリジナル(原作)であり、本件商標は我が国で「著名」な引用商標の構成(デザイン)を盗用したものである。
以上述べたように、本件商標は、引用商標の構成(デザイン)を盗用して出願されたものであって、引用商標の名声・信用に便乗して不正に利益を得ようという「不正の目的」をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(2)なお、本号の適用に関する商標審査基準によれば、a)日本国内において全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること、b)その周知な商標が造語よりなるものであるか、構成上顕著な特徴を有するものであること、という2つの要件を満たす商標については、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うものとする、との記載がある。
上述したように、本件商標の構成は引用商標のそれと全く同一であり、また、日本国内で周知な引用商標は構成上顕著な特徴を有しているから、本件商標はこれら二つの要件a)及びb)を明らかに満たしている。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 商標法第4条第1項第8号の適用について
本件商標は、我が国で著名なモーターサイクル・クラブの名称「ケンタウロス」を表示する「KENTAUROS」の欧文字を含んでいることは明らかであるが、それだけではなく、本件商標の構成は、同クラブ「ケンタウロス」を表示するマークとしてオートバイ愛好者の間で「著名な」構成と、完全に同一である。
したがって、本件商標は、それを見たオートバイ愛好者に対し、「著名な」モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」を直ちに連想・想起させる。
モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」は、結成以来、現在まで50年以上にわたって活動を続けており、今後も続けていく予定である(甲13)から、同クラブ「ケンタウロス」は現存していることが明らかである。
また、申立人の知る範囲では、本件商標は、同クラブ「ケンタウロス」から承諾を受けておらず、ケンタウロス社からも承諾を受けていない。
したがって、本件商標の登録出願日においてもその設定登録日においても、「他人の承諾」を受けていない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知性について
申立人の主張及び同人から提出された証拠及び職権調査によれば、以下のとおりである。
ア ケンタウロス社は、昭和48年に「自動車、自動二輪車、自転車、モーターボート、ヨット等の卸、小売、及び整備並びに開発」、「衣料品、衣料雑貨品、日用雑貨品、アクセサリーその他生活雑貨の販売及び輸出入」などを目的として設立され、現在も存続していること(甲20、甲34ほか)、引用商標に係る商標権は、平成27年5月頃にケンタウロス社から申立人に譲渡され(職権調査、引用商標に係る商標登録原簿)、申立人がケンタウロス社に対し同商標権について専用使用権を設定する旨の商標権専用使用権設定契約を締結したこと(甲22)、引用商標(色彩が異なるものを含む。)が付されたTシャツが遅くとも1984年(昭和59年)に発行された雑誌に掲載されたこと(甲18)などが認められ、使用商品中、Tシャツ、トートバック、ジーンズなどが店舗において取り扱われていたことはうかがえる(甲30、甲31)。
しかしながら、使用商品の売上額、販売数量など販売実績を示す具体的な証拠及び使用商品に関する広告宣伝に係る証拠は確認できない。
イ モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」は1964年(昭和39年)に結成され、現在も活動していること(甲11~甲14)、同クラブのメンバーは背中に引用商標と同一視し得る標章(色彩の異なるものを含む。)が付されたジャケットやベスト等を着用し、オートバイでツーリングする場合があること(甲12、甲14、甲15、甲23)、同クラブや同クラブが運営するショップのマークとして、引用商標の図形部分と同一視し得る標章を使用していたこと(甲16、甲17、甲23、甲26~甲28)、同クラブをモデルとする漫画「ケンタウロスの伝説」が1981年(昭和56年)に、同漫画を原作とした劇場用アニメが1985年(昭和60年)に制作されたこと(甲11)、同クラブ及び元リーダーに係る記事が1992年(平成4年)8月頃、1995年12月頃及び2015年2月頃に発行された雑誌(甲23~甲25)や2022年11月頃のウェブサイト(甲13、甲14)に掲載され、例えば、1992年8月頃に発行された雑誌に掲載された記事に「トルコ、イタリア、ドイツ、オランダ、アメリカ、カナダに支部を持つ。」、「横浜ケンタウロスを目指して、北海道、九州、地球の裏側からも男たちがやってくる。」との記載(甲24)、2015年2月頃に発行されバイク雑誌に「日本一名の知れたモーターサイクルクラブ、ケンタウロス」の記載がある(甲23)。
ウ 前記ア及びイからすれば、遅くとも1984年(昭和59年)頃からケンタウロス社が使用商品を取り扱っていたことやモーターサイクル・クラブ及び元リーダーに係る記事が雑誌に掲載されたことや同クラブに係る漫画やアニメが制作されたことはうかがえるものの、使用商品の販売実績や広告宣伝に係る証拠は確認できないから、申立人が主張する使用商品に係るケンタウロス社の使用商品の店舗のみでの小規模の販売などの販売形態や手法等を考慮しても、使用商品に使用されている引用商標は、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間はもとよりオートバイの愛好者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」は、昭和50年代ないし平成初期において、オートバイの愛好者の間にある程度知られており、同クラブのメンバーが引用商標と同一視し得る標章が付されたジャケット等を着用しツーリングするなどの活動を行っており、同クラブや同クラブが運営するショップのマークとして、引用商標の図形部分と同一視し得る標章を使用したことがうかがえるとしても、提出された証拠からは、引用商標が同クラブを表示するものとして需要者及びオートバイの愛好家の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠は見いだせない。
さらに、提出された証拠において、同クラブを表す際に「ケンタウロス」や「KENTAUROS」の文字のみの使用例(甲17、甲23、甲26、甲27)が見受けられるものの、これらの使用例をもって、「ケンタウロス」及び「KENTAUROS」の文字が、同クラブの名称若しくは略称を表示するものとして一般に受け入れられているとはいい難い。
そうすると、「ケンタウロス」及び「KENTAUROS」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また、ケンタウロス社は、引用商標に係る商標権(以下「引用商標権」という。)の設定登録時から当該商標権の権利者であったから、申立人が引用商標に係る商標権をケンタウロス社から正当に譲り受けるまでは、引用商標の使用者であったが、申立人が引用商標を譲り受けた後も、申立人とケンタウロス社との間で締結された専用使用権設定契約に基づく専用使用権(甲22)により専用使用権者であるから、引用商標の使用者である。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標及び引用商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、両者は同一又は類似するから、類似性の程度は高いというべきである。
(3)本件商標の指定商品と使用商品の関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、前記1のとおり、台所用品や清掃用具であり、使用商品は、かばん類や被服などを含む前記2のとおりの商品であるところ、本件商標の指定商品及び使用商品の需要者がいずれも一般需要者を主とする点で共通するとしても、商品の生産部門、販売部門及び用途等を異にするから、両商品の関連性はさほど高くないといえる。
(4)出所の混同のおそれについて
前記(1)ないし(3)のとおり、引用商標は、引用商標権の専用使用権者であるケンタウロス社の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたとはいえないものであり、また、本件商標と引用商標は、類似性の程度が高いとしても、両商品の関連性はさほど高くない。
そうすると、本件商標は、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人又はケンタウロス社)あるいは同人(申立人又はケンタウロス社)と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないとみるのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第19号について
前記1(2)のとおり、本件商標と引用商標は同一又は類似するものである。
しかしながら、引用商標は、前記1(1)ウのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標の商標権の専用使用権者であるケンタウロス社の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものであるから、本件商標は引用商標を連想又は想起させることのないものである。
また、提出された証拠からは、本件商標権者が、引用商標を剽窃し、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実を見いだすことはできない。
そうすると、本件商標は引用商標の名声・信用に便乗して不正の利益を得るなど不正の目的をもって使用をするものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第8号について
前記1(1)ウのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標並びに「ケンタウロス」の片仮名及び「KENTAUROS」の欧文字は、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称若しくは同クラブの略称を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また、申立人より提出された証拠からは、引用商標及び「ケンタウロス」の片仮名及び「KENTAUROS」の欧文字が同クラブを表示するものとして需要者及びオートバイの愛好家の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠は見いだせない。
そうすると、本件商標は、その構成中に「KENTAUROS」の文字を有しているとしても、モーターサイクル・クラブ「ケンタウロス」の名称若しくはその著名な略称を含むものと認識し、把握されることはなく、本件商標は、他人の名称若しくは他人の著名な略称を含む商標であるとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-900027